説明

先天性免疫修飾疾患を処置および予防するためのD−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールを含んでなる化合物の使用

本発明は、炎症反応、刺激状態または不耐性を誘導することなく、抗微生物ペプチド、好ましくはhBD−2の増産により先天性免疫および/または獲得免疫の修飾に関連する疾病を処置および/または予防すること目的とする薬剤の製造のための、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールを含んでなる化合物の使用に関する。該化合物はまた、アボカドペプチド抽出物および/またはルピナスペプチド抽出物も含み得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、先天性免疫の修飾に関連する疾患を処置および/または予防すること目的とする薬剤を製造するための、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールを含んでなる化合物の使用に関する。
【0002】
総ての動物種は、日々、それらの健康、場合によっては生命をも脅かす恐れのある細菌、真菌、寄生生物またはウイルスなどの多数の微生物に曝されている。これらの微生物には、ヒトをはじめとする総ての動物に共通している先天性免疫と呼ばれる系と、潜在的攻撃者との接触後に細胞や免疫メディエーターによって獲得される、いわゆる適応または特異免疫系の2つの防御系が抵抗している。
【0003】
先天性免疫応答または適応免疫応答は、これらの微生物に対する認識機構が異なる。先天性免疫では、受容体の特異性が生まれた時から遺伝的に決定されていて、変わらない。これらの受容体は、特定の上皮細胞や内皮細胞、樹状細胞、単球およびマクロファージなどの細胞で発現される。先天性免疫受容体によって認識される総ての構造は、極めて多数の微生物に共通している。適応的免疫応答とは対照的に、先天性免疫応答機構(食作用、抗微生物ペプチドなど)は感染時に活性化され、宿主に侵入する病原体の増殖をほとんど即座に制御する。その後を適応的免疫応答が引き継ぐ。
【0004】
抗微生物ペプチドは、植物界でも動物界でも見つけられており、昆虫からヒトまで500種を超える抗微生物ペプチドが発見されている。これらの抗微生物ペプチドは、幅広い種類の微生物(グラム陽性菌および/またはグラム陰性菌、真菌、ウイルス、形質転換細胞)を、それらの細胞膜を透過性にすることにより破壊することができる小分子(10〜50個のアミノ酸)である。さらに、これらの抗微生物ペプチドのうちあるものは、それらの化学誘引性から、樹状細胞またはさらにはTリンパ球など、適応免疫に関与する細胞を動員することができる。多数の抗微生物ペプチドが胎脂や羊水、ならびに新生児の皮膚で見つけられているが、このことは、出生時だけでなく、獲得免疫が未熟である生涯の始まりの時期から、微生物に対する防御にそれらが重要な役割を果たしていることを示唆する。
【0005】
ほとんどの生物は、幅広い活性域を規定するために、異なる上皮のレベルで数種類の抗微生物ペプチドを合成する。哺乳類では、微生物との接触により生産が誘導される2つの主要なクラスの抗微生物ペプチド、すなわち、カテリシジンとデフェンシンが記載されている。
【0006】
ヒトカテリシジン(LL−37)は、骨髄細胞から初めて単離された。LL−37は、主として、ヒト皮膚、爪、ならびに健康な滑膜および炎症を起こした滑膜(とりわけ関節炎に罹患している患者の場合)で発現される。LL−37は、幅広い活性域を有し、他の抗微生物ペプチド、とりわけデフェンシンと相乗作用するものと思われる。また、LL−37は化学誘引性を有しており、適応免疫細胞を動員することができる。
【0007】
デフェンシンはそれ自体、二次構造に基づいて、αとβの2つのファミリー、に分けられる。α−デフェンシン(現在分かっているのは6種類)は、主に好中球などの特殊化した細胞の貯蔵顆粒または腸パネート細胞に存在するが、β−デフェンシンの方は上皮組織に特徴的なものである。デフェンシンは、先天性免疫における役割の他、有糸分裂誘発性についても同様に知られており、治癒プロセスに関係している可能性が示唆される。
【0008】
ヒトでは、現在までに4種類のβ−デフェンシンが確認されている(発明者らのゲノムには、抗微生物ペプチドをコードする遺伝子は20個以上存在していると考えられている)。ヒトβ−デフェンシン1(hBD−1)は、一般に構成的に生産され、肝臓で大半が発現され、膵臓、唾液腺、呼吸器系の上皮、女性の泌尿生殖器系、健康な滑膜、ならびに胎盤でもわずかながら発現される。hBD−1はまた皮膚でも発現される。β−デフェンシンの他の種類、hBD−2、3および4は誘導性のものである。hBD−3は、例えば、関節炎病態のような炎症滑膜で誘導される。hBD−2の発現は、これまでのところ、皮膚、泌尿生殖路、汗腺および毛包皮脂腺単位(pilo-sebacic unit)において報告されている。
【0009】
皮膚では、エラスターゼ/SKALP/エラフィンの特異的阻害剤であるアドレノメデュリン、シスタチンなどの他のペプチドまたはタンパク質が抗微生物活性を有すると思われる。最近になって、デルミシジン(dermicidin)(広域活性)が皮膚に特異的な抗微生物ペプチドであると特徴付けられた。この抗微生物ペプチドはエクリン汗腺において生成されると思われ、汗との同時分泌が局部および全身感染に対する先天性的防御系の重要な役割を果たしていると考えられる。初めて、hBD−2が乾癬鱗屑において特徴付けられた。hBD−2および3ならびにLL−37の発現は乾癬病変で高まることから、この病態に罹患している患者の感染への抵抗性が高くなることが説明される。一方、アトピー性皮膚炎(慢性病変および発疹性病変)では、アトピーのメディエーターであるインターロイキン−4(IL−4)とインターロイキン−13(IL−13)の影響を下で、LL−37とhBD−2の発現が低下する。この不全によってアトピー性皮膚炎に罹患している患者の感染に対する感受性の上昇を説明することができる。座瘡では、P acnesの増殖に対する反応としてβ−デフェンシン(hBD−1および2)の発現が高まる。さらに、座瘡患者は初期に細菌増殖に関与する抗微生物ペプチドの平衡異常に苦しむが、その代償に細菌が先天性的免疫防御を刺激すると考えられている。
【0010】
そのため、炎症は抗微生物ペプチドの誘導における主要な因子であると思われる。さらに、インターロイキン−1、TNF−α(腫瘍壊死因子α)および紫外線照射がhBD−2の産生を刺激することも示されている。また、hBD−2の発現は、ケラチノサイトの分化状態にも関連している。従って、とりわけデフェンシンファミリー由来の抗微生物ペプチド、より詳しくはhBD−2の産生が刺激されることで、とりわけ眼および上皮(表皮、膣、腸、鼻腔および耳の粘膜、気道)の先天性免疫の増強および/または回復が可能となる。
【0011】
口腔は、常に多様な種類の微生物(細菌、ウイルス、真菌)に曝されている。細菌、とりわけ、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス(actinobacillus actinomycetemcomitans)、ポルフィロモナス・ギンギバリス(porphyromonas gingivalis)などが、歯周病(歯肉炎および歯周炎)の発症に関与する重要な要因であることはよく知られている。歯肉上皮は、口内環境に存在する種々の病原体に対する第1の防御壁となる。これに関して、歯肉ケラチノサイトで広範な抗微生物ペプチドパネル、hBD−1、−2、−3、LL37が生産される。また、これらのペプチドは、頬粘膜においてや唾液腺によっても生産される。
【0012】
より詳しくは、抗微生物ペプチドの刺激によって、一般に免疫が十分でない乳児や小児の健康な皮膚または病的状態の皮膚や、成人の皮膚または健康な、もしくは病的状態の高齢者の皮膚(免疫抑制状態)において先天性免疫の増進および/または回復が可能となる。よって、この刺激により、有利には角質層(角質細胞+細胞間質)からなる皮膚の受動防御系が完全なものとなり、健康な状態または病的状態の乳児、小児、成人および高齢者において適応免疫応答がもたらされる。また、同時に、瘢痕形成も促進される。
【0013】
1916年にLa Forgeによって同定された最初のケトヘプトースであるD−マンノヘプツロースは、一般式(I):
【化1】

を有し、特定の植物、特にムラサキウマゴヤシすなわちアルファルファ(Medicago Sativa L.)、アボカド、イチジク(Ficus officinalis L.)およびサクラソウ(Primula officinalis Jacq.)に見られる。しかしながら、D−マンノヘプツロースの最大含量はアボカドにおいて認められる。D−マンノヘプツロースは治療用途ですでに使用されている。例えば、特許出願WO95/03809には、腫瘍細胞の発達阻害のためのグルコキナーゼ阻害剤としてのD−マンノヘプツロースの使用が記載されており、特許出願US2003/0092669には、インスリンレベルを降下することができ、それにより減量を可能にする、D−マンノヘプツロースを含む経口栄養補助食品が記載されている。
【0014】
ポリオール型D−マンノヘプツロースであるペルセイトールは一般式(II):
【化2】

を有し、これもまたアボカド、特に果実やアボカド核に見られる。
【0015】
“Search for pharmacochemical leads from tropical rainforest plants”, Hitotaka Shibuya et al. Pure Appl. Chem., vol. 71, no 6, pp 1109-1113, 1999によれば、カリウムイオンと結合したペルセイトールによって、ロイシン−3Hをエールリッヒ腹水肉腫の腫瘍細胞に取り込ませることができるとされている。
【0016】
驚くべきことに、本発明者らは、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールを含んでなる組成物によって、炎症反応、刺激状態または不耐性を誘導することなく、とりわけ、炎症反応の場合に通常発現される分子の分泌を有意に刺激することなく、抗微生物ペプチド、有利にはhBD−2の増産が可能であることを見出した。
【0017】
よって、本発明の対象は、カテリシジンファミリーおよび/またはβ−デフェンシンファミリーの抗微生物ペプチド、有利にはhBD−2の増産により先天性免疫および/または獲得免疫の修飾に関連する疾病を治療および/または予防すること目的とする薬剤または獣医学的組成物の製造のための、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと適当な薬学上許容される賦形剤とを含んでなる化合物の使用である。本発明の範囲において、「修飾」とは、増強または低下を意味する。
【0018】
本発明はまた、エラスターゼの特異的阻害剤、特にエラフィン(SKALP)などの抗微生物ペプチドの増産により先天性免疫および/または獲得免疫の修飾に関連する疾病を治療および/または予防すること目的とする薬剤または獣医学的組成物の製造のための、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと適当な薬学上許容される賦形剤とを含んでなる組成物の使用にも関する。
【0019】
本発明の薬剤または獣医学的組成物は、有利には、先天性免疫および/または獲得免疫を刺激し、かつ/または完全なものとすることができる。
概して、本発明において、前記疾病は、微生物、とりわけグラム陽性菌および/もしくはグラム陰性菌、真菌、酵母またはウイルスの存在に関連するものであり得る。
【0020】
より詳しくは、前記疾病は、視覚系および聴覚系、非角化上皮(膣、腸、歯肉、肺、気道、肛門および尿道の粘膜)ならびに皮膚などの角化上皮の感染症であり得る。前記疾病はまた、ファネラ(phanera)または皮膚付属器(毛、爪、汗腺、皮脂腺)の感染症でもあり得る。ゆえに、前記疾病は、毛包炎、せつ、膿瘍、膿痂疹またはひょう疽などの病態であり得る。
前記疾病は、ふけ症などの頭皮の病態、より広くは脂漏過剰に関連する障害であり得る。
【0021】
前記疾病は、アトピー性皮膚炎などのTh1/Th2バランスの修飾に関連する病態であり得る。
前記疾病は、とりわけ、アトピー性皮膚炎の場合、IL−4および/またはIL−13などのサイトカインの合成の修飾に関連する病態であり得る。
【0022】
前記疾病はまた、アトピー性皮膚炎、アトピー性および/または接触性湿疹、乾癬、座瘡ならびに皮膚の刺激状態などの炎症性皮膚疾患でもあり得る。
前記疾病はまた、熱傷、特に第1度および第2度熱傷でもあり得る。
【0023】
前記疾病はまた、皮膚バリアの欠如に関連する病態でもあり得る。よって、本発明の薬剤は、過敏感反応性の皮膚(敏感皮膚、炎症を起こした皮膚、アレルギー性皮膚)、アトピー性皮膚、乾燥皮膚もしくは老化した皮膚の処置に使用することができる。前記疾病はまた、とりわけ、寒さ、汚染、ストレス、タバコ、日光暴露によって起こる、環境からの攻撃によって弱くなった皮膚に関連する病態でもあり得る。
【0024】
本発明において、この薬剤はまた、乳児や小児の未成熟な、健康な皮膚または病的状態の皮膚の保護にも好適である。実際に、この薬剤は、一般に免疫が十分でない小児の表皮の先天性防御の強化を可能にする。
【0025】
本発明において、この薬剤はまた、成人または高齢者、とりわけ免疫抑制状態の人の、健康な皮膚または病的状態の皮膚の保護にも適している。
本発明の薬剤はまた、正常または病的瘢痕形成(潰瘍および痂皮など)のプロセスにおける瘢痕形成の促進にも適している。
【0026】
本発明において、この薬剤はまた、歯周病、関節炎などの関節の炎症性病態、粘膜感染症、とりわけ膣、腸、呼吸器、鼻腔もしくは耳の粘膜の感染症、または視覚系の感染症の治療および/または予防も目的とする。
【0027】
本発明の組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30乾燥重量%のD−マンノヘプツロース、さらに有利には0.01〜20乾燥重量%、さらに有利には0.01〜10乾燥重量%、さらに有利には0.5〜5乾燥重量%のD−マンノヘプツロースを含んでなる。本発明の組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30乾燥重量%のペルセイトール、さらに有利には0.01〜20乾燥重量%、さらに有利には0.01〜10乾燥重量%、さらに有利には0.5〜5乾燥重量%のペルセイトールを含んでなる。本発明において、「D−マンノヘプツロース」および「ペルセイトール」には、それらの化学的誘導体も含む。
【0028】
D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールの供給源は、アボカドまたは別の植物由来の糖の水溶性抽出物であり得る。また、D−マンノヘプツロースおよびペルセイトールは、商業的にも入手可能である(合成源)。本発明の有利な変形形態によれば、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールの供給源はアボカド由来の糖の水溶性抽出物である。
【0029】
アボカド由来の糖の水溶性抽出物は、果実、果皮、核、アボカドの樹の葉または根など、アボカドまたはアボカドの樹のいずれの部分からでも直接得ることができる。また、アボカド変換工業の副産物からペプチド抽出物を得ることもでき、中でも、限定されるものではないが、アボカド生果果肉、冷凍果肉、脱水果肉、オイル抽出工程(予め脱水した果実の機械的抽出および/または溶媒抽出)から得られるアボカドオイルケーク、湿式オイル抽出工程(遠心分離工程)から得られる脱油固体、アボカドの酵素的抽出工程から得られる脱油固体、生のアボカドマッシュ(グアカモーレ)、これらのマッシュの製造ユニットから得られる固形廃棄物が挙げられる。抽出物はアボカドの樹の生果から得るのが有利である。果実はハス種(Hass)、フェルテ種(Fuerte)、エッチンジャー種(Ettinger)、ベーコン種(Bacon)、ナバル種(Nabal)、アナハイム種(Anaheim)種、ルラ種(Lula)、リード種(Reed)、ズタノ種(Zutano)、クィーン種(Queen)、クリオラ・セルバ種(Criola Selva)、メキシカナ・カンタ種(Mexicana Canta)、チャン地方種(Region Dschang)、ハル種(Hall)、ブース種(Booth)、パターソン種(Peterson)およびコリンソン・レッド種(Collinson Redn)、より有利にはハス種、フェルテ種およびリード種から選択することができる。ハス種、フェルテ種、エッチンジャー種およびベーコン種が好ましく、ハス種およびフェルテ種が最も好ましい。
【0030】
アボカド果実は、主として水分、果肉、オイルおよび核種で構成される。あらゆる天然植物産物の場合と同様、これらの構成要素の割合は極めて多様である。しかしながら、一般には、表1に示される数値(生果のパーセンテージで示す)が平均組成と見られる。
【0031】
【表1】

【0032】
実際、アボカドに多糖が特に多く含まれているというわけではない。しかしながら、ペルセイトールまたは7個の炭素原子で構成されるD−マンノヘプツロースなどの可溶性単糖の性質は極めて特殊なものである。
【0033】
アボカド由来の糖類の水溶性抽出物は、以下の一連の工程:
−有利にはアボカド果実から、アボカドを乾燥させた後に脂質(オイル)を抽出することによりアボカドオイルケークを得る工程;その後
−前記オイルケークを低温粉砕し、完全脱脂した後、デカントし、遠心分離して、C7糖に富んだ可溶性画分を回収する(ケークの除去)工程;
−前記工程から得られた前記可溶性画分をイオン樹脂で脱塩する工程;その後
−10000ダルトンの限外濾過を行う工程、および
−所望により、真空下で濃縮し、パッケージングする工程
を含む方法により得ることができる。
【0034】
この方法の第1段階は、果実を乾燥させることと、その後、オイルを抽出することからなる。果実をスライスして薄片とした後、当業者に公知の技術のいずれかによりそれを乾燥させることができる。それらの技術としては、熱風乾燥、凍結乾燥、または場合によっては浸透乾燥が挙げられる。一般に、温度は、使用する技術に関わらず、この乾燥工程中は80℃以下に維持することが有利である。本方法においては、適用の容易さとコスト的な理由で、薄膜として、熱気流下、70℃〜75℃間の温度での換気乾燥機での乾燥が好ましい。実施は、5時間〜72時間の間で様々であってよい。
【0035】
乾燥させた果実の脂質を、その後、連続スクリュープレスで機械的に抽出するか、あるいは、とりわけ特許出願FR2843027に記載されている方法に従うか、または超臨界COを利用する方法により、ヘキサンなどの溶媒を用いて、ソックスレー抽出装置(soxhelet extractor)か、もしくはデスメット(de Smet)(登録商標)型の連続バンド抽出装置で化学的に抽出する。この方法の主に重要な点として、オイル副産物が明らかに商品価値のある産物となっているということがある。これが脂質を機械抽出する方が好ましい理由である。乾燥および脱油を行った果実(オイルケークとも呼ばれる)に対して以下の工程:
−低温粉砕、
−特にアセトンおよび/またはエタノールでの完全脱脂、
−デカンテーション、その後のオイルケークの水による洗浄、
−遠心分離、可溶性画分の回収(ケークの除去)、
−イオン交換による脱塩、
−サイズ閾値10kDでの限外濾過、
−真空下での濃縮、保存剤の添加およびパッケージング
を行うことができる。
【0036】
一般に、最終的な水性抽出物は、0.1〜10重量%の乾燥体、有利には1〜7重量%の乾燥体、より有利には3〜5重量%の乾燥体を含み得る。乾燥体中のC7糖含量、すなわち、D−マンノヘプツロースとペルセイトールは、有利には総乾燥体重量に対して65〜90重量%である。上記の方法によって得られた5%乾燥抽出物を含む水溶液の平均分析データを表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
水溶性抽出物中の糖類の相対濃度(抽出物中の総乾燥体重量に対する重量)は、有利には以下の基準(HPLC、高速液体クロマトグラフィーによって決定された相対組成)に従う。
−D−マンノヘプツロース 5〜80%
−ペルセイトール 5〜80%
−サッカロース 10%未満
−グルコース 10%未満
−フルクトース 10%未満
【0039】
アボカド糖類の水溶性抽出物は、有利には総乾燥体重量に対して10〜80重量%のD−マンノヘプツロース、より有利には15〜70重量%のD−マンノヘプツロースを含む。アボカド糖類の水溶性抽出物は、有利には総乾燥体重量に対して20〜80重量%のペルセイトール、より有利には25〜70%重量%のペルセイトールを含む。
【0040】
好ましくは、水溶性抽出物中の糖類の相対組成(抽出物中の総乾燥体重量に対する重量)は、以下の基準(HPLCによって決定された相対組成)に従う。
−D−マンノヘプツロース 25〜60%
−ペルセイトール 25〜60%
−サッカロース 10%未満
−グルコース 10%未満
−フルクトース 10%未満
驚くべきことに、本発明者らは、アボカド糖類の抽出物中に存在しているD−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと少量の糖類(フルクトース、グルコース、サッカロース)との間の相乗作用を観察した。
【0041】
所望により、得られた抽出物を凍結乾燥して、完全に溶解する固体粉末(乾燥抽出物)を得てもよい。
本発明の有利な変形形態によれば、組成物は、アボカドのペプチド抽出物を、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30乾燥重量%、より有利には0.01〜20乾燥重量%、より有利には0.1〜15乾燥重量%、より有利には0.5〜10乾燥重量%、より有利には0.7〜8乾燥重量%、より有利には1〜5乾燥重量%の割合でさらに含んでなる。その際に相乗作用が認められることが有利である。
【0042】
本発明の組成物に添加されるアボカドのペプチド抽出物は、有利にはペプチド抽出物の乾燥体重量に対して2〜10重量%のα−アミン窒素を含んでなる。本発明において、「α−アミン窒素」とは、遊離α−アミン基の形態にあるペプチドの窒素含量のことを意味すると理解される。ペプチド中のα−アミン窒素含量から、タンパク質の加水分解度ならびにペプチドの平均分子量が推定可能である。
【0043】
より詳しくは、アボカドのペプチド抽出物は、以下の工程:
−有利にはアボカド果実から、アボカドを乾燥させた後、脂質を抽出することによりアボカドオイルケークを得る工程、その後
−前記オイルケークの低温粉砕と完全脱脂を行った後、そのケークのデカンテーション、遠心分離、および回収を行う工程、その後
−グルカナーゼの存在下で第一の加水分解を行った後、遠心分離して可溶性画分を除去する工程;
−1種または数種のプロテアーゼの存在下で第二の加水分解を行った後、遠心分離して沈殿を除去する工程;
−ナノフィルトレーションによりペプチド相を濃縮する工程;
−例えば活性炭の存在下で脱色し、単純濾過(10μm)を行った後、限外濾過(カットオフ限界10kD)を行う工程;最後に
−所望により、最終の除菌マイクロフィルトレーション(0.2μm)を行い、保存剤を添加し、パッケージングする工程
を含む方法によって得られ得る。
【0044】
アボカドのオイルケークを得る方法と脂質の抽出は、アボカドのペプチド抽出物およびアボカドの糖類の場合と同様に行うことが有利である。その後、乾燥および脱油を行った果実(オイルケークとも呼ばれる)に対して以下の工程:
−低温粉砕する工程
−特にアセトンおよび/またはエタノールを用いて完全脱脂する工程、
−デカントした後、オイルケークを水で洗浄する工程、
−遠心分離し、ケークを回収する工程、
−1種または複数のグルカナーゼの存在下で第1の加水分解を行う工程、
−遠心分離し、可溶性画分の除去を行う工程、
−1種または複数のプロテアーゼの存在下で第2の加水分解を行う工程、
−遠心分離し、残渣の除去を行う工程、
−ナノフィルトレーションにより濃縮する工程、
−とりわけ活性炭の存在下で脱色を行う工程、
−単純濾過(10μm)の後、限外濾過(カットオフ限界10kD)を行う工程、
−充填し、保存剤を添加する工程、
−最終の除菌マイクロフィルトレーション(0.2μm)を行う工程、
−保存剤を添加し、パッケージングする工程
を実施することができる。
【0045】
最終的な水性抽出物は、1〜60重量%の乾燥体、場合によっては3〜20重量%の乾燥体、好ましくは5〜6重量%の乾燥体を含み得る。所望により、得られた抽出物を凍結乾燥して、固体粉末(乾燥抽出物)を得ることもできるが、アボカドの最初のタンパク質に関しては完全水溶性ではない。α−アミン窒素含量は、乾燥体の重量に対して2〜10重量%、好ましくは5〜7重量%であり得る。乾燥体の重量に対して1.2重量%の乾燥抽出物を含有する水溶液のpHは、一般に3〜6、より有利には4〜5となる。
【0046】
本発明の有利な変形形態によれば、組成物は、ルピナスのペプチド抽出物を、組成物の総重量に対して、0.001〜30重量%の乾燥体、さらに有利には0.01〜10重量%の乾燥体の量でさらに含むことが有利である。本発明の組成物に添加されるルピナスのペプチド抽出物は、ペプチド抽出物の乾燥体重量に対して少なくとも70%、有利には少なくとも80重量%のペプチドを含んでなる。その際に相乗作用が認められることが有利である。
【0047】
特に、ルピナスのペプチド抽出物は、以下の工程:
−粉砕したルピナスのオイルケークまたはルピナスの微粉末を製造する工程;
−次に、溶媒抽出により脱脂する工程;
−可溶性のタンパク質画分とその配糖体画分を抽出するか、またはタンパク質を等電点で析出させる工程;
−必要であれば、タンパク質画分を分離する工程;
−タンパク質画分を酵素により加水分解し、場合によって濾過を行った後、ペプチド抽出物を回収する工程
を含む方法により得られる。
ペプチド抽出物を調製する方法は、Expanscience laboratoriesにより提出された仏国特許出願FR2792202に記載されている。
【0048】
さらに、本組成物は、皮膚軟化剤、水和剤、ケラチン合成の活性化剤、ケラトレギュレーター(keratoregulators)、角質溶解剤、皮膚バリア再構築剤(皮膚脂質合成活性化剤、PPARアゴニストまたはペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxysome Proliferator Activated Receptor))、ケラチノサイト分化活性化剤(レチノイド、calcidone(登録商標)、カルシウム)、抗生物質、抗菌薬、殺真菌薬、抗ウイルス薬、セボレギュレーター(sebo-regulators)(例えば、5−αレダクターゼ阻害剤、特にles laboratoires Expanscienceにより市販されている、活性型5−α Avocuta(登録商標)など)、免疫調節剤(タクロリムス、ピメクロリムス、オキサゾリンなど)、保存剤、抗そう痒薬、無痛化剤、サンフィルターおよびサンスクリーン、抗酸化剤、増殖因子、治癒薬または栄養分子、薬剤および抗炎症薬、ならびに植物油不鹸化物を含んでなる化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含み得る。
【0049】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能なケラチン合成活性化剤は、有利にはレチノイド、ルピナスのペプチド(Silab社により市販)、角質層または顆粒層の重要なタンパク質(ケラチン)である。
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な抗生物質は、有利にはフシジン酸(fucidic acid)、ペニシリン、テトラサイクリン、プリスチナマイシン(pristinamycine)、エリスロマイシン(erythromycine)、クリンダマイシン(clindamycine)、ムピロシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンである。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な抗ウイルス薬は、有利にはアシクロビルおよびバラシクロビルである。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な抗そう痒薬は、有利にはグリシン、ルピナスの糖類および/またはペプチド、シクロセラミド(登録商標)(オキサゾリン誘導体)である。
【0050】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な無痛化剤は、有利にはαビサボロール、甘草誘導体である。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能なケラトレギュレーターは、有利にはαヒドロキシ酸およびそれらの誘導体である。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な角質溶解剤は、特にサリチル酸およびその誘導体である。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な抗酸化剤は、有利にはビタミン(C、E)、微量元素(銅、亜鉛、セレン)である。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な増殖因子は、有利にはベカプレルミンおよびTGF−β(形質転換増殖因子β)である。
【0051】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な治癒薬は、有利にはビタミンA、パンテノール、Avocadofurane(登録商標)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、マデカシン酸またはアシアチン酸である。
【0052】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと併用可能な薬剤は、有利にはアトピー(atopis)(コルチコイド、皮膚軟化剤)、座瘡(抗生物質、過酸化ベンゾイル、レチノイド、アゼライン酸、ビタミンPP、亜鉛、サイクリン)、湿疹(免疫調節剤、皮膚軟化剤、サーモン油、ルリヂサ油、プレバイオティクス)、乾癬(コルチコイド、カルシポトリオール、カルシトリオール、タザロテン、ジュニパータール油、アシトレチン(acitretine)、PUVA療法)の予防および/または処置のための、局所投与または経口投与に適した薬剤である。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールとの併用が可能な抗炎症薬は、有利にはコルチコイドなどのステロイド系抗炎症薬(AIS)または非ステロイド系抗炎症薬である。
【0053】
本発明において、表皮の重要な脂質の合成を刺激することを可能とし、かつ、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能な皮膚バリア再構築剤は、有利にはヒマワリのリノール酸濃縮物(Laboratoires Expanscienceから市販されている薬剤Soline(登録商標)など)(国際特許出願WO01/21150参照)、植物油不鹸化物(Avocadofurane(登録商標)など)(国際特許出願WO01/21150参照)、アゴニストPPAR(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)である。これらの再構築剤は、有利には組成物または薬剤の総重量に対して0.001〜30重量%の割合で存在する。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールとの併用が可能な抗真菌薬は、有利にはエコナゾールおよびケトコナゾールである。
【0054】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールとの併用が可能な抗菌保存剤は、例えば、トリクロサン、クロルヘキシジン、第四級アンモニウムである。本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能な免疫調節剤は、有利にはタクロリムス、ピメクロリムスおよびオキサゾリンである。
【0055】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能なオキサゾリンは、有利には2−ウンデシル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−1,3−オキサゾリン、2−ウンデシル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン、(E)−4,4−ジメチル−2−ヘプタデク−8−エニル−1,3−オキサゾリン、4−ヒドロキシメチル−4−メチル−2−ヘプタデシル−1,3−オキサゾリン、(E)−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−2−ヘプタデク−8−エニル−1,3−オキサゾリン、2−ウンデシル−4−エチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−オキサゾリンからなる群から選択されるオキサゾリンである。さらに有利には、前記オキサゾリンが2−ウンデシル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン(OX−100またはシクロセラミド(登録商標)と呼ばれる)である。
【0056】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能な植物油不鹸化物を含んでなる化合物は、有利にはアボカドのフラン脂質、アボカドおよびダイズの不鹸化物、ルピナス油の濃縮物、ヒマワリ油の濃縮物ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0057】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能なアボカドのフラン脂質は、有利には天然2−アルキルフラン、特にLaboratoires Expanscienceから市販されているAvocadofurane(登録商標)(国際特許出願WO01/21605に記載されている方法によって得ることができる)である。
【0058】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能なアボカドおよびダイズの不鹸化物は、有利にはアボカドのフラン不鹸化物とダイズの不鹸化物の約1/3〜2/3の割合での混合物である。アボカドおよびダイズの不鹸化物は、さらに有利にはLaboratories Expanscienceから市販されている製品Piascledine(登録商標)である。
【0059】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能なルピナス油の濃縮物は、有利にはルピナス油、有利には国際特許出願WO98/47479に記載されているものなどの、ハウチワマメ(sweet white lupine)油、の分子蒸留によって得られる濃縮物である。それらは約60重量%の不鹸化物を含んでいるのが有利である。
【0060】
本発明において、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと、有利には相乗作用を伴って併用が可能なヒマワリ油の濃縮物は、有利には、Laboratoires Expanscienceから市販されている有効成分Soline(登録商標)(国際特許出願WO01/21150参照)などのヒマワリ油のリノール酸濃縮物である。
【0061】
本発明の組成物は、局所投与に、また、経口投与、直腸投与、膣投与、鼻腔投与、耳内投与または気管支投与から非経口投与までに適した種々の製剤の形態に処方することができる。これらの種々の製剤は局所投与に適していることが好ましく、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、オイル剤、パッチ剤、スプレー剤または他のあらゆる外用薬が挙げられる。本発明の化合物および組成物の投与様式、薬量学ならびに最適な剤形は、特に、患者または動物に適した皮膚科的または獣医学的(veterinarial)薬剤処置の確立を一般に検討する判定基準(例えば、患者または動物の齢および体重、全身状態の重大性、処置に対する許容度、副作用および皮膚のタイプなど)に従って決定することができる。所望の投与形に応じて、本発明の組成物および/または有効化合物はまた、少なくとも1種類の薬学上、特に皮膚科的に許容される賦形剤も含み得る。外用局所投与に適した賦形剤を使用するのが好ましい。本発明の組成物は、当業者には公知である、増粘剤、保存剤、香料、着色剤、ミネラルフィルターまたは薬液用フィルター、保湿剤、鉱水などから選択される少なくとも1種類の補助剤をさらに含み得る。
【0062】
本発明はまた、薬剤の総重量に対して0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロースおよび0.001〜30重量%のペルセイトール、さらに有利には0.01〜10重量%のD−マンノヘプツロースおよび0.01〜10重量%のペルセイトールと薬学上適当な賦形剤とを含んでなる薬剤または獣医学的組成物に関する。
【0063】
本発明の薬剤または獣医学的組成物は、局所投与に、また、経口投与、直腸投与、膣投与、鼻腔投与、耳内投与または気管支投与に、また、非経口投与に適した種々の製剤の形態に処方することができる。本発明の薬剤または獣医学的組成物の投与様式、薬量学および最適な剤形は、特に、患者に適した皮膚科的薬剤処置または獣医学的処置の確立を一般に検討する判定基準に従って決定することができる。
【0064】
本発明はまた、組成物の総重量に対して0.001〜30重量%のペルセイトールおよび0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロース、さらに有利には0.01〜10重量%のペルセイトールおよび0.01〜10重量%のD−マンノヘプツロースを含んでなる美容組成物に関する。本発明の有利な変形形態によれば、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールの供給源はアボカド由来の糖の水溶性抽出物であり、これは上記のような方法によって得ることができる。実際には、アボカドのD−マンノヘプツロース、ペルセイトールおよび微量糖(フルクトース、グルコース、サッカロース)の間の相乗作用が存在する。
【0065】
本発明の有利な変形形態によれば、組成物はさらに、アボカドのペプチド抽出物を、有利には相乗作用量で含んでなる。アボカドのペプチド抽出物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30乾燥重量%、より有利には0.01〜10乾燥重量%の量で存在する。本発明の組成物に添加されるアボカドのペプチド抽出物は、有利にはペプチド抽出物の乾燥体重に対して2〜10重量%のα−アミン窒素を含んでなる。このペプチド抽出物は上記のような方法によって得ることができる。
【0066】
本発明の有利な変形形態によれば、組成物はさらに、ルピナスのペプチド抽出物を、有利には相乗作用量で含んでなる。ルピナスのペプチド抽出物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30乾燥重量%、より有利には0.1〜10乾燥重量%の量で存在する。本発明の組成物に添加されるルピナスのペプチド抽出物は、ペプチド抽出物の乾燥体重量に対して少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%のペプチドを含んでなる。このペプチド抽出物は上記のような方法によって得ることができる。
【0067】
さらに、組成物は、皮膚バリア再構築剤および上記のような植物油不鹸化物含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を、有利には相乗作用量で含み得る。特に、美容組成物は、Laboratoires Expanscienceから市販されているSoline(登録商標)、Avocadofurane(登録商標)およびpiascledine(登録商標)からなる群から選択される有効成分を含み得る。本発明の組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30重量%の少なくとも1種類の皮膚バリア再構築剤を含んでなる。
【0068】
本発明の化粧料組成物は、局所投与に、また、経口または直腸投与、膣投与、尿道投与、耳内投与、鼻腔投与もしくは気管支投与に適した種々の製剤の形態に処方することができる。これらの種々の製剤は局所投与に適していることが好ましく、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、オイル剤、パッチ剤、スプレー剤または他のあらゆる外用薬が挙げられる。所望の投与形に応じて、本発明の組成物および/または有効化合物は、少なくとも1種類の化粧料的に許容される賦形剤も含み得る。本発明の化粧料組成物はさらに、当業者には公知である、増粘剤、保存剤、香料、着色剤、ミネラルフィルターまたは薬液用フィルター、保湿剤、鉱水などから選択される少なくとも1種類の美容補助剤を含み得る。
【0069】
本発明はまた、環境の攻撃によって弱くなった皮膚バリアの障害を呈し、皮膚の発赤を示しているか、または非病的免疫平衡異常を示している、敏感、炎症を起こした、アレルギー性、乾燥、老化した、不耐性皮膚および/または粘膜の美容的処置法であって、本発明の組成物を皮膚および/または粘膜に塗布することからなることを特徴とする方法にも関する。
【0070】
最後に、本発明は、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと食用に適した許容される賦形剤を含んでなる栄養補給用組成物に関する。本発明の栄養補給用組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロース、さらに有利には0.01〜10重量%のD−マンノヘプツロースを含んでなる。本発明の栄養補給用組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30重量%のペルセイトール、さらに有利には0.01〜10重量%のペルセイトールを含んでなる。本発明の栄養補給用組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30重量%のペルセイトールと0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロース、さらに有利には0.01〜10重量%のペルセイトールと0.01〜10重量%のD−マンノヘプツロースを含んでなる。本発明の有利な変形形態によれば、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールの供給源は、アボカド由来の糖の水溶性抽出物であり、これは上記のような方法によって得ることができる。
【0071】
本発明の有利な変形形態によれば、組成物はさらに、アボカドのペプチド抽出物を、有利には相乗作用量で、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30%の乾燥体量で含んでなる。本発明の組成物に添加されるアボカドのペプチド抽出物は、有利にはペプチド抽出物の乾燥体重量に対して2〜10重量%のα−アミン窒素を含んでなる。このペプチド抽出物は上記のような方法によって得ることができる。
【0072】
本発明の有利な変形形態によれば、組成物はさらに、ルピナスのペプチド抽出物を、有利には相乗作用量で、有利には組成物の総重量に対して0.001〜30%の乾燥体量で含んでなる。本発明の組成物に添加されるルピナスのペプチド抽出物は、ペプチド抽出物の乾燥体重量に対して少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%のペプチドを含んでなる。このペプチド抽出物は上記のような方法によって得ることができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0073】
実施例1:アボカド由来の糖の水溶性抽出物の調製
ハス種のアボカド生果50kgを、核を含め、ディスクスライサーにより2〜5mmの厚さに薄切りにした。乾燥装置は温度調節式熱風炉であった。薄切りにしたアボカドを段状のラックに4〜5cmの厚さで並べた。乾燥温度は80℃に設定し、乾燥時間は48時間とした。乾燥させたところで、果実を冷圧した。この操作はsmall Komet(登録商標) laboratory pressを用いて行った。
【0074】
次に、この脱脂した果実(オイルケーク)4kgを低温粉砕した後、エタノール25リットルの存在下で還流させながら抽出した。この脂質を除いた粉末を、次に、ブフナー漏斗で濾過することにより回収し、炉内で50℃にて5時間乾燥させた。
【0075】
次に、オイルケークを脱塩水(10リットル)で洗浄した後、遠心分離により分離した。この可溶性画分(液体)を精製のために取り、それを以下の方法に従って濃縮した。
・イオン交換樹脂による脱塩:
OH樹脂に通した後、H樹脂に通すことによるヘプツロースの脱塩
・10000Daでの限外濾過:限外濾過は、カットオフ閾値10kDaの4つのメンブランを備えた系を用いて実施した。
【0076】
・真空濃縮:精製した抽出物をエバポレーターにより乾燥体レベル4%まで真空濃縮する。
・パッケージング:抽出物の濃度を乾燥体5%に調整し、保存剤を添加した後、それを、閾値0.2μmのメンブランを用いて無菌条件下で濾過し、パッケージングする。
表3は、上記方法に従って調製された、アボカド由来のC7糖における抽出物(乾燥体5%)の組成を示す。
【0077】
【表3】

【0078】
他の2つの抽出物も同じ方法に従って調製し、そのpH、吸光度およびC7糖含量を下表4に示す。C7糖含量は、HPLCにより分析したペルセイトールとD−マンノヘプツロースの合計に相当する。
【0079】
【表4】

【0080】
実施例2:アボカドのペプチド抽出物の調製
ハス種のアボカド生果50kgを、核を含め、ディスクスライサーにより2〜5mmの厚さに薄切りにした。乾燥装置は温度調節式熱風炉であった。薄切りにしたアボカドを段状のラックに4〜5cmの厚さで並べた。乾燥温度は80℃に設定し、乾燥時間は48時間とした。乾燥させたところで、果実を冷圧した。この操作はsmall Komet(登録商標) laboratory pressを用いて行った。次に、この脱脂した果実(オイルケーク)4kgを低温粉砕した後、エタノール25リットルの存在下で還流させながら抽出した。この脂質を除いた粉末を、次に、ブフナー漏斗で濾過することにより回収し、炉内で50℃にて5時間乾燥させた。 次に、このオイルケークを脱塩水(10リットル)で洗浄した後、遠心分離により分離した。固形画分を水溶液に取り、HClでpH5まで酸性化し、その後、乾燥体に対して2%セルラーゼと接触させた。加水分解時間は6時間とした。
【0081】
次に、この混合物を補助剤(2.5重量%/v)の存在下で遠心分離した。その後、回収した沈渣に対して、0.5%Alcalase(登録商標)(プロテアーゼ種に由来する市販の酵素)の存在下、pH値8.0、温度55℃で2時間、第二の加水分解を行った。加水分解は、2M水酸化ナトリウムを継続的に添加することにより一定のpH値に維持した。最後に、85℃で10分間加熱することによりプロテアーゼを変性させた。
【0082】
得られた混合物を遠心分離し、上清液を7.5μmのメンブランで濾過した。その後、カットオフ10kDのメンブランで限外濾過を行った。
得られた乾燥体20%の粗ペプチド抽出物を、1%活性炭Norit(登録商標)の存在下で脱色した後、再び7.5μmのメンブランで濾過した。次に、この脱色された抽出物のマイクロフィルトレーション(0.2μm)を行い、乾燥体濃度5%に希釈した後、保存剤を添加し(Phenonip(登録商標)0.4重量%/v)最後に生成物をパッケージングした。本方法により得られたアボカドの水溶性ペプチド抽出物(乾燥体5%)の特性を下表5に示す。
【0083】
【表5】

他の抽出物も同じ方法に従って調製し、その分析データを下表6に示す。
【0084】
【表6】

【0085】
N×6.25は、サンプルの総窒素(N)量に、分析するタンパク質に特異な係数を掛けたものである。分析タンパク質に関する係数が正確に分からない場合は、便宜上、係数6.25を使用する。
【0086】
下表7に示すアミノグラムでは、値は分析したアミノ酸の総重量に対する重量%で示す。
アスパラギン酸およびグルタミン酸の値には、それぞれアスパラギン含量およびグルタミン含量も含む。
【0087】
【表7】

【0088】
実施例3〜7では、特に断りのない限り、パーセンテージは乾燥体の総重量に対する重量で示す。
【0089】
実施例3:アボカドの糖類によるβ−デフェンシン−2の誘導
I.細胞の接種(J0):
これまでに刊行物"Human β-Defensin-2 production in Keratinocytes is regulated by Interleukin-1, Bacteria, and the State of Differentiation”, Alice Y. Liu et al,, The Society for Investigative Dermatology, vol. 118, No. 2, Feb. 2002, pages 275 to 281に記載されているように、健常なヒトのケラチノサイトを、96ウェルプレート(plaque)中、カルシウム豊富な(終濃度1.3mM)な特殊な培地の存在下に接種した(約20000細胞/ウェル)。
II.細胞の処理(JI):
37℃、5%CO下で24時間インキュベーションした後、
→200μl/ウェルのPBS(生理食塩水中、リン酸バッファー)で2回すすぎ、
→細胞を以下のもの200μl/ウェル(Ca++添加培地中)によって刺激する。
・乾燥体濃度0.5、0.05および0.005w/wのアボカド糖類水溶性抽出物
・100ng/ml濃度のIL−1β(hBD−2の誘導の陽性対照)
III.処理の終了(J2):ELISA
インキュベーション24時間後、hBD−2の誘導を、特異的抗体(ヒトBD2に対するヤギポリクローナル抗体;Abcam;ab9871)を用いてELISA法により評価した。
乾燥重量に対して40%のD−マンノヘプツロースと40%のペルセイトールを含むアボカド糖類水溶性抽出物バッチAで得られた結果を下表8にまとめる。
【0090】
【表8】

hBD−2の生産量は本発明のアボカド糖類水溶性抽出物バッチAにより上昇することが認められた。
【0091】
乾燥重量に対して10%のD−マンノヘプツロースと70%のペルセイトールを含むバッチBで得られた結果を下表9にまとめる。
OD=光学濃度
【0092】
【表9】

hBD−2の生産はアボカド糖類水溶性抽出物バッチBにより用量依存的に上昇することが認められた。
【0093】
実施例4:上皮細胞におけるhBD−2の発現に対するアボカドの糖の効果
1.細胞
口腔研究で一般に用いられているヒト口腔癌由来の上皮細胞系統であるKB細胞(ATCC CCL−17)を96ウェルプレートに接種し、10%VFS(ウシ胎児血清)+抗生物質のGlutamax(商標)1を含むRPMI1640(Roswell Park Memorial Institute Medium)中で培養した。
2.処理
インキュベーション24時間後、培養培地を除去し、細胞層をPBSで2回すすいだ。
次に、これらの細胞を上記で定義した条件下で24時間および48時間処理した。
・対照細胞:培地のみ
・TNFα(Sigmaから市販されている)100ng/ml
・アボカド糖水溶性抽出物(40%D−マンノヘプツロース/40%ペルセイトール)0.005〜0.05および0.5w/w(乾燥体の)(バッチA)
3.処理の終了
・細胞に対するELISAによる抗微生物ペプチドの分析
種々の処理条件下で48時間インキュベーションした後、KB細胞内に存在するβ−デフェンシン−2および3ならびにLL−37を細胞に対するELISA法により分析した。
各ウェルの細胞総数を求めるため、同じ条件下で処理した細胞に対し、並行してMTTによる試験を行った。
【0094】
・結果の有用性
各処理条件について、OD450 AMP(抗微生物ペプチド)をOD570 MTTで割り、生細胞1個当たりに生産されたAMPの量を算出した。
各条件について平均値と標準偏差を算出し、種々のAMPの誘導を、対照細胞に対する増加率%として算出した。
【0095】
4.結果
HBD−2の誘導
ここでAMPの誘導の陽性対照として用いたTNF−αは、48時間の時点でKB細胞によるhBD−2生産に239%という有意な増加を生じさせる。アボカド糖水溶性抽出物もまた、KB細胞におけるhBD−2の生産に統計学的に有意な増加をもたらす(表10の結果を参照)。
【0096】
【表10】

【0097】
HBD−3の誘導
ここでAMPの誘導の陽性対照として用いたTNF−αは、48時間の時点でKB細胞によるhBD−3生産に30%という有意な増加を生じさせる。この試験によりこのモデルを立証する。アボカド糖水溶性抽出物もまた、KB細胞におけるhBD−3の生産に統計学的に有意な増加をもたらす(表11の結果を参照)。
【表11】

LL−37の誘導
ここでAMPの誘導の陽性対照として用いたTNF−αは、48時間の時点でKB細胞によるLL−37生産に88%という有意な増加を生じさせる。この試験によりこのモデルを立証する。アボカド糖水溶性抽出物もまた、KB細胞におけるLL−37の生産に統計学的に有意な増加をもたらす(表12の結果を参照)。
【0098】
【表12】

【0099】
結果として、アボカド糖(アボカド糖水溶性抽出物)は、KB型の上皮細胞において抗微生物ペプチド、とりわけhBD−2、−3およびLL−37の合成を誘導することができることが示された。
【0100】
実施例5:炎症性分子に対するアボカド糖の作用
方法:
健常なヒトのケラチノサイトを、これまでに刊行物"Human β-Defensin-2 production in Keratinocytes is regulated by Interleukin-1, Bacteria, and the State of Differentiation”, Alice Y. Liu et al., The Society for Investigative Dermatology, vol. 118, No, 2, Feb. 2002, pages 275-281に記載されているように、24ウェルプレート中、カルシウム豊富な(終濃度1.3mM)な特殊な培地の存在下に接種した(約50000細胞/ウェル)。
【0101】
これらの細胞を0.05%w/wのアボカド糖(バッチA、40%マンノヘプツロース/40% ペルセイトール)の存在下で24時間処理した。炎症性サイトカインIL−1β、IL−8およびTNF−αを、培養の上清液においてELISA法(Kits R & D System)により分析した。細胞の生存率をニュートラルレッド試験により測定した。結果は、生産されるサイトカインの量が生細胞の量に転換されるような、ニュートラルレッドOD値に対して示されている(表13、14、15)。
結果:
【0102】
【表13】

【0103】
【表14】

【0104】
【表15】

【0105】
結論:アボカド糖(アボカドの糖の水溶性抽出物)は、通常β−デフェンシン(IL−1、IL−8、TNF−α)と同時発現する炎症性分子の生産を誘導しない。従って、このアボカド糖はAMPの誘導因子であるが、炎症性は伴わない。
【0106】
実施例6:アボカド糖の抽出物中に存在する種々の糖によるHBD−2の合成の調整
実施例3と同様の試験を、
−フルクトース(5%)、グルコース(5%)およびサッカロース(3%)の混合物;
−D−マンノヘプツロース(40%);
−ペルセイトール(40%);
−フルクトース(5%)、グルコース(5%)、サッカロース(3%)およびD−マンノヘプツロース(40%)の混合物;
−フルクトース(5%)、グルコース(5%)、サッカロース(3%)およびペルセイトール(40%)の混合物;
−フルクトース(5%)、グルコース(5%)、サッカロース(3%)、D−マンノヘプツロース(40%)およびペルセイトール(40%)の混合物;および
−アボカド糖の抽出物(バッチA)
を用いて行った。
【0107】
アボカド糖の抽出物を乾燥体の総重量に対して40重量%のD−マンノヘプツロースおよび40重量%のペルセイトールを含んでなる。結果を下表16に示す。
【0108】
【表16】

【0109】
アボカドの微量糖(フルクトース、グルコースおよびサッカロース)には、HBD−2の合成に対する作用はない。同量(乾燥体重量に対して40重量%)ではD−マンノヘプツロースがペルセイトールよりも活性が高い。D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールをアボカドの微量糖(フルクトース、グルコースおよびサッカロース)と混合すると、相乗作用が見られる。
【0110】
フルクトース、グルコース、サッカロース、ペルセイトールおよびD−マンノヘプツロースの混合物(再構成混合物)と実施例1で得られたアボカド糖水溶性抽出物は同等の活性を有する。
【0111】
実施例7:市販のD−マンノヘプツロースおよびペルセイトールの活性
実施例3と同様の試験を市販のD−マンノヘプツロースおよびペルセイトールを用いて行った。結果を下表17に示す。
【0112】
【表17】

【0113】
個別に試験したところ、D−マンノヘプツロースおよびペルセイトールはhBD−2の生産を誘導することができる。
【0114】
実施例8:アトピー性皮膚炎のin vitroモデルに関する、IL−4により調整されるhBD−2の発現に対するアボカド糖の作用
健常なヒトのケラチノサイトを実施例3に記載のように接種した。
37℃、5%CO下で24時間インキュベーションした後、培養培地を除去し、細胞層をPBSで2回すすいだ。次に、これらの細胞を以下に定義する条件下で24時間細胞を処理した。
【0115】
−対照細胞:培地のみ
−IL−1β 100ng/ml(hBD−2の誘導に関する陽性対照)
−IL−4 50ng/ml
−アボカド糖水溶性抽出物(バッチA)乾燥体の0.5w/w
−IL−1β 100ng/mlおよびIL−4 50ng/ml
−IL−4 50ng/mlおよびアボカド糖水溶性抽出物(バッチA)乾燥体の0.5w/w
−IL−1β 100ng/mlおよびIL−4 50ng/mlおよびアボカド糖水溶性抽出物(バッチA)乾燥体の0.5w/w
【0116】
処理が終了したところで、hBD−2の誘導を細胞に対するELISA法により評価し、それと並行して、各ウェルの細胞総数を求めるため、同じ条件下で処理した細胞に対してMTTによる試験を行った。そして、各条件について、OD450 hBD−2をOD570 MTTで割り、生細胞1個当たりに生産されたhBD−2の量を求めた。
結果を下表18に示す。
【0117】
【表18】

【0118】
陽性対照IL−1βは、対照細胞に対して、hBD−2の合成に有意な増加をもたらす(+80%)。
同様に、アボカド糖水溶性抽出物バッチAも、hBD−2の合成を増加させる(+48%)。
IL−4単独では、ケラチノサイトが発現するhBD−2の量に影響がない。
IL−4の存在下で、IL−1βにより誘導されるhBD−2の合成は32%有意に阻害される。
【0119】
これらの条件下では、IL−1β+IL−4にバッチAを加えると、この場合もhBD−2の合成が高まり、IL−1β+IL−4に対して152%という有意な増加が見られる。
【0120】
結論:
アトピー性皮膚炎は、抗微生物ペプチド(hBD−2、hBD−3、LL−37)の欠損を特徴とする。この欠損により、とりわけ、TH1/TH2バランスの調節不全とサイトカインTH2(IL−4およびIL−13)の過剰生産が説明できる。このモデルにおいて、本発明者らは、アボカド糖水溶性抽出物がIL−4により誘導されるhBD−2の阻害に対抗することができることを示した。従って、アボカド糖はアトピー性皮膚炎を抑える目的で注目される。
【0121】
実施例9:本発明の美容処方物
抗座瘡クリーム 1番
イソノナン酸イソノニル 7.000
ジ−C12−13アルキルマレエート 7.000
ステアリン酸イソセチル 5.000
ブチレングリコール 3.000
イネ(Oryza sativa) 2.500
アボカド糖水溶性抽出物 3.000
ジカプリリルエーテル 2.000
シランジオールのサリチル酸塩 2.000
アラキン(Arachnidic)アルコール 1.650
トロメタミン 1.180
セチルアルコール 1.000
サリチル酸 1.000
アスコルビルグルコシド 1.000
グリシン 1.000
酢酸トコフェリル 1.000
ビフェニルアルコール 0.900
スクアラン 0.790
クエン酸ナトリウム 0.660
コポリマーPPG−12/SMDI 0.500
アラキジルグルコシド 0.450
香料 0.400
スクレロチウムガム 0.160
セテアリルアルコール 0.130
クエン酸 0.110
セピゲル305 0.100
保存剤系 適量
水 加えて100とする
Seppic社から市販されている製品
座瘡皮膚用フォーミングウォッシュエマルション 1番
水 加えて100とする
Arlatone duo 20.00000
ココグルコシド 12.00000
グアーヒドロキシプロピル 2.00000
アボカド糖水溶性抽出物 1.00000
パルミチン酸(palmate)水素化グリセリルPEG−200 1.10000
PEG−7グリセリルココエート 1.10000
シランジオールのサリチル酸塩 1.00000
コカミドDBA 1.00000
カプリロールグリシン 0.50000
ソルビン酸カリウム 0.50000
ポリクオタニウム10 0.40000
香料 0.40000
クエン酸 0.30000
亜鉛PCA 0.20000
Quimasso社から市販されている製品
座瘡皮膚用フォーミングウォッシュエマルション 2番
水 加えて100とする
Arlatone duo 20.00000
ココグルコシド 12.00000
グアーヒドロキシプロピル 12.00000
アボカド糖水溶性抽出物 2.00000
パルミチン酸水素化グリセリルPEG−200 1.10000
PEG−7グリセリルココエート 1.10000
シランジオールのサリチル酸塩 1.00000
コカミドDEA 1.00000
グリシンのカプリロール 0.50000
ソルビン酸カリウム 0.50000
ポリクオタニウム10 0.40000
香料 0.40000
クエン酸 0.30000
亜鉛PCA 0.20000
Quimasso社から市販されている製品
練り歯磨き
水 加えて100とする
アボカド糖水溶性抽出物 2.00
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.75
フッ化ナトリウム 0.10
70%ソルビトール 35
高研磨合成シリカ 13
低研磨合成シリカ 5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.6
ラウリル硫酸ナトリウム 1
メントールアロマ 0.85
二酸化チタン 0.5
灰汁 0.5
シクラミン酸ナトリウム 0.3
メントール 0.15
ナトリウムサッカライド 0.07
口内洗浄剤
ACTMP 193(登録商標)
(ルピナス ペプチド) 2.00
クレモホール RH40(登録商標) 0.30
グリセリン 15
ナトリウムサッカライド 0.03
アボカド糖水溶性抽出物 1.00
ユーカリミントアロマ 0.08
POBA 0.20
ソルビン酸カリウム 0.50
水 加えて100とする

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテリシジンファミリーおよび/またはβ−デフェンシンファミリーの抗微生物ペプチド、有利にはhBD−2の増産により先天性免疫および/または獲得免疫の修飾に関連する疾病を処置および/または予防することを目的とする薬剤または獣医学的組成物の製造のための、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと適当な薬学上許容される賦形剤とを含んでなる組成物の使用。
【請求項2】
エラスターゼの特異的阻害剤、特にエラフィン(SKALP)などの抗微生物ペプチドの増産により先天性免疫および/または獲得免疫の修飾に関連する疾病を処置および/または予防すること目的とする薬剤または獣医学的組成物の製造のための、D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールと適当な薬学上許容される賦形剤とを含んでなる組成物の使用。
【請求項3】
前記疾病が、グラム陽性菌および/もしくはグラム陰性菌、真菌、酵母またはウイルスなどの微生物の存在に関連している、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記疾病が、
特に毛包炎、ふけ症、脂漏過剰、せつ、膿瘍、膿痂疹またはひょう疽(panaris)からなる群から選択される皮膚およびファネラエ(phanerae)の感染症;
アトピー性皮膚炎、アトピー性および/または接触性湿疹、乾癬、座瘡ならびに皮膚の刺激状態などの炎症性皮膚疾患;
Th1/Th2バランスの修飾に関連する疾病;
IL−4および/またはIL−13などサイトカインの合成の修飾に関連する疾病;または
熱傷
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記疾病が、過敏感反応性皮膚、アトピー性皮膚、乾燥皮膚または老化皮膚などの、皮膚(cuteaneous)バリアの欠如に関連する病態、または環境からの攻撃によって弱くなった皮膚に関連する病態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
薬剤が、
健康な、乳児および小児の未熟な皮膚;
病的状態の、乳児および小児の未熟な皮膚;または
成人または高齢者の、健康な皮膚または病的状態の皮膚
の保護に適している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
薬剤が、潰瘍および痂皮などの正常または病的な瘢痕形成における治癒プロセスの増進に適している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
薬剤が、歯周病(parodontal)の処置および/または予防を目的とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
薬剤が、関節炎などの関節の炎症性病態の処置および/または予防を目的とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
薬剤が、粘膜、特に膣、腸、呼吸器、鼻腔または耳の粘膜の感染症の処置および/または予防を目的とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
薬剤が、視覚系の感染症の処置および/または予防を目的とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
組成物が、その総重量に対して0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロースおよび/またはその総重量に対して0.001〜30重量%のペルセイトールを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
D−マンノヘプツロースおよび/またはペルセイトールの供給源が、有利には以下の一連の工程:
有利にはアボカド果実から、アボカドを乾燥させた後に脂質を抽出することにより、アボカドオイルケークを得る工程;その後
前記オイルケークを低温粉砕し、完全脱脂した後、デカントし、遠心分離して、C7糖に富んだ可溶性画分を回収する(ケークの除去)工程;
前記工程から得られた前記可溶性画分をイオン樹脂で脱塩する工程;その後
10000ダルトンの限外濾過を行う工程、および
真空下で濃縮し、パッケージングする工程
を含む方法により得られる、アボカドの糖の水溶性抽出物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
アボカドの糖の水溶性抽出物が、抽出物の総乾燥体重量に対する重量として(HPLCにより測定した相対組成):
−D−マンノヘプツロース 5〜80重量%
−ペルセイトール 5〜80重量%
−サッカロース 10%重量未満
−グルコース 10%重量未満
−フルクトース 10%重量未満
を含んでなる、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
組成物が、アボカドのペプチド抽出物、特にペプチド抽出物の乾燥体重量に対して2〜10重量%のα−アミン窒素を含むアボカドのペプチド抽出物、をさらに含んでなる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
薬剤の総重量に対して0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロースおよび0.001〜30重量%のペルセイトールと、適当な薬学上許容される賦形剤とを含んでなる、薬剤。
【請求項17】
前記組成物の総重量に対して0.001〜30重量%のD−マンノヘプツロースおよび0.001〜30重量%のペルセイトールと、それぞれ、適当な美容的に許容される賦形剤または食物性賦形剤とを含んでなる、美容組成物または栄養補給用組成物。
【請求項18】
アボカドのペプチド抽出物をさらに含んでなる、請求項17に記載の美容または栄養補給用組成物。
【請求項19】
環境の攻撃によって弱化された皮膚バリアの障害を呈して、皮膚の発赤を示しているか、または免疫学的な非病的平衡異常を示している、敏感、炎症、アレルギー性、乾燥、老化、不耐性の皮膚および/または粘膜の美容的処置法であって、請求項17または請求項18に記載の組成物を皮膚および/または粘膜に塗布することからなる、処置法。

【公表番号】特表2007−535523(P2007−535523A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510081(P2007−510081)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001075
【国際公開番号】WO2005/115421
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(503028525)ラボラトワール エクスパンシアンス (12)
【Fターム(参考)】