光モジュール
【課題】ビーム並行度が良好で集光性の高いレーザビームが一体化された発光素子を提供する。
【解決手段】凸面からレーザ光を出射させ、レーザ光の光軸が通過する第1レンズ114を備えた水平共振器面発光構造を備えたレーザ素子と、前記第1レンズ114を通過したレーザ光が通過する第2レンズ119とを備え、前記第2レンズ119を設けた面に対向する面と該第1のレンズ114を設けた面がレーザ光に対し透明な第1接着部材120により接着されていることを特徴とする光モジュール。
【解決手段】凸面からレーザ光を出射させ、レーザ光の光軸が通過する第1レンズ114を備えた水平共振器面発光構造を備えたレーザ素子と、前記第1レンズ114を通過したレーザ光が通過する第2レンズ119とを備え、前記第2レンズ119を設けた面に対向する面と該第1のレンズ114を設けた面がレーザ光に対し透明な第1接着部材120により接着されていることを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レンズが集積された半導体レーザ素子を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズが集積されたレンズ集積複合光学素子について、特許文献1から特許文献3に記載された従来技術があった。
【0003】
特許文献1に記載された構造を図17に示す。複数の面発光型レーザが配列された面発光型レーザアレイ基板と、面発光型レーザアレイ基板に一体に形成され、面発光型レーザに対応する位置にレンズが形成されたレンズアレイ基板と、を備えている。この面発光型レーザアレイ基板及びレンズアレイ基板は、フォトプロセスにより精密に製造される。レンズアレイ基板は、面発光型レーザアレイ基板上に直接形成され、さらに各面発光型レーザアレイの配列に対応してレンズが配置されている。したがって、光学調整をすることなく、面発光型レーザアレイ基板とレンズアレイ基板とを精密に位置合わせして、そのずれも防止することができるとされている。
特許文献2に記載された構造を図18に示す。複数の面発光型素子を平面上に配列させた構成をもつ第一の集合体及び複数の光学素子を平面上に配列させた構成をもつ第二の集合体を接合している。この方式では第一の集合体と第二の集合体との間で位置調整を行ってから両者を接合した後、第一の集合体と第二の集合体とが接合された結合物を個々の部品に切断することで複数の複合光学装置に分離することにより再現性良く所望の特性を有した複合光学素子が実現できるとされている。
【0004】
特許文献3に記載された構造を図19に示す。一体化された発光素子を保持するための構造を含む複数の光学部品が一体形成された複数のウェハが接合され、これを接合した後に分離するとともに発光素子保持構造に発光素子を取り付けることにより複合光学素子をえる技術も開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002-26452号公報
【特許文献2】特開2004-311861号公報
【特許文献3】特表2001-519601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレンズ一体型半導体発光素子においては発光デバイスと光学部品の間の位置整合性とマイクロレンズの集光性能に限界があり、光通信用の光ファイバとの結合においては1dB以下(20%以下)の低結合損失を得ることは困難であった。
【0007】
しかし、レーザ光を信号のキャリアとして用いる従来の光通信においては光源の光強度が十分であれば1dB程度の結合損失は大きな問題とはならず、前記の従来技術を用いても十分なシステム性能を得ることが可能であった。
【0008】
近年の通信容量の大幅な増加やファイバ増幅器などの光エネルギーそのものを利用する応用の拡大に伴い光ファイバとの結合損失の向上が求められている。また、このようなレンズ集積型光源を光ディスク、レーザ露光装置、レーザプリンタなどの応用システムに適用するれば装置の性能向上と低コスト化低消費電力化に有効であるが、従来の技術で得られる複合光学素子ではこれらの装置で要求される高精度の集光性能を満足することは困難であった。
【0009】
特許文献1においてはマイクロレンズを発光素子と同一のウエハ上に形成する場合においては、ウエハ表裏に形成した素子間の位置あわせ精度は1μm程度が限界であり、レンズによりコリメートされたレーザ光の光軸が15分から30分のばらつきが発生する。また、このような半導体結晶上に形成するマイクロレンズは半導体の微細加工精度の問題からレンズとしての性能はバルクのレンズに比べて劣り、波面に換算してλ/2以上の収差が発生した。
【0010】
一方、特許文献2及び特許文献3に記載された発光素子とレンズを別の基板上に貼り付けて張り合わせる場合では、約4μmの位置ずれ誤差は不可避的に発生し、放射角度にして1〜2度程度の角度ずれが発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明のレンズ集積複合光学素子は、第1の基板上に設けた基板面に垂直な方向にレーザ光を放射する構造と、該構造を設けた面に対向する面上に設け、該レーザ光を放射する構造と略同一の光軸を有する第1のレンズ構造を有し、レーザ光に対し透明な部材よりなる該第1の基板とは別の第2の基板上に設けた該第1のレンズと略同一の光軸を有する第2のレンズを有し、第2のレンズを設けた面に対向する面と該第1のレンズを設けた面がレーザ光に対し透明な接着部材により接着した。
【0012】
第1のレンズの焦点距離fと第1の基板の厚さaにより、第2のレンズから見た第1のレンズの合わせ誤差によるずれxは1/(1-a/f)倍に拡大される。一方で第二レンズから見た第1レンズと発光点までの距離も1/(1-a/f)となるため、第1レンズの位置尤度も1/(1-a/f)倍となる。このため、1/(1-a/f)が一体形成レンズの位置精度に対する接合レンズの位置精度の比を超える範囲においてこのような構成をとることによりコリメート光の広がり精度を向上することが可能である。
【0013】
また、この構造において第1のレンズと第2のレンズの少なくとも一方は光の回折を利用してレンズ機能を発現する回折レンズとすることにより、凸レンズの製造上不可避の収差を補正するように回折レンズを設計することが可能であった。
【0014】
このような張り合わせ構造のビーム品質を向上するために第1と第2の基板を接着する接着部材は接着後も柔軟性を保つゲル状の部材とすることも有効であった。
【0015】
しかし、以上のような構成によりレンズ位置合わせの精度を向上した場合、焦点深度が浅くなる、すなわち良好な平行ビームが得られる発光点とレンズの光伝播方向に対する精度が厳しくなるという問題が発生した。このような位置あわせは個別の発光素子と光学部品を組み立てる工程であれば調整可能であるが、ウエハ一体で形成する複合光学素子ではウエハの厚さとうねりを厳密に制御する以外解決の方法はなかった。このような厚みとうねりの制御は、張り合わせる2つの基板が異なる物質で形成されている場合には熱膨張係数の差、表面硬度の差などにより一層困難なものとなった。本発明者は、第1と第2の基板の間に両基板間にかかる圧力により弾性変形することにより基板間隔を微調整できる部材を配することによりこのような課題を解決した。このような基板間隔を調整する部材はメッキにより形成した上下方向に屈曲することによりバネ機能を有した金属または内部に50%以上の空孔を有するスポンジのようなポーラス状の樹脂とした。
【0016】
このような構造で、最終的な位置決めの後は各部材が完全に固定されるように第1と第2の基板の間隔を固定する第2の接着部材を配した。この第2の接着部材は具体的には紫外線硬化樹脂あるいは加硫処理したシリコーンである。また、このような発光素子とレンズの組み合わせを同一チップ上に複数形成し、発光素子から出射したレーザ光が空間状の1点に集光することにより高エネルギー密度のレーザ光を得ることも可能であった。これらの発光素子は面発光レーザまたは45°ミラーを集積した基板面に水平な方向に共振器を有する半導体レーザとすることが好適であった。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ビーム並行度が良好で集光性の高いレーザビームが一体化された発光素子により実現可能であり、レーザ光を扱う光学系の簡素化、低コスト化が可能となった。また、レーザ光を空間上の一点に集光する構成により高密度のレーザ光を単一の素子により得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る半導体光素子を幾つかの図面に示した実施例による発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
半導体光素子を波長1300nmのAlGaInAs系面発光型半導体レーザとして構成した第1の実施例を素子の作製手順に従い述べる。
【0020】
まず、有機金属気相成長法によりn−InP基板101上に図1のような単結晶多層膜を作製する。単結晶多層膜はn−InP バッファ層102、及びInPに格子整合する厚さ4分の1波長の光学長を有するn型ブラッグ反射器103を最初に形成する。n型ブラッグ反射器103は、n−InGaAsとn−InAlAsの積層膜からなり、反射率が99.8%である。続いて、InP に格子整合したn−InGaAlAs下側SCH(SeparateConfinementHeterostructure)層104、InGaAlAs歪障壁層(バンドギャップ1.32eV、障壁層厚8nm)及びInGaAlAs歪量子井戸層(バンドギャップ0.87eV、井戸層厚6nm)によって構成される歪量子井戸活性層105、InPに格子整合したp−InGaAlAs上側SCH層106、p型ブラッグ反射器107、p−InGaAsキャップ層108の各層を順次形成する。p型ブラッグ反射器107は、p−InGaAsとp−InAlAsの積層膜からなり、反射率が99.2%である。
【0021】
次に、このウエハを図2に示すような面発光レーザ構造に加工する。この構造は、まず、絶縁膜などをマスクにし、ホトエッチング工程によりポスト状の突起部109を形成する。このときのエッチングは方法を問わないので,ホトエッチングの他に、湿式法、RIE(ReactiveIonEtching)、RIBE(ReactiveIonBeamEtching)、イオンミリング等が可能である。エッチングは歪量子井戸活性層105に達しないようにp型ブラッグ反射器107の途中で止まるようにする。
【0022】
以上の構造に表面保護のための酸化シリコン膜110を形成した上で前記ポスト状の突起部109の上面のみこ酸化シリコン膜を除去した後、キャップ層108の上面にp側オーミック電極111を形成し、さらに基板101を厚さ約100μmまで研磨した上で裏面にn側オーミック電極112を形成する。このときポスト状の突起部109と対向する基板101の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極112を除去することにより開口部113を形成する。
【0023】
次に、この開口部に電子線または紫外線によるリソグラフ技術を用いて図3のような断面形状を有し、ポスト状構造に対し中心軸が整合した同心円状または楕円状の回折レンズ114を形成する。このような断面形状の回折レンズは電子線露光強度の変調または透過率を変調したホトマスクを用いた縮小投影露光により再現性よく形成することが可能であった。回折レンズとポスト状構造の光軸は両面位置あわせ機能を持つ露光装置により精度約1μmで位置合わせすることが可能であった。回折レンズの表面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射防止膜を形成し、後述のシリコーンゲル塗布状態で反射による損失が1%以下となるように形成されている。
【0024】
次に、ウエハの裏面に銅の電解メッキを用いて間隔調整のためのメッキバネ115を形成した。この構造はまず図4に示すようなリッジ状のホトレジスト(厚さ15μm)116を形成し、ホトレジスト116の表面を含むウエハ全体に金電極を蒸着した上で再度レジスト工程を用いてこのリッジ状ホトレジストに直交する方向に延在する銅メッキ膜(厚さ5μm)117を形成した後、メッキ領域以外の金とホトレジストを除去することにより形成した図5のような形状のもので、銅メッキ膜117下の空隙部分によりその上の銅メッキ膜117が外部からの力に応じて変形することによりメッキバネ115としての機能を発現する。メッキバネ115の材料としては弾性の強い銅を用いることが好適であるが、対腐食性を重視する場合には金を、熱処理による可塑性を重視する場合にはスズを主成分とする合金を用いることも可能であり、それぞれ所望の間隔調整機能を実現することが可能であった。このような発光素子は、図1から5には単一の素子のみ示しているが、実際の作製工程においては直径2インチから3インチのInP基板上に一定の間隔を持って2次元アレイ状に配置されている。
【0025】
次に、この2次元アレイと対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着し、図6のような光複合光学素子を形成した。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約20μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で紫外線硬化樹脂121をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をダイシングにより分離して個別の発光素子を得た。
【0026】
通常、このような半導体又は光学素子を形成したウエハの張り合わせは光学接着剤やポリイミドなどの樹脂を用いて行われる。しかし、これらの接着剤は硬化した後の硬度が高く柔軟性が全く残らない上、半導体及び石英のウエハに比べ熱膨張係数が10倍近く大きいため応力発生の原因ともなっていた。特に本発明の場合、接着面であるInP基板の裏面にも光学素子が形成されているため、ウエハの張り合わせる面の間には10μm以上の間隔が必要であり、通常の接着方法では問題が発生した。一方、本実施例のシリコーンゲル120を接着媒質として用いればシリコーンゲル120が硬化後も一定の柔軟性を保つため熱膨張などによる応力はシリコーンゲル120で吸収され複合光学素子の特性に悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0027】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態でメッキバネ115に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂121を完全に硬化させることによりレンズを完全に固定することにより再現性よく作製可能であった。接着剤がシリコーンゲルであるため複合光学素子分割後も柔軟性を失っていないためこのような微調整が容易に実施可能となった。
【0028】
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例2】
【0029】
半導体光素子を波長1300nmのAlGaInAs系半導体レーザとして構成した第2の実施例を素子の作製手順に従い述べる。まず、有機金属気相成長法によりn−InP基板101上に図7のような単結晶多層膜を作製する。単結晶多層膜はn−InPバッファ層201、及びInPに格子整合する厚さ4分の1波長の光学長を有するブラッグ反射器202を最初に形成する。ブラッグ反射器202は、n−InGaAsとn−InAlAsの積層膜からなり、反射率が70%である。続いて、n−InP下側クラッド層203、InGaAlAs歪障壁層(バンドギャップ132eV、障壁層厚8nm)及びInGaAlAs歪量子井戸層(バンドギャップ087eV、井戸層厚6nm)によって構成される歪量子井戸活性層204、p−InP上側クラッド層205、p−InGaAsコンタクト層206の各層をMOVPE(MetalOrganicChemicalVaporDeposition)法による結晶成長により順次形成する。
【0030】
次に、絶縁膜などをマスクにし、ホトエッチング工程により図8に示すようなリッジ207を形成する。このときのエッチングは方法を問わないので,ホトエッチングの他に、湿式法、RIE(ReactiveIonEtching)、RIBE(ReactiveIonBeamEtching)、イオンミリング等が可能である。エッチングは歪量子井戸活性層14に達しないようにp−InPクラッド層205の途中で止まるようにする。
次に、絶縁膜をマスクに共振器を45°の角度で下側クラッド層203までエッチングし
て45°反射面を形成してから、該反射面に非晶質硅素膜と二酸化硅素膜の周期膜からなる高反射率膜209を形成し、反射面を45°傾斜反射鏡208とする。その後、コンタクト層206の上面にp側オーミック電極210を、基板8の裏面にn側オーミック電極211を形成する。45°反射面208と対向する基板101の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極211を除去することにより開口部113を形成する。
【0031】
次に、この開口部に電子線または紫外線によるリソグラフ技術を用いて図9のような断面形状を有し、反射面を45°傾斜反射鏡208に対し中心軸が整合した同心円状または楕円状の回折レンズ114を形成する。このような断面形状の回折レンズは電子線露光強度の変調または透過率を変調したホトマスクを用いた縮小投影露光により再現性よく形成することが可能であった。回折レンズを楕円状に形成することにより半導体レーザの非点収差を除去する、あるいは半導体レーザからの楕円状の放射ビームを真円ビームに変換することが可能であった。回折レンズと反射面を45°傾斜反射鏡208の光軸は両面位置あわせ機能を持つ露光装置により精度約1μmで一合わせすることが可能であった。回折レンズの表面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射防止膜を形成し、後述のシリコーンゲル塗布状態で反射による損失が1%以下となるように形成されている。
次に、ウエハの裏面に銅の電解メッキを用いて間隔調整のためのメッキバネ115を形成した。この構造は実施例1で説明した図4及び図5と同様の手順により作製されたものである。
【0032】
次に、この45°反射面208および回折レンズ113と対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着する。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約20μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
【0033】
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で紫外線硬化樹脂121をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をへき開により分離して個別の発光素子を得た。レーザ共振器の第2の反射面となるへき開面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射率99%の高反射膜212を設けた。
【0034】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態でメッキバネ115に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂121を完全に硬化させることによりレンズを完全に固定することにより再現性よく作製可能であった。
【0035】
作製した半導体レーザはへき開面と135°ミラーを介して光共振器にレーザを反射するブラッグ反射器により形成される光帰還構造によりレーザ発振が可能で、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例3】
【0036】
本発明第3の実施例としてInP基板とカラス基板の接合部にメッキバネに変わり発泡性の樹脂を用いた例を示す。本実施例においては、InP基板101上の発光素子の作製は実施例2と同様に行った。次にこの基板の裏面に厚さ約10μmの発泡性シリコーン301を塗布し、発泡硬化させた後ホトリソグラフ技術を用いて発光素子及びレンズ部分を避けた一部のみに発泡性シリコーン301が残るように加工して図10の構造とした。発泡作用により硬化後の発泡性シリコーン301の厚さは約20μmとなっており、2枚のウエハの間の間隔調整が可能なスポンジ状態の柔軟性を残している。
【0037】
次に、この45°反射面208および回折レンズ113と対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着する。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約20μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
【0038】
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で加硫剤を添加したシリコーン302をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をへき開により分離して図11のような個別の発光素子を得た。レーザ共振器の第2の反射面となるへき開面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射率99%の高反射膜212を設けた。
【0039】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態で発泡性シリコーン301に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで約160度で熱処理を行い加硫剤添加シリコーン302を完全に硬化させることによりレンズを固定することにより再現性よく作製可能であった。
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μ
mであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例4】
【0040】
半導体光素子を波長405nmのAlGaInN系半導体レーザとして構成した第4の実施例を素子の作製手順に従い述べる。ます図10に示すように、n型GaN基板401(面方位は(1−100)面)上に有機金属気相成長法を用いてn型GaNバッファ層402(0.2μm)、厚さ4分の1波長の光学長を有するn−GaAlNとn−GaNの積層膜からなるブラッグ反射器403を形成する。ブラッグ反射器403の反射率は70%である。n型Al0.08Ga0.92Nクラッド層404(Siドープ、n=1×1018cm−3、1.2μm)、GaInN/GaN多重量子井戸活性層405、p型GaN/AlGaN超格子層406(Mgドープ、p=7×1017cm−3、0.5μm)、およびp型GaNキャップ層407(Siドープ、p=1×1019cm−3、0.1μm)を順次結晶成長した。
【0041】
次に、絶縁膜をマスクに共振器を45°の角度でn型Al0.08Ga0.92Nクラッド層404までメサエッチングして反射面を形成してから、該反射面に非晶質硅素膜と二酸化硅素膜の周期膜からなる高反射率膜408を形成し、反射面を45°傾斜反射鏡208とする。その後、キャップ層407の上面にp側オーミック電極409を、基板401の裏面にn側オーミック電極410を形成する。反射鏡208と対向する基板401の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極410を除去することにより開口部113を形成して図11のような構造を形成した。。次にこの開口部に電子線または紫外線によるリソグラフ技術を用いて図12のような断面形状を有し、反射面を45°傾斜反射鏡208に中心軸が整合した同心円状または楕円状の回折レンズ114を形成する。このような断面形状の回折レンズは電子線露光強度の変調または透過率を変調したホトマスクを用いた縮小投影露光により再現性よく形成することが可能であった。回折レンズと反射面を45°傾斜反射鏡208の光軸は両面位置あわせ機能を持つ露光装置により精度約1μmで一合わせすることが可能であった。回折レンズの表面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射防止膜を形成し、後述のシリコーンゲル塗布状態で反射による損失が1%以下となるように形成されている。
【0042】
次に、ウエハの裏面に銅の電解メッキを用いて間隔調整のためのメッキバネ115を形成した。この構造は実施例1で説明した図4及び図5と同様の手順により作製されたものである。
【0043】
次に、この45°反射面208および回折レンズ113と対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着する。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約30μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
【0044】
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で紫外線硬化樹脂121をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をへき開により分離して個別の発光素子を得た。レーザ共振器の第2の反射面となるへき開面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射率99%の高反射膜411を設けた。
【0045】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態でメッキバネ115に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂121を完全に硬化させることによりレンズを完全に固定することにより再現性よく作製可能であった。
【0046】
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約405nmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例5】
【0047】
本発明のレンズ集積複合光学素子は、均一性の良好なレーザビームを得ることが可能なため、単一チップ上に複数の半導体レーザを形成し、これらの素子から出射したレーザ光を単一の焦点に絞り込むことにより高光密度の集光を実現することも可能であった。本発明の半導体レーザウエハの構造は実施例3と同様のものであるが、本実施例においては45°傾斜反射鏡208と同時に135°傾斜反射鏡501を形成し、この135°傾斜反射鏡501と45°傾斜反射鏡208で屈曲した光がそれそれ基板側に設けたブラッグ反射器403と135°傾斜反射鏡501上のウエハ表面に設けた酸化シリコンと酸化チタンの多層膜よりなる反射膜502で反射されてレーザ共振器を構成する図15のような構造とした。
【0048】
実施例1〜4においては半導体レーザに集積したレンズによりコリメート光を得ることを目的としたが、本実施例においては単一チップ上に設けた複数の発光素子とレンズの組み合わせにより1点に強力なレーザ光を集光することにより光ファイバレーザの励起を行った。すなわち、本実施例のレーザ複合光学素子は単一のレーザチップ内に複数のレーザ共振器を有しており、これらの発光素子及び第1レンズの光軸503と第2レンズの光軸504は夫々の位置に対応して図16のようにずれて設定されていて2次元アレイから出射されるレーザ光505が空間上の1点に集光される構成となっている。この焦点に希土類ドープ光ファイバ505の一端面を配置して10素子から出射される2Wのレーザ光を単一の光ファイバに入射させる。本実施例により波長440nmのレーザ光が2ワット光ファイバに入射し、これを励起光源とした630nm及び525nmのレーザ光を光ファイバ内に励起させることが可能であった。本構成により、440nm、525nm,630nm夫々500mWの白色レーザ光が得られた。、
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施例のウエハ構造。
【図2】第1の実施例の発光素子構造。
【図3】第1の実施例の裏面加工後構造。
【図4】第1の実施例のメッキバネ製造方法。
【図5】第1の実施例のメッキバネ構造。
【図6】第1の実施例の発光複合光学素子構造。
【図7】第2の実施例のウエハ構造。
【図8】第2の実施例の発光素子構造。
【図9】第2の実施例の発光複合光学素子構造。
【図10】第3の実施例のウエハ構造。
【図11】第3の実施例の発光素子構造。
【図12】第4の実施例のウエハ構造。
【図13】第4の実施例の発光素子構造。
【図14】第4の実施例の発光複合光学素子構造。
【図15】第5の実施例の発光素子の構造。
【図16】第5の実施例の発光複合光学素子の構造。
【図17】従来のレンズ集積半導体レーザ。
【図18】従来のレンズ張り合わせ型半導体レーザ。
【図19】従来のウエハレベル集積型光学素子。
【符号の説明】
【0050】
101…n−InP基板
102…n−InP バッファ層
103…n型ブラッグ反射器
104…n−InGaAlAs下側SCH層
105…歪量子井戸活性層
106…p−InGaAlAs上側SCH層
107…p型ブラッグ反射器
108…p−InGaAsキャップ層
109…ポスト状の突起部
110…酸化シリコン膜
111…p側オーミック電極
112…n側オーミック電極
113…開口部
114…回折レンズ
115…メッキバネ
116…ホトレジスト
117…銅メッキ膜
118…マイクロレンズ
119…マイクロレンズアレイ
120…シリコーンゲル
121…紫外線硬化樹脂
201…n−InPバッファ層
202…ブラッグ反射器
203…n−InP下側クラッド層
204…歪量子井戸活性層
205…p−InP上側クラッド層
206…p−InGaAsコンタクト層
207…リッジ
208…45°反射面
209…高反射率膜
210…p側オーミック電極
211…n側オーミック電極
212…高反射膜
301…発泡性シリコーン
302…加硫剤添加したシリコーン
401…n型GaN基板
402…n型GaNバッファ層
403…ブラッグ反射器
404…n型Al0.08Ga0.92Nクラッド層
405…GaInN/GaN多重量子井戸活性層
406…p型GaN/AlGaN超格子層
407…p型GaNキャップ層
408…高反射率膜
409…p側オーミック電極
410…n側オーミック電極
411…高反射膜
501…135°傾斜反射鏡
502…反射膜
503…発光素子及び第1レンズの光軸
504…第2レンズの光軸
505…レーザ光
506…希土類ドープ光ファイバ
11…VCSELアレイ基板
12…VCSEL
13…レンズアレイ基板
14…マイクロレンズ
15…面発光素子
16…光学素子
17…第1の集合体
18…第2の集合体
19…穴
20…切欠
21…切断位置
22…第1のウエハ
23…第2のウエハ
24…隔離ガラス
25…レンズ
26…回折部品
27…金属パッド
28…金属
【技術分野】
【0001】
レンズが集積された半導体レーザ素子を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズが集積されたレンズ集積複合光学素子について、特許文献1から特許文献3に記載された従来技術があった。
【0003】
特許文献1に記載された構造を図17に示す。複数の面発光型レーザが配列された面発光型レーザアレイ基板と、面発光型レーザアレイ基板に一体に形成され、面発光型レーザに対応する位置にレンズが形成されたレンズアレイ基板と、を備えている。この面発光型レーザアレイ基板及びレンズアレイ基板は、フォトプロセスにより精密に製造される。レンズアレイ基板は、面発光型レーザアレイ基板上に直接形成され、さらに各面発光型レーザアレイの配列に対応してレンズが配置されている。したがって、光学調整をすることなく、面発光型レーザアレイ基板とレンズアレイ基板とを精密に位置合わせして、そのずれも防止することができるとされている。
特許文献2に記載された構造を図18に示す。複数の面発光型素子を平面上に配列させた構成をもつ第一の集合体及び複数の光学素子を平面上に配列させた構成をもつ第二の集合体を接合している。この方式では第一の集合体と第二の集合体との間で位置調整を行ってから両者を接合した後、第一の集合体と第二の集合体とが接合された結合物を個々の部品に切断することで複数の複合光学装置に分離することにより再現性良く所望の特性を有した複合光学素子が実現できるとされている。
【0004】
特許文献3に記載された構造を図19に示す。一体化された発光素子を保持するための構造を含む複数の光学部品が一体形成された複数のウェハが接合され、これを接合した後に分離するとともに発光素子保持構造に発光素子を取り付けることにより複合光学素子をえる技術も開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002-26452号公報
【特許文献2】特開2004-311861号公報
【特許文献3】特表2001-519601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレンズ一体型半導体発光素子においては発光デバイスと光学部品の間の位置整合性とマイクロレンズの集光性能に限界があり、光通信用の光ファイバとの結合においては1dB以下(20%以下)の低結合損失を得ることは困難であった。
【0007】
しかし、レーザ光を信号のキャリアとして用いる従来の光通信においては光源の光強度が十分であれば1dB程度の結合損失は大きな問題とはならず、前記の従来技術を用いても十分なシステム性能を得ることが可能であった。
【0008】
近年の通信容量の大幅な増加やファイバ増幅器などの光エネルギーそのものを利用する応用の拡大に伴い光ファイバとの結合損失の向上が求められている。また、このようなレンズ集積型光源を光ディスク、レーザ露光装置、レーザプリンタなどの応用システムに適用するれば装置の性能向上と低コスト化低消費電力化に有効であるが、従来の技術で得られる複合光学素子ではこれらの装置で要求される高精度の集光性能を満足することは困難であった。
【0009】
特許文献1においてはマイクロレンズを発光素子と同一のウエハ上に形成する場合においては、ウエハ表裏に形成した素子間の位置あわせ精度は1μm程度が限界であり、レンズによりコリメートされたレーザ光の光軸が15分から30分のばらつきが発生する。また、このような半導体結晶上に形成するマイクロレンズは半導体の微細加工精度の問題からレンズとしての性能はバルクのレンズに比べて劣り、波面に換算してλ/2以上の収差が発生した。
【0010】
一方、特許文献2及び特許文献3に記載された発光素子とレンズを別の基板上に貼り付けて張り合わせる場合では、約4μmの位置ずれ誤差は不可避的に発生し、放射角度にして1〜2度程度の角度ずれが発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明のレンズ集積複合光学素子は、第1の基板上に設けた基板面に垂直な方向にレーザ光を放射する構造と、該構造を設けた面に対向する面上に設け、該レーザ光を放射する構造と略同一の光軸を有する第1のレンズ構造を有し、レーザ光に対し透明な部材よりなる該第1の基板とは別の第2の基板上に設けた該第1のレンズと略同一の光軸を有する第2のレンズを有し、第2のレンズを設けた面に対向する面と該第1のレンズを設けた面がレーザ光に対し透明な接着部材により接着した。
【0012】
第1のレンズの焦点距離fと第1の基板の厚さaにより、第2のレンズから見た第1のレンズの合わせ誤差によるずれxは1/(1-a/f)倍に拡大される。一方で第二レンズから見た第1レンズと発光点までの距離も1/(1-a/f)となるため、第1レンズの位置尤度も1/(1-a/f)倍となる。このため、1/(1-a/f)が一体形成レンズの位置精度に対する接合レンズの位置精度の比を超える範囲においてこのような構成をとることによりコリメート光の広がり精度を向上することが可能である。
【0013】
また、この構造において第1のレンズと第2のレンズの少なくとも一方は光の回折を利用してレンズ機能を発現する回折レンズとすることにより、凸レンズの製造上不可避の収差を補正するように回折レンズを設計することが可能であった。
【0014】
このような張り合わせ構造のビーム品質を向上するために第1と第2の基板を接着する接着部材は接着後も柔軟性を保つゲル状の部材とすることも有効であった。
【0015】
しかし、以上のような構成によりレンズ位置合わせの精度を向上した場合、焦点深度が浅くなる、すなわち良好な平行ビームが得られる発光点とレンズの光伝播方向に対する精度が厳しくなるという問題が発生した。このような位置あわせは個別の発光素子と光学部品を組み立てる工程であれば調整可能であるが、ウエハ一体で形成する複合光学素子ではウエハの厚さとうねりを厳密に制御する以外解決の方法はなかった。このような厚みとうねりの制御は、張り合わせる2つの基板が異なる物質で形成されている場合には熱膨張係数の差、表面硬度の差などにより一層困難なものとなった。本発明者は、第1と第2の基板の間に両基板間にかかる圧力により弾性変形することにより基板間隔を微調整できる部材を配することによりこのような課題を解決した。このような基板間隔を調整する部材はメッキにより形成した上下方向に屈曲することによりバネ機能を有した金属または内部に50%以上の空孔を有するスポンジのようなポーラス状の樹脂とした。
【0016】
このような構造で、最終的な位置決めの後は各部材が完全に固定されるように第1と第2の基板の間隔を固定する第2の接着部材を配した。この第2の接着部材は具体的には紫外線硬化樹脂あるいは加硫処理したシリコーンである。また、このような発光素子とレンズの組み合わせを同一チップ上に複数形成し、発光素子から出射したレーザ光が空間状の1点に集光することにより高エネルギー密度のレーザ光を得ることも可能であった。これらの発光素子は面発光レーザまたは45°ミラーを集積した基板面に水平な方向に共振器を有する半導体レーザとすることが好適であった。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ビーム並行度が良好で集光性の高いレーザビームが一体化された発光素子により実現可能であり、レーザ光を扱う光学系の簡素化、低コスト化が可能となった。また、レーザ光を空間上の一点に集光する構成により高密度のレーザ光を単一の素子により得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る半導体光素子を幾つかの図面に示した実施例による発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
半導体光素子を波長1300nmのAlGaInAs系面発光型半導体レーザとして構成した第1の実施例を素子の作製手順に従い述べる。
【0020】
まず、有機金属気相成長法によりn−InP基板101上に図1のような単結晶多層膜を作製する。単結晶多層膜はn−InP バッファ層102、及びInPに格子整合する厚さ4分の1波長の光学長を有するn型ブラッグ反射器103を最初に形成する。n型ブラッグ反射器103は、n−InGaAsとn−InAlAsの積層膜からなり、反射率が99.8%である。続いて、InP に格子整合したn−InGaAlAs下側SCH(SeparateConfinementHeterostructure)層104、InGaAlAs歪障壁層(バンドギャップ1.32eV、障壁層厚8nm)及びInGaAlAs歪量子井戸層(バンドギャップ0.87eV、井戸層厚6nm)によって構成される歪量子井戸活性層105、InPに格子整合したp−InGaAlAs上側SCH層106、p型ブラッグ反射器107、p−InGaAsキャップ層108の各層を順次形成する。p型ブラッグ反射器107は、p−InGaAsとp−InAlAsの積層膜からなり、反射率が99.2%である。
【0021】
次に、このウエハを図2に示すような面発光レーザ構造に加工する。この構造は、まず、絶縁膜などをマスクにし、ホトエッチング工程によりポスト状の突起部109を形成する。このときのエッチングは方法を問わないので,ホトエッチングの他に、湿式法、RIE(ReactiveIonEtching)、RIBE(ReactiveIonBeamEtching)、イオンミリング等が可能である。エッチングは歪量子井戸活性層105に達しないようにp型ブラッグ反射器107の途中で止まるようにする。
【0022】
以上の構造に表面保護のための酸化シリコン膜110を形成した上で前記ポスト状の突起部109の上面のみこ酸化シリコン膜を除去した後、キャップ層108の上面にp側オーミック電極111を形成し、さらに基板101を厚さ約100μmまで研磨した上で裏面にn側オーミック電極112を形成する。このときポスト状の突起部109と対向する基板101の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極112を除去することにより開口部113を形成する。
【0023】
次に、この開口部に電子線または紫外線によるリソグラフ技術を用いて図3のような断面形状を有し、ポスト状構造に対し中心軸が整合した同心円状または楕円状の回折レンズ114を形成する。このような断面形状の回折レンズは電子線露光強度の変調または透過率を変調したホトマスクを用いた縮小投影露光により再現性よく形成することが可能であった。回折レンズとポスト状構造の光軸は両面位置あわせ機能を持つ露光装置により精度約1μmで位置合わせすることが可能であった。回折レンズの表面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射防止膜を形成し、後述のシリコーンゲル塗布状態で反射による損失が1%以下となるように形成されている。
【0024】
次に、ウエハの裏面に銅の電解メッキを用いて間隔調整のためのメッキバネ115を形成した。この構造はまず図4に示すようなリッジ状のホトレジスト(厚さ15μm)116を形成し、ホトレジスト116の表面を含むウエハ全体に金電極を蒸着した上で再度レジスト工程を用いてこのリッジ状ホトレジストに直交する方向に延在する銅メッキ膜(厚さ5μm)117を形成した後、メッキ領域以外の金とホトレジストを除去することにより形成した図5のような形状のもので、銅メッキ膜117下の空隙部分によりその上の銅メッキ膜117が外部からの力に応じて変形することによりメッキバネ115としての機能を発現する。メッキバネ115の材料としては弾性の強い銅を用いることが好適であるが、対腐食性を重視する場合には金を、熱処理による可塑性を重視する場合にはスズを主成分とする合金を用いることも可能であり、それぞれ所望の間隔調整機能を実現することが可能であった。このような発光素子は、図1から5には単一の素子のみ示しているが、実際の作製工程においては直径2インチから3インチのInP基板上に一定の間隔を持って2次元アレイ状に配置されている。
【0025】
次に、この2次元アレイと対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着し、図6のような光複合光学素子を形成した。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約20μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で紫外線硬化樹脂121をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をダイシングにより分離して個別の発光素子を得た。
【0026】
通常、このような半導体又は光学素子を形成したウエハの張り合わせは光学接着剤やポリイミドなどの樹脂を用いて行われる。しかし、これらの接着剤は硬化した後の硬度が高く柔軟性が全く残らない上、半導体及び石英のウエハに比べ熱膨張係数が10倍近く大きいため応力発生の原因ともなっていた。特に本発明の場合、接着面であるInP基板の裏面にも光学素子が形成されているため、ウエハの張り合わせる面の間には10μm以上の間隔が必要であり、通常の接着方法では問題が発生した。一方、本実施例のシリコーンゲル120を接着媒質として用いればシリコーンゲル120が硬化後も一定の柔軟性を保つため熱膨張などによる応力はシリコーンゲル120で吸収され複合光学素子の特性に悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0027】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態でメッキバネ115に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂121を完全に硬化させることによりレンズを完全に固定することにより再現性よく作製可能であった。接着剤がシリコーンゲルであるため複合光学素子分割後も柔軟性を失っていないためこのような微調整が容易に実施可能となった。
【0028】
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例2】
【0029】
半導体光素子を波長1300nmのAlGaInAs系半導体レーザとして構成した第2の実施例を素子の作製手順に従い述べる。まず、有機金属気相成長法によりn−InP基板101上に図7のような単結晶多層膜を作製する。単結晶多層膜はn−InPバッファ層201、及びInPに格子整合する厚さ4分の1波長の光学長を有するブラッグ反射器202を最初に形成する。ブラッグ反射器202は、n−InGaAsとn−InAlAsの積層膜からなり、反射率が70%である。続いて、n−InP下側クラッド層203、InGaAlAs歪障壁層(バンドギャップ132eV、障壁層厚8nm)及びInGaAlAs歪量子井戸層(バンドギャップ087eV、井戸層厚6nm)によって構成される歪量子井戸活性層204、p−InP上側クラッド層205、p−InGaAsコンタクト層206の各層をMOVPE(MetalOrganicChemicalVaporDeposition)法による結晶成長により順次形成する。
【0030】
次に、絶縁膜などをマスクにし、ホトエッチング工程により図8に示すようなリッジ207を形成する。このときのエッチングは方法を問わないので,ホトエッチングの他に、湿式法、RIE(ReactiveIonEtching)、RIBE(ReactiveIonBeamEtching)、イオンミリング等が可能である。エッチングは歪量子井戸活性層14に達しないようにp−InPクラッド層205の途中で止まるようにする。
次に、絶縁膜をマスクに共振器を45°の角度で下側クラッド層203までエッチングし
て45°反射面を形成してから、該反射面に非晶質硅素膜と二酸化硅素膜の周期膜からなる高反射率膜209を形成し、反射面を45°傾斜反射鏡208とする。その後、コンタクト層206の上面にp側オーミック電極210を、基板8の裏面にn側オーミック電極211を形成する。45°反射面208と対向する基板101の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極211を除去することにより開口部113を形成する。
【0031】
次に、この開口部に電子線または紫外線によるリソグラフ技術を用いて図9のような断面形状を有し、反射面を45°傾斜反射鏡208に対し中心軸が整合した同心円状または楕円状の回折レンズ114を形成する。このような断面形状の回折レンズは電子線露光強度の変調または透過率を変調したホトマスクを用いた縮小投影露光により再現性よく形成することが可能であった。回折レンズを楕円状に形成することにより半導体レーザの非点収差を除去する、あるいは半導体レーザからの楕円状の放射ビームを真円ビームに変換することが可能であった。回折レンズと反射面を45°傾斜反射鏡208の光軸は両面位置あわせ機能を持つ露光装置により精度約1μmで一合わせすることが可能であった。回折レンズの表面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射防止膜を形成し、後述のシリコーンゲル塗布状態で反射による損失が1%以下となるように形成されている。
次に、ウエハの裏面に銅の電解メッキを用いて間隔調整のためのメッキバネ115を形成した。この構造は実施例1で説明した図4及び図5と同様の手順により作製されたものである。
【0032】
次に、この45°反射面208および回折レンズ113と対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着する。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約20μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
【0033】
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で紫外線硬化樹脂121をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をへき開により分離して個別の発光素子を得た。レーザ共振器の第2の反射面となるへき開面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射率99%の高反射膜212を設けた。
【0034】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態でメッキバネ115に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂121を完全に硬化させることによりレンズを完全に固定することにより再現性よく作製可能であった。
【0035】
作製した半導体レーザはへき開面と135°ミラーを介して光共振器にレーザを反射するブラッグ反射器により形成される光帰還構造によりレーザ発振が可能で、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例3】
【0036】
本発明第3の実施例としてInP基板とカラス基板の接合部にメッキバネに変わり発泡性の樹脂を用いた例を示す。本実施例においては、InP基板101上の発光素子の作製は実施例2と同様に行った。次にこの基板の裏面に厚さ約10μmの発泡性シリコーン301を塗布し、発泡硬化させた後ホトリソグラフ技術を用いて発光素子及びレンズ部分を避けた一部のみに発泡性シリコーン301が残るように加工して図10の構造とした。発泡作用により硬化後の発泡性シリコーン301の厚さは約20μmとなっており、2枚のウエハの間の間隔調整が可能なスポンジ状態の柔軟性を残している。
【0037】
次に、この45°反射面208および回折レンズ113と対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着する。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約20μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
【0038】
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で加硫剤を添加したシリコーン302をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をへき開により分離して図11のような個別の発光素子を得た。レーザ共振器の第2の反射面となるへき開面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射率99%の高反射膜212を設けた。
【0039】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態で発泡性シリコーン301に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで約160度で熱処理を行い加硫剤添加シリコーン302を完全に硬化させることによりレンズを固定することにより再現性よく作製可能であった。
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μ
mであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例4】
【0040】
半導体光素子を波長405nmのAlGaInN系半導体レーザとして構成した第4の実施例を素子の作製手順に従い述べる。ます図10に示すように、n型GaN基板401(面方位は(1−100)面)上に有機金属気相成長法を用いてn型GaNバッファ層402(0.2μm)、厚さ4分の1波長の光学長を有するn−GaAlNとn−GaNの積層膜からなるブラッグ反射器403を形成する。ブラッグ反射器403の反射率は70%である。n型Al0.08Ga0.92Nクラッド層404(Siドープ、n=1×1018cm−3、1.2μm)、GaInN/GaN多重量子井戸活性層405、p型GaN/AlGaN超格子層406(Mgドープ、p=7×1017cm−3、0.5μm)、およびp型GaNキャップ層407(Siドープ、p=1×1019cm−3、0.1μm)を順次結晶成長した。
【0041】
次に、絶縁膜をマスクに共振器を45°の角度でn型Al0.08Ga0.92Nクラッド層404までメサエッチングして反射面を形成してから、該反射面に非晶質硅素膜と二酸化硅素膜の周期膜からなる高反射率膜408を形成し、反射面を45°傾斜反射鏡208とする。その後、キャップ層407の上面にp側オーミック電極409を、基板401の裏面にn側オーミック電極410を形成する。反射鏡208と対向する基板401の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極410を除去することにより開口部113を形成して図11のような構造を形成した。。次にこの開口部に電子線または紫外線によるリソグラフ技術を用いて図12のような断面形状を有し、反射面を45°傾斜反射鏡208に中心軸が整合した同心円状または楕円状の回折レンズ114を形成する。このような断面形状の回折レンズは電子線露光強度の変調または透過率を変調したホトマスクを用いた縮小投影露光により再現性よく形成することが可能であった。回折レンズと反射面を45°傾斜反射鏡208の光軸は両面位置あわせ機能を持つ露光装置により精度約1μmで一合わせすることが可能であった。回折レンズの表面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射防止膜を形成し、後述のシリコーンゲル塗布状態で反射による損失が1%以下となるように形成されている。
【0042】
次に、ウエハの裏面に銅の電解メッキを用いて間隔調整のためのメッキバネ115を形成した。この構造は実施例1で説明した図4及び図5と同様の手順により作製されたものである。
【0043】
次に、この45°反射面208および回折レンズ113と対応する位置にマイクロレンズ118を有するマイクロレンズアレイ119をシリコーンゲル120を用いて接着する。前記工程で作製したInP基板101の裏面にシリコーンゲル原液を塗布したうえでマイクロレンスアレイ119を張り合わせる。このとき、マイクロレンズアレイ119とInP基板101の距離はメッキバネ115の高さにより概ね決定され約30μmとなる。シリコーンゲル120はマイクロレンズアレイ119の基板である石英ガラスにあわせ屈折率1.45に調整したものを用いる。これにより、屈折率の境界面はInP基板表面のみとなり、光の多重反射による迷光を防止することが可能であった。
【0044】
この状態のウエハを90℃で約1時間ベーキングすることによりシリコーンゲル120を硬化させた状態でマイクロレンズ118形成部分以外のガラス及びシリコーンゲルをInP基板101に到達するまで除去した上で紫外線硬化樹脂121をこの部分に充填し、90℃でで約1時間ベークすることにより仮硬化させる。以上のように形成したレンズ集積発光素子とマイクロレンズを張り合わせた構造をへき開により分離して個別の発光素子を得た。レーザ共振器の第2の反射面となるへき開面には酸化シリコン及び酸化チタンの薄膜からなる反射率99%の高反射膜411を設けた。
【0045】
このようにして作製した素子ではビーム放射方向誤差は約3分以下に抑えることが可能であったが、基板のうねりやInP基板、カラス基板の厚さの誤差があるため、コリメート光の平行度は30分程度のばらつきが残っており、ビームの集光性が問題となる応用では外部光学系による再調整が必要なレベルにとどまっていた。このようなビーム集光性の誤差はレーザを点灯させた状態でメッキバネ115に上下方向の力を加え圧縮し、最適の位置になったところで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂121を完全に硬化させることによりレンズを完全に固定することにより再現性よく作製可能であった。
【0046】
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約405nmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。放射されたレーザ光の方位誤差、ビーム広がり角のばらつきはともに3分以下であった。
【実施例5】
【0047】
本発明のレンズ集積複合光学素子は、均一性の良好なレーザビームを得ることが可能なため、単一チップ上に複数の半導体レーザを形成し、これらの素子から出射したレーザ光を単一の焦点に絞り込むことにより高光密度の集光を実現することも可能であった。本発明の半導体レーザウエハの構造は実施例3と同様のものであるが、本実施例においては45°傾斜反射鏡208と同時に135°傾斜反射鏡501を形成し、この135°傾斜反射鏡501と45°傾斜反射鏡208で屈曲した光がそれそれ基板側に設けたブラッグ反射器403と135°傾斜反射鏡501上のウエハ表面に設けた酸化シリコンと酸化チタンの多層膜よりなる反射膜502で反射されてレーザ共振器を構成する図15のような構造とした。
【0048】
実施例1〜4においては半導体レーザに集積したレンズによりコリメート光を得ることを目的としたが、本実施例においては単一チップ上に設けた複数の発光素子とレンズの組み合わせにより1点に強力なレーザ光を集光することにより光ファイバレーザの励起を行った。すなわち、本実施例のレーザ複合光学素子は単一のレーザチップ内に複数のレーザ共振器を有しており、これらの発光素子及び第1レンズの光軸503と第2レンズの光軸504は夫々の位置に対応して図16のようにずれて設定されていて2次元アレイから出射されるレーザ光505が空間上の1点に集光される構成となっている。この焦点に希土類ドープ光ファイバ505の一端面を配置して10素子から出射される2Wのレーザ光を単一の光ファイバに入射させる。本実施例により波長440nmのレーザ光が2ワット光ファイバに入射し、これを励起光源とした630nm及び525nmのレーザ光を光ファイバ内に励起させることが可能であった。本構成により、440nm、525nm,630nm夫々500mWの白色レーザ光が得られた。、
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施例のウエハ構造。
【図2】第1の実施例の発光素子構造。
【図3】第1の実施例の裏面加工後構造。
【図4】第1の実施例のメッキバネ製造方法。
【図5】第1の実施例のメッキバネ構造。
【図6】第1の実施例の発光複合光学素子構造。
【図7】第2の実施例のウエハ構造。
【図8】第2の実施例の発光素子構造。
【図9】第2の実施例の発光複合光学素子構造。
【図10】第3の実施例のウエハ構造。
【図11】第3の実施例の発光素子構造。
【図12】第4の実施例のウエハ構造。
【図13】第4の実施例の発光素子構造。
【図14】第4の実施例の発光複合光学素子構造。
【図15】第5の実施例の発光素子の構造。
【図16】第5の実施例の発光複合光学素子の構造。
【図17】従来のレンズ集積半導体レーザ。
【図18】従来のレンズ張り合わせ型半導体レーザ。
【図19】従来のウエハレベル集積型光学素子。
【符号の説明】
【0050】
101…n−InP基板
102…n−InP バッファ層
103…n型ブラッグ反射器
104…n−InGaAlAs下側SCH層
105…歪量子井戸活性層
106…p−InGaAlAs上側SCH層
107…p型ブラッグ反射器
108…p−InGaAsキャップ層
109…ポスト状の突起部
110…酸化シリコン膜
111…p側オーミック電極
112…n側オーミック電極
113…開口部
114…回折レンズ
115…メッキバネ
116…ホトレジスト
117…銅メッキ膜
118…マイクロレンズ
119…マイクロレンズアレイ
120…シリコーンゲル
121…紫外線硬化樹脂
201…n−InPバッファ層
202…ブラッグ反射器
203…n−InP下側クラッド層
204…歪量子井戸活性層
205…p−InP上側クラッド層
206…p−InGaAsコンタクト層
207…リッジ
208…45°反射面
209…高反射率膜
210…p側オーミック電極
211…n側オーミック電極
212…高反射膜
301…発泡性シリコーン
302…加硫剤添加したシリコーン
401…n型GaN基板
402…n型GaNバッファ層
403…ブラッグ反射器
404…n型Al0.08Ga0.92Nクラッド層
405…GaInN/GaN多重量子井戸活性層
406…p型GaN/AlGaN超格子層
407…p型GaNキャップ層
408…高反射率膜
409…p側オーミック電極
410…n側オーミック電極
411…高反射膜
501…135°傾斜反射鏡
502…反射膜
503…発光素子及び第1レンズの光軸
504…第2レンズの光軸
505…レーザ光
506…希土類ドープ光ファイバ
11…VCSELアレイ基板
12…VCSEL
13…レンズアレイ基板
14…マイクロレンズ
15…面発光素子
16…光学素子
17…第1の集合体
18…第2の集合体
19…穴
20…切欠
21…切断位置
22…第1のウエハ
23…第2のウエハ
24…隔離ガラス
25…レンズ
26…回折部品
27…金属パッド
28…金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸面からレーザ光を出射させ、レーザ光の光軸が通過する第1レンズを備えた水平共振器面発光構造を備えたレーザ素子と、
前記第1レンズを通過したレーザ光が通過する第2レンズとを備え、
前記第2レンズを設けた面に対向する面と該第1のレンズを設けた面がレーザ光に対し透明な第1接着部材により接着されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
第1レンズと第2レンズの一方は回折レンズであることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1において、
前記接着部材が接着後も柔軟性を保つゲル状の部材であることを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2レンズを設けた面に対向する面と該第1のレンズを設けた面が、前記接着部材より弾性力の高いスペーサで構成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項4において、
前記スペーサがメッキ法で形成した金属層、又は、ポーラスな樹脂であることを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1接着剤とは異なる第2接着剤で、前記レーザ素子と前記第2レンズが固定されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項6において、
前記の第2の接着部材は、紫外線硬化樹脂又は加硫処理により硬化したシリコーンであることを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項1において、
前記水平共振器面発光構造を複数備えた光モジュール。
【請求項9】
請求項8において、
各水平共振器発光構造の第2レンズによって、前記複数の水平共振器面発光構造から出射する光が集光するようになっていることを特徴とする光モジュール。
【請求項1】
凸面からレーザ光を出射させ、レーザ光の光軸が通過する第1レンズを備えた水平共振器面発光構造を備えたレーザ素子と、
前記第1レンズを通過したレーザ光が通過する第2レンズとを備え、
前記第2レンズを設けた面に対向する面と該第1のレンズを設けた面がレーザ光に対し透明な第1接着部材により接着されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
第1レンズと第2レンズの一方は回折レンズであることを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1において、
前記接着部材が接着後も柔軟性を保つゲル状の部材であることを特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2レンズを設けた面に対向する面と該第1のレンズを設けた面が、前記接着部材より弾性力の高いスペーサで構成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項4において、
前記スペーサがメッキ法で形成した金属層、又は、ポーラスな樹脂であることを特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1接着剤とは異なる第2接着剤で、前記レーザ素子と前記第2レンズが固定されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項6において、
前記の第2の接着部材は、紫外線硬化樹脂又は加硫処理により硬化したシリコーンであることを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
請求項1において、
前記水平共振器面発光構造を複数備えた光モジュール。
【請求項9】
請求項8において、
各水平共振器発光構造の第2レンズによって、前記複数の水平共振器面発光構造から出射する光が集光するようになっていることを特徴とする光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−147359(P2010−147359A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324917(P2008−324917)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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