説明

光変調器

【課題】光ファイバー伝搬光と光導波路の伝搬光との間のモードフィールドの不整合による光挿入損失を低減する。
【解決手段】光変調器41は、光変調用部品42および光ファイバー伝搬光の接続用部品43A、43Bを備える。光変調用部品42が、電気光学材料からなる変調用基板44、変調用基板に設けられている変調用光導波路、変調用光導波路に対して電圧を印加し、伝搬光を変調する高周波相互作用部、第一の支持基板4、および変調用基板を第一の支持基板4に接着する第一の接着層3を備える。接続用部品43A、43Bが、電気光学材料からなる基板48、基板48に形成されている接続用光導波路、第二の支持基板2、および基板48を支持基板2に接着する第二の接着層1を備える。基板44が基板48に対して接着されている。支持基板4が支持基板2に対して接着されている。変調用光導波路が接続用光導波路と連続する。基板44の厚さP1が基板48の厚さP2よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行波型光変調器等の光変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、光制御素子の光導波路を、基板の末端面で折り返すことによって、光波と変調波との相互作用長を長くし、駆動電圧を低下させ、光波と信号波との整合速度差を補償して高速動作を実現している。
【特許文献1】特開平4−355714
【0003】
非特許文献1では、PLC光回路とLN導波路デバイスを接続している。また、特許文献2では、PLC光回路とLN導波路デバイスとを接続することが記載されており、この際、二つの基板間で光導波路のモードフィールド径が異なるために、その間にモードフィールド径を調整するためのテーパー部を設けることが記載されている。
【非特許文献1】「Highly Functional Hybrid ModulesUsing Low Loss Direct Attachment Technique with Plannar LightwaveCircuit and LiNbO3 Devices 」T. Yamada et al. 「ISMOT-2005」pp.107-110, 2005
【特許文献2】特開2005-173162
【0004】
なお,特許文献3には、いわゆるヤトイ構造が記載されている。
【特許文献3】特開2004-245991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、本出願人は、特許文献4において、高周波相互作用部を含む光変調用基板と、光ファイバーに接続される厚い受動基板とを別体とし、両者を接着することによって、一体の光変調器を形成することを開示した。
【特許文献4】特願2007−33317
【0006】
光変調器の高周波相互作用部は、駆動電圧を低減するために、電極ギャップを狭くする必要がある。一方、電極ギャップを狭くしつつ、同時に、特性インピーダンス整合を保ち、光波−マイクロ波速度整合を達成するためには、変調器基板の厚さを10μm以下、特には5μm以下にまで薄くする必要がある。
【0007】
このような非常に薄いニオブ酸リチウム基板上に例えばチタン拡散光導波路を形成すると、基板の厚さ方向(縦方向)のモードサイズが基板厚さで制約されるために、横に偏平な形状となる。一方、接続するべき光ファイバーのモードフィールド径は10μm程度の円形である。このため、薄いニオブ酸リチウム基板上に形成された光導波路を、外部の光ファイバーに対して接続すると、挿入損失が増加する。
【0008】
本発明の課題は、分岐型光導波路を伝搬する光に対して電圧を印加し、変調する高周波相互作用部を備えている光変調器において、光ファイバー伝搬光と光導波路の伝搬光との間のモードフィールドの不整合による光挿入損失を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光変調用部品および光ファイバー伝搬光の接続用部品を備えている光変調器であって、
光変調用部品が、電気光学材料からなる変調用基板、変調用基板に設けられている変調用光導波路、変調用光導波路に対して電圧を印加し、伝搬光を変調する高周波相互作用部、第一の支持基板、および変調用基板を第一の支持基板に接着する第一の接着層を備えており、
接続用部品が、電気光学材料からなる接続用基板、接続用基板に形成されている接続用光導波路、第二の支持基板、および接続用基板を第二の支持基板に接着する第二の接着層を備えており、
変調用基板が接続用基板に対して接着されており、第一の支持基板が第二の支持基板に対して接着されており、変調用光導波路が接続用光導波路と連続しており、変調用基板の厚さが接続用基板の厚さよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波相互作用を営む部分と、光ファイバー伝搬光を入射または出射させるべき光接続部分とを、上記のように別々のチップによって構成した。そして、光ファイバー伝搬光を接続する接続用部品は、高周波相互作用を営む変調用基板よりも厚くする。これによって、光ファイバー伝搬光を変調器に入射、あるいは変調器から出射させるときの挿入損失を低減できる。
【0011】
これに加えて、単独の厚い光ファイバー接続用基板を、薄い変調用基板とその支持基板とに対して接着する場合には、接続用基板と変調用基板とのモードフィールド径の相違があり、それによる光挿入損失が見られる。また、変調用基板は非常に薄く、支持基板および接着層のほうが厚いので、接着層と接続用基板との間の熱膨張のミスマッチによって、変調特性の温度変動が生ずることがある。
【0012】
本発明によれば、接続用基板を高周波変調用基板に接着すると同時に、両方の下にある各支持基板も互いに接着する構造とした。これによって、接続用基板と変調用基板との厚さの差を小さくでき、接続用基板と変調用基板とのモードフィールド径の相違による光挿入損失をいっそう低減できる。また、変調用基板下の接着層と接続用基板との間の熱膨張のミスマッチの影響もほとんどなくなり、これによる変調特性の温度変動も生じない。
【0013】
なお、「Highly Functional Hybrid Modules
Using Low Loss Direct Attachment Technique with Plannar Lightwave
Circuit and LiNbO3 Devices 」T. Yamada et al. 「ISMOT-2005」pp.
107-110, 2005、および特開2005-173162では、二種類の異なる光導波路基板を結合しているが、これは例えばニオブ酸リチウム光変調器と、PLC(石英系平面光回路)とを接合することで、光時分割多重モジュールを製造するものである。しかし、光変調器とPLCとはそれぞれ別個の機能を営むものであり、光変調器それ自体を能動部品(光変調作用部)と接続用部品とに分割することは想定されていない。また接続用基板としてニオブ酸リチウムとPLCという異質の材質からなる光導波路基板同士を接合することは線膨張係数のミスマッチが大きく、デバイスの信頼性、変調動作の安定性の観点から問題がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、「高周波相互作用部」とは、光導波路に高周波電圧が印加され、光が変調される領域のことである。ここで言う高周波電圧とは、1GHz以上の周波数の電圧を意味する。
【0015】
本変調の電極は、いわゆるCPW型光変調器には限定されず、種々の形態の光変調器に対して適用できる。本発明は、例えば、いわゆるACPS型の光変調器や、独立変調型の光変調器に対して、適用可能である。
【0016】
図1〜図4は、いわゆるSSB変調器に対して本発明を適用した例を示すものである。
図1は、光変調器41を示す平面図であり、図2(a)は、接続用部品43A(43B) を示す平面図であり、図2(b)は、接続用部品43A(43B)を示す側面図である。図3(a)は、変調用部品42を示す平面図であり、図3(b)は、変調用部品42を示す側面図であり、図4は、光変調器41を示す側面図である。
【0017】
図3(a)、図3(b)に示すように、光変調用部品42は、変調用基板44、支持基体4および両者を接着する低誘電率層3を備えている。変調用基板44では、端面44aから端面44bへと向かって光導波路26dが延びている。部品42の端面44aには、光導波路の端面55が形成されており、露出している。また、部品42の反対側の端面44b側には、光導波路の端面56が露出している。端面44aと44bとの間には、第二次の分岐部26dが例えば合計4列形成されている。
【0018】
図1、図2、図4の接続用部品43A、43Bは、それぞれ、基板48からなっている。光入射側の接続用部品43Aでは、基板48上に入射部26a、第一次の分岐部26b、26c、第二次の分岐部の末端が形成されている。光出射側の接続用部品43Bでは、基板48上に出射部26g、第一次の分岐部26e、26fおよび第二次の分岐部の末端が形成されている。
【0019】
光変調用部品42の両端面にそれぞれ接続用部品43A、43Bを接合することで、光変調器41を作製する。本例では、各接続用基板48の接合面48bを、変調用基板44の接合面44a、44bおよび接着層3の端面3a、3bの上部に接着し、第二の接着層1の端面1bを、第一の接着層3の端面3a、3bおよび第一の支持基板4の端面4a、4bへと接着し、第二の支持基板2の端面2bを第一の支持基板4の端面4a、4bへと接着する。
【0020】
本例では、光ファイバー伝搬光は、図1に示すように、矢印Aのように光導波路26の端部26aから入射し、分波部39Aで分岐し、第一次の分岐部26b、26cを通過し、再び分波部39Bで分岐し、第二次の分岐部26dに入射する。そして、分岐部26d内で変調が加えられる。次いで、分岐部26dの光は合波部40Bで合波され、第一次の分岐部26e、26fを通過し、更に合波部40Aで合波され、出射部26gを通過し、矢印Bのように変調器外へと出射する。
【0021】
ただし、本例では、矢印Aの入射光、矢印Bの出射光は、いずれも、光ファイバー伝搬光となる。また、光入射部、光出射部ともに、光ファイバーを、直接、接続用部品43A、43Bへとピッグテイル接続することができる。あるいは、光ファイバーをレンズ結合を通して各接続用部品の光導波路へと結合することができる。いずれも、光ファイバー伝搬光が接続用部品に対して接続されている。
【0022】
図5〜図7は、いわゆるCSRZ変調器に対して本発明を適用した例を示す。図5は、光変調器51を示す平面図である。図6(a)は、接続用部品53を示す平面図であり、図6(b)は、接続用部品53の側面図である。図7は、光変調器51の側面図である。
【0023】
光変調用部品52は、変調用基板54、第一の支持基体14および両者を接着する第一の接着層13を備えている。変調用基板54では、接合面54aから端面54bへと向かって光導波路36が延びている。具体的には、4列の第一次の分岐部36c、36d、合波部40A、分波部39B、導波部36e、36f、反射部36gが設けられている。部品52の接合面54aには、光導波路の端面55が形成されており、露出している。部品52の端面54bには反射材7が形成されている。
【0024】
図6に示すように、接続用部品53は基板58からなっている。基板58上には、入射部36a、出射部36h、分岐部39A、合波部40Bおよび第一次の分岐部36bが形成されている。
【0025】
光変調用部品52の接合面54aに接続用部品53を接合することで、光変調器51を作製する。例えば、図7に示すように、接続用基板58の接合面58bを、変調用基板54の接合面54aおよび接着層13の端面13aの上部に接着し、第二の接着層11の端面11bを、第一の接着層13の端面13aおよび第一の支持基板14の端面14aへと接着し、第二の支持基板12の端面12bを第一の支持基板14の端面14aへと接着する。
【0026】
本例では、光導波路36の入射部36aから入射した光は、分波部39Aで分岐し、分岐部36bを通過し、分岐部36cで変調が加えられる。次いで、分岐部36dの光は合波部40Aで合波され、導波部36e、36f、反射部36gを通過し、反射材7で反射される。次いで、反射部36g、導波部36eを通過し、分波部39Bで分岐し、変調部36cで所定の変調を受ける。次いで、分岐部36bを通過し、合波部40Bで合波し、出射部36hから出射する。
【0027】
本発明においては、例えば図4、図7に示すように、変調用基板44、54が接続用基板48、44に対して接着されており、第一の支持基板4、14が第二の支持基板2、4に対して接着されており、変調用光導波路が接続用光導波路と連続しており、変調用基板の厚さP1が接続用基板の厚さP2よりも小さい。
【0028】
本発明の効果の観点からは、変調用基板の厚さP1と接続用基板の厚さP2との差は、0.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることが更に好ましく、4μm以上であることが最も好ましい。
【0029】
一方、変調用基板の厚さP1と接続用基板の厚さP2との差を20μm以下とすることによって、接続用基板と変調用基板とのモードフィールド径の相違による光挿入損失をいっそう低減でき、接着層と接続用基板との間の熱膨張のミスマッチの影響も抑制できる。この観点からは、P1とP2との差を10μm以下とすることが更に好ましい。
【0030】
また、特性インピーダンス整合と光波とマイクロ波との速度整合という観点からは、変調用基板の厚さP1は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
【0031】
好適な実施形態においては、接続用基板が第一の接着層に対しても接着されている。
【0032】
第一の支持基体の厚さS1、第二の支持基体の厚さS2(図2、図4、図6、図7参照)は特に限定されないが、部品の取り扱いという観点からは、100μm以上が好ましく、500μm以上が更に好ましい。
【0033】
第一の接着層3、13の厚さA1、第二の接着層1、11の厚さA2は特に限定されないが、光波とマイクロ波との速度整合という観点からは、10μm以上であることが好ましい。また、接合部での線膨張係数差に伴う応力緩和という観点からは、1000μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0034】
光変調用基板、あるいは接続用基板の中には、バイアス点を移動するために、位相調整用の電極を設けることができる。位相調整用の電極とはdcバイアス点を調整するために駆動する電極のことである。この駆動電圧の周波数は、例えば1KHz〜400MHzである。
【0035】
また、光導波路には、前述した各例のように、合波部、分波部を設けることができる。この場合には、合波部、分波部は、光変調用基板に設けても良く、接続用基板に設けても良い。合波部、分波部を接続用基板に設けた場合には、接続用基板の方が厚いので、伝搬光をシングルモード化し、消光比を向上しやすいという利点がある。
【0036】
光導波路は、変調用基板、接続用基板の一方の主面に直接形成されたリッジ型の光導波路であってよく、各基板の一方の主面の上に他の層を介して形成されたリッジ型の光導波路であってよく、また各基板の内部に内拡散法やイオン交換法によって形成された光導波路、例えばチタン拡散光導波路、プロトン交換光導波路であってよい。具体的には、光導波路が、基板表面から突出するリッジ型光導波路であってよい。リッジ型の光導波路は、レーザー加工、機械加工によって形成可能である。あるいは、高屈折率膜を基板上に形成し、この高屈折率膜を機械加工やレーザーアブレーション加工することによって、リッジ型の三次元光導波路を形成できる。高屈折率膜は、例えば化学的気相成長法、物理的気相成長法、有機金属化学的気相成長法、スパッタリング法、液相エピタキシャル法によって形成できる。
【0037】
上記の各例では、電極は変調用基板の表面に設けられているが、変調用基板の表面に直接形成されていてよく、低誘電率層ないしバッファ層の上に形成されていてよい。低誘電率層は、酸化シリコン、弗化マグネシウム、窒化珪素、及びアルミナなどの公知の材料を使用することができる。ここで言う低誘電率層とは、基板本体を構成する材質の誘電率よりも低い誘電率を有する材料からなる層を言う。
【0038】
変調用基板、接続用基板を構成する材料は、強誘電性の電気光学材料、好ましくは単結晶からなる。こうした結晶は、光の変調が可能であれば特に限定されないが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウム、KTP、GaAs及び水晶などを例示することができる。
【0039】
支持基体の材質は、上記した強誘電性の電気光学材料に加えて、更に石英ガラス等のガラスであってもよい。
【0040】
また、好適な実施形態においては、変調用基板と接続用基板とが同種の材質からなる。ここで、同種の材質とは、材質の基本組成が同じであればよく、ドープ成分の有無は問わない。このように同種の材質からなる光変調基板と接続用基板とを接合することは、異種材料からなる異種機能部品の接合を前提とする特開2005−173162(特許文献2)からは、不自然であり、想定できないと考えられる。
【0041】
変調用基板、接続用基板と支持基体とを接着する接着剤は、変調用基板よりも低誘電率である材料からなる。その具体例は、前記の条件を満足する限り特に限定されないが、エポキシ系接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化性接着剤、アロンセラミックスC(商品名、東亜合成社製)(熱膨張係数13×10−6/K)を例示できる。
【0042】
変調用基板と接続用基板とを接合する方法は特に限定されず、以下を例示できる。変調用基板と接続用基板を接合するためには、サブミクロンの精度で可動できる光学調芯機を用いて実施することができる。変調器基板と接続用基板は、光学調芯機の専用冶具にそれぞれ固定する。最初に、変調器基板上の光導波路と光ファイバの光軸を光導波路から出射する光パワーが最大になる位置に調芯する。次に、接続用基板の光導波路と変調用基板の光導波路を調芯する。その後、UV硬化樹脂を使用して双方を接合する。
【0043】
なお、チップ間のあおり調整は、調芯機の専用冶具の組み付け精度で調整しなくともよいが、高精度を要求する場合には調芯機のあおり調芯にて調整することもできる。変調用基板と接続用基板の接合面、および光ファイバとの接合面には、ヤトイ構造を設けてもよい。この場合には、環境温度の変化によって光出力の変動を抑制することが可能となる。このヤトイ構造は、たとえば、特開2004-245991(特許文献3)に記載されている。
【0044】
特に、変調用基板と接続用基板とを接着する場合には、接着剤は特に限定されないが、エポキシ系接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化性接着剤、アロンセラミックスC(商品名、東亜合成社製)(熱膨張係数13×10−6/K)を例示できる。
【0045】
上記した各例では、振幅変調器に発明を適用した場合について述べたが、光導波路配置が異なる位相変調器に対しても本発明を適用できる。
【0046】
好適な実施形態においては、良好な反射減衰を確保するために、変調用基板の接合面44a、44b、54aが、分岐部における伝搬光の進行方向に垂直な平面Lに対して傾斜している(図1、3、5、6参照)。この傾斜角度θは特に限定されないが、光導波路のスポットサイズ直径が10ミクロンの場合、1°以上が好ましく、また、30°以下が好ましい。但し、好適なθは接続する光導波路のスポットサイズに依存するため、スポットサイズが大きければ好適なθはこれより小さくなり、反対にスポットサイズが小さい場合は、好適なθはこれより大きくなる可能性がある。
【0047】
図1、図3、図5、図6では、チップの幅方向に傾斜角度θを設けているが、チップの厚み方向に傾斜角度を設けることもできる。
【0048】
また、端面に反射防止コートを用いることでも反射減衰を向上することができるため、良好な反射減衰量を確保しつつ、θを0°にすることも可能である。
【0049】
また、変調用基板上、接続用基板上の各光導波路がチタン内拡散光導波路である場合には、光導波路を形成するためのチタン膜の厚さを、変調用基板側において相対的に小さくし、相互作用部における光の閉じ込めを弱くしてシングルモード化することができる。これによって消光比が向上する。更に、光導波路を形成するためのチタン膜の厚さを、接続用基板において相対的に大きくし、光導波路の曲がり部における光の閉じ込めを強くして、曲がり部からの光の放射による損失を低減することができる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
図1〜図4に示す光変調器41を製造した。
具体的には、Xカットした3インチウエハ(LiNbO単結晶)を使用し、チタン拡散プロセスとフォトリソグラフィー法とによって、ウエハの表面にマッハツェンダー型の光導波路を形成した。光導波路のサイズは、例えば1/eで10μmとできる。次いで、メッキプロセスにより、信号電極および接地電極を形成した。
【0051】
次に、研磨定盤に研磨ダミー基板を固定し、その上に変調器用の基板本体を、電極面を下向きにして貼り付けた。次に、横型研磨、ラップおよびポリッシング(CMP)にて変調器用基板44を薄型加工した。次いで、平板状の支持基板4上に基板44を接着した。光導波路の端面(光ファイバーへの接続部)を端面研磨し、ダイシングにてウエハを切断し、各チップを得た。チップの幅を2mmとした。
【0052】
RF変調基板の接合部での反射戻り光を抑制するため、端面に角度6°の傾斜を設けた。チップ接合面には端面斜め研磨加工を行い、その後ARコート膜を蒸着により形成した。
【0053】
一方、Xカットした3インチウエハ(LiNbO単結晶)を使用し、チタン拡散プロセスとフォトリソグラフィー法とによって、ウエハの表面にマッハツェンダー型の光導波路を形成した。光導波路のサイズは、例えば1/eで10μmとできる。次いで、ウエハを加工し、幅2mmの接続用基板48を得た。接続用基板の接合面には角度6°の傾斜を設けた。
【0054】
次に、研磨定盤に研磨ダミー基板を固定し、その上に接続用基板を貼り付けた。次に、横型研磨、ラップおよびポリッシング(CMP)にて接続用基板を薄型加工した。次いで、平板状の支持基板2上に基板48を接着した。光導波路の端面(光ファイバーへの接続部)を端面研磨し、ダイシングにてウエハを切断し、各チップを得た。チップの幅を2mmとした。
【0055】
光導波路の導波光を観察する事で両基板のアラインメントを行い、紫外線硬化型樹脂を用いて接合し、図1〜図4の変調器41を得た。ただし、信号電極と接地電極とのギャップは13.5μmとし、各電極の厚みを6μmとした。光導波路の各湾曲部の曲率半径は15mmとした。各パラメーターは以下のとおりである。
P1:5ミクロン
P2:8ミクロン
A1:100ミクロン
A2:100ミクロン
S1:500ミクロン
S2:497ミクロン
【0056】
接合した光導波路のチップ接合部での結合損失を測定したところ、0.2dBであった。また、入射光の反射減衰量も十分に確保されており、光源に影響がない事を確認した。RF変調部5に形成したRF電極の高周波特性をネットワークアナライザを用いて測定したところ、S21の-6dB帯域として25GHz以上が確保されており、40Gb/s変調が可能である事も確認した。
【0057】
更に、偏波保持光ファイバを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを接続用基板の光導波路の出射側端面に対して光学結合した。そして、光挿入損失を測定したところ,-6dBであった。
【0058】
(実施例2)
光導波路の導波光を観察する事で両基板のアラインメントを行い、紫外線硬化型樹脂を用いて接合し、図1〜図4の変調器41を得た。ただし、信号電極と接地電極とのギャップは13.5μmとし、各電極の厚みを6μmとした。光導波路の各湾曲部の曲率半径は15mmとした。各パラメーターは以下のとおりである。
P1:5ミクロン
P2:5.5ミクロン
A1:100ミクロン
A2:100ミクロン
S1:500ミクロン
S2:499.5ミクロン
【0059】
接合した光導波路のチップ接合部での結合損失を測定したところ、0.05dBであった。また、入射光の反射減衰量も十分に確保されており、光源に影響がない事を確認した。RF変調部5に形成したRF電極の高周波特性をネットワークアナライザを用いて測定したところ、S21の-6dB帯域として25GHz以上が確保されており、40Gb/s変調が可能である事も確認した。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同じ材質、寸法の光変調器を作製した。ただし、変調器用基板と接続用基板とは分離せず、一体の変調用基板とした。この一体の基板の厚さは一定とし、一体とした変調用基板の厚さ5ミクロン、一体とした支持基板の厚さを500ミクロンとした。
【0061】
RF変調部5に形成したRF電極の高周波特性をネットワークアナライザを用いて測定したところ、S21の-6dB帯域として25GHz以上が確保されており、40Gb/s変調が可能である事も確認した。更に、偏波保持光ファイバを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを接続用基板の光導波路の出射側端面に対して光学結合した。そして、光挿入損失を測定したところ,-12dBであった。
【0062】
(比較例2)
実施例1と同じ材質および寸法の光変調器を作製した。ただし、各寸法パラメーターは以下のように設定した。
P1:5ミクロン
P2: P1と同一
A1:100ミクロン
A2:100ミクロン
S1:500ミクロン
S2:500ミクロン
【0063】
RF変調部5に形成したRF電極の高周波特性をネットワークアナライザを用いて測定したところ、S21の-6dB帯域として25GHz以上が確保されており、40Gb/s変調が可能である事も確認した。更に、偏波保持光ファイバを光導波路の入射側端面、シングルモード光ファイバーを接続用基板の光導波路の出射側端面に対して光学結合した。そして、光挿入損失を測定したところ,-12dBであった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】光変調器41を示す平面図である。
【図2】(a)は、接続用部品43Aを示す平面図であり、(b)は、接続用部品43Aを示す側面図である。
【図3】(a)は、変調用基板42を示す平面図であり、(b)は、変調用基板42を示す側面図である。
【図4】光変調器41を示す側面図である。
【図5】他の実施形態に係る光変調器51を示す平面図である。
【図6】(a)は、接続用基板53を示す平面図であり、(b)は、接続用基板53を示す側面図である。
【図7】光変調器51を示す側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1、11 第二の接着層 2、12 第二の支持基板 3、13 第一の接着層 4、14 第一の支持基板 5 変調部 26、36 光導波路 39A、39B 分波部 40A、40B 合波部 41、51 光変調器 42 変調用部品 43A、43B、53 接続用部品 44、54 変調用基板 44a、44b、54a、54b 変調用基板の端面 48、58 接続用基板 55、56 光導波路の端面 A 入射光 B 出射光 A1 第一の接着層の厚さ A2 第二の接着層の厚さ P1 変調用基板の厚さ P2 接続用基板の厚さ S1 第一の支持基板の厚さ S2 第二の支持基板の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調用部品および光ファイバー伝搬光の接続用部品を備えている光変調器であって、
前記光変調用部品が、電気光学材料からなる変調用基板、この変調用基板に設けられている変調用光導波路、前記変調用光導波路に対して電圧を印加し、伝搬光を変調する高周波相互作用部、第一の支持基板、および前記変調用基板を前記第一の支持基板に接着する第一の接着層を備えており、
前記接続用部品が、電気光学材料からなる接続用基板、この接続用基板に形成されている接続用光導波路、第二の支持基板、および前記接続用基板を前記第二の支持基板に接着する第二の接着層を備えており、
前記変調用基板が前記接続用基板に対して接着されており、前記第一の支持基板が前記第二の支持基板に対して接着されており、前記変調用光導波路が前記接続用光導波路と連続しており、前記変調用基板の厚さが前記接続用基板の厚さよりも小さいことを特徴とする、光変調器。
【請求項2】
前記変調用基板の厚さが10μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の光変調器。
【請求項3】
前記変調用基板の厚さと前記接続用基板の厚さとの差が0.5μm以上であることを特徴とする、請求項1または2記載の光変調器。
【請求項4】
前記接続用基板が前記第一の接着層にも接着されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の光変調器。
【請求項5】
前記変調用基板の前記接続用基板への接合面が、前記変調用光導波路における伝搬光の進行方向に垂直な平面に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の光変調器。
【請求項6】
前記変調用基板と前記接続用基板とが同種の材質からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の光変調器。
【請求項7】
前記接続用部品の前記接続用光導波路が合波部または分波部を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−222753(P2009−222753A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64101(P2008−64101)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】