説明

光電気複合配線モジュールおよびその製造方法

【課題】低コストかつ低ロスで光信号を長尺に伝送することができると共に、大電流の電気信号を伝送することが可能な光電気複合配線モジュールの提供を目的とする。
【解決手段】光信号を受信する受光モジュールおよび/または光信号を送信する光送信モジュールと光信号を伝送する光導波路とが実装されたプリント基板とからなり、フラットケーブルの両端に前記プリント基板が電気的及び光学的に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、例えば大画面の映像装置内に組み込まれて装置内の信号伝送に用いられたり、サーバなどの情報処理装置間の信号伝送等に用いられるものであり、光信号を伝送する光伝送路と、電気信号を伝送する電気配線とが複合化された光電気複合配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの高解像度化、大画面化、及び情報伝送機器やストレージ機器で取り扱うデータ量の増加に伴い、データを長距離かつ高速伝送することが可能な高速伝送線が求められている。高速伝送線としては、シールド機能を有する同軸ケーブルやシールド中に1対の差動線路を有する差動伝送線が用いられているが、ノイズやスキューの問題から伝送距離に限界がある。
【0003】
この解決策として、たとえば情報処理装置(本体)とモニタ、またはサーバとサーバ間などの情報信号をやり取りする部分に光伝送路を設けて光伝送を行う方式がある。
【0004】
これらの光伝送に用いられるデバイスとしては、光ファイバ、あるいは光ファイバと電気ケーブルが複合された光電気複合ケーブルを介して、光電気複合ケーブルの両端にLD(Laser Diode)やPD(Photo Diode)などの光素子と、それらを駆動するためのIC(Integrated Circuit)から構成されるモジュールと、情報伝送機器やストレージ機器と接続するための電気コネクタを有するモジュールが接続された光電気複合ケーブルがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−57468号
【特許文献2】特開2008−159766号
【特許文献3】特開2000-214972号公報
【特許文献4】特開2002-366340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光電気複合配線ケーブルとしてフレキシブルプリント配線基板を用いる場合、フレキシブルプリント配線基板はマスクを用いてレジストをパターニングし、電気配線パターンとなる銅層をエッチングすることにより銅パターンを作製する技術であるため製造サイズに制限があり、例えば1メートル以上の長尺物を製造することは困難である。また、薄い銅層(厚さ;6〜50μm程度)を使用しているため電気配線の抵抗が大きく、全体の配線が長くなる場合電気配線の抵抗が無視できなくなる。更に電気配線の抵抗が大きくなるため、大電流(数100mA以上)の電気信号を伝送することが困難であった。
【0007】
また光伝送路の材料として高分子材料(ポリマなど)を用いた光導波路の場合、0.1dB/cm程度の伝送ロスが発生する。このため伝送距離が0.3m以上になると光の伝送ロスが大きくなり、特に伝送距離が1mを超える場合には、実用化が困難となる。また使用する高分子材料(ポリマなど)は一般的なシリカガラス系光ファイバと比べると高価であり、伝送距離が長くなると使用量も多量になるため高コストとなる。
【0008】
そこで本願発明は上記した事情に鑑み為されたもので、低コストかつ低ロスで光信号を長尺に伝送すると共に、大電流の電気信号伝送が可能な光電気複合配線モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み為されたもので、
光伝送路と電気配線とからなるフラットケーブルと、光信号を受信する受光モジュールおよび/または光信号を送信する光送信モジュールと光信号を伝送する光導波路とが実装されたプリント基板とからなり、前記フラットケーブルの両端または片端に前記プリント基板が電気的及び光学的に接続されていることを特徴とする光電気複合配線モジュールである。
【0010】
また、光伝送路と電気配線とからなるフラットケーブルと、光信号を受信する受光モジュールおよび/または光信号を送信する光送信モジュールと光信号の光路を変換する光学ブロックとが実装されたプリント配線基板とからなり、前記フラットケーブルの両端または片端に前記プリント基板が電気的及び光学的に接続されている光電気複合配線モジュールである。
【0011】
また、前記プリント基板には前記フラットケーブルの前記光伝送路の一部係合する光伝送路用溝と、前記フラットケーブルの前記電気配線と電気的に接続するための電気配線用パターンとが形成され、前記光導波路が形成された面側の前記電気配線用パターンの上方には電気配線用溝が形成されている光電気複合配線ケーブルである。
【0012】
また、前記プリント基板には前記フラットケーブルの前記光伝送路の一部係合する光伝送路用溝と、前記フラットケーブルの前記電気配線と電気的に接続するための電気配線用パターンとが形成され、前記光伝送路用溝が形成された面側の前記電気配線用パターンの上方には電気配線用溝が形成されている光電気複合配線ケーブルである。
【0013】
また、前記プリント基板は、前記光伝送路用溝が形成された端面側とは反対側の端面に、外部装置に配設された電気コネクタと挿抜可能な電気コネクタ部が形成されてもよい。
【0014】
また、前記プリント基板は幅方向の中央部に前記光導波路または前記光学ブロックが配設され、前記フラットケーブルは幅方向の中央部に前記光伝送路が配設され、前記電気配線部は前記プリント基板および前記フラットケーブルの両側面側に配設されていてもよい。
【0015】
また、前記プリント基板の長さが5cm以下であると共に、前記フラットケーブルの前記光伝送路長が20cm以上の光電気複合配線モジュールである。
【0016】
また、光の伝送路となる複数の光伝送路を中央に、その両脇に複数の電気配線を配置する工程、
所定の間隔で開口領域が形成された被覆2枚を前記光伝送路と前記電気配線の上下の表面を挟むようにして被覆を圧着してフラットケーブルを製造する工程、
所定の間隔で開口領域が形成された前記フラットケーブルの前記開口領域の前記光伝送路及び前記電気配線の一部を除去する工程、
前記フラットケーブルの前記開口領域の光伝送路および電気配線の被覆を除去してむき出しとしフラットケーブルの端面部から突出させる工程、
プリント基板には電気配線層が絶縁層を介して積層された構造を有し、積層された前記電気配線層はスルーホールを介して電気的に接続され、前記電気配線層の一方の表面に光信号が伝送される光導波路層を形成する工程、
前記光導波路の一部に光信号の光路を変換する反射部を形成し、前記反射部の上方に光信号を受信する受光モジュール及びまたは光信号を送信する光送信モジュールを実装する工程、
前記フラットケーブルの突出した光伝送路と前記プリント基板に形成した光伝送路用溝が係合して光学接着剤により接続固定され、前記受光モジュール及びまたは前記光送信モジュールと前記光伝送路とが光学的に接続する工程、
前記プリント基板の光伝送路用溝が形成された端面側とは反対側の端面に電気コネクタを形成する工程、
前記フラットケーブルに形成された前記電気配線用溝により位置を規制されて前記フラットケーブルの電気配線が前記プリント基板に形成された前記電気配線用パターンとはんだ、または導電性接着剤により電気的に接続固定する工程、
前記フラットケーブルと前記プリント基板が接合された後、前記プリント基板と前記フラットケーブルの一部を保護部材で覆う工程、
前記プリント基板を受光モジュール列及びまたは光送信モジュール列の間で切断する工程、
とからなる光電気複合配線モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光伝送路としては大部分の光伝送路は光ファイバを用いて伝送し、高分子材料(ポリマなど)を用いた光導波路は数cmであるため、全体の伝送距離が0.3m以上となっても光信号を低ロスかつ低コストで伝送することができる。特に光伝送距離が1mを超える場合に効果が顕著となる。
【0018】
また、電気信号はフレキシブルなフラットケーブルに配設された電気配線ケーブルにより伝送することで大電流(数100mA以上)の電気信号を伝送することが可能となる。
【0019】
光信号を受信する受光モジュールおよび/または光信号を送信する光送信モジュールとが実装されたプリント配線基板と、光伝送路と電気配線とからなるフラットケーブルとを電気的及び光学的に接続する構造であるため、ワイヤボンディングが不要となり、寄生容量を低減できる。これにより高速(5Gbit/sec以上)な伝送が可能となる。また、フラットケーブルの両端から延伸する光ファイバ、電気配線に対し、フレキシブルプリント基板に形成された光伝送路用溝および電気配線用溝をそれぞれ係合させて位置が規制されて上から重ねるように接続固定するため、簡単かつ高精度に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に関し、光電気複合配線モジュールの上面図である。
【図2】本発明の実施形態に関し、光電気複合配線モジュールの横断面図である。
【図3】本発明の実施形態に関し、フレキシブルプリント基板の横断面図である。
【図4】本発明の実施形態に関し、光電気複合配線モジュールの使用形態の図である。
【図5】本発明の実施形態に関し、フレキシブルプリント基板におけるフラットケーブルとの接続端面部の構成を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施形態に関し、製造方法を説明する上面図である。
【図7】本発明の変形例の形態に関し、光導波路に換えて光学ブロックを用いた構造図である。
【図8】本発明の実施形態に関し、フラットケーブルとフレキシブルプリント基板の接続部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に従って説明する。なお同じ部品・装置には同じ符号を付与している。
【0022】
図1は、光電気複合配線モジュール100の上面図であり、図2はその横断面図である。
【0023】
フラットケーブル(FFC)101はフレキシブルであり(可撓性を有し)、光伝送路として4本の光ファイバ102と、電源供給および電気信号を伝送するための8本の電気配線103から構成され、外側はポリエーテルイミドやポリエチレンテレフタレートなどの材料からなる絶縁フィルムであるラミネート201で覆い保護された構造となっている。光ファイバ102はシングルモード光ファイバであるが、ホーリー光ファイバやマルチモード光ファイバを用いても良い。ホーリー光ファイバを用いることで小さな曲げでも光損失が小さくなり、配線の自由度が大きくなり配線し易くなる。一方マルチモード光ファイバを用いると、マルチモード光ファイバはコア径が50μm以上あり、発光素子(レーザダイオード)との光結合が容易となる。
【0024】
電気配線103は銅などの金属材料からなり、断面形状は扁平な長方形であり、一例として厚さ0.1mm、幅0.2mmの寸法を有する。厚さが0.1mmあるため、大電流(数100mA)の電気信号を伝送することが可能となる。
【0025】
フレキシブルプリント基板104a,104bは可撓性を有し、フラットケーブル101の両端にそれぞれ接続され、電気信号伝送用の電気配線301からなる銅層、絶縁層302としてのポリイミド層、及び光信号を伝送する光導波路303層からなる(図3参照)。電気配線301はマスクによるパターニングで形成される。光信号を伝送する光導波路303は高分子材料(ポリマ材など)を用いており、可撓性を有する。光導波路303のパターンはマスクによるパターニング、または金型で形成することもできる。
【0026】
図4は光電気複合配線モジュール100の使用形態を説明する図である。この使用形態では、外部装置400、402間は光電気複合配線モジュール100を介して信号伝送される。
【0027】
図示しないがこの他に、図4の外部装置400、402が一つの情報処理装置に相当し、この情報処理装置内を図4に示す構成と同様に光電気複合配線モジュール100を介して信号伝送することも勿論可能である。
【0028】
次に、信号伝送の流れを図1乃至図4に基いて説明する。
【0029】
外部装置400の電気コネクタ401と、フラットケーブル101の左端に接続されたフレキシブルプリント基板104aのカードエッジコネクタ304とが接続される。同様に、外部装置402の電気コネクタ403と、フレキシブルフラットケーブル101の右端に接続されたフレキシブルプリント基板104bのカードエッジコネクタ304bとが接続される。外部装置400からコネクタ401を介してフレキシブルプリント基板104aに電気信号を送り、フレキシブルプリント基板104aに実装された光送信モジュール105に伝送される。光送信モジュール105は4個のVCSEL(面発光レーザダイオード)アレイ106およびVCSELアレイ106を駆動するレーザドライバIC(集積回路)107からなり、外部装置400から送信された電気信号をVCSELアレイ106により光信号に変換する。VCSELアレイ106から出射された光信号202は、反射部305にて光路を90度変換されてフレキシブルプリント基板104aに配設された光導波路303に結合されて伝搬し、フラットケーブル101の光ファイバ102を伝送・経由し、フラットケーブル101の右端に接続されたフレキシブルプリント基板104bの光導波路303bに光結合されて伝搬し、光導波路303bに形成された反射部305bで光路を90度変換されてフレキシブルプリント基板104bに実装された受光モジュール108に伝送される。受光モジュール108は4個のPD(フォトダイオード)アレイ109、およびプリアンプIC110からなり、PDアレイ109では受光した光信号を電気信号に変換し、その電気信号をプリアンプIC110で増幅して、カードエッジコネクタ304bを介して外部装置402に伝送する構成であり、片方向伝送の構成となっている。
【0030】
上記実施例では4個のVCSELアレイ106および4個のPDアレイ109が配設されており、4チャンネルの光伝送を同時に行うことができる。
【0031】
図5はフレキシブルプリント基板におけるフラットケーブル101との接続端面部の構造を示す。フレキシブルプリント基板104a、104bの一方の面には光ファイバ102などの光伝送路用溝306が形成されると共に、光ファイバ102からの光信号を反射して受光モジュール108に伝送する、または光送信モジュール105からの光信号を反射して光ファイバ102に伝送させる反射部305が形成されている。反射部305(305b)は光伝送路用溝306が形成されたフレキシブルプリント基板104(104a、104b)の面にV字状のダイシング刃によってV字溝を形成することにより、光伝送路用溝306が形成されたフレキシブルプリント基板104(104a、104b)の面の垂線対し45度傾斜する斜面をフレキシブルプリント基板104(104a、104b)に配設された光導波路303に形成したものである。この反射部305(305b)により光路を90度変換することができる。更に、この反射部305(305b)に金属薄膜(金、アルミなど)を蒸着などにより被膜しても良い。反射率が向上し光信号の反射損失を低減することに有効となる。金属薄膜が形成された反射部305(305b)には、金属薄膜の剥離を防止するため樹脂を充填すると良い。
【0032】
反射部305,305bが形成されたフレキシブルプリント基板104a、104bの面と反対側の面には、反射部305,305bの光軸の延長上にVCSELアレイ106またはPDアレイ109が実装される(図2参照)。
【0033】
また、フレキシブルプリント基板104a、104bには光伝送路用溝306が形成されると共に、フラットケーブル101の電気配線103と接続するための電気配線用パターン500が形成されている。フレキシブルプリント基板104a、104bは2層の電気配線301層が絶縁層302となるポリイミド層を介して積層された構造を有し、二つの電気配線301間はスルーホール307にはんだなどの導電性部材を注入または配設することで電気的に接続される(図3参照)。
【0034】
そして図3において、電気配線用パターン500は光導波路303よりも内側に配設された構造となっている。このため、フラットケーブル101の電気配線103を電気配線用パターン500に接続する際、電気配線用パターン500の下側(図5では上側)に存在する光導波路303の層が邪魔となる。そこで、電気配線用パターン500の下側(図5では上側)に光導波路303の層が無い様に、光導波路303の層を形成する際にパターニングする。これにより、電気配線用パターン500の下側(図5では上側)には電気配線用溝501が形成されて光導波路303の層は無く、電気配線用パターン500が露出した構造となる(図5参照)。これにより、フラットケーブル101の電気配線103を電気配線用パターン500にほとんど曲げることなく接続することができるため接続が容易となる。更に配線が曲がることなく最短となるため、高速伝送に有利となる。
【0035】
フレキシブルプリント基板104a、104bに形成された光伝送路用溝306とフラットケーブル101から突出された光ファイバ102を係合し、上から重ねるように接続することができる。このとき、電気配線103も同時に電気配線用溝501に位置を規制されて電気配線用パターン500に位置決めされて接続することができる。このように本構造に拠れば、フラットケーブル101とフレキシブルプリント基板104a、104bの接続を簡単にかつ高精度で行うことができる。
【0036】
フレキシブルプリント基板104a、104b及びフラットケーブル101は、幅方向の中央部に光導波路303部、または光ファイバ102部が配設され、電気配線103、301部は光導波路303部、または光ファイバ102部に対し、図1の紙面で上下方向に配設された構造となっている。例えば図1のフラットケーブル101の上方向側は電気配線103aとし、下方向側には低速な電気信号を伝送するための電気配線103bとすることで、電気配線103aと低速電気信号用の電気配線103bの間隔を広くとれるため、電気ノイズの影響を低減できる。
【0037】
フラットケーブル101の電気配線103a、103bは、上記したように電源配線と低速な電気信号を伝送するためのものであり、本実施例では4本の電源線(グランド2本、プラス電源1本、マイナス電源1本)と、4本の低速電気信号線(伝送速度10Kbit/sec以下)から構成されている。なお、4本の低速電気信号線103bの真中の2本を低速電気信号線とし、真中の2本に対する両側の2本をグランド線としても良く、この構成に拠ればインピーダンス整合が取りやすくなる。
【0038】
光導波路303層に構成された光伝送路用溝306はフラットケーブル101の光ファイバ102が配設された間隔と同じ間隔になっている。本実施例では500μm間隔となっている。更に、フレキシブルプリント基板104a、104bにはフラットケーブル101の電気配線と同じ間隔、同じ位置に電気配線用パターン500が形成されている(図5参照)。
【0039】
一方図1,2より、フレキシブルプリント基板104a、104bには、光伝送路用溝306が形成された端面側とは反対側の端面に電気コネクタであるカードエッジコネクタ304,304bが形成されている。そして外部装置400,402に設けられた電気コネクタ401、403にフレキシブルプリント基板104a、104b用のカードエッジコネクタ304,304bを挿抜することができる。
【0040】
また、光送信モジュール105や受光モジュール108が実装されたフレキシブルプリント基板104a、104b面の反対側の面に、保護板203が接着剤で貼り付けられている(図2参照)。保護板203はフレキシブルプリント基板104a、104bの面205、205bの全体とフラットケーブル101の一部(L=2〜5mm)を覆うように貼り付けられ、強度・硬度を確保している。これにより、電気コネクタ401,403への着脱に際しても十分な強度を有している。保護板203の材料としては樹脂材、金属材、プラスチック材などからなり、厚さは要求される強度を満たす厚さとすれば良く、樹脂の場合は0.2mm以上あると良い。
【0041】
一方、光送信モジュール105や受光モジュール108が実装されたフレキシブルプリント基板104a、104b面側は、カードエッジ部304,304bを除き、フレキシブルプリント基板104a、104bの全体とフラットケーブル101の一部を覆うようにラミネートされている。ラミネートの材料としてはPET(ポリエチレンテフタレート),PI(ポリイミド)などを用いることができる。ここでラミネートに換えて、樹脂を充填しても良い。
【0042】
フレキシブルプリント基板104a、104bには、光送信モジュール105や受光モジュール108とフレキシブルプリント基板との間で電気信号を伝送するための配線パターン(図示せず)が形成されており、はんだなどを介してフレキシブルプリント基板104a、104bに形成された電極パターンと光送信モジュール105や受光モジュールン108が電気的に接続される(図2参照)。
【0043】
従って、光送信モジュール106や受光モジュール108および電子部品は、フレキシブルプリント基板104a、104bに対しワイヤボンドを用いることなく電気的接続ができるため、寄生容量が低減され、5Gbit/sec以上の高速伝送に特に有利となる。
【0044】
また、フレキシブルプリント基板104a、104bは長さFが2〜3cm程度と短く、5cm以下にすることが好ましい。光導波路303の材料である高分子材料(ポリマなど)も少量で済み、低コストで製造することが可能となる。従って光導波路303の光路長も短く、光伝送損失は無視(0.1〜0.2dB程度)できるレベルとなる。そして光伝送はその大部分をフラットケーブル101に配設された光ファイバ102を介して伝送される。光ファイバ102の伝送損失は0.1dB/km未満であり、光伝送路長が1km程度までは伝送損失は無視できる。本願発明では0.3m以上の長さを有する光電気複合配線モジュールに好適であり、光伝送損失を低損失、かつ低コストで提供することができる。最短の0.3mの光電気複合配線モジュールでは、フレキシブルプリント基板104a、104bの合計の長さは0.1m以下で、残りがフラットケーブル101に配設された光ファイバ102の長さ(0.2m以上)となる。光電気複合配線モジュール100の長さが0.3m未満では、光伝送路の全てが高分子材料で製造されるフレキシブル光導波路と比べて、光伝送損失の低減およびコスト低減の効果を発揮し難い。一方、光電気複合配線モジュール100の長さの上限は、サーバ間の伝送を考えると100m程度で十分あるが、前記したように光ファイバ102の伝送ロスは小さいため、本願発明の構造に拠れば1km程度まで適用できる。
【0045】
次に光電気複合配線モジュール100の製造方法を図6に基づき説明する。
【0046】
光伝送路となる4本の光ファイバ102を中央に、その両脇に4本の電気配線103を配置する。(図6(1)参照)。
【0047】
次に所定の間隔G(例えば1m)で開口領域601が形成された被覆(ラミネート)2枚を、図6(1)の4本の光ファイバ102と8本の電気配線103の上下の表面を挟むようにしてラミネート被覆を形成し、所定の間隔G(例えば1m)で開口領域601が形成されたフラットケーブル602を製造する(図6(2)参照)。
【0048】
次に、所定の間隔Gで開口領域601が形成されたフラットケーブル602の、開口領域601の光ファイバ102及び電気配線103の一部を除去する(図6(3)参照)。
【0049】
フラットケーブル101は、開口領域601の光ファイバ102、および電気配線103の被覆を所定の長さ(一例として2〜5mm程度)除去してむき出しとし、フラットケーブル101の端面部から突出604した構造とする。
【0050】
一方、はんだ、または導電性接着剤などを用いて、フレキシブルプリント基板104a、104bに形成された電極パターンと光送信モジュール105や受光モジュール108および電子部品などを電気的に接続する(図6(4a)(4b)および図8参照)。そしてフレキシブルプリント基板104a、104bには光伝送路用溝306、および電気配線用溝501が形成されている。これらの製造方法はフレキシブルプリント基板104a、104bの構造の欄で記載した通りである。電気配線用パターン500の光導波路303側には電気配線用溝501が形成されている。これにより、電気配線用パターン500の光導波路303側の上方には光導波路303層が形成されず、電気配線用パターン500が露出した構造となる。
【0051】
次に光伝送路用溝306及び電気配線用パターン500が形成されたフレキシブルプリント基板104a、104bの面と、露出された光ファイバ102及び電気配線103が重なるように接続する(図6(5)参照)。
【0052】
フラットケーブル101の露出した光ファイバ102と、フレキシブルプリント基板104a、104bに形成された光伝送路用溝306が係合し、受光モジュール108または光送信モジュール105と光ファイバ102とが光学的に接続されると共に、フラットケーブル101の電気配線103がフレキシブルプリント基板104a、104bに形成された電気配線用溝501に位置を規制されて電気配線用パターン500と位置決めされて、はんだまたは導電性接着剤などを用いて接続される。
【0053】
また光伝送路用溝306と光ファイバ102は、光学的に透明な接着剤(紫外線硬化樹脂)により接続固定される。
【0054】
フラットケーブル101とフレキシブルプリント基板104a、104bを接合した後、接合部を保護板203とラミネート204とで上下から挟み保護する。保護板203はフレキシブルプリント基板104a、104b全体とフラットケーブル101の一部を支える大きさとなっている。
【0055】
フラットケーブル101とフレキシブルプリント基板104a、104bの結合部周りを上下からフレキシブルプリント基板104a、104bの全体とフラットケーブル101の一部を覆うようにラミネート(被覆)する。フラットケーブル101とフレキシブルプリント基板104a、104bの結合部周りをラミネート(被覆)した後、フレキシブルプリント基板104a、104bに実装された2列の受光モジュール108列または2列の光送信モジュール105列のほぼ真中で切断して、光電気複合配線モジュール100が完成する(図6(6)参照)。
【0056】
なお、開口領域601の間隔Gを変えることで、任意の長さの光電気複合配線モジュールが作製できる。
【0057】
フラットケーブル101の両端に接続されたフレキシブルプリント基板104a、104bにそれぞれ、1個以上の光送信モジュール106と1個以上の受光モジュール108を実装することで、双方向に1チャンネル以上の光信号を送受信する構成とすることもできる。図1は、フレキシブルプリント基板104aに4チャンネルのVCSELアレイ106を実装し、フレキシブルプリント基板104bにPDアレイ109を実装したことが示されているが、例えば図1のフレキシブルプリント基板104a、104bのそれぞれに4チャンネルのVCSELアレイ106及び4チャンネルのPDアレイ109を実装し、フラットケーブル101の光ファイバ102の本数を8本とすることにより、4チャンネルの光信号を双方向に送受信することが可能となる。更にカードエッジコネクタ部304,304bは配線部の幅方向の中心から軸回転対称な構造としている。図4の使用形態においては、光送信モジュール105のみを実装したフレキシブルプリント基板104aは必ず送信側の外部装置400の電気コネクタ401に接続し、受光モジュール108のみを実装したフレキシブルプリント基板104bは必ず受信側の外部装置402の電気コネクタ403に接続しなければならない。しかし変形例1の構造に拠れば、フレキシブルプリント基板104a、104bは外部装置400、402のどちらにも使用することができる。つまり信号の方向性を気にすることなく使用することができる。また送受信が可能となり、双方向の伝送が可能となる。
【0058】
フレキシブルプリント基板104a、104bに換えて、ガラスエポキシを材料とする硬い(撓みの少ない)、リジットプリント基板(図示せず)を用いても良い。この場合、フレキシブルプリント基板104a、104bと同様に、リジットプリント基板の一面に高分子材料(ポリマ材など)を用いて光導波路層を形成する。そして光導波路層には上記したフレキシブルプリント基板のときのように反射面を形成し、その上に光送信モジュール105や受光モジュール108を実装すればよい。リジットプリント基板を用いることで、保護板を用いなくても十分な強度を保つことができる。更に、リジットプリント基板に換えてシリコン基板を用いても良い。シリコン基板を用いた場合には、シリコン基板上にガラス光導波路層をCVD(化学気相成長)法などを用いて形成する。シリコン基板を用いることで、VCSELの放熱性に優れたモジュールを実現できる。以上の通り、フレキシブルプリント基板、リジットプリント基板、シリコン基板などに光学的パターン(光導波路層)、及び電気的パターン(電気配線層)を形成したものをプリント基板として本願発明では用いることができる。
【0059】
図7はフレキシブルプリント基板104cに光学ブロック700を実装した形態を示したものである。光信号を透過する絶縁層302が、電気信号伝送用の電気配線301からなる銅層で挟まれた構造を有する。図2で示すフレキシブルプリント基板104a、104bとの大きな相違は、光導波路303が無いことであり、光導波路303の反射部305に換えて光学ブロック700を配設したものである。光学ブロック700は樹脂、ガラス材などの光学材料からなり、VCSELアレイ106から出射された光信号202に対して45度傾斜した面が形成され、光路を90度変換する機能を有する。光学ブロック700の傾斜面は、金属薄膜(金、アルミなど)が蒸着などにより被膜されている。
【0060】
光学ブロック700が実装されたフレキシブルプリント基板104cの面には樹脂を充し、樹脂と保護板(図示せず)を接着し補強する。なお、補強板はフラットケーブル101の一部にまで延出した構造にすると、フラットケーブル101とフレキシブルプリント基板104cの接続部も補強されるため好ましい。
【0061】
光学ブロック700が実装されたフレキシブルプリント基板104cの面には、光ファイバ102を位置決めする位置決めパターン701が電気配線用パターンと同じ面に同じ銅パターンで形成されている。更に光学ブロック700を位置決めする位置決めパターン702も電気配線用パターンと同じ面に同じ銅パターンで形成されている(図7(2)参照)。
【0062】
VCSELアレイ106から出射された光信号202は、反射部305にて光路を90度変換されてフレキシブルプリント基板104cに実装されたフラットケーブル101の光ファイバ102を伝送・経由し、フラットケーブル101の右端に接続されたフレキシブルプリント基板104dに実装された光学ブロック700bの傾斜面で反射され、PDアレイ109にて受光することができる。その他の信号処理は図2と同様である。
【0063】
光導波路303層を形成せず、光学ブロック700、700bにて光路を変換すると共に光信号202を光ファイバ102まで空間伝播させる構造であるため、製造プロセスが簡素化される。更に光ファイバ102、および光学ブロック700の位置決めを、電気配線用パターンと同じ面に同じ銅パターンで形成するため、製造プロセスが簡素化される。
【0064】
本実施例ではフラットケーブル101の両端にフレキシブルプリント基板104a、104b(または104c、104d)を配設した構造であるが、フラットケーブル101の片端のみにフレキシブルプリント基板104a、または104b(または104c、または104d)を配設し、他端は光ファイバ102および電気配線103a、103bが開放状態、または光ファイバ102に光コネクタ(図示せず)および電気配線103a、103bに電気コネクタ(図示せず)が付いた状態であっても良い。フラットケーブル101の他端の光ファイバ102および電気配線103a、103bが開放状態であるときは、開放状態の光ファイバ102端は図示しない他の光ファイバ端とメカニカルスプライスなどで接続することができ、また開放状態の電気配線103a、103b端は図示しない他のプリント基板の所定の電気端子などに接続することができる。またフラットケーブル101の他端の光ファイバ102に光コネクタ(図示せず)および電気配線103a、103bに電気コネクタ(図示せず)があるときは、図示しない他の光コネクタや電気コネクタにそれぞれ接続することができる。
【0065】
本願発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば光ファイバ102、PDアレイ109、VCSELアレイ106、電気配線103a、103bの数は任意の数であり、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々の変更を加えることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
100;光電気複合配線モジュール
101;フレキシブルフラットケーブル
102;光ファイバ
103a、103b;電気配線
104a、104b;フレキシブルプリント基板
105;光送信モジュール
106;VCSELアレイ
107;レーザドライバIC(集積回路)
108;受光モジュール
109;PDアレイ
110;プリアンプIC
201;ラミネート
202;光信号
203;保護板
204;ラミネート
301;電気配線
302;絶縁層
303;光導波路
304、304b;カードエッジコネクタ部
305;反射部
306;光伝送路用溝
307;スルーホール
400、402;外部装置
401、403;電気コネクタ
500;電気配線用パターン
501;電気配線用溝
601;開口領域
604;突出部
700;光学ブロック
701;光ファイバ位置決めパターン
702;光学ブロック位置決めパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路と電気配線とからなるフラットケーブルと、光信号を受信する受光モジュールおよび/または光信号を送信する光送信モジュールと光信号を伝送する光導波路とが実装されたプリント基板とからなり、前記フラットケーブルの両端または片端に前記プリント基板が電気的及び光学的に接続されていることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項2】
光伝送路と電気配線とからなるフラットケーブルと、光信号を受信する受光モジュールおよび/または光信号を送信する光送信モジュールと光信号の光路を変換する光学ブロックとが実装されたプリント配線基板とからなり、前記フラットケーブルの両端または片端に前記プリント基板が電気的及び光学的に接続されていることを特徴とする光電気複合配線モジュール。
【請求項3】
前記プリント基板には前記フラットケーブルの前記光伝送路の一部係合する光伝送路用溝と、前記フラットケーブルの前記電気配線と電気的に接続するための電気配線用パターンとが形成され、前記光導波路が形成された面側の前記電気配線用パターンの上方には電気配線用溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光電気複合配線ケーブル。
【請求項4】
前記プリント基板には前記フラットケーブルの前記光伝送路の一部係合する光伝送路用溝と、前記フラットケーブルの前記電気配線と電気的に接続するための電気配線用パターンとが形成され、前記光伝送路用溝が形成された面側の前記電気配線用パターンの上方には電気配線用溝が形成されていることを特徴とする請求項2記載の光電気複合配線ケーブル。
【請求項5】
前記プリント基板は、前記光伝送路用溝が形成された端面側とは反対側の端面に、外部装置に配設された電気コネクタと挿抜可能な電気コネクタ部が形成されていることを特徴とする請求項1から4いずれか記載の光電気複合配線モジュール。
【請求項6】
前記プリント基板は幅方向の中央部に前記光導波路または前記光学ブロックが配設され、前記フラットケーブルは幅方向の中央部に前記光伝送路が配設され、前記電気配線部は前記プリント基板および前記フラットケーブルの両側面側に配設されていることを特徴とする請求項1から5いずれか記載の光電気複合配線モジュール。
【請求項7】
前記プリント基板の長さが5cm以下であると共に、前記フラットケーブルの前記光伝送路長が20cm以上であることを特徴とする請求項1から6いずれか記載の光電気複合配線モジュール。
【請求項8】
光の伝送路となる複数の光伝送路を中央に、その両脇に複数の電気配線を配置する工程、
所定の間隔で開口領域が形成された被覆2枚を前記光伝送路と前記電気配線の上下の表面を挟むようにして被覆を圧着してフラットケーブルを製造する工程、
所定の間隔で開口領域が形成された前記フラットケーブルの前記開口領域の前記光伝送路及び前記電気配線の一部を除去する工程、
前記フラットケーブルの前記開口領域の光伝送路および電気配線の被覆を除去してむき出しとしフラットケーブルの端面部から突出させる工程、
プリント基板には電気配線層が絶縁層を介して積層された構造を有し、積層された前記電気配線層はスルーホールを介して電気的に接続され、前記電気配線層の一方の表面に光信号が伝送される光導波路層を形成する工程、
前記光導波路の一部に光信号の光路を変換する反射部を形成し、前記反射部の上方に光信号を受信する受光モジュール及びまたは光信号を送信する光送信モジュールを実装する工程、
前記フラットケーブルの突出した光伝送路と前記プリント基板に形成した光伝送路用溝が係合して光学接着剤により接続固定され、前記受光モジュール及びまたは前記光送信モジュールと前記光伝送路とが光学的に接続する工程、
前記プリント基板の光伝送路用溝が形成された端面側とは反対側の端面に電気コネクタを形成する工程、
前記フラットケーブルに形成された前記電気配線用溝により位置を規制されて前記フラットケーブルの電気配線が前記プリント基板に形成された前記電気配線用パターンとはんだ、または導電性接着剤により電気的に接続固定する工程、
前記フラットケーブルと前記プリント基板が接合された後、前記プリント基板と前記フラットケーブルの一部を保護部材で覆う工程、
前記プリント基板を受光モジュール列及びまたは光送信モジュール列の間で切断する工程、
とからなる光電気複合配線モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−53269(P2011−53269A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199589(P2009−199589)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】