説明

内燃機関のエンジン制動装置の制御方法及び車両用内燃機関

本発明は、内燃機関(10)のトランスミッション(26)のシフトアップ動作間における、車両内燃機関(10)のエンジン制動装置(16)の制御方法に関する。本発明は、さらに、前記方法の実行に適した、車両用、特に商用車内燃機関(10)に関し、この内燃機関は、第1シリンダバンク(12a)及び第2シリンダバンク(12b)、シリンダバンク個々のエンジン制動装置(16)、シリンダバンク個々の燃料供給装置(18)、シフト可能なトランスミッション(26)を備え、このトランスミッションは、変速歯車と、クラッチ(22)によって内燃機関(10)のクランクシャフト(20)に連結可能なインプットシャフト(24)と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のトランスミッションのシフトアップ動作の間に、車両内燃機関のエンジン制動装置を制御する方法、及び請求項14の前提部分に基づく車両用内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法及び種類の内燃機関は、例えば特許文献1から既に知られている。この場合、内燃機関は、複数のシリンダ、エンジン制動装置、燃料供給装置及びシフト可能なトランスミッションを含み、このトランスミッションは、クラッチによって内燃機関のクランクシャフトと連結可能なインプットシャフトを装置側に有している。このエンジン制動装置は、シフトアップ動作中にトランスミッションをサポートするために用いられ、シフトアップ動作はセンサーによって検知される。トランスミッションのギヤが外され、クラッチが閉じられた場合に、同時にエンジン制動装置が作動し、燃料供給装置によってシリンダへの燃料供給がブロックされることにより、シリンダが制動モードにされる。このことによって、内燃機関の回転数及び閉じられたクラッチによってクランクシャフトと接続されているトランスミッションのインプットシャフト回転数の低下が促進されるため、シフトアップに必要なシフト時間が短縮され、駆動系における動力伝達の遮断を短くすることができる。切り換えられるトランスミッションの歯車間の回転数差が目標値に達すると、シフトアップ動作が回転数と同期して実施され、シリンダの燃料供給は、エンジン制動装置の作動解除後、トルク上昇のため再び増加させることができる。トランスミッションがトランスミッションブレーキ又はブロック同期を有することも考えられる。トランスミッションブレーキ又はブロック同期は、クラッチを開いてシフトアップする場合、切り換えられる歯車の回転数を同期調整するため、この場合、内燃機関のクランクシャフトの回転数がトランスミッションのインプットシャフトの回転数に合わせられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第3937202A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この周知の方法又は内燃機関の課題として、ここでは、エンジン制動装置の作動又は作動解除に必要なオン/オフ反応時間が比較的長く、シフトアップ動作が長くなってしまうという状況が認められる。このことは、とりわけ操作快適性の理由から好ましくない。
【0005】
従って、本発明の課題は、シフトアップ動作の短縮と操作快適性の向上を可能にする、冒頭に述べた種類の方法及び内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、本発明に従って、請求項1、5及び9に基づく車両内燃機関エンジン制動装置の制御方法及び請求項14の特徴を備える内燃機関によって解決される。本発明の適切かつ重要な発展形態を備える有利な実施形態は、それぞれの従属請求項に示されている。この場合、本方法の有利な実施形態は、適用可能である限り、内燃機関の有利な実施形態として見なすことができ、またその逆も可能である。
【0007】
シフトアップ動作の短縮と操作快適性の向上を可能にする、車両内燃機関エンジン制動装置の制御方法は、本発明に基づき、内燃機関トランスミッション(変速機)のシフトアップ動作の間に、少なくとも、a)シフトアップ開始の検知、b)内燃機関の第1シリンダバンクの、シリンダバンクそれぞれに対する燃料供給装置による燃料供給ブロック、c)シリンダバンクそれぞれに対するエンジン制動装置による第1シリンダバンクの制動モード作動、d)第2シリンダバンクの燃料供給上昇、e)トランスミッションのギヤを外す、f)第2シリンダバンクの燃料供給ブロック、という段階が実施されることによって達成される。本発明に基づく方法によって、エンジン制動装置のオン反応時間が短縮され、それによりトランスミッションのシフトアップ動作が有利に短縮される。エンジン制動装置のオン反応時間があるために、通常、エンジン制動装置がオンにされてから、エンジン制動が作用するまでにある程度の時間が経過する。従来の技術とは異なり、ここでは、本発明に基づき、内燃機関の2つのシリンダバンクが互いに無関係に制御される。段階d)における燃料供給の上昇は、この場合、段階c)における第1シリンダバンクの制動モード作動によって引き起こされるトルク低下を補整し、段階e)においてギヤが外されるまで望ましいトルクを維持する。第2シリンダバンクの燃料供給はギヤが外されてから段階f)により完全に遮断されるため、まず内燃機関の第1シリンダバンクが制動モードになり、このことによって内燃機関又はトランスミッションのインプットシャフトの回転数がシフトアップのために減少する。
【0008】
本発明の有利な形態では、段階c)による第1シリンダバンクの制動モード作動が、段階b)による第1シリンダバンクの燃料供給ブロックと同時に行われる。燃料供給は、ほとんど瞬時にブロックすることができるので、段階b)及びc)を同時に実施することができ、それによって、段階d)による第2シリンダバンクへの燃料供給増加がとりわけ迅速に開始される。
【0009】
本発明のもう1つの有利な形態では、段階f)に続いて、第2シリンダバンクがそのオン反応時間経過後に段階g)において制動モードになり、これによって、内燃機関又はトランスミッションのインプットシャフトの回転数低下は、回転数同期シフトアップ動作のために要求される目標回転数差に達するまでさらに早められる。
【0010】
本発明の有利な形態では、段階g)による第2シリンダバンクの制動モード作動が、段階f)による第2シリンダバンクの燃料供給ブロックと同時に行われる。燃料供給は、ほとんど瞬時にブロックすることができるので、段階f)及びg)を同時に実施することができ、それによって内燃機関の回転数は、ギヤが外された後、要求される目標回転数差に達するまで非常に速く低下する。
【0011】
本発明のもう1つの視点は、車両の内燃機関エンジン制動装置の制御方法に関し、その場合、シフトアップ動作の短縮と本発明に基づく操作快適性の向上は、本発明に基づき、トランスミッションのシフトアップ動作の間に、少なくとも、a)トランスミッションのギヤを外す、b)内燃機関の第1及び第2シリンダバンクの、シリンダバンクそれぞれに対する燃料供給装置による燃料供給ブロック、c)シリンダバンクそれぞれに対するエンジン制動装置による第1シリンダバンクの制動モード作動、d)回転数検出装置による、トランスミッションの接続される歯車間又は内燃機関のクランクシャフトとトランスミッションのインプットシャフト間の回転数差の検出、e)回転数差の規定目標数値の達成、f)第1シリンダバンクの制動モード作動オフ、g)トランスミッションのギヤのシフトアップ、h)第2シリンダバンクへの燃料供給、という段階が実施されることによって達成される。前述の方法とは異なり、この方法によって、エンジン制動装置のオフ反応時間が短縮されるため、シフトアップ動作は同様に有利に促進される。エンジン制動装置のオフ反応時間があるために、通常、エンジン制動装置がオフになった後も、エンジン制動作用はある程度の時間留まっている。従って、内燃機関のシリンダバンクにおいて燃料噴射とエンジン制動とが同時に行われるのを防ぐために、エンジン制動装置の作動解除後、一定時間、燃料の供給を停止しなければならない。従来技術においては、このような燃料供給のブロックによって、エンジン制動装置の作動解除後、すぐにはトルクが再上昇できず、しばしば内燃機関の回転数が急激に低下する。段階c)において、第1シリンダバンクだけを制動モードにすることにより、段階f)及びg)後の段階h)において、第1シリンダバンクのオフ反応時間を考慮することなく、第2シリンダバンクをトルク上昇に用いることができる。さらに、この方法は、低温でのシフトアップ動作のサポートを改善することができるため、トランスミッションのシフト性能がさらに高められる。操作快適性の向上の他にも、エンジン制動装置のオフ反応時間を短縮するための追加の機械的、油圧的、空気圧的措置又はその他の措置が必要ないため、コストの最適化も実現される。この場合、さらに、前述した実施例の1つによるエンジン制動装置のオン反応時間短縮に適する方法に続き、この方法を実施することもできる。
【0012】
本発明の有利な形態では、段階c)による第1シリンダバンクの制動モード作動が、段階b)による第1及び第2シリンダバンクの燃料供給ブロックと同時に行われる。燃料供給は、ほとんど瞬時にブロックすることができるので、段階b)及びc)を同時に実施することができ、それによって、段階d)による回転数差の検出がとりわけ迅速に開始される。
【0013】
本発明のもう1つの有利な形態では、段階f)による第1シリンダバンクの制動モード作動オフ及び/又は段階g)によるトランスミッションのギヤのシフトアップ及び/又はh)第2シリンダバンクへの燃料供給が同時に行われる。なぜなら、この方法では、エンジン制動装置の作動解除後、すぐに内燃機関のトルク上昇が可能であり、及び/又は非常に素早くギヤを入れることができるからである。
【0014】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、段階h)の後、次の段階i)において、第1シリンダバンクのエンジン制動装置のオフ反応時間が過ぎると、すぐに第1シリンダバンクの燃料供給装置によって燃料が供給されるようになっている。このことにより、両方のシリンダバンクが燃料供給モードになっており、内燃機関は高い駆動トルクを供給することができる。
【0015】
シフトアップ動作の短縮と操作快適性の向上を可能にする、エンジン制動装置のもう1つの制御方法は、本発明に基づき、内燃機関トランスミッションのシフトアップ動作の間に、少なくとも、a)トランスミッションのギヤを外す、b)内燃機関の第1及び第2シリンダバンクの、シリンダバンクそれぞれの燃料供給装置による燃料供給ブロック、c)シリンダバンクそれぞれのエンジン制動装置による第1及び第2シリンダバンクの制動モード作動、d)回転数検出装置による、トランスミッションの接続される歯車間又は内燃機関のクランクシャフトとトランスミッションのインプットシャフト間の回転数差の検出、e)回転数差の規定第1目標数値の達成、f)第2シリンダバンクの制動モード作動オフ、g)回転数差の規定第2目標数値の達成、h)第1シリンダバンクの制動モード作動オフ、i)トランスミッションのギヤのシフトアップ、j)第2シリンダバンクへの燃料供給、という段階が実施されることによって達成される。この方法も、エンジン制動装置のオフ反応時間を短縮し、それによって、すでに述べた利点と組み合わせて、シフトアップ動作を早めることが可能となる。段階c)において、まず、両方のシリンダバンクが制動モードされるが、段階f)においては第2シリンダバンクが第2の目標回転数差に達する前に制動モードから解除され、再びトルク上昇のために用いることができる。段階g)において、第2の目標回転数差が達成されると、すぐに段階h)において第1シリンダバンクも制動モードから解除される。しかし、この場合、エンジン制動装置のオフ反応時間があるため、第1シリンダバンクは一定時間引き続き制動している。このことは、段階i)におけるシフトアアップ後に、段階j)において第2シリンダバンクに燃料が供給されることによって補整されるため、内燃機関のトルク上昇が可能である。この場合も、前述した実施例の1つによる、エンジン制動装置のオン反応時間短縮に適する方法に続いて、この方法を実施することができる。
【0016】
本発明の有利な形態では、段階c)による第1及び第2シリンダバンクの制動モード作動が、段階b)による第1及び第2シリンダバンクの燃料供給ブロックと同時に行われる。燃料供給は、ほとんど瞬時にブロックすることができるので、段階b)及びc)を同時に実施することができ、それによって、段階d)による回転数差の検出がとりわけ迅速に開始される。
【0017】
本発明のもう1つの有利な形態においては、第2シリンダバンクに割り当てられているエンジン制動装置オフ反応時間の間に、段階g)において第2の目標回転数差が達成されるように、段階e)において第1の目標回転数差が選択される。別の言い方で説明すると、第2シリンダバンクのオフ反応時間内に第2の目標回転数差が確実に達成されることが予想される場合は、次に段階e)において第2シリンダバンクが制動モードから解除される。
【0018】
本発明のもう1つの有利な形態では、段階h)による第1シリンダバンクの制動モード作動オフ及び/又は段階i)によるトランスミッションのギヤのシフトアップ及び/又は段階j)による第2シリンダバンクへの燃料供給が同時に行われる。なぜなら、この方法では、エンジン制動装置の作動解除後、すぐに内燃機関のトルク上昇が可能である、及び/又は非常に素早くギヤを入れることができるからである。
【0019】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、段階i)の後、次の段階j)において、第1シリンダバンクのオフ反応時間が過ぎると、すぐに燃料供給装置によって第1シリンダバンクに燃料が供給されるようになっている。このことにより、両方のシリンダバンクが燃料供給モードになっており、内燃機関は、高い駆動トルクを供給することができる。
【0020】
本発明のもう1つの視点は、自動車、特に商用車用の内燃機関に関し、本発明に基づき、内燃機関が前述した実施例の1つに基づく方法を実行するように設計されていることにより、シフトアップ動作の短縮及び操作快適性の向上が可能となる。これによって生じる利点は、すでに前述の説明に書かれている。
【0021】
この場合、エンジン制動装置は空気ブレーキとして及び/又は減圧ブレーキとして及び/又はターボブレーキとして形成されているのが有利である。名前を挙げた各エンジン制動装置のタイプは、この場合、例えばリターダとは異なり、シリンダバンク個々の制動モードに適合し、その際、空気ブレーキとして又はターボブレーキとして形成されているエンジン制動装置での内燃機関の排気装置は、それに対応して多流(マルチパス)に形成することができる。内燃機関の制動エネルギーは、例えば空気ブレーキとして及び減圧ブレーキとして形成されているエンジン制動装置など、複数のエンジン制動装置が設けられることによってさらに改善させることができる。
【0022】
本発明のさらなる有利な実施形態では、トランスミッションがマニュアルトランスミッションとして及び/又は半オートマチックトランスミッションとして及び/又はフルオートマチックトランスミッションとして形成されている。このことは、内燃機関の構造的柔軟性を高め、それに相応する操作快適性をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例に基づく車両用内燃機関10の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、実施例及び唯一の図に基づく以下の説明によって開示され、この図は内燃機関の実施例に基づく原理図を示している。
唯一の図は、1つの実施例に基づく車両用内燃機関10の原理図であり、同一のエレメント又は同じ機能をもつエレメントに、同一の番号が付されている。ここに示した実施例において、商用車(図には示されていない)のピストンエンジンとして形成されている内燃機関10は、第1シリンダバンク12aと、第2シリンダバンク12bとを有し、それぞれのシリンダバンクは3つのシリンダ14を備えている。この場合、もっとも簡単な形態では、シリンダバンク12a、12bが、それぞれ1つのシリンダ14のみを有することもできる。代替又は追加として、第1又は第2シリンダバンク12a、12bは、ここにあるように内燃機関10のシリンダ列の形状が同一ではなく、直列に配置される、および/又は互いに異なる数のシリンダ14を有することもできる。第1及び第2のシリンダバンク12a、12bには、シリンダバンク個々のエンジン制動装置16が割り当てられ、このエンジン制動装置によって、第1及び第2シリンダバンク12a、12bが、互いに無関係に制動モードになるか、又は制動モードから解除されることができる。エンジン制動装置16は、この場合、例えば空気ブレーキとして、減圧ブレーキとして又はターボブレーキとして形成することができる。しかしながら、2つ又はそれ以上のエンジン制動タイプによる代替の実施形態又は組合せも考えられる。適合するエンジン制動装置タイプは、例えば欧州特許第458857B1号明細書又は米国特許出願公開第2006/0005796A1号明細書を参照することができる。第1又は第2シリンダバンク12a、12bの制動モード作動又は制動モード作動オフは、エンジン制動装置16の制御の際、それぞれのエンジン制動装置タイプに応じて行われる。さらに、内燃機関10は、シリンダバンク個々の燃料供給装置18を含み、この燃料供給装置によって、両方のシリンダバンク12a、12bは、互いに無関係に燃料を供給されることができる。もちろん、この場合、燃料供給装置18を個々のシリンダごとに、例えばシリンダ個々に制御可能なインジェクションバルブ又はインジェクションノズルを備える周知の燃料噴射装置として形成することもできる。内燃機関10のシリンダ14はクランクシャフト20を駆動し、このクランクシャフトは、切離し可能なクラッチ22によって切換え可能なトランスミッション26のインプットシャフト24と連結又は連結解除することができる。クランクシャフト20、インプットシャフト24及びトランスミッション26には、回転数検出装置27が割り当てられており、この回転数検出装置によって、それぞれの回転数又は回転数差を検出することができる。この場合、ブロック同期トランスミッション26又はトランスミッションブレーキ付きトランスミッション26では、回転数検出装置27が、トランスミッション26の切換えられる歯車間の回転数差を検出するか、又は非同期トランスミッション26では、クランクシャフト20とインプットシャフト24との間の回転数差を検出する。クラッチ22は、クラッチペダル28によって操作し、トランスミッション26は、割り当てられているシフトレバー30によって通常の方法で操作することができる。ここに示されているマニュアル操作によるトランスミッション26の形態に代わって、トランスミッション26又はクラッチ22の形態は半オートマチック又はフルオートマッチックでも準備することができる。エンジン制動装置16、燃料供給装置18、トランスミッション26、回転数検出装置27、クラッチペダル28及びシフトレバー20は、制御信号を交換するため、内燃機関10の様々な機能を制御する、内燃機関10のエンジン制御装置32と連結されている。代替として、相互交信する複数の制御装置を設けることも、もちろん可能である。
【0025】
トランスミッション26のシフトアップ動作で、切換え時間を短縮するため、及び操作快適性を向上させるため、ここに示されている内燃機関10に基づいて、エンジン制動装置16の適合する様々な制御方法を以下に説明する。エンジン制動装置16は、この場合、トランスミッション26をサポートし、トランスミッション26の切り換えられる歯車間の回転数、又はクランクシャフト20とトランスミッション26のインプットシャフト24の回転数を素早く一致させることができる。エンジン制動装置16は、シフトアップ動作の時間を引き延ばす原因となるオン/オフ反応時間をそれぞれ有している。さらにオフ反応時間があることから、燃料供給モードの燃料噴射と内燃機関10のエンジン制動とが同時に行われるのを防ぐために、従来の技術から知られている方法では、エンジン制動装置16オフ後の燃料供給装置18による燃料の供給を一定時間ブロックしなければならない。
【0026】
エンジン制動装置16のオン反応時間を短縮するため、まずシフトアップの開始がシフトレバー30のセンサー(詳しく図示されていない)によって検知される、及び/又はエンジン制御装置32の制御プログラムにおける機能によってシフトアップの必要性が検知される。第1シリンダバンク12aは、シリンダ個々の燃料供給装置18によって燃料供給がブロックされ、シリンダ個々のエンジン制動装置16が制動モードになる。これによって引き起こされるブレーキ作用を補整し、好ましいトルクを維持するために、第2シリンダバンク12bの燃料供給が、燃料供給装置18によって、例えば燃料噴射量を増やすことにより増強される。シフトレバー30によってマニュアルで、又はエンジン制御装置32の制御コマンドによってオートマチックでトランスミッション26のギヤが外されると、第2シリンダバンク12bの燃料供給がブロックされる。同時に又は引き続き、第2シリンダバンク12bが制動モードになり、これによって第2シリンダバンク12bのエンジン制動装置16のオン反応時間後には、内燃機関10の全シリンダ14が制動モード状態になっているため、クランクシャフト20とインプットシャフト24との間の回転数調整が早められる。
【0027】
エンジン制動装置16のオフ反応時間があるためにこれまで必要であった一定時間の燃料供給ブロックを解消するために、第1シリンダバンク12aは、選択的に又は引き続き、シフトアップ動作の間制動モードにされる。トランスミッション26の切り換えられる歯車間の回転数差又はクランクシャフト20とインプットシャフト24との間の回転数差が回転数検出装置27によって検出されることにより、好ましい目標回転数差に達しているかどうかがモニタされる。目標回転数差の値は、通常ゼロである。目標回転数差に達すると、すぐにシフトアップが行われ、第1シリンダバンク12aが制動モードから解除される。同時に、第2シリンダバンク12bに燃料が供給させるため、内燃機関10のトルクを上昇させることができる。
【0028】
これの代替として、まず第1シリンダバンク12a及び第2シリンダバンク12bがエンジン制動装置16によって同時に制動モードにされることによって、エンジン制動装置16のオフ反応時間を解消することができる。第2シリンダバンク12bに割り当てられているエンジン制動装置16のオフ反応時間に、第1の目標回転数差に確実に達することが予想される場合は、第2シリンダバンク12bが早期に制動モードから解除される。クランクシャフト20とトランスミッション26のインプットシャフト24との間の回転数差が第2のより低い回転数差に達すると、すぐに第1シリンダバンク12aも制動モードから解除され、シフトアップが行われる。しかし、エンジン制動装置16のオフ反応時間があるため、第1シリンダバンク12aは、一定時間引き続き制動している。このことは、第2シリンダバンクが該当する量の燃料を供給され、その分トルク上昇が行われることによって補整される。第1シリンダバンク12aに割り当てられているエンジン制動装置16のオフ反応時間が経過すると、すぐに全シリンダ14に再び燃料が噴射される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内燃機関(10)のエンジン制動装置(16)の制御方法であって、前記内燃機関(10)のトランスミッション(26)のシフトアップの間に、少なくとも、
a)シフトアップの開始の検知;
b)前記内燃機関(10)の第1シリンダバンク(12a)への、シリンダバンク個々の燃料供給装置(18)による燃料供給ブロック;
c)シリンダバンク個々のエンジン制動装置(16)による前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動;
d)第2シリンダバンク(12b)の燃料供給上昇;
e)前記トランスミッション(26)のギヤを外す;
f)前記第2シリンダバンク(12b)への燃料供給ブロック、
という段階が実施される方法。
【請求項2】
段階c)による前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動が、段階b)による前記第1シリンダバンク(12a)の前記燃料供給ブロックと同時に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階f)の次の段階g)において、前記第2シリンダバンク(12b)が制動モードにされることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
段階g)による前記第2シリンダバンク(12b)の制動モード作動が、段階f)による前記第2シリンダバンク(12b)の前記燃料供給ブロックと同時に行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
車両内燃機関(10)のエンジン制動装置(16)の制御方法であって、前記内燃機関(10)のトランスミッション(26)のシフトアップの間に、少なくとも、
a)前記トランスミッション(26)のギヤを外す;
b)前記内燃機関(10)の第1及び第2シリンダバンク(12a、12b)の、シリンダバンク個々の燃料供給装置(18)による燃料供給ブロック;
c)シリンダバンク個々のエンジン制動装置(16)による前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動;
d)回転数検出装置(27)による、前記トランスミッション(26)の接続される歯車間の回転数差又は前記内燃機関(10)のクランクシャフト(20)と前記トランスミッション(26)のインプットシャフト(24)との間の回転数差の検出;
e)前記回転数差の規定目標数値の達成;
f)前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動オフ;
g)前記トランスミッション(26)のシフトアップ;
h)前記第2シリンダバンク(12b)への燃料供給、
という段階が実施される方法。
【請求項6】
段階c)による前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動が、段階b)による前記第1及び第2シリンダバンク(12a、12b)の前記燃料供給ブロックと同時に行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
段階f)による前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動オフ及び/又は段階g)による前記トランスミッションのシフトアップ及び/又は段階h)による前記第2シリンダバンク(12b)への燃料供給が同時に行われることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
段階h)の次の段階i)において、前記第1シリンダバンク(12a)の前記エンジン制動装置(16)のオフ反応時間が過ぎると、すぐに前記第1シリンダバンク(12a)の前記燃料供給装置(18)によって燃料が供給されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
車両内燃機関(10)のエンジン制動装置(16)の制御方法であって、前記内燃機関(10)のトランスミッション(26)のシフトアップの間に、少なくとも、
a)前記トランスミッション(26)のギヤを外す;
b)前記内燃機関(10)の第1及び第2シリンダバンク(12a、12b)の、シリンダバンク個々の燃料供給装置(18)による燃料供給ブロック;
c)シリンダバンク個々のエンジン制動装置(16)による前記第1及び第2シリンダバンク(12a、12b)の制動モード作動;
d)回転数検出装置(27)による、前記トランスミッション(26)の歯車間の回転数差又は前記内燃機関(10)のクランクシャフト(20)と前記トランスミッション(26)のインプットシャフト(24)との間の回転数差の検出;
e)前記回転数差の規定第1目標数値の達成;
f)前記第2シリンダバンク(12b)の制動モード作動オフ;
g)前記回転数差の規定第2目標数値の達成;
h)前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動オフ;
i)前記トランスミッション(26)のシフトアップ;
j)前記第2シリンダバンク(12b)への燃料供給、
という段階が実施される方法。
【請求項10】
段階c)による前記第1及び第2シリンダバンク(12a、12b)の制動モード作動が、段階b)による前記第1及び第2シリンダバンク(12a、12b)の前記燃料供給ブロックと同時に行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2シリンダバンク(12b)に割り当てられている前記エンジン制動装置(16)のオフ反応時間の間に、段階g)において前記第2の目標回転数差が達成されるように、前記第1の目標回転数差が段階e)において選択されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
段階h)による前記第1シリンダバンク(12a)の制動モード作動オフ及び/又は段階i)による前記トランスミッションのシフトアップ及び/又は段階j)による前記第2シリンダバンク(12b)への燃料供給が同時に行われることを特徴とする、請求項9〜11に記載の方法。
【請求項13】
段階j)の次の段階k)において、前記第1シリンダバンク(12a)の前記エンジン制動装置(16)のオフ反応時間が過ぎると、すぐに前記燃料供給装置(18)によって前記第1シリンダバンク(12a)に燃料が供給されることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1シリンダバンク(12a)及び第2シリンダバンク(12b)、シリンダバンク個々のエンジン制動装置(16)、シリンダバンク個々の燃料供給装置(18)、シフト可能なトランスミッション(26)、を備え、該トランスミッションが、変速歯車と、クラッチ(22)によって前記内燃機関(10)のクランクシャフト(20)に連結可能なインプットシャフト(24)と、を有する、車両用、特に商用車内燃機関(10)であって、
前記内燃機関(10)が、請求項1〜13のいずれか一項に基づく方法を実行するように設計されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項15】
前記エンジン制動装置(16)が、空気ブレーキとして、及び/又は減圧ブレーキとして、及び/又はターボブレーキとして形成されていることを特徴とする、請求項14に記載の内燃機関(10)。
【請求項16】
前記トランスミッション(26)が、マニュアルトランスミッションとして、及び/又は半オートマチックトランスミッションとして、及び/又はフルオートマチックトランスミッションとして形成されていることを特徴とする、請求項14又は15に記載の内燃機関(10)。

【公表番号】特表2011−509205(P2011−509205A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538377(P2010−538377)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009160
【国際公開番号】WO2009/077036
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】