説明

内燃機関

【課題】内燃機関を一時的に停止させてからこれを再始動させる際の、NOxの排出量を抑制する。
【解決手段】ECU20は、内燃機関の停止要求があった場合には、EGR通路35aに排気ガスを蓄えるために、内燃機関が停止する前に排気側EGR弁37および吸気側EGR弁36を閉じ、内燃機関を停止させるために燃料噴射弁11からの燃料噴射を遮断するとともにスロットル弁23を閉じ、内燃機関の停止後に、スロットル弁23を開くとともに吸気側EGR弁36を開き、吸気通路35a内のスロットル弁23よりも下流側の圧力が大気圧に略等しくなったところで、スロットル弁23を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気の一部を吸気に加えることによってエミッション、つまり窒素酸化物の発生量を抑制できるようにした排気還流装置を備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
排気通路内を流れる排気ガスの一部を吸気通路から燃焼室内に戻し、燃焼室内における混合気の燃焼温度を低下させることにより、排気ガス中に占める窒素酸化物の割合を低減させるようにしたEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気還流)装置が知られている。このEGR装置においては、両端が吸気通路と排気通路とに連通するEGR通路の途中にこのEGR通路を開閉し得るEGR制御弁を介装し、所定の運転領域にて排気ガスを吸気通路側へ還流させている。
【0003】
近年、排気の浄化に対する社会的要求が著しく高まっており、このような観点から車両が停止中の場合には内燃機関の作動を停止させ、燃料の無駄な消費を抑制すると同時に二酸化炭素の無駄な排出を防止する、いわゆるアイドルストップ制御も推進されている。しかしながら、このようなアイドルストップ制御における内燃機関の再始動時には、EGR通路には有効となる排気が介在していないため、特に始動の最初に燃料と共に燃焼室に供給される吸気に対し、排気を含ませることが困難である。
【0004】
このような問題を解決する技術が特許文献1にて提案されている。すなわち、アイドルストップ制御において、内燃機関の停止時にEGR通路にEGRガスを一時的に貯留しておき、内燃機関の再始動時、特に最初に供給される燃料が燃焼する初爆気筒に対し、EGRガスを吸気に加えて供給できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−262902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1の技術では、加速要求後から弁を動作させてEGRガスを導入しているが、燃料カット直後のモータリング状態から、復帰した直後の数サイクルの間は、新気で燃焼するため、NOxの排出量を十分に抑制できない。
【0007】
本発明の目的は、内燃機関を一時的に停止させてからこれを再始動させる際の、NOxの排出量を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る内燃機関は、一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、当該排気通路から排出される排気ガスの一部を吸気通路に導くためのEGR通路と、前記EGR通路の排気通路側および吸気通路側にそれぞれ設けられた排気側EGR弁および吸気側EGR弁と、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部よりも上流側に設けられたスロットル弁と、気筒へ供給する燃料噴射量を調整する燃料噴射弁と、前記スロットル弁、燃料噴射弁、排気側EGR弁および吸気側EGR弁を制御する制御手段と、を有する内燃機関であって、前記制御手段は、内燃機関の停止要求があった場合には、前記EGR通路に排気ガスを蓄えるために、内燃機関が停止する前に前記排気側EGR弁および吸気側EGR弁を閉じ、内燃機関を停止させるために前記燃料噴射弁からの燃料噴射を遮断するとともに前記スロットル弁を閉じ、内燃機関の停止後に、前記スロットル弁を開くとともに前記吸気側EGR弁を開き、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側の圧力が大気圧に略等しくなったところで、前記スロットル弁を閉じる、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点に係る内燃機関は、一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、当該排気通路を通じて排出される排気ガスの一部を吸気通路に導くためのEGR通路と、前記EGR通路の排気通路側および吸気通路側にそれぞれ設けられた排気側EGR弁および吸気側EGR弁と、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部よりも上流側に設けられたスロットル弁と、気筒へ供給する燃料噴射量を調整する燃料噴射弁と、前記スロットル弁、燃料噴射弁、排気側EGR弁および吸気側EGR弁を制御する制御手段と、前記排気通路からの排気エネルギーにより過給する可変ノズル付き過給機と、を有する内燃機関であって、前記制御手段は、内燃機関の停止要求があった場合には、内燃機関が停止する前に、目標当量比となるように前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を制御するとともに、前記EGR通路内のEGRガスの圧力が目標圧力となるように可変ノズル付き過給機の可変ノズルの開度を制御し、前記EGR通路に排気ガスを蓄えるために、前記吸気側EGR弁を閉じ、その後に、前記排気側EGR弁を閉じ、内燃機関を停止させるために前記燃料噴射弁からの燃料噴射を遮断するとともに前記スロットル弁を閉じ、内燃機関の停止後に、前記吸気側EGR弁を開き、その後に、前記スロットル弁を開き、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側の圧力が大気圧に略等しくなったところで、前記スロットル弁を閉じる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸気行程中の途中でピストンが停止している気筒に必要なEGRガスが満たされ、これにより、再始動時のNOxの排出量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用される圧縮点火方式の内燃機関の一例の概略図である。
【図2】図1に示した実施形態における制御ブロック図である。
【図3】EGR通路側の容積と、吸気通路およびシリンダ側の容積を示す概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る内燃機関の制御の流れを模式的に示すフローチャートである。
【図5】過給圧の時間変化の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る内燃機関の制御の流れを模式的に示すフローチャートである。
【図7】EGR率と吸気の酸素濃度との関係を示すグラフである。
【図8】可変ノズルの開度と、EGR通路内圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が適用される圧縮点火方式の内燃機関について、図1および図2を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、本発明の適用対象となるものに要求される特性に応じてその構成を自由に変更することが可能である。例えば、ガソリンやアルコールまたはLNG(液化天然ガス)などを燃料としてこれを点火プラグにて着火させる火花点火方式の内燃機関に対しても本発明は有効である。
【0013】
図1に示すように、エンジン10は、燃料である軽油を燃料噴射弁11から圧縮状態にある燃焼室12内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火方式の多気筒内燃機関である。しかしながら、単気筒の内燃機関であっても本発明を適用し得ることは言うまでもない。
【0014】
燃焼室12にそれぞれ臨む吸気ポート13および排気ポート14が形成されたシリンダーヘッド15には、図示しない動弁機構と、先の燃料噴射弁11とが組み込まれている。
【0015】
本実施形態における動弁機構は、吸気ポート13を開閉する吸気弁16および排気ポート14を開閉する排気弁17を含み、エンジン10の運転状態に応じて吸気弁16および排気弁17の開閉タイミングを変更し得るものである。しかしながら、吸気弁16および排気弁17の開閉タイミングが固定された動弁機構を採用することも可能である。
【0016】
燃料噴射弁11は、これら吸気弁16および排気弁17に挟まれるように燃焼室12の上端中央に臨んで配されている。本実施形態における燃料噴射弁11は、燃料である軽油を圧縮行程の終了直前、つまりピストン18の圧縮上死点直前にのみ燃焼室12内に直接噴射する直噴単噴射型式のものである。しかしながら、この圧縮行程での燃料噴射に加え、より均一な混合気を形成するために吸気行程の途中においてにも噴射する多噴射型式のものや、吸気ポート13内に噴射するポート噴射形式のものなどを採用することも可能である。
【0017】
燃料噴射弁11から燃焼室12内に供給される燃料の量および噴射タイミングは、運転者によるアクセルペダル19の踏み込み量を含む車両の運転状態に基づいてECU(Electronic Control Unit)20により制御される。アクセルペダル19の踏み込み量は、アクセル開度センサー21により検出され、その検出情報がECU20に出力される。
【0018】
吸気ポート13に連通するようにシリンダーヘッド15に連結されて吸気ポート13と共に吸気通路22aを画成する吸気管22の途中には、吸気通路22aの開度を調整するためのスロットル弁23が組み込まれている。このスロットル弁23の開度は、アクセルペダル19の踏み込み量などを含む車両の運転状態に基づき、ECU20によりスロットルアクチュエーター24を介して制御される。
【0019】
ピストン18が往復動するシリンダーブロック25には、水温センサー26と、クランク角センサー27とが取り付けられている。水温センサー26は、燃焼室12を囲むようにシリンダーブロック25に形成された水ジャケット28内を流れる冷却水の温度を検出してこれをECU20に出力する。クランク角センサー27は、連接棒29を介してピストン18が連結されるクランク軸30の回転位相、つまりクランク角を検出してこれをECU20に出力する。ECU20は、水温センサー26からの情報に基づいて暖機運転の必要性の有無などを把握する一方、クランク角センサー27からの情報に基づいてクランク軸30の回転位相やエンジン回転数を実時間で把握する。
【0020】
エンジン10には、排気通路31a内を流れる排気の一部を吸気通路22aに導くEGR装置32と、可変ノズル付きの過給機33と、排気浄化装置34とが組み込まれている。
【0021】
排気中の窒素酸化物の低減や燃費の向上を企図したEGR装置32は、EGR通路35aを画成するEGR管35と、このEGR管35に相隔てて設けられるEGR制御弁36および排気側EGR弁37と、EGRクーラ38とを具えている。EGR管35は、排気ポート14と共に排気通路31aを画成する排気管31に一端が連通すると共に他端が上述したスロットル弁23とこのスロットル弁23よりも下流側に配されたサージタンク39との間の吸気管22内に連通している。吸気管22とEGR管35との接続部分に近接してEGR管35の一端側に配され、ECU20によりその作動が制御される吸気側EGR弁36は、車両の運転状態に基づき、EGR通路35aから吸気通路22aへと還流される排気の流量を制御する。排気管31とEGR管35との接続部分側に配される排気側EGR弁37は、EGR通路35aを単純に開閉するためのものであり、ECU20によってその開閉動作が制御される。EGR通路35aに流入する排気の温度を低減させるためのEGRクーラー38は、EGR管35の中途、つまり、吸気側EGR弁36と排気側EGR弁37との間に配されている。このEGRクーラー38には、シリンダーブロック25に形成された水ジャケット28を流れる冷却水が導かれ、高温の排気を効率よく冷却することによって、EGR通路35aに導かれるEGRガスの充填効率を高める。
【0022】
可変ノズル付きの過給機(以下、単に過給機と記述する)33は、排気通路31aを流れる排気の運動エネルギーを利用して燃焼室12への過給を行い、吸気の充填効率を高めるためのものである。この過給機33は、コンプレッサー33aとこのコンプレッサー33aと一体に回転するタービン33bとで主要部が構成されている。コンプレッサー33aは、スロットル弁23よりも上流側に位置する吸気管22の途中に組み込まれている。タービン33bは、排気ポート14に連通するようにシリンダーヘッド15に連結された排気管31の途中に組み込まれている。本実施形態におけるタービン33bは、車両の運転状態に基づき、ECU20によりベーンアクチュエーター40(図2参照)を介して開度が制御される図示しない可変ベーン(可変ノズル)を具えている。つまり、ベーンアクチュエーター40を作動して可変ベーンの開度を変更することにより、排気の運動エネルギーの利用効率を変え、結果として吸気の充填効率を変更することができる。
【0023】
なお、高温の排気にさらされるタービン33b側からの伝熱によりコンプレッサー33aを介して加熱される吸気温を低下させるため、コンプレッサー33aとサージタンク39との間の吸気通路22aの途中には、インタークーラー41が組み込まれている。また、過給器のコンプレッサー33aよりも上流側の吸気管22には、ここの吸気通路22aを流れる吸気の流量を検出してこれをECU20に出力するエアーフローメーター42が設けられている。
【0024】
燃焼室12内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化するための排気浄化装置34は、過給機33のタービン33bよりも下流側の排気通路31aを画成する排気管31の途中に配されている。本実施形態における排気浄化装置34は、少なくとも酸化触媒コンバーター34aを有するが、DPF(Diesel Particulate Filter)や、NOX触媒などの他の触媒コンバーターを追加することも可能である。
【0025】
従って、EGR通路35aを介して吸気通路22a内に還流される排気ガスと共に燃焼室12内に供給される吸気は、燃料噴射弁11から燃焼室12内に噴射される燃料と混合気を形成する。そして、ピストン18の圧縮上死点直前にて自然着火して燃焼し、これによって生成する排気ガスが排気浄化装置34を通って排気管31から大気中に排出される。この場合、吸気中に含まれるCO2によって混合気の燃焼温度が低下するため、混合気の燃焼に伴って生成する窒素酸化物の量が抑制されることとなる。
【0026】
ECU20は、アクセル開度センサー21,水温センサー26,クランク角センサー27,エアーフローメーター42などからの検出情報に基づき、エンジン10およびこのエンジン10が搭載される車両の運転状態を把握する。そして、予め設定されたプログラムに従って円滑なエンジン10の運転がなされるように、燃料噴射弁11,スロットル弁23,吸気側EGR弁36,可変ベーン,排気側EGR弁37などの作動を制御する。このため、本実施形態におけるECU20は、運転状態判定部43と、始動モーター駆動部44と、スロットル開度設定部45と、スロットル弁駆動部46と、燃料噴射設定部47と、燃料噴射弁駆動部48と、ベーン開度設定部49と、ベーン駆動部50と、EGR量設定部51と、EGR弁駆動部52と、排気側EGR弁駆動部54とを具えている。
【0027】
運転状態判定部43は、アクセル開度センサー21,水温センサー26,クランク角センサー27,エアーフローメーター42などからの検出情報に基づいて車両およびエンジン10の運転状態を把握する。つまり、この運転状態判定部43ではエンジン停止要求やエンジン始動要求の有無なども併せて判定される。
【0028】
始動モーター駆動部44は、図示しないイグニッションキースイッチのオン信号や先のエンジン始動要求に基づき、クランク軸30に図示しない継手を介して接続するエンジン始動モーター55(図2参照)の作動を制御する。エンジン始動モーター55は、エンジン10のモータリングを行う。
【0029】
スロットル開度設定部45は、アクセル開度センサー21によって検出されるアクセルペダル19の踏み込み量や車両の運転状態に基づき、あらかじめ設定された最適なスロットル開度を設定する。スロットル弁駆動部46は、スロットルアクチュエーター24を介してこのスロットル開度設定部45にて設定された開度にスロットル弁23を制御する。
【0030】
燃料噴射設定部47は、アクセル開度センサー21からの検出信号に基づいてエンジン10の駆動トルク、つまり燃料噴射弁11からの燃料の噴射量とその噴射時期とを設定する。燃料噴射弁駆動部48は、この燃料噴射設定部47にて設定された燃料噴射量に対応した燃料が設定された噴射時期に噴射されるように燃料噴射弁11を駆動する。
【0031】
エンジン10を搭載した車両が予め設定されたEGR運転領域にあることをECU20の運転状態判定部43が判定した場合、EGR量設定部51は、この時の車両の運転状態に応じて燃焼室12内に還流すべきEGR量、つまり吸気側EGR弁36の開度を設定する。EGR弁駆動部52は、EGR量設定部51にて設定された開度に吸気側EGR弁36を制御し、それ以外の場合は基本的にEGR通路35aを塞ぐように閉じた状態に保持する。エンジン停止要求があった場合にも吸気側EGR弁36は閉止状態に保持される。
【0032】
ベーン開度設定部49は、エンジン回転速度や車両の運転状態に基づいて過給機33のタービン33bのベーン開度を設定する。ベーン駆動部50は、このベーン開度設定部49にて設定されたベーン開度となるように、ベーンアクチュエーター40を介して可変ベーンを駆動する。なお、エンジン停止要求があった場合には可変ベーンの開度が最少に絞られ、過給機33のタービン33bよりも上流側の排気通路31aの排気圧が高められ、これにより高圧の排気をEGR通路35aへ導くことができる。また、エンジン停止要求によりエンジン10を一時的に停止した時点で可変ベーンを最大開度に戻し、エンジン始動要求があった場合に迅速な応答ができるように配慮している。
【0033】
排気側EGR弁駆動部54は、先のエンジン停止要求やエンジン始動要求に基づき、あらかじめ設定されたプログラムに従って排気側EGR弁37の開閉を制御する。
【0034】
[第1実施形態]
次に、上記構成の内燃機関の本発明の第1実施形態に係る制御について、図3〜図5を参照して説明する。なお、本実施形態では、図3に示すように、EGR通路35a、排気側EGR弁37および吸気側EGR弁36により画定される第1の領域AのEGR配管容積Vegrと、吸気通路22、気筒12、スロットル弁23および吸気側EGR弁36により画定される第2の領域Bの吸気容積Vinとの割合が、吸気側EGR弁36を開いて第1の領域Aに存在するガスと第2の領域Bに存在するガスとが混合された際の混合ガスの酸素ガス濃度が所定の目標値となるように、第1および第2の領域A,Bの容積がそれぞれ設定されるように配管径や配管長さなどが規定されている。
【0035】
内燃機関の運転中に、ECU20は、図4に示すように、エンジンの停止要求があるかを判断する(ステップS1)。なお、「エンジン停止要求」とは、車両のアイドリング運転状態のように、エンジン10の運転中にアクセルペダル19の踏み込み量が0かつ車速が0となった場合を言う。また、本発明における「エンジン始動要求」とは、「エンジン停止要求」によってエンジン10を停止した状態から、運転者が車両の発進のためにアクセルペダル19が踏み込まれた場合を言う。エンジン停止要求があった場合には、EGR通路35aに排気ガスを蓄えるために、エンジンが停止する前に排気側EGR弁37および吸気側EGR弁36を閉じる(ステップS2)。エンジン停止直前のアイドリング状態においてEGR通路35aに排気ガスが蓄えられるため、EGR通路35a内の圧力は大気圧となる。
【0036】
次いで、エンジンを停止させるために、燃料噴射弁11からの燃料噴射を遮断するとともに前記スロットル弁23を閉じる(ステップS3)。これにより、エンジンが停止する(ステップS4)。
【0037】
エンジンの停止後に、スロットル弁23を開くとともに吸気側EGR弁37を開く(ステップS5)。ここで、図5に示すように、インテークマニホールド内の圧力Pinは、時間の経過とともに上昇し、大気圧Paに近づいていく。圧力Pinと、大気圧Paから予め設定された補正値dPを減算した値(Pa−dP)とを比較する(ステップS6)。(Pa−dP)がPinよりも大きい場合には、ステップS6の判断を続け、(Pa−dP)がPinよりも小さくなったところで、スロットル弁23を閉じる(ステップS7)。そして、エンジンが再始動されるのを待機する。
【0038】
以上にように、本実施形態によれば、吸気行程中の途中でピストンが停止している気筒に必要なEGRガスが充填され、再始動時のNOxの排出量を抑制することができる。また、本実施形態では、第1の領域AのEGR配管容積Vegrと、第2の領域Bの吸気容積Vinとの割合を上記のように設定しているので、吸気側EGR弁36によるEGRガスの量の調整作業が必要ない。
【0039】
次に、上記構成の内燃機関の本発明の第2実施形態に係る制御について、図6〜図8を参照して説明する。なお、上記実施形態では、EGR通路の容積と吸気容積とによりEGRガス量を設定したが、本実施形態では、EGR通路の容積と吸気容積とに関係なく、目標EGRガス量が得られる構成について説明する。
【0040】
内燃機関の運転中に、ECU20は、図6に示すように、エンジンの停止要求があるかを判断する(ステップS11)。エンジンの停止要求があった場合には、エンジンが停止する前に、目標当量比となるように燃料噴射弁11からの燃料噴射量を制御するとともに、EGR通路35a内のEGRガスの圧力が目標圧力となるように上記した可変ベーンの開度を制御する(ステップS12)。ここで、可変ベーンの開度を制御する際のEGRガスの目標圧力は、EGR通路35aと吸気通路23とが連通した状態(大気圧)における吸気の酸素濃度が目標酸素濃度となるのに必要なEGR率のEGRガスを導入可能な圧力に設定される。吸気の酸素濃度とEGR率とは、例えば、図6に示すような関係を有するため、このようなデータから必要なEGR率を算出できる。そして、
可変ベーンの開度とEGR通路内のEGRガス圧力とは、例えば、図8に示すような関係を有する。このため、図8に示すような関係から、必要なEGR率を得るための目標圧力を予め決定することができる。なお、可変ベーンの開度の調整で対応できない場合には、燃料噴射量を調整することで対応できる。
【0041】
次いで、EGR通路35aに排気ガスを蓄えるために、吸気側EGR弁36を閉じる(ステップS13)。所定時間経過後に、排気側EGR弁を閉じる(ステップS14)。
【0042】
次いで、エンジンを停止させるために、燃料噴射弁11からの燃料噴射を遮断するとともにスロットル弁23を閉じる(ステップS15)。これにより、エンジンが停止する(ステップS16)。
【0043】
エンジンの停止後に、吸気側EGR弁36を開き(ステップS17)、所定時間が経過したかを判断し(ステップS18)、所定時間経過後に、スロットル弁23を開く(ステップS19)。
【0044】
次いで、第1実施形態と同様に、圧力Pinと、大気圧Paから予め設定された補正値dPを減算した値(Pa−dP)とを比較する(ステップS20)。(Pa−dP)がPinよりも大きい場合には、ステップS20の判断を続け、(Pa−dP)がPinよりも小さくなったところで、スロットル弁23を閉じる(ステップS21)。そして、エンジンが再始動されるのを待機する。
【0045】
以上にように、本実施形態によれば、吸気行程中の途中でピストンが停止している気筒に必要なEGRガスが充填され、再始動時のNOxの排出量を抑制することができる。また、本実施形態では、第1の領域AのEGR配管容積Vegrと、第2の領域Bの吸気容積Vinとに制限されることなく、目標EGR量を得ることができる。
【0046】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0047】
20…ECU
23…スロットル弁
35a…EGR通路
36…吸気側EGR弁
37…排気側EGR弁
33…過給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、当該排気通路から排出される排気ガスの一部を吸気通路に導くためのEGR通路と、前記EGR通路の排気通路側および吸気通路側にそれぞれ設けられた排気側EGR弁および吸気側EGR弁と、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部よりも上流側に設けられたスロットル弁と、気筒へ供給する燃料噴射量を調整する燃料噴射弁と、前記スロットル弁、燃料噴射弁、排気側EGR弁および吸気側EGR弁を制御する制御手段と、を有する内燃機関であって、
前記制御手段は、内燃機関の停止要求があった場合には、前記EGR通路に排気ガスを蓄えるために、内燃機関が停止する前に前記排気側EGR弁および吸気側EGR弁を閉じ、内燃機関を停止させるために前記燃料噴射弁からの燃料噴射を遮断するとともに前記スロットル弁を閉じ、内燃機関の停止後に、前記スロットル弁を開くとともに前記吸気側EGR弁を開き、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側の圧力が大気圧に略等しくなったところで、前記スロットル弁を閉じる、ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記EGR通路、前記排気側EGR弁および吸気側EGR弁により画定される第1の領域の容積と、前記吸気通路、気筒、スロットル弁および吸気側EGR弁により画定される第2の領域の容積との割合が、前記吸気側EGR弁を開いて前記第1の領域に存在するガスと前記第2の領域に存在するガスとが混合された際の混合ガスの酸素ガス濃度が所定の目標値となるように、前記第1および第2の領域の容積がそれぞれ設定されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項3】
一端が吸気通路に連通すると共に他端が排気通路に連通し、当該排気通路を通じて排出される排気ガスの一部を吸気通路に導くためのEGR通路と、前記EGR通路の排気通路側および吸気通路側にそれぞれ設けられた排気側EGR弁および吸気側EGR弁と、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部よりも上流側に設けられたスロットル弁と、気筒へ供給する燃料噴射量を調整する燃料噴射弁と、前記スロットル弁、燃料噴射弁、排気側EGR弁および吸気側EGR弁を制御する制御手段と、前記排気通路からの排気エネルギーにより過給する可変ノズル付き過給機と、を有する内燃機関であって、
前記制御手段は、内燃機関の停止要求があった場合には、内燃機関が停止する前に、目標当量比となるように前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を制御するとともに、前記EGR通路内のEGRガスの圧力が目標圧力となるように可変ノズル付き過給機の可変ノズルの開度を制御し、前記EGR通路に排気ガスを蓄えるために、前記吸気側EGR弁を閉じ、その後に、前記排気側EGR弁を閉じ、内燃機関を停止させるために前記燃料噴射弁からの燃料噴射を遮断するとともに前記スロットル弁を閉じ、内燃機関の停止後に、前記吸気側EGR弁を開き、その後に、前記スロットル弁を開き、前記吸気通路の前記スロットル弁よりも下流側の圧力が大気圧に略等しくなったところで、前記スロットル弁を閉じる、ことを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
前記制御手段前記可変ノズルの開度を制御する際の前記EGRガスの目標圧力は、前記EGR通路と吸気通路とが連通した状態における吸気の酸素濃度が目標酸素濃度となるのに必要なEGR率のEGRガスを導入可能な圧力に設定される、ことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15091(P2013−15091A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149035(P2011−149035)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】