半導体スイッチ
【課題】端子切替時の挿入損失の増加を抑制した半導体スイッチを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電源回路部と制御回路部とスイッチ部とを備えた半導体スイッチが提供される。前記電源回路部は、内部電位生成回路と第1のトランジスタとを有する。前記内部電位生成回路部は、電源線に接続され、入力電位よりも高い第1の電位を生成する。前記第1のトランジスタは、前記内部電位生成回路の入力と出力との間に接続され、前記第1の電位が前記入力電位よりも低下したときオンして前記第1の電位を前記入力電位以上に保持するようにしきい値電圧が設定されたことを特徴とする。前記制御回路部は、前記第1の電位を供給され、ハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する。前記スイッチ部は、前記制御信号を入力して端子間の接続を切り替える。
【解決手段】実施形態によれば、電源回路部と制御回路部とスイッチ部とを備えた半導体スイッチが提供される。前記電源回路部は、内部電位生成回路と第1のトランジスタとを有する。前記内部電位生成回路部は、電源線に接続され、入力電位よりも高い第1の電位を生成する。前記第1のトランジスタは、前記内部電位生成回路の入力と出力との間に接続され、前記第1の電位が前記入力電位よりも低下したときオンして前記第1の電位を前記入力電位以上に保持するようにしきい値電圧が設定されたことを特徴とする。前記制御回路部は、前記第1の電位を供給され、ハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する。前記スイッチ部は、前記制御信号を入力して端子間の接続を切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機の高周波回路部においては、送信回路及び受信回路が高周波スイッチ回路を介して共通のアンテナに選択的に接続されるようになっている。高周波スイッチ回路における重要な特性指標の1つに挿入損失がある。
挿入損失を向上させるためには、高周波スイッチ回路を構成するFETのゲート幅を大きくし、また各ゲートに供給するオン電圧を高くする必要がある。しかし、小型化の観点から、オン電圧を内部で生成する場合の内部電位生成回路の電流供給能力には限界がある。そのため、スイッチ切替動作において、オン電圧が低下し、スイッチ切替直後の挿入損失が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−103971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、端子切替時の挿入損失の増加を抑制した半導体スイッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電源回路部と制御回路部とスイッチ部とを備えた半導体スイッチが提供される。前記電源回路部は、内部電位生成回路と第1のトランジスタとを有する。前記内部電位生成回路部は、電源線に接続され、入力電位よりも高い第1の電位を生成する。前記第1のトランジスタは、前記内部電位生成回路の入力と出力との間に接続され、前記第1の電位が前記入力電位よりも低下したときオンして前記第1の電位を前記入力電位以上に保持するようにしきい値電圧が設定されたことを特徴とする。前記制御回路部は、前記第1の電位を供給され、ハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する。前記スイッチ部は、前記制御信号を入力して端子間の接続を切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る半導体スイッチの構成を例示するブロック図。
【図2】図1に表わした半導体スイッチのスイッチ部の構成を例示する回路図。
【図3】挿入損失のオン電位依存性を表わす特性図。
【図4】図1に表わした半導体スイッチの制御回路部の構成を例示する回路図。
【図5】駆動回路のレベルシフタの構成を例示する回路図。
【図6】図1に表わした半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図。
【図7】第1のトランジスタの断面図。
【図8】端子切替時の第1の電位の波形図。
【図9】端子切替時の制御信号の波形図。
【図10】スイッチ部2の接続が切り替わるときの半導体スイッチの等価回路を表す回路図。
【図11】第1の電位の変動を計算するための等価回路を表す回路図。
【図12】第2の実施形態に係る半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図。
【図13】図12に表した電源回路部の降圧回路の構成を例示する回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の形状や縦横の寸法の関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体スイッチの構成を例示するブロック図である。
図1に表したように、半導体スイッチ1においては、アンテナ端子ANTと各高周波端子RF1〜RF6との端子間の接続を切り替えるスイッチ部2が設けられている。スイッチ部2は、制御回路部3から出力される制御信号に応じて端子間の接続を切り替える。
【0009】
制御回路部3においては、切替信号端子IN1〜IN3に入力された端子切替信号はデコード回路5でデコードされ、さらに駆動回路6でレベルシフトされ、制御信号として出力される。制御回路部3の駆動回路6には、正の電源電位Vddよりも高い第1の電位Vpが供給される。
【0010】
ここで、第1の電位Vpは、制御信号のハイレベルの電位であり、スイッチ部2の各FETのゲートに印加して各FETをオンさせる電位である。また、図3において説明するように、第1の電位Vpの定常値は、端子間の挿入損失が所望の値に低減される電位に設定される。
【0011】
第1の電位Vpは、電源回路部4から供給される。電源回路部4において、内部電位生成回路7は、正の電源電位Vddを入力して、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成する。また、内部電位生成回路7の入力の電源線9と、出力の高電位電源線10との間に第1のトランジスタ8が接続されている。
【0012】
第1のトランジスタ8は、第1の電位Vpが入力電位Vddよりも低下したときオンするようにしきい値電圧が設定されている。そのため、電源回路部4から出力される第1の電位Vpは、ほぼ入力電位Vdd以上の電位に保持される。
【0013】
半導体スイッチ1は、アンテナ端子ANTと高周波端子RF1〜RF6との間の接続を切り替えるSP6T(Single-Pole 6-Throw)のスイッチである。
次に各部について説明する。
【0014】
図2は、図1に表わした半導体スイッチのスイッチ部の構成を例示する回路図である。
図2に表わしたように、アンテナ端子ANTと、各高周波端子RF1〜RF6との間には、それぞれn段(nは自然数)のスルーFET(Field Effect Transistor)T11〜T1n、T21〜T2n、T31〜T3n、T41〜T4n、T51〜T5n、T61〜T6nが直列に接続されている。
【0015】
アンテナ端子ANTと高周波端子RF1との間には、スルーFET T11〜T1nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF2との間には、スルーFET T21〜T2nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF3との間には、スルーFET T31〜T3nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF4との間には、スルーFET T41〜T4nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF5との間には、スルーFET T51〜T5nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF6との間には、スルーFET T61〜T6nが接続されている。
【0016】
各高周波端子RF1〜RF6と接地との間には、それぞれm段(mは自然数)のシャントFET S11〜S1m、S21〜S2m、S31〜S3m、S41〜S4m、S51〜S5m、S61〜S6mが直列に接続されている。
【0017】
高周波端子RF1と接地との間には、シャントFET S11〜S1mが接続されている。高周波端子RF2と接地との間には、シャントFET S21〜S2mが接続されている。高周波端子RF3と接地との間には、シャントFET S31〜S3mが接続されている。高周波端子RF4と接地との間には、シャントFET S41〜S4mが接続されている。高周波端子RF5と接地との間には、シャントFET S51〜S5mが接続されている。高周波端子RF6と接地との間には、シャントFET S61〜S6mが接続されている。
【0018】
高周波端子RF1に接続されたスルーFET T11〜T1nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con1aと接続されている。高周波端子RF1に接続されたシャントFET S11〜S1mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con1bと接続されている。
【0019】
高周波端子RF2に接続されたスルーFET T21〜T2nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con2aと接続されている。高周波端子RF2に接続されたシャントFET S21〜S2mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con2bと接続されている。
【0020】
高周波端子RF3に接続されたスルーFET T31〜T3nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con3aと接続されている。高周波端子RF3に接続されたシャントFET S31〜S3mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con3bと接続されている。
【0021】
高周波端子RF4に接続されたスルーFET T41〜T4nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con4aと接続されている。高周波端子RF4に接続されたシャントFET S41〜S4mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con4bと接続されている。
【0022】
高周波端子RF5に接続されたスルーFET T51〜T5nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con5aと接続されている。高周波端子RF5に接続されたシャントFET S51〜S5mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con5bと接続されている。
【0023】
高周波端子RF6に接続されたスルーFET T61〜T6nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con6aと接続されている。高周波端子RF6に接続されたシャントFET S61〜S6mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con6bと接続されている。
【0024】
制御端子Con1a〜Con6a、Con1b〜Con6bは、それぞれ制御回路部3に接続される。
なお、図2においては、スイッチ部2の構成として、SP6Tスイッチを例示したが、他の構成のスイッチに対しても同様に適用でき、kPlT(kは自然数、lは2以上の整数)スイッチを構成することもできる。
【0025】
シャントFETは、そのシャントFETが接続された高周波端子に接続されたスルーFETがオフにされた際、その高周波端子とアンテナ端子間のアイソレーションを高める。すなわち、スルーFETがオフ状態であってもそのオフ状態のスルーFETと接続された高周波端子に高周波信号が漏れてしまう場合があるが、この時、オン状態のシャントFETを介して、漏れた高周波信号を接地に逃がすことができる。
【0026】
例えば、高周波端子RF1とアンテナ端子ANTとの間を導通するためには、高周波端子RF1とアンテナ端子ANTとの間のn段直列接続スルーFET T11〜T1nをオンとし、高周波端子RF1と接地との間のm段直列接続シャントFET S11〜S1mをオフとする。同時に、他の各高周波端子RF2〜RF6とアンテナ端子ANTとの間のスルーFETをすべてオフとし、他の各高周波端子RF2〜RF6と接地との間のシャントFETをすべてオンとすればよい。
【0027】
上記の場合、制御端子Con1aにはオン電位Von、制御端子Con2b〜Con6bにはオン電位Von、制御端子Con1bにはオフ電位Voff、制御端子Con2a〜Con6aにはオフ電位Voffの電位が与えられる。
【0028】
ここで、オン電位Vonは、各FETが導通状態となり、かつ、そのオン抵抗が十分小さい値になる電位であり、例えば3Vに設定される。オフ電位Voffは、各FETが遮断状態となり、かつ、RF信号が重畳しても遮断状態を十分維持できる電位である。オフ電位Voffは、各FETのしきい値電圧Vthや接続段数n、mによって決められる。例えば、しきい値電圧Vth=0.3V、接続段数n=m=12とした場合、オフ電位Voff=−1.5V程度に設定することで、GSM(Global System for Mobile communications)の送信出力(35dBm程度)に対応できる。
【0029】
図3は、挿入損失のオン電位依存性を表わす特性図である。
図3においては、スイッチ部2のスルーFETのオン電位Vonに対する、端子間の挿入損失の依存性を例示している。オン電位Vonが低いと挿入損失は大きくなることが分かる。一方、オン電位Vonが3Vを超えると、挿入損失はほぼ飽和する。また、オン電位Vonを、例えば3.5V以上にすると、スイッチ部2を構成するFETに信頼性上の問題が生じる危険性がある。従って、これらのことを鑑みてオン電位Vonの値は設定される。
【0030】
スイッチ部2の各FETのゲート電位を制御する制御信号は、図1に表わした制御回路部3で生成される。
図4は、図1に表わした半導体スイッチの制御回路部の構成を例示する回路図である。
図4に表したように、制御回路部3は、切替信号端子IN1〜IN3に入力された端子切替信号をデコードして、スイッチ部2にハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する。
【0031】
デコーダ回路5aは、切替信号端子IN1〜IN3に入力された3ビットの端子切替信号をデコードする。デコードされた信号は、反転・非反転信号生成回路5bを介して、駆動回路6に入力される。
【0032】
なお、図4に表したデコーダ回路5aは、3ビットの端子切替信号を6ビットにデコードする場合の構成例であり、真理値表に基づいて他の設計も可能である。また、端子切替信号としてデコードした信号が入力される場合、またはスイッチ部2の端子数が2つの場合は、デコーダ回路5aは不要である。
【0033】
駆動回路6においては、6つのレベルシフタ12a〜12fが並置されている。高電位電源線10から第1の電位Vpが供給され、低電位電源線11から電位Vnが供給される。例えば、低電位電源線11を接地に接続して、電位Vnに接地電位0Vを供給することもできる。また、低電位電源線11から負の電位Vnを供給してもよい。
【0034】
なお、レベルシフタ12a〜12fは差動回路で構成されているため、デコーダ回路5aと駆動回路6との間に、反転・非反転信号生成回路5bが設けられている。また、他の回路部、例えば駆動回路6の前段のデコーダ回路5aなどには電源電位Vdd、または電源電位Vddを安定化した内部電源電位Vdd1が供給される。
【0035】
図5は、駆動回路のレベルシフタの構成を例示する回路図である。
図5においては、駆動回路6の1つのレベルシフタ12の回路図を例示している。
上記のとおり、駆動回路6は、レベルシフタ12と同一構成の6つのレベルシフタ12a〜12fにより構成される。
【0036】
レベルシフタ12は、初段レベルシフタ13と後段レベルシフタ14とを有する。初段レベルシフタ13は、一対のNチャンネル型MOSFET(以下、NMOS)N11、N12と、一対のPチャンネル型MOSFET(以下、PMOS)P11、P12とを有する。後段レベルシフタ14は、一対のPMOS P21、P22と、一対のNMOS N23、N24とを有する。
【0037】
NMOS N11、N12のソースは、それぞれ接地に接続されている。NMOS N11、N12のゲートはそれぞれ入力端子INA、INBを介して図示されない前段のデコーダ回路に接続されている。
【0038】
NMOS N11、N12のドレインは、それぞれPMOS P11、P12のドレインと接続されている。PMOS P11、P12のそれぞれのソースには、高電位電源線10を介して、電源回路部4から第1の電位Vpが供給される。PMOS P11のゲートは、PMOS P12のドレインと接続され、これらは初段レベルシフタ13の差動出力の一方の出力線OUT1Bに接続されている。PMOS P12のゲートは、PMOS P11のドレインと接続され、これらは初段レベルシフタ13の差動出力の他方の出力線OUT1Aに接続されている。
【0039】
上記出力線OUT1A、OUT1Bはそれぞれ後段レベルシフタ14のPMOS P21、P22のゲートに接続される。出力線OUT1A、OUT1Bを介して初段レベルシフタ13の出力信号は、後段レベルシフタ14へ入力される。PMOS P21、P22のそれぞれのソースには、高電位電源線10を介して、電源回路部4から第1の電位Vpが供給される。
【0040】
PMOS P21のドレインは、NMOS N23のドレインと接続され、さらに各ドレインは、出力端子OUTAに接続されている。PMOS P22のドレインはNMOS N24のドレインと接続され、さらに各ドレインは、出力端子OUTBに接続されている。出力端子OUTA、OUTBを介して前述したオン電位Von、オフ電位Voffが、図2に表したスイッチ部2のスルーFET、シャントFETの各ゲートに供給される。
【0041】
初段レベルシフタ13の入力端子INA、INBに入力される差動信号の入力レベルは、例えばハイレベルが1.8V、ローレベルが0Vであり、図示されない前段のデコーダ回路から供給される。高電位電源線10には、第1の電位Vpとして、例えば3.5Vが供給される。
【0042】
例えば、入力端子INAにハイレベル(1.8V)、入力端子INBにローレベル(0V)が入力されると、出力線OUT1Aの電位はローレベル(0V)になり、出力線OUT1Bの電位は、第1の電位Vpと等しい3.5Vになる。すなわち、初段レベルシフタ13における出力振幅は0〜Vpの3.5V程度となる。
【0043】
後段レベルシフタ14には、初段レベルシフタ13の出力信号が入力される。高電位電源線10を介して、初段レベルシフタ13と同様に第1の電位Vpが供給される。また、低電位電源線11を介して、電位Vnが供給される。
第1の電位Vpは、例えば3.5Vである。電位Vnは、0Vまたは負の電位である。以下では、電位Vnが−1.5Vの場合を例として説明する。
【0044】
例えば、出力線OUT1Aがローレベル(0V)、出力線OUT1Bがハイレベル(3.5V)とすると、出力端子OUTAの電位は、第1の電位Vpと等しい3.5Vになり、出力端子OUTBの電位は、電位Vnと等しい−1.5Vになる。したがって、オン電位Vonとして3.5Vを、オフ電位Voffとして−1.5Vを、図2に示すスイッチ部2のスルーFET、シャントFETのゲートに供給することができ、スイッチ部2が駆動される。
【0045】
初段レベルシフタ13は、ハイレベルの電位を第1の電位Vpに変換する。また後段レベルシフタ14は、ローレベルの電位を電位Vnに変換する。従って、レベルシフタ12は、ハイレベルが電源電位Vddまたは内部電源電位Vdd1、ローレベルが0Vである入力信号を、ハイレベルが第1の電位Vp、ローレベルが電位Vnの出力信号に変換する。
【0046】
なお、電位Vnが0Vの場合は、後段レベルシフタ14はなくてもよい。
また、レベルシフタの回路構成としては、図5に例示したもの以外に様々な種類が存在する。半導体スイッチ1におけるレベルシフタは、ハイレベルを外部から供給される正の電源電位Vddよりも高い第1の電位Vpにレベルシフトする機能を有するものであれば、どのような回路構成でも良い。
【0047】
図6は、図1に表わした半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図である。
図6に表したように、電源回路部4においては、内部電位生成回路7は、電源線9から電源電位Vddを入力して、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成して高電位電源線10に出力する。
【0048】
内部電位生成回路7は、発振回路15、チャージポンプ16、ローパスフィルタ17、容量素子18、レギュレータ19などで構成される。発振回路15で生成された相補クロック信号は、チャージポンプ16に供給される。チャージポンプ16は、昇圧動作を行い、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成する。また、チャージポンプ16の出力に含まれるリップル成分は、ローパスフィルタ17で除去され、高電位電源線10に第1の電位Vpとして出力される。なお、ローパスフィルタ17での電圧降下は無視している。
【0049】
さらに、高電位電源線10と接地との間に、容量素子18及びレギュレータ19が並列に接続される。容量素子18は、高電位電源線10の出力インピーダンスを低くする。レギュレータ19は、第1の電位Vpの値を一定値以下に安定化する。
なお、図6においては、容量素子18は、ローパスフィルタ17と別に設けられた構成を例示している。しかし、容量素子18は、ローパスフィルタ17に含まれていてもよい。
【0050】
また、図6においては、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成する内部電位生成回路7の構成を例示している。同様の構成により負の電位を生成して、電位Vnとして駆動回路6の低電位電源線11に供給することもできる。
【0051】
第1のトランジスタ8は、内部電位生成回路7の入力と出力との間、すなわち電源線9と高電位電源線10との間に接続されている。第1のトランジスタ8のゲート及びドレインは、電源線9に接続されている。第1のトランジスタ8のソースは、内部電位生成回路の出力の高電位電源線10に接続される。第1のトランジスタ8は、ダイオード接続されている。
【0052】
第1のトランジスタ8には、入力電位Vddと第1の電位Vpとが入力されている。ここで、第1のトランジスタ8は、NMOSであり、第1の電位Vpが入力電位Vddよりも低下したときオンするようにしきい値電圧Vthが設定されている。そのため、第1の電位Vpが入力電位Vddよりも低下すると、高電位電源線10は電源線9に電気的に接続される。従って、第1の電位Vpは、ほぼ入力電位Vdd以上に保持される。
【0053】
これにより、図8、図9において説明するように、半導体スイッチ1は、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制することができ、切り替え直後の挿入損失の増加を抑制することができる。
【0054】
また、例えば、SOI(Silicon On Insulator)CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスを用いることで、スイッチ部2、制御回路部3、電源回路部4を同一半導体基板上に形成することができる。そのため、低コスト、小型化が実現できる。
【0055】
このように、SOI基板上に形成されたMOSFETを用いることで、化合物半導体HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)と同等の高周波性能を有する高周波スイッチを実現することが可能となる。
ところで、この第1のトランジスタ8の動作及び効果については、第1のトランジスタ8がない場合と比較することにより明確になる。
【0056】
CMOSプロセスを用いた場合には、以下に説明するような課題がある。
HEMTと同等の性能をMOSFETで実現しようとすると、スイッチ部2のFETの段数とゲート幅を大きくする必要がある。高周波用MOSFETは微細プロセスが用いられるため、素子耐圧の観点から、HEMTに比べオン電圧とオフ電圧の差を小さくする必要がある。
【0057】
そのため、FETの接続段数を大きくせざるを得ない。段数が増えると挿入損失が増加するため、その分、ゲート幅も大きくする必要がある。
このことは、駆動回路6のレベルシフタ12a〜12fの負荷容量が大きくなることを意味する。例えば、スイッチ部2のあるRFポートに対するスルーFETのゲート容量の総和は100pF程度にもなる。このような大きい容量をレベルシフタ12a〜12fが充放電しなければならない。
【0058】
半導体スイッチ1のように、レベルシフタ12a〜12fに供給される電源が内部で生成されている場合、その内部電位生成回路7の出力インピーダンスが極めて低くないと、スイッチ切替動作において第1の電位Vpおよび電位Vnが大きく変動してしまうことになる。
【0059】
ここでは、切り替え時の第1の電位Vpの変動に着目する。あるレベルシフタがスルーFETにローレベルを供給していたとする。そして、スイッチが切り替り、ローレベルからハイレベルになったとする。そうすると、そのレベルシフタの高電位電源線10から出力端子に大きな過渡電流が流れる。この電流は図5における容量素子18から供給されることになるが、容量素子18のキャパシタンスCpは100pF程度であると想定すると、十分な過渡電流を供給することは出来ない。
【0060】
従って、第1のトランジスタ8がないと、切り替え時に第1の電位Vpは瞬時に低下することになる。その後、チャージポンプ16からの電流供給によって第1の電位Vpは所望の値に漸近するが、内蔵可能なチャージポンプ16の電流供給能力は低いため、その時定数は大きいものとなる。
【0061】
高周波スイッチに対しては、切り替え時間に対する要求がある。例えば、GSMにおいてはスイッチ切り替え後18μsに高周波信号が入力することがあり得る。よって、切り替え後18μsにおいて十分な高周波特性、例えば挿入損失が得られなければならない。
【0062】
容量素子18のキャパシタンスCpを大きくすることが出来れば、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制できる。しかし、そのためには、例えばキャパシタンスCpを1000pF程度にする必要があり、このような大きな容量を内蔵するには多大なチップ面積が必要となる。そうなると、CMOSプロセスを用いることのメリットである小型化を大きく損なうことになる。
【0063】
以上述べたように、SOI CMOSプロセスを用いた半導体スイッチでは、第1のトランジスタ8がないとスイッチ切り替え直後の挿入損失が大きくなるという課題がある。
これに対して、第1の実施形態に係る半導体スイッチ1においては、電源回路部4の入力と出力との間に第1のトランジスタ8が接続されている。
【0064】
第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vthは、そのばらつきをΔVthとしたとき、Vth≧ΔVthの範囲で、できるだけ小さい値に設定される。言い換えると、しきい値電圧Vthは、ΔVthだけばらついた場合にも負にならない範囲で、できるだけゼロに近い値に設定される。例えば、しきい値電圧VthのばらつきがΔVth=±0.1Vとすると、Vth≧0.1Vに設定される。
【0065】
従って、しきい値電圧Vth=0.1Vに設定したとすると、ゲートとドレインとが接続され、ダイオード接続された第1のトランジスタ8は、ドレイン・ソース間電圧Vds≧0.1Vで導通状態になる。
【0066】
また、第1のトランジスタ8のバックゲートはフローティングになっている。
図7は、第1のトランジスタの断面図である。
図7に表したように、第1のトランジスタ8は、SOI基板上に設けられたNMOSである。
【0067】
シリコン(Si)基板60内に埋め込み酸化膜層62が設けられている。埋め込み酸化膜層62上に、SOI層64を挟んでソース領域(ソース)68とドレイン領域(ドレイン)72とが設けられている。さらに、埋め込み酸化膜層62上に、ソース領域68、SOI層64及びドレイン領域72を囲んで、素子分離層74が設けられている。また、ソース領域68、SOI層64、およびドレイン領域72の上にゲート酸化膜66を介してゲート電極(ゲート)70が設けられている。
【0068】
第1のトランジスタ8のチャネルの下側は埋め込み酸化膜層62であり、支持基板であるシリコン(Si)基板60から絶縁されている。また、チャネルの横側は素子分離層74によって他の素子と絶縁分離されている。さらに、バックゲート80は、電気的にフローティングになっている。
【0069】
なお、バックゲートはP形であり、ソースおよびドレイン領域68、72はN形である。従って、チャネルとソース領域68その間に寄生ダイオード76が形成され、チャネルとドレイン領域72との間に寄生ダイオード78が形成されている。
【0070】
ダイオード接続された第1のトランジスタ8は、正バイアスのときはドレイン・ソース間電圧Vdsがしきい値電圧Vth以上のとき(Vds≧Vth)順方向電流が流れる。しかし、逆バイアスのときは、逆直列接続された寄生ダイオード76、78が存在するため、逆方向電流は流れない。
【0071】
次に、半導体スイッチ1の動作について説明する。
ここで、内部電位生成回路7が生成する第1の電位Vpは3.5V、外部から供給される正の電源電位Vddは2.5Vを想定する。定常状態においては、第1のトランジスタ8は逆方向にバイアスされており、第1のトランジスタ8を介して電源線9から高電位電源線10に電流が流れることはない。
【0072】
ここで留意すべきことは、通常のCMOSにおいてするように、第1のトランジスタ8のバックゲート80をソース領域68に接続していないことである。バックゲート80をソース領域68に接続してしまうと、逆方向バイアス時に、バックゲート・ドレイン間の寄生ダイオード78がオンの状態になる。そのため、寄生ダイオード78に電流が流れてしまい、第1の電位Vpの値が本来の値よりも下がってしまうことになる。
【0073】
次に、スイッチ切り替え時の動作を説明する。
前述のように、スイッチ切り替え時には、容量素子18に充電されていた電荷は、レベルシフタ12a〜12fを介してスイッチ部2のオフからオンに切り替ろうとするFETのゲート容量に流れ込む。そのため、第1の電位Vpは、瞬時に低下してしまう。しかし、第1の電位VpがVp<Vdd−Vthになると、第1のトランジスタ8は導通状態になる。そのため第1の電位VpがVdd−Vthに到達するまで、容量素子18は第1のトランジスタ8を介して電源線9の電源電位Vddからの電流により充電される。
【0074】
なお、第1の電位VpがVdd−Vthを超えると、第1のトランジスタ8からの電流供給は止まる。容量素子18は、チャージポンプ16から供給される電流によって充電される。
以上の動作により、切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下が、第1のトランジスタ8がないときよりも抑制される。
【0075】
図8は、端子切替時の第1の電位の波形図である。
図8においては、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpのシミュレーション波形を、第1のトランジスタ8がない比較例および実施例に対して表している。
なお、シミュレーションは、第1の電位Vpの定常値=3.5V、電源電位Vdd=2.5V、第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vth=0.3V、時刻500μsにてスイッチ切り替え動作という条件で行っている。
【0076】
スイッチを切り替えた瞬間に、比較例、実施例共に第1の電位Vpが急峻に低下している。しかし、比較例の方は、1.6V程度まで落ち込んでいるのに対し、実施例の方は2.1V程度までしか落ち込んでいないことが分かる。
【0077】
図9は、端子切替時の制御信号の波形図である。
図9においては、スイッチ部2のオフからオンに切り替るスルーFETのゲート電位のシミュレーション波形を表している。なお、図9においては、レベルシフタ12a〜12fに供給する電位Vnとして、負の電位−1.5Vを供給している。
【0078】
切り替え後18μsにおけるゲート電位は、比較例が1.7Vであるのに対し、実施例では2.3Vに改善されている。図3に表した挿入損失のオン電圧依存性から、切り替え後18μsの挿入損失は、比較例に対して0.1dB改善することが分かる。
【0079】
なお、第1のトランジスタ8は、スイッチ部2に用いられている各FETと同じイオン注入条件で作ることができ、本実施例を実現するにあたり、プロセスが複雑になることはない。
以上述べたように、半導体スイッチ1によれば、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制することができ、それにより、切り替え直後の挿入損失の増加を抑制することができる。
【0080】
次に、第1のトランジスタ8の有効性を検討する。
スイッチ部2のn段直列接続されたスルーFET群の内、総ゲート容量が最も大きいスルーFET群に着目し、かつ、そのスルーFET群がオフの状態からオンの状態に切り替わるときを考察する。
なお、ここでは、スルーFETに比べサイズの小さいシャントFETの存在は無視している。
【0081】
図10は、スイッチ部2の接続が切り替わるときの半導体スイッチの等価回路を表す回路図である。
図10においては、半導体スイッチ1のスイッチ部2を、抵抗値Rggの抵抗と、静電容量Cggの容量で表している。制御回路部3の駆動回路6のレベルシフタをハイサイドスイッチHS及びローサイドスイッチLSで表している。また、電源回路部4を静電容量Cpの容量素子18で表している。
【0082】
ここで、抵抗値Rggは、着目したスルーFET群の各ゲートに設けられている抵抗を並列接続したときの合成値である。静電容量Cggは、着目したスルーFET群の総ゲート容量である。
【0083】
図11は、第1の電位の変動を計算するための等価回路を表す回路図である。
図11においては、スルーFET群がオフの状態からオンの状態に切り替わるときの半導体スイッチ1の等価回路を表している。
図8に表した比較例の第1の電位Vpの変動ΔVを計算するための等価回路である。
【0084】
初期状態は、ハイサイドスイッチHSはオフである。容量素子18は、オン電位Vonで充電され、スイッチ部2の静電容量Cggの容量は、オフ電位Voffで充電されている。ここで、オン電位Vonは、定常状態の第1の電位Vpに等しく、オフ電位Voffは、定常状態の電位Vnに等しい。
ハイサイドスイッチHSがオンの状態に切り替わった後の、スイッチ部2の電位を計算すると、(1)式が得られる。
【0085】
ΔV=Cgg×(Von−Voff)/(Cp+Cgg) …(1)
【0086】
例えば、Cgg=70pF、Cp=200pF、Von=3.5V、Voff=−1.5Vのとき、ΔV≒1.30Vになる。
なお、(1)式中に抵抗値Rggがないのは、容量素子18からスイッチ部2に瞬時電流が流れた後の電位を問題にしているため、抵抗値Rggの両端には電位差が生じないためである。
【0087】
第1のトランジスタ8が有効となる条件は、第1のトランジスタ8がない場合に、(2)式が成立することである。
ΔV>Von−Vdd …(2)
ここで、Vddは電源電位である。
【0088】
(1)、(2)式から(3)式が得られる。
Cgg×(Von−Voff)/(Cp+Cgg)>Von−Vdd …(3)
【0089】
なお、第1のトランジスタ8がオンして有効となるためには、さらに第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vthを考慮する必要がある。例えば、上記と同じ数値例を用いた場合、Vdd=2.5Vとして、(3)式から、Vth<0.3Vとなる。
従って、半導体スイッチ1においては、第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vthは、ばらつきを考慮して負にならない範囲でできるだけ小さくすることが望ましい。
【0090】
また、第1のトランジスタ8の代わりにダイオードを用いることも考えられる。しかし、上記の数値例の場合は、第1のトランジスタ8の代わりにpn接合ダイオードを用いることはできないことになる。例えばシリコンpn接合ダイオードの場合、順方向電圧が0.6〜0.7V程度でオンするため、上記の数値例の場合はオンしない。
【0091】
また、ショットキーバリアダイオードなど、低電圧でオンするダイオードを用いることも考えられるが、SOI CMOSプロセスでスイッチ部2と同一半導体基板に集積化するのは困難である。
【0092】
なお、図7に表したように、半導体スイッチ1においては、第1のトランジスタ8としてSOI基板上に形成されたNMOSを用いている。しかし。PMOSを用いることも可能である。
【0093】
ただし、NMOSはPMOSよりも高速性に優れるので、第1の電位Vpが電位Vdd−Vth以下に低下したとき、瞬時に導通させることができる。また、NMOSは、PMOSと同じオン抵抗の場合、チャネル幅を小さくでき、レイアウト面積を小さくできる。
【0094】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図である。
図12に表したように、電源回路部4aにおいては、図6に表した電源回路部4に降圧回路20が追加されている。なお、図12においては、図6の電源回路部4と同一の要素には同一の符号を付している。
【0095】
降圧回路20は、電源線9に供給される電源電位Vddを入力して、内部回路に電源電位Vdd_intを供給する。外部から供給される電源電位Vddが変動しても、内部回路には一定の電源電位Vdd_intを供給することができる。また、内部回路の電源電位Vdd_intが最大定格を超えて高くならないように、電源電位Vddを降圧することもできる。内部電位生成回路7には電源電位Vdd_intが供給され、内部電位生成回路7の入力電位はVdd_intになる。
【0096】
第1のトランジスタ8は、内部電位生成回路7の入力と出力との間、すなわち、降圧回路20の出力の内部電源線21と高電位電源線10との間に接続される。第1のトランジスタ8のゲート及びドレインは、内部電源線21に接続されている。第1のトランジスタ8のソースは、内部電位生成回路の出力の高電位電源線10に接続される。第1のトランジスタ8は、ダイオード接続されている。
【0097】
第1のトランジスタ8には、入力電位Vdd_intと第1の電位Vpとが入力されている。上記のとおり、第1のトランジスタ8は、NMOSであり、第1の電位Vpが入力電位Vdd_intよりも低下したときオンするようにしきい値電圧Vthが設定されている。そのため、第1の電位Vpが入力電位Vdd_intよりも低下すると、高電位電源線10は内部電源線21に電気的に接続される。従って、第1の電位Vpは、ほぼ入力電位Vdd_int以上に保持される。
【0098】
図13は、図12に表した電源回路部の降圧回路の構成を例示する回路図である。
図13に表したように、降圧回路20においては、電源線9から入力された電源電位Vddを降圧した電源電位Vdd_intを内部電源線21に出力する。
出力トランジスタ22が電源線9と内部電源線21との間に接続される。出力トランジスタ22は、PMOSで構成されている。内部電源線21と接地との間に、帰還抵抗23、24が直列に接続される。また、内部電源線21と接地との間に、容量25が接続される。
【0099】
電源電位Vdd_intは、帰還抵抗23、24により分圧され、誤差増幅回路26の非反転端子に帰還される。誤差増幅回路26の反転端子には、基準電圧Vrefが入力される。誤差増幅回路26は、電源電位Vdd_intの誤差を増幅して、出力トランジスタ22を制御する。
内部電源線21の電源電位Vdd_intは、(4)式で表される。
【0100】
Vdd_int=(1+R1/R2)×Vref …(4)
ここで、R1、R2は、それぞれ帰還抵抗23、24の抵抗値である。
【0101】
なお、図13においては、降圧回路20として定電圧回路による構成を例示している。しかし、電源電位Vddを降圧して、内部回路の最大定格値以下の電位として電源電位Vdd_intを供給できればよく、定電圧回路でなくてもよい。
なお、第1のトランジスタ8で順方向電流が流れたとき、降圧回路20はその電流を十分供給することができるように、出力トランジスタ22のゲート幅は十分大きい値に設定される。
従って、電源回路部4aを図1に表した半導体スイッチ1の電源回路部4の代わりに用いても、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制することができ、それにより、切り替え直後の挿入損失の増加を抑制することができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1…半導体スイッチ、 2…スイッチ部、 3…制御回路部、 4、4a…電源回路部、 5、5a…デコーダ回路、 6…駆動回路、 7…内部電位生成回路、 8…第1のトランジスタ、 9…電源線、 10…高電位電源線、 11…低電位電源線、 12、12a〜12f…レベルシフタ、 15…発振回路、 16…チャージポンプ、 17…ローパスフィルタ、 18…容量素子、 19…レギュレータ、 20…降圧回路、 21…内部電源線、 68…ソース領域(ソース)、 70…ゲート電極(ゲート)、 72…ドレイン領域(ドレイン)、 80…バックゲート、 ANT…アンテナ端子、 RF1〜RF6…高周波端子、 S11〜S6m…シャントFET、 T11〜T6n…スルーFET
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機の高周波回路部においては、送信回路及び受信回路が高周波スイッチ回路を介して共通のアンテナに選択的に接続されるようになっている。高周波スイッチ回路における重要な特性指標の1つに挿入損失がある。
挿入損失を向上させるためには、高周波スイッチ回路を構成するFETのゲート幅を大きくし、また各ゲートに供給するオン電圧を高くする必要がある。しかし、小型化の観点から、オン電圧を内部で生成する場合の内部電位生成回路の電流供給能力には限界がある。そのため、スイッチ切替動作において、オン電圧が低下し、スイッチ切替直後の挿入損失が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−103971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、端子切替時の挿入損失の増加を抑制した半導体スイッチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電源回路部と制御回路部とスイッチ部とを備えた半導体スイッチが提供される。前記電源回路部は、内部電位生成回路と第1のトランジスタとを有する。前記内部電位生成回路部は、電源線に接続され、入力電位よりも高い第1の電位を生成する。前記第1のトランジスタは、前記内部電位生成回路の入力と出力との間に接続され、前記第1の電位が前記入力電位よりも低下したときオンして前記第1の電位を前記入力電位以上に保持するようにしきい値電圧が設定されたことを特徴とする。前記制御回路部は、前記第1の電位を供給され、ハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する。前記スイッチ部は、前記制御信号を入力して端子間の接続を切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る半導体スイッチの構成を例示するブロック図。
【図2】図1に表わした半導体スイッチのスイッチ部の構成を例示する回路図。
【図3】挿入損失のオン電位依存性を表わす特性図。
【図4】図1に表わした半導体スイッチの制御回路部の構成を例示する回路図。
【図5】駆動回路のレベルシフタの構成を例示する回路図。
【図6】図1に表わした半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図。
【図7】第1のトランジスタの断面図。
【図8】端子切替時の第1の電位の波形図。
【図9】端子切替時の制御信号の波形図。
【図10】スイッチ部2の接続が切り替わるときの半導体スイッチの等価回路を表す回路図。
【図11】第1の電位の変動を計算するための等価回路を表す回路図。
【図12】第2の実施形態に係る半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図。
【図13】図12に表した電源回路部の降圧回路の構成を例示する回路図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の形状や縦横の寸法の関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体スイッチの構成を例示するブロック図である。
図1に表したように、半導体スイッチ1においては、アンテナ端子ANTと各高周波端子RF1〜RF6との端子間の接続を切り替えるスイッチ部2が設けられている。スイッチ部2は、制御回路部3から出力される制御信号に応じて端子間の接続を切り替える。
【0009】
制御回路部3においては、切替信号端子IN1〜IN3に入力された端子切替信号はデコード回路5でデコードされ、さらに駆動回路6でレベルシフトされ、制御信号として出力される。制御回路部3の駆動回路6には、正の電源電位Vddよりも高い第1の電位Vpが供給される。
【0010】
ここで、第1の電位Vpは、制御信号のハイレベルの電位であり、スイッチ部2の各FETのゲートに印加して各FETをオンさせる電位である。また、図3において説明するように、第1の電位Vpの定常値は、端子間の挿入損失が所望の値に低減される電位に設定される。
【0011】
第1の電位Vpは、電源回路部4から供給される。電源回路部4において、内部電位生成回路7は、正の電源電位Vddを入力して、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成する。また、内部電位生成回路7の入力の電源線9と、出力の高電位電源線10との間に第1のトランジスタ8が接続されている。
【0012】
第1のトランジスタ8は、第1の電位Vpが入力電位Vddよりも低下したときオンするようにしきい値電圧が設定されている。そのため、電源回路部4から出力される第1の電位Vpは、ほぼ入力電位Vdd以上の電位に保持される。
【0013】
半導体スイッチ1は、アンテナ端子ANTと高周波端子RF1〜RF6との間の接続を切り替えるSP6T(Single-Pole 6-Throw)のスイッチである。
次に各部について説明する。
【0014】
図2は、図1に表わした半導体スイッチのスイッチ部の構成を例示する回路図である。
図2に表わしたように、アンテナ端子ANTと、各高周波端子RF1〜RF6との間には、それぞれn段(nは自然数)のスルーFET(Field Effect Transistor)T11〜T1n、T21〜T2n、T31〜T3n、T41〜T4n、T51〜T5n、T61〜T6nが直列に接続されている。
【0015】
アンテナ端子ANTと高周波端子RF1との間には、スルーFET T11〜T1nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF2との間には、スルーFET T21〜T2nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF3との間には、スルーFET T31〜T3nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF4との間には、スルーFET T41〜T4nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF5との間には、スルーFET T51〜T5nが接続されている。アンテナ端子ANTと高周波端子RF6との間には、スルーFET T61〜T6nが接続されている。
【0016】
各高周波端子RF1〜RF6と接地との間には、それぞれm段(mは自然数)のシャントFET S11〜S1m、S21〜S2m、S31〜S3m、S41〜S4m、S51〜S5m、S61〜S6mが直列に接続されている。
【0017】
高周波端子RF1と接地との間には、シャントFET S11〜S1mが接続されている。高周波端子RF2と接地との間には、シャントFET S21〜S2mが接続されている。高周波端子RF3と接地との間には、シャントFET S31〜S3mが接続されている。高周波端子RF4と接地との間には、シャントFET S41〜S4mが接続されている。高周波端子RF5と接地との間には、シャントFET S51〜S5mが接続されている。高周波端子RF6と接地との間には、シャントFET S61〜S6mが接続されている。
【0018】
高周波端子RF1に接続されたスルーFET T11〜T1nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con1aと接続されている。高周波端子RF1に接続されたシャントFET S11〜S1mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con1bと接続されている。
【0019】
高周波端子RF2に接続されたスルーFET T21〜T2nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con2aと接続されている。高周波端子RF2に接続されたシャントFET S21〜S2mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con2bと接続されている。
【0020】
高周波端子RF3に接続されたスルーFET T31〜T3nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con3aと接続されている。高周波端子RF3に接続されたシャントFET S31〜S3mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con3bと接続されている。
【0021】
高周波端子RF4に接続されたスルーFET T41〜T4nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con4aと接続されている。高周波端子RF4に接続されたシャントFET S41〜S4mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con4bと接続されている。
【0022】
高周波端子RF5に接続されたスルーFET T51〜T5nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con5aと接続されている。高周波端子RF5に接続されたシャントFET S51〜S5mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con5bと接続されている。
【0023】
高周波端子RF6に接続されたスルーFET T61〜T6nの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con6aと接続されている。高周波端子RF6に接続されたシャントFET S61〜S6mの各ゲートは、高周波漏洩防止用の抵抗を介して、制御端子Con6bと接続されている。
【0024】
制御端子Con1a〜Con6a、Con1b〜Con6bは、それぞれ制御回路部3に接続される。
なお、図2においては、スイッチ部2の構成として、SP6Tスイッチを例示したが、他の構成のスイッチに対しても同様に適用でき、kPlT(kは自然数、lは2以上の整数)スイッチを構成することもできる。
【0025】
シャントFETは、そのシャントFETが接続された高周波端子に接続されたスルーFETがオフにされた際、その高周波端子とアンテナ端子間のアイソレーションを高める。すなわち、スルーFETがオフ状態であってもそのオフ状態のスルーFETと接続された高周波端子に高周波信号が漏れてしまう場合があるが、この時、オン状態のシャントFETを介して、漏れた高周波信号を接地に逃がすことができる。
【0026】
例えば、高周波端子RF1とアンテナ端子ANTとの間を導通するためには、高周波端子RF1とアンテナ端子ANTとの間のn段直列接続スルーFET T11〜T1nをオンとし、高周波端子RF1と接地との間のm段直列接続シャントFET S11〜S1mをオフとする。同時に、他の各高周波端子RF2〜RF6とアンテナ端子ANTとの間のスルーFETをすべてオフとし、他の各高周波端子RF2〜RF6と接地との間のシャントFETをすべてオンとすればよい。
【0027】
上記の場合、制御端子Con1aにはオン電位Von、制御端子Con2b〜Con6bにはオン電位Von、制御端子Con1bにはオフ電位Voff、制御端子Con2a〜Con6aにはオフ電位Voffの電位が与えられる。
【0028】
ここで、オン電位Vonは、各FETが導通状態となり、かつ、そのオン抵抗が十分小さい値になる電位であり、例えば3Vに設定される。オフ電位Voffは、各FETが遮断状態となり、かつ、RF信号が重畳しても遮断状態を十分維持できる電位である。オフ電位Voffは、各FETのしきい値電圧Vthや接続段数n、mによって決められる。例えば、しきい値電圧Vth=0.3V、接続段数n=m=12とした場合、オフ電位Voff=−1.5V程度に設定することで、GSM(Global System for Mobile communications)の送信出力(35dBm程度)に対応できる。
【0029】
図3は、挿入損失のオン電位依存性を表わす特性図である。
図3においては、スイッチ部2のスルーFETのオン電位Vonに対する、端子間の挿入損失の依存性を例示している。オン電位Vonが低いと挿入損失は大きくなることが分かる。一方、オン電位Vonが3Vを超えると、挿入損失はほぼ飽和する。また、オン電位Vonを、例えば3.5V以上にすると、スイッチ部2を構成するFETに信頼性上の問題が生じる危険性がある。従って、これらのことを鑑みてオン電位Vonの値は設定される。
【0030】
スイッチ部2の各FETのゲート電位を制御する制御信号は、図1に表わした制御回路部3で生成される。
図4は、図1に表わした半導体スイッチの制御回路部の構成を例示する回路図である。
図4に表したように、制御回路部3は、切替信号端子IN1〜IN3に入力された端子切替信号をデコードして、スイッチ部2にハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する。
【0031】
デコーダ回路5aは、切替信号端子IN1〜IN3に入力された3ビットの端子切替信号をデコードする。デコードされた信号は、反転・非反転信号生成回路5bを介して、駆動回路6に入力される。
【0032】
なお、図4に表したデコーダ回路5aは、3ビットの端子切替信号を6ビットにデコードする場合の構成例であり、真理値表に基づいて他の設計も可能である。また、端子切替信号としてデコードした信号が入力される場合、またはスイッチ部2の端子数が2つの場合は、デコーダ回路5aは不要である。
【0033】
駆動回路6においては、6つのレベルシフタ12a〜12fが並置されている。高電位電源線10から第1の電位Vpが供給され、低電位電源線11から電位Vnが供給される。例えば、低電位電源線11を接地に接続して、電位Vnに接地電位0Vを供給することもできる。また、低電位電源線11から負の電位Vnを供給してもよい。
【0034】
なお、レベルシフタ12a〜12fは差動回路で構成されているため、デコーダ回路5aと駆動回路6との間に、反転・非反転信号生成回路5bが設けられている。また、他の回路部、例えば駆動回路6の前段のデコーダ回路5aなどには電源電位Vdd、または電源電位Vddを安定化した内部電源電位Vdd1が供給される。
【0035】
図5は、駆動回路のレベルシフタの構成を例示する回路図である。
図5においては、駆動回路6の1つのレベルシフタ12の回路図を例示している。
上記のとおり、駆動回路6は、レベルシフタ12と同一構成の6つのレベルシフタ12a〜12fにより構成される。
【0036】
レベルシフタ12は、初段レベルシフタ13と後段レベルシフタ14とを有する。初段レベルシフタ13は、一対のNチャンネル型MOSFET(以下、NMOS)N11、N12と、一対のPチャンネル型MOSFET(以下、PMOS)P11、P12とを有する。後段レベルシフタ14は、一対のPMOS P21、P22と、一対のNMOS N23、N24とを有する。
【0037】
NMOS N11、N12のソースは、それぞれ接地に接続されている。NMOS N11、N12のゲートはそれぞれ入力端子INA、INBを介して図示されない前段のデコーダ回路に接続されている。
【0038】
NMOS N11、N12のドレインは、それぞれPMOS P11、P12のドレインと接続されている。PMOS P11、P12のそれぞれのソースには、高電位電源線10を介して、電源回路部4から第1の電位Vpが供給される。PMOS P11のゲートは、PMOS P12のドレインと接続され、これらは初段レベルシフタ13の差動出力の一方の出力線OUT1Bに接続されている。PMOS P12のゲートは、PMOS P11のドレインと接続され、これらは初段レベルシフタ13の差動出力の他方の出力線OUT1Aに接続されている。
【0039】
上記出力線OUT1A、OUT1Bはそれぞれ後段レベルシフタ14のPMOS P21、P22のゲートに接続される。出力線OUT1A、OUT1Bを介して初段レベルシフタ13の出力信号は、後段レベルシフタ14へ入力される。PMOS P21、P22のそれぞれのソースには、高電位電源線10を介して、電源回路部4から第1の電位Vpが供給される。
【0040】
PMOS P21のドレインは、NMOS N23のドレインと接続され、さらに各ドレインは、出力端子OUTAに接続されている。PMOS P22のドレインはNMOS N24のドレインと接続され、さらに各ドレインは、出力端子OUTBに接続されている。出力端子OUTA、OUTBを介して前述したオン電位Von、オフ電位Voffが、図2に表したスイッチ部2のスルーFET、シャントFETの各ゲートに供給される。
【0041】
初段レベルシフタ13の入力端子INA、INBに入力される差動信号の入力レベルは、例えばハイレベルが1.8V、ローレベルが0Vであり、図示されない前段のデコーダ回路から供給される。高電位電源線10には、第1の電位Vpとして、例えば3.5Vが供給される。
【0042】
例えば、入力端子INAにハイレベル(1.8V)、入力端子INBにローレベル(0V)が入力されると、出力線OUT1Aの電位はローレベル(0V)になり、出力線OUT1Bの電位は、第1の電位Vpと等しい3.5Vになる。すなわち、初段レベルシフタ13における出力振幅は0〜Vpの3.5V程度となる。
【0043】
後段レベルシフタ14には、初段レベルシフタ13の出力信号が入力される。高電位電源線10を介して、初段レベルシフタ13と同様に第1の電位Vpが供給される。また、低電位電源線11を介して、電位Vnが供給される。
第1の電位Vpは、例えば3.5Vである。電位Vnは、0Vまたは負の電位である。以下では、電位Vnが−1.5Vの場合を例として説明する。
【0044】
例えば、出力線OUT1Aがローレベル(0V)、出力線OUT1Bがハイレベル(3.5V)とすると、出力端子OUTAの電位は、第1の電位Vpと等しい3.5Vになり、出力端子OUTBの電位は、電位Vnと等しい−1.5Vになる。したがって、オン電位Vonとして3.5Vを、オフ電位Voffとして−1.5Vを、図2に示すスイッチ部2のスルーFET、シャントFETのゲートに供給することができ、スイッチ部2が駆動される。
【0045】
初段レベルシフタ13は、ハイレベルの電位を第1の電位Vpに変換する。また後段レベルシフタ14は、ローレベルの電位を電位Vnに変換する。従って、レベルシフタ12は、ハイレベルが電源電位Vddまたは内部電源電位Vdd1、ローレベルが0Vである入力信号を、ハイレベルが第1の電位Vp、ローレベルが電位Vnの出力信号に変換する。
【0046】
なお、電位Vnが0Vの場合は、後段レベルシフタ14はなくてもよい。
また、レベルシフタの回路構成としては、図5に例示したもの以外に様々な種類が存在する。半導体スイッチ1におけるレベルシフタは、ハイレベルを外部から供給される正の電源電位Vddよりも高い第1の電位Vpにレベルシフトする機能を有するものであれば、どのような回路構成でも良い。
【0047】
図6は、図1に表わした半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図である。
図6に表したように、電源回路部4においては、内部電位生成回路7は、電源線9から電源電位Vddを入力して、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成して高電位電源線10に出力する。
【0048】
内部電位生成回路7は、発振回路15、チャージポンプ16、ローパスフィルタ17、容量素子18、レギュレータ19などで構成される。発振回路15で生成された相補クロック信号は、チャージポンプ16に供給される。チャージポンプ16は、昇圧動作を行い、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成する。また、チャージポンプ16の出力に含まれるリップル成分は、ローパスフィルタ17で除去され、高電位電源線10に第1の電位Vpとして出力される。なお、ローパスフィルタ17での電圧降下は無視している。
【0049】
さらに、高電位電源線10と接地との間に、容量素子18及びレギュレータ19が並列に接続される。容量素子18は、高電位電源線10の出力インピーダンスを低くする。レギュレータ19は、第1の電位Vpの値を一定値以下に安定化する。
なお、図6においては、容量素子18は、ローパスフィルタ17と別に設けられた構成を例示している。しかし、容量素子18は、ローパスフィルタ17に含まれていてもよい。
【0050】
また、図6においては、入力電位Vddよりも高い第1の電位Vpを生成する内部電位生成回路7の構成を例示している。同様の構成により負の電位を生成して、電位Vnとして駆動回路6の低電位電源線11に供給することもできる。
【0051】
第1のトランジスタ8は、内部電位生成回路7の入力と出力との間、すなわち電源線9と高電位電源線10との間に接続されている。第1のトランジスタ8のゲート及びドレインは、電源線9に接続されている。第1のトランジスタ8のソースは、内部電位生成回路の出力の高電位電源線10に接続される。第1のトランジスタ8は、ダイオード接続されている。
【0052】
第1のトランジスタ8には、入力電位Vddと第1の電位Vpとが入力されている。ここで、第1のトランジスタ8は、NMOSであり、第1の電位Vpが入力電位Vddよりも低下したときオンするようにしきい値電圧Vthが設定されている。そのため、第1の電位Vpが入力電位Vddよりも低下すると、高電位電源線10は電源線9に電気的に接続される。従って、第1の電位Vpは、ほぼ入力電位Vdd以上に保持される。
【0053】
これにより、図8、図9において説明するように、半導体スイッチ1は、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制することができ、切り替え直後の挿入損失の増加を抑制することができる。
【0054】
また、例えば、SOI(Silicon On Insulator)CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスを用いることで、スイッチ部2、制御回路部3、電源回路部4を同一半導体基板上に形成することができる。そのため、低コスト、小型化が実現できる。
【0055】
このように、SOI基板上に形成されたMOSFETを用いることで、化合物半導体HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)と同等の高周波性能を有する高周波スイッチを実現することが可能となる。
ところで、この第1のトランジスタ8の動作及び効果については、第1のトランジスタ8がない場合と比較することにより明確になる。
【0056】
CMOSプロセスを用いた場合には、以下に説明するような課題がある。
HEMTと同等の性能をMOSFETで実現しようとすると、スイッチ部2のFETの段数とゲート幅を大きくする必要がある。高周波用MOSFETは微細プロセスが用いられるため、素子耐圧の観点から、HEMTに比べオン電圧とオフ電圧の差を小さくする必要がある。
【0057】
そのため、FETの接続段数を大きくせざるを得ない。段数が増えると挿入損失が増加するため、その分、ゲート幅も大きくする必要がある。
このことは、駆動回路6のレベルシフタ12a〜12fの負荷容量が大きくなることを意味する。例えば、スイッチ部2のあるRFポートに対するスルーFETのゲート容量の総和は100pF程度にもなる。このような大きい容量をレベルシフタ12a〜12fが充放電しなければならない。
【0058】
半導体スイッチ1のように、レベルシフタ12a〜12fに供給される電源が内部で生成されている場合、その内部電位生成回路7の出力インピーダンスが極めて低くないと、スイッチ切替動作において第1の電位Vpおよび電位Vnが大きく変動してしまうことになる。
【0059】
ここでは、切り替え時の第1の電位Vpの変動に着目する。あるレベルシフタがスルーFETにローレベルを供給していたとする。そして、スイッチが切り替り、ローレベルからハイレベルになったとする。そうすると、そのレベルシフタの高電位電源線10から出力端子に大きな過渡電流が流れる。この電流は図5における容量素子18から供給されることになるが、容量素子18のキャパシタンスCpは100pF程度であると想定すると、十分な過渡電流を供給することは出来ない。
【0060】
従って、第1のトランジスタ8がないと、切り替え時に第1の電位Vpは瞬時に低下することになる。その後、チャージポンプ16からの電流供給によって第1の電位Vpは所望の値に漸近するが、内蔵可能なチャージポンプ16の電流供給能力は低いため、その時定数は大きいものとなる。
【0061】
高周波スイッチに対しては、切り替え時間に対する要求がある。例えば、GSMにおいてはスイッチ切り替え後18μsに高周波信号が入力することがあり得る。よって、切り替え後18μsにおいて十分な高周波特性、例えば挿入損失が得られなければならない。
【0062】
容量素子18のキャパシタンスCpを大きくすることが出来れば、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制できる。しかし、そのためには、例えばキャパシタンスCpを1000pF程度にする必要があり、このような大きな容量を内蔵するには多大なチップ面積が必要となる。そうなると、CMOSプロセスを用いることのメリットである小型化を大きく損なうことになる。
【0063】
以上述べたように、SOI CMOSプロセスを用いた半導体スイッチでは、第1のトランジスタ8がないとスイッチ切り替え直後の挿入損失が大きくなるという課題がある。
これに対して、第1の実施形態に係る半導体スイッチ1においては、電源回路部4の入力と出力との間に第1のトランジスタ8が接続されている。
【0064】
第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vthは、そのばらつきをΔVthとしたとき、Vth≧ΔVthの範囲で、できるだけ小さい値に設定される。言い換えると、しきい値電圧Vthは、ΔVthだけばらついた場合にも負にならない範囲で、できるだけゼロに近い値に設定される。例えば、しきい値電圧VthのばらつきがΔVth=±0.1Vとすると、Vth≧0.1Vに設定される。
【0065】
従って、しきい値電圧Vth=0.1Vに設定したとすると、ゲートとドレインとが接続され、ダイオード接続された第1のトランジスタ8は、ドレイン・ソース間電圧Vds≧0.1Vで導通状態になる。
【0066】
また、第1のトランジスタ8のバックゲートはフローティングになっている。
図7は、第1のトランジスタの断面図である。
図7に表したように、第1のトランジスタ8は、SOI基板上に設けられたNMOSである。
【0067】
シリコン(Si)基板60内に埋め込み酸化膜層62が設けられている。埋め込み酸化膜層62上に、SOI層64を挟んでソース領域(ソース)68とドレイン領域(ドレイン)72とが設けられている。さらに、埋め込み酸化膜層62上に、ソース領域68、SOI層64及びドレイン領域72を囲んで、素子分離層74が設けられている。また、ソース領域68、SOI層64、およびドレイン領域72の上にゲート酸化膜66を介してゲート電極(ゲート)70が設けられている。
【0068】
第1のトランジスタ8のチャネルの下側は埋め込み酸化膜層62であり、支持基板であるシリコン(Si)基板60から絶縁されている。また、チャネルの横側は素子分離層74によって他の素子と絶縁分離されている。さらに、バックゲート80は、電気的にフローティングになっている。
【0069】
なお、バックゲートはP形であり、ソースおよびドレイン領域68、72はN形である。従って、チャネルとソース領域68その間に寄生ダイオード76が形成され、チャネルとドレイン領域72との間に寄生ダイオード78が形成されている。
【0070】
ダイオード接続された第1のトランジスタ8は、正バイアスのときはドレイン・ソース間電圧Vdsがしきい値電圧Vth以上のとき(Vds≧Vth)順方向電流が流れる。しかし、逆バイアスのときは、逆直列接続された寄生ダイオード76、78が存在するため、逆方向電流は流れない。
【0071】
次に、半導体スイッチ1の動作について説明する。
ここで、内部電位生成回路7が生成する第1の電位Vpは3.5V、外部から供給される正の電源電位Vddは2.5Vを想定する。定常状態においては、第1のトランジスタ8は逆方向にバイアスされており、第1のトランジスタ8を介して電源線9から高電位電源線10に電流が流れることはない。
【0072】
ここで留意すべきことは、通常のCMOSにおいてするように、第1のトランジスタ8のバックゲート80をソース領域68に接続していないことである。バックゲート80をソース領域68に接続してしまうと、逆方向バイアス時に、バックゲート・ドレイン間の寄生ダイオード78がオンの状態になる。そのため、寄生ダイオード78に電流が流れてしまい、第1の電位Vpの値が本来の値よりも下がってしまうことになる。
【0073】
次に、スイッチ切り替え時の動作を説明する。
前述のように、スイッチ切り替え時には、容量素子18に充電されていた電荷は、レベルシフタ12a〜12fを介してスイッチ部2のオフからオンに切り替ろうとするFETのゲート容量に流れ込む。そのため、第1の電位Vpは、瞬時に低下してしまう。しかし、第1の電位VpがVp<Vdd−Vthになると、第1のトランジスタ8は導通状態になる。そのため第1の電位VpがVdd−Vthに到達するまで、容量素子18は第1のトランジスタ8を介して電源線9の電源電位Vddからの電流により充電される。
【0074】
なお、第1の電位VpがVdd−Vthを超えると、第1のトランジスタ8からの電流供給は止まる。容量素子18は、チャージポンプ16から供給される電流によって充電される。
以上の動作により、切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下が、第1のトランジスタ8がないときよりも抑制される。
【0075】
図8は、端子切替時の第1の電位の波形図である。
図8においては、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpのシミュレーション波形を、第1のトランジスタ8がない比較例および実施例に対して表している。
なお、シミュレーションは、第1の電位Vpの定常値=3.5V、電源電位Vdd=2.5V、第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vth=0.3V、時刻500μsにてスイッチ切り替え動作という条件で行っている。
【0076】
スイッチを切り替えた瞬間に、比較例、実施例共に第1の電位Vpが急峻に低下している。しかし、比較例の方は、1.6V程度まで落ち込んでいるのに対し、実施例の方は2.1V程度までしか落ち込んでいないことが分かる。
【0077】
図9は、端子切替時の制御信号の波形図である。
図9においては、スイッチ部2のオフからオンに切り替るスルーFETのゲート電位のシミュレーション波形を表している。なお、図9においては、レベルシフタ12a〜12fに供給する電位Vnとして、負の電位−1.5Vを供給している。
【0078】
切り替え後18μsにおけるゲート電位は、比較例が1.7Vであるのに対し、実施例では2.3Vに改善されている。図3に表した挿入損失のオン電圧依存性から、切り替え後18μsの挿入損失は、比較例に対して0.1dB改善することが分かる。
【0079】
なお、第1のトランジスタ8は、スイッチ部2に用いられている各FETと同じイオン注入条件で作ることができ、本実施例を実現するにあたり、プロセスが複雑になることはない。
以上述べたように、半導体スイッチ1によれば、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制することができ、それにより、切り替え直後の挿入損失の増加を抑制することができる。
【0080】
次に、第1のトランジスタ8の有効性を検討する。
スイッチ部2のn段直列接続されたスルーFET群の内、総ゲート容量が最も大きいスルーFET群に着目し、かつ、そのスルーFET群がオフの状態からオンの状態に切り替わるときを考察する。
なお、ここでは、スルーFETに比べサイズの小さいシャントFETの存在は無視している。
【0081】
図10は、スイッチ部2の接続が切り替わるときの半導体スイッチの等価回路を表す回路図である。
図10においては、半導体スイッチ1のスイッチ部2を、抵抗値Rggの抵抗と、静電容量Cggの容量で表している。制御回路部3の駆動回路6のレベルシフタをハイサイドスイッチHS及びローサイドスイッチLSで表している。また、電源回路部4を静電容量Cpの容量素子18で表している。
【0082】
ここで、抵抗値Rggは、着目したスルーFET群の各ゲートに設けられている抵抗を並列接続したときの合成値である。静電容量Cggは、着目したスルーFET群の総ゲート容量である。
【0083】
図11は、第1の電位の変動を計算するための等価回路を表す回路図である。
図11においては、スルーFET群がオフの状態からオンの状態に切り替わるときの半導体スイッチ1の等価回路を表している。
図8に表した比較例の第1の電位Vpの変動ΔVを計算するための等価回路である。
【0084】
初期状態は、ハイサイドスイッチHSはオフである。容量素子18は、オン電位Vonで充電され、スイッチ部2の静電容量Cggの容量は、オフ電位Voffで充電されている。ここで、オン電位Vonは、定常状態の第1の電位Vpに等しく、オフ電位Voffは、定常状態の電位Vnに等しい。
ハイサイドスイッチHSがオンの状態に切り替わった後の、スイッチ部2の電位を計算すると、(1)式が得られる。
【0085】
ΔV=Cgg×(Von−Voff)/(Cp+Cgg) …(1)
【0086】
例えば、Cgg=70pF、Cp=200pF、Von=3.5V、Voff=−1.5Vのとき、ΔV≒1.30Vになる。
なお、(1)式中に抵抗値Rggがないのは、容量素子18からスイッチ部2に瞬時電流が流れた後の電位を問題にしているため、抵抗値Rggの両端には電位差が生じないためである。
【0087】
第1のトランジスタ8が有効となる条件は、第1のトランジスタ8がない場合に、(2)式が成立することである。
ΔV>Von−Vdd …(2)
ここで、Vddは電源電位である。
【0088】
(1)、(2)式から(3)式が得られる。
Cgg×(Von−Voff)/(Cp+Cgg)>Von−Vdd …(3)
【0089】
なお、第1のトランジスタ8がオンして有効となるためには、さらに第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vthを考慮する必要がある。例えば、上記と同じ数値例を用いた場合、Vdd=2.5Vとして、(3)式から、Vth<0.3Vとなる。
従って、半導体スイッチ1においては、第1のトランジスタ8のしきい値電圧Vthは、ばらつきを考慮して負にならない範囲でできるだけ小さくすることが望ましい。
【0090】
また、第1のトランジスタ8の代わりにダイオードを用いることも考えられる。しかし、上記の数値例の場合は、第1のトランジスタ8の代わりにpn接合ダイオードを用いることはできないことになる。例えばシリコンpn接合ダイオードの場合、順方向電圧が0.6〜0.7V程度でオンするため、上記の数値例の場合はオンしない。
【0091】
また、ショットキーバリアダイオードなど、低電圧でオンするダイオードを用いることも考えられるが、SOI CMOSプロセスでスイッチ部2と同一半導体基板に集積化するのは困難である。
【0092】
なお、図7に表したように、半導体スイッチ1においては、第1のトランジスタ8としてSOI基板上に形成されたNMOSを用いている。しかし。PMOSを用いることも可能である。
【0093】
ただし、NMOSはPMOSよりも高速性に優れるので、第1の電位Vpが電位Vdd−Vth以下に低下したとき、瞬時に導通させることができる。また、NMOSは、PMOSと同じオン抵抗の場合、チャネル幅を小さくでき、レイアウト面積を小さくできる。
【0094】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る半導体スイッチの電源回路部の構成を例示する回路図である。
図12に表したように、電源回路部4aにおいては、図6に表した電源回路部4に降圧回路20が追加されている。なお、図12においては、図6の電源回路部4と同一の要素には同一の符号を付している。
【0095】
降圧回路20は、電源線9に供給される電源電位Vddを入力して、内部回路に電源電位Vdd_intを供給する。外部から供給される電源電位Vddが変動しても、内部回路には一定の電源電位Vdd_intを供給することができる。また、内部回路の電源電位Vdd_intが最大定格を超えて高くならないように、電源電位Vddを降圧することもできる。内部電位生成回路7には電源電位Vdd_intが供給され、内部電位生成回路7の入力電位はVdd_intになる。
【0096】
第1のトランジスタ8は、内部電位生成回路7の入力と出力との間、すなわち、降圧回路20の出力の内部電源線21と高電位電源線10との間に接続される。第1のトランジスタ8のゲート及びドレインは、内部電源線21に接続されている。第1のトランジスタ8のソースは、内部電位生成回路の出力の高電位電源線10に接続される。第1のトランジスタ8は、ダイオード接続されている。
【0097】
第1のトランジスタ8には、入力電位Vdd_intと第1の電位Vpとが入力されている。上記のとおり、第1のトランジスタ8は、NMOSであり、第1の電位Vpが入力電位Vdd_intよりも低下したときオンするようにしきい値電圧Vthが設定されている。そのため、第1の電位Vpが入力電位Vdd_intよりも低下すると、高電位電源線10は内部電源線21に電気的に接続される。従って、第1の電位Vpは、ほぼ入力電位Vdd_int以上に保持される。
【0098】
図13は、図12に表した電源回路部の降圧回路の構成を例示する回路図である。
図13に表したように、降圧回路20においては、電源線9から入力された電源電位Vddを降圧した電源電位Vdd_intを内部電源線21に出力する。
出力トランジスタ22が電源線9と内部電源線21との間に接続される。出力トランジスタ22は、PMOSで構成されている。内部電源線21と接地との間に、帰還抵抗23、24が直列に接続される。また、内部電源線21と接地との間に、容量25が接続される。
【0099】
電源電位Vdd_intは、帰還抵抗23、24により分圧され、誤差増幅回路26の非反転端子に帰還される。誤差増幅回路26の反転端子には、基準電圧Vrefが入力される。誤差増幅回路26は、電源電位Vdd_intの誤差を増幅して、出力トランジスタ22を制御する。
内部電源線21の電源電位Vdd_intは、(4)式で表される。
【0100】
Vdd_int=(1+R1/R2)×Vref …(4)
ここで、R1、R2は、それぞれ帰還抵抗23、24の抵抗値である。
【0101】
なお、図13においては、降圧回路20として定電圧回路による構成を例示している。しかし、電源電位Vddを降圧して、内部回路の最大定格値以下の電位として電源電位Vdd_intを供給できればよく、定電圧回路でなくてもよい。
なお、第1のトランジスタ8で順方向電流が流れたとき、降圧回路20はその電流を十分供給することができるように、出力トランジスタ22のゲート幅は十分大きい値に設定される。
従って、電源回路部4aを図1に表した半導体スイッチ1の電源回路部4の代わりに用いても、スイッチ切り替え時の第1の電位Vpの瞬時低下を抑制することができ、それにより、切り替え直後の挿入損失の増加を抑制することができる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1…半導体スイッチ、 2…スイッチ部、 3…制御回路部、 4、4a…電源回路部、 5、5a…デコーダ回路、 6…駆動回路、 7…内部電位生成回路、 8…第1のトランジスタ、 9…電源線、 10…高電位電源線、 11…低電位電源線、 12、12a〜12f…レベルシフタ、 15…発振回路、 16…チャージポンプ、 17…ローパスフィルタ、 18…容量素子、 19…レギュレータ、 20…降圧回路、 21…内部電源線、 68…ソース領域(ソース)、 70…ゲート電極(ゲート)、 72…ドレイン領域(ドレイン)、 80…バックゲート、 ANT…アンテナ端子、 RF1〜RF6…高周波端子、 S11〜S6m…シャントFET、 T11〜T6n…スルーFET
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源線に接続され、入力電位よりも高い第1の電位を生成する内部電位生成回路と、前記内部電位生成回路の入力と出力との間に接続され、前記第1の電位が前記入力電位よりも低下したときオンして前記第1の電位を前記入力電位以上に保持するようにしきい値電圧が設定された第1のトランジスタと、を有する電源回路部と、
前記第1の電位が供給され、ハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する制御回路部と、
前記制御信号を入力して端子間の接続を切り替えるスイッチ部と、
を備えたことを特徴とする半導体スイッチ。
【請求項2】
前記電源回路部は、前記電源線と前記内部電位生成回路との間に接続され、前記電源線の電位を降圧して前記内部電位生成回路及び前記第1のトランジスタに出力する降圧回路をさらに有することを特徴とする請求項1記載の半導体スイッチ。
【請求項3】
前記第1のトランジスタは、ゲート及びドレインが前記内部電位生成回路の入力に接続され、ソースが前記内部電位生成回路の出力に接続され、バックゲートがフローティングのNチャネル形MOSFETであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体スイッチ。
【請求項4】
前記第1のトランジスタは、前記スイッチ部と同一のSOI基板上に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチ部は、
アンテナ端子と高周波端子との間に接続されたスルーFETと、
前記高周波端子と接地との間に接続されたシャントFETと、
を有し、
前記第1のトランジスタは、前記スルーFETまたは前記シャントFETと同一のしきい値電圧を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項6】
前記内部電位生成回路は、出力と接地との間に接続された容量素子をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項7】
前記内部電位生成回路は、
発振回路と、
前記発振回路の出力により動作するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路の出力を平滑化するローパスフィルタと、
を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項1】
電源線に接続され、入力電位よりも高い第1の電位を生成する内部電位生成回路と、前記内部電位生成回路の入力と出力との間に接続され、前記第1の電位が前記入力電位よりも低下したときオンして前記第1の電位を前記入力電位以上に保持するようにしきい値電圧が設定された第1のトランジスタと、を有する電源回路部と、
前記第1の電位が供給され、ハイレベルまたはローレベルの制御信号を出力する制御回路部と、
前記制御信号を入力して端子間の接続を切り替えるスイッチ部と、
を備えたことを特徴とする半導体スイッチ。
【請求項2】
前記電源回路部は、前記電源線と前記内部電位生成回路との間に接続され、前記電源線の電位を降圧して前記内部電位生成回路及び前記第1のトランジスタに出力する降圧回路をさらに有することを特徴とする請求項1記載の半導体スイッチ。
【請求項3】
前記第1のトランジスタは、ゲート及びドレインが前記内部電位生成回路の入力に接続され、ソースが前記内部電位生成回路の出力に接続され、バックゲートがフローティングのNチャネル形MOSFETであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体スイッチ。
【請求項4】
前記第1のトランジスタは、前記スイッチ部と同一のSOI基板上に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチ部は、
アンテナ端子と高周波端子との間に接続されたスルーFETと、
前記高周波端子と接地との間に接続されたシャントFETと、
を有し、
前記第1のトランジスタは、前記スルーFETまたは前記シャントFETと同一のしきい値電圧を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項6】
前記内部電位生成回路は、出力と接地との間に接続された容量素子をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【請求項7】
前記内部電位生成回路は、
発振回路と、
前記発振回路の出力により動作するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路の出力を平滑化するローパスフィルタと、
を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−70181(P2012−70181A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212647(P2010−212647)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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