説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置

【課題】 混練物や粉砕品が水分と接触する機会を皆無とし、シート化冷却工程においてトラブルが極めて少ない半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却する工程、前記圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、前記粉砕品を圧縮成形する工程、を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体封止用樹脂組成物は、電気特性、耐熱性、量産性等に優れるエポキシ樹脂とその硬化剤、触媒、離型剤、難燃剤、着色剤等の添加剤及び無機充填剤から構成されている。又その製造方法としては、樹脂組成物を構成する成分を所定量配合、混合後、ロール、1軸押出機、1軸押出機とロールの組み合わせ、又は2軸押出機により混練を行い、混練物をシート状に圧延、冷却後、ハンマーミルや回転羽根等を用いて粉砕を行い、必要に応じて円柱状のタブレットに加工するといった工程がとられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記製造工程において、混練装置、シート状化装置、冷却コンベアが連動しているので、混練物を円滑に搬送するには,混練装置以降の装置は混練装置より処理能力が大きい必要がある。一方,気体を利用した冷却においては,雰囲気中への放置時間が長い程冷却後の温度が低くなる。しかし,製造工程においては,冷却コンベアの放置時間を確保するために距離を長くすることは,実用的ではない。また,冷却コンベアの搬送速度を遅くすると生産性が低下する。
【0004】
また一般的に、半導体封止用樹脂組成物の混練物をシート状に圧延し、その圧延物を冷却する場合、冷却水を散水又は噴霧し、冷却したスチールベルトで、圧延物を搬送することにより、冷却している。冷却水は、スチールベルトの搬送面の封止材に接していない裏面のみに、接触させているが、トラブル時に、冷却水が半導体封止用樹脂組成物の圧延物と接触する可能性もあり,水分を嫌う半導体封止用樹脂組成物にとっては,リスクは大きい。すなわち、混練物を冷却する方法として,シート状とした後,スチールベルトを使用し,このスチールベルトの片面にシート状の混練物を載せ,もう一方の面に液体(通常は,冷却水)を接触させてシート状の混練物を冷却する既知の手段がある。この方法の場合,水と接触する可能性を避けることが出来ない。
【0005】
また半導体封止用樹脂組成物は、無機充填剤を大量に含有しているため、使用する樹脂の低粘度化により混練物の粘度も低粘度となり,シート状に圧延する際に、圧延ロールへの巻きつきが起こり易く、これに伴う作業性悪化や設備トラブルにより生産性低下を来たしている。
【0006】
また粉砕工程における粉砕装置も、冷水により外面から冷却されている例がある(特許文献1参照)。また近年、半導体封止材の特性に対する要求も増加してきており、それに伴い半導体封止用樹脂組成物の無機充填剤の配合量も更に増加する傾向があり、製造工程中、冷却工程や粉砕工程における雰囲気の湿度管理が重要になってきている。すなわち圧延物を粉砕する工程においては、粉砕により混練物の表面積が増すため、雰囲気中の水分が付着し,半導体封止用樹脂組成物の含水率が上がる。半導体封止用樹脂組成物は、水分を含むと半導体パッケージのモールド時にボイド(空洞)を高い確立で発生させることがある。
【特許文献1】特開2001−64398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、混練物や粉砕品が水分と接触する機会を皆無とし、かつ低温度低露点の空気中で粉砕を行なうことにより、混練物への吸湿を防止できる半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却する工程、前記圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、前記粉砕品を圧縮成形する工程、を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(2)低温の気体中で冷却する工程が、圧延物に低温の気体を吹き付けて冷却する工程である項(1)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(3)低温の気体が、0〜15℃の空気である項(1)又は(2)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(4)圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程が、低温度低露点の空気中で圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程である項(1)〜(3)いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(5)低温度低露点の空気温度が5℃以下、露点温度が0℃以下である項(4)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
(6)項(1)〜(5)いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法で製造されたことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(7)項(6)に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止された素子を備えたことを特徴とする電子部品装置。
【発明の効果】
【0009】
混練物や粉砕品が水分と接触する機会を皆無とし、かつ低温度低露点の空気中で粉砕を行なうことにより、混練物への吸湿を防止できる半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却する工程、前記圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、前記粉砕品を圧縮成形する工程を有することを特徴としている。
【0011】
本発明に用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含んでいる。エポキシ樹脂、無機充填剤及び硬化剤は、通常半導体封止用エポキシ樹脂組成物に用いるものならば、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂としては、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類及び/又はナフトール類との共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明において用いられる硬化剤は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明において用いられる無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために成形材料に配合されるものであり、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、線膨張係数の低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、無機充填剤の形状は成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。無機充填剤の配合量は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物中、耐リフロー性、流動性、成形性、及び強度向上の観点から、70〜97重量%の範囲が好ましく、80〜95重量%がより好ましく、88〜92重量%が特に好ましい。70重量%未満では耐リフロー性が低下する傾向がある。
【0014】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、フェノール樹脂、シランカップリング剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、カーボンブラック、カルナバワックスあるいは低分子量ポリエチレン等の離型剤、樹脂組成物の柔軟性を保持させるためのシリコーンオイル、ゴム等を適宜添加してもよい。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック型、フェノールアラルキル型、ジシクロペンタジエン型等が挙げられる。硬化促進剤は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので特に制限はないが、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも成形性、耐リフロー性の観点からは有機ホスフィンとキノン化合物との付加物が好ましい。
【0015】
図1に示したように、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置11にて混練して混練物16を得る工程においては、各種材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の各種材料をミキサー等によって十分混合した後、混練装置11であるミキシングロールや押出機等によって溶融混練して混練物16を得てもよい。本発明に用いる混練装置11は、特に限定しないが、同方向回転二軸押出機などが挙げられ、使用するスクリュー、シリンダーの形状及び材質には特に限定はないが多量に充填されている無機充填剤に対する摩耗抵抗の高いものが望ましい。
【0016】
前記混練物16を圧延ロール12でシート状に圧延して、圧延物18を得る工程においては、シート状に圧延した圧延物18の厚みは5mm以下1mm以上が好ましく、圧延物18の冷却効率を上げるためには3mm以下1mm以上であることが更に好ましい。また、圧延ロール12自体が、混練物16に対する冷却機能を有していることが好ましい。
【0017】
前記圧延物18を冷却コンベア13にて搬送しながら、低温の気体中で冷却する工程において、圧延物18を搬送する冷却コンベア13の材質、形状は特に限定しないが、低温の気体の循環を妨げないメッシュ状の冷却コンベア13が好ましい。また図1に示したように、冷却コンベア13が、筐体20等で覆われていることが、冷却の効率性及び作業性の点から好ましい。低温の気体としては、低温の空気、低温の窒素ガス、低温の炭酸ガスなどが挙げられるが、作業性の点から低温の空気が好ましい。なお低温の窒素ガスは液体窒素から、また低温の炭酸ガスはドライアイスなどから得ることができる。また低温の気体中で圧延物18を冷却する場合、圧延物18に低温の気体を吹き付けて冷却することが好ましい。なお圧延物18は、冷却コンベア13にて搬送されながら、5〜30℃まで冷却されることが好ましく、10〜15℃まで冷却されることがより好ましい。
【0018】
また低温の気体は、0〜15℃の空気であることが好ましく、更に0〜10℃の空気であることがより好ましい。よって0〜15℃の空気を、冷風として圧延物18に直接吹き付けることが、特に好ましい。冷風温度が0℃未満では冷却効率のわりに、冷風生成循環装置14等の冷風を生成する装置のエネルギーコストが高くなり経済性が劣る。また、冷風温度が15℃を超えると圧延物18の冷却効果が十分でなく、筐体20、冷却コンベア13及び冷風ダクト15を必要以上に長く設置する必要が出てくる。なお冷風の風速としては1〜50m/秒が好ましい。なお冷風の温度及び風速は、例えば、冷風ダクト15の冷風吹き出し口21近傍で測定することができる。また、冷風吹き出し口21と圧延物18の距離は、圧延物18への冷却効果が得られれば特に制限しないが、1〜100cmが好ましく、1〜40cmがより好ましい。
【0019】
前記圧延物は、粉砕機にて粉砕して粉砕品にする。その場合、粉砕機による粉砕を、2段階以上で行なっても良い。例えば前記圧延物は、粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る前に、粗粉砕機19などにより、比較的粗く粉砕されることが好ましい。比較的粗く粉砕された物は、例えば、図2に示したように、搬送装置30により、搬送され、粉砕機31に投入される。
【0020】
図2に示したように、前記圧延物(比較的粗く粉砕された物)を粉砕機31にて粉砕して粉砕品を得る工程において、粉砕は低温度低露点の空気中で行なうことが好ましい。また低温度低露点の空気の温度は5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることが特に好ましい。また、露点温度は0℃以下であることがより好ましく、0〜−30℃であることが特に好ましい。露点温度が0℃を超すと低露点を要求する粉砕工程における雰囲気の湿度管理が十分でなく、粉砕により表面積が増加した粉砕品に、雰囲気中の水分が付着するなど、製造プロセスの良好な環境を保てない。また露点温度が−30℃未満では、ランニングコストのわりには、効果が小さい。なお低温度低露点の空気は、例えば回転式のロータを用いた乾式除湿装置(低温度低露点空気発生装置)35などにより得られ、供給空気(低温度低露点の空気)として、調整ダンパ36で風量等を調整され、あるいは低湿度空調室若しくはチャンバー等の部分的な空調あるいは吹付けにより、粉砕機31周辺に供給される。なお粉砕機31は、圧延物(比較的粗く粉砕された物)を次工程の圧縮成形可能な程度に、粉砕可能なものであれば特に限定されず、一般的な半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に使用される粉砕機31でよい。例えば粉砕機31により、得られた粉砕品34は、充填タンク33に一時保管される。
【0021】
前記粉砕品を圧縮成形する工程において、粉砕品は、例えば適切な寸法及び重量のタブレットに圧縮成形される。そして例えば低温雰囲気中の保管庫に、タブレット状に圧縮成形された本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は保管されることが好ましい。なお低温雰囲気中の保管庫の温度は、−5〜5℃が好ましく、−5〜3℃がより好ましい。以上、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法により製造することができる。なお製造された半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、無機充填剤を、半導体封止用エポキシ樹脂組成物中、70〜97重量%含むことが好ましく、80〜95重量%含むことがより好ましく、88〜92重量%含むことが特に好ましい。
【0022】
本発明で得られる半導体封止用エポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(DualInline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(QuadFlat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small OutlineJ−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(ThinQuad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0023】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の好適な実施例について図1を用い説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
エポキシ樹脂としてエポキシ当量186、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄化学株式会社製商品名ESLV−80XY)を85重量部、及びエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48重量%のビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製商品名ESB−400T)を15重量部、硬化剤として水酸基当量199、軟化点80℃のビフェニル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名MEH−7851)を99重量部、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物を3.5重量部、無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカを1983重量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)を4.5重量部、その他の添加剤として三酸化アンチモンを6.0重量部、カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)を2.0重量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)を3.5重量部、それぞれを含む原材料をミキサーで混合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件で混練装置11である同方向回転二軸押出機で混練を行い、混練物16を作製した。
【0025】
前記混練物16を、温度10℃に調整した圧延ロール12でシート状に圧延して、厚み2mmの圧延物18を作製した。圧延ロール12から押し出された前記圧延物18を、メッシュ状の冷却コンベア13にて搬送し、冷風生成循環装置14で温度10℃の低温空気を生成し、冷風ダクト15を通じて風速30m/秒で冷風(空気)を前記圧延物18の上方から吹き付け、圧延物18を12℃まで冷却した。
【0026】
前記圧延物18を、粗粉砕機19などにより、比較的粗く粉砕し、さらに得られた比較的粗く粉砕された物を、搬送装置30により、搬送し、粉砕機31に投入した。比較的粗く粉砕された物を、更に温度0℃、露点温度−10℃の低温度低露点の空気中の粉砕機31にて、粉砕し、粉砕品を作製した。前記粉砕品を圧縮成形し、半導体封止用エポキシ樹脂組成物である直径14mm長さ20mmの円柱状の封止材タブレットを作製した。なお製造された半導体封止用エポキシ樹脂組成物(封止材タブレット)中の無機充填剤の含有量は、90重量%であった。
【0027】
前記封止材タブレットは、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形した。作製した成形品及び使用した封止材タブレットのボイドの有無を、軟X線装置を用い調べた結果、成形品及び封止材タブレットともボイドは全く無く、良品であることがわかった。
【0028】
本発明は、以上のような構成を有することにより、シート状に圧延した圧延物の冷却工程において水との接触を皆無とし、粉砕を低温度低露点の空気中で行うことにより、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への水分の付着、吸湿を高い確率で防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に係る装置の概略図である。
【図2】本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法に係る装置の概略図である。
【符号の説明】
【0030】
11 混練装置
12 圧延ロール
13 冷却コンベア
14 冷風生成循環装置
15 冷風ダクト
16 混練物
18 圧延物
19 粗粉砕機
20 筐体
21 冷風吹き出し口
22 冷風調整ダンパ
30 搬送装置
31 粉砕機
32 ストックタンク
33 充填タンク
34 粉砕品
35 低温度低露点空気発生装置
36 調整ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法において、
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含む原材料を混合後、混練装置にて混練して混練物を得る工程、
前記混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物を得る工程、
前記圧延物を冷却コンベアにて搬送しながら、低温の気体中で冷却する工程、
前記圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程、
前記粉砕品を圧縮成形する工程、を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
低温の気体中で冷却する工程が、圧延物に低温の気体を吹き付けて冷却する工程である請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
低温の気体が、0〜15℃の空気である請求項1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程が、低温度低露点の空気中で圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品を得る工程である請求項1〜3いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
低温度低露点の空気温度が5℃以下、露点温度が0℃以下である請求項4に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法で製造されたことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止された素子を備えたことを特徴とする電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−297701(P2006−297701A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120982(P2005−120982)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】