説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】メタルゲート電極の酸化を抑制しつつ、MOSFETの寄生容量の増大を抑制する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板10と、前記半導体基板上に形成されたシリコンと酸素とを含む第1絶縁膜12aと、前記第1絶縁膜上に形成された前記第1絶縁膜よりも誘電率が高く、高融点金属と酸素とを主成分とする第2絶縁膜12bと、で構成されるゲート絶縁膜12と、前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層13を含むゲート電極15と、前記ゲート電極の前記金属層の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に形成されたシリコンと窒素を含む第1側壁絶縁膜16と、前記第1側壁絶縁膜の側面、および前記第1絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面に形成されたシリコンと酸素とを含む第2側壁絶縁膜17と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルゲート電極を有するMOSFET構造を備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの集積度を向上させるため、MOSFET構造の微細化をしてきた。すなわち、ゲート電極の長さ、ゲート絶縁膜の厚さおよびソース・ドレイン拡散層の深さなどの素子寸法が縮小されてきた。そのうち、SiO系ゲート絶縁膜を薄膜化させると、トンネル電流に起因してリーク電流が生じ、素子の不良が発生する。また、ゲート電極を薄膜化した場合、不純物が導入されたポリシリコンゲート電極のゲート絶縁膜側界面で、空乏化が無視できなくなった。この問題を解決するために、ゲート絶縁膜に高誘電率系絶縁膜が用いられ、ゲート電極にメタルゲート電極技術が利用されてきた。高誘電率材料をゲート絶縁膜に用いることにより、物理的な膜厚が厚くても、電気的膜厚の薄膜化が可能となった。また、金属系材料をゲート電極に用いることにより、ゲート絶縁膜側界面で空乏化を抑制することが可能となる(例えば、特許文献1乃至3)。
【0003】
しかし、従来構造でMOSFETを形成する場合、メタルゲート電極材料の酸化を抑制するため、メタルゲート電極の側面を保護するためにシリコン窒化膜を成膜する必要がある。これに伴い、ゲート絶縁膜側面にも誘電率が高いシリコン窒化膜が形成されるため、MOSFETの寄生容量が増大し、トランジスタ特性を劣化させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−74525号公報
【特許文献2】特開2007−134432号公報
【特許文献3】特開2008−91501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、メタルゲート電極の酸化を抑制しつつ、MOSFETの寄生容量の増大を抑制する半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の視点による半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたシリコンと酸素とを含む第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された前記第1絶縁膜よりも誘電率が高く、高融点金属と酸素とを主成分とする第2絶縁膜と、で構成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層を含むゲート電極と、前記ゲート電極の前記金属層の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に形成されたシリコンと窒素を含む第1側壁絶縁膜と、前記第1側壁絶縁膜の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面に形成されたシリコンと酸素とを含む第2側壁絶縁膜と、を具備する。
【0007】
本発明の第2の視点による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、シリコンと酸素とを含む第1絶縁膜を形成し、前記第1絶縁膜上に、前記第1絶縁膜よりも誘電率が高く、高融点金属と酸素とを主成分とする第2絶縁膜を形成し、前記第2絶縁膜上に、金属層を含むゲート電極層を形成し、前記ゲート電極層を加工し、ゲート電極を形成し、前記第2絶縁膜および前記第1絶縁膜を加工し、ゲート絶縁膜を形成し、前記ゲート電極の前記金属層の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に、シリコンと窒素を含む第1側壁絶縁膜を形成し、前記第1側壁絶縁膜の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面にシリコンと酸素を含む第2側壁絶縁膜を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メタルゲート電極の酸化を抑制しつつ、MOSFETの寄生容量の増大を抑制する半導体装置およびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る下地に対するシリコン窒化膜(Si)の成膜レートを示すグラフ図。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態に係り、隣接した2つの半導体装置を示す断面図。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】図5に続く、製造工程を示す断面図。
【図7】図6に続く、製造工程を示す断面図。
【図8】図7に続く、製造工程を示す断面図。
【図9】本発明の変形例を示すものであり、図7に続く、製造工程を示す断面図。
【図10】図8に続く、製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。説明に際し、全図にわたり、同一部分には同一の符号を付す。
【0011】
[下地に対するシリコン窒化膜(Si)の成膜レート]
本実施形態における半導体装置のMOSFET構造は、下地膜の材料によって、その上に形成されるシリコン窒化膜の成膜レートが異なることを利用して、メタル電極の側面のみにシリコン窒化膜を形成可能とするものである。以下に、下地膜によるシリコン窒化膜の成膜レートについて説明する。
【0012】
図1は、下地膜に対して原料ガスを供給した場合において、下地膜上に形成されるシリコン窒化膜の成膜レートを示している。シリコン窒化膜の成膜は、原料ガスとしてのシラン系ガスとアンモニアガスとを同時に下地膜上に供給することにより行われる。
【0013】
図1に示すように、下地膜上にシリコン窒化膜が形成される場合、全ての下地膜において、シリコン窒化膜の成膜速度は同じである。しかし、下地膜によってガスを供給してからシリコン窒化膜の成膜が始まるまでの時間(インキュベーション時間)には差がある。下地膜がTiN膜、Al膜、HfO膜およびHfSiON膜の場合、ガスの供給と同時にシリコン窒化膜の成膜が始まる。一方、下地膜がSi膜、SiO膜、SiO膜およびSiON膜の場合、ガスを供給してから5分程でシリコン窒化膜の成膜が始まる。すなわち、Si膜、SiO膜、SiO膜およびSiON膜上にシリコン窒化膜の成膜が始まるときには、すでにTiN膜、Al膜、HfO膜およびHfSiON膜上に膜厚が3nm程度のシリコン窒化膜が形成されている。したがって、TiN膜、Al膜、HfO膜およびHfSiON膜上にシリコン窒化膜の成膜が始まった後、Si膜、SiO膜、SiO膜およびSiON膜上にシリコン窒化膜の成膜が始まる前に、ガスの供給を止めれば、TiN膜、Al膜、HfO膜およびHfSiON膜上のみにシリコン窒化膜を形成することができる。
【0014】
このように、本実施形態では、下地膜によるインキュベーション時間の差を利用することにより、MOSFETにおけるメタルゲート電極(例えば、TiN膜)およびゲート絶縁膜における高誘電率材料部(例えば、Al膜、HfO膜およびHfSiON膜)の側面のみにシリコン窒化膜を形成することが可能となる。
【0015】
[構造]
次に、図2を参照して本実施形態に係る半導体装置としてのMOSFET構造について説明する。
【0016】
図2に示すMOSFET構造は、素子分離領域11が形成された半導体基板(例えば、シリコン基板)10、LDD(Lightly Doped Drain)拡散層18、ゲート絶縁膜12、ゲート電極15、第1側壁絶縁膜16および第2側壁絶縁膜17で構成されている。尚、図2において、S/D拡散層は省略している。
【0017】
素子分離領域11およびLDD拡散層18が形成された半導体基板10上に、ゲート絶縁膜12が形成されている。このゲート絶縁膜12は、半導体基板10上に形成されたシリコン酸化膜(例えば、SiOおよびSiO膜)で構成される第1絶縁膜12aと、第1絶縁膜12a上に形成された高誘電率材料(例えば、HfO膜)で構成される第2絶縁膜12bとの積層膜で構成されている。このゲート絶縁膜12上に、ゲート電極15が形成されている。このゲート電極15は、ゲート絶縁膜12上に形成されたメタル層13(例えば、TiN膜)と、メタル層13上に形成されたポリシリコン層14との積層膜で構成されている。このメタル層13の側面およびゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bの側面に直接接するように、第1側壁絶縁膜16が形成されている。この第1側壁絶縁膜16は、例えばシリコン窒化膜で構成される。ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12a、第1側壁絶縁膜16およびポリシリコン層14の側面に、シリコン窒化膜より誘電率が低い膜(例えば、シリコン酸化膜)で構成される第2側壁絶縁膜17が形成されている。この第2側壁絶縁膜17は、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面に直接接するように形成されている。
【0018】
尚、ゲート電極15は、メタル層13とポリシリコン層14との積層膜に限らず、メタル層13を含んでいれば、1層または3層以上でもよい。
【0019】
また、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aは、シリコン酸化膜に限らず、シリコンと酸素とを含む絶縁膜であればよい。具体的には、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等が適用可能である。
【0020】
また、ゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bは、HfO膜に限らず、高誘電率材料を含む膜であればよい。高誘電率材料としては、第1絶縁膜12aよりも誘電率が高く、高融点金属と酸素とを主成分とする膜である。具体的には、AlO、SiO、LaO(もしくはAl、Si、La、Hfの少なくとも一種類以上の元素を含む酸化物)またはこれらの積層膜等が適用可能である。
【0021】
さらに、メタル電極13は、TiNに限らず、金属材料を含む膜であればよい。具体的には、W、Ta、Pt、Ni、Hf、Al、Ti(もしくはW、Ta、Pt、Ni、Hf、Al、Tiの少なくとも一種類以上の元素を含む窒化物)またはこれらの積層膜等が適用可能である。
【0022】
上記実施の形態によれば、メタル層13の側面およびゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bの側面のみにシリコン窒化膜で構成された第1側壁絶縁膜16が形成され、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面にシリコン酸化膜で構成された第2側壁絶縁膜17が形成されている。したがって、メタル層13がシリコン窒化膜で覆われているため、メタル層13の酸化を抑制することができる。
【0023】
また、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面には、シリコン窒化膜が形成されず、シリコン窒化膜よりも誘電率の小さいシリコン酸化膜が形成されている。このため、寄生容量の増大を抑制することができる。すなわち、本実施形態は、メタル層13の酸化を抑制すると同時に、MOSFETの寄生容量の増大を抑制し、トランジスタ特性の向上を図ることができる。
【0024】
さらに、ゲート絶縁膜12は、シリコン酸化膜で構成される第1絶縁膜12aと高誘電率材料で構成される第2絶縁膜12bとの積層膜である。上述したように、ゲート絶縁膜12に高誘電率材料を用いることにより、電気的膜厚の薄膜化やゲートリーク電流の低減化を図ることができる。しかし、ゲート絶縁膜12に高誘電率材料のみを用いた場合、半導体基板10との界面に界面準位がつくられ、移動度の劣化が生じる。本実施形態では、高誘電率材料と半導体基板10との間に、欠陥密度が最小であり、移動度の観点の劣化が生じないシリコン酸化膜が形成されている。これにより、ゲート絶縁膜12に高誘電率材料のみを用いた場合の問題も回避することができる。
【0025】
図3は、本実施形態に係るMOSFET構造の変形例を示している。図3に示すように、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aと第2側壁絶縁膜との間およびポリシリコン電極14と第2側壁絶縁膜との間に、第1側壁絶縁膜16’が形成されてもよい。第1側壁絶縁膜16’は、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面およびポリシリコン電極14の側面に直接接するように形成されている。第1側壁絶縁膜16’は例えば、第1側壁絶縁膜16と同一の材料であり、第1側壁絶縁膜16’の膜厚は、第1側壁絶縁膜16の膜厚よりも薄い。第2側壁絶縁膜は、第1側壁絶縁膜16’の側面に直接接するように形成されている。
【0026】
尚、第1側壁絶縁膜16’は、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面およびポリシリコン電極14の側面において、不連続に形成されてもよい。
【0027】
すなわち、本変形例において、メタル電極13の側面およびゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bの側面に、第1側壁絶縁膜16が形成されている。そして、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面およびポリシリコン電極14の側面に、膜厚が第1側壁絶縁膜16よりも薄い第1側壁絶縁膜16’が形成されているか、または形成されていない。
【0028】
上記変形例において、メタル層13およびゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bに形成される第1側壁絶縁膜16が2nm程度である場合、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aに形成される第1側壁絶縁膜16の膜厚は、これ以下となる。このように極薄いシリコン窒化膜の誘電率は僅かであり、寄生容量に影響を与えない。このため、シリコン窒化膜の上にシリコン酸化膜が形成された状態において、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面に形成されるシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の誘電率の和は、メタル層13の側面およびゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bの側面に形成されたシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の誘電率の和より低く抑えることができる。したがって、変形例によっても実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0029】
図4は、本実施形態に係る隣接した2つのMOSFET構造を示している。図4に示すように、本実施形態において、隣接したMOSFET1および2は、メタル電極13の側面およびの第2絶縁膜12bの側面に第1側壁絶縁膜16が形成され、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aの側面および第1側壁絶縁膜16の側面に第2側壁絶縁膜が形成されている。このMOSFET1および2を覆うようにシリコン基板10上全面に、層間絶縁膜20が形成されている。このとき、MOSFET1のメタル電極13および第2絶縁膜12bとMOSFET2のメタル電極13および第2絶縁膜12bとの間の領域Aには、シリコン窒化膜で構成される第1側壁絶縁膜16が形成されている。一方、MOSFET1の第1絶縁膜12aとMOSFET2の第1絶縁膜12aとの間の領域Bには、第1側壁絶縁膜16が形成されていない。この第1側壁絶縁膜16を構成するシリコン窒化膜は、シリコン酸化膜や層間絶縁膜20よりも誘電率が高い。すなわち、領域Aにシリコン窒化膜で構成される第1側壁絶縁膜16が形成されているため、領域Aの電気容量は、領域Bの電気容量よりも大きい。
【0030】
また、この領域Aの電気容量と領域Bの電気容量との大小関係は、図3における第1側壁絶縁膜16’が第1絶縁膜12aの側面に形成されている場合も同様である。すなわち、領域Aに形成された第1側壁絶縁膜16は領域Bに形成された第1側壁絶縁膜16’よりも厚いため、領域Aの電気容量は領域Bの電気容量よりも大きくなる。
【0031】
このように、隣接したMOSFET1および2間において、領域Aの電気容量のほうが領域Bの電気容量よりも大きくなることにより、回路動作の速度向上を図ることができる。
【0032】
[製造方法]
以下に、本実施形態に係るMOSFET構造の製造工程について説明する。図5乃至図10は、本実施形態に係る半導体装置のMOSFET構造の製造工程の断面図を示す。
【0033】
まず、図5に示すように、半導体基板10内に、素子分離領域11が形成される。この素子分離領域11は、半導体基板上に形成されたシリコン酸化膜(図示せず)およびシリコン窒化膜(図示せず)をマスクとして基板内に溝が形成され、この溝に絶縁膜が埋め込まれることで形成される。素子分離領域11により、素子領域は区画される。その後、マスクとしてのシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜は、エッチングにより除去される。
【0034】
次に、図6に示すように、半導体基板10上に、シリコン酸化膜で構成される第1絶縁膜12aが形成される。この第1絶縁膜12a上に、高誘電率材料で構成される第2絶縁膜12bが形成される。次に、第2絶縁膜12b上に、例えばCVD法によりメタル層13が形成される。このメタル層13上に、ポリシリコン層14が形成される。
【0035】
次に、図7に示すように、ゲート電極に対応する図示せぬマスクを用いて、ポリシリコン層14、メタル層13、第2絶縁膜12bおよび第1絶縁膜12aが順にエッチングされる。これにより、ポリシリコン層14、メタル層13とからなるゲート電極15および第1絶縁膜12a、第2絶縁膜12bとからなるゲート絶縁膜12で構成されるメタルゲートスタック構造が形成される。
【0036】
次に、図8に示すように、メタル層13の側面およびゲート絶縁膜12の第2絶縁膜12bの側面に、シリコン窒化膜で構成される第1側壁絶縁膜16が形成される。この第1側壁絶縁膜16は、シラン系ガス(SiH)とアンモニアガス(NH)とを同時に流すCVD法により、形成される。また、上述したように、第1側壁絶縁膜16は、インキュベーション時間の差により、メタル層13の側面および高誘電率材料で構成される第2絶縁膜12bの側面のみに形成される。尚、シラン系ガスとしては、HCD(Hexachlorodisilane)、DCS(Dichlorosilane)またはBTBAS(Bis tertial butyl amino silane)等があげられる。シラン系ガスとしてHCDが用いられる場合、650度以下、100Pa以下の条件で、例えば、550度50Paで行われる。また、シラン系ガスとしてDCSが用いられる場合、800度以下、100Pa以下の条件で、例えば、700度50Paで行われる。さらに、シラン系ガスとしてBTBASが用いられる場合、650度以下、100Pa以下の条件、例えば、550度50Paで行われる。
【0037】
尚、図9に示すように、第1側壁絶縁膜16が形成される工程において、上記変形例において説明したように、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aおよびポリシリコン電極14の側面に、膜厚が第1側壁絶縁膜16よりも薄い第1側壁絶縁膜16’を形成してもよい。この第1側壁絶縁膜16’は、ゲート絶縁膜12の第1絶縁膜12aおよびポリシリコン電極14の側面において、不連続であってもよい。
【0038】
次に、図10に示すように、メタル層13の側面および第2絶縁膜12bの側面に形成された第1側壁絶縁膜16をマスクとして、半導体基板10内に不純物イオンが注入され、LDD拡散層18が形成される。
【0039】
次に、図2に示すように、第1側壁絶縁膜16、第1絶縁膜12aおよびポリシリコン電極14の側面に、シリコン酸化膜により構成された第2側壁絶縁膜17が形成される。この第2側壁絶縁膜17は、シリコン酸化膜が半導体基板10上全面に形成された後、エッチバックされることにより、第1側壁絶縁膜16、第1絶縁膜12aおよびポリシリコン電極14の側面に残される。この後、第2側壁絶縁膜17を含むゲート電極構造をマスクとして半導体基板10内に、不純物イオンが注入され、図示せぬS/D拡散層が形成される。
【0040】
尚、図9に示す第1絶縁膜12aおよびポリシリコン電極14の側面に第1側壁絶縁膜16’が形成された場合でも、図10と同様に、半導体基板10内にLDD拡散層18が形成される。その後、図3に示すように、第1側壁絶縁膜16および16’の側面に、第2側壁絶縁膜17が形成される。
【0041】
通常のMOSFETの製造工程は、ゲート電極15を形成した後、全面にシリコン窒化膜が形成される。この後、シリコン窒化膜がエッチバックされ、側壁絶縁膜が形成される。このエッチバックの際、後にLDD拡散層18が形成されるシリコン基板10が過剰エッチングされてしまう。このため、MOSFETの寄生抵抗が増大し、トランジスタ特性が低下してしまう。
【0042】
これに対して、本実施形態の製造方法では、インキュベーション時間の差を利用することにより、メタル層13の側面および第2絶縁膜12bの側面のみに選択的にシリコン窒化膜で構成された第1側壁絶縁膜16を形成している。したがって、エッチバック工程が不要であるため、製造工程を削減することができ、デバイスの生産性が上がる。さらに、エッチバック工程に伴うシリコン基板10の過剰エッチングが防止され、トランジスタ特性の向上を図ることができる。
【0043】
その他、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0044】
1,2…MOSFET、10…シリコン基板、12…ゲート絶縁膜、13…メタル層、14…ポリシリコン層、15…ゲート電極、16,16’…第1側壁絶縁膜、17…第2側壁絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたシリコンと酸素とを含む第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された前記第1絶縁膜よりも誘電率が高く、高融点金属と酸素とを主成分とする第2絶縁膜と、で構成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成された金属層を含むゲート電極と、
前記ゲート電極の前記金属層の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に形成されたシリコンと窒素を含む第1側壁絶縁膜と、
前記第1側壁絶縁膜の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面に形成されたシリコンと酸素とを含む第2側壁絶縁膜と、
を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1側壁絶縁膜は、前記ゲート電極の前記金属層の側面および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に形成された第1部分と、前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面に形成された第2部分とを有し、前記第2部分は前記第1部分よりも膜厚が薄いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上に、シリコンと酸素とを含む第1絶縁膜を形成し、
前記第1絶縁膜上に、前記第1絶縁膜よりも誘電率が高く、高融点金属と酸素とを主成分とする第2絶縁膜を形成し、
前記第2絶縁膜上に、金属層を含むゲート電極層を形成し、
前記ゲート電極層を加工し、ゲート電極を形成し、
前記第2絶縁膜および前記第1絶縁膜を加工し、ゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート電極の前記金属層の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に、シリコンと窒素を含む第1側壁絶縁膜を形成し、
前記第1側壁絶縁膜の側面、および前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面にシリコンと酸素を含む第2側壁絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1側壁絶縁膜を前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面にも形成し、
前記第1側壁絶縁膜は、前記金属層の側面および前記ゲート絶縁膜の前記第2絶縁膜の側面に形成された第1部分と、前記ゲート絶縁膜の前記第1絶縁膜の側面に形成された第2部分とを有し、前記第2部分は前記第1部分よりも膜厚が薄いことを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1側壁絶縁膜を形成後かつ第2側壁絶縁膜を形成前に、前記半導体基板内にLDD(Lightly Doped Drain)拡散層を形成する工程をさらに具備することを特徴とする請求項3または請求項4記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−283025(P2010−283025A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133259(P2009−133259)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】