説明

半導体装置の作製方法

【課題】チャネル形成領域が形成される半導体層のチャネル形成領域と逆側近傍の加工方法を工夫した半導体装置の作製方法を提供する。
【解決手段】少なくとも結晶性半導体膜上に非晶質半導体膜が設けられた積層半導体膜の一部に対して、少なくとも第1のエッチングと第2のエッチングを行い、第1のエッチングは非晶質半導体膜の一部を残存させつつ行い、第2のエッチングは非晶質半導体膜上の被覆膜を除去させた後に、非晶質半導体膜に対するエッチングレートが高く、且つ結晶性半導体膜に対するエッチングレートが低い条件により行い、積層半導体膜に設けられた結晶性半導体膜の一部を露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法に関する。なお、本明細書において、半導体装置とは、半導体素子自体または半導体素子を含むものをいい、このような半導体素子として、例えばトランジスタ(薄膜トランジスタなど)が挙げられる。液晶表示装置などの表示装置も半導体装置に含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は、人間の生活に欠かせないものとなっている。このような半導体装置に含まれる薄膜トランジスタは、基板上に薄膜を形成し、該薄膜をエッチングなどにより所望の形状に加工することで作製される。このような薄膜素子の作製方法は、例えば、液晶表示装置(例えば、液晶テレビ)に適用されている。
【0003】
従来の液晶テレビの薄膜トランジスタには、半導体膜として非晶質シリコン膜が用いられることが多い。これは、非晶質シリコン膜により形成された薄膜トランジスタが、比較的作りやすい構造とされているからである。
【0004】
しかしながら、昨今の動画事情(例えば、3D映画鑑賞や3Dスポーツ観戦など)から、非晶質シリコン膜を用いた液晶テレビでは、動画の鮮明さを表現する事が困難になり、高速に応答する薄膜トランジスタの開発が進められている。そのため、キャリア移動度の高い微結晶シリコン膜の開発が進められている。微結晶シリコン膜を用いた薄膜トランジスタが開示されている先行技術文献として、例えば、特許文献1が挙げられる。
【0005】
薄膜トランジスタの電気的特性は、チャネル形成領域が形成される層のチャネル形成領域と逆側近傍(バックチャネルと呼ばれる部分。以下、「バックチャネル部」と記す。)の状態に大きく左右される。例えば、特許文献1では、微結晶シリコン膜上に非晶質シリコン膜が設けられたチャネルエッチ型薄膜トランジスタのバックチャネル部を形成した後にレジストマスクを除去し、その後更にバックチャネル部をエッチングすることでオフ電流を小さくする薄膜トランジスタの作製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−081422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、微結晶シリコン膜上に非晶質シリコン膜が設けられたチャネルエッチ型薄膜トランジスタにおいて微結晶シリコン膜が露出し、且つ非晶質シリコン膜が除去されるように加工を行うことは難しい。微結晶シリコン膜と非晶質シリコン膜は、その結晶構造は異なるが、主成分が同一だからである。
【0008】
本発明の一態様は、バックチャネル部の形成を工夫することで、電気的特性を改善した(特に、オフ電流を小さくした)半導体装置の作製方法を提供することを課題とする。
【0009】
本発明の一態様は、電気的特性を改善した(特に、オフ電流を小さくした)半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1の半導体層と第2の半導体層が積層された状態で第1の半導体層上に第2の半導体層が残存しないようにバックチャネル部が設けられた半導体装置を作製するに際し、第1の半導体層及び第2の半導体層に対するエッチングレートの高い条件によりレジストマスクが残存した状態で第1のエッチングを行い、その後レジストマスクを除去した後に第2のエッチングを行う半導体装置の作製方法である。ここで、第2のエッチングは、前記第1のエッチング時に形成された(またはレジストマスクを除去されたとき若しくは大気に暴露されたときに形成された)被覆膜を除去する工程と、第1の半導体層に対するエッチングレートが低い条件により行う工程と、をこの順に行うことを特徴とする。
【0011】
ここで、例えば、第1のエッチングは塩素系ガスにより行い、第2のエッチングの被覆膜を除去する工程はフッ素系ガスにより行い、第2のエッチングの第1の半導体層に対するエッチングレートが低い条件により行う工程は、水素ガスにより行う。被覆膜を除去する工程で用いるガスは、成膜装置内に導入できるものを用いるとよく、チャンバー内をクリーニングするために用いられるガスを用いることが好ましい。兼用できるからである。
【0012】
なお、本明細書において、「膜」とは、CVD法(プラズマCVD法などを含む。)またはスパッタリング法などにより、被形成面の全面に形成されたものをいう。一方で、「層」とは、「膜」が加工されたもの、または被形成面の全面に形成された状態で加工されないものをいう。ただし、「膜」と「層」を特に区別することなく用いることがあるものとする。
【0013】
なお、本明細書中において、「エッチングマスク」とは、該エッチングマスク下に形成された膜がエッチングされることを防止するために形成されるマスク層をいう。エッチングマスクとしては、例えばレジストマスクが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、半導体装置の電気的特性を改善することができる。特に、バックチャネル部の形状及び不純物などに起因する電気的特性の低下を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する図。
【図2】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する図。
【図3】本発明の一態様である半導体装置の作製方法を説明する図。
【図4】本発明の一態様である半導体装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様である半導体装置(電子機器)を説明する図。
【図6】本発明の一態様である半導体装置(電子機器)を説明する図。
【図7】本発明の一態様である半導体装置(電子機器)を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について説明する。
【0018】
基板100上に第1の導電膜102を形成し、第1の導電膜102上に第1のエッチングマスク104を形成する(図1(A))。第1のエッチングマスク104を用いて第1の導電膜102を加工することでゲート電極106を形成する。
【0019】
基板100は、絶縁性基板である。基板100としては、例えば、ガラス基板、石英基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる程度の耐熱性を有するプラスチック基板などを用いることができる。なお、基板100は、必ずしも透光性基板でなくてもよい。
【0020】
第1の導電膜102は、導電性材料(例えば金属材料、または一導電型の不純物元素が添加された半導体材料など)を用いて、例えば、スパッタリング法により形成する。なお、第1の導電膜102は、単層で形成してもよいし、複数の膜を積層して形成してもよい。
【0021】
第1のエッチングマスク104としては、例えば、レジストマスクを形成すればよいが、エッチング工程においてマスクとして用いることができるものであれば特定のものに限定されない。
【0022】
ゲート電極106は、走査線も構成する。
【0023】
なお、ゲート電極106の形成は図示した構成に限定されず、液滴吐出法(例えば、インクジェット法)などを用いて選択的に形成されていてもよい。ゲート電極106の形成に液滴吐出法(例えば、インクジェット法)などを用いると、第1のエッチングマスク104の形成工程と除去工程が不要となり、また、マスクの枚数が一枚減り、好ましい。
【0024】
次に、第1のエッチングマスク104を除去してゲート電極106上にゲート絶縁層108を形成する(図1(B))。
【0025】
ゲート絶縁層108は、例えば、プラズマCVD法を用いて絶縁性材料(例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは酸化シリコンなど)膜を形成すればよい。なお、ゲート絶縁層108は、単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよい。ここでは、例えば、窒化シリコン層上に酸化窒化シリコン層が積層された2層の積層構造とするとよい。
【0026】
なお、「窒化酸化シリコン」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、好ましくは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward scattering Spectrometry)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。
【0027】
なお、「酸化窒化シリコン」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、好ましくは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。
【0028】
ただし、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が前記範囲内に含まれるものとする。
【0029】
なお、ゲート絶縁層108上に結晶性半導体膜を形成する場合には、ゲート絶縁層108に対して酸素を含むガスによりプラズマ処理を行うことが好ましい。ここで、酸素を含むガスとしては、例えば、NOガスが挙げられる。ゲート絶縁層108に対して酸素を含むガスによりプラズマ処理を行うことで、ゲート絶縁層108上に形成される結晶性半導体膜の結晶性を良好なものとすることができる。
【0030】
次に、ゲート絶縁層108上に第1の半導体膜110、第2の半導体膜112及び不純物半導体膜114をこの順に積層して形成し、不純物半導体膜114上に第2のエッチングマスク116を形成する(図1(C))。
【0031】
第1の半導体膜110は、大部分が結晶性である半導体膜である。結晶性半導体としては、例えば、微結晶半導体が挙げられる。ここで、微結晶半導体とは、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む。)の中間的な構造の半導体をいう。微結晶半導体は、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な半導体であり、結晶粒径が2nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上80nm以下、より好ましくは20nm以上50nm以下の柱状または針状の結晶粒が基板表面に対して法線方向に成長している半導体である。このため、柱状または針状の結晶粒の界面には、粒界が形成されることもある。なお、ここでの結晶粒径は、基板表面に対して平行な面における結晶粒の最大直径である。また、結晶粒は、非晶質半導体領域と、単結晶とみなせる微小結晶である結晶子を有する。なお、結晶粒は双晶を有する場合もある。
【0032】
微結晶半導体としては、微結晶シリコンを用いればよい。微結晶半導体の一である微結晶シリコンでは、そのラマンスペクトルのピークが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側にシフトしている。すなわち、単結晶シリコンを示す520cm−1と非晶質シリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、He、Ar、Kr、またはNeなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し、良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0033】
なお、結晶性半導体膜に含まれる酸素及び窒素の濃度(二次イオン質量分析法による測定値)を低くし、好ましくはこれらの濃度を1×1018cm−3未満とすると、結晶性を高めることができる。
【0034】
なお、結晶性半導体膜は、2段階の成膜処理により形成することが好ましく、2段階の成膜処理において、例えば、第1段階では500Pa程度の圧力下で厚さ5nm程度の微結晶シリコン膜を形成し、第2段階では5000Pa程度の圧力下で所望の厚さの微結晶シリコン膜を形成するとよい。第2段階では第1段階よりもシランの流量比を小さくし、高希釈な条件とするとよい。
【0035】
第2の半導体膜112は、バッファ層として機能し、大部分が非晶質である半導体膜である。好ましくは、非晶質半導体と微小半導体結晶粒を有し、従来の非晶質半導体と比較して、一定光電流法(CPM:Constant Photocurrent Method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体膜である。このような半導体膜は、従来の非晶質半導体膜と比較して欠陥が少なく、価電子帯のバンド端(移動度端)における準位のテイル(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体膜である。
【0036】
第2の半導体膜112には、ハロゲンや窒素を含んでいてもよい。窒素が含まれる場合には、NH基またはNH基として含まれていてもよい。
【0037】
なお、ここで、第1の半導体膜110と第2の半導体膜112の界面領域は、微結晶半導体領域と、当該微結晶半導体領域の間に充填される非晶質半導体領域と、を有する。具体的には、第1の半導体膜110から錐形状に伸びた微結晶半導体領域と、第2の半導体膜112と同様の「非晶質半導体を含む膜」と、により構成される。
【0038】
また、第2の半導体膜112によりバッファ層が設けられるため、トランジスタのオフ電流を小さくすることができる。そして、前記界面領域において、錐形状に伸びた微結晶半導体領域を有するため、縦方向(厚さ方向)の抵抗、すなわち、第2の半導体膜112と、不純物半導体膜114により構成されるソース領域またはドレイン領域と、の間の抵抗を低くすることができ、トランジスタのオン電流を高めることができる。すなわち、従来の非晶質半導体を適用した場合と比較すると、オフ電流を十分に低減させつつ、オン電流の低下をも抑制することができ、トランジスタのスイッチング特性を高くすることができる。
【0039】
前記微結晶半導体領域は、第1の半導体膜110から第2の半導体膜112に向かって先端が細くなる錐形状の結晶粒により大部分が構成されているとよい。または、第1の半導体膜110から第2の半導体膜112に向かって幅が広がる結晶粒により大部分が構成されていてもよい。
【0040】
また、前記界面領域において、微結晶半導体領域が第1の半導体膜110から第2の半導体膜112に向かって先端が細くなる錐形状に伸びた結晶粒である場合には、第1の半導体膜110側のほうが、第2の半導体膜112側と比較して、微結晶半導体領域の占める割合が高い。微結晶半導体領域は、第1の半導体膜110の表面から厚さ方向に成長するが、原料ガスにおいて堆積性ガス(例えば、シラン)に対する水素の流量が小さく(すなわち、希釈率が低く)、または窒素を含む原料ガスの濃度が高いと、微結晶半導体領域における結晶成長が抑制され、結晶粒が錐形状になり、堆積されて形成される半導体は、大部分が非晶質半導体となる。
【0041】
なお、前記界面領域は、窒素、特にNH基若しくはNH基を含有することが好ましい。これは、微結晶半導体領域に含まれる結晶の界面、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域の界面において、窒素、特にNH基若しくはNH基がシリコン原子のダングリングボンドと結合すると、欠陥を低減し、キャリアが流れやすくなるためである。このため、窒素、好ましくはNH基若しくはNH基を1×1020cm−3乃至1×1021cm−3の濃度で含有させると、シリコン原子のダングリングボンドを窒素、好ましくはNH基若しくはNH基で架橋しやすくなり、キャリアがより流れやすくなる。この結果、結晶粒界や欠陥におけるキャリアの移動を促進する結合ができ、前記界面領域のキャリア移動度が向上する。そのため、トランジスタの電界効果移動度が向上する。
【0042】
なお、前記界面領域の酸素濃度を低減させることにより、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域の界面または結晶粒間の界面における欠陥密度を低減させ、キャリアの移動を阻害する結合を低減させることができる。
【0043】
不純物半導体膜114は、一導電型を付与する不純物元素を添加した半導体により形成する。トランジスタがn型である場合には、一導電型を付与する不純物元素を添加した半導体として、例えば、PまたはAsを添加したシリコンが挙げられる。または、トランジスタがp型である場合には、一導電型を付与する不純物元素として、例えば、Bを添加することも可能である。しかし、トランジスタはn型とすることが好ましい。そのため、ここでは、一例として、Pを添加したシリコンを用いる。なお、不純物半導体膜114は、非晶質半導体により形成してもよいし、微結晶半導体などの結晶性半導体により形成してもよい。
【0044】
第2のエッチングマスク116は、第1のエッチングマスク104と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0045】
次に、第2のエッチングマスク116を用いて第1の半導体膜110、第2の半導体膜112及び不純物半導体膜114を加工することで半導体積層体118を形成し、その後第2のエッチングマスク116を除去する(図1(D))。
【0046】
なお、ここで、半導体積層体118の側壁に絶縁化処理を行うことが好ましい。なぜなら、完成したトランジスタの第1の半導体層138と、次に形成する積層導電膜126により形成されるソース電極及びドレイン電極が接すると、オフ電流が増大してしまうことが多いからである。ここで絶縁化処理としては、半導体積層体118の側壁を酸素プラズマ若しくは窒素プラズマに曝す処理、または半導体積層体118の側壁が露出された状態で絶縁膜を形成し、該絶縁膜を異方性の高いエッチング方法により基板100の表面に垂直な方向のエッチングを行うことで、半導体積層体118の側壁に接してサイドウォール絶縁層を形成する処理が挙げられる。
【0047】
次に、ゲート絶縁層108上に半導体積層体118を覆って第2の導電膜120、第3の導電膜122及び第4の導電膜124をこの順に積層して積層導電膜126を形成し、第4の導電膜124上に第3のエッチングマスク128を形成する(図2(A))。
【0048】
第2の導電膜120、第3の導電膜122及び第4の導電膜124は、導電性材料(例えば金属材料、または一導電型の不純物元素が添加された半導体材料など)を用いて、例えば、スパッタリング法により形成する。例えば、第2の導電膜120としてチタン膜を形成し、第3の導電膜122としてアルミニウム膜を形成し、第4の導電膜124としてチタン膜を形成すればよい。なお、第2の導電膜120、第3の導電膜122及び第4の導電膜124のそれぞれは、単層で形成してもよいし、複数の膜を積層して形成してもよい。
【0049】
なお、ここで積層導電膜126は単層導電膜であってもよいし、図示した3層のものに限定されず、2層であってもよい。
【0050】
第3のエッチングマスク128は、第1のエッチングマスク104及び第2のエッチングマスク116と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0051】
次に、第3のエッチングマスク128を用いて積層導電膜126を加工することで、ソース電極130A及びドレイン電極130Bを形成し、さらには半導体積層体118を加工(第1のエッチング工程と呼ぶ。)することで、エッチングされた半導体積層体132を形成する(図2(B))。
【0052】
第1のエッチング工程は、積層導電膜126及び半導体積層体118をエッチングすることができる方法により行えばよい。ここで、例えば第1のエッチング工程は、塩素系ガスを用いて行えばよく、例えば、三塩化ホウ素ガスと塩素ガスの混合ガスを用いることが好ましい。ただし、これに限定されず、塩素ガスのみを用いてもよい。または、積層導電膜126をエッチングすることができる他のガスを用いてもよい。
【0053】
なお、ソース電極130A及びドレイン電極130Bは、少なくとも信号線、ソース電極またはドレイン電極を構成する。
【0054】
なお、ソースとドレインは各々の電位により入れ替わるものであるため、ソース電極130Aとドレイン電極130Bが逆であってもよい。
【0055】
なお、エッチングされた半導体積層体132は、エッチングされた部分に第2の半導体膜112が残存しており、第1の半導体層138が露出されていない。
【0056】
次に、第3のエッチングマスク128を除去する(図2(C))。
【0057】
ここで、第3のエッチングマスク128がレジストマスクである場合には、第3のエッチングマスク128の除去は、酸素ガスを用いたアッシング及びレジスト剥離液による剥離のいずれか一方または双方を用いて行う。エッチングされた半導体積層体132が露出された状態で第3のエッチングマスク128を除去するため、エッチングされた半導体積層体132が露出された部分には被覆膜134が形成される。
【0058】
ここで、被覆膜134は、前記第1のエッチング時、または酸素ガスを用いたアッシング及びレジスト剥離液による剥離時に形成されるものであるため、酸化シリコンが主成分であることが多い。
【0059】
次に、ソース電極130A及びドレイン電極130Bをマスクとして用いてエッチングされた半導体積層体132を更に加工(第2のエッチング工程と呼ぶ。)することで、積層半導体層136を形成する。積層半導体層136では、ソース電極130A及びドレイン電極130Bと重畳しない部分では第1の半導体層138が露出されている。積層半導体層136は、第1の半導体層138のほかに、第2の半導体層140A及び第2の半導体層140B並びにソース領域142A及びドレイン領域142Bを有する(図3(A))。
【0060】
積層半導体層136は、チャネル形成領域に露出された第1の半導体層138を有する。
【0061】
第1の半導体層138が露出されると、バックチャネル部が露出され、チャネル形成領域においてこれと絶縁層を介して重畳して設けられたバックゲート電極からの電界を十分なものとすることができる。
【0062】
第2の半導体層140A及び第2の半導体層140Bは、バッファ層として機能する。このようにバッファ層が設けられていることで、オフ電流を小さくすることができる。
【0063】
ソース領域142A及びドレイン領域142Bは、第2の半導体層140A及び第2の半導体層140Bのそれぞれとソース電極130A及びドレイン電極130Bのそれぞれの界面で電気的特性が良好な状態で接続されるために設けられているものであり、好ましくは界面をオーミック接触とする。
【0064】
第2のエッチング工程は、被覆膜134を除去する工程と、ソース電極130A及びドレイン電極130Bと重畳しない部分の第1の半導体膜の部分を残存させつつ第2の半導体膜の部分を除去する工程と、を有する。また、第2のエッチング工程には、パッシベーション層144となる絶縁膜を形成する工程までを大気暴露せずに同一のチャンバー内で行うことが可能な方法を採用する。
【0065】
被覆膜134を除去する工程は、フッ素系ガスにより行えばよく、例えば、六フッ化硫黄ガス、フッ素ガス、フッ化カルボニルガスにより行えばよい。ここで、好ましくは、三フッ化窒素ガスにより行う。三フッ化窒素ガスはチャンバー内をクリーニングするために用いられるガスであり、これと兼用できるからである。
【0066】
ソース電極130A及びドレイン電極130Bと重畳しない部分の第1の半導体膜の部分を残存させつつ第2の半導体膜の部分を除去する工程は、水素ガスにより行えばよい。水素ガスを用いてエッチングを行うことで、ソース電極130A及びドレイン電極130Bと重畳しない部分の第1の半導体膜の部分を残存させつつ第2の半導体膜の部分を除去することができる。
【0067】
このように、第2のエッチング工程をフッ素系ガスにより行う被覆膜134を除去する工程と、フッ素系ガスと水素ガスにより行う第1の半導体膜の部分を残存させつつ第2の半導体膜の部分を除去する工程とすることで、第1の半導体膜の部分を十分に残存させ、且つ第2の半導体膜の部分を十分に除去することができる。
【0068】
ここで、例えば被覆膜134が酸化シリコン膜である場合に、被覆膜134を除去する工程を行わない場合には、水素ガスによるエッチングが困難であるが、被覆膜134を除去する工程を行うことで第1の半導体膜の部分を十分に残存させ、且つ第2の半導体膜の部分を十分に除去することができる。
【0069】
なお、ここで用いるガスにはアルゴンガスなどの希ガスが含まれていてもよい。アルゴンガスなどの希ガスにより水素の濃度を調整することができ、エッチングレートを調整することができる。
【0070】
このように第1の半導体膜の部分を残存させつつ第2の半導体膜の部分を除去することができる。
【0071】
ここで、第1の半導体層138が露出された状態で水プラズマに暴露することが好ましい。または、水プラズマに代えて水素ガスと酸素ガスの混合ガスにより生じさせたプラズマを用いてもよい。ここで、本工程時には第1の半導体層138が露出された部分には第2の半導体膜の部分が残存していないため、トランジスタの電気的特性を良好にすることができる。
【0072】
次に、大気暴露せずに同一のチャンバー内で、ゲート絶縁層108上に、積層半導体層136、ソース電極130A及びドレイン電極130Bを覆って絶縁膜(図示しない)を形成し、該絶縁膜上に第4のエッチングマスク146を形成し、第4のエッチングマスク146を用いて該絶縁膜を加工することで開口部148を有するパッシベーション層144を形成する(図3(B))。
【0073】
パッシベーション層144は、少なくとも第1の半導体層138が露出されたバックチャネル部が汚染されることを防止する。パッシベーション層144となる絶縁膜は、例えばゲート絶縁層108と同様の材料及び方法により形成すればよい。
【0074】
第4のエッチングマスク146は、第1のエッチングマスク104、第2のエッチングマスク116及び第3のエッチングマスク128と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0075】
開口部148は、ソース電極130A及びドレイン電極130Bのいずれか一方と重畳する部分に設けられている。
【0076】
次に、第4のエッチングマスク146を除去して第5の導電膜(図示しない)を形成し、該第5の導電膜上に第5のエッチングマスク152を形成し、第5のエッチングマスク152を用いて該第5の導電膜を加工することでバックゲート電極150A及び画素電極150Bを形成する(図3(C))。
【0077】
第5の導電膜は、透光性を有する導電性高分子(導電性ポリマーともいう。)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性組成物を用いて形成した第5の導電膜は、シート抵抗が10000Ω/□以下であり、且つ波長550nmにおける透光率が70%以上であることが好ましい。また、導電性組成物に含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。なお、導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、またはアニリン、ピロール及びチオフェンの2種以上の共重合体若しくはその誘導体などが挙げられる。
【0078】
または、第5の導電膜は、例えば、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物などを用いて形成することができる。
【0079】
なお、図示していないが、パッシベーション層144と第5の導電膜の間に、スピンコーティング法などにより形成された有機樹脂層が設けられていてもよい。
【0080】
バックゲート電極150Aは、画素トランジスタに設けられるバックゲートを構成する。
【0081】
画素電極150Bは、画素トランジスタに接続される画素電極を構成することから、透光性を有する材料により形成するとよい。
【0082】
このように、バックゲート電極150A及び画素電極150Bを同一の層として同一の工程により形成すると工程が簡略化するため好ましいが、これに限定されず、異なる層として異なる工程により形成してもよい。
【0083】
第5のエッチングマスク152は、第1のエッチングマスク104、第2のエッチングマスク116、第3のエッチングマスク128及び第4のエッチングマスク146と同様の材料及び同様の方法により形成することができる。
【0084】
なお、バックゲート電極150A及び画素電極150Bは、液滴吐出法(例えば、インクジェット法)などを用いて選択的に形成されていてもよい。バックゲート電極150A及び画素電極150Bの形成に液滴吐出法(例えば、インクジェット法)などを用いると、第5のエッチングマスク152の形成工程と除去工程が不要となり、また、マスクの枚数が一枚減り、好ましい。
【0085】
その後、第5のエッチングマスク152を除去する。このようにして画素トランジスタを作製することができる。
【0086】
本発明の一態様により、チャネル形成領域となる第1の半導体層を必要な厚さだけ残存させつつ、チャネル形成領域となる部分に第2の半導体膜の部分が残存していない状態とすることができる。
【0087】
図4には、本発明の一態様である半導体装置を示す。図4に示す半導体装置は、基板100上に設けられたゲート電極106と、ゲート電極106を覆って設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられチャネル形成領域部分の第1の半導体層138が露出された積層半導体層136と、ゲート絶縁層108及び積層半導体層136上に設けられたソース電極130A及びドレイン電極130Bと、ゲート絶縁層108上に、積層半導体層136、ソース電極130A及びドレイン電極130Bを覆って設けられ、開口部148を有するパッシベーション層144と、パッシベーション層144上に、第1の半導体層138が露出された部分と重畳して設けられたバックゲート電極150Aと、パッシベーション層144上に設けられ、開口部148においてドレイン電極130Bと接続されている画素電極150Bと、を有する。
【0088】
本発明の一態様によれば、積層半導体層136が有する第1の半導体層138とパッシベーション層144の界面の汚染などが抑制され、且つ第1の半導体層138の厚さが十分なものとなるため、オフ電流を抑制しつつオン電流を十分なものとすることができる。さらには、第1の半導体層138が露出された部分と重畳してバックゲート電極150Aが設けられているため、バックゲート電極の電界によりオン電流を更に大きくすることができる。
【0089】
以上説明したように、本発明の一態様である半導体装置を作製することができる。
【0090】
(実施の形態2)
実施の形態1で説明したように作製した薄膜トランジスタを適用した半導体装置としては、電子ペーパーが挙げられる。電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブック)、ポスター、デジタルサイネージ、PID(Public Information Display)、電車などの乗り物の車内広告、クレジットカード等の各種カードにおける表示等に適用することができる。電子機器の一例を図5に示す。
【0091】
図5は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍200は、筐体202および筐体204の2つの筐体で構成されている。筐体202および筐体204は、軸部214により一体とされており、該軸部214を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍と同様に取り扱うことが可能となる。
【0092】
筐体202には表示部206及び光電変換装置208が組み込まれ、筐体204には表示部210及び光電変換装置212が組み込まれている。表示部206及び表示部210は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図5では表示部206)に文章を表示し、左側の表示部(図5では表示部210)に画像を表示することができる。
【0093】
また、図5では、筐体202に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体202において、電源216、操作キー218、スピーカ220などを備えている。操作キー218により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍200は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0094】
また、電子書籍200は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0095】
(実施の形態3)
実施の形態1で説明したように作製した薄膜トランジスタを適用した半導体装置としては、電子ペーパー以外にもさまざまな電子機器(遊技機も含む)が挙げられる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0096】
図6(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置222は、筐体224に表示部226が組み込まれている。表示部226により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド228により筐体224を支持した構成を示している。
【0097】
テレビジョン装置222の操作は、筐体224が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機234により行うことができる。リモコン操作機234が備える操作キー232により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部226に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機234に、当該リモコン操作機234から出力する情報を表示する表示部230を設ける構成としてもよい。
【0098】
なお、テレビジョン装置222は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0099】
図6(B)は、デジタルフォトフレームの一例を示している。例えば、デジタルフォトフレーム236は、筐体238に表示部240が組み込まれている。表示部240は、各種画像を表示することが可能であり、例えばデジタルカメラなどで撮影した画像データを表示させることで、通常の写真立てと同様に機能させることができる。
【0100】
なお、デジタルフォトフレーム236は、操作部、外部接続用端子(USB端子、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成とする。これらの構成は、表示部と同一面に組み込まれていてもよいが、側面や裏面に備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像データを取り込み、取り込んだ画像データを表示部240に表示させることができる。
【0101】
また、デジタルフォトフレーム236は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、所望の画像データを取り込み、表示させる構成とすることもできる。
【0102】
図7は携帯型のコンピュータの一例を示す斜視図である。
【0103】
図7の携帯型のコンピュータは、上部筐体242と下部筐体244とを接続するヒンジユニットを閉状態として表示部246を有する上部筐体242と、キーボード248を有する下部筐体244とを重ねた状態とすることができ、持ち運ぶことが便利であるとともに、使用者がキーボード入力する場合には、ヒンジユニットを開状態として、表示部246を見て入力操作を行うことができる。
【0104】
また、下部筐体244はキーボード248の他に入力操作を行うポインティングデバイス252を有する。また、表示部246をタッチ入力パネルとすれば、表示部の一部に触れることで入力操作を行うこともできる。また、下部筐体244はCPUやハードディスク等の演算機能部を有している。また、下部筐体244は他の機器、例えばUSBの通信規格に準拠した通信ケーブルが差し込まれる外部接続ポート250を有している。
【0105】
上部筐体242には更に上部筐体242内部にスライドさせて収納可能な表示部254を有しており、広い表示画面を実現することができる。また、収納可能な表示部254の画面の向きを使用者は調節できる。また、収納可能な表示部254をタッチ入力パネルとすれば、収納可能な表示部の一部に触れることで入力操作を行うこともできる。
【0106】
表示部246または収納可能な表示部254は、液晶表示パネル、有機発光素子または無機発光素子などの発光表示パネルなどの映像表示装置を用いる。
【0107】
また、図7の携帯型のコンピュータは、受信機などを備えた構成として、テレビ放送を受信して映像を表示部に表示することができる。また、上部筐体242と下部筐体244とを接続するヒンジユニットを閉状態としたまま、表示部254をスライドさせて画面全面を露出させ、画面角度を調節して使用者がテレビ放送を見ることもできる。この場合には、ヒンジユニットを閉状態として表示部246を表示させず、さらにテレビ放送を表示するだけの回路の起動のみを行うため、最小限の消費電力とすることができ、バッテリー容量の限られている携帯型のコンピュータにおいて有用である。
【実施例1】
【0108】
本実施例では、被覆膜134を除去したとしても、被覆膜134の除去から水素ガスプラズマ処理を行うまでの間に大気暴露されると、水素ガスプラズマによるエッチングが進行しにくいことを明らかにする。
【0109】
まず、基板100上に図1(B)に示すようにゲート電極106を形成し、ゲート電極106を覆ってゲート絶縁層108を形成した。
【0110】
ここで、ゲート絶縁層108は窒化シリコンにより形成した。窒化シリコンを形成するプラズマCVD法の詳細な条件は下記の通りである。
モノシラン(SiH)ガス流量=15sccm
アンモニア(NH)ガス流量=500sccm
窒素(N)ガス流量=180sccm
水素(H)ガス流量=200sccm
反応室内圧力=100Pa
上部電極と下部電極の間隔=26mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=200W
上部電極の温度=200℃
下部電極の温度=300℃
【0111】
次に、ゲート絶縁層108の表面にプラズマ処理を行った。プラズマ処理の詳細な条件は下記の通りである。
一酸化二窒素(NO)ガス流量=400sccm
反応室内圧力=60Pa
上部電極と下部電極の間隔=30mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=900W
上部電極の温度=200℃
下部電極の温度=300℃
【0112】
次に、表面にプラズマ処理を行ったゲート絶縁層108上に第1の半導体膜110、第2の半導体膜112及び不純物半導体膜114を形成した。
【0113】
第1の半導体膜110は、2段階の形成処理により形成した。2段階の形成処理において、第1段階では厚さ5nmの微結晶シリコン膜を形成し、第2段階では厚さ65nmの微結晶シリコン膜を形成した。ここで、プラズマCVD法の詳細な条件は下記の通りである。
<第1段階>
モノシラン(SiH)ガス流量=2.7sccm
アルゴン(Ar)ガス流量=3000sccm
水素(H)ガス流量=3000sccm
反応室内圧力=10kPa
上部電極と下部電極の間隔=7mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=200W
下部電極の温度=300℃
<第2段階>
モノシラン(SiH)ガス流量=2sccm
水素(H)ガス流量=3000sccm
反応室内圧力=10kPa
上部電極と下部電極の間隔=7mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=700W
下部電極の温度=300℃
【0114】
次に、第1の半導体膜110上に第2の半導体膜112を厚さ80nmとなるように形成した。ここで、プラズマCVD法の詳細な条件は以下の通りである。
モノシラン(SiH)ガス流量=25sccm
水素希釈アンモニアガス流量=100sccm
アルゴン(Ar)ガス流量=750sccm
水素(H)ガス流量=650sccm
反応室内圧力=1250Pa
上部電極と下部電極の間隔=15mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=150W
上部電極の温度=200℃
下部電極の温度=300℃
【0115】
なお、ここで、水素希釈アンモニアガスとは、アンモニアガスを水素ガスにより体積比で1000ppmまで希釈したガスをいう。
【0116】
次に、第2の半導体膜112上に不純物半導体膜114を厚さ50nmとなるように形成した。ここで、プラズマCVD法の詳細な条件は以下の通りである。
モノシラン(SiH)ガス流量=90sccm
モノシラン希釈ホスフィンガス流量=10sccm
水素(H)ガス流量=500sccm
反応室内圧力=170Pa
上部電極と下部電極の間隔=25mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=30W
上部電極の温度=200℃
下部電極の温度=300℃
【0117】
なお、ここで、モノシラン希釈ホスフィンガスとは、ホスフィンガスをモノシランガスにより体積比で5パーセントまで希釈したガスをいう。
【0118】
次に、第1の半導体膜110、第2の半導体膜112及び不純物半導体膜114上に任意のパターンを有するレジストマスクを形成し、第1の半導体膜110、第2の半導体膜112及び不純物半導体膜114をエッチングして半導体積層体118を形成した。
【0119】
その後、該レジストマスクを除去し、半導体積層体118上に積層導電膜126に代えて単層のチタン膜をスパッタリング法により厚さ300nmで形成した。ここで、スパッタリング法の詳細な条件は以下の通りである。
アルゴン(Ar)ガス流量=30sccm
反応室内圧力=0.4Pa
チタンターゲットと基板の間隔=185mm
電力=2000W
【0120】
このように単層のチタン膜を形成した後に、該チタン膜上に任意のパターンを有するレジストマスク(少なくとも一部が半導体積層体118と重畳)を形成し、該レジストマスクを用いてチタン膜と半導体積層体118をエッチングした。ここで、該エッチングはICPにより行った。エッチングの詳細な条件は下記の通りである。
三塩化ホウ素(BCl)ガス流量=60sccm
塩素(Cl)ガス流量=20sccm
反応室内圧力=1.9Pa
上部電極と下部電極の間隔=122mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=450W
上部電極と下部電極の間のバイアス電力=100W
上部電極の温度=100℃
下部電極の温度=70℃
【0121】
そして、エッチング後、酸素プラズマによるアッシングを行い、さらにはレジスト剥離液を用いてレジストマスクを剥離する。
【0122】
ここで、エッチング時にレジストマスクと重畳していなかった部分の残存した膜の合計の厚さを分光エリプソメーターで計測すると、80nmであった。そのため、該エッチングにより第2の半導体膜112の一部と不純物半導体膜114は除去され、試料に残存した膜は、第2の半導体膜112の一部と第1の半導体膜110であり、第1の半導体膜110は露出されておらず、エッチング時にレジストマスクと重畳していなかった部分では、残存した膜の最上層は第2の半導体膜112の一部であるといえる。
【0123】
次に、試料に対して、下記の条件で三フッ化窒素ガスによりプラズマ処理を行った。プラズマ処理の詳細な条件は下記の通りである。
三フッ化窒素(NF)ガス流量=20sccm
アルゴン(Ar)ガス流量=300sccm
反応室内圧力=10Pa
上部電極と下部電極の間隔=46mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=30W
上部電極の温度=200℃
下部電極の温度=300℃
処理時間=120秒
【0124】
次に、基板を大気暴露し、大気暴露された試料に対して水素ガスによりプラズマ処理を行った。プラズマ処理の詳細な条件は下記の通りである。
水素(H)ガス流量=1000sccm
反応室内圧力=1000Pa
上部電極と下部電極の間隔=7mm
高周波電力周波数=13.56MHz
高周波電力=100W
上部電極の温度=200℃
下部電極の温度=300℃
処理時間=300秒
【0125】
このようにして水素ガスによるプラズマ処理まで行った試料の合計の厚さを分光エリプソメーターで計測すると、80nmであった。
【0126】
従って、被覆膜134を除去したとしても、被覆膜134の除去から水素ガスプラズマ処理を行うまでの間に大気暴露されると、水素ガスプラズマによるエッチングが進行しにくいといえる。
【符号の説明】
【0127】
100 基板
102 第1の導電膜
104 第1のエッチングマスク
106 ゲート電極
108 ゲート絶縁層
110 第1の半導体膜
112 第2の半導体膜
114 不純物半導体膜
116 第2のエッチングマスク
118 半導体積層体
120 第2の導電膜
122 第3の導電膜
124 第4の導電膜
126 積層導電膜
128 第3のエッチングマスク
130A ソース電極
130B ドレイン電極
132 エッチングされた半導体積層体
134 被覆膜
136 積層半導体層
138 第1の半導体層
140A 第2の半導体層
140B 第2の半導体層
142A ソース領域
142B ドレイン領域
144 パッシベーション層
146 第4のエッチングマスク
148 開口部
150A バックゲート電極
150B 画素電極
152 第5のエッチングマスク
200 電子書籍
202 筐体
204 筐体
206 表示部
208 光電変換装置
210 表示部
212 光電変換装置
214 軸部
216 電源
218 操作キー
220 スピーカ
222 テレビジョン装置
224 筐体
226 表示部
228 スタンド
230 表示部
232 操作キー
234 リモコン操作機
236 デジタルフォトフレーム
238 筐体
240 表示部
242 上部筐体
244 下部筐体
246 表示部
248 キーボード
250 外部接続ポート
252 ポインティングデバイス
254 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結晶性半導体膜上に非晶質半導体膜が設けられた積層半導体膜の一部に対して、
少なくとも第1のエッチングと第2のエッチングを行い、
前記第1のエッチングは、前記非晶質半導体膜の一部を残存させつつ行い、
前記第2のエッチングは、前記非晶質半導体膜上の前記第1のエッチング時に形成された被覆膜を除去した後に、前記非晶質半導体膜に対するエッチングレートが高く、且つ前記結晶性半導体膜に対するエッチングレートが低い条件により行い、
前記積層半導体膜に設けられた前記結晶性半導体膜の一部を露出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
少なくとも結晶性半導体膜上に非晶質半導体膜が設けられた積層半導体膜の第1の領域上にエッチングマスクを形成し、
少なくとも第1のエッチングと第2のエッチングにより、第2の領域の前記結晶性半導体膜を露出させ、
前記第1のエッチングは、前記非晶質半導体膜の一部を残存させつつ行い、
前記第2のエッチングは、前記非晶質半導体膜上の前記第1のエッチング時に形成された被覆膜を除去した後に、前記非晶質半導体膜に対するエッチングレートが高く、且つ前記結晶性半導体膜に対するエッチングレートが低い条件により行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のエッチングは塩素系ガスにより行い、
前記第2のエッチングはフッ素系ガスにより行った後に、水素を含むガスにより行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記塩素系ガスは、三塩化ホウ素ガスと塩素ガスの混合ガスであり、
前記フッ素系ガスは、三フッ化窒素であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記水素を含むガスにアルゴンガスが含まれていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記結晶性半導体膜は、微結晶半導体膜であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記微結晶半導体膜は微結晶シリコンであり、
前記非晶質半導体膜は非晶質シリコンであることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−243778(P2012−243778A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108730(P2011−108730)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】