説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置

【課題】等方性酸化を複数枚の基板が積層して配置された装置にて実施する場合に、基板配置場所により水素濃度が異なり酸化膜厚が大きく変動するのを抑制し、高品質な半導体装置を製造する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、複数枚の半導体ウエハ1を処理室4内に搬入する工程と、処理室4内を加熱するとともに圧力を大気圧よりも低くした状態で、酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して半導体ウエハ1を酸化処理する工程と、複数枚の半導体ウエハ1を処理室4内より搬出する工程とを有し、酸化処理する工程では、水素含有ガスを、複数枚の半導体ウエハ1が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の半導体ウエハ1が配列される方向における複数箇所から供給することで、酸素含有ガスと水素含有ガスとを基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、酸化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置に関し、特に、半導体ウエハ等の基板の表面を酸化処理する工程を有する半導体装置の製造方法、基板処理方法およびそのために好適に使用される基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスの途中過程において形成される、異なるSi結晶面が露出したSi基板(ウエハ)上を直接酸化反応させる工程において、従来の酸化技術においては、結晶面に依存して酸化速度が異なる結果、基板上にて異なる膜厚の酸化膜が形成され、基板上の場所により特性がバラツクという問題があった。
【0003】
異なるSi結晶面が基板上に露出する工程には、例えばShallow Trench Isolation(STI)として知られる素子間分離や、Si基板を掘り込んだ縦型のMOSトランジスタの形成工程があり、Si基板上にドライエッチングにより溝を形成することにより、溝の側面と底面にて異なる面方位が露出される。また、STI工程においては、酸化工程にて、Siも基板表面に露出しており、Si上の酸化速度をSi基板上の酸化速度に近くして、極力同じ酸化膜厚としたいプロセス要求がある。
【0004】
従来の酸化方法には、反応室の雰囲気を常圧、若しくは減圧として、酸素単独もしくは、N、Ar等により酸素分圧が調節された雰囲気にて基板の酸化処理を行うドライ酸化と、酸素と水素を反応室の前段にて混合することにより形成される水分を利用して基板の酸化処理を行うウェット酸化とがある。水素と酸素の混合により水分を形成する方法には、抵抗加熱やランプ集光加熱等により水素、酸素の着火温度以上に昇温、燃焼させる方法と、着火温度以下で触媒作用により水素、酸素を反応させる方法が、広く利用されてきている(日本国特開平11−204511号参照)。
【0005】
従来の酸化方法では、異なるSi基板の面方位間、例えば(100)面と(110)面では、Si基板表面のSi原子面密度に依存して、よりSi原子面密度の大きい(110)面の酸化速度が(100)面のそれより、薄膜酸化領域においておよそ2倍となる。また、Si上では通常、耐酸化性が高く、Siが酸化に対するバリア層として使用されることもあり、ほとんど酸化が進行しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対し、減圧雰囲気とした反応室に、独立したガス供給系より酸素、水素をそれぞれ導入するようにすると、酸化初期の成長速度が速く、異なるSi基板の面方位間における成長速度差や、Si基板とSi上における成長速度差が小さくなる結果、膜厚差を著しく小さくすることができ、等方性酸化が可能であることが分かった。
【0007】
しかしながら等方性酸化を、バッチ式の縦型装置にて実施する場合、ガスの供給箇所を被処理物である基板の上流である上部からのみとすると、垂直方向に多段に配置された各基板配置場所により、水素濃度が異なってしまい、形成される酸化膜厚が大きく変動してしまう問題があることを見いだした。
【0008】
本発明の主な目的は、等方性酸化を複数枚の基板が積層して配置された装置にて実施する場合に、基板配置場所により水素濃度が異なり酸化膜厚が大きく変動するのを抑制し、高品質な半導体装置を製造することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法およびそのために好適に使用できる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、
複数枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内を加熱するとともに前記処理室内の圧力を大気圧よりも低くした状態で、前記処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して前記複数枚の基板を酸化処理する工程と、
前記酸化処理後の前記複数枚の基板を前記処理室内より搬出する工程と、を有し、
前記酸化処理する工程では、前記水素含有ガスを、前記処理室内の前記複数枚の基板が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の前記複数枚の基板が配列される方向における複数箇所から供給することで、前記処理室内に供給された前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、この反応種により前記酸化処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
複数枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内を加熱するとともに前記処理室内の圧力を大気圧よりも低くした状態で、前記処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して前記複数枚の基板を酸化処理する工程と、
前記酸化処理後の前記複数枚の基板を前記処理室内より搬出する工程と、を有し、
前記酸化処理する工程では、前記水素含有ガスを、前記処理室内の前記複数枚の基板が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の前記複数枚の基板が配列される方向における複数箇所から供給することで、前記処理室内に供給された前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、この反応種により前記酸化処理を行うことを特徴とする基板処理方法が提供される。
【0011】
本発明の更に他の態様によれば、
複数枚の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱源と、
前記処理室内で前記複数枚の基板を垂直方向に積層して保持する保持具と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給ラインと、
前記処理室内の前記複数枚の基板が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の複数箇所から前記処理室内に前記水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給ラインと、
前記処理室内に供給されたガスを排気する排気ラインと、
前記処理室内の圧力制御を行う圧力制御装置と、
前記処理室内を加熱するとともに前記処理室内の圧力を大気圧よりも低くした状態で、前記処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して前記複数枚の基板を酸化処理するようにし、その際、前記水素含有ガスを、前記基板配列領域に対応する領域の前記複数枚の基板が配列される方向における複数箇所から供給することで、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、この反応種により前記酸化処理を行うように前記加熱源、前記圧力制御装置、前記酸素含有ガス供給ラインおよび前記水素含有ガス供給ラインを制御する制御装置と、
を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、等方性酸化を複数枚の基板が積層して配置された装置にて実施する場合に、基板配置場所により水素濃度が異なり酸化膜厚が大きく変動するのを抑制し、高品質な半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図2】本発明の実施例2に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図3】本発明の実施例3に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図4】本発明の実施例4に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図5】本発明の実施例5に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図6】本発明の実施例6に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図7】本発明の実施例7に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図8】本発明の実施例7に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図9】本発明の実施例7に係る実験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例8に係る実験結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例9に係る実験結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例10に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図13】図12のAA線概略横断面図である。
【図14】図12のB部の部分拡大概略縦断面図である。
【図15】図14のCC線概略横断面図である。
【図16】本発明の実施例11に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図17】図16のDD線概略横断面図である。
【図18】図16のE部の部分拡大概略縦断面図である。
【図19】図18のFF線概略横断面図である。
【図20】本発明の実施例12に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【図21】図20のGG線概略横断面図である。
【図22】図20のH部の部分拡大概略縦断面図である。
【図23】本発明の実施例13により作成したウエハの構造を説明するための概略縦断面図である。
【図24】本発明の実施例13により作成したウエハを説明するための概略縦断面図である。
【図25】本発明の実施例13により作成したウエハの透過電子顕微鏡像である。
【図26】比較例により作成したウエハを説明するための概略縦断面図である。
【図27】比較例により作成したウエハの透過電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、減圧雰囲気とした反応室内に酸素と水素を導入すると、等方性酸化が可能となり、且つその成膜速度が水素の供給律速反応であることを見出し、垂直方向多段に配置された各基板上の成膜速度を一定とするために、反応室への水素供給系路を2系統以上の複数本とすることを考案した。これにより、反応室の上流より供給された水素が、同じく反応室の上流より供給された酸素と反応消費されることによる、反応室内部のガス流れ下流方向における水素濃度の減衰を無くすことができ、バッチ式の縦型装置を用いて等方性酸化を行う場合において、複数枚の基板上における酸化膜厚の均一性を向上することに成功した。
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1を参照して、本実施例における基板処理装置としてのバッチ式縦型半導体製造装置(酸化装置)を説明する。反応炉20は、反応管21を有し、この反応管21により形成される反応室(処理室)4内に基板保持具としてのボート2が挿入される。保持具2は、複数枚の基板としての半導体ウエハ(シリコンウエハ)1を略水平状態で隙間(基板ピッチ間隔)をもって複数段に保持するように構成されている。反応管21の下方は、保持具2を挿入するために開放され、この開放部分はシールキャップ22により密閉されるようにしてある。保持具2は断熱キャップ25上に搭載され、断熱キャップ25は回転軸26を介して回転機構27に取り付けられている。反応管21の周囲には加熱源としての抵抗加熱ヒータ5が配置されている。反応管21には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを基板1の上流側から基板1に対して供給する酸素供給ライン7と、水素含有ガスとしての水素(H)ガスを基板1の上流側から基板1に対して供給する水素供給ライン8と、複数枚の基板1が存在する領域に対応する途中箇所から水素含有ガスとしての水素(H)ガスを基板1に対して供給する水素供給ライン9が接続されている。水素供給ライン9は、複数設けられることが好ましい。酸素供給ライン7は酸素ガス供給源41に接続され、水素供給ライン8、9は水素ガス供給源42に接続されている。酸素供給ライン7と水素供給ライン8は、反応管21の天井壁31を貫通して設けられている。ガス噴出口は下方を向いており下方に向けて酸素ガスおよび水素ガスをそれぞれ噴出する。水素供給ライン9は、反応管21の側壁32を貫通して設けられている。ガス噴出口は水平方向を向いており、ウエハ方向に向けて水素ガスを噴出する。各供給ライン7、8、9にはガスの供給および供給停止を行うための電磁バルブ6が設けられている。また、反応管21には処理ガスを排気する排気ライン23が接続されており、この排気ライン23には真空排気ポンプ3が接続されている。基板処理中、反応管21内は真空ポンプ3により大気圧よりも低い所定の圧力(減圧)とされるが、この圧力制御は制御手段24により行う。
【0017】
次に、上述の酸化装置を使用して、半導体装置の製造工程の一工程として、基板に酸化処理を施す方法について説明する。
【0018】
1バッチ分のウエハ1を保持具2に移載すると、加熱源5により加熱状態を維持された反応炉20の処理室4内に複数枚のウエハ1を装填した保持具2を装入(ロード)し、シールキャップ22により反応管21内を密閉する。次に、真空ポンプ3により反応管21内を真空引きし、制御手段24により炉内圧力が大気圧よりも低い所定の処理圧力となるよう制御する。回転機構27によりボート2が所定の回転速度で回転するようにする。また、炉内温度を昇温させ、制御手段24により炉内温度が所定の処理温度となるよう制御する。その後、酸素供給ライン7より処理室4内に酸素を供給すると共に、水素供給ライン8、水素供給ライン9より処理室4内に水素ガスを供給する。これにより、酸素ガスと水素ガスとが加熱源5により加熱された雰囲気内で反応して反応種が生成され、この反応種によりウエハ1に酸化処理が施される。処理温度としては、500〜1000℃、処理圧力としては1〜1000Paが例示される。
【0019】
ウエハ1の酸化処理が終了すると、真空引き、不活性ガスによるパージ等により炉内の残留ガスを除去し、炉内温度を所定の温度まで降温した後、保持具2を反応炉20からアンロードし、保持具2に支持された全てのウエハ1が冷えるまで、保持具2を所定位置で待機させる。待機させた保持具2に保持されたウエハ1が所定温度まで冷却されると、基板移載機等によりウエハを回収する。
【0020】
本実施例によれば、様々な半導体ウエハのプロセス工程で形成されるウエハ基板上の異なる面方位のシリコン表面において、酸化膜の成長速度差を、従来の酸化方法に比較して著しく小さくすることができ(処理ウエハの面方位依存性を小さくすることができ)、加えて、縦型半導体製造装置にて複数枚のウエハを処理する際に、各ウエハ上における水素濃度のバラツキに伴う、酸化膜厚のバラツキを抑えることが可能となる。なお、本発明は、酸化処理を行う基板の表面が、異なる結晶方位面を有するか、CVDによる多結晶シリコン、またはシリコン窒化物を有する場合に特に有効となる。
【0021】
なお、上記実施例では、酸素含有ガスとして酸素ガスを用いる場合について、水素含有ガスとして水素ガスを用いる場合について説明したが、酸素含有ガスとしては、酸素(O)ガスおよび亜酸化窒素(NO)ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、水素(H)ガス、アンモニア(NH)ガスおよびメタン(CH)ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
【実施例2】
【0022】
次に図2を参照して、実施例2における基板処理装置について詳述する。
真空排気ポンプ3を介して減圧雰囲気とした反応室4に、それぞれ独立した、酸素供給ライン7と、水素供給ノズル8が接続されており、酸素ガスと水素ガスとが、反応室4に供給される前に混合されることがなく、加熱源5により加熱された雰囲気内にて、活性な水素と酸素の反応が起こるため、酸化初期における酸化速度を大きくすることが出来る。
【0023】
酸化速度の加速は、ウエハ近傍の水素濃度に依存しており、ウエハ1の配列の上流より、水素供給ライン8を介してのみ水素ガスの供給を実施する構成においては、ウエハ配列の下流方向に向い、水素ガスが酸化反応に寄与することにより消費され、水素ガス濃度がウエハ配置位置により異なる結果、膜厚均一性を著しく悪くしてしまう。
【0024】
そこで、水素の供給ラインとして、水素供給ライン8とは別に、酸化反応にて消費され、下流で欠乏した水素ガスを補うために、水素供給ライン91、92、93を複数本設けている。これにより、複数枚のウエハ1が存在する領域の途中の複数箇所から基板に対して水素ガスを供給でき、ウエハ1が存在する領域の途中において欠乏した水素ガスを補うことができるので、反応室4に配置された複数のウエハ1の膜厚均一性を向上させることが可能となる。水素供給ライン91、92、93は、それぞれ独立しており、反応管21の側壁32を貫通して設けられている。水素供給ライン91、92、93のガス噴出口はそれぞれウエハ方向を向いており(ウエハ1と対向しており)、ウェハ近傍に水素を供給することが可能である。水素供給ライン91、92、93より供給される水素は、ウエハ配列の上流に接続される酸素供給ライン7より供給される酸素とウエハ1近傍で混合されることになる。なお、酸素供給ライン7と水素供給ライン8は、反応管21の天井壁31を貫通して設けられている。ガス噴出口は下方を向いており下方に向けて酸素ガスおよび水素ガスをそれぞれ噴出する。
【実施例3】
【0025】
次に図3を参照して、実施例3における基板処理装置について詳述する。
反応室4の天井壁31に、酸素供給ライン7とは独立した水素供給ライン8が接続されている点は実施例2と同様である。実施例2と異なるのは、水素供給ライン8とは独立した水素供給ライン91、92、93が、反応室4内を反応管21の側壁32の内壁に沿って立ち上がる長さの異なる複数(多系統)のノズル101、102、103にそれぞれ接続されている点である。具体的には、水素供給ライン91、92、93は、ウエハ配列方向に対し長さが異なる、水素供給ノズル101、102、103にそれぞれ接続されており、ウエハ配列方向(垂直方向)の反応室4内の水素濃度を調節することが可能となっている。なお、それぞれのノズルの先端は開放されており、この開放部がガス噴出口となっている。このガス噴出口は反応室4上方を向いており、ウエハ1の方向を向いていないが、実施例2のようにウエハの方向を向く(ウエハ1と対向する)ようにしてもよい。
【実施例4】
【0026】
次に図4を参照して、実施例4における基板処理装置について詳述する。
反応室4に、酸素供給ライン7とは独立した水素供給ライン8が接続され、水素供給ライン8とは別に、酸化反応にて消費され、下流で欠乏した水素ガスを補うために、水素供給ライン91、92、93およびノズル101、102、103が設けられている点は実施例3と同様である。実施例3と異なるのは、酸素供給ライン7、水素供給ライン8、水素供給ライン91、92、93のそれぞれに、流量の調整が可能なマスフローコントローラ(流量制御装置)12がそれぞれ設置されている点である。これにより、それぞれの供給ラインに流れる酸素流量、水素流量を調節することができ、反応室内の水素濃度を細かく制御することが可能となっている。
【実施例5】
【0027】
次に図5を参照して、実施例5における基板処理装置について詳述する。
反応室4に、酸素供給ライン7とは独立した水素供給ライン8が接続されている点は実施例2と同様である。実施例2と異なるのは、水素供給ライン8とは独立して設けられた反応室内の水素濃度調整用の途中供給ノズルである水素供給ライン91、92、93の代わりに、多孔ノズル13を設けた点である。この多孔ノズル13は、ノズル先端が封止されており、且つノズル側面方向に少なくとも2個以上の小孔131を有しており、複数の水素ラインを用いることなく、反応室内の水素濃度を制御することが可能となっている。多孔ノズル13の側面には、直径すなわち開口面積が異なる少なくとも2種類以上の小孔131を設けるようにしてもよい。すなわち小孔の孔径が、少なくとも二種類以上設置されていてもよい。これにより、それぞれの小孔より流出する水素流量を細かく制御することが可能となる。なお、本実施例では、後述する理由により、多孔ノズル13のガス噴出口を形成する小孔131は、ウエハ側ではなく、反応管21の側壁32の内壁側と対向するように設けられており、途中供給する水素が反応管21の側壁32の内壁に向かって供給されるようになっている。
【実施例6】
【0028】
次に図6を参照して、実施例6における基板処理装置について詳述する。
実施例6は、実施例1〜5とは反応室4内におけるガス流方向が異なる実施例である。実施例1〜5の場合、反応室4内においてガスは基本的には上方から下方に向かって流れるが、本実施例の場合、反応室4内においてガスは下方から上方に向かって流れる。酸素供給ライン7と水素供給ライン8は、反応管21の下部の側壁32を貫通して水平に設けられている酸素供給ノズル71と水素供給ノズル81にぞれぞれ接続されている。酸素供給ノズル71と水素供給ノズル81のガス噴出口は水平方向を向いている。反応室4の構成において、アウターチューブ(反応管)21内にインナーチューブ14を有しており、これを介して反応室4内が区分けされており、反応ガスである酸素と水素が、酸素供給ノズル71および水素供給ノズル81によりそれぞれ反応室下部よりインナーチューブ14の内側に供給され、途中供給用の水素供給ノズルもインナーチューブ14の内側に垂直に立ちあがっており、反応後のガスや未反応のガスは、インナーチューブ14の外側(インナーチューブ14とアウターチューブ21との間の空間)を通り、排気ライン23、真空ポンプ3を介して排気される構造となっている。
【実施例7】
【0029】
次に図7、8を参照して、実施例7における基板処理装置について詳述する。
実施例7は、水素含有ガス供給ラインとしてのHガスラインを多数本(多系統)にし、かつそれぞれのガスラインのH流量を異ならせ最適化することによりウエハ間膜厚均一性を向上させるものである。この基板処理装置は縦型炉と呼ばれるものであり、基板に対する減圧酸化処理を行う反応炉20と、反応炉下方のウエハを移載する移載室35から構成されている。酸化処理をする際には複数枚のウエハ1を装填したボート2を移載室35から反応炉20へと入炉する方式をとる。図7は移載室35内でボート2にウエハ1を装填した状態を示している。また、図8はウエハ1を装填したボート2を反応炉20にロードした状態を示している。反応炉20の構成は、実施例6と同様となっており、反応室4内においてガスは下方から上方に向かって流れる。なお、ボート2が移載室35内にある間は、反応室4下部の炉口フランジ33の下端の開口は、炉口ゲートバルブ34によって閉塞されている。
【0030】
反応室4の構成も実施例6と同様となっており、アウターチューブ(反応管)21内にインナーチューブ14を有しており、これにより反応室4内が区分けされている。基板1に対する減圧酸化処理時には、反応ガスである酸素含有ガスとしてのOおよび水素含有ガスとしてのHは、それぞれ反応室4下部の炉口フランジ33に設けられた酸素含有ガス供給ライン7および酸素含有ガス供給ノズル71ならびに水素含有ガス供給ライン8および水素含有ガス供給ノズル81を介して、ウエハ配列の上流側より、減圧とされたインナーチューブ14の内側にそれぞれ供給される。水素濃度調整用の途中供給用ライン(ノズル)である水素含有ガス供給ライン91(ノズル101)、水素含有ガス供給ライン92(ノズル102)は、インナーチューブ14内側に垂直に立ちあがっている。これらの水素含有ガス供給ノズル101、水素含有ガス供給ノズル102は、実施例3と同様に構成、配置されている。水素含有ガス供給ノズル101、水素含有ガス供給ノズル102を介して、複数枚のウエハ1が存在する領域の途中の複数箇所から基板1に対して水素ガスが供給される。このようにOは一系統のライン(ノズル)から導入されるが、Hは多数本(多系統)のライン(ノズル)から導入されることとなる。このHラインのそれぞれには、流量を調整するためのMFC(マスフローコントローラ)12が設置されている。OラインにもMFC(マスフローコントローラ)12が設置されている。各ラインに設けられたMFCは制御手段24により制御される。反応後のガスや未反応のガスは、インナーチューブ14の外側(インナーチューブ14とアウターチューブ21との間の空間)を通り、排気ライン23、真空ポンプ3を介して排気される。
【0031】
本発明者らが、この基板処理装置を用いて、基板に対して減圧酸化処理を行う実験を行ったところ、各HラインのそれぞれのH流量を変更させることにより、ウエハ間の膜厚均一性が大きく変化することを見出した。その実験結果を図9に示す。図9は、各HノズルからのH流量変更に伴うボート上各ポジションでのウエハ膜厚結果を示すものである。横軸はボートポジション(最下部のスロットを基準としたスロット番号)を表しており、縦軸は膜厚を表している。図中のH2(短/中/長)とは、Hノズル81、102、101のことを表しており、H2(短/中/長)=220/145/135ccとは、Hノズル81、Hノズル102、Hノズル101の設定流量が、それぞれ220sccm、145sccm、135sccmであることを示している。なお、Oノズル71は1系統のみで、流量は2500sccm一定とした。図9より、各HノズルのH流量は、各ラインで一定とするよりも、各ラインで異ならせるようにした方が膜厚均一性は向上することが分かる。なお、膜厚均一性が最も良くなるのは、H2(短/中/長)=220/145/135ccの場合である。これより、各ラインから供給するHの流量は、上流に行くほど大きくする(下流に行くほど小さくする)のが好ましいと言える。なおこの結果はウエハ172枚同時処理の結果であり、炉内温度850℃、圧力35Pa、またHライン3系統の結果であるが、処理枚数が増減したり、またHラインが2系統および4系統以上であっても同様の傾向を示すことは言うまでもない。また本結果はCVD構成の二重反応管タイプの炉体を使用しているが、拡散炉のようなインナーチューブのない構造であっても同様の効果があると言える。この結果より、各ラインからのH流量を最適化させることにより、ウエハ間の膜厚均一性が改善されることが分かる。
【0032】
炉内で生じる反応がHの供給律速であるため、排気方向に向ってガスの欠乏が起こりウェハ面間均一性がとれなくなるが、途中供給するHはガスの欠乏を補う流量のみでよいため、結果的に最上流が最も多くなっている。
【実施例8】
【0033】
次に図10を参照して、実施例8について詳述する。
実施例8は、実施例7の基板処理装置を用いて行った実験結果に関する。
図10は、処理(成膜)圧力変更に伴うボート上各ポジションでのウエハ膜厚分布を示すものである。Oは1系統(Oノズル71)のみで流量は2500cc一定とした。Hは3系統(Hノズル81、102、101)で流量は短/中/長=240/145/135ccとした。図10より、処理圧力は35Pa以下の範囲内の圧力とすることが好ましいことが分かる。また、圧力を高くするほどウエハ間の膜厚分布は悪くなっていくことも分かる。これより、処理圧力によっても、Hノズル流量およびその系統数を最適化することが好ましいと言える。
【実施例9】
【0034】
次に図11を参照して、実施例9について詳述する。
実施例9は、実施例7の基板処理装置を用いて行った実験結果に関する。
図11は、処理(成膜)温度変更に伴うボート上各ポジションでのウエハ膜厚分布を示すものである。Oは1系統(Oノズル71)のみで流量は2500cc一定とした。Hも1系統(Hノズル81)のみで流量は240ccとした。図10より、処理温度は、700℃以下の範囲内の温度とすることが好ましいことが分かる。また、低温にする程その膜厚分布が改善され、高温にするほど膜厚分布が悪化するのが分かる。これより上記実施例8同様、処理温度によってもHノズル流量およびその系統数を最適化することが好ましいと言える。
なお、本実施例9においては、700℃以下でボート上各ポジションでのウエハ膜厚均一性が良くなっているが、これは、Hの供給をHノズル81のみで行っておりHノズル101、102による炉内の流量調整が実施されていないことによる結果である。本プロセス、すなわち減圧雰囲気とした反応室内にOとHを導入するプロセスでは、Hがガス上流にて消費されるために、下流にてHのガス不足が発生するが、処理温度が低い程、上流でのHの消費量が減るので、下流側でのガス不足が起こりにくくなる。この結果として、700℃以下ではボート上各ポジションでのウエハ膜厚均一性が良くなり、ノズルの流量調整が簡単になる。また、本実施例では、SiOダミーウエハを入れているが、SiOダミーウエハをSi基板とすると、H消費量が大きく変動することとなり、低温であっても、Hノズル101、102による炉内の流量調整が必要となる。
【実施例10】
【0035】
上記実施例1〜7では、Hを途中供給すると共に上流からも供給しているが、本実施例では、上流からの供給は行わず、途中供給だけ行うようにした。
【0036】
図12〜図15を参照すれば、本実施例の基板処理装置としてのバッチ式縦型半導体製造装置(酸化装置)においては、反応炉20は、反応管21を有し、この反応管21により形成される反応室(処理室)4内に基板保持具としてのボート2が挿入される。ボート2は、複数枚の半導体ウエハ1を略水平状態で所定隙間をもって保持するように構成されている。反応管21の下方は、ボート2を挿入するために開放され、この開放部分はシールキャップ22により密閉されるようにしてある。ボート2はボート受け28上に搭載され、ボート受け28は回転軸26を介して回転機構27に取り付けられている。ボート2の下部には、複数の断熱板29が搭載されている。反応管21の周囲には加熱源としての抵抗加熱ヒータ5が配置されている。
【0037】
反応管21には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを供給する酸素供給ライン7と水素含有ガスとしての水素(H)ガスを供給する水素供給ライン91、92、93、94が接続されている。酸素供給ライン7は酸素ガス供給源41に接続され、水素供給ライン91、92、93、94は水素ガス供給源42に接続されている。酸素供給ライン7および水素供給ライン91、92、93、94には、電磁バルブ6およびマスフローコントローラ12がそれぞれ設置されている。
【0038】
反応管21の天井壁31にはシャワー板44が取り付けられ、天井壁31とシャワー板44とによりバッファ室43を形成している。酸素供給ライン7は酸素供給管72に接続されており、酸素供給管72は、反応管21の下部より側壁32の外側を延在し、その後反応管21の天井壁31の上側を延在してバッファ室43に連通している。本実施例では、最上流のシャワー板44からはOのみ導入する。
【0039】
水素供給ライン91、92、93、94はそれぞれ独立しており、水素供給ノズル101、102、103、104にそれぞれ接続されている。水素供給ノズル101、102、103、104は、反応管21の側壁32を貫通して設けられている。水素供給ノズル101、102、103、104は反応管21内を反応管21の側壁32の内壁に沿って立ち上がっているが、立ち上がっている長さが異なっている。このように、水素供給ノズル101、102、103、104はウエハ配列方向に対して長さが異なり、Hはウェハ配列領域の複数箇所(実施例では4箇所)から供給され、ウエハ配列方向(垂直方向)の反応室4内の水素濃度を調節することが可能となっている。但し、Hはシャワー板44からは供給しない。
【0040】
水素供給ノズル101、102、103、104は、ウエハ1よりも、反応管21の側壁32の内壁に近い側に内壁に沿って設けられている。水素供給ノズル101、102、103、104のノズルの先端は開放されており、この開放部がそれぞれガス噴出口111、112、113、114となっている。
【0041】
水素供給ノズル101、102、103、104のうち一番長いノズル101のガス噴出口111は、シャワー板44から離間した位置であって、ウエハ配列領域の上端(最上流のウエハ)に対応する位置にある。
【0042】
図14、15を参照すれば、水素供給ノズル101の先端は斜めにカットされており、ガス噴出口111は反応管21の側壁32の内壁211近傍で、内壁211側を向くように構成されている。これにより、途中供給するHを反応管21の側壁32の内壁211に向けて噴出させることができ、ヒータ5により加熱された側壁32の熱により側壁32近傍でHとOを効率的に反応させることができる。このように反応管21の側壁32の熱により側壁32近傍でHとOを反応させるようにすると、側壁32近傍で反応種が生成され、生成された反応種を安定した状態でウエハ1に供給することができ、膜厚均一性を向上させることができる。
【0043】
このように、本実施例は、側壁32近傍でHとOを反応させており、ウエハ1のの熱により、ウエハ近傍でHとOを反応させるやり方とは異なっている。なお、ウエハ1近傍でHとOを反応させるようにすると、反応初期に生じる不安定な反応種がウエハ1の処理に影響を与え、膜厚均一性に影響を及ぼす可能性があると考えられる。
【0044】
なお、上記では、水素供給ノズル101について説明したが、水素供給ノズル102、103、104についても同じである。
【0045】
反応管21の下部に設けられた排気管36には、処理ガスを排気する排気ライン23が接続されており、この排気ライン23には圧力制御手段37および真空排気ポンプ3が接続されている。ウエハ処理中、反応管21内は真空ポンプ3により大気圧よりも低い所定の圧力(減圧)とされるが、この圧力制御は圧力制御手段37および制御手段24により行う。
【実施例11】
【0046】
上記実施例1〜7では、最上流において、HとOをそれぞれ別のノズルで反応室4内に供給しているが、本実施例では、最上流のバッファ室43において、HとOを混合し、HとOの混合ガスを最上流のシャワー板44より反応室4内に導入するようにした。このようにOとHとを事前混合した後に反応室4内に導入した場合であっても、OやHOよりも反応性の高い反応種が生成される。
【0047】
図16〜図19を参照すれば、水素供給ライン91、92、93、94とは独立の水素供給ライン8をさらに設け、この水素供給ライン8は水素供給管82に接続され、水素供給管82は、反応管21の下部より側壁32の外側を延在し、その後反応管21の天井壁31の上側を延在してバッファ室43に連通しており、バッファ室43にてHとOを混合した後に反応室4内に供給するようにした点、水素供給ノズル101、102、103、104のうち一番長いノズル101のガス噴出口111は、シャワー板44から離間した位置であってウエハ配列領域の上端(最上流のウエハ)に対応する位置よりも下方にあり、Hをウエハ配列領域の一端側からではなく配列領域の途中から流すように構成した点、および水素供給ノズル101、102、103、104の上面は閉じておりノズル先端部側面にガス噴出口111、112、113、114が設けられ、これらガス噴出口111、112、113、114が反応管21の側壁32の内壁211近傍で、内壁211側を向くように構成されている点で本実施例は、実施例11と異なるが、他の点は同じである。
【実施例12】
【0048】
本実施例においても、HとOの混合ガスを最上流のシャワー板44より反応室4内に導入するようにしている。実施例11では、バッファ室43にてHとOを混合したが、本実施例では、酸素供給管72と水素供給管82とをバッファ室43よりも上流側で接続し、OとHとをバッファ室43ではなく、それよりも上流側の配管内で混合するようにした点が実施例11と異なるが他の点は同じである。
【実施例13】
【0049】
本発明による等方性酸化を物理的に確認するために、本発明が好適に適用される、STI(Shallow Trench Isolation)構造のウエハを準備して、その断面構造のTEM 観察を実施した。
【0050】
図23を参照すれば、本実施例において作成したウエハは、シリコン基板51の表面にパッドシリコン酸化膜52を形成し、その上にSi膜53を形成した後、溝60を形成し、その後、酸化膜54を形成し、その上にノンドープポリシリコン膜55を形成し、その上に酸化膜56を形成し、さらにその上にノンドープポリシリコン膜57を形成している。
【0051】
を494sccm、Oを2000sccm流してHの濃度を19.8%とし、温度950℃、圧力40.3Paで42分間酸化を行って、酸化膜54および酸化膜56をそれぞれ形成した。
【0052】
図24は本実施例により作成したウエハの概略縦断面図であり、図25は本実施例により作成したウエハのTEM像である。
【0053】
比較のために、Hを3000sccm、Oを3000sccm、Nを20000sccm流してHの濃度11.5%とし、温度950℃、大気圧下で8.5分間ウエット酸化を行って、酸化膜58および酸化膜59をそれぞれ形成した。
【0054】
図26は比較例により作成したウエハの概略縦断面図であり、図27は比較例により作成したウエハのTEM像である。
【0055】
溝60の底面601および側面602では、露出するシリコンの面方位が異なるので、通常の酸化では酸化速度が異なると考えられ、また、Si膜53は酸化されにくいので、溝60の底面601、溝60の側面602およびSi膜53上に形成される酸化膜は、通常の酸化では、膜厚が異なると考えられる。なお、ノンドープポリシリコン膜55上に形成した酸化膜にはそのような膜厚の差は通常の酸化の場合でも見られないと考えられる。
【0056】
図26、27を参照すれば、従来方法であるウェット酸化では、溝60の底面601上の酸化膜581の膜厚D(=16nm)に比べ、溝60の側面602上の酸化膜582の膜厚B(=26nm)が厚く、シリコン基板51の結晶面方位に依存した酸化速度の違いが明確に見えている。すなわち異方性を明確に示している。また、Si膜53上の酸化膜583の膜厚A(=1.7nm)が膜厚B(=26nm)、D(=16nm)に比べ小さく、酸化の進行が遅く、Si膜53の耐酸化性を示している。
【0057】
これに対して、図24、25を参照すれば、本発明により処理した本実施例のウエハでは、溝60の底面601上の酸化膜541の膜厚D(=16nm)と溝60の側面602上の酸化膜542の膜厚B(=16.5nm)がほぼ同じであり、酸化速度がシリコン基板51の結晶面方位に依存しないことが分かる。すなわち、等方性酸化を明確に示している。また、Si膜53上の酸化膜543の膜厚Aが13nmであり、シリコン基板51の酸化膜54の膜厚B(=16.5nm)、D(=16nm)とほぼ同じ膜厚の酸化が確認でき、ウェット酸化に対しては高い耐酸化性を見せたSi膜53上においても酸化の進行が見られた。
【0058】
ウェット酸化が、HOガスの膜中拡散に依存しているのに対し、本発明ではOとHとの反応により生成される反応種の高いエネルギーにより酸化の進行が起こっているために見える差異であると考えられる。
【0059】
なお、ノンドープポリシリコン膜55上に形成した酸化膜56の膜厚Eはウェット酸化の場合に15.5nmであり、本発明により処理した本実施例のウエハでは16nmであり、成長膜厚に大きな差は見られない。また、場所によるばらつきもウエット酸化および本発明の方法による場合のいずれの場合も小さかった。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例を説明してきたが、本発明の好ましい処理温度は、500℃から950℃であり、好ましい処理圧力は、数Pa〜1000Paである。処理温度については、少なくともH、Oの発火点(480℃)以上程度ないと、反応自体が起こらない可能性があるので、500℃以上は必要と考えられる。また、950℃を超えると高温、減圧下で石英反応管の強度がもたないと考えられる。以上のことから処理温度としては500℃以上、950℃以下が好ましいと考えられる。処理圧力については、均一性を重視すると圧力を下げることとなり、成長速度を重視すると圧力を上げることとなる。成長速度と均一性の両方を考慮すると圧力は、数Pa以上1000Pa以下が好ましいと考えられる。
【0061】
好ましいHの流量は10sccmから2000sccmであり、好ましいOの流量は20sccm〜5000sccmである。
【0062】
好ましいH/O流量比は0.1〜0.5である。イオン等の反応種により酸化初期の速度が非常に速くなり、Hの濃度が高いほど成長速度が速くなるが、成長速度が速くなると、均一性は悪くなる方向となる。均一性を考慮すると、H濃度を低くし酸素リッチとする(H流量<O流量)のが好ましいと言え、その場合のH/O流量比は、現状では50%程度までと考えられており、10%〜50%(0.1〜0.5)が好ましいと考えられる。H/O流量比が0.5を超えると実用レベルの均一性が得られなくなる。
【0063】
また、本発明において、Hは、次のようにして消費されていると考えられる。すなわち、H、Oを供給し、常圧で発火点以上に加熱すると燃焼し、その結果HOを発生して反応熱を発生する。しかしながら本発明者らが実験を行ったところ、減圧酸化における排気のQ−MASS(四重極質量分析)測定ではHOが観測されず、反応室内の局部温度上昇が見られなかった。これらのことから、反応室内においてはHOは形成されておらず、基本的にはO、Hが排気されていると考えられる。よって、減圧の反応室内で酸素と水素の反応によりイオン等の反応種が生成され、これらにより加速酸化が起き、排気にて速やかにH、Oに戻っていると推測される。
【0064】
また、本発明において、ドライ酸化のようにOのみ流しても、また、ウェット酸化のようにHOを流しても本発明のような酸化の加速は起きないため、酸化にはOやHOよりも反応性の高いイオン等の反応種が圧倒的に効いていると考えられる。そして、Hを流した時に、誘発される形でOやHOよりも反応性の高い反応種が形成されていると考えられる。
【0065】
本発明において、複数枚の基板が存在する領域に対応する途中にHを供給することで、次のような効果があると考えられる。
(1)途中で消費され欠乏したHを補給できる。
(2)基板配列領域に直接Hを供給でき、途中段階で水(HO)が生成され難くなる。(上流1箇所からHを大量に流すようにすると途中段階で水(HO)が生成され易くなる。)
(3)OにHをぶつけることができ、イオン等の反応種が生成され易くなる。
【0066】
明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含む2003年8月26日提出の日本国特許出願2003−301982号の開示内容全体は、そのまま引用してここに組み込まれる。
【0067】
種々の典型的な実施の形態を示しかつ説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明の好ましい形態によれば、様々な半導体ウエハのプロセス工程で形成されるシリコン基板上の異なる面方位のシリコン表面において、酸化膜の成長速度差を、従来の酸化方法に比較して著しく小さくすることができる。また、バッチ式の縦型装置にて複数枚の基板を処理する際に、各基板上における水素濃度のバラツキに伴う酸化膜厚のバラツキを抑制でき、高品質な半導体装置を製造することができる。
その結果、本発明は、半導体シリコンウエハを用いる半導体装置の製造方法およびそのために好適に使用される基板処理装置に特に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 半導体ウエハ(基板)
2 ボート(保持具)
3 真空ポンプ
4 反応室(処理室)
5 加熱ヒータ(加熱源)
6 電磁バルブ
7 酸素供給ライン
8,9 水素供給ライン
12 マスフローコントローラ
13 多孔ノズル
14 インナーチューブ
20 反応炉
21 反応管
22 シールキャップ
23 排気ライン
24 制御手段
25 断熱キャップ
26 回転軸
27 回転機構
31 天井壁
32 側壁
33 炉口フランジ
34 炉口ゲートバルブ
36 排気管
37 圧力制御手段
41 酸素供給源
42 水素供給源
43 バッファ室
44 シャワー板
51 シリコン基板
52 パッドシリコン酸化膜
53 Si
54,56 酸化膜
55,57 ノンドープポリシリコン膜
58,59 酸化膜
71 酸素供給ノズル
72 酸素供給管
81 水素供給ノズル
82 水素供給管
91,92,93,94 水素供給ライン
101,102,103,104 ノズル
111,112,113,114 ガス噴出口
131 小孔
211 内壁
541,542,543 酸化膜
581,582,583 酸化膜
601 底面
602 側面
A,B,C,D,E 膜厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内を加熱するとともに前記処理室内の圧力を大気圧よりも低くした状態で、前記処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して前記複数枚の基板を酸化処理する工程と、
前記酸化処理後の前記複数枚の基板を前記処理室内より搬出する工程と、を有し、
前記酸化処理する工程では、前記水素含有ガスを、前記処理室内の前記複数枚の基板が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の前記複数枚の基板が配列される方向における複数箇所から供給することで、前記処理室内に供給された前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、この反応種により前記酸化処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記反応種は、HOよりも反応性の高い反応種であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記酸化処理する工程では、前記各供給箇所から供給する前記水素含有ガスの流量をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記水素含有ガスは、長さの異なる複数本のノズルを介して供給されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記水素含有ガスは、側面に少なくとも2つ以上の孔が設けられた多孔ノズルを介して供給されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記酸化処理する工程では、処理温度を500〜1000℃、処理圧力を1〜1000Paとすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
複数枚の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内を加熱するとともに前記処理室内の圧力を大気圧よりも低くした状態で、前記処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して前記複数枚の基板を酸化処理する工程と、
前記酸化処理後の前記複数枚の基板を前記処理室内より搬出する工程と、を有し、
前記酸化処理する工程では、前記水素含有ガスを、前記処理室内の前記複数枚の基板が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の前記複数枚の基板が配列される方向における複数箇所から供給することで、前記処理室内に供給された前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、この反応種により前記酸化処理を行うことを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
複数枚の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内を加熱する加熱源と、
前記処理室内で前記複数枚の基板を垂直方向に積層して保持する保持具と、
前記処理室内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給ラインと、
前記処理室内の前記複数枚の基板が垂直方向に積層されて配列される基板配列領域に対応する領域の複数箇所から前記処理室内に前記水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給ラインと、
前記処理室内に供給されたガスを排気する排気ラインと、
前記処理室内の圧力制御を行う圧力制御装置と、
前記処理室内を加熱するとともに前記処理室内の圧力を大気圧よりも低くした状態で、前記処理室内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給して前記複数枚の基板を酸化処理するようにし、その際、前記水素含有ガスを、前記基板配列領域に対応する領域の前記複数枚の基板が配列される方向における複数箇所から供給することで、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとを、前記基板配列領域に対応する領域の複数箇所で反応させて反応種を生成し、この反応種により前記酸化処理を行うように前記加熱源、前記圧力制御装置、前記酸素含有ガス供給ラインおよび前記水素含有ガス供給ラインを制御する制御装置と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記反応種としてHOよりも反応性の高い反応種を生成するよう前記加熱源、前記圧力制御装置、前記酸素含有ガス供給ラインおよび前記水素含有ガス供給ラインを制御するように構成されることを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記水素含有ガス供給ラインは、複数の独立した供給ラインを含み、
前記各供給ラインにはそれぞれマスフローコントローラが設けられ、
前記制御装置はさらに、前記複数箇所から供給する前記水素含有ガスの流量をそれぞれ異ならせるよう前記各マスフローコントローラを制御するように構成されることを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記水素含有ガス供給ラインは、長さの異なる複数本のノズルを含むことを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記水素含有ガス供給ラインは、側面に少なくとも2つ以上の孔が設けられた多孔ノズルを含むことを特徴とする請求項8記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図25】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−15536(P2012−15536A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183814(P2011−183814)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【分割の表示】特願2009−66032(P2009−66032)の分割
【原出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】