半導体装置の製造方法および半導体装置
【課題】SiO2/SiC構造を備える、たとえばMOSFETなどの半導体装置は、界面準位密度の低減が不十分である。
【解決手段】SiC基板1の一方の主表面上に形成させたSiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に、あらかじめSi薄膜3を形成させて、このSi薄膜3の内部に窒素原子を注入させる。この状態で、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上を酸窒化させる。
【解決手段】SiC基板1の一方の主表面上に形成させたSiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に、あらかじめSi薄膜3を形成させて、このSi薄膜3の内部に窒素原子を注入させる。この状態で、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上を酸窒化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関するものであり、より特定的には、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程を行なった上で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程を行なう半導体装置の製造方法、および上記製造方法により製造した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置が使用される装置の高性能化に伴い、半導体装置に対しては動作の高速化、低損失化がますます要求されるようになっている。そのためには、半導体装置には高い耐電圧と低損失とを両立させることが重要である。
【0003】
たとえばMOSFETなどの半導体装置(半導体素子)を形成するにあたり、半導体基板として炭化珪素(SiC)が利用される。この理由としてSiCは、珪素(シリコン:Si)と比較してバンドギャップ(禁止帯幅)が約3倍と広く、絶縁破壊電界強度が約10倍高いため、耐熱性や耐電圧性に優れているとともに、電子ドリフト速度が大きいことが挙げられる。さらに、SiCには、半導体装置を不活性化するために使用することができる安定した酸化物、すなわち珪素酸化膜(SiO2)を容易に形成することができる。以上の理由により、SiCは、Siに置き換わる高速で超低電力損失なたとえば高周波パワーデバイスを形成する半導体材料として注目されており、世界中で研究・開発が進められている。
【0004】
しかし、上述したSiCによる半導体装置は、Siによる半導体装置と比較して、SiCの一方の主表面上に形成したSiO2の薄膜と、SiCとの界面付近の領域において界面準位密度が高いという問題がある。たとえば、nチャネルMOSFETにおいては、導電帯近傍のエネルギー領域における界面準位密度が特に高い。なお、以下では主表面とは、薄膜や素子などを形成させるための、最も面積の大きい主要な面のことを指す。
【0005】
上述した界面準位密度に関して、たとえばSiCの一方の主表面上に熱酸化によりSiO2の薄膜を形成させる場合には、酸化過程において余剰な炭素(C)原子や、ダングリングボンドと呼ばれる未結合の原子が、SiCとSiO2との界面付近の領域において形成されることがある。このダングリングボンド等が、界面準位として多数存在し得るため、界面準位密度が高くなることがある。界面準位は、SiCを用いた半導体装置のチャネル移動度を低下させ、損失が増大する要因となっていることがわかっている。そこで、たとえば特開平7−66192号公報(以下、「特許文献1」)においては、SiCの一方の主表面上に直接SiO2の薄膜を形成させる工程を行なう代わりに、SiCの一方の主表面上にまずSiからなる薄膜を形成し、その上でSi薄膜を酸化することにより、SiCとの界面付近における界面準位密度を低減させた高品質なSiO2の薄膜を形成する製造方法が開示されている。さらに、たとえば以下に記す非特許文献1においては、たとえば通常の熱酸化処理によりSiO2の薄膜を形成させた後に、一酸化窒素(NO)雰囲気中で熱処理を行なうことにより、界面準位密度を低減させることができることが述べられている。
【特許文献1】特開平7−66192号公報
【非特許文献1】G.Y.Chung et al、「Effect of nitric oxide annealing on the interface trap densities near the band edges in the 4H polytype of silicon carbide」、APPLIED PHYSICS LETTERS、第76巻、(米国)、2000年3月27日、p.1713−1715
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した非特許文献1に示す、NO雰囲気中で熱処理を行なうことにより、SiCとSiO2薄膜との界面付近の領域における界面準位密度を低減させようとする方法は、たとえばSiCの余剰なC原子によるダングリングボンドが、炭素と原子半径が近いNOガスの窒素原子により終端されることにより、ダングリングボンドの密度を低減させることに基づく。たとえばSiCの伝導帯付近のエネルギー領域については、非特許文献1に示すように、NO雰囲気中での熱処理を行なうことにより、NO雰囲気中での熱処理を行なわない場合に比べて界面準位密度を大幅に低減させることができている。しかしながら非特許文献1にて、価電子帯付近のエネルギー領域については、逆にNO雰囲気中での熱処理を行なうことにより、NO雰囲気中での熱処理を行なわない場合に比べて界面準位密度が増加する結果となっている。非特許文献1においては、1気圧中でNOガスを1分間に0.5リットルずつ流入させながら1150℃で熱処理を行なった結果が示されているが、上述したように界面準位密度は十分に低減できていない。その結果、当該方法を用いて形成させたSiO2/SiC構造を備える、たとえばMOSFETなどの半導体装置は、界面準位密度の低減が不十分であり、半導体装置のオン抵抗におけるチャネル抵抗成分は依然として大きいものと思われる。
【0007】
また、特許文献1においては、高品質なSiO2の薄膜を形成させた半導体装置(MOSFET)における、ドレイン電流値の増加を示すデータが開示されている。しかしながら、昨今の半導体装置に期待される、高速で超低電力損失なたとえば高周波パワーデバイスを実現するためには、さらなる界面準位密度の低減や、ドレイン電流値の増加が必要と考えられる。
【0008】
本発明は、上述した各問題に鑑みなされたものであり、その目的は、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素を用いた半導体装置の製造方法および、上述した製造方法を用いて製造した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面における半導体装置の製造方法は、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、窒素原子を注入させた珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程とを備えている。そして、酸化膜が存在する状態で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程とを備える、半導体装置の製造方法である。
【0010】
炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる前に、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に、窒素原子を注入させた珪素薄膜を形成させておく。その上で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる。このようにすれば、珪素薄膜中の窒素原子が、珪素薄膜中および、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化したときに形成される酸窒化層中を容易に拡散することができる。したがって窒素原子が、当該酸窒化層と炭化珪素エピタキシャル層との界面付近の領域に容易に到達することができる。当該界面付近の領域に到達した窒素原子が、たとえば炭化珪素中の炭素原子の空孔に侵入して、炭化珪素のダングリングボンドを終端することにより、ダングリングボンドの密度を低減させる。
【0011】
上述したように、形成中の半導体装置を構成する薄膜の内部に窒素原子を拡散させる方法を用いた方が、形成中の半導体装置を窒素雰囲気中に曝露させる方法を用いるよりも、容易にかつ確実に、炭化珪素エピタキシャル層と、その一方の主表面上に形成させた酸窒化層(絶縁膜層)との界面付近の領域に存在するダングリングボンドに窒素原子を到達させることができる。したがって、ダングリングボンドを窒素原子で終端させることにより、容易にかつ確実に、界面準位密度を低減させることができる。
【0012】
また、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる際には、たとえばイオン注入などの方法を用いるが、この方法を用いれば、注入させたい窒素原子の量を任意に制御することができる。このため、ダングリングボンドを終端させるために必要な量の窒素原子を注入させることにより、界面準位密度を低減させるために十分な量の窒素原子を、炭化珪素エピタキシャル層の界面付近の領域へ供給させることができる。
【0013】
なお、上述した半導体装置の製造方法においては、珪素薄膜の、炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備えていてもよい。また、上述した一方の主表面を酸窒化させる工程では、上述した窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより形成させた酸化膜および、堆積させた珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なってもよい。
【0014】
上述した珪素酸化膜は、窒素原子を注入させた珪素薄膜中の窒素原子が、珪素薄膜から見て、炭化珪素エピタキシャル層と反対側へ拡散し、炭化珪素エピタキシャル層と反対側の最表面の主表面から外部へ放出されるのを抑制させるために形成させるものである。この珪素酸化膜が、窒素原子を形成中の半導体装置の薄膜の内部に捕捉し、形成中の半導体装置の薄膜の外部へ放出するのを抑制するガードの役割を有する。そのため、窒素原子を、より確実に、炭化珪素エピタキシャル層(炭化珪素エピタキシャル層との界面)側へ移動させることができる。
【0015】
ここで、窒素原子を注入させた珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程(珪素薄膜を酸化させる工程)においては、たとえば熱酸化を用いて酸化膜を形成させてもよい。しかし、この珪素薄膜を酸化させる工程および、上述した珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、珪素酸化膜を堆積させる工程とは、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なうことがより好ましい。したがって、熱酸化より低温で珪素薄膜を酸化させることができる代替手段を用いて、珪素薄膜を酸化させる工程を行なってもよい。代替手段としては、たとえば酸素プラズマ処理などが挙げられる。酸素プラズマ処理を用いれば、熱酸化を用いた場合よりも十分低い温度で表面を酸化させることができる。
【0016】
このように、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程の前工程を行なう。そのようにすれば、上述した前工程を行なう際には、炭化珪素エピタキシャル層が酸化ないし窒化することを抑制することができる。上述したたとえば窒素原子を注入させた酸化膜が存在しない状態で、炭化珪素エピタキシャル層が酸化されると、その際に炭化珪素エピタキシャル層とその酸化により形成されるたとえば酸化物層との界面付近の領域において界面準位密度が高密度に発生する可能性がある。したがって、上述したたとえば窒素原子を注入させた酸化膜を形成させる工程等を完了させた後に、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面に対して酸窒化を行なうことが好ましい。このようにすれば、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化する際には、窒素原子を注入された酸化膜が存在することになる。このため、先述したように、窒素原子を炭化珪素エピタキシャル層の界面付近に存在するダングリングボンドに容易に到達させることができる。その結果、界面準位密度を低下させることができる。
【0017】
ところで、一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、酸化膜が形成された炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させることもできる。窒素と酸素との両方を含む窒素酸化物としては、たとえば一酸化窒素や一酸化二窒素を挙げることができるが、これらは他の窒素酸化物よりも安価で入手できるため、製造工程のコスト削減に寄与することができる。また、窒素と酸素との両方を含む窒素酸化物を用いて、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面の酸窒化(酸化および窒化)、および窒素原子を注入された珪素薄膜(窒素原子を注入した後で行なう酸化により酸化膜となる)、さらに珪素薄膜の、炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に堆積させる珪素酸化膜の窒化をすべて同時に行なうことができる。このため、製造工程のタクトタイムを大幅に短縮させることができる。
【0018】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程とを備えている。そして、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程とを備えており、珪素薄膜を酸化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう、半導体装置の製造方法である。
【0019】
本発明の一の局面における半導体装置の製造方法においては、窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程(珪素薄膜を酸化させる工程)を行なった後に、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程を行なう。しかし、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、珪素薄膜を酸化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう。この点においてのみ、両半導体装置の製造方法は異なっている。したがって、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、本発明の一の局面における半導体装置の製造方法よりもさらに、製造工程数を削減することができるため、製造工程のタクトタイムを短縮させることができる。
【0020】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においても、珪素薄膜の、炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備えていてもよい。また、上述した一方の主表面を酸窒化させる工程では、上述した堆積させた珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なってもよい。
【0021】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においては、先述のとおり、珪素薄膜を酸化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう。したがって、一方の主表面を酸窒化させる工程と珪素酸化膜を窒化させる工程とを同時に行なうことにより、珪素薄膜を酸化させる工程と、珪素酸化膜を窒化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とのすべてを同時に行なうことができる。
【0022】
また、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においても、珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、珪素酸化膜を堆積させる工程とを、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なうことが好ましい。このように、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度で、珪素薄膜を酸化させる工程および炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程の前工程を行なう。そのようにすれば、上述した前工程を行なう際には、炭化珪素エピタキシャル層が酸化ないし窒化することを抑制することができるため、先述した本発明の一の局面における半導体装置の製造方法と同様に、界面準位密度を低下させることができる。
【0023】
また、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においても、一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させることもできる。
【0024】
また、本発明の一の局面および他の局面における半導体装置の製造方法においては、先述したように、一方の主表面を酸窒化させる工程では、上述した窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより形成させた酸化膜および、堆積させた珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なってもよい。ただし、一方の主表面を酸窒化させる際に、窒素と酸素との両方を含む窒素酸化物を用いるため、同時に窒化される上述した酸化膜および珪素酸化膜は、結果的に同時に酸化されることもある。したがって、一方の主表面を酸窒化させる工程において、上述した酸化膜および珪素酸化膜が同時に酸窒化される条件で処理を行なってもよい。
【0025】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の一の局面における半導体装置の製造方法に順ずる。
【0026】
なお、本発明の半導体装置の各製造方法においては、炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理する際の加熱温度としては1000℃以上1200℃以下とすることが好ましい。このようにすれば、たとえば一酸化窒素や一酸化二窒素による酸窒化反応をスムーズに行なうことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素を用いた半導体装置の製造方法および、上述した製造方法を用いて製造した半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法における工程の手順を示すフローチャートである。先述したように、本発明における半導体装置の製造方法は、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素(SiC)を用いた半導体装置の製造方法である。ここでいう半導体装置とはたとえば、SiCの一方の主表面上にたとえばSiO2などの絶縁膜を形成させ、SiCとSiO2との界面付近の領域における界面準位の密度を低減させたMOSFETのことである。
【0030】
その工程としては、図1に示すように、SiCエピタキシャル層を堆積させる工程(S10)、Si薄膜を堆積させる工程(S20)、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)、SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)、Si薄膜を酸化させる工程(S50)、高温アニールを行なう工程(S60)がある。実際にSiCを用いた半導体装置を製造する際における処理は、これらの工程を適宜組み合わせることにより実施される。
【0031】
まず、SiCエピタキシャル層を堆積させる工程(S10)を行なう。これは、半導体装置としてたとえば横型MOSFETを形成する場合においてはチャネルになる層を、半導体装置としてたとえば縦型MOSFETを形成する場合においてはドリフト層として用いる、SiCエピタキシャル層を堆積させることにより形成する工程である。
【0032】
図2は、SiC基板の一方の主表面上に、SiCのエピタキシャル層を形成させる工程を示す概略断面図である。図2に示す、SiCエピタキシャル層2を形成させるSiC基板1は、p型のSiCであってもよいし、n型のSiCであってもよい。ただし、SiC基板1としてたとえばp型のSiCを用いた場合には、SiCエピタキシャル層2を横型MOSFETのnチャネル層として用いる場合は、SiCエピタキシャル層2についてはn型のSiCとする方がより好ましい。なお、SiC基板1としてたとえばn型のSiCを用いて、SiCエピタキシャル層2を横型MOSFETのnチャネル層として用いる場合は、たとえば横型MOSFETのソース近傍の領域に電位固定用のp+領域を設けることが好ましい。
【0033】
また、ここでSiCエピタキシャル層2を形成させるためには、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスおよびプロパン(C3H8)ガスを用い、キャリアガスとして水素(H2)ガスを採用することができる。また、p型のSiCエピタキシャル層2を形成するためのp型不純物源としては、たとえばジボラン(B2H6)やトリメチルアルミニウム(TMA)を採用することができる。また、n型のSiCエピタキシャル層2を形成するためのn型不純物源としては、たとえば窒素(N2)ガスを採用することができる。
【0034】
上述したSiCエピタキシャル層2を形成させる方法は、非金属材料の水素化物ガスを加熱したSiC基板1の主表面上に吹きつけ、熱分解させて半導体結晶を得る、CVD法である。
【0035】
次に、Si薄膜を堆積させる工程(S20)を行なう。これは具体的には、実際に形成させる半導体装置における、SiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域に供給させる窒素原子を添加させるために用いるSi薄膜を、工程(S10)で形成させたSiCエピタキシャル層2の一方の(SiC基板1と対向しない)主表面上に堆積させる工程である。
【0036】
図3は、SiCエピタキシャル層の一方の主表面上にSi薄膜を形成させた状態を示す概略断面図である。図3に示すように、珪素(シリコン:Si)からなるSi薄膜3を、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に形成させる。Si薄膜3は、用途に応じてp型のSiとしても、n型のSiとしてもよい。
【0037】
Si薄膜3は、多結晶のSiであってもよいし、非晶質のSiであってもよい。このSi薄膜3を形成させる方法としては、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスを用いた減圧CVDにより多結晶のSi薄膜3を堆積させる方法を用いてもよい。あるいは、たとえばスパッタリング法による非晶質のSi薄膜3を堆積させる方法を用いてもよい。これらの方法ではいずれも、Si薄膜3を堆積させる際には、SiCエピタキシャル層2を700℃程度以下の温度に加熱すればよい。この加熱温度はSiCエピタキシャル層2が酸化される温度よりも低いため、これらの方法を用いてSi薄膜3を堆積させる場合には、SiCエピタキシャル層2の主表面が酸化されることはない。
【0038】
つまり、上述したように、工程(S20)を行なう際に、たとえばSiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で行なうことが好ましい。このようにすれば、たとえば工程(S20)を行なう時点のように、SiCエピタキシャル層2とその主表面上に形成されるSiO2の薄膜との界面付近の領域に対して、供給しうる窒素原子が存在しない状態において、SiCエピタキシャル層2の主表面が積極的に酸化されることにより、その界面付近の領域に界面準位が高密度に発生する可能性を小さくすることができる。したがって、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で、Si薄膜3を堆積させることができる方法であれば、上述した方法に限らず、他の方法を用いて工程(S20)を実施してもよい。
【0039】
続いて、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)を実施する。これは具体的には、工程(S20)で形成させたSi薄膜3の内部に、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域に供給させるための窒素原子を注入させる工程である。
【0040】
Si薄膜3の内部に窒素原子を注入させるために、たとえば窒素イオンをイオン注入法により、図3中に下向きの矢印で示すように、Si薄膜3の内部にドーパントとして注入させる。イオン注入法を用いれば、注入させたい窒素原子の量を任意に制御させることができる。このため、ダングリングボンドを終端させるために必要な量の窒素原子を注入させることにより、界面準位密度を低減させるために十分な量の窒素原子を、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域へ供給させることができる。
【0041】
なお、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域に形成されるダングリングボンドを終端させるためには、窒素原子の代わりに、水素原子を用いることがある。したがって、工程(S30)においては、たとえば窒素イオンおよび水素イオンをドーパントとしてイオン注入法によりSi薄膜3の内部に注入させてもよい。
【0042】
なお、工程(S30)を行なう際においても、工程を行なう途上でSiCエピタキシャル層2の主表面が積極的に酸化されることを抑制するために、たとえばSiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で行なうことが好ましい。したがって、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で、窒素原子を注入させることができる方法であれば、上述した方法に限らず、他の方法を用いて工程(S30)を実施してもよい。
【0043】
次に、場合によってはSiO2薄膜を堆積させる工程(S40)を行なうことがある。具体的には、Si薄膜3の、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させる工程である。
【0044】
図4は、Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。図4におけるSiO2の薄膜としての堆積SiO2膜4は、窒素原子を注入されたSi薄膜3中の窒素原子が、Si薄膜3から見て、SiCエピタキシャル層2と反対側へ拡散し、SiCエピタキシャル層2と反対側の最表面の主表面から外部へ放出されるのを抑制させるために形成させるものである。すなわち、図4に示すように、Si薄膜3から見て、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上(図4における上側)に、堆積SiO2膜4が存在すれば、Si薄膜3中の窒素原子は、堆積SiO2膜4側に拡散したとしても、堆積SiO2膜4を形成するSi原子とO(酸素)原子との結合により移動を遮断されることになる。したがって、Si薄膜3中の窒素原子が、堆積SiO2膜4の、Si薄膜3と対向しない主表面(図4における上側の主表面)から外部へ放出されることを抑制させることができる。以上の役割を果たすための堆積SiO2膜4を形成させる工程が、工程(S40)である。
【0045】
この堆積SiO2膜4は、たとえばスパッタリング法を用いて堆積させてもよいし、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスやテトラエトキシシラン(TEOS)ガスを用いてプラズマCVD法により堆積させてもよい。
【0046】
上述したいずれの方法を用いても、500℃程度以下の温度にて処理を行なうことができる。したがって、これらの方法による工程(S40)を行なう途上で、SiCエピタキシャル層2の主表面が積極的に酸化される可能性は小さい。このように、工程(S40)を行なう場合においても、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で行なうことが好ましい。したがって、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で、堆積SiO2膜4を堆積させることができる方法であれば、上述した方法に限らず、他の方法を用いて工程(S40)を実施してもよい。
【0047】
工程(S40)で形成される堆積SiO2膜4は、形成した半導体装置のゲート絶縁膜を堅牢なものとするための酸窒化膜となりうるものである。しかし、少々の窒素原子が、形成中の半導体装置の薄膜の外部へ放出されても、十分な量の窒素原子がSi薄膜3の内部に存在していれば、界面準位密度を低減させるために十分な量の窒素原子を、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域へ供給させることができる。したがって、工程(S40)は、省略することができる。
【0048】
また、工程(S40)においては、上述した堆積SiO2膜4の代わりに、後工程にて実施する熱処理の温度に対する耐性を有する絶縁材料である、たとえば窒化アルミ(AlN)、酸化アルミ(Al2O3)、窒化シリコン(Si3N4)の薄膜を形成させてもよい。
【0049】
続いて、Si薄膜を酸化させる工程(S50)を行なう。これは、先の工程(S20)および工程(S30)にて形成された、窒素原子を注入されたSi薄膜3を酸化させることにより、Si薄膜3を酸化膜とする工程である。
【0050】
工程(S50)においても、上述した工程(S20)、(S30)、(S40)と同様に、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で処理を行なうことが好ましい。したがって、工程(S50)においては、熱酸化によりSi薄膜3を酸化させてもよいが、その場合、通常の熱酸化よりも低温である、たとえば600℃以上700℃以下の温度範囲にて行なうことが好ましい。また、ドライ酸素雰囲気中における熱酸化を行なう代わりに、ウェット酸素雰囲気中における熱酸化を行なってもよい。
【0051】
図5は、Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。図5においては、図4におけるSi薄膜3が酸化膜である酸化Si薄膜5となっている。また酸化Si薄膜5の内部には、イオン注入法により添加量を自在に制御された窒素原子が含有されている。
【0052】
そして、高温アニールを行なう工程(S60)を実施する。図6は、図5に示す形成中の半導体装置に対して、工程(S60)を行なった後における状態を示す概略断面図である。高温アニールを行なう工程(S60)を行なうことにより、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上(図6におけるSiCエピタキシャル層2の上側)には、窒化されたSiO2の薄膜である、窒化SiO2膜6が形成されている。また、堆積SiO2膜4も、工程(S60)により、窒化SiO2膜6に変化している。
【0053】
工程(S60)を行なう方法としては、具体的には、たとえば窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、その雰囲気中で酸化Si薄膜5が形成されたSiCエピタキシャル層2を高温アニール(高温にて加熱処理)することができる。窒素酸化物ガスとしては、たとえば比較的安価に入手できる一酸化窒素(NO)や一酸化二窒素(N2O)を用いることが好ましい。このようにすれば、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面(図6におけるSiCエピタキシャル層2の上側)を酸窒化、すなわち酸化と窒化とを同時に行なうことができる。NOやN2Oなどの窒素酸化物ガスに含まれる酸素原子による熱酸化と、窒素原子による窒化とを同時に行なうことができる。
【0054】
このように、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化させることにより、図6に示すように、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に窒化SiO2膜6が形成される。すると、工程(S60)においては、高温アニールによる熱酸化を行なっているため、SiCエピタキシャル層2と窒化SiO2膜6との界面付近の領域には、界面準位が高密度に発生する可能性がある。
【0055】
しかし、ここでは先の工程(S20)、(S30)、(S50)にて、窒化SiO2膜6の上層に、十分な量の窒素原子をイオン注入された酸化Si薄膜5が形成されている。このため、酸化Si薄膜5が存在する状態で、工程(S60)により、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化させることになる。すると、酸化Si薄膜5の内部に含まれる窒素原子が、拡散により移動して、SiCエピタキシャル層2と窒化SiO2膜6との界面付近の領域まで容易に到達する。そして、当該界面付近の領域に到達した窒素原子が、たとえばSiCエピタキシャル層2中の炭素原子の空孔(ダングリングボンドを形成する)に侵入して、炭素原子の空孔を窒素原子で充填(置換)する。このようにして、SiCのダングリングボンドを窒素原子で終端することにより、ダングリングボンドの密度を低減させる。ダングリングボンドの密度を低減させれば、それに伴って当該界面付近の領域における界面準位密度を低減させることができる。
【0056】
図7は、工程(S60)に含まれる各工程を示すフローチャートである。先述したように、高温アニールを行なう工程(S60)とは、窒素酸化物ガスを用いて、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化する工程である。したがって、図7に示すように、工程(S60)には、SiCエピタキシャル層を熱酸化させる工程(S61)およびSiCエピタキシャル層を窒化させる工程(S62)を含み、これらは同時に行なわれる。
【0057】
また、先述した工程(S40)により、酸化Si薄膜5(Si薄膜3)の、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上(図7における酸化Si薄膜5の上側)に、堆積SiO2膜4を形成させる場合があるが、この場合、堆積SiO2膜4も、工程(S61)および工程(S62)と同時に、工程(S60)により付随的に窒化させて、窒化SiO2膜6とすることができる。さらに、堆積SiO2膜4は既に酸化膜の形相をなしているが、熱酸化によりさらに酸化させて良好な膜質の膜へと改質することもできる。その結果、堆積により形成させた酸化膜よりも絶縁性に優れた、稠密性のある堅牢な熱酸化膜である窒化SiO2膜6とすることができる。以上より、工程(S61)および工程(S62)と同時に、堆積SiO2膜4に対してはSiO2薄膜を熱酸化させる工程(S63)およびSiO2薄膜を窒化させる工程(S64)を実施させることができる。
【0058】
さらに、先述した工程(S20)、(S30)、(S50)にて形成させた酸化Si薄膜5についても、既にイオン注入により窒素原子が含有されているが、工程(S60)を行なうことにより付随的に窒化させることができる。また、酸化Si薄膜5についても、既に酸化膜の形相をなしているが、高温での熱酸化によりさらに酸化させ、より絶縁性に優れた、稠密性のある堅牢な熱酸化膜とすることができる。以上より、図7に示すように、工程(S61)〜工程(S64)と同時に、Si薄膜を熱酸化させる工程(S65)およびSi薄膜を窒化させる工程(S66)をも実施させることができる。
【0059】
なお、ここでの高温アニールにおける加熱温度としては、酸窒化を行なうことにより形成される熱酸化膜を稠密化させ、絶縁性に優れた堅牢な酸化膜とするために、1000℃以上1300℃以下の温度とすることが好ましい。1000℃以下の温度で行なうと、SiCエピタキシャル層2の酸化がスムーズに行なえない場合がある。なお、上述した加熱温度は、1100℃以上1200℃以下とすることがさらに好ましい。
【0060】
以上に述べた、図7に示す工程(S61)〜工程(S66)を、工程(S60)としてすべて同時に行なうことが可能である。窒素酸化物であるたとえばNOやN2Oのガスを用いてSiCエピタキシャル層2の一方の主表面上を酸窒化することにより、このような処理を行なうことができる。このようにすれば、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上を酸窒化すると、同時にSiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に存在する薄膜層についてもすべて酸窒化することができる。このため、製造工程数を削減することができ、製造工程のタクトタイムを短縮させることができる。
【0061】
また、上述した製造方法を用いることにより形成される窒化SiO2膜6には高温での熱酸化により稠密化された、絶縁性に優れる酸化膜としての性質と、拡散により容易にSiCエピタキシャル層2と窒化SiO2膜6との界面付近の領域に窒素原子を供給するための窒化膜としての性質とを兼ねている。以上により、上述した製造方法を用いることにより、少ない工程数にて、絶縁性に優れ、界面準位を低減させた絶縁膜を、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に形成させることができる。
【0062】
なお、本発明の実施の形態においては、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に形成される絶縁膜が、SiO2に窒素原子を含むものとなっているが、この窒素原子は、絶縁膜としての正常な機能を妨げるものではない。
【0063】
図8は、SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に存在する薄膜層がすべて酸窒化された状態を示す概略断面図である。図8に示すように、工程(S60)に含まれる工程(S61)〜工程(S66)すべてを行なえば、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上(図における上側)に形成されていた堆積SiO2膜4や酸化Si薄膜5がすべて窒化SiO2膜6となり、これらすべてを1層の堅牢な窒化SiO2膜6とすることができる。
【0064】
(実施の形態2)
図9は、Si薄膜の、SiCエピタキシャル層と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態で、Si薄膜の内部に窒素原子を注入させた状態を示す概略断面図である。先述した実施の形態1においては、工程(S30)として、図3に示すように、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上にSi薄膜3を堆積させた状態で、Si薄膜3の内部に窒素原子をたとえばイオン注入法により注入させる。その後に、図4に示すSiO2の薄膜としての堆積SiO2膜4を形成させる工程(S40)を行なっている。しかし、図9中に下向きの矢印で示すように、SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)として、堆積SiO2膜4を形成させた後に、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)として、Si薄膜3の内部に窒素原子を注入させる工程を行なってもよい。ここでも窒素原子を注入させる方法としては、たとえばイオン注入法を用いることができる。
【0065】
先述したように、図9における堆積SiO2膜4は、窒素原子を注入されたSi薄膜3中の窒素原子が、Si薄膜3から見て、SiCエピタキシャル層2と反対側へ拡散し、SiCエピタキシャル層2と反対側の最表面の主表面から外部へ放出されるのを抑制させるために形成させるものである。しかし、窒素原子のイオン注入を行なう際に、窒素原子に与えられるエネルギー値を調節することにより、イオン注入法によりイオン注入装置から放出される窒素原子は、堆積SiO2膜4の内部を容易に通過して、Si薄膜3の内部に到達させ、そこに捕捉させることができる。
【0066】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の実施の形態1に順ずる。
【0067】
(実施の形態3)
たとえば本発明の実施の形態1においては、先述したように、Si薄膜を酸化させる工程(S50)として、窒素原子を注入されたSi薄膜3のみを酸化させることにより、Si薄膜3を酸化膜として形成させる工程を行なっている。たとえばSi薄膜3を形成する多結晶Siは、SiCよりも低温にて酸化することができる。このため、本発明の実施の形態1においては、Si薄膜3を、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度(低温)にて、SiCエピタキシャル層2よりも先にたとえば熱酸化させている。
【0068】
しかし、Si薄膜3は本来、SiCエピタキシャル層2を酸窒化させる際に、その内部にあらかじめ注入させた窒素原子を、SiCエピタキシャル層2と、その一方の主表面上に形成される窒化SiO2膜6(図6参照)との界面付近の領域に供給させるためのものである。したがって、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化させる工程(S60)を行なう段階にて、必ずしもSi薄膜3が酸化されている必要はない。実施の形態1に示すように、あらかじめ工程(S50)を行なうことにより、Si薄膜3を酸化膜である酸化Si薄膜5とさせたとしても、続く高温アニールを行なう工程(S60)において、図2に示すSi薄膜を熱酸化させる工程(S65)が行なわれることにより、酸化Si薄膜5は再度熱酸化されることになる。
【0069】
そこで、本発明の実施の形態3においては、以下の手順により、半導体装置の製造を行なう。まず、本発明の実施の形態1と同様に、工程(S10)で形成させたSiCエピタキシャル層2の一方の(SiC基板1と対向しない)主表面上にSi薄膜3を堆積させる工程(Si薄膜を堆積させる工程(S20))を行なう。そして、工程(S20)で形成させたSi薄膜3の内部に、窒素原子を注入させる工程(Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30))を行なう。場合によってはSi薄膜3の、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させて堆積SiO2膜4(図4参照)を形成させる(SiO2薄膜を堆積させる工程(S40))。そして、高温アニールを行なう工程(S60)により、実施の形態1における工程(S61)〜工程(S66)(図2参照)を行なう。このようにすれば、(酸化されていない)Si薄膜3を酸化させる工程(S50)と、工程(S60)によりSiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化する工程とを同時に行なうことができる。
【0070】
SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)を行なった場合には、高温アニールを行なう工程(S60)において、図2に示すSiO2薄膜を窒化させる工程(S64)をも同時に行なうことになる。また、SiO2薄膜としての堆積SiO2膜4は既に酸化膜の形相をなしているが、SiO2薄膜を熱酸化させる工程(S63)の熱酸化により、さらに酸化させることもできる。
【0071】
本発明の実施の形態3においても、本発明の実施の形態1と同様に、Si薄膜を堆積させる工程(S20)、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)、SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)については、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度において行なうことが好ましい。
【0072】
本発明の実施の形態3においても、本発明の実施の形態1と同様に、高温アニールを行なう工程(S60)においては、SiCエピタキシャル層2を酸窒化させるために、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用いることが好ましい。さらに、窒素酸化物ガスとしては、一酸化窒素(NO)または一酸化二窒素(N2O)を用いることが好ましい。また、工程(S60)における加熱温度としては、1000℃以上1300℃以下とすることが好ましく、1100℃以上1200℃以下とすることがさらに好ましい。
【0073】
以上に述べた本発明の実施の形態3のように、Si薄膜3のみを低温での熱酸化により酸化させる工程である、Si薄膜を酸化させる工程(S50)を省略させれば、高温アニールを行なう工程(S60)にて、(酸化されていない)Si薄膜3を含む、SiCエピタキシャル層2の上層部に存在するすべての薄膜を同時に酸窒化させることができる。このため、たとえば本発明の実施の形態1における製造方法よりもさらに製造工程数を削減することができるので、さらに製造工程のタクトタイムを短縮させることができる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態3を行なう際においても、本発明の実施の形態2に示すように、先に工程(S40)を行なった後に工程(S30)を行なってもよい。
【0075】
本発明の実施の形態3は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の実施の形態1に順ずる。
【実施例1】
【0076】
先述した本発明の実施の形態1を応用して、実用的な半導体装置としてのSiC−MOSFETを形成する場合の手順を以下に説明する。
【0077】
図10は、SiC基板の一方の主表面上にp型SiCエピタキシャル層を形成させた状態を示す概略断面図である。図10に示すように、p+型SiC基板11の一方の主表面上(図10におけるp+型SiC基板11の上側)に、膜厚が5μm、不純物濃度が5×1015cm−3であるp型SiCエピタキシャル層12を形成する。
【0078】
図11は、SiCエピタキシャル層の内部にソース領域とドレイン領域を形成させた状態を示す概略断面図である。p型SiCエピタキシャル層12の内部に、n+型にドーピングされたソース領域17およびドレイン領域18を形成させるため、フォトリソグラフィーとエッチングにより、図11に示すように、ソース領域17およびドレイン領域18となるマスクパターンを形成する。ここで、フォトリソグラフィーに用いるマスクの材料としてはたとえば珪素酸化膜(SiO2)などを用いることができる。
【0079】
続いて、先にソース領域17およびドレイン領域18となるマスクパターンを形成させた領域に対して、n+型ドーパントとしてのリン(P)原子のドーピングを行なう。P原子のドーピングは、たとえば先述したイオン注入法を用いて行なうことができる。ここで、ドーピングを行なう量は、1×1015cm−2とすることが好ましい。以上により、図11に示すソース領域17およびドレイン領域18がn+型ドーパントとしてのP原子によりドーピングされ、それぞれソース領域17およびドレイン領域18となる。これらは、次に述べる活性化アニール処理により、それぞれソース領域17およびドレイン領域18としての電気的機能を備えることになる。
【0080】
次に、ソース領域17およびドレイン領域18中に注入された、不純物としてのn+型ドーパントであるP原子を活性化するために、図11に示す形成中の半導体装置の活性化アニールを行なう。活性化アニール処理は、たとえば1700℃の高温で行なう。このようにすれば、イオン注入によりソース領域17およびドレイン領域18の内部にドーピングされた不純物であるP原子を活性化することができる。
【0081】
図12は、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、熱酸化膜を施した状態を示す概略断面図である。上述した活性化アニール処理は、1700℃の高温で行なっている。このため、処理を行なう過程で、雰囲気中に含まれる酸素成分により、図11に示す形成中の半導体装置の、たとえばp型SiCエピタキシャル層12の主表面上(図11における上側)などが酸化を起こしている。そこで、図12に示すように、この酸化膜を除去するために、いったんp型SiCエピタキシャル層12を熱酸化することにより、熱酸化膜22を形成させる処理を行なってもよい。
【0082】
その後、たとえばバッファードフッ酸を用いてp型SiCエピタキシャル層12の主表面上に形成されている酸化膜を除去する処理を行なってもよい。この際、酸化膜と同時に、p型SiCエピタキシャル層12の主表面上のうち、結晶性の良好でない領域についても、バッファードフッ酸によるエッチングにより除去させることができる。そして、酸化膜などを除去されたSiCエピタキシャル層12の表面に対して有機洗浄、酸洗浄、RCA洗浄などの洗浄処理を行なうことにより、表面の洗浄化を行なう。以上に述べた処理を行なうことにより、図12に示す形成中の半導体装置は、図面上は最終的に図11に示す状態に戻る。
【0083】
そして次にp型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上に、たとえば多結晶のSiの薄膜を堆積する。この工程は、先述した工程(S20)に対応する。図13は、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、多結晶のSiの薄膜を堆積した状態を示す概略断面図である。ここではたとえば、シラン(SiH4)ガスを用いて、減圧CVD法により多結晶のSiの薄膜(Si薄膜13)を50nm程度堆積させることが好ましい。また、当該処理を行なう際に、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面が酸化(窒化)しないようにするために、当該処理はたとえば600℃以上700℃以下の雰囲気中にて行なうことが好ましい。
【0084】
次に、図13に下向きの矢印で示すように、Si薄膜13の内部に、たとえばイオン注入法を用いて、窒素原子のドーピングを行なう。この工程は、先述した工程(S30)に対応する。
【0085】
Si薄膜13の内部に窒素原子をドーピング(注入)させた状態で、このSi薄膜13の一方の主表面上(図13における上側)に、SiO2の薄膜を堆積させる工程を行なう。この工程は、先述した工程(S40)に対応する。図14は、Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。図14におけるSiO2の薄膜としての堆積SiO2膜14は、たとえばシラン(SiH4)ガスを用いて、プラズマCVD法により50nm程度堆積させることが好ましい。
【0086】
次に、先の工程にて窒素原子のドーピングが行なわれたSi薄膜13をたとえば酸化雰囲気中で加熱することにより、Si薄膜13のみを熱酸化させる工程を行なう。この工程は、先述した工程(S50)に対応する。図15は、Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。このとき、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面が酸化(窒化)しないようにするために、図15に示す形成中の半導体装置を配置させる雰囲気の温度をたとえば800℃としておくことが好ましい。また、ドライ酸素雰囲気中における熱酸化を行なう代わりに、ウェット酸素雰囲気中における熱酸化を行なってもよい。以上のようにすれば、Si薄膜13は酸化Si薄膜15となる。
【0087】
続いて先述した工程(S60)に対応する工程である、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上を酸窒化させる工程を行なう。図16は、図15に示す形成中の半導体装置に対して、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上を酸窒化させた後における状態を示す概略断面図である。図16に示すように、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上(図における上側)には、p型SiCエピタキシャル層12が酸窒化されることにより、窒化SiO2膜16が形成される。このとき同時に、堆積SiO2膜14についても酸化による稠密化および、窒化がなされることにより、図16に示すように窒化SiO2膜16となる。当該処理は、たとえば1100℃程度の高温に加熱させたNOまたはN2Oガス雰囲気中に、形成中の半導体装置を配置させて加熱処理を行なうことにより行なうことができる。なお、図16における酸化Si薄膜15についても、同様に酸化による稠密化および、窒化がなされることにより窒化SiO2膜16となり、図16中に示す3層の窒化SiO2膜16、酸化Si薄膜15、窒化SiO2膜16は、先の図8に示すように1層の窒化SiO2膜16となるように処理を行なってもよい。
【0088】
図17は、本実施例における半導体装置を完成させた状態を示す概略断面図である。図16にてp型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上に、窒化SiO2膜16が形成された状態で、たとえば金属薄膜の蒸着、フォトリソグラフィーやエッチングを施す。このようにすれば、図17に示すように、ソース領域17の主表面上(図の上側)にコンタクト電極としてのソース電極19、ドレイン領域18の主表面上にはコンタクト電極としてのドレイン電極20、窒化SiO2膜16の最表面上(図の上側)にはコンタクト電極としてのゲート電極21が形成される。このようにして、図17に示す半導体装置としての、nチャネルSiC−MOSFETが完成する。この半導体装置にパシベーション膜を形成させ、基板上に実装させる工程を行なう。
【0089】
以上の手順により形成された半導体装置であるSiC−MOSFETは、本発明の実施の形態1に開示する半導体装置の製造方法に則り形成させている。したがって、たとえば窒化SiO2膜16中に含有される窒素原子が、拡散により、p型SiCエピタキシャル層12と窒化SiO2膜16との界面付近の領域に容易に移動することが可能となる。このため、当該界面付近の領域に存在する、たとえば炭素原子の空孔によるダングリングボンドを窒素原子で終端させることにより、容易にかつ確実に、界面準位密度を低減させることができる。
【0090】
なお、以上の実施例1においては、p+型SiC基板11の一方の主表面上にp型SiCエピタキシャル層12および、n+型のドーパントが注入されたソース領域17、ドレイン領域18が形成された構成の半導体装置を開示している。しかし、上述したn型とp型とをすべて逆転させた構成の半導体装置としてもよい。
【0091】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明における半導体装置の製造方法は、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素を用いた半導体装置の製造方法として、特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法における工程の手順を示すフローチャートである。
【図2】SiC基板の一方の主表面上に、SiCのエピタキシャル層を形成させる工程を示す概略断面図である。
【図3】SiCエピタキシャル層の一方の主表面上にSi薄膜を形成させた状態を示す概略断面図である。
【図4】Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。
【図5】Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。
【図6】図5に示す形成中の半導体装置に対して、工程(S60)を行なった後における状態を示す概略断面図である。
【図7】工程(S60)に含まれる各工程を示すフローチャートである。
【図8】SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に存在する薄膜層がすべて酸窒化された状態を示す概略断面図である。
【図9】Si薄膜の、SiCエピタキシャル層と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態で、Si薄膜の内部に窒素原子を注入させた状態を示す概略断面図である。
【図10】SiC基板の一方の主表面上にp型SiCエピタキシャル層を形成させた状態を示す概略断面図である。
【図11】SiCエピタキシャル層の内部にソース領域とドレイン領域を形成させた状態を示す概略断面図である。
【図12】p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、熱酸化膜を施した状態を示す概略断面図である。
【図13】p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、多結晶のSiの薄膜を堆積した状態を示す概略断面図である。
【図14】Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。
【図15】Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。
【図16】図15に示す形成中の半導体装置に対して、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上を酸窒化させた後における状態を示す概略断面図である。
【図17】本実施例における半導体装置を完成させた状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 SiC基板、2 SiCエピタキシャル層、3 Si薄膜、4 堆積SiO2膜、5 酸化Si薄膜、6 窒化SiO2膜、11 p+型SiC基板、12 p型SiCエピタキシャル層、13 Si薄膜、14 堆積SiO2膜、15 酸化Si薄膜、16 窒化SiO2膜、17 ソース領域、18 ドレイン領域、19 ソース電極、20 ドレイン電極、21 ゲート電極、22 熱酸化膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関するものであり、より特定的には、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程を行なった上で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程を行なう半導体装置の製造方法、および上記製造方法により製造した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置が使用される装置の高性能化に伴い、半導体装置に対しては動作の高速化、低損失化がますます要求されるようになっている。そのためには、半導体装置には高い耐電圧と低損失とを両立させることが重要である。
【0003】
たとえばMOSFETなどの半導体装置(半導体素子)を形成するにあたり、半導体基板として炭化珪素(SiC)が利用される。この理由としてSiCは、珪素(シリコン:Si)と比較してバンドギャップ(禁止帯幅)が約3倍と広く、絶縁破壊電界強度が約10倍高いため、耐熱性や耐電圧性に優れているとともに、電子ドリフト速度が大きいことが挙げられる。さらに、SiCには、半導体装置を不活性化するために使用することができる安定した酸化物、すなわち珪素酸化膜(SiO2)を容易に形成することができる。以上の理由により、SiCは、Siに置き換わる高速で超低電力損失なたとえば高周波パワーデバイスを形成する半導体材料として注目されており、世界中で研究・開発が進められている。
【0004】
しかし、上述したSiCによる半導体装置は、Siによる半導体装置と比較して、SiCの一方の主表面上に形成したSiO2の薄膜と、SiCとの界面付近の領域において界面準位密度が高いという問題がある。たとえば、nチャネルMOSFETにおいては、導電帯近傍のエネルギー領域における界面準位密度が特に高い。なお、以下では主表面とは、薄膜や素子などを形成させるための、最も面積の大きい主要な面のことを指す。
【0005】
上述した界面準位密度に関して、たとえばSiCの一方の主表面上に熱酸化によりSiO2の薄膜を形成させる場合には、酸化過程において余剰な炭素(C)原子や、ダングリングボンドと呼ばれる未結合の原子が、SiCとSiO2との界面付近の領域において形成されることがある。このダングリングボンド等が、界面準位として多数存在し得るため、界面準位密度が高くなることがある。界面準位は、SiCを用いた半導体装置のチャネル移動度を低下させ、損失が増大する要因となっていることがわかっている。そこで、たとえば特開平7−66192号公報(以下、「特許文献1」)においては、SiCの一方の主表面上に直接SiO2の薄膜を形成させる工程を行なう代わりに、SiCの一方の主表面上にまずSiからなる薄膜を形成し、その上でSi薄膜を酸化することにより、SiCとの界面付近における界面準位密度を低減させた高品質なSiO2の薄膜を形成する製造方法が開示されている。さらに、たとえば以下に記す非特許文献1においては、たとえば通常の熱酸化処理によりSiO2の薄膜を形成させた後に、一酸化窒素(NO)雰囲気中で熱処理を行なうことにより、界面準位密度を低減させることができることが述べられている。
【特許文献1】特開平7−66192号公報
【非特許文献1】G.Y.Chung et al、「Effect of nitric oxide annealing on the interface trap densities near the band edges in the 4H polytype of silicon carbide」、APPLIED PHYSICS LETTERS、第76巻、(米国)、2000年3月27日、p.1713−1715
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した非特許文献1に示す、NO雰囲気中で熱処理を行なうことにより、SiCとSiO2薄膜との界面付近の領域における界面準位密度を低減させようとする方法は、たとえばSiCの余剰なC原子によるダングリングボンドが、炭素と原子半径が近いNOガスの窒素原子により終端されることにより、ダングリングボンドの密度を低減させることに基づく。たとえばSiCの伝導帯付近のエネルギー領域については、非特許文献1に示すように、NO雰囲気中での熱処理を行なうことにより、NO雰囲気中での熱処理を行なわない場合に比べて界面準位密度を大幅に低減させることができている。しかしながら非特許文献1にて、価電子帯付近のエネルギー領域については、逆にNO雰囲気中での熱処理を行なうことにより、NO雰囲気中での熱処理を行なわない場合に比べて界面準位密度が増加する結果となっている。非特許文献1においては、1気圧中でNOガスを1分間に0.5リットルずつ流入させながら1150℃で熱処理を行なった結果が示されているが、上述したように界面準位密度は十分に低減できていない。その結果、当該方法を用いて形成させたSiO2/SiC構造を備える、たとえばMOSFETなどの半導体装置は、界面準位密度の低減が不十分であり、半導体装置のオン抵抗におけるチャネル抵抗成分は依然として大きいものと思われる。
【0007】
また、特許文献1においては、高品質なSiO2の薄膜を形成させた半導体装置(MOSFET)における、ドレイン電流値の増加を示すデータが開示されている。しかしながら、昨今の半導体装置に期待される、高速で超低電力損失なたとえば高周波パワーデバイスを実現するためには、さらなる界面準位密度の低減や、ドレイン電流値の増加が必要と考えられる。
【0008】
本発明は、上述した各問題に鑑みなされたものであり、その目的は、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素を用いた半導体装置の製造方法および、上述した製造方法を用いて製造した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面における半導体装置の製造方法は、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、窒素原子を注入させた珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程とを備えている。そして、酸化膜が存在する状態で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程とを備える、半導体装置の製造方法である。
【0010】
炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる前に、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に、窒素原子を注入させた珪素薄膜を形成させておく。その上で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる。このようにすれば、珪素薄膜中の窒素原子が、珪素薄膜中および、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化したときに形成される酸窒化層中を容易に拡散することができる。したがって窒素原子が、当該酸窒化層と炭化珪素エピタキシャル層との界面付近の領域に容易に到達することができる。当該界面付近の領域に到達した窒素原子が、たとえば炭化珪素中の炭素原子の空孔に侵入して、炭化珪素のダングリングボンドを終端することにより、ダングリングボンドの密度を低減させる。
【0011】
上述したように、形成中の半導体装置を構成する薄膜の内部に窒素原子を拡散させる方法を用いた方が、形成中の半導体装置を窒素雰囲気中に曝露させる方法を用いるよりも、容易にかつ確実に、炭化珪素エピタキシャル層と、その一方の主表面上に形成させた酸窒化層(絶縁膜層)との界面付近の領域に存在するダングリングボンドに窒素原子を到達させることができる。したがって、ダングリングボンドを窒素原子で終端させることにより、容易にかつ確実に、界面準位密度を低減させることができる。
【0012】
また、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる際には、たとえばイオン注入などの方法を用いるが、この方法を用いれば、注入させたい窒素原子の量を任意に制御することができる。このため、ダングリングボンドを終端させるために必要な量の窒素原子を注入させることにより、界面準位密度を低減させるために十分な量の窒素原子を、炭化珪素エピタキシャル層の界面付近の領域へ供給させることができる。
【0013】
なお、上述した半導体装置の製造方法においては、珪素薄膜の、炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備えていてもよい。また、上述した一方の主表面を酸窒化させる工程では、上述した窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより形成させた酸化膜および、堆積させた珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なってもよい。
【0014】
上述した珪素酸化膜は、窒素原子を注入させた珪素薄膜中の窒素原子が、珪素薄膜から見て、炭化珪素エピタキシャル層と反対側へ拡散し、炭化珪素エピタキシャル層と反対側の最表面の主表面から外部へ放出されるのを抑制させるために形成させるものである。この珪素酸化膜が、窒素原子を形成中の半導体装置の薄膜の内部に捕捉し、形成中の半導体装置の薄膜の外部へ放出するのを抑制するガードの役割を有する。そのため、窒素原子を、より確実に、炭化珪素エピタキシャル層(炭化珪素エピタキシャル層との界面)側へ移動させることができる。
【0015】
ここで、窒素原子を注入させた珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程(珪素薄膜を酸化させる工程)においては、たとえば熱酸化を用いて酸化膜を形成させてもよい。しかし、この珪素薄膜を酸化させる工程および、上述した珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、珪素酸化膜を堆積させる工程とは、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なうことがより好ましい。したがって、熱酸化より低温で珪素薄膜を酸化させることができる代替手段を用いて、珪素薄膜を酸化させる工程を行なってもよい。代替手段としては、たとえば酸素プラズマ処理などが挙げられる。酸素プラズマ処理を用いれば、熱酸化を用いた場合よりも十分低い温度で表面を酸化させることができる。
【0016】
このように、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度で、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程の前工程を行なう。そのようにすれば、上述した前工程を行なう際には、炭化珪素エピタキシャル層が酸化ないし窒化することを抑制することができる。上述したたとえば窒素原子を注入させた酸化膜が存在しない状態で、炭化珪素エピタキシャル層が酸化されると、その際に炭化珪素エピタキシャル層とその酸化により形成されるたとえば酸化物層との界面付近の領域において界面準位密度が高密度に発生する可能性がある。したがって、上述したたとえば窒素原子を注入させた酸化膜を形成させる工程等を完了させた後に、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面に対して酸窒化を行なうことが好ましい。このようにすれば、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化する際には、窒素原子を注入された酸化膜が存在することになる。このため、先述したように、窒素原子を炭化珪素エピタキシャル層の界面付近に存在するダングリングボンドに容易に到達させることができる。その結果、界面準位密度を低下させることができる。
【0017】
ところで、一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、酸化膜が形成された炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させることもできる。窒素と酸素との両方を含む窒素酸化物としては、たとえば一酸化窒素や一酸化二窒素を挙げることができるが、これらは他の窒素酸化物よりも安価で入手できるため、製造工程のコスト削減に寄与することができる。また、窒素と酸素との両方を含む窒素酸化物を用いて、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面の酸窒化(酸化および窒化)、および窒素原子を注入された珪素薄膜(窒素原子を注入した後で行なう酸化により酸化膜となる)、さらに珪素薄膜の、炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に堆積させる珪素酸化膜の窒化をすべて同時に行なうことができる。このため、製造工程のタクトタイムを大幅に短縮させることができる。
【0018】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程とを備えている。そして、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程とを備えており、珪素薄膜を酸化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう、半導体装置の製造方法である。
【0019】
本発明の一の局面における半導体装置の製造方法においては、窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程(珪素薄膜を酸化させる工程)を行なった後に、炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程を行なう。しかし、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、珪素薄膜を酸化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう。この点においてのみ、両半導体装置の製造方法は異なっている。したがって、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、本発明の一の局面における半導体装置の製造方法よりもさらに、製造工程数を削減することができるため、製造工程のタクトタイムを短縮させることができる。
【0020】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においても、珪素薄膜の、炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備えていてもよい。また、上述した一方の主表面を酸窒化させる工程では、上述した堆積させた珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なってもよい。
【0021】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においては、先述のとおり、珪素薄膜を酸化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう。したがって、一方の主表面を酸窒化させる工程と珪素酸化膜を窒化させる工程とを同時に行なうことにより、珪素薄膜を酸化させる工程と、珪素酸化膜を窒化させる工程と、一方の主表面を酸窒化させる工程とのすべてを同時に行なうことができる。
【0022】
また、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においても、珪素薄膜を堆積させる工程と、珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、珪素酸化膜を堆積させる工程とを、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なうことが好ましい。このように、炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度で、珪素薄膜を酸化させる工程および炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面を酸窒化させる工程の前工程を行なう。そのようにすれば、上述した前工程を行なう際には、炭化珪素エピタキシャル層が酸化ないし窒化することを抑制することができるため、先述した本発明の一の局面における半導体装置の製造方法と同様に、界面準位密度を低下させることができる。
【0023】
また、本発明の他の局面における半導体装置の製造方法においても、一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させることもできる。
【0024】
また、本発明の一の局面および他の局面における半導体装置の製造方法においては、先述したように、一方の主表面を酸窒化させる工程では、上述した窒素原子を注入された珪素薄膜を酸化させることにより形成させた酸化膜および、堆積させた珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なってもよい。ただし、一方の主表面を酸窒化させる際に、窒素と酸素との両方を含む窒素酸化物を用いるため、同時に窒化される上述した酸化膜および珪素酸化膜は、結果的に同時に酸化されることもある。したがって、一方の主表面を酸窒化させる工程において、上述した酸化膜および珪素酸化膜が同時に酸窒化される条件で処理を行なってもよい。
【0025】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の一の局面における半導体装置の製造方法に順ずる。
【0026】
なお、本発明の半導体装置の各製造方法においては、炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理する際の加熱温度としては1000℃以上1200℃以下とすることが好ましい。このようにすれば、たとえば一酸化窒素や一酸化二窒素による酸窒化反応をスムーズに行なうことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素を用いた半導体装置の製造方法および、上述した製造方法を用いて製造した半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法における工程の手順を示すフローチャートである。先述したように、本発明における半導体装置の製造方法は、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素(SiC)を用いた半導体装置の製造方法である。ここでいう半導体装置とはたとえば、SiCの一方の主表面上にたとえばSiO2などの絶縁膜を形成させ、SiCとSiO2との界面付近の領域における界面準位の密度を低減させたMOSFETのことである。
【0030】
その工程としては、図1に示すように、SiCエピタキシャル層を堆積させる工程(S10)、Si薄膜を堆積させる工程(S20)、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)、SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)、Si薄膜を酸化させる工程(S50)、高温アニールを行なう工程(S60)がある。実際にSiCを用いた半導体装置を製造する際における処理は、これらの工程を適宜組み合わせることにより実施される。
【0031】
まず、SiCエピタキシャル層を堆積させる工程(S10)を行なう。これは、半導体装置としてたとえば横型MOSFETを形成する場合においてはチャネルになる層を、半導体装置としてたとえば縦型MOSFETを形成する場合においてはドリフト層として用いる、SiCエピタキシャル層を堆積させることにより形成する工程である。
【0032】
図2は、SiC基板の一方の主表面上に、SiCのエピタキシャル層を形成させる工程を示す概略断面図である。図2に示す、SiCエピタキシャル層2を形成させるSiC基板1は、p型のSiCであってもよいし、n型のSiCであってもよい。ただし、SiC基板1としてたとえばp型のSiCを用いた場合には、SiCエピタキシャル層2を横型MOSFETのnチャネル層として用いる場合は、SiCエピタキシャル層2についてはn型のSiCとする方がより好ましい。なお、SiC基板1としてたとえばn型のSiCを用いて、SiCエピタキシャル層2を横型MOSFETのnチャネル層として用いる場合は、たとえば横型MOSFETのソース近傍の領域に電位固定用のp+領域を設けることが好ましい。
【0033】
また、ここでSiCエピタキシャル層2を形成させるためには、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスおよびプロパン(C3H8)ガスを用い、キャリアガスとして水素(H2)ガスを採用することができる。また、p型のSiCエピタキシャル層2を形成するためのp型不純物源としては、たとえばジボラン(B2H6)やトリメチルアルミニウム(TMA)を採用することができる。また、n型のSiCエピタキシャル層2を形成するためのn型不純物源としては、たとえば窒素(N2)ガスを採用することができる。
【0034】
上述したSiCエピタキシャル層2を形成させる方法は、非金属材料の水素化物ガスを加熱したSiC基板1の主表面上に吹きつけ、熱分解させて半導体結晶を得る、CVD法である。
【0035】
次に、Si薄膜を堆積させる工程(S20)を行なう。これは具体的には、実際に形成させる半導体装置における、SiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域に供給させる窒素原子を添加させるために用いるSi薄膜を、工程(S10)で形成させたSiCエピタキシャル層2の一方の(SiC基板1と対向しない)主表面上に堆積させる工程である。
【0036】
図3は、SiCエピタキシャル層の一方の主表面上にSi薄膜を形成させた状態を示す概略断面図である。図3に示すように、珪素(シリコン:Si)からなるSi薄膜3を、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に形成させる。Si薄膜3は、用途に応じてp型のSiとしても、n型のSiとしてもよい。
【0037】
Si薄膜3は、多結晶のSiであってもよいし、非晶質のSiであってもよい。このSi薄膜3を形成させる方法としては、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスを用いた減圧CVDにより多結晶のSi薄膜3を堆積させる方法を用いてもよい。あるいは、たとえばスパッタリング法による非晶質のSi薄膜3を堆積させる方法を用いてもよい。これらの方法ではいずれも、Si薄膜3を堆積させる際には、SiCエピタキシャル層2を700℃程度以下の温度に加熱すればよい。この加熱温度はSiCエピタキシャル層2が酸化される温度よりも低いため、これらの方法を用いてSi薄膜3を堆積させる場合には、SiCエピタキシャル層2の主表面が酸化されることはない。
【0038】
つまり、上述したように、工程(S20)を行なう際に、たとえばSiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で行なうことが好ましい。このようにすれば、たとえば工程(S20)を行なう時点のように、SiCエピタキシャル層2とその主表面上に形成されるSiO2の薄膜との界面付近の領域に対して、供給しうる窒素原子が存在しない状態において、SiCエピタキシャル層2の主表面が積極的に酸化されることにより、その界面付近の領域に界面準位が高密度に発生する可能性を小さくすることができる。したがって、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で、Si薄膜3を堆積させることができる方法であれば、上述した方法に限らず、他の方法を用いて工程(S20)を実施してもよい。
【0039】
続いて、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)を実施する。これは具体的には、工程(S20)で形成させたSi薄膜3の内部に、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域に供給させるための窒素原子を注入させる工程である。
【0040】
Si薄膜3の内部に窒素原子を注入させるために、たとえば窒素イオンをイオン注入法により、図3中に下向きの矢印で示すように、Si薄膜3の内部にドーパントとして注入させる。イオン注入法を用いれば、注入させたい窒素原子の量を任意に制御させることができる。このため、ダングリングボンドを終端させるために必要な量の窒素原子を注入させることにより、界面準位密度を低減させるために十分な量の窒素原子を、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域へ供給させることができる。
【0041】
なお、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域に形成されるダングリングボンドを終端させるためには、窒素原子の代わりに、水素原子を用いることがある。したがって、工程(S30)においては、たとえば窒素イオンおよび水素イオンをドーパントとしてイオン注入法によりSi薄膜3の内部に注入させてもよい。
【0042】
なお、工程(S30)を行なう際においても、工程を行なう途上でSiCエピタキシャル層2の主表面が積極的に酸化されることを抑制するために、たとえばSiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で行なうことが好ましい。したがって、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で、窒素原子を注入させることができる方法であれば、上述した方法に限らず、他の方法を用いて工程(S30)を実施してもよい。
【0043】
次に、場合によってはSiO2薄膜を堆積させる工程(S40)を行なうことがある。具体的には、Si薄膜3の、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させる工程である。
【0044】
図4は、Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。図4におけるSiO2の薄膜としての堆積SiO2膜4は、窒素原子を注入されたSi薄膜3中の窒素原子が、Si薄膜3から見て、SiCエピタキシャル層2と反対側へ拡散し、SiCエピタキシャル層2と反対側の最表面の主表面から外部へ放出されるのを抑制させるために形成させるものである。すなわち、図4に示すように、Si薄膜3から見て、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上(図4における上側)に、堆積SiO2膜4が存在すれば、Si薄膜3中の窒素原子は、堆積SiO2膜4側に拡散したとしても、堆積SiO2膜4を形成するSi原子とO(酸素)原子との結合により移動を遮断されることになる。したがって、Si薄膜3中の窒素原子が、堆積SiO2膜4の、Si薄膜3と対向しない主表面(図4における上側の主表面)から外部へ放出されることを抑制させることができる。以上の役割を果たすための堆積SiO2膜4を形成させる工程が、工程(S40)である。
【0045】
この堆積SiO2膜4は、たとえばスパッタリング法を用いて堆積させてもよいし、たとえば材料ガスとしてシラン(SiH4)ガスやテトラエトキシシラン(TEOS)ガスを用いてプラズマCVD法により堆積させてもよい。
【0046】
上述したいずれの方法を用いても、500℃程度以下の温度にて処理を行なうことができる。したがって、これらの方法による工程(S40)を行なう途上で、SiCエピタキシャル層2の主表面が積極的に酸化される可能性は小さい。このように、工程(S40)を行なう場合においても、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で行なうことが好ましい。したがって、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で、堆積SiO2膜4を堆積させることができる方法であれば、上述した方法に限らず、他の方法を用いて工程(S40)を実施してもよい。
【0047】
工程(S40)で形成される堆積SiO2膜4は、形成した半導体装置のゲート絶縁膜を堅牢なものとするための酸窒化膜となりうるものである。しかし、少々の窒素原子が、形成中の半導体装置の薄膜の外部へ放出されても、十分な量の窒素原子がSi薄膜3の内部に存在していれば、界面準位密度を低減させるために十分な量の窒素原子を、後にSiCエピタキシャル層2とSiO2の薄膜との界面付近の領域へ供給させることができる。したがって、工程(S40)は、省略することができる。
【0048】
また、工程(S40)においては、上述した堆積SiO2膜4の代わりに、後工程にて実施する熱処理の温度に対する耐性を有する絶縁材料である、たとえば窒化アルミ(AlN)、酸化アルミ(Al2O3)、窒化シリコン(Si3N4)の薄膜を形成させてもよい。
【0049】
続いて、Si薄膜を酸化させる工程(S50)を行なう。これは、先の工程(S20)および工程(S30)にて形成された、窒素原子を注入されたSi薄膜3を酸化させることにより、Si薄膜3を酸化膜とする工程である。
【0050】
工程(S50)においても、上述した工程(S20)、(S30)、(S40)と同様に、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度で処理を行なうことが好ましい。したがって、工程(S50)においては、熱酸化によりSi薄膜3を酸化させてもよいが、その場合、通常の熱酸化よりも低温である、たとえば600℃以上700℃以下の温度範囲にて行なうことが好ましい。また、ドライ酸素雰囲気中における熱酸化を行なう代わりに、ウェット酸素雰囲気中における熱酸化を行なってもよい。
【0051】
図5は、Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。図5においては、図4におけるSi薄膜3が酸化膜である酸化Si薄膜5となっている。また酸化Si薄膜5の内部には、イオン注入法により添加量を自在に制御された窒素原子が含有されている。
【0052】
そして、高温アニールを行なう工程(S60)を実施する。図6は、図5に示す形成中の半導体装置に対して、工程(S60)を行なった後における状態を示す概略断面図である。高温アニールを行なう工程(S60)を行なうことにより、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上(図6におけるSiCエピタキシャル層2の上側)には、窒化されたSiO2の薄膜である、窒化SiO2膜6が形成されている。また、堆積SiO2膜4も、工程(S60)により、窒化SiO2膜6に変化している。
【0053】
工程(S60)を行なう方法としては、具体的には、たとえば窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、その雰囲気中で酸化Si薄膜5が形成されたSiCエピタキシャル層2を高温アニール(高温にて加熱処理)することができる。窒素酸化物ガスとしては、たとえば比較的安価に入手できる一酸化窒素(NO)や一酸化二窒素(N2O)を用いることが好ましい。このようにすれば、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面(図6におけるSiCエピタキシャル層2の上側)を酸窒化、すなわち酸化と窒化とを同時に行なうことができる。NOやN2Oなどの窒素酸化物ガスに含まれる酸素原子による熱酸化と、窒素原子による窒化とを同時に行なうことができる。
【0054】
このように、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化させることにより、図6に示すように、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に窒化SiO2膜6が形成される。すると、工程(S60)においては、高温アニールによる熱酸化を行なっているため、SiCエピタキシャル層2と窒化SiO2膜6との界面付近の領域には、界面準位が高密度に発生する可能性がある。
【0055】
しかし、ここでは先の工程(S20)、(S30)、(S50)にて、窒化SiO2膜6の上層に、十分な量の窒素原子をイオン注入された酸化Si薄膜5が形成されている。このため、酸化Si薄膜5が存在する状態で、工程(S60)により、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化させることになる。すると、酸化Si薄膜5の内部に含まれる窒素原子が、拡散により移動して、SiCエピタキシャル層2と窒化SiO2膜6との界面付近の領域まで容易に到達する。そして、当該界面付近の領域に到達した窒素原子が、たとえばSiCエピタキシャル層2中の炭素原子の空孔(ダングリングボンドを形成する)に侵入して、炭素原子の空孔を窒素原子で充填(置換)する。このようにして、SiCのダングリングボンドを窒素原子で終端することにより、ダングリングボンドの密度を低減させる。ダングリングボンドの密度を低減させれば、それに伴って当該界面付近の領域における界面準位密度を低減させることができる。
【0056】
図7は、工程(S60)に含まれる各工程を示すフローチャートである。先述したように、高温アニールを行なう工程(S60)とは、窒素酸化物ガスを用いて、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化する工程である。したがって、図7に示すように、工程(S60)には、SiCエピタキシャル層を熱酸化させる工程(S61)およびSiCエピタキシャル層を窒化させる工程(S62)を含み、これらは同時に行なわれる。
【0057】
また、先述した工程(S40)により、酸化Si薄膜5(Si薄膜3)の、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上(図7における酸化Si薄膜5の上側)に、堆積SiO2膜4を形成させる場合があるが、この場合、堆積SiO2膜4も、工程(S61)および工程(S62)と同時に、工程(S60)により付随的に窒化させて、窒化SiO2膜6とすることができる。さらに、堆積SiO2膜4は既に酸化膜の形相をなしているが、熱酸化によりさらに酸化させて良好な膜質の膜へと改質することもできる。その結果、堆積により形成させた酸化膜よりも絶縁性に優れた、稠密性のある堅牢な熱酸化膜である窒化SiO2膜6とすることができる。以上より、工程(S61)および工程(S62)と同時に、堆積SiO2膜4に対してはSiO2薄膜を熱酸化させる工程(S63)およびSiO2薄膜を窒化させる工程(S64)を実施させることができる。
【0058】
さらに、先述した工程(S20)、(S30)、(S50)にて形成させた酸化Si薄膜5についても、既にイオン注入により窒素原子が含有されているが、工程(S60)を行なうことにより付随的に窒化させることができる。また、酸化Si薄膜5についても、既に酸化膜の形相をなしているが、高温での熱酸化によりさらに酸化させ、より絶縁性に優れた、稠密性のある堅牢な熱酸化膜とすることができる。以上より、図7に示すように、工程(S61)〜工程(S64)と同時に、Si薄膜を熱酸化させる工程(S65)およびSi薄膜を窒化させる工程(S66)をも実施させることができる。
【0059】
なお、ここでの高温アニールにおける加熱温度としては、酸窒化を行なうことにより形成される熱酸化膜を稠密化させ、絶縁性に優れた堅牢な酸化膜とするために、1000℃以上1300℃以下の温度とすることが好ましい。1000℃以下の温度で行なうと、SiCエピタキシャル層2の酸化がスムーズに行なえない場合がある。なお、上述した加熱温度は、1100℃以上1200℃以下とすることがさらに好ましい。
【0060】
以上に述べた、図7に示す工程(S61)〜工程(S66)を、工程(S60)としてすべて同時に行なうことが可能である。窒素酸化物であるたとえばNOやN2Oのガスを用いてSiCエピタキシャル層2の一方の主表面上を酸窒化することにより、このような処理を行なうことができる。このようにすれば、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上を酸窒化すると、同時にSiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に存在する薄膜層についてもすべて酸窒化することができる。このため、製造工程数を削減することができ、製造工程のタクトタイムを短縮させることができる。
【0061】
また、上述した製造方法を用いることにより形成される窒化SiO2膜6には高温での熱酸化により稠密化された、絶縁性に優れる酸化膜としての性質と、拡散により容易にSiCエピタキシャル層2と窒化SiO2膜6との界面付近の領域に窒素原子を供給するための窒化膜としての性質とを兼ねている。以上により、上述した製造方法を用いることにより、少ない工程数にて、絶縁性に優れ、界面準位を低減させた絶縁膜を、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に形成させることができる。
【0062】
なお、本発明の実施の形態においては、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上に形成される絶縁膜が、SiO2に窒素原子を含むものとなっているが、この窒素原子は、絶縁膜としての正常な機能を妨げるものではない。
【0063】
図8は、SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に存在する薄膜層がすべて酸窒化された状態を示す概略断面図である。図8に示すように、工程(S60)に含まれる工程(S61)〜工程(S66)すべてを行なえば、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上(図における上側)に形成されていた堆積SiO2膜4や酸化Si薄膜5がすべて窒化SiO2膜6となり、これらすべてを1層の堅牢な窒化SiO2膜6とすることができる。
【0064】
(実施の形態2)
図9は、Si薄膜の、SiCエピタキシャル層と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態で、Si薄膜の内部に窒素原子を注入させた状態を示す概略断面図である。先述した実施の形態1においては、工程(S30)として、図3に示すように、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面上にSi薄膜3を堆積させた状態で、Si薄膜3の内部に窒素原子をたとえばイオン注入法により注入させる。その後に、図4に示すSiO2の薄膜としての堆積SiO2膜4を形成させる工程(S40)を行なっている。しかし、図9中に下向きの矢印で示すように、SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)として、堆積SiO2膜4を形成させた後に、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)として、Si薄膜3の内部に窒素原子を注入させる工程を行なってもよい。ここでも窒素原子を注入させる方法としては、たとえばイオン注入法を用いることができる。
【0065】
先述したように、図9における堆積SiO2膜4は、窒素原子を注入されたSi薄膜3中の窒素原子が、Si薄膜3から見て、SiCエピタキシャル層2と反対側へ拡散し、SiCエピタキシャル層2と反対側の最表面の主表面から外部へ放出されるのを抑制させるために形成させるものである。しかし、窒素原子のイオン注入を行なう際に、窒素原子に与えられるエネルギー値を調節することにより、イオン注入法によりイオン注入装置から放出される窒素原子は、堆積SiO2膜4の内部を容易に通過して、Si薄膜3の内部に到達させ、そこに捕捉させることができる。
【0066】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の実施の形態1に順ずる。
【0067】
(実施の形態3)
たとえば本発明の実施の形態1においては、先述したように、Si薄膜を酸化させる工程(S50)として、窒素原子を注入されたSi薄膜3のみを酸化させることにより、Si薄膜3を酸化膜として形成させる工程を行なっている。たとえばSi薄膜3を形成する多結晶Siは、SiCよりも低温にて酸化することができる。このため、本発明の実施の形態1においては、Si薄膜3を、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度(低温)にて、SiCエピタキシャル層2よりも先にたとえば熱酸化させている。
【0068】
しかし、Si薄膜3は本来、SiCエピタキシャル層2を酸窒化させる際に、その内部にあらかじめ注入させた窒素原子を、SiCエピタキシャル層2と、その一方の主表面上に形成される窒化SiO2膜6(図6参照)との界面付近の領域に供給させるためのものである。したがって、SiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化させる工程(S60)を行なう段階にて、必ずしもSi薄膜3が酸化されている必要はない。実施の形態1に示すように、あらかじめ工程(S50)を行なうことにより、Si薄膜3を酸化膜である酸化Si薄膜5とさせたとしても、続く高温アニールを行なう工程(S60)において、図2に示すSi薄膜を熱酸化させる工程(S65)が行なわれることにより、酸化Si薄膜5は再度熱酸化されることになる。
【0069】
そこで、本発明の実施の形態3においては、以下の手順により、半導体装置の製造を行なう。まず、本発明の実施の形態1と同様に、工程(S10)で形成させたSiCエピタキシャル層2の一方の(SiC基板1と対向しない)主表面上にSi薄膜3を堆積させる工程(Si薄膜を堆積させる工程(S20))を行なう。そして、工程(S20)で形成させたSi薄膜3の内部に、窒素原子を注入させる工程(Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30))を行なう。場合によってはSi薄膜3の、SiCエピタキシャル層2と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させて堆積SiO2膜4(図4参照)を形成させる(SiO2薄膜を堆積させる工程(S40))。そして、高温アニールを行なう工程(S60)により、実施の形態1における工程(S61)〜工程(S66)(図2参照)を行なう。このようにすれば、(酸化されていない)Si薄膜3を酸化させる工程(S50)と、工程(S60)によりSiCエピタキシャル層2の一方の主表面を酸窒化する工程とを同時に行なうことができる。
【0070】
SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)を行なった場合には、高温アニールを行なう工程(S60)において、図2に示すSiO2薄膜を窒化させる工程(S64)をも同時に行なうことになる。また、SiO2薄膜としての堆積SiO2膜4は既に酸化膜の形相をなしているが、SiO2薄膜を熱酸化させる工程(S63)の熱酸化により、さらに酸化させることもできる。
【0071】
本発明の実施の形態3においても、本発明の実施の形態1と同様に、Si薄膜を堆積させる工程(S20)、Si薄膜に窒素原子を注入させる工程(S30)、SiO2薄膜を堆積させる工程(S40)については、SiCエピタキシャル層2の酸化温度未満の温度において行なうことが好ましい。
【0072】
本発明の実施の形態3においても、本発明の実施の形態1と同様に、高温アニールを行なう工程(S60)においては、SiCエピタキシャル層2を酸窒化させるために、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用いることが好ましい。さらに、窒素酸化物ガスとしては、一酸化窒素(NO)または一酸化二窒素(N2O)を用いることが好ましい。また、工程(S60)における加熱温度としては、1000℃以上1300℃以下とすることが好ましく、1100℃以上1200℃以下とすることがさらに好ましい。
【0073】
以上に述べた本発明の実施の形態3のように、Si薄膜3のみを低温での熱酸化により酸化させる工程である、Si薄膜を酸化させる工程(S50)を省略させれば、高温アニールを行なう工程(S60)にて、(酸化されていない)Si薄膜3を含む、SiCエピタキシャル層2の上層部に存在するすべての薄膜を同時に酸窒化させることができる。このため、たとえば本発明の実施の形態1における製造方法よりもさらに製造工程数を削減することができるので、さらに製造工程のタクトタイムを短縮させることができる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態3を行なう際においても、本発明の実施の形態2に示すように、先に工程(S40)を行なった後に工程(S30)を行なってもよい。
【0075】
本発明の実施の形態3は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて本発明の実施の形態1に順ずる。
【実施例1】
【0076】
先述した本発明の実施の形態1を応用して、実用的な半導体装置としてのSiC−MOSFETを形成する場合の手順を以下に説明する。
【0077】
図10は、SiC基板の一方の主表面上にp型SiCエピタキシャル層を形成させた状態を示す概略断面図である。図10に示すように、p+型SiC基板11の一方の主表面上(図10におけるp+型SiC基板11の上側)に、膜厚が5μm、不純物濃度が5×1015cm−3であるp型SiCエピタキシャル層12を形成する。
【0078】
図11は、SiCエピタキシャル層の内部にソース領域とドレイン領域を形成させた状態を示す概略断面図である。p型SiCエピタキシャル層12の内部に、n+型にドーピングされたソース領域17およびドレイン領域18を形成させるため、フォトリソグラフィーとエッチングにより、図11に示すように、ソース領域17およびドレイン領域18となるマスクパターンを形成する。ここで、フォトリソグラフィーに用いるマスクの材料としてはたとえば珪素酸化膜(SiO2)などを用いることができる。
【0079】
続いて、先にソース領域17およびドレイン領域18となるマスクパターンを形成させた領域に対して、n+型ドーパントとしてのリン(P)原子のドーピングを行なう。P原子のドーピングは、たとえば先述したイオン注入法を用いて行なうことができる。ここで、ドーピングを行なう量は、1×1015cm−2とすることが好ましい。以上により、図11に示すソース領域17およびドレイン領域18がn+型ドーパントとしてのP原子によりドーピングされ、それぞれソース領域17およびドレイン領域18となる。これらは、次に述べる活性化アニール処理により、それぞれソース領域17およびドレイン領域18としての電気的機能を備えることになる。
【0080】
次に、ソース領域17およびドレイン領域18中に注入された、不純物としてのn+型ドーパントであるP原子を活性化するために、図11に示す形成中の半導体装置の活性化アニールを行なう。活性化アニール処理は、たとえば1700℃の高温で行なう。このようにすれば、イオン注入によりソース領域17およびドレイン領域18の内部にドーピングされた不純物であるP原子を活性化することができる。
【0081】
図12は、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、熱酸化膜を施した状態を示す概略断面図である。上述した活性化アニール処理は、1700℃の高温で行なっている。このため、処理を行なう過程で、雰囲気中に含まれる酸素成分により、図11に示す形成中の半導体装置の、たとえばp型SiCエピタキシャル層12の主表面上(図11における上側)などが酸化を起こしている。そこで、図12に示すように、この酸化膜を除去するために、いったんp型SiCエピタキシャル層12を熱酸化することにより、熱酸化膜22を形成させる処理を行なってもよい。
【0082】
その後、たとえばバッファードフッ酸を用いてp型SiCエピタキシャル層12の主表面上に形成されている酸化膜を除去する処理を行なってもよい。この際、酸化膜と同時に、p型SiCエピタキシャル層12の主表面上のうち、結晶性の良好でない領域についても、バッファードフッ酸によるエッチングにより除去させることができる。そして、酸化膜などを除去されたSiCエピタキシャル層12の表面に対して有機洗浄、酸洗浄、RCA洗浄などの洗浄処理を行なうことにより、表面の洗浄化を行なう。以上に述べた処理を行なうことにより、図12に示す形成中の半導体装置は、図面上は最終的に図11に示す状態に戻る。
【0083】
そして次にp型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上に、たとえば多結晶のSiの薄膜を堆積する。この工程は、先述した工程(S20)に対応する。図13は、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、多結晶のSiの薄膜を堆積した状態を示す概略断面図である。ここではたとえば、シラン(SiH4)ガスを用いて、減圧CVD法により多結晶のSiの薄膜(Si薄膜13)を50nm程度堆積させることが好ましい。また、当該処理を行なう際に、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面が酸化(窒化)しないようにするために、当該処理はたとえば600℃以上700℃以下の雰囲気中にて行なうことが好ましい。
【0084】
次に、図13に下向きの矢印で示すように、Si薄膜13の内部に、たとえばイオン注入法を用いて、窒素原子のドーピングを行なう。この工程は、先述した工程(S30)に対応する。
【0085】
Si薄膜13の内部に窒素原子をドーピング(注入)させた状態で、このSi薄膜13の一方の主表面上(図13における上側)に、SiO2の薄膜を堆積させる工程を行なう。この工程は、先述した工程(S40)に対応する。図14は、Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。図14におけるSiO2の薄膜としての堆積SiO2膜14は、たとえばシラン(SiH4)ガスを用いて、プラズマCVD法により50nm程度堆積させることが好ましい。
【0086】
次に、先の工程にて窒素原子のドーピングが行なわれたSi薄膜13をたとえば酸化雰囲気中で加熱することにより、Si薄膜13のみを熱酸化させる工程を行なう。この工程は、先述した工程(S50)に対応する。図15は、Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。このとき、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面が酸化(窒化)しないようにするために、図15に示す形成中の半導体装置を配置させる雰囲気の温度をたとえば800℃としておくことが好ましい。また、ドライ酸素雰囲気中における熱酸化を行なう代わりに、ウェット酸素雰囲気中における熱酸化を行なってもよい。以上のようにすれば、Si薄膜13は酸化Si薄膜15となる。
【0087】
続いて先述した工程(S60)に対応する工程である、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上を酸窒化させる工程を行なう。図16は、図15に示す形成中の半導体装置に対して、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上を酸窒化させた後における状態を示す概略断面図である。図16に示すように、p型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上(図における上側)には、p型SiCエピタキシャル層12が酸窒化されることにより、窒化SiO2膜16が形成される。このとき同時に、堆積SiO2膜14についても酸化による稠密化および、窒化がなされることにより、図16に示すように窒化SiO2膜16となる。当該処理は、たとえば1100℃程度の高温に加熱させたNOまたはN2Oガス雰囲気中に、形成中の半導体装置を配置させて加熱処理を行なうことにより行なうことができる。なお、図16における酸化Si薄膜15についても、同様に酸化による稠密化および、窒化がなされることにより窒化SiO2膜16となり、図16中に示す3層の窒化SiO2膜16、酸化Si薄膜15、窒化SiO2膜16は、先の図8に示すように1層の窒化SiO2膜16となるように処理を行なってもよい。
【0088】
図17は、本実施例における半導体装置を完成させた状態を示す概略断面図である。図16にてp型SiCエピタキシャル層12の一方の主表面上に、窒化SiO2膜16が形成された状態で、たとえば金属薄膜の蒸着、フォトリソグラフィーやエッチングを施す。このようにすれば、図17に示すように、ソース領域17の主表面上(図の上側)にコンタクト電極としてのソース電極19、ドレイン領域18の主表面上にはコンタクト電極としてのドレイン電極20、窒化SiO2膜16の最表面上(図の上側)にはコンタクト電極としてのゲート電極21が形成される。このようにして、図17に示す半導体装置としての、nチャネルSiC−MOSFETが完成する。この半導体装置にパシベーション膜を形成させ、基板上に実装させる工程を行なう。
【0089】
以上の手順により形成された半導体装置であるSiC−MOSFETは、本発明の実施の形態1に開示する半導体装置の製造方法に則り形成させている。したがって、たとえば窒化SiO2膜16中に含有される窒素原子が、拡散により、p型SiCエピタキシャル層12と窒化SiO2膜16との界面付近の領域に容易に移動することが可能となる。このため、当該界面付近の領域に存在する、たとえば炭素原子の空孔によるダングリングボンドを窒素原子で終端させることにより、容易にかつ確実に、界面準位密度を低減させることができる。
【0090】
なお、以上の実施例1においては、p+型SiC基板11の一方の主表面上にp型SiCエピタキシャル層12および、n+型のドーパントが注入されたソース領域17、ドレイン領域18が形成された構成の半導体装置を開示している。しかし、上述したn型とp型とをすべて逆転させた構成の半導体装置としてもよい。
【0091】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明における半導体装置の製造方法は、界面準位密度をさらに減少させることが可能な、炭化珪素を用いた半導体装置の製造方法として、特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法における工程の手順を示すフローチャートである。
【図2】SiC基板の一方の主表面上に、SiCのエピタキシャル層を形成させる工程を示す概略断面図である。
【図3】SiCエピタキシャル層の一方の主表面上にSi薄膜を形成させた状態を示す概略断面図である。
【図4】Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。
【図5】Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。
【図6】図5に示す形成中の半導体装置に対して、工程(S60)を行なった後における状態を示す概略断面図である。
【図7】工程(S60)に含まれる各工程を示すフローチャートである。
【図8】SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に存在する薄膜層がすべて酸窒化された状態を示す概略断面図である。
【図9】Si薄膜の、SiCエピタキシャル層と対向しない主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態で、Si薄膜の内部に窒素原子を注入させた状態を示す概略断面図である。
【図10】SiC基板の一方の主表面上にp型SiCエピタキシャル層を形成させた状態を示す概略断面図である。
【図11】SiCエピタキシャル層の内部にソース領域とドレイン領域を形成させた状態を示す概略断面図である。
【図12】p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、熱酸化膜を施した状態を示す概略断面図である。
【図13】p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上に、多結晶のSiの薄膜を堆積した状態を示す概略断面図である。
【図14】Si薄膜の一方の主表面上に、SiO2の薄膜を堆積させた状態を示す概略断面図である。
【図15】Si薄膜を酸化させた状態を示す概略断面図である。
【図16】図15に示す形成中の半導体装置に対して、p型SiCエピタキシャル層の一方の主表面上を酸窒化させた後における状態を示す概略断面図である。
【図17】本実施例における半導体装置を完成させた状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 SiC基板、2 SiCエピタキシャル層、3 Si薄膜、4 堆積SiO2膜、5 酸化Si薄膜、6 窒化SiO2膜、11 p+型SiC基板、12 p型SiCエピタキシャル層、13 Si薄膜、14 堆積SiO2膜、15 酸化Si薄膜、16 窒化SiO2膜、17 ソース領域、18 ドレイン領域、19 ソース電極、20 ドレイン電極、21 ゲート電極、22 熱酸化膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、
前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、
前記窒素原子を注入させた前記珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程と、
前記酸化膜が存在する状態で、前記炭化珪素エピタキシャル層の前記一方の主表面を酸窒化させる工程とを備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記珪素薄膜の、前記炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備え、
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、前記酸化膜および前記珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なう、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記珪素薄膜を堆積させる工程と、前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、前記珪素薄膜を酸化させる工程と、前記珪素酸化膜を堆積させる工程とを、前記炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なう、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、前記酸化膜が形成された前記炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、
前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、
前記窒素原子を注入された前記珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程と、
前記炭化珪素エピタキシャル層の前記一方の主表面を酸窒化させる工程とを備えており、
前記珪素薄膜を酸化させる工程と、前記一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記珪素薄膜の、前記炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備え、
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、前記珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なう、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記珪素薄膜を堆積させる工程と、前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、前記珪素酸化膜を堆積させる工程とを、前記炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なう、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、前記炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記加熱処理における加熱温度は、1000℃以上1300℃以下である、請求項4または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記窒素酸化物とは一酸化窒素または一酸化二窒素である、請求項4、8または9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を用いて製造された、半導体装置。
【請求項1】
炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、
前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、
前記窒素原子を注入させた前記珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程と、
前記酸化膜が存在する状態で、前記炭化珪素エピタキシャル層の前記一方の主表面を酸窒化させる工程とを備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記珪素薄膜の、前記炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備え、
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、前記酸化膜および前記珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なう、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記珪素薄膜を堆積させる工程と、前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、前記珪素薄膜を酸化させる工程と、前記珪素酸化膜を堆積させる工程とを、前記炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なう、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、前記酸化膜が形成された前記炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
炭化珪素エピタキシャル層の一方の主表面上に珪素薄膜を堆積させる工程と、
前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、
前記窒素原子を注入された前記珪素薄膜を酸化させることにより酸化膜を形成させる工程と、
前記炭化珪素エピタキシャル層の前記一方の主表面を酸窒化させる工程とを備えており、
前記珪素薄膜を酸化させる工程と、前記一方の主表面を酸窒化させる工程とを同時に行なう、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記珪素薄膜の、前記炭化珪素エピタキシャル層と対向しない主表面上に珪素酸化膜を堆積させる工程をさらに備え、
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、前記珪素酸化膜を窒化させる工程を同時に行なう、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記珪素薄膜を堆積させる工程と、前記珪素薄膜の内部に窒素原子を注入させる工程と、前記珪素酸化膜を堆積させる工程とを、前記炭化珪素エピタキシャル層の酸化温度未満の温度にて行なう、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記一方の主表面を酸窒化させる工程では、窒素酸化物ガスを雰囲気ガスとして用い、前記炭化珪素エピタキシャル層を加熱処理させる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記加熱処理における加熱温度は、1000℃以上1300℃以下である、請求項4または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記窒素酸化物とは一酸化窒素または一酸化二窒素である、請求項4、8または9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を用いて製造された、半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−67917(P2010−67917A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235246(P2008−235246)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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