説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】基板配列領域における全領域で低WERを確保するとともに、良好なWIWを得る。
【解決手段】炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程では、処理容器内にシリコンを含むガスを供給して基板上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成する第1工程と、処理容器内に窒素を含むガスを熱で活性化して供給することで、シリコン膜を熱窒化して窒化シリコン膜に改質する第2工程と、処理容器内にシリコンを含むガスを供給して窒化シリコン膜上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成する第3工程と、処理容器内に炭素を含むガスを熱で活性化して供給することで、窒化シリコン膜上に形成された前記シリコン膜または窒化シリコン膜に炭素を添加する第4工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法及び半導体ウエハやガラス基板等の基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減圧CVD法(化学気相成長法)によって、基板上に窒化膜を形成する事が行なわれ、様々な用途に利用されている。近年、形成される窒化膜の膜質改善が求められている。
【0003】
減圧CVD法によって、複数枚のシリコン基板上に窒化膜を形成する方法において、低温条件にて窒化膜を形成する時、成膜時にヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCD)ガス、アンモニア(NH)ガスを同時に供給して窒化膜を形成し、窒化膜の膜質を改善する方法がある(特許文献1参照)。成膜ガスは例えば基板配列領域下方の反応炉下部から供給する。このとき上記窒化膜形成中に炭素(C)を含むガスを供給し、窒化膜にCを添加することで窒化膜のウエットエッチングレート(Wet-Etching Rate:以下WER)の低下を図ることが行われている。また、上記窒化膜形成中に供給する炭素を含むガスの供給量の増大により、窒化膜に添加するCの量を増大させ、WERの低下を図ることが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−268699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の成膜手段では反応炉下部からのガス供給のためCを含むガスの供給量の増大に伴い、反応炉下部(ガス流上流側)で十分な窒化膜形成ができない。そのため反応炉下部領域での膜質の面内均一性(Within-Wafer:以下WIW)が著しく悪化する。この現象はCを含むガスとしてプロピレン(C)ガスを用いる場合に限らず、エチレン(C)ガスを用いる場合やN等の不活性ガスを用いる場合においても起こりうる。
【0006】
本発明の目的は、基板配列領域における全領域で低WERを確保するとともに、良好なWIWも得る事ができる半導体ウエハ等の基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法及び半導体ウエハやガラス基板等の基板を処理する基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、処理容器内で基板上に炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程では、前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して基板上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成する第1工程と、前記処理容器内に窒素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記シリコン膜を熱窒化して窒化シリコン膜に改質する第2工程と、前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して前記窒化シリコン膜上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成する第3工程と、前記処理容器内に炭素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化シリコン膜上に形成された前記シリコン膜または前記窒化シリコン膜に炭素を添加する第4工程と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、基板を処理する処理容器と、前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給するシリコン含有ガス供給系と、前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、前記処理容器内に炭素を含むガスを供給する炭素含有ガス供給系と、前記処理容器内を加熱するヒータと、前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して基板上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成し、前記処理容器内に窒素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記シリコン膜を熱窒化して窒化シリコン膜に改質し、前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して前記窒化シリコン膜上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成し、前記処理容器内に炭素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化シリコン膜上に形成された前記シリコン膜または前記窒化シリコン膜に炭素を添加し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように前記シリコン含有ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記炭素含有ガス供給系、および前記ヒータを制御するコントローラと、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低ウエットエッチングレートで膜質の面内均一性が良好な窒化膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板処理装置1の全体構成を示す図である。
基板処理装置1は、例えば半導体ウエハなどの基板を処理するいわゆる減圧CVD装置である。図1に示すように、基板処理装置1は、カセット授受ユニット100、カセット授受ユニット100の背面側に設けられたカセットローダ101、カセットローダ101の背面側に設けられたカセットストッカ102、カセットストッカ102の上方に設けられたバッファカセットストッカ104、カセットストッカ102の背面側に設けられたウエハ移載機106、ウエハ移載機106の背面側に設けられ、ウエハ200がセットされたボート108を搬送するボートエレベータ110、ボートエレベータ110の上方に設けられた処理炉202及び制御部2から構成される。
【0011】
図2は、図1に示したボート108およびウエハ200を収容した状態の処理炉202の概要を例示する縦断面図である。
図2に示されているように、処理炉202は加熱機構としてのヒータ206を有する。ヒータ206は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース251に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0012】
ヒータ206の内側には、ヒータ206と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205とから構成されている。インナーチューブ204は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204の筒中空部には、基板としてのウエハ200上に薄膜を形成する処理を行う処理室201が形成されている。処理室201は、ウエハ200をボート108によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。アウターチューブ205は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料からなり、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。
【0013】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204とアウターチューブ205に係合しており、これらを支持するように設けられている。尚、マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベース251に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ203とマニホールド209により反応容器が形成される。
【0014】
マニホールド209には、ガス導入部としてのノズル230a、230b、230cが処理室201内に連通するように接続されている。ノズル230a、230b、230cには、薄膜を形成する処理ガスを処理室201内に供給する処理ガス供給管232a、232b、230cがそれぞれ接続されている。処理ガス供給管232aのノズル230aとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241aを介して第1処理ガス供給源としてのHCD(SiCl)ガス供給源271が接続されている。処理ガス供給管232aのMFC241aよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262a、261aが設けられている。処理ガス供給管232bのノズル230bとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241bを介して第2処理ガス供給源としてのNHガス供給源272が接続されている。処理ガス供給管232bのMFC241bよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262b、261bが設けられている。処理ガス供給管232cのノズル230cとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241cを介して第3処理ガス供給源としてのCガス供給源273が接続されている。処理ガス供給管232cのMFC241cよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262c、261cが設けられている。主に、処理ガス供給管232a,232b,232c、MFC241a,241b,241c、バルブ262a,261a,262b,261b,262c,261c、HCDガス供給源271、NHガス供給源272、Cガス供給源273により処理ガス供給系が構成される。
【0015】
処理ガス供給管232a、232b、232cのバルブ261a、261b、261cよりも下流側には、それぞれ不活性ガス供給管232d、232e、232fが接続されている。
不活性ガス供給管232dの処理ガス供給管232aとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241dを介して不活性ガス供給源としてのNガス供給源274が接続されている。不活性ガス供給管232dのMFC241dよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262d、261dが設けられている。不活性ガス供給管232eの処理ガス供給管232bとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241eを介してNガス供給源274が接続されている。不活性ガス供給管232eのMFC241eよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262e,261eが設けられている。不活性ガス供給管232fの処理ガス供給管232cとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241fを介して不活性ガス供給源としてのNガス供給源274が接続されている。不活性ガス供給管232fのMFC241fよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262f、261fが設けられている。主に、不活性ガス供給管232d、232e、232f、MFC241d、241e、241f、バルブ262d、261d、262e、261e、262f、261f、Nガス供給源274により、不活性ガス供給系が構成される。なお、不活性ガス供給系には処理ガスやクリーニングガスを希釈する役割もあり、不活性ガス供給系は、処理ガス供給系やクリーニングガス供給系の一部をも構成する。また、不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0016】
処理ガス供給管232a、232b、232cのバルブ261a、261b、261cよりも下流側であって、さらに不活性ガス供給管232d、232e、232fとの接続部よりも下流側には、処理室201内をクリーニングするクリーニングガスを処理室201内に供給するクリーニングガス供給管232g、232h、232iがそれぞれ接続されている。
クリーニングガス供給管232gの処理ガス供給管232aとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241gを介して、クリーニングガス供給源としてのNFガス供給源275が接続されている。クリーニングガス供給管232gのMFC241gよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262g、261gが設けられている。クリーニングガス供給管232hの処理ガス供給管232bとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241hを介してNFガス供給源275が接続されている。クリーニングガス供給管232hのMFC241hよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262h、261hが設けられている。クリーニングガス供給管232iの処理ガス供給管232cとの接続側と反対側である上流側には、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)241iを介して、クリーニングガス供給源としてのNFガス供給源275が接続されている。クリーニングガス供給管232iのMFC241iよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262i、261iが設けられている。クリーニングガス供給管232iのMFC241iよりも上流側、下流側にはそれぞれバルブ262i、261iが設けられている。主にクリーニングガス供給管232g、232h、232i、MFC241g、241h、241i、バルブ262g、261g、262h、261h、262i、261i、NFガス供給源275によりクリーニングガス供給系が構成される。
【0017】
MFC241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241h、241i、バルブ261a、261b、261c、261d、261e、261f、261g、261h、261i、262a、262b、262c、262d、262e、262f、262g、262h、262iには、ガス供給・流量制御部235が電気的に接続されている。ガス供給・流量制御部235は、後述する各ステップで処理室201内に供給するガスの種類が所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望の流量となるよう、さらには、供給するガスの濃度が所望の濃度となるよう、MFC241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241h、241i、バルブ261a、261b、261c、261d、261e、261f、261g、261h、261i、262a、262b、262c、262d、262e、262f、262g、262h、262iを所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0018】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231は、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に配置されており、筒状空間250に連通している。排気管231のマニホールド209との接続側と反対側である下流側には、圧力検出器としての圧力センサ245、および可変コンダクタンスバルブ、例えばAPC(Auto Pressure Controller)バルブ等の圧力調整装置242を介して、真空ポンプ等の真空排気装置246が接続されている。真空排気装置246は、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。圧力調整装置242および圧力センサ245には、圧力制御部236が電気的に接続されている。圧力制御部236は、処理室201内の圧力が所望の圧力となるように、圧力センサ245により検出された圧力に基づいて圧力調整装置242を所望のタイミングにて制御するように構成されている。主に、排気管231、圧力調整装置242、真空排気装置246、により排気系が構成される。
【0019】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられる。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート108に接続されており、ボート108を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219はプロセスチューブ203の外部に垂直に設備された昇降機構としてのボートエレベータ110によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート108を処理室201に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構254及びボートエレベータ110には、駆動制御部237が電気的に接続されている。駆動制御部237は、回転機構254及びボートエレベータ110が所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0020】
基板保持具としてのボート108は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。尚、ボート108の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる円板形状をした断熱部材としての断熱板216が水平姿勢で多段に複数枚配置されており、ヒータ206からの熱がマニホールド209側に伝わりにくくなるよう構成されている。
【0021】
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータ206と温度センサ263には、温度制御部238が電気的に接続されている。温度制御部238は、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように、温度センサ263により検出された温度情報に基づいてヒータ206への通電具合を所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0022】
ガス供給・流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、及び温度制御部238は、操作部、入出力部をも構成し、基板処理装置全体を制御する主制御部239に電気的に接続されている。これら、ガス供給・流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238、及び主制御部239は、コントローラ240として構成され、図1に示した制御部2内に配置されている。
【0023】
次に、上記構成に係る処理炉202を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、CVD法により処理室201内でウエハ200上に薄膜を形成する方法について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置1を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0024】
複数枚のウエハ200がボート108に装填(ウエハチャージ)されると、図2に示されているように、複数枚のウエハ200を保持したボート108は、ボートエレベータ110によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0025】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づき圧力調整装置242がフィードバック制御される。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ206によって加熱される。この際、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構254によりボート108が回転されることでウエハ200が回転される。
【0026】
次いで、処理室201内の温度、圧力が所望の温度、圧力に維持された状態で、第1処理ガス供給源としてのHCDガス供給源271、第2処理ガス供給源としてのNHガス供給源272、第3処理ガス供給源としてのCガス供給源273から、第1処理ガスとしてのHCDガス、第2処理ガスとしてのNHガス、第3処理ガスとしてのCガスがそれぞれ処理室201内に供給される。すなわち、バルブ262a、261a、262b、261b、262c、261cが開かれることでHCDガス供給源271、NHガス供給源272、Cガス供給源273からそれぞれ処理ガス供給管232a、232b、232c内に供給されたHCDガス、NHガス、Cガスは、それぞれMFC241a、241b、241cにて所望の流量となるように制御された後、処理ガス供給管232a、232b、232cを通り、ノズル230a、230b、230cから処理室201内に導入される。
【0027】
このとき、同時に、不活性ガス供給源としてのNガス供給源274から処理室201内にNガスを供給し、処理ガス(HCDガス、NHガス、Cガス)を希釈するようにしてもよい。この場合、例えば、バルブ262d、261d、262e、261e、262f、261fが開かれることでNガス供給源274から不活性ガス供給管232d、232e、232f内にそれぞれ供給されたNガスは、それぞれMFC241d、241e、241fにて所望の流量となるように制御された後、不活性ガス供給管232d、232e、232fを通り、処理ガス供給管232a、232b、232cを経由して、ノズル230a、230b、230cから処理室201内に導入される。Nガスは、処理ガス供給管232a、232b、232c内でHCDガス、NHガス、Cガスのそれぞれと混合されることとなる。Nガスの供給流量を制御することで、処理ガスの濃度を制御することもできる。
【0028】
処理室201内に導入された処理ガスは、処理室201内を上昇し、インナーチューブ204の上端開口から筒状空間250に流出し、筒状空間250を流下した後、排気管231から排気される。処理ガスは、処理室201内を通過する際にウエハ200の表面と接触する。この際、熱CVD反応によってウエハ200の表面上に薄膜、すなわち炭素(C)が添加された窒化シリコン(Si)膜が堆積(デポジション)される。
【0029】
予め設定された処理時間が経過すると、処理ガスの供給が停止される。すなわち、バルブ262a、261a、262b、261b、262c、261cが閉じられることで、HCDガス供給源271、NHガス供給源272、Cガス供給源273からのHCDガス、NHガス、Cガスの処理室201内への供給が停止される。その後、バルブ262d、261d、262e、261e、262f、261fが開かれ、Nガス供給源274から処理室201内にNガスが供給されつつ排気管231から排気されることで処理室201内がパージされ、処理室201内がNガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される。
【0030】
その後、ボートエレベータ110によりシールキャップ219が下降されてマニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート108に保持された状態でマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200はボート108より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0031】
尚、本実施形態の処理炉202にてウエハ200を処理する際の処理条件としては、例えば、炭素が添加された窒化シリコン膜の成膜においては、
処理温度:500〜800℃、
処理圧力:10〜500Pa、
HCDガス供給流量:10〜500sccm、
NHガス供給流量:10〜5000sccm
ガス供給流量:10〜5000sccm
が例示され、それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することでウエハ200に処理がなされる。
【0032】
次に上記基板処理装置1を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として基板上に低温条件において低WERのHCD窒化膜を形成する成膜方法について説明する。成膜ステップでのガス供給の方法について、図3に示す。
【0033】
[実施例1]
図3(B)に示すように、成膜ステップ中のガス供給をHCDガス供給ステップ、NHガス供給ステップ、Cガス供給ステップで分けて、HCDガス供給ステップ、NHガス供給ステップ、Cガス供給ステップの順で各ステップをそれぞれ所定時間、例えば10秒間複数回繰り返して成膜を行う。すなわち、HCDガス供給ステップ、NHガス供給ステップ、Cガス供給ステップを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上、好ましくは複数回行うことで成膜を行う。その時のWER、WIWを図3(A)に示した比較例での成膜における結果と比較した(図4,5参照)。ただしWER評価は1.0%HFを用いて実施した。また各ステップの詳細については以下に示す。
なお、成膜工程以外の工程は、上記実施形態と同様である。
【0034】
(ステップ1)
HCDガス供給ステップについて説明する。ガス供給管232aのバルブ262a、バルブ261aを開き、ガス供給管232aにHCDガス、不活性ガス供給管232dに不活性ガス(N)を流す。不活性ガスは、不活性ガス供給管232dから流れ、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。HCDガスは、ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整され、流量調整された不活性ガスと混合されて、ノズル230aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時、APCバルブ242を適正に調整して処理室201内の圧力は上記範囲の圧力であって、例えば133Paに維持する。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は上記の範囲の流量であって、例えば50sccmとする。HCDにウエハ200を適した時間、例えば10秒間晒す。このときヒータ206の温度は、CVD反応が生じる条件、すなわちウエハ200の温度が上記範囲内の温度であって、例えば600°Cになるよう設定する。HCDガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200上に1原子層から数原子層のシリコン(Si)膜を形成する。
【0035】
(ステップ2)
NHガス供給ステップについて説明する。1原子層から数原子層のSi膜を成膜した後、ガス供給管232aのバルブ262a,261aを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ242は開いたままとし、ガス供給管232bのバルブ262b、261b、不活性ガス供給管232eのバルブ262e、261eを開き、ガス供給管232bにNH、不活性ガス供給管232eに不活性ガス(N)を流す。不活性ガスは、不活性ガス供給管232eから流れ、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。NHはガス供給管232bから流れ、マスフローコントローラ241bにより流量調整され、流量調整された不活性ガスと混合されて、ノズル230bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時、APCバルブ242を適正に調整して処理室201内の圧力を上記範囲内の圧力、例えば20Paに維持する。マスフローコントローラ241bで制御するNHの供給流量は上記範囲の流量であって、例えば300sccmとする。なお、NHにウエハ200を適した時間、例えば10秒間晒す。このときのウエハの温度が、ステップ1のHCDガスの供給時と同じく上記範囲内の温度であって、例えば600°Cとなるようヒータ206の温度を設定する。NHを処理室201内に供給することで、ウエハ200上に形成された1原子層から数原子層のシリコン(Si)膜を熱で窒化する。これにより、窒化シリコン(SiN)膜が形成される。
【0036】
(ステップ3)
ガス供給ステップについて説明する。1原子層から数原子層のシリコン(Si)膜を熱で窒化した後、ガス供給管232bのバルブ262b、261bを閉じ、NHガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ242は開いたままとし、ガス供給管232cのバルブ262c、261c、不活性ガス供給管232fのバルブ262f、261fを開き、ガス供給管232cにCガス、不活性ガス供給管232fに不活性ガス(N)を流す。不活性ガスは、不活性ガス供給管232fから流れ、マスフローコントローラ241fにより流量調整される。Cガスはガス供給管232cから流れ、マスフローコントローラ241cにより流量調整され、流量調整された不活性ガスと混合されて、ノズル230cから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時、APCバルブ242を適正に調整して処理室201内の圧力を上記範囲内の圧力、例えば20Paに維持する。マスフローコントローラ241cで制御するCの供給流量は上記範囲の流量であって、例えば2000sccmとする。なお、Cにウエハ200を適した時間、例えば10秒間晒す。このときのウエハの温度が、ステップ1のHCDガスの供給時と同じく上記範囲内の温度であって、例えば600°Cとなるようヒータ206の温度を設定する。Cガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200上に形成されたSiN膜へCを添加する。これにより、低WERのSiN膜が形成される。
【0037】
[実施例2]
更に良好な膜質を得るため、図3(C)に示すように、図3(B)に示した10秒間のHCDガス供給ステップ(ステップ1)を、それぞれ5秒間のステップ1a、ステップ1bに2分割する。具体的には、(ステップ1a)、(ステップ2)、(ステップ1b)、(ステップ3)の順で各ステップを複数回繰り返して成膜を実施する。つまり、(ステップ1a)、(ステップ2)、(ステップ1b)、(ステップ3)の順で行う動作を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことで成膜を行う。好ましくはこのサイクルを複数回繰り返して成膜を実施する。
【0038】
上記比較例、実施例1,2で成膜したウエハについて、膜質評価を実施した。その結果を図4、図5にそれぞれ示す。ただしWER評価は1.0%HFを用いて実施した。
【0039】
図4に示すように、比較例においては、WER評価の結果は良好な値であったが、図5に示すようにWIWの結果に関しては、処理炉202の下部領域では悪化した。この原因はガス供給が処理炉202下部のみであるため、ガス供給量の増大に伴い、処理炉202の下部において十分な窒化膜形成が行なわれなくなるためである。
【0040】
これに対し、実施例1では、図4に示すようにWERは比較例に比べ大きくはなったが、処理炉202の上部から下部にかけて同程度のWERを持つHCD窒化膜を形成することができた。また、図5に示すようにWIWについては処理炉202の上部および中部においては比較例と同程度であるものの処理炉202の下部においては比較例に比べ大幅に低減できた。すなわち、処理炉202の下部については、比較例に比べ大幅に均一性を向上させることができた。このように、個別にガス供給を実施することで、すなわち窒化膜の形成ステップ(HCDガス、NHガス供給)とC添加ステップ(Cガス供給)を分割することで、上記基板処理装置1で、処理炉202の上部から下部にかけて良好なWIWの成膜が可能であることを確認できた。
【0041】
また、実施例2では、図4に示すようにWERは比較例と同程度の低WERの結果が得られた。また、図5に示すようにWIWも実施例1と同様、良好な結果が得られた。
【0042】
実施例2においては低WERの窒化膜が得られたのに対し、実施例1においては高WERの窒化膜が得られたのは、いったん窒化膜が形成されると、Cが添加されにくくなる事が原因として考えられる。すなわち、実施例1では、ガス供給のステップを(ステップ1)、(ステップ2)、(ステップ3)の順で行い、(ステップ2)においてSiN膜が形成された後に、(ステップ3)において、このSiN膜に対してCを添加することとなる。これに対して実施例2では、ガス供給のステップを(ステップ1a)、(ステップ2)、(ステップ1b)、(ステップ3)の順で行い、HCDガス供給のステップ(ステップ1)を(ステップ2)の前後に分割することにより、HCDガスとCガスが処理炉202内で混在する状態が作られ、SiN膜が形成される前のSi膜の状態でCが効率的に添加できることとなるのである。
【0043】
このように、本発明の一態様によれば、上述した半導体装置の製造方法が提供される。
好ましくは、前記炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程は、前記処理容器内に複数枚の基板を配列した状態で行う。
また好ましくは、前記炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程は、前記処理容器内に複数枚の基板を配列した状態で行い、前記第1工程乃至第4工程の各工程では前記各ガスを、前記複数枚の基板が配列される基板配列領域の一端側から供給して、その他端側に向けて流す。
また好ましくは、前記シリコンを含むガスがヘキサクロロジシラン(SiCl)ガスであり、前記窒素を含むガスがアンモニア(NH)ガスであり、前記炭素を含むガスがプロピレン(C)ガスまたはエチレン(C)ガスである。
【0044】
また、本発明の他の態様によれば、上述した基板処理装置が提供される。
好ましくは、さらに前記処理容器内で複数枚の基板を配列して支持する支持具と、前記処理容器内を排気する排気系と、を有し、前記シリコン含有ガス供給系と、前記窒素含有ガス供給系と、前記炭素含有ガス供給系と、前記排気系は、前記各ガスを、前記複数枚の基板が配列される基板配列領域の一端側から供給して、その他端側に向けて流すように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示したボートおよびウエハを収容した状態の処理炉の概要を例示する縦断面図である。
【図3】ガス供給の方法(順序)を示す模式図であって、(A)は比較例を示し、(B)は実施例1を示し、(C)は実施例2を示す模式図である。
【図4】成膜ガスの供給方法(順序)の違いによるWERへの影響を示したグラフである。
【図5】成膜ガスの供給方法(順序)の違いによるWIWへの影響を示したグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1・・・基板処理装置
2・・・制御部
202・・・処理炉
206・・・ヒータ
235・・・ガス供給・流量制御部
236・・・圧力制御部
237・・・駆動制御部
238・・・温度制御部
239・・・主制御部
240・・・コントローラ
241a〜241i・・・MFC(マスフローコントローラ)
271・・・HCD(SiCl)ガス供給源
272・・・NHガス供給源
273・・・Cガス供給源
274・・・Nガス供給源
275・・・NFガス供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内で基板上に炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記炭素が添加された窒化シリコン膜を形成する工程では、
前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して基板上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成する第1工程と、
前記処理容器内に窒素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記シリコン膜を熱窒化して窒化シリコン膜に改質する第2工程と、
前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して前記窒化シリコン膜上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成する第3工程と、
前記処理容器内に炭素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化シリコン膜上に形成された前記シリコン膜または前記窒化シリコン膜に炭素を添加する第4工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給するシリコン含有ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素を含むガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に炭素を含むガスを供給する炭素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して基板上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成し、前記処理容器内に窒素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記シリコン膜を熱窒化して窒化シリコン膜に改質し、前記処理容器内にシリコンを含むガスを供給して前記窒化シリコン膜上に1原子層から数原子層のシリコン膜を形成し、前記処理容器内に炭素を含むガスを熱で活性化して供給することで、前記窒化シリコン膜上に形成された前記シリコン膜または前記窒化シリコン膜に炭素を添加し、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うように前記シリコン含有ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記炭素含有ガス供給系、および前記ヒータを制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−147139(P2010−147139A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320773(P2008−320773)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】