説明

半導体装置の製造方法

【課題】モールド金型のキャビティ内で硬化した樹脂封止体を破損させることなく、キャビティから取り出すことのできる技術を提供する。
【解決手段】モールド金型のキャビティ内にある樹脂封止体12cを下金型3から離型するときに、まず、下型エジェクタピン5aにより樹脂封止体12cを、その厚さの、例えば1〜2割程度押し上げた後、プランジャ14を上昇させる。次に、プランジャ14によりカル内の樹脂封止体12cを押し上げることにより樹脂封止体12cの全体を斜めに押し上げて、下型エジェクタピン5aの先端部から剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、モールド金型を用いて半導体装置を樹脂封止した樹脂封止体をモールド金型からエジェクトする方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2002−347087号公報(特許文献1)には、エジェクトピンプレート駆動装置によりエジェクトピンプレートを上昇させ、成形品エジェクタ用突き上げピンにより成形品エジェクタピンを上昇させて、キャビティから成形品を離型させ、同時にゲート内の樹脂(ゲート樹脂)を成形品から分離する樹脂モールディング装置が開示されている。さらに、上記エジェクタピンプレートが上昇すると、ランナエジェクタ用突き上げピンがランナエジェクタピンを押し上げて、樹脂流路に成形されたランナ樹脂をゲート樹脂と共に支持部材から離型することが開示されている。
【0003】
また、特開平7−148770号公報(特許文献2)には、プランジャにより成形品カル部分を突き出し、同時にエジェクタピンを突き出しすることによって、成形品カル部分と同時にパッケージ部等の成形品部分が突き出されて成形品を離型するトランスファモールディング装置が開示されている。
【0004】
また、特開平7−22451号公報(特許文献3)には、エポキシ系封止樹脂の硬化後の離型動作時に、エジェクタピンとプランジャとが、リニアエンコーダ(同期作動手段)によって、同時に同じ高さだけ成形品とポットに残ったカルとを押し上げるトランスファモールド用の半導体製造装置が開示されている。
【0005】
また、特開平11−277588号公報(特許文献4)には、単一のモータによりプランジャおよびエジェクタピンを同時に駆動し、これらにより原板を均一に押し出すようにした成形品のエジェクタ方法および機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−347087号公報
【特許文献2】特開平7−148770号公報
【特許文献3】特開平7−22451号公報
【特許文献4】特開平11−277588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体チップが搭載されたリードフレームとモールドレジン(熱硬化性樹脂)との密着性の向上および半導体チップの耐湿性の向上等を図るために、半導体チップやリードフレームなどとの密着力の強いモールドレジンが使用されている。しかし、上記密着力の強いモールドレジンを使用すると、モールド金型からの樹脂封止体(成形品)の離型性も低下し、離型時に樹脂封止体に割れや欠けが生じてしまう。
【0008】
そこで、本発明者らは、モールド金型のクリーニングの回数を増やしてモールド金型からの樹脂封止体の離型性を回復させると共に、モールディング装置に樹脂封止体の外周、すなわちリードフレームの外枠を押し上げるためのエジェクタピンを追加して、上記離型性の向上を図った。しかし、この場合は、モールド金型のキャビティとモールドレジンとの密着性が強いために、モールドレジンとリードフレームとの界面において剥離が生じる問題が発生した。
【0009】
そこで、さらに本発明者らは、従来、トレーサビリティ(traceability)用のキャビティ番号を刻印するためのモールド金型のキャビティに固定されていたエジェクタピンを可動式とし、樹脂封止体をこの可動式エジェクタピンにより押し上げる(突き上げる)構造をモールディング装置に採用した。ところが、樹脂封止体はモールド金型のキャビティに密着しており、樹脂封止体の表面とキャビティの表面とはまばらに剥がれていくので、可動式エジェクタピンを押し上げた時に、樹脂封止体は真っ直ぐに上方に押し上げられずに斜めになってしまう。エジェクタピンは、その先端部分がモールドレジン内に埋まった状態であり、しかもモールドレジンと密着しているため、斜めになった樹脂封止体からエジェクタピンが離れる時に、エジェクタピンによってエジェクタピンの先端部周囲にあった樹脂封止体が欠けてしまう。
【0010】
図19〜図21に、本発明者らが検討したモールディング装置の要部断面図を示す。図19(a)は、エジェクタピンが樹脂封止体を押し上げ始めたときのキャビティ、ランナ、およびカルにおける樹脂封止体の状態を説明するモールディング装置の要部断面図、図19(b)は、エジェクタピンが樹脂封止体を押し上げ始めたときの複数のキャビティにおける樹脂封止体の状態を説明するモールディング装置の要部断面図である。また、図20は、樹脂封止体の押し上げが終了したときのキャビティ、ランナ、およびカルにおける樹脂封止体の状態を説明するモールディング装置の要部断面図、図21(a)および(b)は、図19(a)および(b)において矢印で示した箇所の樹脂封止体の拡大図である。
【0011】
図19(a)および(b)に示すように、半導体チップ1およびリードフレーム2を樹脂封止した樹脂封止体12cをモールド金型の下型3から離型する際には、キャビティへモールドレジンを押し出すプランジャ14は、その役目を終え、次のモールドに備えてポット13にタブレットが投入できる位置まで下降し、樹脂封止体12cは下型エジェクタピン5aによって押し上げられる。
【0012】
しかし、樹脂封止体12cとモールド金型の下金型3との密着性が強いために、樹脂封止体12cの全体が下金型3から一度に剥がれるのではなく、樹脂封止体12cが下金型3からまばらに(局所的に)剥がれていくので、樹脂封止体12cが斜めになってしまう。最終的には、図20に示すように、樹脂封止体12cは下金型3から完全に剥離はするが、前述したように、樹脂封止体12cと下金型3とが剥がれる過程で、樹脂封止体12cは斜めになる。このため、斜めになった樹脂封止体12cから下型エジェクタピン5aが離れる時に、図21(a)および(b)に示すように、下型エジェクタピン5aによって下型エジェクタピン5aの先端部の周囲にある樹脂封止体12cが欠けてしまう。
【0013】
本発明の目的は、樹脂封止体を破損させることなく、樹脂封止体をモールド金型から取り出すことのできる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
この実施の形態は、キャビティ、キャビティと連通し、モールドレジンの流入経路となるランナ、ランナと連通し、モールドレジンの流入源となるカル、およびカルと連通し、モールドレジンが投入されるポットが形成された下金型と、下金型の上方に位置する上金型と、ポットに収容され、ポットに投入されたモールドレジンを押し出すプランジャとを有するモールディング装置を用いて半導体チップを樹脂封止する半導体装置の製造方法である。まず、半導体チップを搭載したリードフレームを用意し、下金型のキャビティ上に半導体チップが位置するように配置し、製品領域の外側、すなわちリードフレームの外周部分を下金型と上金型とで挟む。続いてプランジャを第1位置から第1位置よりも高い第2位置へ押し上げて、ポットに投入されたモールドレジンをキャビティ内に充填させ、モールドレジンが硬化した後、下金型と上金型とを開き、プランジャを第2位置から第2位置よりも低い第3位置へ下降させる。続いて下型エジェクタピンを上昇させて、キャビティ内のモールドレジンが硬化した樹脂封止体を、キャビティ内のモールドレジンが硬化した樹脂封止体の厚さの1〜2割の高さまで下型エジェクタピンで押し上げた後、プランジャを第3位置から下型エジェクタピンの先端部よりも高い第4位置まで上昇させて、カル内のモールドレジンが硬化した樹脂封止体をプランジャで押し上げて、キャビティ内のモールドレジンが硬化した樹脂封止体から下型エジェクタピンの先端部を離型する。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
樹脂封止体を破損させることなく、樹脂封止体をモールド金型から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1によるモールディング装置の一例を示す要部断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるモールディング装置の下金型の一例を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態1による半導体装置の製造方法の工程図である。
【図4】(a)はリードフレームの外形の一例を示す平面図、(b)は半導体チップを搭載したリードフレームの外形の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1による半導体装置のモールド工程中におけるモールディング装置の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置のモールド工程におけるモールディング装置の要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置のモールド工程におけるモールディング装置の要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置のモールド工程におけるモールディング装置の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置のモールド工程におけるモールディング装置の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置のモールド工程におけるモールディング装置の要部断面図である。
【図11】(a)は本発明の実施の形態1によるエッジを丸く加工した下型エジェクタピンの先端部の断面図、(b)は本発明の実施の形態1によるエッジをテーパ加工した下型エジェクタピンの先端部の断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1によるモールディング装置おいて使用する下金型のキャビティの表面を拡大した断面図を示す。
【図13】本発明の実施の形態1によるモールディング装置の下金型の他の例を示す上面図である。
【図14】本発明の実施の形態2による配線基板の表面の一例を示す平面図である。
【図15】本発明の実施の形態2による配線基板の裏面の一例を示す平面図である。
【図16】本発明の実施の形態2によるモールド後の配線基板の表面側の一例を示す平面図である。
【図17】本発明の実施の形態2によるBGAパッケージの側面図である。
【図18】本発明の実施の形態2によるモールド後の配線基板の表面側の他の例を示す平面図である。
【図19】(a)は本発明者らが検討したエジェクタピンが樹脂封止体の押し上げ始めたときのキャビティ、ランナ、およびカルにおける樹脂封止体の状態を説明するモールディング装置の要部断面図、(b)は本発明者らが検討したエジェクタピンが樹脂封止体を押し上げ始めたときの複数のキャビティにおける樹脂封止体の状態を説明するモールディング装置の要部断面図である。
【図20】本発明者らが検討した樹脂封止体の押し上げが終了したときのキャビティ、ランナ、およびカルにおける樹脂封止体の状態を説明するモールディング装置の要部断面図である。
【図21】(a)は図19(a)および(b)において矢印で示す箇所の樹脂封止体の拡大平面図、(b)は図19(a)および(b)において矢印で示す箇所の樹脂封止体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0021】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、被モールド部材としてリードフレームを例示し、主として複数の半導体チップが搭載されたリードフレームを樹脂封止するモールド工程について説明する。
【0024】
半導体チップを封止する樹脂封止体または半導体チップが搭載される配線基板に使われるモールドレジン(樹脂部材)の難燃剤に含まれる臭素は欧州RoHS指令対象外ではあるが、環境に影響を与える可能性があると言われている。そこで、近年、このようなモールドレジンに対しては、環境保護および環境負荷物質低減の観点から臭素、塩素、アンチモンなどを含まないハロゲンフリー部材が使用されるようになってきている。
【0025】
具体的には、電気・電子機器の廃棄物の収集および回収が規定され、さらに、分別回収された廃棄物から除外すべき物質に臭素系難燃剤を含有するプラスチックがWEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment)指令によって規定されている。このため、樹脂封止体または配線基板を構成するモールドレジンに対して、ハロゲンフリー部材を使用する要求が拡大している。樹脂封止体を構成するモールドレジンに使用するハロゲンフリー部材とは、塩素の含有率が0.09重量%以下で、臭素の含有率が0.09重量%以下であり、かつ、アンチモンの含有率が0.09重量%以下である材料である。また、配線基板を構成するモールドレジンに使用するハロゲンフリー部材とは、塩素の含有率が0.09重量%以下で、臭素の含有率が0.09重量%以下であり、かつ、塩素と臭素の総量が0.15重量%以下である材料である。つまり、樹脂封止体または配線基板を構成するモールドレジンにハロゲンフリー部材を使用した場合は、前述したWEEE指令によって規定されている材料を使用していることになる。
【0026】
ところが、前述したようなハロゲンフリー部材は、モールド樹脂を構成する材料が従来の材料と異なる部分がある。このような材料構成の違いにより、樹脂封止体を構成するモールドレジンにハロゲンフリー部材を使用すると、従来のモールドレジンと比べて、モールディング装置のモールド金型とモールドレジンとの密着性が強くなり、モールド金型からの樹脂封止体の離型性が悪くなる場合がある。
【0027】
本願発明は、上記のような今後パッケージ材料として必要不可欠となると思われるハロゲンフリー部材や、ハロゲンフリー部材に限らず、従来のモールドレジン(ハロゲンフリーに対応していないモールドレジン)の中でもモールド金型との密着が高く、離型性が悪いものに対して、樹脂封止体のモールド金型からの離型性の向上を実現することのできる技術である。
【0028】
本実施の形態1によるモールディング装置を図1および図2を用いて説明する。図1はモールディング装置の一例を示す要部断面図、図2はモールディング装置の下金型の一例を示す上面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態1によるモールディング装置は、いわゆるロアプランジャ型トランスファモールド用の半導体製造装置である。ワイヤボンディングされた半導体チップ1を搭載したリードフレーム2が配置される下金型3と、下金型3の上方に位置し、この下金型3と係合してリードフレーム2を密閉する上金型4とを有している。
【0030】
下金型3には、半導体チップ1を樹脂封止するパッケージ領域となるキャビティ3a、キャビティ3a内にモールドレジンを流入する際の入り口となるゲート3b、ゲート3bを介してキャビティ3aと連通し、モールドレジンの流入経路となるランナ3c、ランナ3cと連通し、モールドレジンの流入源となるカル3dなどが形成されている。下金型3側には、半導体チップ1を樹脂封止した樹脂封止体をキャビティ3aから押し上げるための下型エジェクタピン5aおよびランナ3cから押し上げるためのランナエジェクタピン5bが設けられている。下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bの一端側は下型エジェクタプレート6に固定され、さらにこの下型エジェクタプレート6は、その下方に位置する固定された下型エジェクタロッド8に取り付けられている。下型エジェクタプレート6と下金型3との間には、下型圧縮バネ7が設けられている。また、下型エジェクタピン5aの他の一端側は、キャビティ3aの底面から30〜50μm程度突出するように設けられている。キャビティ3a内に突出したこの下型エジェクタピン5aの先端部の内側には、例えば高さ20μm程度のキャビティ番号等が刻印されている。このキャビティ番号は、製品である半導体装置の樹脂封止体に転写され、品質上の問題が生じた際のトレーサビリティ(traceability)に用いられる。
【0031】
下金型3は、第1のモータ9によって上下動自在に動作させることができる。下金型3が下方に移動したときに、下型エジェクタピン5aが樹脂封止体をキャビティ3aから押し出すようになっている。
【0032】
下金型3には、タブレット(モールドレジンを圧力で固めたもの)12aが投入されるポット13が上記カル3dと連通して形成されている。ポット13に投入されたタブレット12aは、プランジャ14を第2のモータ15によって上昇させることによって加圧され、溶融し流動化したモールドレジンは、カル3d、ランナ3c、およびゲート3bを介してキャビティ3a内に注入されるようになっている。
【0033】
上金型4側には、半導体チップ1を搭載したリードフレーム2をモールドレジンによって封止した後に、上金型4を押し上げるための上型エジェクタピン16および上型エジェクタロッド17が設けられている。この上型エジェクタピン16および上型エジェクタロット17の一端側は上型エジェクタプレート18に固定され、さらにこの上型エジェクタプレート18と上金型4との間には、上型圧縮バネ19が設けられている。
【0034】
また、図2に示すように、下金型3は、その上面にキャビティ3a、ゲート3b、ランナ3c、およびカル3dが形成されたシングル型の金型である。すなわち、1つのカル3dには同一方向(図2では紙面左方向)に2つのランナ3cが連通されており、それぞれゲート3bを介してキャビティ3aと連通されている。図2には、4つのキャビティ3aを設けた下金型3を記載しているが、これに限定されるものではなく、例えば6つのキャビティ3aを設けた下金型3を用いることもできる。さらに、図示は省略するが、下金型3の周辺部には複数のウエッジが形成されている。ウエッジは、例えば凸状の突起物から形成されており、下金型3と上金型4との位置合わせができるように構成されている。
【0035】
次に、本実施の形態1による半導体装置の製造方法(リードフレームのモールド工程)について図3〜図10を用いて説明する。図3は半導体装置の製造方法の工程図、図4(a)はリードフレームの外形の一例を示す平面図、図4(b)は半導体チップを搭載したリードフレームの外形の一例を示す平面図、図5〜図10はリードフレームのモールド工程におけるモールディング装置の要部断面図である。本願発明においては、リードフレームのモールド工程における樹脂封止体の取り出しが主要な特徴となっており、その詳細および効果等について以降の説明で明らかにする。
【0036】
まず、リードフレーム2を用意する。例えば図4(a)に示すように、リードフレーム2は、シングル型のリードフレームであり、リードフレーム2の長手方向(x軸方向)を列とし、この列の直交する方向(y軸方向)を行とすると、半導体製品1つ分に該当する単位フレーム20が4行1列に配置された構成となっている。リードフレームの片面(表面)に存在する各単位フレーム20の中央部には、半導体チップを搭載するダイパッド21が設けられ、ダイパッド21を囲むように多数のリード22が設けられている。また、リードフレーム2の周辺には、リードフレーム2の位置決めのための複数の孔24が設けられている。
【0037】
次に、図4(b)に示すように、各単位フレーム20のダイパッド21上に、半導体チップ1を導電性の銀ペーストや絶縁性の接着剤を介して搭載する(図3のダイボンド工程)。さらに、半導体チップ1上のパッドとダイパッド21を囲むように設けられた多数のリード22とを金または銅等からなるワイヤ23によって電気的に接続する(図3のワイヤボンディング工程)。
【0038】
次に、リードフレーム2に搭載された各半導体チップ1を樹脂封止する(図3のモールド工程)。以下、モールド工程を図5〜図10を用いて詳細に説明する。
【0039】
まず、図5に示すように、下金型3の各キャビティ3a上に各半導体チップ1が位置するように、上記図4(b)に示したワイヤボンディングまで施されたリードフレーム2を下金型3上に設置する。また、例えば高周波加熱機などで予備加熱され、ある程度軟化したタブレット12aをポット13内に投入する。ここで、プランジャ14は、ポット13内にタブレット12aが収まる第1位置に置かれている。
【0040】
次に、図6に示すように、下金型3、下型エジェクタピン5a、ランナエジェクタピン5b、下型エジェクタプレート6、下型圧縮バネ7、およびプランジャ14などのモールディング装置の下型全体を上昇させることにより、上金型3と下金型4とを閉じる。このとき、リードフレーム2を上金型3と下金型4との間にモールドレジンが洩れることのないように隙間無く挟み、リードフレーム2を固定する。この時点でも、プランジャ14は、ポット13内にタブレット12aが収まる第1位置に置かれている。
【0041】
次に、図7に示すように、プランジャ14を第2のモータ15によって第1位置から上昇させて、溶融し流動化したモールドレジン12bをポット13から加圧移動させる。モールドレジン12bはカル3d、ランナ3c、およびゲート3bを通ってキャビティ3a内に充填され、これによって半導体チップ1とリードフレーム2の一部がモールドレジン12bで樹脂封止される。ここで、ポット13内のモールドレジン12bを押し出したプランジャ14は、第1位置よりも高い第2位置に置かれている。
【0042】
次に、図8に示すように、所定時間経過してモールドレジン12bが硬化したところで、下金型3、下型エジェクタピン5a、ランナエジェクタピン5b、下型エジェクタプレート6、下型圧縮バネ7、およびプランジャ14などのモールディング装置の下型全体を下降させることにより、上金型3と下金型4とを開く。この型開きと同時に、またはこの型開きの後に、プランジャ14を第2位置から下降させて、第2位置よりも低い第3位置に置く。この第3位置は上記第1位置であってもよい。
【0043】
次に、図9に示すように、第1のモータ9によって下金型3を所定の位置まで下降させて、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bによりそれぞれキャビティ3a内およびランナ3c内のモールドレジン12bが硬化した樹脂封止体12cを同時に押し上げる(第1回目の押し上げ動作)。下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bを押し上げる高さは製品によって異なるが、例えばキャビティ3a内の樹脂封止体12cの厚さの1〜2割程度が望ましい。例えばキャビティ3a内の樹脂封止体12cの厚さが3mm程度であれば、1mm以下の範囲が適切な範囲と考えられ、さらに、量産性を考慮した範囲としては0.3〜0.4mmが最も好適と考えられる。また、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bを上昇させる速さは、例えば0.3mm/秒以下が適切な範囲と考えられ、さらに、量産性を考慮した範囲としては0.1mm/秒が最も好適と考えられる。
【0044】
ここでは、まだ、下金型3から樹脂封止体12cは完全に離型せずに、局所的に下金型3と樹脂封止体12cとが密着している箇所がある。しかし、キャビティ3aと樹脂封止体12cとの距離は、前述したように、例えばキャビティ3a内の樹脂封止体12cの厚さの1〜2割程度であるので、樹脂封止体12cが斜めに傾いたとしても、樹脂封止体12cから下型エジェクタピン5aが離れることがないので、下型エジェクタピン5aによって下型エジェクタピン5aの先端部の周囲にあった樹脂封止体12cが欠けることはない。
【0045】
次に、図10に示すように、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bがそれぞれキャビティ3a内およびランナ3c内の樹脂封止体12cを押し上げた後、第1ステップとして、第2のモータ(15)によってプランジャ14を1〜2秒程度の時間を掛けて、樹脂封止体12cに接するまで上昇させ、さらに、第2ステップとして、プランジャ14によりカル3d内の樹脂封止体12cを押し上げる(第2回目の押し上げ動作)。
【0046】
上記第1ステップであるプランジャ14を押し上げるこの1〜2秒程度の間に、前述した局所的に下金型3と樹脂封止体12cとが密着している箇所において、下金型3と樹脂封止体12cとの剥離を進行させておくことにより、樹脂封止体12cは、下型エジェクタピン5aの先端部およびランナエジェクタピン5bの先端部を除いて、下金型3から完全に離型する。ここでも、キャビティ3aと樹脂封止体12cとの距離は、前述したように、例えばキャビティ3a内の樹脂封止体12cの厚さの1〜2割程度であるので、樹脂封止体12cが斜めに傾いたとしても、樹脂封止体12cから下型エジェクタピン5aが離れることがないので、下型エジェクタピン5aによって下型エジェクタピン5aの先端部の周囲にあった樹脂封止体12cが欠けることはない。
【0047】
上記第2ステップであるプランジャ14によりカル3d内の樹脂封止体12cを押し上げるときは、プランジャ14は、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bの先端部よりも、例えば1〜3mm程度高い第4位置まで押し上げられる。これにより、樹脂封止体12cの全体は斜めに押し上げられて、樹脂封止体12cから下型エジェクタピン5aの先端部およびランナエジェクタピン5bの先端部が剥離する。プランジャ14により樹脂封止体12cを押し上げるときには、すでに樹脂封止体12cと下金型3とは完全に剥離しているので、樹脂封止体12cから下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bは容易に離れる。従って、樹脂封止体12cが斜めに傾いたとしても、下型エジェクタピン5aによって下型エジェクタピン5aの先端部の周囲にある樹脂封止体12cが欠けることはない。
【0048】
すなわち、溶融したモールドレジン12bを硬化させて成形された樹脂封止体12cを下金型3から離型するときには、まず、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bによりそれぞれキャビティ3a内およびランナ3c内の樹脂封止体12cを、例えばキャビティ3a内の樹脂封止体12cの厚さの1〜2割程度押し上げ(第1回目の押し上げ動作)、次に、プランジャ14をカル3d内の樹脂封止体12cに接するまで上昇させ、さらに、プランジャ14によりカル3d内の樹脂封止体12cを押し上げることにより樹脂封止体12cの全体を斜めに押し上げる(第2回目の押し上げ動作)。第1回目の樹脂封止体12cの押し上げにより、下金型3から樹脂封止体12cは離型し、局所的に下金型3と樹脂封止体12cとが密着している箇所があっても、プランジャ14を上昇させる間に剥離が進行することにより、完全に下金型3から樹脂封止体12cは離型する。そして、次の第2回目の樹脂封止体12cの押し上げ動作により、下型エジェクタピン5aの先端部から樹脂封止体12cを離型させるが、ここで、下金型3から樹脂封止体12cは完全に離型しているので、樹脂封止体12cを欠くことなく、下型エジェクタピン5aの先端部を離型させることができる。
【0049】
その後、モールド工程において半導体チップ1およびリードフレーム2の一部が樹脂封止された樹脂封止体12cは、モールディング装置から取り出され、切断工程において切断金型により個々の半導体装置に切り分けられ、次に、成形工程において成形金型により成形される(図3のリード切断、成形工程)。組み立てが完了した半導体装置は、製品規格に応じた電気的検査や外観検査といった検査工程を経て良品と不良品とに選別され(図3の検査工程)、良品と判断された半導体装置は出荷される(図3の出荷工程)。
【0050】
次に、樹脂封止体12cの欠けをさらに低減するためのものについて、いくつか説明する。
【0051】
図11(a)および(b)に、本実施の形態1によるモールディング装置において使用する下型エジェクタピン5aの先端部の形状を示す。図11(a)はエッジを丸く加工した下型エジェクタピン5aの先端部の断面図、図11(b)はエッジをテーパ加工した下型エジェクタピン5aの先端部の断面図である。
【0052】
下型エジェクタピン5aの先端部のエッジには、図11(a)に示すように、丸い加工が施されている。丸い加工が施されている部分の曲率半径Rは、下型エジェクタピン5aが封止樹脂体12cに入り込んだ深さ以下、例えば50μm以下である。または、下型エジェクタピン5aの先端部のエッジには、図11(b)に示すように、45°のテーパが施されている。テーパ部分の長さLは、下型エジェクタピン5aが封止樹脂体12cに入り込んだ深さ以下、例えば50μm以下である。
【0053】
このように、下型エジェクタピン5aの先端部のエッジに丸い加工を施す、またはテーパを施すことにより、前述のプランジャ14による第2回目の押し上げ動作時に下型エジェクタピン5aの先端部が樹脂封止体12cに引っ掛かることが無くなり、離型性が向上するので、樹脂封止体12cの欠けを防止することができる。
【0054】
図12に、本実施の形態1によるモールディング装置おいて使用する下金型3のキャビティ3aの表面を拡大した断面図を示す。
【0055】
下金型3のキャビティ3aは、台形の断面形状を有しており、すなわち、パッケージ製品の上面となる底面部3a1とパッケージ製品の側面となるテーパ部3a2とからなる。本実施の形態1によるキャビティ3aでは、図12に示すように、底面部3a1の表面の粗さよりもテーパ部3a2の表面の粗さが細かくなるように、加工されている。例えば底面部3a1の表面の粗さR1(最大値と最小値との距離)が10〜15μm程度に対して、テーパ部3a2の表面の粗さR2(最大値と最小値との距離)は5μm程度である。
【0056】
このように、キャビティ3aのテーパ部3a2の表面の粗さをより細かくすることにより、樹脂封止体12cのモールドレジン材の下金型3のテーパ部3a2の表面に対するアンカー効果(食い付き効果)が小さくなるので、下金型3と樹脂封止体12cとの離型性が向上し、樹脂封止体12cの欠けを防止することができる。
【0057】
なお、前述した実施の形態1では、前記図2に示したように、下金型3は、シングル型の金型を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、図13に示すように、マトリックス型の金型であってもよい。すなわち、1つのカル3dには同一方向(図13では紙面左方向)に2つのランナ3cが連通しており、1つのランナ3cには3つのサブランナ3eが連通しており、それぞれのサブランナ3eにはゲート3bを介して3つのキャビティ3aが連通している。
【0058】
また、前述した実施の形態1では、下型エジェクタピン5aはキャビティ3aに2本ずつ設けられているが、これに限定されるものではなく、4本または5本であってもよい。
【0059】
さらに、ここでは片面モールド構造のパッケージを例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えばQFP(Quad Flat Package)のような両面モールド構造のパッケージに適用してもよい。この場合、上金型側にラミネートシートを併用すると、離型性の向上により効果的である。
【0060】
さらに、ここではリードフレーム1枚取りの場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば2枚取りのような複数取りの場合にも適用することができる。リードフレームの枚数が増えると、金型に密着する部分の面積が1枚の場合に比べて増えるので、離型性が低下する確立は高くなる。そのような場合においても、ここで説明した主要なものは、離型性の向上に効果的である。
【0061】
このように、本実施の形態1によれば、溶融したモールドレジン12bを硬化させて成形された樹脂封止体12cを下金型3から離型するときに、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bによりそれぞれキャビティ3a内およびランナ3c内の樹脂封止体12cを、キャビティ3a内の樹脂封止体12の厚さの、例えば1〜2割程度押し上げて、キャビティ3aおよびランナ3cから樹脂封止体12cを剥離した後(第1回目の押し上げ動作)、プランジャ14を上昇させる間に樹脂封止体12cを下金型3から完全に剥離させ、その後、プランジャ14によりカル3d内の樹脂封止体12cを押し上げることにより樹脂封止体12cの全体を斜めに押し上げて、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bの先端部から樹脂封止体12cを剥離する(第2回目の押し上げ動作)。これにより、樹脂封止体12cに欠けを生ずることなく、樹脂封止体12cを下金型3から離型することができる。
【0062】
さらに、下型エジェクタピン5aの先端部のエッジに丸い加工またはテーパを施すことにより、樹脂封止体12cからの下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bの離型性を向上させることができる。また、キャビティ3aのテーパ部3a2の表面の粗さを、例えば5μm程度と細かくすることにより、下金型3と樹脂封止体12cとの離型性を向上させることができる。
【0063】
(実施の形態2)
前述した実施の形態1では、複数の半導体チップ1が搭載されたリードフレーム2を樹脂封止する構造の半導体装置のモールド工程について説明した。本実施の形態2では、BGA(Ball Grid Array)パッケージに代表されるような複数の半導体チップが表面に搭載され、各半導体チップに対応して裏面に半田ボール等の外部端子が形成される配線基板を樹脂封止するモールド工程について説明する。
【0064】
本実施の形態2による半導体装置の製造方法(配線基板のモールド工程)について図14〜図17を用いて説明する。図14は配線基板の表面側の一例を示す平面図、図15は配線基板の裏面側の一例を示す平面図、図16はモールド後の配線基板の表面側の一例を示す平面図、図17はBGAパッケージの側面図である。
【0065】
まず、例えば図14および図15に示すような、表面に半導体チップ31が搭載された単位フレーム33が複数存在するシングル型の配線基板32を用意する。この配線基板32は、例えば配線基板32の長手方向(x軸方向)を列とし、この列の直交する方向(y軸方向)を行とすると、半導体製品1つ分に該当する単位フレーム33が5行1列に配置された構成となっている。
【0066】
配線基板32は、これに限定されないが、主に、コア材と、このコア材の主面を覆うようにして形成された保護膜と、このコア材の主面と反対側に位置する裏面を覆うようにして形成された保護膜とを有する構成になっており、コア材は、例えばその主面、裏面および内部に配線を有する多層配線構造になっている。コア材の各絶縁層は、例えばガラス繊維にエポキシ系またはポリイミド系の樹脂を含浸させた高弾性樹脂基板で形成されている。コア材の各配線層は、例えば銅を主成分とする金属膜で形成されている。コア材の主面上の保護膜は、主にコア材の最上層に形成された配線を保護する目的で形成されている。
【0067】
配線基板32の表面には、半導体チップ31の端部から単位フレーム33の端部の間の領域において、図示は省略するが、配線基板32の各辺に沿って1列の複数のリード電極が配置されている。これらリード電極は、配線基板32のコア材に形成された複数の最上層配線のそれぞれの一部分で構成され、コア材の主面上の保護膜にそれぞれのリード電極に対応して形成された開口部により露出している。
【0068】
各単位フレーム33のチップ搭載領域上には、半導体チップ31が搭載されており、半導体チップ31上のパッドと前記リード電極とがワイヤ(金線)36によって電気的に接続されている。また、列方向に隣接する単位フレーム33の間のモールドレジンの流入経路となる部分(メタルパターン部38)には、ランナーブレイク時にモールドレジンが接着しないように、例えば金メッキ処理が施されている。モールド工程の後の切断工程において、このメタルパターン部38を起点として個々の製品に切り分けられる。配線基板32の周辺には、配線基板32の位置決めのための複数の孔37が設けられている。
【0069】
配線基板32の裏面には、複数の裏面パッド電極39が配置されている。これら裏面パッド電極39は、配線基板32のコア材に形成された複数の最下層配線のそれぞれの一部分で構成され、コア材の裏面上の保護膜にそれぞれの裏面パッド電極39に対応して形成された開口部により露出している。コア材に形成された複数の最上層配線と複数の最下層配線とは、コア材を貫通する複数の貫通孔の内部に形成される配線によってそれぞれ電気的に接続されている。
【0070】
次に、図16に示すように、モールディング装置を用いて配線基板32を樹脂封止体12cによって樹脂封止する。配線基板32のモールド工程は、前述した実施の形態1において図5〜図10を用いて説明したモールド工程と同様である。
【0071】
すなわち、溶融したモールドレジン12bを硬化させて成形された樹脂封止体12cを下金型3から離型するときには、まず、下型エジェクタピン5aおよびランナエジェクタピン5bによりそれぞれキャビティ3a内およびランナ3c内の樹脂封止体12cを、例えばキャビティ3a内の樹脂封止体12cの厚さの1〜2割程度押し上げ(第1回目の押し上げ動作)、次に、プランジャ14をカル3d内の樹脂封止体12cに接するまで上昇させ、さらに、プランジャ14によりカル3d内の樹脂封止体12cを押し上げることにより樹脂封止体12cの全体を斜めに押し上げる(第2回目の押し上げ動作)。第1回目の樹脂封止体12cの押し上げ動作により、下金型3から樹脂封止体12cは離型し、局所的に下金型3と樹脂封止体12cとが密着している箇所があっても、プランジャ14を上昇させる間に完全に下金型3から樹脂封止体12cは離型する。次の第2回目の樹脂封止体12cの押し上げ動作により、下型エジェクタピン5aの先端部から樹脂封止体12cを離型させるが、ここで、下金型3から樹脂封止体12cは完全に離型しているので、樹脂封止体12cを欠くことなく、下型エジェクタピン5aの先端部を離型させることができる。
【0072】
次に、図17に示すように、配線基板32の裏面に半田バンプ40を形成する。例えば配線基板32の裏面を上方に向けた状態で、配線基板32の裏面に設けられた裏面パッド電極39上に半田ボール40を搭載し、例えば240°程度の温度でリフロー処理を行って、配線基板32の裏面の裏面パッド電極39に接合する半田バンプ40を形成する。なお、LGA(Land Grid Array)パッケージのときは、本工程は省略される。
【0073】
その後、配線基板32をモールディング装置から取り出し、切断工程で、配線基板32を所定の位置で切断して個片に切り離し、半導体装置が得られる。製造された半導体装置は、半田バンプ40によってマザーボードなどに搭載することができる。
【0074】
なお、前述した実施の形態2では、シングル型のモールド金型を用いて樹脂封止される配線基板32を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、マトリックス型のモールド金型を用いて樹脂封止される基板にも適用することができる。
【0075】
図18に、マトリックス型のモールド金型を用いて樹脂封止した後の配線基板の表面側の平面図の一例を示す。すなわち、モールド工程直後の樹脂封止体41は、キャビティ部レジン41a、ゲート部レジン41b、サブランナ部レジン41c、ランナ部レジン41d、およびカル部レジン41eが繋がっている。1つのカル部レジン41eには同一方向(図18では紙面左方向)に2つのランナ部レジン41dが繋がり、1つのランナ部レジン41dには3つのサブランナ部レジン41cが繋がり、さらに、それぞれのサブランナ部レジン41cにはゲート部レジン41bを介してキャビティ部レジン41aが繋がっている。
【0076】
このように、本実施の形態2によれば、前述した実施の形態1で説明したリードフレーム2を樹脂封止するモールド工程と同様に、配線基板32を樹脂封止するモールド工程にも適用することができて、樹脂封止体12cに欠けを生ずることなく、樹脂封止体12cを下金型3から離型することができる。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、半導体チップ等を樹脂封止するモールド工程を含む半導体装置の製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 半導体チップ
2 リードフレーム
3 下金型
3a キャビティ
3a1 底面部
3a2 テーパ部
3b ゲート
3c ランナ
3d カル
3e サブランナ
4 上金型
5a 下型エジェクタピン
5b ランナエジェクタピン
6 下型エジェクタプレート
7 下型圧縮バネ
8 下型エジェクタロッド
9 第1のモータ
12a タブレット
12b モールドレジン
12c 樹脂封止体
13 ポット
14 プランジャ
15 第2のモータ
16 上型エジェクタピン
17 上型エジェクタロッド
18 上型エジェクタプレート
19 上型圧縮バネ
20 単位フレーム
21 ダイパッド
22 リード
23 ワイヤ
24 孔
31 半導体チップ
32 配線基板
33 単位フレーム
36 ワイヤ
37 孔
38 メタルパターン部
39 裏面パッド電極
40 半田バンプ
41 樹脂封止体
41a キャビティ部レジン
41b ゲート部レジン
41c サブランナ部レジン
41d ランナ部レジン
41e カル部レジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ、前記キャビティと連通し、モールドレジンの流入経路となるランナ、前記ランナと連通し、前記モールドレジンの流入源となるカル、および前記カルと連通し、前記モールドレジンが投入されるポットが形成された下金型と、前記下金型の上方に位置する上金型と、前記ポットに収容され、前記ポットに投入された前記モールドレジンを押し出すプランジャとを有するモールディング装置を用いて半導体チップを樹脂封止する半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体チップを搭載した被モールド部材を用意する工程と、
(b)前記下金型の前記キャビティ上に前記半導体チップが位置するように、前記被モールド部材を前記下金型と前記上金型とで挟む工程と、
(c)前記ポット内に前記モールドレジンが収まる第1位置に置かれた前記プランジャを、前記第1位置から前記第1位置よりも高い第2位置へ押し上げて、前記ポットに投入された前記モールドレジンを前記キャビティ内に充填させる工程と、
(d)前記下金型と前記上金型とを開く工程と、
(e)前記プランジャを前記第2位置から前記第2位置よりも低い第3位置へ下降させる工程と、
(f)下型エジェクタピンを上昇させて、前記キャビティ内の前記モールドレジンが硬化した樹脂封止体を前記下型エジェクタピンで押し上げる工程と、
(g)前記(f)工程の後、前記プランジャを前記第3位置から前記下型エジェクタピンの先端部よりも高い第4位置まで上昇させて、前記カル内の前記モールドレジンが硬化した樹脂封止体を前記プランジャで押し上げて、前記キャビティ内の前記モールドレジンが硬化した樹脂封止体から前記下型エジェクタピンの先端部を離型する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記下型エジェクタピンの先端部のエッジは、丸い加工もしくはテーパ加工が施されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、前記キャビティは底面部とテーパ部とからなり、前記底面部の表面の粗さよりも前記テーパ部の表面の粗さが細かいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、前記(f)工程において、前記下型エジェクタピンが押し上げる高さは、前記キャビティ内の前記モールドレジンが硬化した樹脂封止体の厚さの1〜2割であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、前記(f)工程において、前記下型エジェクタピンが押し上げる高さは、1mm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、前記(f)工程において、前記下型エジェクタピンが押し上げる高さは、0.3〜0.4mmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記(f)工程において、前記下型エジェクタピンを上昇させる速度は0.3mm/秒以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、前記(f)工程において、前記下型エジェクタピンを上昇させる速度は0.1mm/秒であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置の製造方法において、前記(g)工程において、前記プランジャが前記第3位置から前記第4位置へ上昇する時間は1〜2秒であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、前記(g)工程において、前記プランジャの前記第4位置は、前記下型エジェクタピンの先端部よりも1〜3mm高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、前記下型エジェクタピンの先端部のエッジが丸く加工されているときに、前記エッジの曲率半径は50μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、前記下型エジェクタピンの先端部のエッジがテーパ加工されているときに、前記エッジのテーパ角度は45°であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、45°のテーパが施された前記下型エジェクタピンの先端部のエッジの長さは50μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記被モールド部材は、リードフレームまたは配線基板であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記モールドレジンはハロゲンフリー部材であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記下金型の前記カルには同一方向に1つまたは2つ以上の前記ランナが連通し、各前記ランナにはゲートを介して1つの前記キャビティが連通していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記下金型の前記カルには同一方向に1つまたは2つ以上の前記ランナが連通し、各前記ランナにはゲートを介して2つ以上の前記キャビティが連通していることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−40625(P2011−40625A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187662(P2009−187662)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】