説明

半導体装置及びその製造方法並びに表示装置

【課題】非晶質シリコン薄膜をレーザーアニールして結晶性シリコン薄膜を形成する場合であっても、歩留まりやスループットの低下を抑制することができる半導体装置及びその製造方法並びに表示装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、絶縁性の基板11の一面側に、結晶性のシリコンからなる半導体層15を有する薄膜トランジスタTFTと、金属配線12からなる配線層LNと、が同層に設けられている。薄膜トランジスタTFTの半導体層15は、基板11の一面側に成膜された非晶質シリコン薄膜15xに対して、チャネル層となる領域上にのみ光熱変換層22をパターニング形成した後、レーザー光BMを走査して基板11全域に照射し、熱アニールを施すことにより、非晶質シリコン薄膜15xが結晶化されて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法並びに表示装置に関し、特に、非晶質の半導体膜を用いた薄膜トランジスタと、結晶質又は微晶質の半導体膜を用いた薄膜トランジスタとを同一基板上に備えた半導体装置及びその製造方法、並びに、該半導体装置を適用した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラ等の携帯機器をはじめ、テレビジョンやパーソナルコンピュータ等の電子機器のディスプレイやモニタとして、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイが用いられている。そして、このような薄型ディスプレイの表示パネルや駆動ドライバにおいては、一般にシリコン薄膜をチャネル層として用いた薄膜トランジスタ素子が用いられている。
【0003】
周知のように、薄膜トランジスタ素子は、シリコン薄膜の固体構造に基づいて、非晶質(アモルファス)シリコン薄膜トランジスタと、結晶性シリコン薄膜トランジスタの2種類に大別することができる。非晶質シリコン薄膜トランジスタは、非晶質シリコン薄膜を低コストで大面積に均一に成膜することができ、また、近接素子間の性能のバラツキが少ないという特長を有している。しかしながら、電子移動度が低いため(概ね0.5〜1cm2V-1s-1)、例えば非晶質シリコン薄膜トランジスタを表示装置に適用して、表示領域の画素と同時にドライバ等の回路を形成した場合、ドライバ回路として十分な性能を実現することができないという問題を有していた。また、非晶質シリコン薄膜トランジスタは、長期にわたって駆動させた場合、しきい値電圧(Vth)がシフトする(すなわち、ストレス耐性が低い)という欠点も有している。
【0004】
一方、結晶性シリコン薄膜トランジスタは、電子移動度が高く、経時的なしきい値電圧Vthのシフトも少ないので、上述したように、表示装置の画素と同時にドライバ回路を形成した場合であっても、ドライバ回路として十分な性能を実現することができるという特長を有している。このような結晶性シリコン薄膜トランジスタに用いるシリコン薄膜の形成方法としては、例えばプラズマ化学気相成長法(Plasma Enhanced chemical
vapor deposition ;PECVD)等を用いて、非晶質のシリコン薄膜を成膜した後、赤外線ランプやレーザー等による熱アニールにより非晶質シリコンを融解、冷却させることで結晶化する手法が知られている。
【0005】
ここで、レーザーにより非晶質シリコンを結晶化する際には、非晶質シリコンの吸収係数が高いエキシマーレーザーが通常用いられるが、量産化の観点からは出力が不安定で、メンテナンス性も悪いという問題を有している。そこで、出力がより安定していて、メンテナンス性にも優れている半導体レーザーの使用が提案されている。
【0006】
ところが、非晶質シリコンは、半導体レーザーにより発振される赤外光や可視光の波長の光に対する吸収係数が低いという問題を有している。そのため、効率的に非晶質シリコン膜を熱アニールする手法として、非晶質シリコン薄膜を成膜した後、当該薄膜上に赤外光や可視光に対する光吸収係数が高い光熱変換層を形成する方法が提案されている。これにより、光熱変換層にレーザー光を照射することで、光熱変換層が加熱され、その熱で下層の非晶質シリコンをアニールして効率的に結晶化することができる。このような結晶性シリコン薄膜の形成方法については、例えば特許文献1や非特許文献1、2等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−005508号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Sameshima and N. Andoh:Jpn. J. Appl. Phys. 44 (2005) 7305.
【非特許文献2】T.Sameshima, M. Maki, M, Takiuchi, N. Andoh, N. Sano, Y. Matsuda and Y. Andoh:Jpn. J. Appl. Phys. 46 (2007) 6474.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した各先行技術文献に示された結晶性シリコン薄膜の形成方法においては、薄膜トランジスタ素子を形成する基板上に一面に光熱変換層が成膜されるため、レーザー光を照射した際加熱する必要の無い箇所まで加熱される可能性があった。そのため、結晶性シリコン薄膜トランジスタのチャネル層となる領域以外の、例えば配線部分が加熱されると、当該配線上の膜が剥離したり、クラックが生じたりするという問題を有していた。特に、金属配線部分では加熱の度合いが大きくなるため、シリコン絶縁膜等の層間膜の剥離が顕著になり、製造歩留まりの低下を招くという問題を有していた。このような問題を回避するためには、配線部分を加熱しないようにレーザー高を局所的に照射する必要があるため、レーザー光の照射工程におけるスループット(又は作業効率)の低下を招くという問題を有していた。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、非晶質シリコン薄膜をレーザーアニールして結晶性シリコン薄膜を形成する場合であっても、歩留まりやスループットの低下を抑制することができる半導体装置及びその製造方法並びに表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明に係る半導体装置は、基板上に、少なくとも結晶性の膜質からなる半導体層を有する薄膜トランジスタを備え、前記薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体装置において、前記薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明に係る半導体装置は、基板上に、少なくとも、結晶性の膜質からなる半導体層を有する第1の薄膜トランジスタと、非晶質の半導体層を有する第2の薄膜トランジスタと、を備え、前記第1の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであり、前記第2の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記非晶質の薄膜からなることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の半導体装置において、前記第1の薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上に非晶質の薄膜を形成する工程と、薄膜トランジスタのチャネル層に対応する領域上にのみ、光熱変換層を形成する工程と、前記基板の全域にレーザー光を照射して、前記光熱変換層の下層に形成された前記非晶質の薄膜に熱アニールを施すことにより結晶化する工程と、前記光熱変換層を除去する工程と、を含むことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の半導体装置の製造方法において、前記レーザー光を照射して、前記非晶質の薄膜を熱アニールすることにより結晶化された前記薄膜からなる半導体層を、チャネル層として有する第1の薄膜トランジスタを形成する工程を、さらに有していることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の半導体装置の製造方法において、前記非晶質の薄膜からなる半導体層を、チャネル層として有する第2の薄膜トランジスタを形成する工程を、さらに有していることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の半導体装置の製造方法において、前記第1の薄膜トランジスタ及び第2の薄膜トランジスタを同一の工程を用いて同時に形成することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項5乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、前記レーザー光を照射して、前記非晶質の薄膜を熱アニールすることにより結晶化された前記薄膜は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項10記載の発明は、表示素子と、該表示素子を駆動するための画素駆動回路とを有する複数の表示画素が、基板上に2次元配列された表示パネルを備える表示装置において、前記画素駆動回路は、少なくとも、前記表示画素に表示データを書き込む際に、前記表示画素を選択状態に設定するための選択トランジスタと、前記表示データに応じた電流値を有する発光駆動電流を前記表示素子に供給する駆動トランジスタとを有し、少なくとも、前記駆動トランジスタは、結晶性の膜質からなる半導体層を有する第1の薄膜トランジスタからなり、前記選択トランジスタは、非晶質の半導体層を有する第2の薄膜トランジスタからなり、前記第1の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであり、前記第2の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記非晶質の薄膜からなることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項10記載の表示装置において、前記第1の薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項10又は11記載の表示装置において、前記表示素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0015】
請求項13記載の発明は、基板上に、複数の表示画素が2次元配列された画素アレイと、前記表示画素に表示データを書き込む際に、前記表示画素を選択状態に設定するための選択ドライバ部と、前記表示画素に前記表示データを供給するデータドライバ部とを備える表示装置において、少なくとも、前記選択ドライバ部及び前記データドライバ部の駆動回路が、結晶性の膜質からなる半導体層を有する薄膜トランジスタからなり、前記薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであることを特徴とする。
請求項14記載の発明は、請求項13記載の表示装置において、前記薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法並びに表示装置によれば、非晶質シリコン薄膜をレーザーアニールして結晶性シリコン薄膜を形成する場合であっても、歩留まりやスループットの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る半導体装置の第1の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図(その1)である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図(その2)である。
【図4】比較例における半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程図である。
【図5】薄膜トランジスタに用いられるシリコン薄膜の結晶化度の一例を示すラマン(Raman)分光スペクトル図である。
【図6】本発明に係る半導体装置が適用される表示装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る半導体装置が適用される表示画素の回路構成例を示す等価回路図である。
【図8】第2の実施形態に適用される表示画素の基板構造を模式的に示した断面構造図である。
【図9】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図(その1)である。
【図10】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図(その2)である。
【図11】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図(その3)である。
【図12】本発明に係る半導体装置が適用される表示装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る半導体装置及びその製造方法並びに表示装置について、実施の形態を示して詳しく説明する。
<第1の実施形態>
(半導体装置)
図1は、本発明に係る半導体装置の第1の実施形態を示す概略断面図である。ここで、図1では、説明の簡略化のため、薄膜トランジスタと配線層を各1箇所設けた構成を示す。
【0019】
本実施形態に係る半導体装置は、図1に示すように、例えばガラスやプラスチック等の絶縁性の基板11の一面(図面上面)側に、多結晶質シリコン又は微晶質シリコンからなる半導体層を有する薄膜トランジスタ(結晶性シリコン薄膜トランジスタ)TFTと、金属配線12からなる配線層LNと、が同層に設けられている。
【0020】
具体的には、薄膜トランジスタTFTは、図1に示すように、例えば絶縁性の基板11の一面側の表面に設けられたゲート電極13と、ゲート絶縁膜となる絶縁膜14を介して、ゲート電極13に対応する領域に設けられた結晶性のシリコンからなる半導体層(チャネル層)15と、半導体層15上に設けられたチャネルプロテクト層(又は、ブロック層)16と、チャネルプロテクト層16の両端部から半導体層15上に延在して設けられたドープ層(不純物層)17と、ドープ層17上に整合して設けられたソース電極及びドレイン電極(以下、「ソース、ドレイン電極」と総称する)18と、を有している。また、配線層LNは、図1に示すように、例えば上記の薄膜トランジスタTFTのゲート電極13と同層に設けられる金属配線12からなり、ゲート絶縁膜となる絶縁膜14に被覆されている。
【0021】
なお、図1においては、基板11上に設けられた薄膜トランジスタTFTのソース、ドレイン電極18が露出した状態を示したが、実製品においては、薄膜トランジスタTFTを含む基板11の上面が、図示を省略した絶縁膜等により被覆保護される。また、図1に示した構成上に、層間絶縁膜や平坦化膜等を介して表示素子や上層の配線層等が形成された構成を有するものであってもよい。
【0022】
上述したような構成を有する半導体装置において、本実施形態においては、薄膜トランジスタTFTが結晶性のシリコンからなる半導体層15を有していることを特徴としている。ここで、本発明において、「結晶性」とは、後述する半導体装置の製造方法において説明するように、基板11上に成膜された非晶質(アモルファス)のシリコン薄膜を熱アニールにより結晶化することにより得られる多結晶質(ポリクリスタル)又は微晶質(マイクロクリスタル)の膜質を有しているものと定義する。より詳しい定義付けについては後述する。
【0023】
(製造方法)
次に、上述したような半導体装置の製造方法について、図面を参照して説明する。
図2、図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図である。
【0024】
まず、図2(a)に示すように、絶縁性の基板11上に、金属材料を含む薄膜をスパッタリング法等で成膜した後、所望の平面形状にパターニングして薄膜トランジスタTFTのゲート電極13及び金属配線12を形成する。ここで、基板11の材質としては、例えば無アルカリガラスを用いる。また、ゲート電極13及び金属配線12となるゲートメタルとしては、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、金(Au)等の金属単体、又は、これらのいずれか含む化合物、又は、これらの合金を含む金属材料を用いる。
【0025】
次いで、ゲート電極13及び金属配線12が形成された基板11をCVD装置のチャンバー内にセットし、例えばプラズマCVD法を用いて、ゲート絶縁膜となる絶縁膜14を基板11全域に成膜する。これにより、図2(a)に示すように、基板11上のゲート電極13及び金属配線12が絶縁膜14に被覆される。ここで、絶縁膜14としては、例えば窒化シリコン膜又は酸化シリコン膜を用いる。
【0026】
次いで、図2(b)に示すように、上記CVD装置のチャンバー内で、プラズマCVD法を用いて、基板11全域に非晶質シリコン薄膜15x及びバッファ層21を連続して成膜する。具体的には、非晶質シリコン薄膜15xの成膜条件として、シランガス及び水素ガスのガス流量を各々シランガス/水素ガス=1500/190(SCCM)、パワー密度を0.034W/cm2、チャンバー内圧力を50Paに設定した。ここで、非晶質シリコン薄膜15xの厚みは、概ね5〜100nmが適当である。これは、非晶質シリコン薄膜15xの厚みが5nm以下の場合には、薄膜としての機能を果たさず、また、厚過ぎる場合には、基板面に垂直方向の抵抗が増大し、また、膜応力も増加してクラックが発生しやすくなるためである。
【0027】
バッファ層21は、後述するように、非晶質シリコン薄膜15x上に成膜する光熱変換層22xとして金属薄膜を用いる場合に、非晶質シリコン薄膜15xと光熱変換層22xとの間に介在するように形成する。バッファ層21としては、例えば酸化シリコン膜や窒化シリコン膜を用い、10〜50nm程度の厚みに成膜する。
【0028】
次いで、非晶質シリコン薄膜15x及びバッファ層21が形成された基板11をチャンバーから取り出し、図2(c)に示すように、光熱変換層22xを基板11全域に形成する。ここで、光熱変換層22xとしてダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いる場合には、スパッタリング装置のチャンバー内にセットした基板11に対して、真空雰囲気中でカーボンをターゲットとしたスパッタリング法を用いて成膜する。また、光熱変換層22xとして金属薄膜を用いる場合には、例えばモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)等の金属単体、又は、これらの合金をターゲットとしたスパッタリング法を用いて成膜する。光熱変換層22xの膜厚は、50〜400nm程度に設定する。
【0029】
また、光熱変換層22xとして金属薄膜を用いる場合には、非晶質シリコンと金属が化学的に反応してシリサイドを形成する恐れがあるので、上述したように、非晶質シリコン薄膜15xと金属薄膜からなる光熱変換層22xとの間に、絶縁膜からなるバッファ層21を形成する。
【0030】
次いで、図2(d)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて上記光熱変換層22xをパターニングして、所定の平面形状を有する光熱変換層22を形成する。具体的には、まず、図示を省略したフォトレジストを、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域(すなわち、上記ゲート電極13の形成領域を含む領域であって、後述するレーザーアニールにより非晶質シリコン薄膜15xを結晶化させたい領域)上のみに残るようにパターニングし、当該フォトレジストを用いて下層の光熱変換層22xをエッチングする。光熱変換層22xとして、上述したダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いた場合には、酸素プラズマによるドライエッチング法によりエッチングする。また、光熱変換層22xとして、上述した金属薄膜を用いた場合には、それぞれの薄膜材料に適したエッチャントを用いてウェットエッチングを行うか、ドライエッチングによりエッチングする。
【0031】
次いで、図2(e)に示すように、半導体レーザー装置(図示を省略)を用いてレーザー光BMを基板11全域に照射して、光熱変換層22の下層の非晶質シリコン薄膜15xのみを熱アニール(レーザーアニール)する。これにより、光熱変換層22が残されている領域直下の非晶質シリコン薄膜15xのみが結晶化して、多結晶質シリコン薄膜又は微晶質シリコン薄膜からなる半導体層15が形成される。
【0032】
具体的には、レーザーアニールに用いるレーザー光源としては、例えば波長808nmのブロードエリア型高出力半導体レーザー装置を用いる。そして、このような半導体レーザー装置において、約4Wの光出力のレーザー光を連続発振させ、マイクロレンズアレイ等の均一照明光学系を通して所望のビーム形状に整形する。さらに、このビームを約2mW/μm2の光強度に集光し、基板11を例えば約40mm/sの一定速度で移動させつつ照射する。すなわち、所定の照射範囲を有するレーザー光BMを走査することにより、基板11全域にレーザー光BMを照射して熱アニールを行う。
【0033】
これにより、光熱変換層22を形成する膜材料が高温に加熱され、この熱が熱伝導により下層のバッファ層21を介して非晶質シリコン薄膜15xに伝わる。そして、非晶質シリコン薄膜15xが融点に達し、熱アニールされることにより、図3(a)に示すように、光熱変換層22直下の非晶質シリコン薄膜15xのみが結晶化して、微晶質シリコン薄膜からなる半導体層15が形成される。このように、レーザーアニールの設定条件に応じて、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域の非晶質シリコン薄膜15xを結晶化して、多結晶質シリコン薄膜又は微晶質シリコン薄膜からなる半導体層15を形成することができる。一方、光熱変換層22が形成されていない領域の非晶質シリコン薄膜15xは、吸収係数(吸光度)が低いため、レーザー光BMが素通りして加熱されず、非晶質の状態が維持される。
【0034】
次いで、図3(b)に示すように、バッファ層21上の光熱変換層22を除去した後、例えばプラズマCVD法を用いて、チャネルプロテクト層となる絶縁層16xを基板11全域に成膜する。ここで、光熱変換層22の除去方法は、上述した光熱変換層22xをパターニングする工程と同様の方法(膜材料に応じてドライエッチング法又はウェットエッチング法等)を適用することができる。また、絶縁層16xとしては、上述した絶縁膜14やバッファ層21と同様に、例えば窒化シリコン膜又は酸化シリコン膜を用いる。
【0035】
次いで、図3(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて上記絶縁層16x及びバッファ層21を連続的にパターニングして、所定の平面形状を有するチャネルプロテクト層16を形成する。具体的には、図示を省略したフォトレジストを、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域であって、上記ゲート電極13の形成領域に対応する領域上のみに残るようにパターニングし、当該フォトレジストを用いて下層の絶縁層16x及びバッファ層21を連続的にドライエッチングする。これにより、絶縁層16x及びバッファ層21からなるチャネルプロテクト層16が形成される。
【0036】
次いで、図3(c)に示すように、薄膜トランジスタTFTのソース、ドレインを形成するためのドープ層(不純物層)17xを基板11全域に成膜する。ここで、ドープ層17xとしてどのような材料を用いるかは、製造する薄膜トランジスタTFTがp型かn型かによって異なる。p型薄膜トランジスタの場合、シランガス中にジボラン等のアクセプター型の不純物を混入させたシリコン層(p+-Si層)を、プラズマCVD法を用いて成膜させることにより、ドープ層17xを形成する。一方、n型薄膜トランジスタの場合、シランガス中にアルシンやホスフィン等のドナー型の不純物を混入させたシリコン層(n+-Si層)を、プラズマCVD法を用いて成膜させることにより、ドープ層17xを形成する。また、ドープ層17xの厚みは、ノンドープシリコン層(i-Si層)である、上述した非晶質シリコン薄膜15xの場合と同様の理由により、概ね5〜100nmに設定する。
【0037】
次いで、図3(d)に示すように、ドープ層17xをパターニングして、チャネルプロテクト層16の両端部から半導体層15上に延在する平面形状を有するドープ層17を形成するとともに、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域の半導体層15以外の非晶質シリコン薄膜15xを除去する。具体的には、図示を省略したフォトレジストを、薄膜トランジスタTFTのソース、ドレイン電極18の平面形状に対応する領域上のみに残るようにパターニングし、当該フォトレジストを用いて下層のドープ層17x及び非晶質シリコン薄膜15xを連続的にドライエッチングする。これにより、薄膜トランジスタTFTの形成領域にドープ層17が形成されるとともに、薄膜トランジスタTFTの形成領域外の非晶質シリコン薄膜15xが除去されて絶縁膜14が露出する。
【0038】
次いで、図3(e)に示すように、薄膜トランジスタTFTのソース、ドレイン電極18を形成するためのドレインメタル層18xを基板11全域に成膜する。ドレインメタル層18xは、例えばクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)等の金属単体、又は、これらの合金からなる電極層を積層した電極構造を有するように、例えばスパッタリング法を用いて形成する。
【0039】
次いで、ドレインメタル層18xを所定の平面形状を有するようにパターニングして、図1に示したように、薄膜トランジスタTFTのドープ層17上にソース、ドレイン電極18を形成する。具体的には、図示を省略したフォトレジストを、薄膜トランジスタTFTのソース、ドレイン電極18の平面形状に対応する領域上のみに残るようにパターニングし、当該フォトレジストを用いて下層のドレインメタル層18xをドライエッチングする。これにより、薄膜トランジスタTFTの形成領域に、チャネルプロテクト層16の両端部から半導体層15上に延在する平面形状を有するドープ層17及びソース、ドレイン電極18が形成される。
【0040】
なお、上述した半導体装置の製造方法においては、非晶質シリコン薄膜15xの除去と、ドープ層17及びソース、ドレイン電極18のパターニングを別個の工程で行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、次のような製造方法を適用するものであってもよい。
【0041】
すなわち、例えば図3(c)に示したように、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域にチャネルプロテクト層16をパターニング形成した後、基板11上にドープ層17x及びドレインメタル層18xを順次成膜する。次いで、ソース、ドレイン電極18の平面形状に対応する領域上のみにフォトレジストが残るようにパターニングし、当該フォトレジストを用いて、まず、ドレインメタル層18xをドライエッチングしてソース、ドレイン電極18を形成する。次いで、パターニング形成されたソース、ドレイン電極18をマスクとして用いて、下層のドープ層17x及び非晶質シリコン薄膜15xを連続的にドライエッチングして、ソース、ドレイン電極18に整合するドープ層17を形成するとともに、非晶質シリコン薄膜15xを除去する。このような製造方法によれば、フォトリソグラフィ及びパターニングの工程数を削減して、製造効率を向上させることができる。
【0042】
次に、上述した本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法における作用効果の優位性について、比較例を示して詳しく説明する。
図4は、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法における作用効果を説明するための、従来技術(以下、「比較例」と記す)における半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程図である。ここで、上述した本実施形態と同等の構成及び製造工程については、同等の符号を付すとともに、図2及び図3を参照して、その説明を簡略化又は省略する。
【0043】
比較例における半導体装置の製造方法は、上述した第1の実施形態において、図2(a)に示したように、基板11上にゲート電極13及び金属配線12をパターニングした後、図4(a)に示すように、絶縁膜14、非晶質シリコン薄膜15x及び光熱変換層22xを、基板11全域に順次積層形成する。その後、図4(b)に示すように、図示を省略した半導体レーザー装置から発振される所定の照射領域を有するレーザー光BMを走査することにより、基板11の全域にレーザー光BMを照射して熱アニールを行う。
【0044】
このような製造方法においては、光熱変換層22xを基板11の全域に形成した状態でレーザー光が照射されるため、本来熱アニールを必要とする薄膜トランジスタTFT(チャネル層)の形成領域以外の領域においても、光熱変換層22xによる加熱が生じる。この場合、例えば金属配線12と、絶縁膜14を構成する窒化シリコン膜や酸化シリコン膜における熱吸収係数及び熱膨張係数の違いにより、金属配線12上の絶縁膜14に剥離やクラックが生じる等の問題を有している。このような現象を回避する方法として、熱アニールが必要な領域(薄膜トランジスタTFTの形成領域)のみにレーザー光を照射し、熱アニールを必要としない領域(例えば配線層LN等の形成領域)にレーザー光を照射しないように走査することも考えられるが、この場合には、レーザー光の照射工程におけるスループット(作業効率)の低下を招くという問題を有していた。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法においては、非晶質シリコン薄膜15xを結晶化する際に、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域上にのみ光熱変換層22を形成した後、レーザー光BMを照射して熱アニールを施す手法を有している。これによれば、薄膜トランジスタTFT(チャネル層)の形成領域における非晶質シリコン薄膜15xのみを効率的に加熱して結晶化させることができるとともに、当該薄膜トランジスタTFTの形成領域以外の、例えば金属配線12の形成領域における熱アニールによる加熱を抑え、絶縁膜14等の剥離やクラックの発生を抑制して製造歩留まりの低下を抑制することができる。また、この場合、上述した比較例と同様に、レーザー光BMを走査して基板11の全域に照射すればよいので、レーザー光BMの照射工程におけるスループット(作業効率)の低下を招くことがない。
【0046】
ここで、本実施形態に係る半導体装置に適用される薄膜トランジスタTFTの素子特性について説明する。
上述した半導体装置及びその製造方法においては、レーザーアニールにより形成される結晶性のシリコンからなる半導体層を有する薄膜トランジスタTFTとして、多結晶質(ポリクリスタル)又は微晶質(マイクロクリスタル)のシリコン薄膜を半導体層として有する薄膜トランジスタについて説明した。
【0047】
特に、微晶質のシリコン薄膜を半導体層として有する薄膜トランジスタ(微晶質シリコン薄膜トランジスタ)は、電子移動度が多結晶質シリコン薄膜トランジスタに比較して僅かに低いものの、非晶質シリコン薄膜トランジスタに比較して高く、かつ、しきい値電圧Vthの変動も多結晶質シリコン薄膜トランジスタと同等程度に少なく、さらに、近接素子間の性能のバラツキも非晶質シリコン薄膜トランジスタと同等程度に少ないという、優れた特徴を有している。
【0048】
このような微晶質シリコンは、一般に、結晶の粒径が数十nm〜数μmオーダーの範囲であって、かつ、結晶化したシリコン薄膜中に非晶質シリコンが概ね30%程度含まれている状態をいうと定義されている。ここで、上述した半導体装置の製造方法において示したレーザーアニールの設定条件に基づいて、非晶質シリコン薄膜にレーザー光を照射することにより熱アニールして形成された試料(結晶性のシリコン薄膜)について、ラマン分光スペクトルの実測データを示して、その結晶化度について具体的に解析する。
【0049】
図5は、薄膜トランジスタに用いられるシリコン薄膜の結晶化度の一例を示すラマン(Raman)分光スペクトル図である。
図5に示すように、上記試料に対するラマン分光による実測スペクトルSPzは、結晶化(多結晶質)シリコンにおける典型的なスペクトルSPcのピーク強度(概ね520cm-1付近)と、微晶質シリコンにおける典型的なスペクトルSPmのピーク強度(概ね500cm-1付近)と、非晶質シリコンにおける典型的なスペクトルSPaのピーク強度(概ね470cm-1付近)を合計した計算値の曲線SPxに略一致する。すなわち、微晶質シリコン薄膜は、非晶質、微晶質及び結晶質のシリコンが混在した状態にあり、その実測スペクトルSPzは、図5に示すように、結晶化シリコンと微晶質シリコンと非晶質シリコンの3つのピークに分解することができる。これにより、次式(1)に示すようにシリコンの結晶化度を表すことができる。
結晶化度=(Ic-Si+Iμc-Si)/(Ic-Si+Iμc-Si+Ia-Si) ・・・(1)
【0050】
式(1)において、Ic-Siは、ラマン分光スペクトルにおける結晶化(多結晶質)シリコンのピーク強度であり、Iμc-Siは、微晶質シリコンのピーク強度であり、Ia-Siは、非晶質シリコンのピーク強度である。この式(1)に基づいて、図5に示した実測スペクトルSPzを有する上記試料の結晶化度を算出すると72.2%となり、非晶質シリコンの含有量が概ね30%程度であるので、微晶質シリコンが形成されていると判定することができる。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る半導体装置及びその製造方法並びに表示装置の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態においては、単一の基板11上に、結晶性(多結晶質又は微晶質)のシリコンからなる半導体層を有する薄膜トランジスタTFTと配線層LNを同時に形成する場合について説明した。第2の実施形態においては、単一の基板11上に、結晶性シリコン薄膜トランジスタと、非晶質シリコン薄膜トランジスタと、配線層とを同時に形成する場合について説明する。
【0052】
(表示装置)
まず、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法を適用可能な表示装置及び表示画素について説明する。なお、以下に示す実施形態においては、表示パネルとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を有する複数の表示画素を2次元配列した構成を有し、各表示画素が表示データ(映像データ)に応じた輝度階調で発光動作することにより画像情報を表示する有機EL表示パネルに、本発明の半導体装置を適用する場合について説明するが、他の表示方法により画像情報を表示する表示パネルに適用するものであってもよい。
【0053】
図6は、本発明に係る半導体装置が適用される表示装置の一例を示す概略構成図であり、図7は、本発明に係る半導体装置が適用される表示画素の回路構成例を示す等価回路図である。
本実施形態に係る半導体装置を適用可能な表示装置は、図6に示すように、少なくとも、複数の表示画素PIXが二次元配列された表示パネル110と、各表示画素PIXを選択状態に設定するためのゲートドライバ120と、各表示画素PIXに表示データに応じた階調信号を供給するためのデータドライバ130と、を備えている。
【0054】
(表示画素)
各表示画素PIXは、図7に示すように、画素駆動回路DCと有機EL素子OELとを備え、画素駆動回路DCにより表示データに応じた電流値の発光駆動電流が有機EL素子OELに供給されることにより、当該表示データに応じた所定の輝度階調で発光動作する。
【0055】
画素駆動回路DCは、例えば図7に示すように、薄膜トランジスタTr11と薄膜トランジスタTr12とキャパシタCsとを備えている。薄膜トランジスタTr11は、ゲート端子が選択ラインLsに、ドレイン端子がデータラインLdに、ソース端子が接点N11に各々接続されている。薄膜トランジスタTr12は、ゲート端子が接点N11に、ドレイン端子が所定の高電位電圧Vddが印加された電源電圧ラインLaに、ソース端子が接点N12に各々接続されている。キャパシタCsは、薄膜トランジスタTr12のゲート端子及びソース端子間(接点N11及び接点N12)間に接続されている。
【0056】
ここでは、薄膜トランジスタTr11、Tr12は、いずれもnチャネル型の薄膜トランジスタ(電界効果型トランジスタ)が適用されている。薄膜トランジスタTr11、Tr12がpチャネル型であれば、ソース端子及びドレイン端子が互いに逆になる。また、キャパシタCsは、薄膜トランジスタTr12のゲート−ソース間に形成される寄生容量、又は、該ゲート・ソース間に付加的に設けられた補助容量、もしくは、これらの寄生容量と補助容量からなる容量成分である。
【0057】
また、有機EL素子OELは、アノード端子(アノード電極)が上記画素駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード端子(カソード電極)が所定の低電位電圧Vss(例えば接地電圧Vgnd)が印加された電源電圧ラインLc(又は共通電極)に接続されている。
【0058】
そして、選択ラインLsは、上述したゲートドライバ120に接続されて、所定のタイミングで選択レベル又は非選択レベルの選択電圧Vselが印加され、また、データラインLdは、上述したデータドライバ130に接続されて、上記選択電圧Vselにより選択状態に設定された表示画素PIXに対して、表示データに応じた階調信号(階調電圧)Vdataが印加される。
【0059】
次に、このような回路構成を有する表示画素PIXの駆動制御動作について、簡単に説明する。
まず、選択期間においては、ゲートドライバ120から選択ラインLsに対して、選択レベル(ハイレベル)の選択電圧Vselを印加することにより、トランジスタTr11がオン動作して選択状態に設定される。このタイミングに同期して、データドライバ130から表示データに応じた電圧値の階調電圧VdataをデータラインLdに印加することにより、トランジスタTr11を介して、階調電圧Vdataに応じた電位が接点N11(トランジスタTr12のゲート端子)に印加される。
【0060】
これにより、トランジスタTr12が階調電圧Vdataに応じた導通状態でオン動作して、ドレイン・ソース間に所定の電流値の発光駆動電流が流れる。したがって、有機EL素子OELは、階調電圧Vdata(すなわち表示データ)に応じた輝度階調で発光動作する。このとき、トランジスタTr12のゲート・ソース間に接続されたキャパシタCsには、接点N11に印加された階調電圧Vdataに基づいて電荷が蓄積(充電)される。
【0061】
次いで、非選択期間においては、選択ラインLsに対して、非選択レベル(ローレベル)の選択電圧Vselを印加することにより、トランジスタTr11がオフ動作して非選択状態に設定される。これにより、上記キャパシタCsに蓄積された電荷(すなわち、ゲート・ソース間の電位差)が保持されて、トランジスタTr12のゲート端子に階調電圧Vdataに相当する電圧が印加される。したがって、トランジスタTr12のドレイン・ソース間に上記の発光動作状態と同等の電流値の発光駆動電流が流れて、有機EL素子OELの発光動作状態が継続される。そして、このような駆動制御動作を、表示パネル110に2次元配列された全ての表示画素PIXについて、例えば各行ごとに順次実行することにより、所望の画像情報が表示される。
【0062】
このように、図7に示したような画素駆動回路DCを備えた表示画素PIXにおいて、トランジスタTr11は選択トランジスタとして機能し、また、トランジスタTr12は駆動トランジスタとして機能する。ここで、選択トランジスタはスイッチング特性に優れていることが望ましく、また、駆動トランジスタは素子特性の変動が小さく、電子移動度が高いことが望ましい。
【0063】
したがって、同一基板上に形成される選択トランジスタ及び駆動トランジスタにおいて、チャネル層として結晶性のシリコン半導体層を適用した場合、駆動トランジスタのしきい値電圧の変動(Vthシフト)が抑制されるので、素子特性の劣化を抑えられ、かつ、電子移動度が向上するので、低いゲート電圧で所望の電流値の発光駆動電流を流して、所定の発光輝度が得られる等のメリットがある。一方、このとき、駆動トランジスタと同様に、選択トランジスタのチャネル層を結晶化すると、非晶質シリコン半導体層を適用した場合に比較して、ドレイン・ソース間のリーク電流が大きくなるため、スイッチング特性が劣化するというデメリットがある。
【0064】
そこで、本実施形態においては、図7に示したような画素駆動回路DCを備えた表示画素PIXにおいて、同一基板上に形成される選択トランジスタ及び駆動トランジスタのうち、駆動トランジスタのチャネル層のみに結晶化されたシリコン半導体層を適用し、選択トランジスタのチャネル層に非晶質シリコン半導体層を適用した基板構造を有している。以下に、本実施形態に係る表示画素に適用される基板構造について図面を示して説明する。
【0065】
図8は、本実施形態に適用される表示画素の基板構造を模式的に示した断面構造図である。ここで、図8では、説明の簡略化のため、選択トランジスタ及び駆動トランジスタとなる薄膜トランジスタと配線層を個別に示し、相互の接続関係については図示を省略した。また、上述した第1の実施形態と同等と構成については、同等の符号を付して説明する。
【0066】
本実施形態に係る半導体装置は、図8に示すように、単一の絶縁性の基板11の一面(図面上面)側に、多結晶質シリコン又は微晶質シリコンからなる半導体層を有する薄膜トランジスタ(結晶性シリコン薄膜トランジスタ;第1の薄膜トランジスタ)TFT−mと、非晶質シリコン半導体層を有する薄膜トランジスタ(非晶質シリコン薄膜トランジスタ;第2の薄膜トランジスタ)TFT−aと、金属配線12を含む配線層LNと、が同層に設けられている。ここで、薄膜トランジスタTFT−mは、図7に示した駆動トランジスタとして機能する薄膜トランジスタTr12に相当し、また、薄膜トランジスタTFT−aは、図7に示した選択トランジスタとして機能する薄膜トランジスタTr11に相当する。
【0067】
具体的には、図8に示すように、薄膜トランジスタTFT−mは、上述した第1の実施形態(図1参照)と同様に、絶縁性の基板11の一面側の表面に設けられたゲート電極13mと、ゲート絶縁膜となる絶縁膜14を介して、ゲート電極13mに対応する領域に設けられた結晶性のシリコンからなる半導体層15mと、半導体層15m上に設けられたチャネルプロテクト層16mと、チャネルプロテクト層16mの両端部から半導体層15m上に延在して設けられたドープ層17mと、ドープ層17m上に整合して設けられたソース、ドレイン電極18mと、を有している。
【0068】
また、薄膜トランジスタTFT−aは、基板11の一面側に設けられたゲート電極13aと、絶縁膜14を介して、ゲート電極13aに対応する領域に設けられた非晶質シリコンからなる半導体層15aと、半導体層15a上に設けられたチャネルプロテクト層16aと、チャネルプロテクト層16aの両端部から半導体層15a上に延在して設けられたドープ層17a及びソース、ドレイン電極18aと、を有している。
【0069】
ここで、図8に示すように、薄膜トランジスタTFT−mのゲート電極13mと、薄膜トランジスタTFT−aのゲート電極13aと、配線層LNを構成する金属配線12は、同層に設けられ、共通の絶縁膜14に被覆されている。また、薄膜トランジスタTFT−mの半導体層15mと、チャネルプロテクト層16mと、ドープ層17mと、ソース、ドレイン電極18mは、各々、薄膜トランジスタTFT−aの半導体層15aと、チャネルプロテクト層16aと、ドープ層17aと、ソース、ドレイン電極18aと同層に設けられている。すなわち、薄膜トランジスタTFT−mと薄膜トランジスタTFT−aは、半導体層15m、15aとなるシリコン薄膜の膜質のみが異なり、他の素子構造は同一になるように形成されている。
【0070】
なお、図8においても、図1と同様に、基板11上に設けられた薄膜トランジスタTFT−m、TFT−aのソース、ドレイン電極18m、18aが露出した状態を示したが、実製品においては、図示を省略した絶縁膜等により被覆保護される。
【0071】
(製造方法)
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照して説明する。
図9乃至図11は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略工程断面図である。ここで、上述した第1の実施形態(図2、図3参照)と同等の製造工程については、その説明を簡略化する。
【0072】
まず、図9(a)に示すように、絶縁性の基板11上に成膜された金属材料を含む薄膜をパターニングして、薄膜トランジスタTFT−mのゲート電極13m、薄膜トランジスタTFT-aのゲート電極13a及び金属配線12を形成する。その後、基板11の全域にゲート絶縁膜となる絶縁膜14を成膜して、ゲート電極13m、13a及び金属配線12を被覆する。その後、図9(b)に示すように、基板11の全域に、プラズマCVD法を用いて非晶質シリコン薄膜15x及びバッファ層21を連続して成膜し、さらにその上層に、スパッタリング法等を用いて光熱変換層22xを形成する。
【0073】
次いで、図9(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて光熱変換層22xをパターニングして、薄膜トランジスタTFT−mのチャネル層となる領域(すなわち、上記ゲート電極13mの形成領域を含む領域であって、レーザーアニールにより非晶質シリコン薄膜15xを結晶化させたい領域)上にのみ、光熱変換層22を残す。
【0074】
次いで、図10(a)に示すように、レーザー光BMを走査して基板11全域に照射し、光熱変換層22直下の非晶質シリコン薄膜15xのみを熱アニールして結晶化することにより、図10(b)に示すように、薄膜トランジスタTFT-mの形成領域に、多結晶質シリコン薄膜又は微晶質シリコン薄膜からなる半導体層15mを形成する。このとき、薄膜トランジスタTFT-mの形成領域以外の、薄膜トランジスタTFT−aや配線層LNの形成領域の非晶質シリコン薄膜15xは結晶化されず、非晶質の状態を維持する。
【0075】
次いで、図10(c)に示すように、バッファ層21上の光熱変換層22をエッチング法等を用いて除去した後、プラズマCVD法を用いてチャネルプロテクト層となる絶縁層16xを基板11全域に成膜する。その後、図11(a)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて絶縁層16x及びバッファ層21を連続的にパターニングして、薄膜トランジスタTFTのチャネル層となる領域であって、上記ゲート電極13m、13aの形成領域に対応する領域上に絶縁層16x及びバッファ層21からなるチャネルプロテクト層16m、16aを形成する。その後、プラズマCVD法を用いて薄膜トランジスタTFT−m、TFT−aのソース、ドレインを形成するためのドープ層17xを基板11全域に成膜する。
【0076】
次いで、図11(b)に示すように、ドープ層17xをパターニングして、各々、チャネルプロテクト層16m、16aの両端部から半導体層15m、15a上に延在するドープ層17m、17aを形成するとともに、薄膜トランジスタTFT−m、TFT−aのチャネル層となる領域の半導体層15m、15a以外の非晶質シリコン薄膜15xを除去する。
【0077】
次いで、図11(c)に示すように、スパッタリング法等を用いて薄膜トランジスタTFTのソース、ドレイン電極18m、18aを形成するためのドレインメタル層18xを基板11全域に成膜する。その後、ドレインメタル層18xをパターニングして、図8に示したように、薄膜トランジスタTFT−m、TFT−aのドープ層17m、17a上に、各々ソース、ドレイン電極18m、18aを形成する。
【0078】
このように、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法においては、単一の基板11上に、多結晶質シリコン又は微晶質シリコンからなる半導体層15mを有する薄膜トランジスタTFT−mと、非晶質シリコン半導体層15aを有する薄膜トランジスタTFT−aが混在するように設けられている。そして、非晶質シリコン薄膜15xを結晶化する際に、薄膜トランジスタTFT−mのチャネル層となる領域上にのみ光熱変換層22を形成した後、レーザー光BMを照射して熱アニールを施す手法を有している。
【0079】
これによれば、単一の基板11に対する1回のレーザーアニール工程で、薄膜トランジスタTFT−mを構成する結晶性のシリコンからなる半導体層15mと、薄膜トランジスタTFT−aを構成する非晶質シリコンからなる半導体層15aとを同時に形成することができるとともに、薄膜トランジスタTFT−aや金属配線12の形成領域における絶縁膜14等の剥離やクラックの発生を抑制することができる。
【0080】
このとき、薄膜トランジスタTFT−mの形成領域における非晶質シリコン薄膜15xのみを効率的に加熱して結晶化させることができるとともに、当該薄膜トランジスタTFT−mの形成領域以外の、薄膜トランジスタTFT−aや金属配線12の形成領域における熱アニールによる加熱を抑制することができる。したがって、製造歩留まり及びスループットの低下を抑制しつつ、結晶性のシリコン半導体を有する駆動トランジスタと、非晶質シリコン半導体を有する選択トランジスタとを、同一基板上に良好に形成することができる。
【0081】
そして、このような基板構造を有する表示パネルによれば、駆動トランジスタ(薄膜トランジスタTr12)のチャネル層が結晶性のシリコン薄膜で形成されているので、チャネル層を非晶質シリコン薄膜で形成した場合に比較して、しきい値電圧Vthシフトを少なくして、素子劣化を抑制することができる。また、駆動トランジスタ(薄膜トランジスタTr12)の電子移動度を向上させることができるので、低電圧のゲート電圧(階調電圧Vdata)で所定の輝度階調による発光動作を実現することができる。一方、選択トランジスタ(薄膜トランジスタTr11)のチャネル層は、非晶質シリコン薄膜で形成されているので、チャネル層を結晶性のシリコン薄膜で形成した場合に比較して、リーク電流の影響を大幅に抑制することができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、表示画素PIXを構成する画素駆動回路DCとして2個の薄膜トランジスタ(トランジスタTr11、Tr12)を有する回路構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、少なくとも画素駆動回路DCが、選択トランジスタの役目をする薄膜トランジスタと、駆動トランジスタの役目をする薄膜トランジスタを、各々一つずつ備えたものであれば、例えば3個以上の薄膜トランジスタを有するものであってもよい。
【0083】
また、図7においては、表示画素PIXに設けられる画素駆動回路DCとして、表示データに応じて各表示画素PIX(具体的には、画素駆動回路DCのトランジスタTr12のゲート端子;接点N11)に書き込む階調電圧Vdataの電圧値を調整(指定)することにより、有機EL素子OELに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所望の輝度階調で発光動作させる電圧指定型の階調制御方式の回路構成を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、表示データに応じて各表示画素PIXに書き込む電流の電流値を調整(指定)することにより、有機EL素子OELに流す発光駆動電流の電流値を制御して、所望の輝度階調で発光動作させる電流指定型の階調制御方式の回路構成を有するものであってもよい。
【0084】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る半導体装置及びその製造方法並びに表示装置の第3の実施形態について説明する。
上述した第2の実施形態においては、単一の基板11上に、結晶性シリコン薄膜トランジスタと、非晶質シリコン薄膜トランジスタとを設けた基板構造を、表示装置(表示パネル)の各表示画素に適用した場合について説明した。第3の実施形態においては、第2の実施形態に示した基板構造を、表示パネルの駆動に用いるドライバに適用する場合について説明する。
【0085】
図12は、本発明に係る半導体装置が適用される表示装置の他の例を示す概略構成図である。ここで、上述した第2の実施形態と同等の構成については、同等の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0086】
本実施形態に係る半導体装置を適用可能な表示装置は、図12に示すように、単一の基板11上に、少なくとも、複数の表示画素PIXが二次元配列された画素アレイ(表示領域)111と、各表示画素PIXを選択状態に設定するためのゲートドライバ部121と、各表示画素PIXに表示データに応じた階調信号を供給するためのデータドライバ部131と、を備えている。
【0087】
ここで、本実施形態においては、同一基板11上に形成される、少なくともゲートドライバ部121及びデータドライバ部131の駆動回路に設けられるトランジスタとして、第2の実施形態(図8参照)に示した薄膜トランジスタTFT−mと同様に、結晶性(多結晶質又は微晶質)のシリコン半導体層を有する薄膜トランジスタを適用する。
【0088】
このような基板構造を有する半導体装置(表示装置)の製造方法について、上述した第2の実施形態に示した図面を参照して説明する。
まず、図9(a)〜(c)に示したように、単一の基板11の一面側であって、ゲートドライバ部121及びデータドライバ部131の形成領域に、薄膜トランジスタTFT−mのゲート電極13m、薄膜トランジスタTFT-aのゲート電極13a及び金属配線12を形成する。その後、基板11の全域にゲート絶縁膜となる絶縁膜14を成膜してゲート電極13m、13a及び金属配線12を被覆し、さらにその上に、非晶質シリコン薄膜15x、バッファ層21及び光熱変換層22xを順次積層形成する。
【0089】
次いで、光熱変換層22xをパターニングして、ゲートドライバ部121及びデータドライバ部131の駆動回路に設けられるトランジスタのチャネル層となる領域にのみ、光熱変換層22を残す。そして、この状態で、図10(a)に示したように、レーザー光BMを走査して基板11全域に照射することにより、図10(b)に示したように、光熱変換層22直下の非晶質シリコン薄膜15xのみを熱アニールして結晶化し、多結晶質シリコン薄膜又は微晶質シリコン薄膜からなる半導体層15mを形成する。このとき、光熱変換層22の形成されていない領域の非晶質シリコン薄膜15xは、結晶化されず非晶質の状態を維持する。
【0090】
これにより、ゲートドライバ部121及びデータドライバ部131の駆動回路には、結晶性のシリコン半導体層を有する薄膜トランジスタが形成されるとともに、それ以外の領域には、非晶質シリコン半導体層を有する薄膜トランジスタが同時に形成される。
【0091】
本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法並びに表示装置によれば、非晶質シリコン薄膜を熱アニールして結晶化する際に、結晶性シリコン薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ光熱変換層を形成した状態でレーザーアニールを行うことにより、当該領域の非晶質シリコン薄膜のみを結晶化することができるので、単一の基板11上に、結晶性シリコン薄膜トランジスタと、非晶質シリコン薄膜トランジスタとを同時に形成することができる。
【0092】
このとき、結晶性シリコン薄膜トランジスタの形成領域以外の、非晶質シリコン薄膜トランジスタや配線層の形成領域には光熱変換層が形成されていないので、熱アニールによる加熱を抑制することができ、ゲート電極や金属配線上に形成された絶縁膜等の剥離やクラックの発生を抑制することができる。したがって、画素アレイ111を駆動するためのゲートドライバ部121及びデータドライバ部131を単一の基板11上に設けた表示装置において、製造歩留まり及びスループットの低下を抑制しつつ、結晶性シリコン薄膜トランジスタと、非晶質シリコン薄膜トランジスタとを良好に形成することができる。
【0093】
ここで、図12に示したように、画素アレイ111に配列された表示画素PIX(画素駆動回路)とともに、当該表示画素PIXを駆動するためのゲートドライバ部121やデータドライバ部131等を、単一の基板11上に形成した表示装置についてさらに詳しく説明する。
【0094】
図12に示した表示装置において、表示画素PIXが上述した第2の実施形態(図7参照)に示したような画素駆動回路DCを備えている場合について検討する。第2の実施形態においては、画素駆動回路DCの薄膜トランジスタTr11、Tr12として、その機能に応じて非晶質シリコン薄膜トランジスタ、あるいは、結晶性シリコン薄膜トランジスタを適用することが画素駆動の特性上望ましいことを説明した。
【0095】
しかしながら、表示パネルによっては、画素駆動回路DCの薄膜トランジスタとして、非晶質シリコン薄膜トランジスタのみを適用した場合であっても、画素駆動に必要な条件を満たしている場合もある。図12に示した表示装置においては、単一の基板11上に、画素アレイ111とゲートドライバ部121とデータドライバ部131とを一括して形成することになるが、基板11上の全ての薄膜トランジスタを非晶質シリコン薄膜トランジスタにより形成した場合、電子移動度が低いためゲートドライバ部121やデータドライバ部131を動作させるには駆動能力が不十分となる。
【0096】
このような問題を回避する手法として、各ドライバ部の形成領域にのみ光熱変換層をパターニング形成した後、レーザーアニールを施すことにより、ドライバ部の薄膜トランジスタのチャネル層を結晶化して電子移動度を向上させることができるが、ドライバ部内の加熱が不要な領域(例えば、配線等の形成領域)も加熱されてしまうため、配線上の絶縁膜等が剥離したりクラックが生じたりする等の可能性があった。
【0097】
これに対して、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法並びに表示装置においては、レーザー光を基板11に照射して非晶質シリコン薄膜を結晶化させる際に用いる光熱変換層を、少なくともゲートドライバ部121及びデータドライバ部131に設けられる駆動回路の薄膜トランジスタのチャネル層の形成領域上にのみ残るようにパターニング形成する。そして、その後、レーザー光を照射して非晶質シリコン薄膜を結晶化させることにより、結晶性シリコン薄膜トランジスタを形成する。
【0098】
これにより、単一基板上に結晶性シリコン薄膜トランジスタと非晶質シリコン薄膜トランジスタとを同時に形成することができるとともに、結晶性シリコン薄膜トランジスタの形成領域以外の、配線層等の形成領域における加熱を抑制して、当該配線層上の膜の剥離やクラックの発生を抑制することができ、製造歩留まり及びスループットの低下を抑制することができる。
【0099】
なお、本実施形態においては、表示画素PIXの画素駆動回路に非晶質シリコン薄膜トランジスタを適用した場合において、表示装置のゲートドライバ部121及びデータドライバ部131の駆動回路に、本発明の技術思想を適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ゲートドライバ部121及びデータドライバ部131の駆動回路に加え、上述した第2の実施形態に示したように、表示パネル(画素アレイ)に配列された表示画素PIXの画素駆動回路の駆動トランジスタにも結晶性シリコン薄膜トランジスタを適用し、本発明の技術思想を適用するものであってもよいことはいうまでもない。
【0100】
また、上述した各実施形態においては、薄膜トランジスタとしてエッチングストッパ型の素子構造を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、チャネルエッチング型の素子構造を有するものであっても、上記と同等の作用効果を得ることができる。さらに、上述した各実施形態においては、薄膜トランジスタとして逆スタガ型の素子構造を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、正スタガ型の素子構造を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
11 基板
12 金属配線
13、13m、13a ゲート電極
14 絶縁膜
15、15m、15a 半導体層
15x 非晶質シリコン薄膜
16、16m、16a チャネルプロテクト層
17、17m、17a ドープ層
18、18m、18a ソース、ドレイン電極
22、22x 光熱変換層
110 表示パネル
111 画素アレイ
120 ゲートドライバ
121 ゲートドライバ部
130 データドライバ
131 データドライバ部
BM レーザー光
PIX 表示画素
DC 画素駆動回路
OEL 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも結晶性の膜質からなる半導体層を有する薄膜トランジスタを備え、
前記薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
基板上に、少なくとも、結晶性の膜質からなる半導体層を有する第1の薄膜トランジスタと、非晶質の半導体層を有する第2の薄膜トランジスタと、を備え、
前記第1の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであり、
前記第2の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記非晶質の薄膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第1の薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
基板上に非晶質の薄膜を形成する工程と、
薄膜トランジスタのチャネル層に対応する領域上にのみ、光熱変換層を形成する工程と、
前記基板の全域にレーザー光を照射して、前記光熱変換層の下層に形成された前記非晶質の薄膜に熱アニールを施すことにより結晶化する工程と、
前記光熱変換層を除去する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記レーザー光を照射して、前記非晶質の薄膜を熱アニールすることにより結晶化された前記薄膜からなる半導体層を、チャネル層として有する第1の薄膜トランジスタを形成する工程を、さらに有していることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記非晶質の薄膜からなる半導体層を、チャネル層として有する第2の薄膜トランジスタを形成する工程を、さらに有していることを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の薄膜トランジスタ及び第2の薄膜トランジスタを同一の工程を用いて同時に形成することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記レーザー光を照射して、前記非晶質の薄膜を熱アニールすることにより結晶化された前記薄膜は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
表示素子と、該表示素子を駆動するための画素駆動回路とを有する複数の表示画素が、基板上に2次元配列された表示パネルを備える表示装置において、
前記画素駆動回路は、少なくとも、前記表示画素に表示データを書き込む際に、前記表示画素を選択状態に設定するための選択トランジスタと、
前記表示データに応じた電流値を有する発光駆動電流を前記表示素子に供給する駆動トランジスタとを有し、
少なくとも、前記駆動トランジスタは、結晶性の膜質からなる半導体層を有する第1の薄膜トランジスタからなり、前記選択トランジスタは、非晶質の半導体層を有する第2の薄膜トランジスタからなり、
前記第1の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであり、
前記第2の薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記非晶質の薄膜からなることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
前記第1の薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする請求項10記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項10又は11記載の表示装置。
【請求項13】
基板上に、複数の表示画素が2次元配列された画素アレイと、前記表示画素に表示データを書き込む際に、前記表示画素を選択状態に設定するための選択ドライバ部と、前記表示画素に前記表示データを供給するデータドライバ部とを備える表示装置において、
少なくとも、前記選択ドライバ部及び前記データドライバ部の駆動回路が、結晶性の膜質からなる半導体層を有する薄膜トランジスタからなり、
前記薄膜トランジスタの前記半導体層は、前記基板上に成膜された非晶質の薄膜に対して、前記薄膜トランジスタのチャネル層となる領域上にのみ形成された光熱変換層を介して熱アニールを施すことにより結晶化したものであることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
前記薄膜トランジスタの半導体層は、微晶質の膜質を有していることを特徴とする請求項13記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−9583(P2011−9583A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153016(P2009−153016)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】