説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】製造コストを抑えつつ、ガードリングに接するPN接合部の耐圧の向上を図る。
【解決手段】半導体基板10の表面にN−型半導体層11を形成し、その上層にP型半導体層12を形成する。P型半導体層12上には、絶縁膜13を形成する。その後、絶縁膜13からN−型半導体層11の厚さ方向の途中に至る複数の溝、即ち第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cを形成する。これらの複数の溝は、そのうち互いに隣接する2つの溝において、電子デバイスに近い側、即ちアノード電極14に近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも浅く形成される。その後、第1の溝17A内、第2の溝17B内、第3の溝17C内に、絶縁材料18が充填される。その後、半導体基板10及びその上層に積層された各層からなる積層体をダイシングラインDLに沿ってダイシングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の1つとして、大電力用のメサ型ダイオードが知られている。従来例によるメサ型ダイオードについて図8を参照して説明する。
【0003】
N+型の半導体基板110の表面にN−型半導体層111が形成されている。N−型半導体層111の表面にはP型半導体層112が形成され、P型半導体層112上には、絶縁膜113が形成されている。また、P型半導体層112と電気的に接続されたアノード電極114が形成されている。
【0004】
また、P型半導体層112の表面からN−型半導体層111に到達するメサ溝117が形成されている。メサ溝117は、N−型半導体層111よりも深く形成され、その底部はN+型の半導体基板110の中に位置している。メサ溝117の幅W7は例えば50μm〜100μmであり、その深さは例えば約100μmである。メサ溝117内には、その側壁を覆って、絶縁材料118が充填されている。このメサ溝117は、いわゆるガードリングとして機能する。メサ型ダイオードは、メサ溝117によって囲まれて、メサ型の構造を有している。また、半導体基板110の裏面にはカソード電極(不図示)が形成されている。
【0005】
なお、メサ型の半導体装置については、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特許第3985582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したメサ型ダイオードでは、メサ溝117内に絶縁材料118を充填する際、絶縁材料118は、メサ溝117の底部近傍には必要以上に堆積される一方で、メサ溝117の側壁のうち、N−型半導体層111及びP型半導体層112のPN接合部及びその近傍の領域117Cでは、所望の厚さよりも薄く形成されてしまう。これにより、ガードリングとして機能するメサ溝117内のPN接合部における耐圧が低下するという問題が生じていた。
【0007】
これに対処するため、メサ溝117の側壁におけるPN接合部及びその近傍の領域117Cに、最終的に充分な厚さを有した絶縁材料118が形成されるように、絶縁材料を充填する工程を数回繰り返す方法が考えられる。
【0008】
しかし、この方法では、工程が煩雑となって加工時間が長大化するばかりでなく、絶縁材料118を、所望の精度を以って安定的に形成することが困難となる。さらに、メサ溝117に充填される絶縁材料118の量が本来必要とされる量よりも著しく増加するという問題があった。結果としてメサ型ダイオードの製造コストが増大していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主な特徴は以下の通りである。本発明の半導体装置は、半導体基板と、該半導体基板に形成された半導体層と、該半導体層に形成された電子デバイスと、電子デバイスを囲んで半導体層に形成されたガードリングと、を備え、ガードリングは、電子デバイスを囲んで半導体層に形成された複数の環状の溝と、各溝内に充填された絶縁材料を含み、各溝の深さは互いに異なることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の半導体装置は、上記構成において、互いに隣接する2つの溝において、電子デバイスに近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも浅く形成されていることを特徴とする。
【0011】
あるいは、本発明の半導体装置は、上記構成において、互いに隣接する2つの溝において、電子デバイスに近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも深く形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の半導体装置は、上記構成において、絶縁材料は、各溝内における半導体層を覆って、各溝内の一部又は全体を埋め込むと共に各溝の外側へ延在していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板に半導体層を形成する工程と、半導体層に電子デバイスを形成する工程と、半導体層を覆って、互いに幅が異なり電子デバイスを囲む複数の環状の開口部を有したレジスト層を形成する工程と、半導体層に、互いに異なる深さを有して電子デバイスを囲む複数の環状の溝を形成する工程と、各溝内に絶縁材料を充填して、電子デバイスを囲むガードリングを形成する工程と、ガードリングの外側の領域に画定されたダイシングラインに沿って半導体基板及び半導体層をダイシングする工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記溝を形成する工程では、互いに隣接する2つの溝において、電子デバイスに近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも浅く形成されることを特徴とする。
【0015】
あるいは、本発明の半導体装置の製造方法は、上記溝を形成する工程では、互いに隣接する2つの溝において、電子デバイスに近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも深く形成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁材料は、各溝内の半導体層を覆って、各溝内の一部又は全体を埋め込むと共に各溝の外側へ延在するように形成されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記半導体層に複数の溝を形成する工程において、ボッシュプロセスが含まれることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の半導体装置は、半導体層に形成された複数の電子デバイスと、各電子デバイスの境界に沿って半導体層に形成された素子分離層と、を備え、素子分離層は、各電子デバイスの境界に沿って半導体層に形成された複数の溝と、各溝内に形成された絶縁材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体装置、半導体装置及びその製造方法によれば、絶縁材料が被覆性良く溝内に充填されることから、複数の環状の溝からなるガードリングにおいて、そのPN接合部の耐圧を向上させることができ、あるいは、素子分離層を構成する溝内のPN接合部の耐圧を向上させることができる。
【0020】
また、従来例のような絶縁材料の充填の繰り返し工程が必要ないため、上記のようなガードリング又は素子分離層を形成する工程を、従来例に比して簡略化できるばかりでなく、ガードリング等を構成する各溝に充填される絶縁材料の量を極力少なくできる。また、従来例のように絶縁材料を充填する際の精度や安定性を憂慮する必要がない。結果として、製造コストの増大を抑えることができる。
【0021】
さらに、本発明の半導体装置及びその製造方法において、ガードリングを構成する複数の溝が、電子デバイスに近づくに従って、段々と浅く形成される場合、順バイアス時に、ガードリングの下方において、順方向電流を流すことができる領域を充分に確保することができる。
【0022】
また、該複数の溝が、電子デバイスに近づくに従って、段々と深く形成される場合、逆バイアス時に、最も内側の溝によって、空乏層が半導体層からダイシングラインに沿った切断面のダメージ層にまで到達することを防ぐことができる。これにより、半導体層と該ダメージ層との間にリーク電流が生じることを抑止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態による半導体装置及びその製造方法について、半導体装置がメサ型ダイオードである場合を例として説明する。図1、図2、図4、図6及び図7は、本実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図である。図1及び図2は、複数のメサ型ダイオードが形成される半導体ウェハのうち、1つのメサ型ダイオードが形成される予定の領域を中心に図示している。図4、図6、図7は、図1及び図2のダイシングラインDL近傍を部分的に拡大して示している。
【0024】
また、図3及び図5は、本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す平面図であり、複数のメサ型ダイオードが形成される予定の領域のうち、その一部を示している。図3のX−X線に沿った断面は図1及び図2の断面図に対応しており、図5のY−Y線に沿った断面は図4、図6、及び図7の断面図に対応している。
【0025】
図1に示すように、例えば単結晶からなるN+型の半導体基板10を準備する。この半導体基板10には、例えばリン等のN型不純物が高濃度で拡散されている。次に、この半導体基板10の表面に、半導体層をエピタキシャル成長させることで、低濃度のN型半導体層、即ちN−型半導体層11を形成する。なお、N−型半導体層11は、上記以外にも、半導体基板10の表面に不純物が拡散されてなる不純物拡散領域であってもよい。その後、N−型半導体層11の表面に、例えばボロン等のP型不純物を拡散することで、P型半導体層12を形成する。これにより、N−型半導体層11とP型半導体層12との界面には、PN接合部が形成される。上記構成において、半導体基板10、N−型半導体層11、P型半導体層12の全体の厚さは、例えば約200μmである。
【0026】
次に、図2に示すように、P型半導体層12の表面に、例えば熱酸化法やCVD法によって、シリコン酸化膜等の絶縁膜13を形成する。その後、マスクを用いて絶縁膜13の一部に対してエッチングを行い、絶縁膜13にP型半導体層12の一部を露出する開口部13Aを設ける。この開口部13AはダイシングラインDLに囲まれる領域であって、メサ型ダイオードが形成される予定の領域の一部に形成される。
【0027】
次に、絶縁膜13の開口部13Aを通してP型半導体層12と接続するアノード電極14を形成する。アノード電極14は、アルミニウム等の導電材料からなり、スパッタリング法や蒸着法等により形成される。一方、半導体基板10の裏面には、アノード電極14と同様の方法で、アルミニウム等の導電材料からなるカソード電極15が形成される。アノード電極14の配置は、図3の平面図のようになる。ここで、アノード電極14とその近傍の領域では、その下層の各層からなる電子デバイス、即ちN−型半導体層11とP型半導体層12とのPN接合部を含んだダイオードが構成される。
【0028】
次に、図4に示すように、絶縁膜13上に、複数の開口部を有したレジスト層16を形成する。レジスト層16の複数の開口部は、アノード電極14の端とダイシングラインDLとの間の領域に配置される。これらの開口部の数は限定されないが、図の例では、複数の開口部が、第1の開口部16A、第2の開口部16B、第3の開口部16Cの3つの開口部である場合について説明する。
【0029】
レジスト層16の複数の開口部、即ち第1の開口部16A、第2の開口部16B、第3の開口部16Cは、そのうち互いに隣接する2つ開口部において、アノード電極14に近い側の開口部は、該開口部よりも外側の他方の開口部よりも狭い幅を有している。即ち、第1の開口部16Aの幅W1は第2の開口部16Bの幅W2よりも狭く、第2の開口部16Bの幅W2は第3の開口部16Cの幅W3よりも狭い(W1<W2<W3)。開口部の数が上記と異なる場合においても、それらの幅の関係は上記と同様である。
【0030】
そして、このレジスト層16をマスクとして、まず絶縁膜13をエッチング除去して、続いて、好ましくは、所定の条件下でのボッシュプロセスを行うことによって、P型半導体層12、及びN−型半導体層11の厚さ方向の途中に至る領域をエッチングして、第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cを形成する。このボッシュプロセスは、異方性ドライエッチングを行うエッチングステップと、異方性ドライエッチングにより形成された溝の側壁に保護膜を形成する保護膜形成ステップとを繰り返し行うプロセスである。
【0031】
第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの平面的な配置関係は図5のようになる。即ち、第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cは、この順で、アノード電極14から外側に向かって、3重の環状の溝として形成される。
【0032】
なお、図の例では、形成される複数の溝は3つであるものとしたが、これに限定されず、レジスト層16の開口部の数に対応して、2つ又は4つ以上であってもよい。また、これらの溝の形成は、ボッシュプロセス以外の方法、例えば、圧力環境を好適に制御して行われる異方性エッチング工程によって行われてもよい。
【0033】
図4及び図5に示すように、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、そのうち互いに隣接する2つの溝において、アノード電極14に近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも浅く形成される。即ち、第1の溝17Aは第2の溝17Bよりも浅く、第2の溝17Bは第3の溝17Cよりも浅い。溝の数が上記と異なる場合においても、それらの溝の深さの関係は上記と同様である。
【0034】
ここで、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cの深さについて、全体的な断面構成としてみると、これらの複数の溝は、アノード電極14に近づくに従って、段々と浅くなっている。
【0035】
このような第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの深さの関係は、エッチング時のマスクとして用いたレジスト層16の第1の開口部16A、第2の開口部16B、及び第3の開口部16Cの各幅W1,W2,W3の大小関係を反映したものであり、いわゆるマイクロローディング効果によって得られるものである。そのため、複数の溝、即ち第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cを、複雑な工程を必要とせずに、一度のエッチング工程で形成することが可能となり、製造コストの増大を抑止できる。
【0036】
具体的には、上記効果を得る構成として、第1の溝17Aの幅W1、第2の溝17Bの幅W2、及び第3の溝17Cの幅W3は、それぞれ、約3μm、約5μm、約10μmであることが好ましい。この場合、各溝の間隔W4は約5μmとすることができる。第1の溝17Aから第3の溝17Cに至る領域の全体の幅W5は、従来例のメサ溝117の幅W7、即ち約50μm〜約100μmよりも小さくできる。
【0037】
また、この場合の第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの各深さは、それぞれ、約5μm〜約10μm、約15μm〜約20μm、約30μm〜約40μmの範囲とすることができる。ここで、最も深い第3の溝17Cの深さは、半導体基板10とN−型半導体層11との境界近傍まで至ることが好ましい。
【0038】
このような第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの各幅及び各深さは、上記ボッシュプロセスを行うことによって、他の方法に比して確実に実現することができる。
【0039】
次に、図6に示すように、第1の溝17A内、第2の溝17B内、及び第3の溝17C内に絶縁材料18を充填する。絶縁材料18は、第1の溝17A内、第2の溝17B内、及び第3の溝17C内において、P型半導体層12とN−型半導体層11とのPN接合部及びその近傍の領域を覆って、各溝の一部又は全体を埋め込むと共に、絶縁膜13の一部上に延びるように形成される。
【0040】
この絶縁材料18は、例えばポリイミド系の有機材料からなり、印刷法等の塗布法、あるいは他の方法によって形成される。これ以外にも、絶縁材料18は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機膜や無機材料からなり、CVD法、あるいは他の方法によって形成されるものであってもよい。
【0041】
なお、図の例では、絶縁材料18は各溝の全体が絶縁材料18によって完全に埋め込まれた状態を示している。
【0042】
さらに言えば、絶縁材料18が有機材料からなる場合、その有機材料は硬化の際に収縮するため、成膜条件によっては、各溝の開口部近傍で窪みが生じる場合があり、各溝の一部が絶縁材料18によって埋め込まれることになる。ただし、この場合においても、各溝内におけるP型半導体層12とN−型半導体層11とのPN接合部及びその近傍の領域は、絶縁材料18に充分に覆われている。
【0043】
これらの第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの各幅と各深さは、上述したように、いずれも従来例のメサ溝に比して小さい。そのため、第1の溝17A内、第2の溝17B内、及び第3の溝17C内におけるP型半導体層12とN−型半導体層11とのPN接合部及びその近傍の領域では、絶縁材料18の被覆性が従来例に比して向上する。
【0044】
また、好ましくは、絶縁膜13上の絶縁材料18は、第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの全体を覆うようにして連続的に形成され、その両端のうち一方の端は、第1の溝17Aよりもアノード電極14に近い側に延びており、他方の端は、第3の溝17CよりもダイシングラインDLに近い側に延びている。
【0045】
こうして、ダイオードとして構成された電子デバイスを囲んで、絶縁材料18が充填された複数の溝、即ち第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cからなるガードリングが形成される。
【0046】
その後、半導体基板10及びその上層に積層された各層からなる積層体を、ダイシングラインDLに沿ってダイシングすることにより、複数のメサ型ダイオードに分離する。
【0047】
このメサ型ダイオードに形成されたガードリングによれば、第1の溝17A内、第2の溝17B内、及び第3の溝17C内において、従来例のように、P型半導体層12とN−型半導体層11とのPN接合部及びその近傍の領域で絶縁材料18の被覆が不足することはなくなる。従って、上記ガードリングにおけるPN接合部の耐圧の低下を抑止できる。
【0048】
また、そのようなガードリングを形成する際に、従来例のように、ガードリングを構成するメサ溝のPN接合部に絶縁材料を厚く形成するべく、絶縁材料の充填工程を繰り返す必要がない。従って、工程の煩雑化と加工時間の長大化を回避できるばかりでなく、容易に所望の精度を以って安定的に絶縁材料を形成することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の複数の溝、即ち第1の溝17A、第2の溝17B、及び第3の溝17Cの各幅及び各深さは、従来例のメサ溝に比して小さいため、全ての溝に充填される絶縁材料の量は、従来例のメサ溝に充填される絶縁材料の量よりも著しく少なくなる。結果として、メサ型ダイオードの製造コストを従来例に比して小さく抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態のガードリングを構成する溝の端、即ち最も外側の第3の溝17Cの端と、ダイシングラインDLとの距離W6は、図8に示した従来例のガードリングを構成するメサ溝117の端とそのダイシングラインDLとの距離W8よりも大きくできる。これは、第1の溝17Aから第3の溝17Cに至る領域の全体の幅W5は、従来例のメサ溝の幅W7に比して小さくできるためである。これにより、本実施形態のメサ型ダイオードでは、第3の溝17Cの外側の端部の強度が従来例に比して高くなるため、外部から加わる機械的な衝撃に対する耐性が高くなる。また、幅W5と幅W7との差分だけ、1つのチップであるメサ型ダイオードの平面的な大きさを、従来例に比して小さくすることができる。
【0051】
また、本実施形態のガードリングでは、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、アノード電極14に近づくに従って、段々と浅くなっている。従って、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cの各底部の下方では、アノード電極14にカソード電極15よりも高い電圧を印加してPN接合部へ順バイアスを印加した際に、アノード電極14からカソード電極15に向かって順方向電流を流すことができる領域を充分に確保することができる。この順方向電流を流すことができる領域は、メサ型ダイオードの外周に沿って一巡して存在しているため、カソード電極15から取り出せる電流の増加に大きく寄与する。
【0052】
また、カソード電極15にアノード電極14よりも高い電圧を印加してPN接合部に逆バイアスを印加した際には、空乏層が、N−型半導体層11から半導体基板10に広がり、さらには、ダイシングラインDLに沿った切断面のダメージ層にまで延びようとする。仮に、空乏層がN−半導体層11から上記ダメージ層にまで到達すれば、N−半導体層11と上記ダメージ層との間にリーク電流が生じることが知られている。これに対して、本実施形態のガードリングの最も外側の溝、即ち最も大きな幅と深さを有した第3の溝17Cによって、空乏層がN−半導体層11からダイシングラインDLに沿った切断面のダメージ層にまで到達することを防ぐことができる。これにより、逆バイアス時における上記リーク電流を抑止することができる。
【0053】
なお、上記実施形態のガードリングを構成する複数の溝、即ち第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、それらの深さに関して、上記と逆の順序で配置されてもよい。この場合について、本発明の第2の実施形態として、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図であり、図6と同じ領域を示している。
【0054】
本実施形態では、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、そのうち互いに隣接する2つの溝において、アノード電極14に近い側の溝は、該溝よりも外側の他方の溝よりも深く形成される。即ち、第1の溝17Aは第2の溝17Bよりも深く、第2の溝17Bは第3の溝17Cよりも深い。溝の数は上記と異なってもよく、その場合においても、それらの溝の深さの関係は上記と同様である。絶縁材料18は、第1の実施形態と同様に、第1の溝17A内、第2の溝17B内、第3の溝17C内に充填されると共に、それらの溝の外側に延びて形成される。
【0055】
この場合、溝の形成に用いられるレジスト層16には、第1の開口部16A、第2の開口部16B、及び第3の開口部16Cが、それらの幅に関して上記と逆の順序で配置される。他の構成及び工程については第1の実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態のガードリングでは、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、全体的な断面構成としては、アノード電極14に近づくに従って、段々と深くなっている。
【0057】
従って、第1の実施形態と比べると、順バイアス時には、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cの各底部の下方において、アノード電極14からカソード電極15に向かって順方向電流を流すことができる領域は小さくなる。
【0058】
しかし、一方で、逆バイアス時には、最もダイオードに近い溝が、最も大きな幅と深さを有した第1の溝17Aであるため、第1の実施形態に比して確実に、空乏層がダイシングラインDLに沿った切断面のダメージ層に向かって広がることを防ぐことができる。即ち、逆バイアス時には、第1の実施形態に比して確実にリーク電流を抑止することができる。これ以外については、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更が可能なことは言うまでもない。
【0060】
例えば、上記第1及び第2の実施形態では、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、N−型半導体層11の厚さ方向の途中まで形成されるものとしたが、本発明は、これに限定されず、各溝の一部又は全てがN−型半導体層11より深く形成される場合についても適用される。
【0061】
また、上記第1及び第2の実施形態では、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cは、全体的な断面構成としては、アノード電極14に近づくに従って、段々と浅く、又は深く形成されているが、本発明はこれに限定されない。即ち、第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cの各深さは、互いに異なるものであれば、必ずしも段々と浅く、又は深くなるものでなくともよい。
【0062】
また、上記第1及び第2の実施形態における、N+型の半導体基板10、N−型半導体層11、P型半導体層12について、それぞれの導電型を逆にしてもよい。
【0063】
また、上記第1及び第2の実施形態ではメサ型ダイオードを一例として説明したが、本発明は他の半導体装置についても適用される。例えば、本発明は、メサ型バイポーラトランジスタ,メサ型MOSFET,メサ型IGBT,メサ型サイリスタ等にも適用することができる。例えば、メサ型バイポーラトランジスタの場合は、P型半導体層12の表面にさらにN型半導体層を設けることでNPN型のバイポーラトランジスタ構造を得ることができる。
【0064】
あるいは、図示しないが、本発明は、半導体基板に半導体層が形成され、該半導体層に複数の電子デバイス(ダイオードに限らない)が形成された半導体装置に対して適用されてもよい。この構成では、半導体層に、各電子デバイスの境界に沿って延びる素子分離層が形成される。この素子分離層は、上記第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cに絶縁材料18が形成されたガードリングと同様の構成を有している。ただし、各溝の幅又は各深さは、全て同じであっても、互いに異なるものであってもよい。
【0065】
この素子分離層を形成するには、図示しないが、まず、半導体層に、各電子デバイスの境界に沿って延びるようにして、上記第1の溝17A、第2の溝17B、第3の溝17Cと同様の複数の溝を、上記と同様の工程によって形成し、その後、各溝に有機材料又は無機材料からなる絶縁材料を形成すればよい。
【0066】
また、このような複数の溝から成る素子分離膜では、複数の溝全体の幅は従来の素子分離層の溝の幅よりも小さくなるため、半導体装置の平面的なサイズを極力小さくすることができる。
【0067】
さらに、上述したような半導体基板に溝を形成し、その溝内に絶縁材料を形成するものに限らず、従来のLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されていた素子分離膜に代わるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態によるメサ型ダイオード及びその製造方法を示す断面図である。
【図8】従来例によるメサ型ダイオードの断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10,110 半導体基板 11,111 N−型半導体層
12,112 P型半導体層 13,113 絶縁膜
13A 開口部 14,114 アノード電極
15 カソード電極 16A 第1の開口部
16B 第2の開口部 16C 第3の開口部
17A 第1の溝 17B 第2の溝
17C 第3の溝 18,118 絶縁材料
117 メサ溝
DL ダイシングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、該半導体基板に形成された半導体層と、該半導体層に形成された電子デバイスと、前記電子デバイスを囲んで前記半導体層に形成されたガードリングと、を備え、
前記ガードリングは、前記電子デバイスを囲んで前記半導体層に形成された複数の環状の溝と、各溝内に充填された絶縁材料を含み、各溝の深さは互いに異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
互いに隣接する2つの前記溝において、前記電子デバイスに近い側の前記溝は、該溝よりも外側の他方の前記溝よりも浅く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
互いに隣接する2つの前記溝において、前記電子デバイスに近い側の前記溝は、該溝よりも外側の他方の前記溝よりも深く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁材料は、少なくとも各溝内における前記半導体層を覆って、各溝内の一部又は全体を埋め込むと共に各溝の外側へ延在していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板に半導体層を形成する工程と、
前記半導体層に電子デバイスを形成する工程と、
前記半導体層に、互いに異なる深さを有して前記電子デバイスを囲む複数の環状の溝を形成する工程と、
各溝内に絶縁材料を充填して、前記電子デバイスを囲むガードリングを形成する工程と、
前記ガードリングの外側の領域に画定されたダイシングラインに沿って前記半導体基板及び前記半導体層をダイシングする工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
互いに隣接する2つの前記溝において、前記電子デバイスに近い側の前記溝は、該溝よりも外側の他方の前記溝よりも浅く形成されることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
互いに隣接する2つの前記溝において、前記電子デバイスに近い側の前記溝は、該溝よりも外側の他方の前記溝よりも深く形成されることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁材料は、少なくとも各溝内の前記半導体層を覆って、各溝内の一部又は全体を埋め込むと共に各溝の外側へ延在するように形成されることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体層に複数の前記溝を形成する工程は、ボッシュプロセスを含むことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体層に形成された複数の電子デバイスと、各電子デバイスの境界に沿って延びて前記半導体層に形成された素子分離層と、を備え、
前記素子分離層は、各電子デバイスの境界に沿って延びて前記半導体層に形成された複数の溝と、各溝内に形成された絶縁材料を含むことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−62377(P2010−62377A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227180(P2008−227180)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【出願人】(501464440)三洋半導体製造株式会社 (49)
【Fターム(参考)】