説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】電流が、縦方向、横方向、そして縦方向と連続的に流れる半導体装置において
縦方向並びに横方向の電流経路に係る電気抵抗を低減し、高効率、高性能な半導体装置を実現する。
【解決手段】本発明の半導体装置は、半導体基板の表面側にドレインを共有するMOS構造が2つ形成され、かつ、半導体基板の裏面側のN+型ドレイン層7の内部に、一方のMOS構造のドレイン領域から他方のMOS構造のドレイン領域まで、延在して形成された複数の堀状の開口部4を有する。堀状の開口部4はN+型ドレイン層7の内部の、N+型ドレイン層7とN−型エピ層8の境界近傍まで、深く形成されている。そして、堀状の開口部4の中には裏面電極5と電気的に接続された、N+型ドレイン層7に比べて抵抗の低い、金属電極6が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、半導体基板の縦方向及び横方向に電流を流すMOS型半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板内を縦方向、横方向、そして縦方向と連続的に電流が流れるMOS型半導体装置が存在する。その第1の例として、携帯電話等に使用されるリチューム電池の充放電時の保護回路として、図15に示すような、ドレインを共有する2つのMOS型FETで構成される半導体装置102が挙げられる。図15における、当該半導体装置102の動作を簡単に説明する。図15の左向きの矢印は、リチューム電池101が充電する場合の電流の流れる方向である。また、右向きの矢印は、リチューム電池101が放電する、即ち、携帯電話を使用しているときの電流の流れを示している。充電時は放電用FET(D・FET)103側の寄生ダイオード103aが順方向に、充電用FET(C・FET)104の寄生ダイオード104aが逆方向にバイアスされるので、充電用FET(C・FET)104がオンしない限り、このままでは電流は流れない。
【0003】
この場合、コントロール用デバイス105がリチューム電池101の電圧を感知しC・FET104のゲートに電圧を印加し、C・FET104をオンすることにより、図15の左向き矢印の方向へ充電電流が流れ、リチューム電池101は充電される。リチューム電池101が、所定の電圧まで充電されたのを感知し、コントロール用デバイス105はC・FET104のゲート信号をオフにして、D・FET103側のゲートに電圧を印加し、D・FET103をオンにする。この場合C・FET104はオフだが寄生ダイオード104aは順方向になるため、図15の右向きの放電回路が確保される。
【0004】
それでは係る保護回路に使用される、ドレインを共有するMOS型FETを2個含む半導体装置102にかかる半導体チップについて、図16にその表面から見た平面図を、図17にその裏面図を、また図18に図17のA−A間による断面図を示す。図16には、半導体基板の表面側に、S1で表示されるソースバンプ電極106とG1で表示されるゲートバンプ電極107を含むMOS構造と、S2で表示されるソースバンプ電極106とG2で表示されるゲートバンプ電極107とを含むMOS構造とからなる、2つのMOS構造が形成されているのが示される。また、図17、図18から、それぞれのMOS構造に対して8つのビアホール108が、半導体基板の裏面からN+型ドレイン層109の中に、N+型ドレイン層109とN−型エピ層110の境界近くまで、形成されているのが示される。S1、S2、G1、G2はハンダバンプであり、当該チップは、Flip Chipを構成している。なお、図17における点線で示すS1等は、裏面から透視してみたハンダバンプを点線で表している。
【0005】
図18に示されるように、2つのFETは、ドレインを共通にした縦型MOSFETを構成している。また、基板の縦方向に、P+型ボディ層112、P型チャネル層111からなるP型半導体層とN−型エピ層110、N+型ドレイン層109からなるN型半導体層により、図15に示す、寄生ダイオード103a、104aが形成されている。かかる半導体チップ内の、電流の流れについて以下に記す。例えば、前述の保護回路で、充電動作が行われている場合を考えてみる。この場合、図15の右側のC・FET104がオンするようにゲートに電圧が印加され、左側のD・FET103はその寄生ダイオード103aが順方向であり充電電流が流れる。これを図18で、ソースバンプ電極S1がリチューム電池101の負電極側に接続されているとして考えると、矢印で示すように、ソースバンプ電極S2側のFET(C・FET104に相当)がオンし、N+型ドレイン層109からN−型エピ層110、P型チャネル層111を経由し、N+型ソース層113に向かって、下から上に縦方向の電流が流れる。ソースバンプ電極S1側のFET(D・FET103に相当)はオフ状態であるが、P+型ボディ層112、P型チャネル層111とN−型エピ層110、N+型ドレイン層109からなる寄生ダイオードが順方向となるため、矢印で示すように、其のルートを辿って上から下へ縦方向の電流が流れる。
【0006】
即ち、図18の矢印で示すように、ソースバンプ電極S1側の寄生ダイオードを経由して縦方向にドレインに流れ込む電流が、共通ドレインを横方向に流れ、ソースバンプ電極S2側の、オンしているFETのチャネル層を縦方向に流れ、S1からS2に通じる電流経路を形成する。この場合、バンプS1側の寄生ダイオード103aを経由して、縦方向にドレインに流れ込む電流は、N+型ドレイン層109より抵抗の小さな、ビアホール108内に形成された金属電極114を経由して、裏面電極115に流れ、次に裏面電極115内を横方向に流れてから、隣のFETのビアホール108に形成された、金属電極114を縦方向に流れ、チャネル層を経由して、当該FETのN+型ソース層113に流れ込む。従来のように、ビアホール108が形成されず、電流がN+型ドレイン層109を経由して流れざるを得なかった場合に比し、ビアホール108を形成し、ビアホール108内と裏面電極115を、電気的に接続する金属電極114を形成することにより、かかる電流経路の抵抗は大きく減少した。
【0007】
半導体基板内を縦方向、横方向、次に縦方向と連続的に電流が流れる、第2の例として、パワー系の縦型MOSFETであって、Flip Chip用として、ドレイン電極を半導体基板の表面から取り出す半導体装置がある。図19により、第1の例と同一の構成については、同一の符号を使用して説明する。この場合も、ドレイン層の抵抗を低減するためビアホール108が、半導体基板の裏面から、N+型ドレイン層109とN−型エピ層110の境界近くまでの、N+型ドレイン層109内に形成される。したがって、矢印で示すように、電流はN+型ソース層113から、P型チャネル層111に形成されたN型チャネル層を通り、ビアホール108内の金属電極114を、縦方向に裏面電極115まで流れる。次に裏面電極115内を横方向に、半導体基板の表面にドレイン導出電極116が形成された、直下のビアホール108部分まで流れる。最後に当該ビアホール108を経由して、ドレイン導出電極116に向かう、縦方向の電流が流れる。なお、ドレイン導出電極116の直下のビアホール108は、通常N―型エピ層110内部まで形成される。
【0008】
このように、半導体基板の裏面側にビアホール108を形成し、裏面電極115と電気的に接続することにより、縦型MOSFETのドレイン抵抗を低下させることについては、以下の特許文献に記載されている。
【特許文献1】特開2008−66694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の電流が縦方向、横方向、次に縦方向と連続して流れる半導体装置において、縦方向に流れる電流に対する抵抗は、半導体基板の裏面にビアホールを形成し、ビアホール内壁に、裏面電極と電気的に接続された金属電極を形成することにより、ビアホールが形成されない場合に比して大きく低減した。しかし、なお、ビアホール内から裏面電極にいたる、金属電極の抵抗は存在する。また、裏面電極内を横方向に流れる電流に対する裏面電極の抵抗は、半導体チップを小型化、即ち、縦横一定比率でシュリンクした場合も、裏面電極の比抵抗や厚みで決まる値をそのまま維持する。したがって、縦方向、横方向、次に縦方向と連続して流れる電流経路の電気抵抗を、更に低下させる事が可能な、高効率、高性能な半導体装置の開発が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、半導体基板の表面側に形成されたドレインを共有する2つのMOS構造と、前記半導体基板の裏面側に前記MOS構造の一方のドレイン領域から、前記MOS構造の他方の前記ドレイン領域まで延在して形成された堀状の開口部と、前記堀状の開口部の中に形成された金属電極と、前記金属電極と電気的に接続された裏面電極と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の半導体装置は、半導体基板の表面にドレイン領域から電流を導出するために形成されたドレイン導出端子と、前記半導体基板の裏面にソース領域の下方の前記ドレイン領域から前記ドレイン導出端子の下方の領域まで延在して形成された堀状の開口部と、前記堀状の開口部の中に形成された金属電極と、前記金属電極と電気的に接続された裏面電極と、を備えることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の半導体装置は、前記半導体基板が第1導電型であり、前記MOS構造は、前記半導体基板の表面側に形成された第2導電型のチャネル層と、複数のゲート絶縁膜及びゲート電極と、前記ゲート絶縁膜に隣接して形成された第1導電型のソース層と、前記ソース層と電気的に接続して形成されたソース電極と、前記ソース層に挟まれ、前記半導体基板の表面から前記チャネル層の内部まで延在して形成された第2導電型のボディ層と、を備え、前記内壁はドレインとして機能し、前記金属電極及び前記裏面電極はドレイン電極であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面側にドレインを共有する2つのMOS構造を形成する工程と、前記半導体基板の裏面側に前記MOS構造の一方の前記ドレイン領域から、前記MOS構造の他方の前記ドレイン領域まで延在する堀状の開口部を形成する工程と、前記堀状の開口部の中に金属電極を形成する工程と、前記金属電極と電気的に接続する裏面電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面にドレイン領域から電流を導出するためのドレイン導出端子を形成する工程と、前記半導体基板の裏面側にソースの下方のドレイン領域から前記ドレイン導出端子の下方まで延在する堀状の開口部を形成する工程と、前記堀状の開口部の中に金属電極を形成する工程と、前記金属電極と電気的に接続する裏面電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の表面から縦方向、横方向、そして最後に、また、縦方向に連続して流れる電流経路の電気抵抗を低減する事が可能となり、高性能な半導体装置を製造する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。初めに、図1〜図3において、本発明に係る、第1の実施形態についての半導体装置の特徴について、詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態における半導体チップの平面図である。また、図2はその裏面図である。図3は、図2のA−A間の断面図である。図1は、従来例と同様、半導体基板の表面に、S1で表示するソースバンプ電極1とG1で表示するゲートバンプ電極2からなるMOS構造と、S2で表示するソースバンプ電極1とG2で表示するゲートバンプ電極2とからなるMOS構造が形成されているのを示している。
【0017】
周辺はゲート配線電極3がソース領域を取り囲み、内部のゲート電極13と不図示の配線で接続されている。図2は、半導体基板の裏面に、両方のMOS型FETの共通のドレイン領域を跨って、4本の堀状の開口部4が形成され、裏面電極5と堀状の開口部4の内壁に形成された金属電極6とが、電気的に接続されている状態を示す。図2の点線で示す丸印は、半導体基板の表側に形成された、ソースバンプ電極1並びにゲートバンプ電極2を裏面側から透視した状態を示している。なお、図2に示す、堀状の開口部4の本数は例示であり、4本に制限されるものでない。
【0018】
図3は、それぞれのMOS構造が、どのように形成されているかを示している。N+型ドレイン層7の上にN−型エピ層8が形成され、N−型エピ層8の中には酸化膜9を介して、P型チャネル層10が形成されている。さらに、P型チャネル層10の表面からP型チャネル層10を貫通し、N−型エピ層8に至る複数のトレンチ11が形成され、その内壁にゲート絶縁膜12、その内部を充填するにゲート電極13が形成される。図3において、4個のトレンチ11が形成されているが、その個数は必要に応じ、増減される。トレンチ11の内壁に形成されたゲート絶縁膜12に隣接して、N+型ソース層14が、またN+型ソース層14とN+型ソース層14の間にP+型ボディ層15が形成される。
【0019】
トレンチ11内を充填するゲート電極13の表面は、層間絶縁膜16で覆われ、その上にソース電極17が形成される。その上部に、窒化膜18、ポリイミド膜19が形成され、ソース電極17と接続されたUBM(アンダー バンプ メタル)20を介して、ハンダ等からなる、バンプ電極1が形成される。UBM20は、Ni/Au等が積層されて形成される。また、半導体基板の裏面側には、N+型ドレイン層7内に、N+型ドレイン層7とN−型エピ層8の界面近傍まで到達する堀状の開口部4が、一方のMOSFETのドレイン領域から他方のMOSFETのドレイン領域まで延在して形成される。また、堀状の開口部4の内壁には、裏面電極5と電気的に接続された金属電極6が形成される。
【0020】
図3に、本発明の第1の実施形態における半導体装置の、電流の流れを矢印で示す。ソースバンプ電極S1が、図15に示す回路のリチューム電池101の負電極側に接続されている場合を考える。図15において、充電状態の場合は、前述の如くソースバンプ電極S1側のP型チャネル層10とN−型エピ層8で形成される、寄生ダイオード103aは順方向となる。そのため、順方向電流が、P+型ボディ層15、P型チャネル層10から、N−型エピ層8を通る矢印方向の縦方向電流として、N+型ドレイン層7に流れこむ。この場合、大部分はN+型ドレイン層7より抵抗の低い、堀状の開口部4内に形成された金属電極6内に流れ込む。
【0021】
堀状の開口部4に流れ込んだ電流の大部分は、堀状の開口部4内壁に形成された金属電極6内を電気的な最短経路を経由しつつ、ゲートに信号が印加され、オン状態にあるソースバンプ電極S2側のMOS構造のドレイン領域に向かう、矢印で示す横方向の電流となる。すなわち、本発明に係る半導体装置では図3に矢印で示す様に、堀状の開口部4内に形成された金属電極6内を、N−型エピ層8に近い領域ほど沢山の横方向の電流が流れる。したがって、裏面電極5の電流経路としての役目は、相対的に小さなものになる。
【0022】
それに対して、従来構造では、図18の矢印で示すように、先ず、ソースバンプ電極S1側のP+型ボディ層112、P型チャネル層111から、N−型エピ層110へ向かい、図15に示す寄生ダイオード103aを通る順方向電流として、N+型ドレイン層109に縦方向電流が流れこむ。縦方向電流は、大半が低抵抗のビアホール108内の金属電極114を経由して裏面電極115に流れ込む。その後、裏面電極115を横方向に流れる。
裏面電極は大半の横方向電流の電流経路としての大きな役割を占めている。
【0023】
即ち、本発明においては、堀状の開口部4内の金属電極6の上部を、より多くの電流が流れることになるため、従来のビアホール構造の場合に比して堀状の開口部4を上から下に流れる電流の比率が小さくなり、当該縦方向の抵抗はビアホール構造に比し低減する。
【0024】
次に、横方向に流れる電流に対する抵抗について考察する。横方向の抵抗は、図18に示す従来構造では、裏面電極115の抵抗がそれに相当する。本発明においては堀状の開口部4に形成された金属電極6の側面の抵抗が相当する。堀状の開口部4は、溝幅が数十μ〜200μ程度で形成されることから、半導体基板の裏面側に、複数本形成する事ができる。その結果、横方向抵抗を所定の抵抗値以下にする事ができる。例えば、チップサイズをa×a、裏面電極5の厚さをt、比抵抗をρ、堀状の開口部4の堀の深さを200μm、堀状の開口部4の堀の本数をX、堀状の開口部4内の金属電極6の厚さを裏面電極5の厚さと同じtとした場合、裏面電極5の抵抗R1と開口部4側壁の金属電極6の抵抗R2は略、それぞれ以下の様に表すことができる。
【0025】
この場合、横方向電流が流れる堀状の開口部4の側壁の枚数は、1の開口部当たり2枚で、開口部の個数がXなので、合計2X枚となる。したがって、R1=aρ/(at)=ρ/tであり、R2=aρ/(400tX)となる。堀状の開口部4内には、200×2Xの幅で、厚みt、長さaの金属板が形成されていることと等価だからである。裏面電極5の抵抗R1より開口部4内の金属電極6の抵抗R2を小さくするためには、R2<R1からX>a/400となる。仮に、チップサイズが2mm×2mmの場合、即ち、a=2000μmの場合は、堀状の開口部4の本数XをX>5本以上形成すれば、堀状の開口部4内の金属電極6の抵抗値を、裏面電極5の抵抗値よりも小さくできる。
【0026】
200μm幅の堀状の開口部4を5個形成したとしても、全体の溝幅は合わせても1000μmであり、チップサイズ長2000μmに対して充分な余裕を持って、堀状の開口部4が形成できる。堀状の開口部4の幅を100μmにすれば、Xを10本にしても、チップサイズに対する余裕は充分取れ、堀状の開口部4の抵抗R2=(2000/4000)(ρ/t)=(R1)/2となり、堀状の開口部4の金属電極6の抵抗R2の抵抗値は、裏面電極5の抵抗R1の抵抗値の半分の値まで低減する事ができる。従来構造においては、半導体チップを縦横一定の比率でシュリンクした場合でも、裏面電極5の横方向の抵抗R1は、その厚みと比抵抗で決まる一定の値に留まるが、本発明においては堀状の開口部4の本数を増やすことにより、横方向の抵抗値を低減する事ができる。
【0027】
上述したように、本発明の第1の実施形態において、N+型ドレイン層7を共通にする2つのMOS構造の間を、第1のMOS構造のN+型ソース層14から、第2のMOS構造のN+型ソース層14まで、共通するドレイン領域を経由して、縦方向、横方向、そしてまた、縦方向と連続して流れる電流経路の抵抗値を、従来構造に比して、大きく低減する事ができる。
【0028】
それでは、図4〜図11に従い、ドレインを共通にする、2つのMOS構造を有する本発明の第1の実施形態における、半導体装置の製造方法について以下に説明する。本発明を理解するためには、2つのMOS構造の内の1つについて、またその内の一部の構造について記載すれば充分なので、そのような図面にて説明を進める。また、本発明の半導体装置は、その表面にハンダバンプ等を形成したFlip Chip構成になっているが、発明の要旨の把握には必要ないので、バンプ電極形成前までの工程について説明する。初めに、図4に示すように、N+型ドレイン層7となる、例えば厚さ200μmの半導体ウエハを準備し、その表面に所定のエピタキシャル法により、N−型エピ層8を、所定の厚さになるように形成する。
【0029】
次に図5に示すように、酸化膜9をマスクに、ダメージ軽減用の酸化膜21を介してN−型エピ層8内にB(ボロン)等をイオン注入し、N−型エピ層8の主表面に、P型チャネル層10を所定の深さとなるよう形成する。次に、図6に示すように、酸化膜21上にCVDにより窒化膜や酸化膜等からなる複合膜21Aを形成し、所定のフォトリソグラフィ技術によりパターニングする。そして、複合膜21Aをマスクとして、半導体層をドライエッチング等し、所定の開口径のトレンチ11を、P型チャネル層10からN−型エピ層8の内部まで到達するように形成する。
【0030】
次に、図7に示すように、複合膜21Aをエッチングにより除去した後に、熱処理や、エッチングにより、トレンチ11内壁のダメージ層を除去し、かつトレンチ11の開口部コーナー及び底部コーナーを丸くする。次に、熱酸化によりトレンチ11内壁にゲート絶縁膜12を形成し、更に、CVDによりポリシリコン膜22を、トレンチ11内を埋め込み、半導体基板の表面全体を被覆するように堆積する。
【0031】
次に、図8に示すように、ポリシリコン膜22をエッチバックして、ゲート電極13を形成する。このとき、好ましくは、図8で示されるように、ゲート電極13の上端が、P型チャネル層10の表面よりも、数μm程度下がった位置まで行う。次に、ゲート電極13上及びゲート絶縁膜12上を含む半導体基板表面上に、CVDにより酸化膜を堆積し、その後、P型チャネル層10の表面が、露出するまでエッチバックする。これにより、ゲート電極13の上面側が、ゲート絶縁膜12と一体的に覆われた状態となる。
【0032】
次に、図9に示すように、先ずは、不図示のレジスト膜をマスクとして、P型チャネル層10内に、B(ボロン)等をイオン注入し、その後、熱処理を行うことにより、P+型ボディ層15を形成する。次に、同じく図9に示すように、レジスト膜23をマスクにして、P型チャネル層10の上層部に、As(砒素)等をイオン注入し、その後熱処理を行い、N+型ソース層14を、トレンチゲート絶縁膜12に隣接して形成する。
【0033】
次に、図10に示すように、BPSG等の絶縁膜を、半導体基板の表面全面に被着し、N+型ソース層14及びP+型ボディ層15を露出するように、当該絶縁膜をエッチングし、トレンチ11上に、層間絶縁膜16を形成する。次にスパッタリング等により、アルミ等の金属材料を半導体基板の表面に被着し、所定のフォトエッチング工程を経て、その後アロイ処理を行うことにより、ソース電極17を形成する。そして、図示した説明は省略するが、窒化膜等から成るパッシベーション膜を形成する。
【0034】
次に、図11に示すように、半導体基板の裏面に、図2に示すような堀状の開口部4を形成するため、レジスト等でマスクを形成し、半導体基板を、その裏面側からエッチングする。次に、半導体基板の裏面からバリア層、シード層を形成した後、Cu層等からなる裏面電極5並びに堀状の開口部4の内壁に対する金属電極6を形成する。この場合、堀状の開口部4を、金属電極6が埋め込むように形成してもよいし、その内壁上に、裏面電極5と同じ厚みの金属電極6を形成しても良い。N+型ソース層14やP+型ボディ層15の下方のN+型ドレイン層7内に、堀状の開口部4が、N−型エピ層8の直下の部分で、隣接するMOS構造それぞれの、ドレイン層間に跨って形成されている。
【0035】
また、堀状の開口部4内壁の中には、裏面電極5と電気的に接続された、低抵抗の金属電極6が形成されているのがわかる。なお、堀状の開口部4の方が、従来のビアホール108による開口部に比べて、開口面積が広いため、金属電極6を埋め込むのが容易という利点もある。最後に、半導体基板の表面上には、不図示のハンダバンプ電極を形成する諸作業が行われ、本発明に係る半導体装置は完成する。
【0036】
本発明の第2の実施形態である、パワー系の縦型MOSFETであって、主にFlip Chip用途のドレイン導出電極24を有する半導体装置について、以下に図面に従って説明する。図において、第1の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。図12に示すように、この場合も、半導体基板の裏面側に堀状の開口部4を設けることは、第1の実施形態と変わりはない。
【0037】
N+型ドレイン層7に流れるこむ電流が、堀状の開口部4に形成された金属電極6を、横方向に流れる点も、第1の実施形態と同一である。最後に、半導体基板の表面に形成されたドレイン導出電極24に向かい縦方向に流れる電流も、流れ込む先が異なるだけで同一である。したがって、かかる構成にすることにより、図19に示す従来構造に比し、第1の実施形態で得られたと同様、電流経路の抵抗を下げる効果を得る事ができる。図12では、ドレイン導出電極24に向かう堀状の開口部4が、垂直に形成されているが、図13の如く、テーパー形状に形成すれば、より電流経路の抵抗を下げる事ができる。
【0038】
第3の実施形態について、図14に従って説明する。第1の実施形態においては、半導体基板の裏面側に、複数本の堀状の開口部4を形成したが、本実施形態においては、半導体チップの裏面全体を、1つのアーチ形状にエッチングした点が特徴となる。図14においては、その電流経路の抵抗低減という特徴を示せば良いので、トレンチゲート部分やハンダバンプ部分は省略し、図1のB−B間の断面を記載してある。即ち、図14においては、図の手前側から奥側に向かって、2つのMOS構造が並んで形成されている。手前のMOS構造のN+型ソース層14から、アーチ形状に形成された金属電極6まで、実線の矢印で示すように、縦方向の電流が流れる。
【0039】
次にアーチ形状の金属電極6を、手前から奥側のMOS構造のドレイン領域に向かい、横方向の電流が流れる。最後に奥側のMOS構造を、金属電極6からN+型ソース層14に向かって点線の矢印で示した縦方向の電流が流れる。縦方向の電流はアーチ状の金属電極6まで流れ、裏面電極5まで流れる必要ないため、縦方向の抵抗は減少する。また、アーチ状の金属電極6の電流の流れる方向の断面積は、裏面電極5の断面積より当然に大きくなるため、横方向の抵抗も小さくなる。したがって、手前のMOSFETのN+型ソース層14からアーチ状金属電極6を経由して、奥側のMOSFETのN+型ソース層14に至る電流経路の抵抗低減を図る事ができる。
【0040】
なお、この場合、半導体基板の裏面側が大きくエッチングされるが、その形状がアーチ状になるため、機械的強度を大きくする事ができるという利点もある。この場合、半導体基板の裏面を、ワックス等をマスクにして、スプレーエッチングで、スプレーの方向と強度等を適切に設定することにより、簡単に安価に、アーチ形状を実現できることから有効な手段である。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、発明思想が同一である限り、他の実施形態にも適用ができる。例えば、構成要素のN型をP型に、P型をN型に変更した半導体装置に於いても同様の効果を得る事ができる。また、上記の実施形態に種々の機能を有する半導体回路が集積された半導体装置にも適用されることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す裏面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図15】リチューム電池の充放電時の保護回路である。
【図16】従来の実施形態における半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【図17】従来の実施形態における半導体装置の製造方法を示す裏面図である。
【図18】従来の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図19】従来の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ソースバンプ電極 2 ゲートバンプ電極 3 ゲート配線電極
4 堀状の開口部 5 裏面電極 6 金属電極 7 N+型ドレイン層
8 N−型エピ層 9 酸化膜 10 P型チャネル層
11 トレンチ 12 ゲート絶縁膜 13 ゲート電極 14 N+型ソース層
15 P+型ボディ層 16 層間絶縁膜 17 ソース電極 18 窒化膜
19 ポリイミド膜 20 UBM(アンダー バンプ メタル) 21 酸化膜
21A 複合膜 22 ポリシリコン 23 レジスト膜
24 ドレイン導出電極 101 リチューム電池 102 半導体装置
103 放電用MOSFET 103a 寄生ダイオード
104 充電用MOSFET 104a 寄生ダイオード
105 コントロール用デバイス 106 ソースバンプ電極
107 ゲートバンプ電極 108 ビアホール 109 N+型ドレイン層
110 N−型エピ層 111 P型チャネル層 112 P+型ボディ層
113 N+型ソース層 114 金属電極 115 裏面電極
116 ドレイン導出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面側に形成されたドレインを共有する2つのMOS構造と、
前記半導体基板の裏面側に前記MOS構造の一方のドレイン領域から、前記MOS構造の他方の前記ドレイン領域まで延在して形成された堀状の開口部と、
前記堀状の開口部の中に形成された金属電極と、
前記金属電極と電気的に接続された裏面電極と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板の表面にドレイン領域から電流を導出するために形成されたドレイン導出端子と、
前記半導体基板の裏面にソース領域の下方の前記ドレイン領域から前記ドレイン導出端子の下方の領域まで延在して形成された堀状の開口部と、
前記堀状の開口部の中に形成された金属電極と、
前記金属電極と電気的に接続された裏面電極と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記堀状の開口部が前記ドレイン導出端子と接続するように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は第1導電型であり、
前記MOS構造は、前記半導体基板の表面側に形成された第2導電型のチャネル層と、
複数のゲート絶縁膜及びゲート電極と、
前記ゲート絶縁膜に隣接して形成された第1導電型のソース層と、
前記ソース層と電気的に接続して形成されたソース電極と、
前記ソース層に挟まれ、前記半導体基板の表面から前記チャネル層の内部まで延在して形成された第2導電型のボディ層と、を備え、前記金属電極及び前記裏面電極はドレイン電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記開口部がアーチ状の形状で形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート電極はトレンチ型であることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板の表面側にドレインを共有する2つのMOS構造を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面側に前記MOS構造の一方の前記ドレイン領域から、前記MOS構造の他方の前記ドレイン領域まで延在する堀状の開口部を形成する工程と、
前記堀状の開口部の中に金属電極を形成する工程と、
前記金属電極と電気的に接続する裏面電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
半導体基板の表面にドレイン領域から電流を導出するためのドレイン導出端子を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面側にソースの下方のドレイン領域から前記ドレイン導出端子の下方まで延在する堀状の開口部を形成する工程と、
前記堀状の開口部の中に金属電極を形成する工程と、
前記金属電極と電気的に接続する裏面電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記堀状の開口部を前記ドレイン導出端子に接続して形成することを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−87096(P2010−87096A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252541(P2008−252541)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】