説明

半導体装置

【課題】共通の半導体基板の上に複数の半導体素子を形成すると寄生トランジスタが形成される。
【解決手段】寄生トランジスタの動作を抑制することができる複合半導体装置は、p型の第1の半導体領域7の上にn型の第2の半導体領域8と環状に形成された第3、第4及び第5の半導体領域9,11,12を有する。最も内側に配置されたn+型の第5の半導体領域12の内側に抵抗膜3が配置されている。この抵抗膜3はドレイン電極18と接続導体30との間に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体素子を含む複合半導体装置等の半導体装置に関し、更に詳細には寄生トランジスタの抑制又は電流の制限等が可能な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合半導体装置又は集積回路(IC)において、複数の半導体素子間を電気的に分離するためのpn接合分離方法及びpn接合分離とトレンチとを組み合せた分離方法は、例えば特開2001−135719号公報(特許文献1)等で周知である。pn接合分離又はpn接合分離とトレンチ分離との組み合わせによって電気的に分離された複数の半導体素子は共通の半導体基板上に形成され、且つプレーナー(planar)構造に形成される。
【0003】
例えばLDMOSFET(Laterally Diffused MOSFET)構造の第1及び第2のFET(電界効果トランジスタ)を含む複合半導体装置は、p型半導体基板とこのp型半導体基板上に配置された第1及び第2のFETのn型ドレイン領域と、第1及び第2のFETのp型ボディ領域(チャネル形成領域)と、第1及び第2のFETのn型ソース領域と、第1及び第2のFETのn型ドレイン領域の相互間を分離するためのpn分離領域又は分離用トレンチとを有する。
【0004】
第1及び第2のFETは、分離領域によって電気的に分離されているので、通常の状態では相互に干渉しない。しかし、第1及び第2のFETは共通のp型半導体基板上に形成されているので、第1のFETのn型ドレイン領域とp型半導体基板と第2のFETのn型ドレイン領域とによってnpn型の寄生トランジスタが形成され、これが動作することがある。例えば、第1のFETのn型ドレイン領域に電気的に接続されたドレイン端子がノイズ等によって負電位になり、p型半導体基板の電位よりもドレイン端子の電位が低くなると、上記の寄生トランジスタに電流が流れ、複合半導体装置が誤動作する恐れがある。この種の問題は、第1及び第2のFETの代りに第1及び第2のバイポーラトランジスタを形成する場合にも生じる。
【0005】
上記特許文献1には、寄生トランジスタの動作を抑制するためにp型半導体基板の不純物濃度を高め、且つコレクタ領域のn+型埋め込み層とp型半導体基板との間にn+型埋め込み層よりも不純物濃度の低いn-型半導体層を設けることが開示されている。しかし、上記方法ではn-型半導体層を設けるための工程が増加する。
【0006】
LDMOSFETの寄生トランジスタの動作を防止するための寄生トランジスタ動作防止回路を設けることが、特開平9−65571号公報(特許文献2)に開示されている。しかし、寄生トランジスタ動作防止回路を個別に形成すると、複合半導体装置の部品点数の増加、実装面積の増加を招く。
【0007】
LDMOSFETの用途の1つにSMPS(Switching Mode Power Supply)即ちスイッチング電源装置がある。このスイッチング電源装置は、例えば直流電源と、ここにトランスの1次巻線を介して接続された主スイッチと、トランスの2次巻線に接続された出力整流平滑回路と、スイッチをオン・オフ制御するための制御回路と、トランスの3次巻線に接続された制御回路電源用整流平滑回路と、主スイッチの起動時に直流電源から制御回路に電力を供給する起動回路とから成る。上記起動回路は、スイッチング電源装置の起動時の突入電流を制限するための起動抵抗とこの起動抵抗に直列に接続されたLDMOSFETとから成る。従来のスイッチング電源装置では、起動抵抗とLDMOSFETとが個別に形成されていたので、スイッチング電源装置の小型化及び低コスト化が阻害された。
【特許文献1】特開2001−135719号公報
【特許文献2】特開平9−65571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、半導体素子の性能を向上させるため又は所定の電気回路(例えば起動回路又は電流検出回路)を形成するための回路素子を半導体素子と別に形成すると、部品点数及び実装面積の増大を招くことである。
従って、本発明の目的は、半導体素子の性能を向上させるため又は所定の電気回路を形成するための抵抗(回路素子)を伴なっている半導体装置の小型化及び低コスト化を図ることである。また本発明の別な目的は、寄生トランジスタを抑制することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、
半導体素子を形成するための複数の半導体領域を含み且つ一方の主面とこの一方の主面に対向する他方の主面とを有する半導体基体と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に設けられた第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極間を流れる電流を制御するために前記半導体基体の前記一方の主面上に配置された制御手段と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され且つ前記第2の電極に電気的に接続され且つ所定の抵抗値を有している抵抗膜と、
前記抵抗膜上に形成された接続導体と
を備えていることを特徴とする半導体装置に係わるものである。
【0010】
なお、請求項2に示すように、前記半導体基体は、前記他方の主面に露出するように配置され且つ第1導電型を有している第1の半導体領域と、第1の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の一部の上に配置され且つ前記一方の主面に露出する部分を有し且つ前記第1導電型と反対の第2導電型を有している第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第1導電型を有している第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域の中に形成され且つ第2の導電型を有している第4の半導体領域と、第2の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の上に配置され且つ第2導電型を有している第2の半導体素子用半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の半導体領域又はトレンチから成る分離領域とを備え、前記第1の電極は前記第4の半導体領域に接続され、前記第2の電極は前記第2の半導体領域に接続され、前記制御手段は前記第3の半導体領域の上に配置され、前記絶縁層は前記第2の半導体領域の表面上に形成されていることが望ましい。
また、請求項3に示すように、前記抵抗膜の代わりに、前記絶縁層の上に形成され且つ第1導電型半導体領域と第2導電型半導体領域を有している半導体膜から成り且つ前記第2導電型半導体領域が前記第2の電極に電気的に接続され且つ前記第1及び第2の電極間を電流が流れることを許す極性を有しているダイオードを設けることができる。
また、請求項4に示すように、前記第2の電極は、前記第2の半導体領域の中央部分を囲むように環状に形成され、前記抵抗膜又はダイオードは前記第2の半導体領域の前記中央部分の上に前記絶縁層を介して配置されていることが望ましい。これにより、前記抵抗膜又はダイオードを設けることによる半導体基体の表面積の増大を抑えることができる。
また、請求項5に示すように、前記抵抗膜又はダイオードは、前記第1、第2及び第5の半導体領域に基づく寄生トランジスタの形成を抑制することができるものであることが望ましい。
また、前記抵抗膜は、前記第1及び第2の電極間を流れる電流を所定値に制限するための抵抗値を有していることが望ましい。
また、前記抵抗膜は、前記第1、第2及び第5の半導体領域に基づく寄生トランジスタの形成を抑制し且つ前記第1及び第2の電極間を流れる電流を所定値に制限するための抵抗値を有していることが望ましい。
また、請求項6に示すように、更に、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第2導電型を有し且つ前記第2の半導体領域よりも高い不純物濃度を有している第5の半導体領域を有し、前記第2の電極は前記第5の半導体領域に接続されていることが望ましい。
また、請求項7に示すように、前記第1の半導体素子は、絶縁ゲート型電界効果トランジスタであり、前記第2の半導体領域はドレイン領域であり、前記第3の半導体領域はボディ領域(チャネル形成領域)であり、前記第4の半導体領域はソース領域であり、前記第1の電極はソース電極であり、前記第2の電極はドレイン電極であり、前記制御手段は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間において前記第3の半導体領域の表面上にゲート絶縁膜を介して配置されたゲート電極であることが望ましい。
また、請求項8に示すように、更に、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に耐圧を向上させるためのフィールドプレート手段を有していることが望ましい。
また、請求項9に示すように、更に、前記第3の半導体領域と前記第2の電極との間において、前記半導体基体の前記一方の主面と前記第2の半導体領域との間に配置されたリサーフ領域を有していることが望ましい。
また、請求項10に示すように、寄生トランジスタを抑制するための半導体装置は、半導体素子を形成するための複数の半導体領域を含み且つ一方の主面とこの一方の主面に対向する他方の主面とを有する半導体基体と、前記半導体基体の前記一方の主面上に設けられた第1及び第2の電極と、前記第1及び第2の電極間を流れる電流を制御するために前記半導体基体の前記一方の主面上に配置された制御手段とを備え、
前記半導体基体は、前記他方の主面に露出するように配置され且つ第1導電型を有している第1の半導体領域と、第1の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の一部の上に配置され且つ前記一方の主面に露出する部分を有し且つ前記第1導電型と反対の第2導電型を有している第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第1導電型を有している第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域の中に形成され且つ第2の導電型を有している第4の半導体領域と、第2の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の上に配置され且つ第2導電型を有している第2の半導体素子用半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域との間に配置され且つ第2導電型を有している寄生トランジスタ抑制半導体領域と、前記寄生トランジスタ抑制半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の分離用半導体領域又はトレンチから成る第1の分離領域と、寄生トランジスタ抑制半導体領域と前記第1の半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の分離用半導体領域又はトレンチから成る第2の分離領域とを備え、
前記第1の電極は前記第4の半導体領域に接続され、
前記第2の電極は前記第2の半導体領域に接続され、
前記制御手段は前記第3の半導体領域の上に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1〜9の発明の抵抗膜又はダイオードは、第2の電極に接続されているので、第1及び第2の電極間を流れる電流を制限する。従って、もし第1の電極とグランドとの間にコンデンサが接続されている場合において抵抗膜又はダイオードに電圧が印加されると、抵抗膜又はダイオードによってコンデンサの突入電流が制限される。
また、共通の半導体基板の上に分離領域を介して複数の半導体素子が形成されている場合には、本発明に従う抵抗膜又はダイオードが寄生トランジスタ動作を抑制する。
また、抵抗膜又はダイオードは第1及び第2の電極間の電流通路に対して直列に接続されているので、電流検出抵抗として使用することもできる。
上記機能を有する抵抗膜又はダイオードは、半導体基体の一方の主面上に絶縁層を介して配置されている。従って、個別に抵抗又はダイオードを形成して半導体素子に接続する場合に比べて抵抗又はダイオードを伴なった半導体装置の部品点数を削減することが可能になり、半導体装置の小型化及び実装面積の低減及びコストの低減を図ることができる。
本発明の請求項10の発明の前記寄生トランジスタ抑制半導体領域は、第2導電型を有しているので、前記第2の半導体素子用半導体領域と同様に寄生トランジスタの形成に関与する。しかし、前記寄生トランジスタ抑制半導体領域は前記第2の半導体領域に対して前記第2の半導体素子用半導体領域よりも近い位置に配置されているので、もしノイズ等によって寄生トランジスタをオンにする極性の電圧が前記第2の電極に印加された時に、前記寄生トランジスタ抑制半導体領域に基づく第2の寄生トランジスタが先ずオン状態になり、前記第2の半導体素子用半導体領域に基づく第1の寄生トランジスタがオン状態になることを阻止する。これにより、寄生トランジスタに基づく第2の半導体素子の誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示す実施例1の複合半導体装置は、大別して第1の半導体素子1と、第2の半導体素子2と、本発明に従う抵抗膜3とを有している。第1の半導体素子1は高耐圧を有するLDMOSFETから成る。第2の半導体素子2は第1の半導体素子1よりも低い耐圧と低い電力容量のLDMOSFETから成る。抵抗膜3は第1の半導体素子1に直列に接続されている。
【0014】
第1及び第2の半導体素子1,2を一体に構成するためのシリコンから成る半導体基体4は、一方の主面5と他方の主面6とを有する板状体である。半導体基体4におけるp型半導体基板としての第1の半導体領域7は、この上に半導体をエピタキシャル成長させるための半導体基板として使用された部分であって、半導体基体4の他方の主面6に露出するように配置されている。
【0015】
第1の半導体領域7の上に配置されたn型の第2の半導体領域8は、第1の半導体領域7の上にエピタキシャル成長された層であって、半導体基体4の一方の主面5に露出するように配置され、主として第1の半導体素子1のn型ドレイン領域として機能する。このn型の第2の半導体領域8とp型の第1の半導体領域7及びp型分離用半導体領域10との間のpn接合は、第1及び第2の半導体素子1,2間の電気的分離に寄与する。
【0016】
n型の第2の半導体領域8の中に形成されたp型の第3の半導体領域9は、第1の半導体素子1のボディ領域と呼ぶことができるものであって、図2の平面図から明らかなようにn型の第2の半導体領域8を環状に囲む平面パターンを有する。平面的に見て図2の第3の半導体領域9は円形パターンであるが、この代りに楕円形又は四角形又はその他の多角形のパターンとすることもできる。
この実施例では、p型の第3の半導体領域9の中にp+型半導体領域62が設けられ、この上に電極61が設けられ、この電極61から一般にバックゲートと呼ばれている端子Gbが導出されている。端子Gbは、例えば一定の電圧源に接続され、p型の第3の半導体領域9の電位の安定化に使用される。また、端子Gbをソース端子Sに接続することもある。
なお、この実施例の第3の半導体領域9は、p型の第1の半導体領域7に達しないようにp型不純物を拡散することによって形成されているが、この代わり点線で示すようにp型の第1の半導体領域7に達するように第3の半導体領域9を形成することもできる。
p型分離用半導体領域10は、半導体基体4の一方の主面5からp型の第1の半導体領域7に達するように形成されている。
第1の半導体素子1を接続する回路によっては、第3の半導体領域9をp型分離用半導体領域10に隣接させても差し支えないことがある。この場合には、半導体基体4の一方の主面5からp型の第1の半導体領域7に達するようにp型不純物拡散を拡散し、その1部を第3の半導体領域9として利用し、その残部をp型分離用半導体領域10として利用する。
【0017】
p型の第3の半導体領域9の中に形成されたn+型の第4の半導体領域11は、第1の半導体素子1のソース領域であって、n型不純物の拡散によって形成され、n型の第2の半導体領域8よりも高い不純物濃度を有する。このn+型の第4の半導体領域11の平面パターンは図2に示すようにp型の第3の半導体領域9と同様に環状である。従って、n型の第2の半導体領域8とn+型の第4の半導体領域11との間にp型の第3の半導体領域9が環状に露出している。
【0018】
n型の第2の半導体領域8の中に不純物拡散によって形成されたn+型の第5の半導体領域12は、第1の半導体素子1のn+型ドレイン領域であって、n型の第2の半導体領域8よりも高い不純物濃度を有する。このn+型の第5の半導体領域12は、図2から明らかなようにp型の第3の半導体領域9よりも内側に配置され且つ環状の平面パターンを有する。n型の第2の半導体領域8が比較的高い不純物濃度を有する場合には、n+型の第5の半導体領域12を省くこともできる。
半導体基体の一方の主面5の電荷バランスを均一化すためのp-型半導体領域から成るリサーフ領域9aが形成されている。このリサーフ領域9aは、半導体基体の一方の主面5に露出するようにp型の第3の半導体領域9とn+型の第5の半導体領域12との間に配置され、且つn型の第2の半導体領域8の中にp型不純物を拡散することによって形成され、且つp型の第3の半導体領域9よりも浅く形成され、周知のリサーフ即ちRESURF(Reduced Surface Field)効果を発揮する。
なお、リサーフ構造は、米国特許第4292642号、特開2005−64472号公報、WO2003/075353等で公知であり、本願のリサーフ構造にリサーフ領域9a以外の周知のリサーフ構造を適用することもできる。
【0019】
第2の半導体素子2を形成するための半導体領域として、第1の半導体領域7の上にn型の第6の半導体領域13が配置されている。このn型の第6の半導体領域13はn型の第2の半導体領域8と同時にエピタキシャル成長された層の一部であり、第2の半導体素子2のn型ドレイン領域として機能する。
【0020】
第2の半導体素子2のn型の第6の半導体領域13の中にボディ領域として機能するp型の第7の半導体領域14が形成されている。また、p型の第7の半導体領域14の中に第2の半導体素子2のソース領域として機能する第8の半導体領域15が形成されている。また、n型の第6の半導体領域13の中に第2の半導体素子2のn+型ドレイン領域として機能する第9の半導体領域16が形成されている。
【0021】
第1の半導体素子1の第4の半導体領域11に第1の電極としての金属製のソース電極17が接続されている。このソース電極17は第4の半導体領域11と同様に環状の平面パターンを有する。なお、ソース電極17を第4の半導体領域11よりも外周側においてp型の第3の半導体領域9にも接続することができる。
【0022】
+型の第5の半導体領域12に第2の電極としての金属製のドレイン電極18が接続されている。このドレイン電極18の平面パターンは第5の半導体領域12と同様に環状である。
【0023】
p型の第3の半導体領域9の電流を制御するための制御手段としてSiO2から成る絶縁膜19とを介して導電性を有するポリシリコンから成るゲート電極20とが設けられている。このゲート電極20は、n+型の第4の半導体領域11とn型の第2の半導体領域8との間においてp型の第3の半導体領域9の表面に絶縁膜19を介して対向している。ゲート電極20に第1の半導体素子1をオンにする制御信号が印加された時にp型の第3の半導体領域9の表面近傍にnチャネル(電流通路)が形成される。
【0024】
第1の半導体素子1の高耐圧化を図るためにゲート電極20とドレイン電極18との間においてn型の第2の半導体領域8の表面上にフィールドプレート手段21が設けられている。図1のフィールドプレート手段21は容量性プレート構造であって、n型の第2の半導体領域8の表面即ち半導体基体4の一方の主面5上に絶縁膜19と介して配置された第1、第2及び第3のフィールドプレート導体層22,23,24と、第1及び第2のフィールドプレート導体層22,23を相互に容量結合させるためにSiO2から成る誘電体層(絶縁層)27を介して第1及び第2のフィールドプレート導体層22,23に対向している第4のフィールドプレート導体層25と、第2及び第3のフィールドプレート導体層23,24を相互に容量結合させるために誘電体層27を介して第2及び第3のフィールドプレート導体層23,24に対向している第5のフィールドプレート導体層26とから成る。第1〜第5のフィールドプレート導体層22〜26はゲート電極20と同様に導電性を有するポリシコンで形成されている。また、第1、第2及び第3のフィールドプレート導体層22,23,24は、ゲート電極20と同一の工程で形成されている。なお、図1では図示を簡単にするために第1〜第5のフィールドプレート導体層22〜26のみが示されているが、実際には、第1〜第5のフィールドプレート導体層22〜26よりも多い数のフィールドプレート導体層が設けられている。
【0025】
ドレイン電極18に最も近い第3のフィールドプレート導体層24はドレイン電極18に接続されている。ゲート電極20に最も近いフィールドプレート導体層22は、グランドに接続されている。従って、第1の半導体スイッチ1のオフ期間において、ドレイン電極18の電位が第1及び第3の半導体領域7、9の電位よりも高い時には、p型の第1及び第3の半導体領域7、9とn型の第2の半導体領域8との間のpn接合が逆バイアス状態となり、空乏層が生じると共に、この空乏層の広がりがフィールドプレート手段21によって調整され、電界集中が緩和される。
なお、フィールドプレート手段21を設けなくても半導体装置の所望の耐圧が得られる時には、勿論フィールドプレート手段21を省くことができる。また、フィールドプレート手段21を周知の別な形態に変形することもできる。
【0026】
第2の半導体素子2のn+型の第8の半導体領域15にはソース電極27が接続され、n+型の第9の半導体領域16にはドレイン電極28が接続されている。p型の第7の半導体領域14の表面上に絶縁膜19を介してゲート電極29が配置されている。ゲート電極29は導電性を有するポリシリコンから成る。
【0027】
抵抗膜3はn+型の第5の半導体領域12よりも内側においてn型の第2の半導体領域8の上に絶縁膜19を介して配置され、且つドレイン電極18と接続導体30との間に接続されている。この抵抗膜3は種々の抵抗材料から任意に選択されたもので形成することが可能であるが、本実施例ではポリシリコン(多結晶シリコン)の薄膜で形成されている。
【0028】
抵抗膜3は、図2から明らかなように平面的に見て略4角形に形成され、n+型の第5の半導体領域12の内側に配置されている。ドレイン電極18は図3から明らかなように略4角形の内周縁を有し、抵抗膜3の一端部32に接続されている。略4角形の接続導体30は、図3から明らかなように抵抗膜3の他端部33に接続されている。抵抗膜3は比較的大電流が流れるために比較的大面積に形成され、抵抗膜3の大部分を覆うように接続導体30が配置されている。
なお、ドレイン電極18と接続導体30との間に抵抗膜3の複数の部分を配置することもできる。また、ドレイン電極18と接続導体30との間の全部に抵抗膜3を配置することもできる。
【0029】
この実施例において、抵抗膜3によって与えられる抵抗値は、後述する寄生トランジスタの動作を抑制することができる値であり且つ後述するスイッチング電源装置の起動回路の起動抵抗の機能を得ることができる値に決定される。例えば、第1の半導体素子1の正常動作時におけるドレイン電流によって10Vの電圧降下が抵抗膜3において生じるように抵抗膜3に基づく抵抗値が決定される。
【0030】
接続導体30は、ワイヤ等の外部接続部材を接続するボンディングパッドとして機能するように金属で形成され、且つn+型の第5の半導体領域12の内側に配置されている。
【0031】
半導体基体4の一方の主面5の上の絶縁膜19の上にSiO2から成る保護用絶縁層31が設けられている。
【0032】
図1において点線で示すnpn型の寄生トランジスタQpが生じる。この寄生トランジスタQpにおいて、エミッタはn型の第2の半導体領域8及びn+型の第5の半導体領域12であり、ベースはp型の第1の半導体領域7であり、コレクタは第2の半導体素子2のn型の第6の半導体領域13及びn+型の第9の半導体領域16である。この寄生トランジスタQpは、正常状態では動作しない。もし本発明に従う抵抗膜3が設けられていない状態で例えばノイズ等の負電圧がドレイン電極18又はドレイン電極18の延長上の回路に印加され、ドレイン電極18の電位が第1の半導体領域7よりも低い負になると、寄生トランジスタQpのベース電流が流れて寄生トランジスタQpがオン状態になり、複合半導体装置が誤作動する恐れがある。これに対して、本発明に従う抵抗膜3が設けられている場合には、接続導体30又はこの延長回路にノイズ等の負電圧が印加されても、抵抗膜3で電圧降下が生じ、寄生トランジスタQpのベース電流が制限され、寄生トランジスタQpのオン動作が抑制され、複合半導体装置の寄生トランジスタによる誤動作が防止される。
【0033】
抵抗膜3は、ソース電極17ドレイン電極18との間の電流通路に対しても直列に接続されている。従って、第1の半導体素子1のドレイン電流は、接続導体30、抵抗膜3、ドレイン電極18、n+型の第5の半導体領域12、n型の第2の半導体領域8、p型の第3の半導体領域9のチャネル、n+型の第4の半導体領域11及びソース電極17の経路で流れる。このため、第1の半導体素子1を通って流れる電流が抵抗膜3によって制限される。もし、図4に示すように第1の半導体素子1にコンデンサC1が接続されている場合には、コンデンサC1に突入電流が流れることが抑制される。
【0034】
抵抗膜3に流れる電流は、第1の半導体素子1のドレイン・ソース間電流と同一であるので、抵抗膜3の両端子間電圧即ちドレイン電極18と接続導体30との間の電圧は、ドレイン・ソース間電流に比例する。従って、抵抗膜3を第1の半導体素子1の電流検出用抵抗として使用することもできる。
【0035】
図4は抵膜3を伴なった第1の半導体素子1が使用されているスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、対の交流入力端子41,42に接続された整流平滑回路43と、この整流平滑回路43の対の直流出力端子44,45間に接続されたトランス46の1次巻線N1と主スイッチQ1との直列回路と、トランス46の2次巻線N2に接続された出力整流平滑回路47と、主スイッチQ1の制御端子(ゲート)に接続されたスイッチ制御回路48と、トランス46の3次巻線N3に接続された制御電源用整流平滑回路49と、正の整流出力端子44とスイッチ制御回路48の電源端子51との間に接続された起動回路50とから成る。
【0036】
出力整流平滑回路47はダイオードDoと平滑コンデンサCoとから成る。制御電源用整流平滑回路49はダイオードD1とこのダイオードD1を介して3次巻線N3に並列接続されたコンデンサC1とから成る。コンデンサC1はスイッチ制御回路48の対の電源端子51,52間に接続されているので、スイッチ制御回路48の電源として機能する。
【0037】
起動回路50は、図1に示した第1の半導体素子1と抵抗膜3とから成る。第1の半導体素子1のドレインは抵抗膜3を介して整流平滑回路43の正の直流出力端子44に接続され、ソースはスイッチ制御回路48の電源端子51に接続されていると共にコンデンサC1に接続され、ゲートはスイッチ制御回路48の起動制御端子53に接続され、且つ抵抗膜3よりも十分に高い抵抗値を有する抵抗55を介して直流出力端子44に接続されている。
【0038】
スイッチ制御回路48は、主スイッチQ1をオン・オフ制御する信号を出力端子54を介して主スイッチQ1の制御端子に供給する機能の他に、スイッチング電源装置の起動期間の終了後に第1の半導体素子1をオフにするための信号(グランドレベル信号)を起動制御端子53に出力する機能を有する。なお、スイッチ制御回路48と起動回路50とによって1つのIC(集積回路)56が形成されている。また、図1の第2の半導体素子2はスイッチ制御回路48の一部として使用されている。
【0039】
コンデンサC1の電圧が零の状態で、交流電源端子41,42に交流電力を供給すると、第1の半導体スイッチ1がオンになり、コンデンサC1に充電電流が流れる。この時、抵抗膜3はコンデンサC1の突入電流を制限する。コンデンサC1が所定電圧値に充電されると、スイッチ制御回路48から主スイッチQ1のオン・オフ制御信号が発生し、出力整流平滑回路47から所定の直流電圧が得られる。また、3次巻線N3の出力によるコンデンサC1の充電が開始し、起動期間が終了する。スイッチ制御回路48は起動期間の終了を検出する回路を含み、起動期間が終了した時に起動制御端子53をグランド電位にする。これにより、第1の半導体素子1がオフになり、抵抗膜3を通る電流が遮断され、ここでの電力損失が発生しなくなる。なお、起動回路50がオフする期間に高い抵抗値を有する抵抗55を介して僅かな電流が流れるが、これによる電力損失は無視できるほど小さい。
【0040】
本実施例は次の効果を有する。
(1)もし、接続導体30又はこの延長回路がノイズ等によって負電位になっても、抵抗膜3において電圧降下が生じるので、寄生トランジスタQpのエミッタの電位が負になることが防止され、寄生トランジスタQpのオン動作が抑制される。従って、寄生トランジスタQpによる複合半導体装置の誤動作を抑制することができる。
(2)抵抗膜3は第1の半導体素子1に対して直列に接続されているので、第1の半導体素子のオン時の電圧を抵抗膜3における電圧降下分だけ減少させることができる。従って、第1の半導体素子の耐圧を低くすることができる。
(3)抵抗膜3は第1の半導体素子1に対して直列に接続されているので、図4に例示するようにスイッチング電源装置の起動回路50の一構成要素に使用することができる。抵抗膜3を起動回路50に使用すると、従来の起動回路の抵抗を独立に設ける場合に比べて部品点数が減少し、起動回路の小型化、実装面面積の低減、低コスト化を図ることができる。
(4)抵抗膜3が第1の半導体素子1を構成している半導体基体4上に配置されているので、抵抗を個別に形成する場合に比べて部品点数を低減することができ、抵抗を伴なった半導体装置のコストの低減及び小型化を図ることができる。
(5)環状に形成されたn+型の第5の半導体領域12の内側に抵抗膜3が配置されているので、半導体基体4の表面積の増大を伴なわないで、抵抗膜3を半導体素子1に一体的に形成することができる。
(6)図4の回路の場合は、ワイヤ等の外部接続を接続する接続導体30及び起動電流が流れる抵抗膜3を比較的大面積に形成することが必要になるが、比較的大面積の抵抗膜3の大部分の上に接続導体30を配置するので、抵抗膜3及び接続導体30を容易に形成でき且つ実装面積の増大を防ぐことができる。
(7)抵抗膜3は第1〜第3のフィールドプレート導体層22〜24と同様に絶縁膜19の上に配置され且つポリシリコンから成るので、同一の製造工程で形成することができ、この製造が容易である。
(8)フィールドプレート手段21及びリサーフ領域9aを有するので高耐圧半導体装置を提供できる。また、抵抗膜3は環状に形成されたn+型の第5の半導体領域12の内側に配置され、フィールドプレート手段21及びリサーフ領域9aはn+型の第5の半導体領域12の外側に配置されているので、高耐圧化を妨害しないで且つ半導体基体4の表面積の増大を伴なわないで、寄生トランジスタQpの動作を抑制することができる。
【実施例2】
【0041】
次に、図5を参照して実施例2の複合半導体装置を説明する。但し、図5において図1と実質的に同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図5において図示が省略されているゲート電極20よりも右側即ち内周側部分は図1と同一に構成されている。従って、必要に応じて図1も参照する。
【0042】
図5の実施例2の複合半導体装置は、図1のp型分離領域10の代りにトレンチ(溝)10aを設け、このトレンチ10aの中に絶縁物60を充填し、この他は図1と実質的に同一に形成したものである。
【0043】
トレンチ10aは半導体基体4a中のn型の第2の半導体領域8とn型の第6の半導体領域13との間において半導体基体4aの一方の主面5からp型の第1の半導体領域7に至るように形成されている。これにより第1の半導体素子1aと第2の半導体素子2とが電気的に分離される。なお、トレンチ10aをボディ領域としてのp型の第3の半導体領域8に隣接して設けることもできる。
【0044】
電極61から導出された端子Gbは、例えば必要に応じてソース端子Sに接続される。
【0045】
図5の実施例2においても図1の寄生トランジスタQpが生じるが、図5においても図1の抵抗膜3と同様なものが設けられているので、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例3】
【0046】
図6の実施例3の複合半導体装置は、図1のFETから成る第1及び第2の半導体素子1,2の代りにバイポーラトランジスタから成る第1及び第2の半導体素子1b,2aを設け、この他は図1と同一に形成したものである。
【0047】
半導体基体4bにおいて第1の半導体素子1bを形成するために、n型コレクタ領域としての第2の半導体領域8aと、p型ベース領域としての第3の半導体領域9bと、n+型エミッタ領域としての第4の半導体領域11aと、n+型コレクタ領域としての第5の半導体領域12aと、n+型埋め込み層70とが設けられている。p型の第3の半導体領域9bはn型の第2の半導体領域8aの中に島状又はウェル状に形成されている。n+型の第4の半導体領域11aはp型の第3の半導体領域9bの中に島状に形成されている。n+型の第5の半導体領域12aは半導体基体4bの一方の主面5からn+型の埋め込み層70に至るように形成されている。n+型の埋め込み層70はp型の第1の半導体領域7とn型の第2の半導体領域8aとの境界に配置されている。
【0048】
+型の第4の半導体領域11aにエミッタ電極(第1の電極)17bが接続され、n+型の第5の半導体領域12aにコレクタ電極(第2の電極)18aが接続され、p型の第3の半導体領域9aに制御電極としてのベース電極20aが接続されている。
【0049】
第2の半導体素子2aを構成するために、n型コレクタ領域としての第6の半導体領域13aと、p型ベース領域としての第7の半導体領域14aと、n+型エミッタ領域としての第8の半導体領域15aと、n+型コレクタ領域としての第9の半導体領域16aと、n+型埋め込み層71とが設けられている。p型の第7の半導体領域14aはn型の第6の半導体領域13aの中に島状に形成され、n+型の第8の半導体領域15aは第7の半導体領域14aの中に島状に形成され、n+型の第9の半導体領域16aは半導体基体8aの一方の主面5から埋め込み層71に至るように形成されている。n+型埋め込み層71はp型の第1の半導体領域7とn型の第6の半導体領域13aとの境界に形成されている。
【0050】
+型の第8の半導体領域15aにはエミッタ電極27aが接続され、n+型の第9の半導体領域16aにはコレクタ電極28aが接続され、p型の第7の半導体領域14aにはベース電極29aが接続されている。
【0051】
p型分離用半導体領域10bは第1の半導体素子1bのn型の第2の半導体領域8aと第2の半導体素子2aのn型の第6の半導体素子13aとの間に配置され且つ半導体基体4bの一方の主面5からp型の第1の半導体領域7に至る深さに形成されている。
【0052】
図6の複合半導体装置においてもnpn型の寄生トランジスタQpが点線で示すように形成される。しかし、図1と同一構成の抵抗膜3がコレクタ電極18aと接続導体30との間に接続されているので、寄生トランジスタの動作が抑制される。従って、図6の実施例3においても図1の実施例1と同一の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0053】
図7に示す実施例7の複合半導体装置は、図1の抵抗膜3をダイオード3´に置き換え、この他は図1の実施例1と同一に構成したものである。従って、図7において図1と実質的に同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図7のダイオード3´は図1の抵抗膜3と同様にポリシリコン膜で形成され、図1の抵抗膜3と同一位置に配置されている。このダイオード3´はp型半導体領域3aとここに隣接するn型半導体領域3bとを有している。接続導体30はp型半導体領域3aにオーミック接続され、ドレイン電極18はn型半導体領域3bにオーミック接続されている。従って、ドレイン電極18と接続導体30とは、p型半導体領域3aとn型半応対領域3bとの間のpn接合を介して接続されている。
【0055】
接続導体30とドレイン電極18との間に接続されたダイオード3´は、第1の半導体素子1がオンしている時にドレイン電流を流すことを許す方向性を有する。しかし、寄生トランジスタQpに対して逆の方向性を有するので、接続導体30がノイズ等で負電位になった時にダイオード3´はオフ状態に保たれ、寄生トランジスタQpがオン動作することが防止される。これにより、寄生トランジスタQpによる第2の半導体素子2の誤動作を防止することができる。
【0056】
ダイオード3´は所定の順方向電圧及び抵抗を有する。従って、図1の抵抗膜3と同様に第1の半導体素子1のドレイン電流を制限する機能を有する。また、ダイオード3´はフィールドプレート導体層22、23、24と同様にポリシリコンから成り、このポリシリコンにp型不純物を導入することによってp型半導体領域3aが形成され、n型不純物を導入することによってn型半導体領域3bが形成されている。従って、図1の抵抗膜3と同様に容易に形成することができる。また、図7の実施例4は、図1の実施例1と同様な効果も有する。
なお、図7のダイオード3´を図5及び図6の実施例2及び3にも適用できる。また、接続導体30とドレイン電極18との間にダイオード3´と同様な構成の複数のダイオードを直列に接続したものを配置することができる。
【実施例5】
【0057】
図8に示す実施例5の複合半導体装置は、図1の第1及び第2の半導体素子1、2の分離部分を変形した他は、図1と同一に構成いたものである。従って、図8において第1の半導体素子1の一部及びその内周部の抵抗膜3等の図示が省略されている。なお、図8において省略されている部分は図1を参照する。また、図8の実施例5において図1の実施例1と実質的に同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図8の複合半導体装置は図1の分離用半導体領域10に相当する第1の分離用半導体領域10cを有する他に、第1の分離用半導体領域10cよりも内周側に第2の分離用半導体領域10dを有する。第1及び第2の分離用半導体領域10c、10dはp型半導体であって、半導体基体4の一方の主面5からp型の第1の半導体領域7に達するように形成され、且つn型の第2の半導体領域8を環状に囲むパターンを有する。
【0059】
第1及び第2の分離用半導体領域10c、10d間にn+型半導体から成る寄生トランジスタ抑制半導体領域63が配置されている。この寄生トランジスタ抑制半導体領域63は半導体基体4の一方の主面5からp型の第1の半導体領域7に至る深さを有し、p型の第1の半導体領域7にpn接触している。この寄生トランジスタ抑制半導体領域63の上に電極64が形成され、この電極64とグランドとの間にバイアス電源65が接続されている。
【0060】
図8の複合半導体装置においては、図1と同様にn+型の第5半導体領域12とn型の第2の半導体領域8とp型の第1の半導体領域7と第2の半導体素子2におけるn型の第6の半導体領域13及びn+型の第9の半導体領域16でnpn型の第1の寄生トランジスタQpが形成され、更に、n+型の第5の半導体領域12とn型の第2の半導体領域8とp型の第1の半導体領域7とn+型の寄生トランジスタ抑制半導体領域63とでnpn型の第2の寄生トランジスタQp´が形成される。図1の接続導体30又はドレイン電極18がノイズ等によって負電位になると、ドレイン電極18に対してn型の第6の半導体領域13よりも近い位置に配置されたn+型の寄生トランジスタ抑制半導体領域63をエミッタとして含む第2の寄生トランジスタQp´がオン状態になる。これにより、p型の第1の半導体領域7の電位が上昇し、第1の寄生トランジスタQpのオンが抑制される。
【0061】
本実施例5では、抵抗膜3による第1の寄生トランジスタQpのオン動作の抑制とn+型の寄生トランジスタ抑制半導体領域63による第1の寄生トランジスタQpのオン動作の抑制との両方が生じるので、第1の寄生トランジスタQpのオン動作の阻止を実施例1よりも良好に達成することができる。
【0062】
なお、n+型の寄生トランジスタ抑制半導体領域63のみによって第1の寄生トランジスタQpのオン動作を阻止することができる時には、抵抗膜3を省くことができる。
また、図8の実施例5のn+型の寄生トランジスタ抑制半導体領域63を含む分離部分の構造を図6及び図7の実施例3及び4にも適用することができる。
【実施例6】
【0063】
図9の実施例6の複合半導体装置は、図1のp型の第3の半導体領域9をp型の第1のチャネル領域(ボデイ領域)91とp型の第2のチャネル領域(ボデイ領域)92とに分け、第1及び第2のチャネル領域91、92の中にn+型の第1及び第2のソース領域111、112を設け、第1及び第2のソース領域111、112の相互間にゲート電極20を配置し、この他は図1と同一に構成したものである。従って、図9において図1と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図9で図示が省略されている部分は図1と同一に構成されているので、実施例6の説明において必要に応じて図1を参照する。
【0064】
図9においては、ゲート電極20が絶縁膜19を介して第1のチャネル領域91の外周側に対向し、第2のチャネル領域92の内周側に対向しているので、この対向部分にn型チャネルが形成される。この実施例6では、第1のチャネル領域91よりも内周側にゲート電極が設けられていないので、p-型のリサーフ領域9aがp型の第1のチャネル領域91に連続して形成されている。
なお、図1のp型の第3の半導体領域9と同様に機能する第1及び第2のチャネル領域91、92の中にp+型半導体領域62が形成され、この上に電極61が形成されている。
【0065】
図9の実施例6の第1及び第2のチャネル領域91、92は図1のp型の第3の半導体領域9と同様に機能し、n+型の第1及び第2のソース領域111、112は図1のn+型の第4の半導体領域11と同様に機能するので、図9の実施例6によって図1の実施例1と同一の効果を得ることができる。
なお、図9の構成を図5、図6、図7及び図8の実施例2、3、4、5にも適用することができる。
【0066】
本発明は上述の実施例に限定されているでなく、例えば次の変形が可能なものである。
(1) 図1、図5,図7、及び図8の第2の半導体素子2を図6の第2の半導体素子2aと同様にバイポーラトランジスタに変形することができる。
(2) 図6の第2の半導体素子2aを図1の第2の半導体素子2と同様にFETに変形することができる。
(3) 図6のp型分離用半導体領域10bの代わりにトレンチを設けることができる。
(4) 図1の容量フィールドプレート手段21の代りに周知の抵抗性フィールドプレートを設けることができる。
(5) 抵抗膜3を電流検出抵抗として使用することができる。この場合には図1のドレイン電極18と接続導体30との間の電圧、又は図6のコレクタ電極18aと接続導体30との間の電圧を電流検出信号として使用する。
(6) 第2の半導体素子2,2aをダイオード等の半導体素子に変形することができる。
(7) n+型の第5の半導体領域12よりも内周側のn型の第2の半導体領域8の中に小信号の半導体素子を形成することができる。
(8) 各実施例の複合半導体装置をステッピングモータ等の電動機駆動回路にも使用することができる。
(9)図1、図5〜図9の半導体基体4、4a,4bの各半導体領域の導電型を逆にすることができる。
(10)p+型半導体領域62及び電極61を省くことができる。
(11)p+型半導体領域62及び電極61を省き、且つゲート電極20から離れた位置でソース電極17の一部を、p型の第3の半導体領域9、又は第1及び第2のチャネル領域91、92に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1の複合半導体装置の一部を示す縦断面図である。
【図2】図1の半導体基体の表面を示す平面図である。
【図3】図1のドレイン電極及び接続導体及び抵抗値の関係を示す平面図である。
【図4】図1の複合半導体装置が使用されたスイッチ電源装置を示す回路図である。
【図5】実施例2の複合半導体装置の一部を示す縦断面図である。
【図6】実施例3の複合半導体装置の一部を図1と同様に示す縦断面図である。
【図7】実施例4の複合半導体装置の一部を図1と同様に示す縦断面図である。
【図8】実施例5の複合半導体装置の一部を図1と同様に示す縦断面図である。
【図9】実施例6の複合半導体装置の一部を図1と同様に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 第1の半導体素子
2 第2の半導体素子
3 抵抗膜
4,4a,4b 半導体基体
7 第1の半導体領域
8,8a 第2の半導体領域
9,9a,9b 第3の半導体領域
10,10b p型分離用半導体領域
10a トレンチ
11,11a 第4の半導体領域
12,12a 第5の半導体領域
13,13a 第6の半導体領域
17 ソース電極
18 ドレイン電極
19 ゲート絶縁膜
20 ゲート電極
21 フィールドプレート手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を形成するための複数の半導体領域を含み且つ一方の主面とこの一方の主面に対向する他方の主面とを有する半導体基体と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に設けられた第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極間を流れる電流を制御するために前記半導体基体の前記一方の主面上に配置された制御手段と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され且つ前記第2の電極に電気的に接続され且つ所定の抵抗値を有している抵抗膜と、
前記抵抗膜上に形成された接続導体と
を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基体は、前記他方の主面に露出するように配置され且つ第1導電型を有している第1の半導体領域と、第1の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の一部の上に配置され且つ前記一方の主面に露出する部分を有し且つ前記第1導電型と反対の第2導電型を有している第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第1導電型を有している第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域の中に形成され且つ第2の導電型を有している第4の半導体領域と、第2の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の上に配置され且つ第2導電型を有している第2の半導体素子用半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の分離用半導体領域又はトレンチから成る分離領域とを備え、
前記第1の電極は前記第4の半導体領域に接続され、
前記第2の電極は前記第2の半導体領域に接続され、
前記制御手段は前記第3の半導体領域の上に配置され、
前記絶縁層は前記第2の半導体領域の表面上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体素子を形成するための複数の半導体領域を含み且つ一方の主面とこの一方の主面に対向する他方の主面とを有する半導体基体と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に設けられた第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極間を流れる電流を制御するために前記半導体基体の前記一方の主面上に配置された制御手段と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され且つ第1導電型半導体領域と第2導電型半導体領域を有している半導体膜から成り且つ前記第2導電型半導体領域が前記第2の電極に電気的に接続され且つ前記第1及び第2の電極間を電流が流れることを許す極性を有しているダイオードと、
前記第1導電型半導体領域上に形成された接続導体とを備え、
前記半導体基体は、前記他方の主面に露出するように配置され且つ第1導電型を有している第1の半導体領域と、第1の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の一部の上に配置され且つ前記一方の主面に露出する部分を有し且つ前記第1導電型と反対の第2導電型を有している第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第1導電型を有している第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域の中に形成され且つ第2の導電型を有している第4の半導体領域と、第2の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の上に配置され且つ第2導電型を有している第2の半導体素子用半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の分離用半導体領域又はトレンチから成る分離領域とを備え、
前記第1の電極は前記第4の半導体領域に接続され、
前記第2の電極は前記第2の半導体領域に接続され、
前記制御手段は前記第3の半導体領域の上に配置され、
前記絶縁層は前記第2の半導体領域の表面上に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第2の電極は、前記第2の半導体領域の中央部分を囲むように環状に形成され、
前記抵抗膜又はダイオードは前記第2の半導体領域の前記中央部分の上に前記絶縁層を介して配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記抵抗膜又はダイオードは、前記第1、第2及び第5の半導体領域に基づく寄生トランジスタの形成を抑制するものであることを特徴とする請求項2又は3又は4記載の半導体装置。
【請求項6】
更に、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第2導電型を有し且つ前記第2の半導体領域よりも高い不純物濃度を有している第5の半導体領域を有し、
前記第2の電極は前記第5の半導体領域に接続されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の半導体素子は、絶縁ゲート型電界効果トランジスタであり、
前記第2の半導体領域はドレイン領域であり、
前記第3の半導体領域はボディ領域(チャネル形成領域)であり、
前記第4の半導体領域はソース領域であり、
前記第1の電極はソース電極であり、
前記第2の電極はドレイン電極であり、
前記制御手段は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間において前記第3の半導体領域の表面上にゲート絶縁膜を介して配置されたゲート電極であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
更に、前記ゲート電極又はソース電極と前記ドレイン電極との間に耐圧を向上させるためのフィールドプレート手段を有していることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
更に、前記第3の半導体領域と前記第2の電極との間において、前記半導体基体の前記一方の主面と前記第2の半導体領域との間に配置されたリサーフ領域を有していることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体素子を形成するための複数の半導体領域を含み且つ一方の主面とこの一方の主面に対向する他方の主面とを有する半導体基体と、
前記半導体基体の前記一方の主面上に設けられた第1及び第2の電極と、
前記第1及び第2の電極間を流れる電流を制御するために前記半導体基体の前記一方の主面上に配置された制御手段とを備え、
前記半導体基体は、前記他方の主面に露出するように配置され且つ第1導電型を有している第1の半導体領域と、第1の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の一部の上に配置され且つ前記一方の主面に露出する部分を有し且つ前記第1導電型と反対の第2導電型を有している第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域の中に形成され且つ第1導電型を有している第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域の中に形成され且つ第2の導電型を有している第4の半導体領域と、第2の半導体素子を形成するために前記第1の半導体領域の上に配置され且つ第2導電型を有している第2の半導体素子用半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域との間に配置され且つ第2導電型を有している寄生トランジスタ抑制半導体領域と、前記寄生トランジスタ抑制半導体領域と前記第2の半導体素子用半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の分離用半導体領域又はトレンチから成る第1の分離領域と、寄生トランジスタ抑制半導体領域と前記第1の半導体領域とを電気的に分離するためにこれ等の間に配置された第1導電型の分離用半導体領域又はトレンチから成る第2の分離領域とを備え、
前記第1の電極は前記第4の半導体領域に接続され、
前記第2の電極は前記第2の半導体領域に接続され、
前記制御手段は前記第3の半導体領域の上に配置されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−134588(P2007−134588A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327677(P2005−327677)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】