説明

半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法

【課題】 工程数の増加を伴うことなく、FAMOSにおける消去を実現する。
【解決手段】 P型半導体基板1にN-ウェル3を形成し、N-ウェル3にP-不純物拡散層4を形成し、P-不純物拡散層4上に延伸されたフローティングゲート8をゲート絶縁膜7を介してN-ウェル3上に形成し、この半導体記憶装置の消去動作を行う場合、P-不純物拡散層4を負の電位に設定し、フローティングゲート8をP-不純物拡散層4と容量結合させることにより、フローティングゲート8に蓄積された電子をN-ウェル3側に引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法に関し、特に、電気的に消去可能なFAMOS(フローティングゲートアバランシェインジェクションMOSデバイス)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体記憶装置では、フローティングゲート構造のMISトランジスタを1個設けるだけで、不揮発性記憶素子を実現可能なFAMOSと呼ばれるものがある。このFAMOSでは、N型半導体基板とP型ドレイン層との間に形成されるPN接合をアバランシェ降伏させた時に発生するホットエレクトロンをフローティングゲートに注入させることで書き込みが行われる。また、このFAMOSでは、フローティングゲートに電子が注入された時の閾値電圧の変動を利用することで読み出しを行うことができる。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、電気的に消去可能なFAMOSを実現するために、フローティングゲート上に絶縁膜を介してコントロールゲートを積層し、フローティングゲートに蓄積されたキャリアをトンネル効果にて電気的に消去する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−178115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のFAMOSでは、フローティングゲートに一旦電子が注入されると、その電子をフローティングゲートから引き抜くことは困難であるため、FAMOSに書き込まれた情報の消去ができず、一回分の書き込みに限られるという問題があった。
また、特許文献1に開示された方法では、FAMOSにおける電気的な消去動作を実現するには、フローティングゲート上に絶縁膜を介してコントロールゲートを積層する必要があり、工程増を招くという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、工程数の増加を伴うことなく、FAMOSにおける電気的な消去を実現することが可能な半導体記憶装置および半導体記憶装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る半導体記憶装置によれば、第1導電型半導体基板に形成された第2導電型不純物拡散層と、第1導電型半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記第2導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートと、前記フローティングゲートを挟み込むように前記第1導電型半導体基板に形成され、前記第2導電型不純物拡散層と分離された第2導電型ソース/ドレイン層とを備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、フローティングゲートを第2導電型不純物拡散層上に延伸することで、フローティングゲートを第2導電型不純物拡散層と容量結合させることが可能となり、フローティングゲート上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲートに蓄積されたキャリアのエネルギーを制御することができる。このため、第2導電型不純物拡散層に電圧を印加することで、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することができ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を簡易な構成で実現することができる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置によれば、前記第2導電型不純物拡散層に消去電圧を印加し、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを前記第1導電型半導体基板側に引き抜くことにより、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することを特徴とする。
これにより、フローティングゲート上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することができ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を簡易な構成で実現することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置によれば、前記第2導電型ソース/ドレイン層側と前記第2導電型不純物拡散層側との間のフローティングゲートの容量比を変化させることで、消去電圧を変化させることを特徴とする。
これにより、容量比を大きくすることで、消去電圧を所望の値まで下げることができ、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを効率よく消去することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置によれば、第1導電型半導体基板上に形成された第2導電型ウェルと、前記第2導電型ウェルに形成された第1導電型不純物拡散層と、前記第2導電型ウェル上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記第1導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートと、前記フローティングゲートを挟み込むように前記第2導電型ウェルに形成され、前記第1導電型不純物拡散層と分離された第1導電型ソース/ドレイン層とを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、フローティングゲートを第1導電型不純物拡散層上に延伸することで、フローティングゲートを第1導電型不純物拡散層と容量結合させることが可能となり、フローティングゲート上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲートに蓄積されたキャリアのエネルギーを制御することができる。このため、第1導電型不純物拡散層に電圧を印加することで、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することができ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を簡易な構成で実現することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置によれば、前記第1導電型不純物拡散層に消去電圧を印加し、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを前記第2導電型ウェル側に引き抜くことにより、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することを特徴とする。
これにより、フローティングゲート上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することができ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を簡易な構成で実現することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置によれば、前記第2導電型ソース/ドレイン層側と前記第2導電型ウェル側との間のフローティングゲートの容量比を変化させることで、消去電圧を変化させることを特徴とする。
これにより、容量比を大きくすることで、消去電圧を所望の値まで下げることができ、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを効率よく消去することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置の製造方法によれば、第1導電型半導体基板に第2導電型不純物拡散層を形成する工程と、前記第2導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートをゲート絶縁膜を介して前記第1導電型半導体基板上に形成する工程と、前記第1導電型半導体基板に選択的にイオン注入を行うことにより、前記第2導電型不純物拡散層と分離され、前記フローティングゲートを挟み込むように配置された第2導電型ソース/ドレイン層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、トランジスタの形成工程において、第2導電型不純物拡散層の形成工程を追加することで、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを電気的に消去することが可能となり、工程増を抑制しつつ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を実現することができる。
また、本発明の一態様に係る半導体記憶装置の製造方法によれば、第1導電型半導体基板に第2導電型ウェルを形成する工程と、前記第2導電型ウェルに第1導電型不純物拡散層を形成する工程と、前記第1導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートをゲート絶縁膜を介して前記第2導電型ウェル上に形成する工程と、前記第2導電型ウェルに選択的にイオン注入を行うことにより、前記第2導電型不純物拡散層と分離され、前記フローティングゲートを挟み込むように配置された第2導電型ソース/ドレイン層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、トランジスタの形成工程において、第2導電型不純物拡散層の形成工程を追加することで、フローティングゲートに蓄積されたキャリアを電気的に消去することが可能となり、工程増を抑制しつつ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る半導体記憶装置およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の概略構成を示す平面図、図2(a)は、図1のA−A´線で切断した断面図、図2(b)は、図1のB−B´線で切断した断面図である。
【0018】
図1および図2において、P型半導体基板1には、素子分離絶縁膜2が形成されるとともに、素子分離絶縁膜2で素子分離されたN-ウェル3が形成されている。なお、P型半導体基板1の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどを用いることができる。また、素子分離絶縁膜2で素子分離されたNウェル3にはP不純物拡散層4が形成されている。そして、N-ウェル3上には、P-不純物拡散層4上に延伸されたフローティングゲート8がゲート絶縁膜7を介して形成されている。なお、ゲート絶縁膜7としては、シリコン酸化膜を用いることができ、フローティングゲート8としては、多結晶シリコンを用いることができる。
【0019】
ここで、フローティングゲート8はP-不純物拡散層4の表面の一部が露出するように配置され、フローティングゲート8から露出されたP-不純物拡散層4には、P+型不純物拡散層5が形成されている。また、N-ウェル3には、フローティングゲート14を挟み込むように配置され、P-不純物拡散層4と分離されたP+型不純物拡散層6a、6bが形成され、フローティングゲート構造を持つMISトランジスタのソース/ドレイン層が構成されている。さらに、N-ウェル3には、N+型不純物拡散層9が形成されている。
【0020】
そして、P+型不純物拡散層5には、P+型不純物拡散層5に消去電圧VRを印加するためのコンタクトC1が形成されている。また、P+型不純物拡散層6aには、P+型不純物拡散層6aにソース電圧VSを印加するためのコンタクトC2が形成されている。また、P+型不純物拡散層6bには、P+型不純物拡散層6bにドレイン電圧VDを印加するためのコンタクトC3が形成されている。また、N+型不純物拡散層9には、N+型不純物拡散層9にウェル電圧VWLを印加するためのコンタクトC4が形成されている。
【0021】
そして、この半導体記憶装置の書き込み動作を行う場合、ドレイン電圧VDとしてドレイン降伏電圧BVDよりも大きな負の電圧を与え、N-ウェル3とP+型不純物拡散層6bとの間に形成されるPN接合にアバランシェ降伏を起し、その時に発生するホットエレクトロンをゲート絶縁膜7を通してフローティングゲート8に注入させることにより、フローティングゲート8に電子を蓄積させる。
【0022】
例えば、ウェル電圧VWLおよびソース電圧VSを0Vに設定し、ドレイン電圧VDを−7Vに設定することにより、フローティングゲート8にホットエレクトロンを注入し、この半導体記憶装置に書き込みを行うことができる。
また、この半導体記憶装置の読み出し動作を行う場合、P+型不純物拡散層6a、6b間を流れる電流の変化を検出し、フローティングゲート8に蓄積されたキャリアの有無を判定する。
【0023】
例えば、ウェル電圧VWLおよびソース電圧VSを0Vに設定するとともに、ドレイン電圧VDを−3Vに設定し、P+型不純物拡散層6a、6b間を流れる電流の変化を検出することにより、この半導体記憶装置の読み出しを行うことができる。
また、この半導体記憶装置の消去動作を行う場合、P-不純物拡散層4を負の電位に設定し、フローティングゲート8をP-不純物拡散層4と容量結合させることにより、フローティングゲート8に蓄積された電子をN-ウェル3側に引き抜く。
【0024】
例えば、ドレイン電圧VD、ソース電圧VSおよびウェル電圧VWLを0Vに設定するとともに、消去電圧VRを−20Vに設定し、フローティングゲート8に蓄積された電子をトンネル効果にてN-ウェル3側に引き抜くことにより、この半導体記憶装置の消去を行うことができる。
なお、消去電圧VRの値は印加時間によって変動するが、ソース/ドレイン側とP-不純物拡散層4側との間のフローティングゲート8の容量比に従って変化させることができる。例えば、印加時間を100msecとした場合に、ソース/ドレイン側とP-不純物拡散層4側との間のフローティングゲート8の容量比が1:5の場合、消去電圧VR=−20V、容量比が1:20の場合、消去電圧VR=−18V、容量比が1:100の場合、消去電圧VR=−15Vとすることができる。
【0025】
これにより、フローティングゲート8上にコントロールゲートを積層することなく、フローティングゲート8に蓄積されたキャリアを消去することができ、工程増を抑制しつつ、電気的に書き込み消去可能な不揮発性半導体記憶素子を実現することができる。また、上述した半導体記憶装置は、出荷後にトリミングが可能なヒューズとしても利用することができる。
【0026】
なお、上述した実施形態では、P型半導体基板1を用いる場合を例にとって説明したが、N型半導体基板を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の概略構成を示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の概略構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 P型半導体基板、2 素子分離絶縁膜、3 N-ウェル、4 P-不純物拡散層、5、6a、6b P+型不純物拡散層、7 ゲート絶縁膜、8 フローティングゲート電極、C1〜C4 コンタクト、9 N+型不純物拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体基板に形成された第2導電型不純物拡散層と、
第1導電型半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記第2導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートと、
前記フローティングゲートを挟み込むように前記第1導電型半導体基板に形成され、前記第2導電型不純物拡散層と分離された第2導電型ソース/ドレイン層とを備えることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第2導電型不純物拡散層に消去電圧を印加し、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを前記第1導電型半導体基板側に引き抜くことにより、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することを特徴とする請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第2導電型ソース/ドレイン層側と前記第2導電型不純物拡散層側との間のフローティングゲートの容量比を変化させることで、消去電圧を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
第1導電型半導体基板上に形成された第2導電型ウェルと、
前記第2導電型ウェルに形成された第1導電型不純物拡散層と、
前記第2導電型ウェル上にゲート絶縁膜を介して形成され、前記第1導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートと、
前記フローティングゲートを挟み込むように前記第2導電型ウェルに形成され、前記第1導電型不純物拡散層と分離された第1導電型ソース/ドレイン層とを備えることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1導電型不純物拡散層に消去電圧を印加し、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを前記第2導電型ウェル側に引き抜くことにより、前記フローティングゲートに蓄積されたキャリアを消去することを特徴とする請求項4記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第2導電型ソース/ドレイン層側と前記第2導電型ウェル側との間のフローティングゲートの容量比を変化させることで、消去電圧を変化させることを特徴とする請求項4または5記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
第1導電型半導体基板に第2導電型不純物拡散層を形成する工程と、
前記第2導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートをゲート絶縁膜を介して前記第1導電型半導体基板上に形成する工程と、
前記第1導電型半導体基板に選択的にイオン注入を行うことにより、前記第2導電型不純物拡散層と分離され、前記フローティングゲートを挟み込むように配置された第2導電型ソース/ドレイン層を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体記憶装置の製造方法。
【請求項8】
第1導電型半導体基板に第2導電型ウェルを形成する工程と、
前記第2導電型ウェルに第1導電型不純物拡散層を形成する工程と、
前記第1導電型不純物拡散層上に延伸されたフローティングゲートをゲート絶縁膜を介して前記第2導電型ウェル上に形成する工程と、
前記第2導電型ウェルに選択的にイオン注入を行うことにより、前記第2導電型不純物拡散層と分離され、前記フローティングゲートを挟み込むように配置された第2導電型ソース/ドレイン層を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−202834(P2006−202834A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10445(P2005−10445)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】