説明

半導体記憶装置の評価方法

【課題】半導体記憶装置のトンネル絶縁膜の電荷分布を評価することが可能な半導体記憶装置の評価方法を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置の評価方法は、浮遊ゲート型の半導体記憶装置の評価方法である。時間の対数の変化に対する前記半導体記憶装置のメモリセルの閾値電圧Vtの変化率に、ε*Cr*2k/Tox/qを乗じる。なお、εはトンネル絶縁膜の誘電率であり、Crは前記メモリセルのカップリング比であり、Toxは前記メモリセルのトンネル酸化膜の膜厚であり、kは電荷がデトラップする時の存在確率の減衰率でありk=(2mE/(h/2π)2)0.5と表され、mは電子の質量、 Eは前記トンネル絶縁膜のトラップのエネルギー準位、hはプランク定数、πは円周率である。これにより、前記メモリセルのトンネル絶縁膜中の電子濃度分布を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、NAND型フラッシュメモリ等の浮遊ゲート型EEPROMを含む半導体記憶装置の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NAND型フラッシュメモリ等の浮遊ゲート型EEPROMの半導体記憶装置は、トンネル絶縁膜に電荷を通過させることで、浮遊ゲート中の電荷量を変化させる。
【0003】
しかし、該トンネル絶縁膜中で電荷を移動させると、そのトンネル絶縁膜が劣化する(トラップが発生する)。これにより、該トンネル絶縁膜中に発生したトラップに電荷が蓄積され、データ保持特性が劣化する。
【0004】
そして、従来は、トンネル絶縁膜中に電荷がどのように分布しているかは分からず、トンネル絶縁膜の膜質の調査や電子濃度分布の特徴を把握することは困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N. Mielke, H. Belbal, A. Fazio, Q. Meng, and N,Righos, ”Recovery effects in the distributed cycling of Flash memories,” in Proc. IRPS, pp. 29-35, 2006
【非特許文献2】N. Matsukawa, T. Funatsu, and R. Abe, “Distributed-cycling Effects for Data Retention Characteristics of Flash memories”, Extended Abs. 2008 SSDM, pp.236-237, 2008
【非特許文献3】S. Manzini and A. Modelli, “TUNNELING DISCHARGE OF TRAPPED HOLES IN SILICON DIOXIDE,” Insulating films on semiconductors, pp.112-115, 1983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体記憶装置のトンネル絶縁膜の電荷分布を評価することが可能な半導体記憶装置の評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施例に従った半導体記憶装置の評価方法は、浮遊ゲート型の半導体記憶装置の評価方法である。時間の対数の変化に対する前記半導体記憶装置のメモリセルの閾値電圧Vtの変化率に、ε*Cr*2k/Tox/qを乗じる。なお、εはトンネル絶縁膜の誘電率であり、Crは前記メモリセルのカップリング比であり、Toxは前記メモリセルのトンネル酸化膜の膜厚であり、kは電荷がデトラップする時の存在確率の減衰率でありk=(2mE/(h/2π)2)0.5と表され、mは電子の質量、 Eは前記トンネル絶縁膜のトラップのエネルギー準位、hはプランク定数、πは円周率である。これにより、前記メモリセルのトンネル絶縁膜中の電子濃度分布を求める。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】NAND型フラッシュメモリ100の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すメモリセルアレイ1の構成の一例を示す回路図である。
【図3】図2に示すメモリセルアレイ1の1つのメモリセルの断面を示す断面図である。
【図4】図2に示すメモリセルアレイ1のドレイン側選択MOSトランジスタSGDTr、ソース側選択MOSトランジスタSGSTrの断面を示す断面図である。
【図5】メモリセルに書込み/消去を行った後、85℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。
【図6】メモリセルに書込み/消去を行った後、85℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。
【図7】メモリセルに書込み/消去を行った後、25℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。
【図8】メモリセルに書込み/消去を行った後、25℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。
【図9】メモリセルに書込み/消去を行った後、40℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。
【図10】メモリセルに書込み/消去を行った後、40℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。
【図11】メモリセルに書込み/消去を行った後、125℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。
【図12】メモリセルに書込み/消去を行った後、125℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。
【図13】各温度で測定された閾値電圧Vtの変化率を、メモリセルのデータ保持の活性活エネルギーEaを用いて、25℃換算の時間に換算して重ね合わせた結果の一例を示す図である。
【図14】各温度で測定された閾値電圧Vtを、メモリセルのデータ保持の活性活エネルギーEaを用いて、25℃換算の時間に換算して重ね合わせた結果の一例を示す図である。
【図15】図14に示す近似曲線Vt=f(ln(t))を微分することにより得られた微分係数S(t)=dVt/d(ln(t))を示す図である。
【図16】式(6)に示す電子の存在確率と時間との関係の一例を示す曲線の図である。
【図17】式(7)に示すデトラップ確率と位置xとの関係を示す図である。
【図18】式(7)に示すデトラップ確率と位置xとの関係を示す図である。
【図19】閾値電圧Vtの時間の対数の変化に対する変化率Vt’mと、この変化率Vt’mから得られる電子濃度分布とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本実施形態の半導体記憶装置の評価方法の適用の対象となる浮遊ゲート型EEPROM(半導体記憶装置)の一例としてNAND型フラッシュメモリの構成について説明する。
【0011】
図1は、NAND型フラッシュメモリ100の構成の一例を示すブロック図である。また、図2は、図1に示すメモリセルアレイ1の構成の一例を示す回路図である。
【0012】
図1に示すように、NAND型フラッシュメモリ100は、メモリセルアレイ1と、ビット線制御回路2と、カラムデコーダ3と、データ入出力バッファ4と、データ入出力端子5と、ロウデコーダ6と、制御回路7と、制御信号入力端子8と、ソース線制御回路9と、ウェル制御回路10と、アドレスレジスタ11と、を備える。
【0013】
メモリセルアレイ1は、後述のように、複数のビット線と、複数のワード線と、ソース線とを含む。このメモリセルアレイ1は、例えば、EEPROMセルからなる電気的にデータを書き換え可能なメモリセルがマトリクス状に配置された複数のブロック(図2)で構成されている。
【0014】
このメモリセルアレイ1には、ビット線の電圧を制御するためのビット線制御回路2と、ワード線の電圧を制御するためのロウデコーダ6とが接続されている。データの書き込み動作時には、何れかのブロックがロウデコーダ6により選択され、残りのブロックが非選択とされる。
【0015】
このビット線制御回路2は、ビット線を介してメモリセルアレイ1中のメモリセルのデータを読み出したり、ビット線を介して該メモリセルの状態を検出したり、ビット線を介して該メモリセルに書き込み制御電圧を印加して該メモリセルに書き込みを行う。
【0016】
また、ビット線制御回路2には、カラムデコーダ3、データ入出力バッファ4が接続されている。ビット線制御回路2内の該データ記憶回路は、カラムデコーダ3により選択され、このデータ記憶回路に読み出されたメモリセルのデータは、データ入出力バッファ4を介してデータ入出力端子5から外部へ出力される。
【0017】
また、外部からデータ入出力端子5に入力された書き込みデータは、データ入出力バッファ4を介して、カラムデコーダ3によって選択された該データ記憶回路に記憶される。データ入出力端子5からは、書き込みデータの他に、書き込み、読み出し、消去、及びステータスリード等の各種コマンド、アドレスも入力される。
【0018】
ロウデコーダ6は、メモリセルアレイ1に接続されている。このロウデコーダ6は、外部からデータ入出力端子5、アドレスレジスタ11を介して入力されたブロックを選択するためのアドレス信号に応じて、メモリセルアレイ1のブロックを選択する。そして、ロウデコーダ6は、選択したブロックのワード線に、制御回路7から供給される読み出し或いは書き込み或いは消去に必要な電圧を、印加する。なお、例えば、テスト動作時は、外部のテスター(図示せず)から該アドレス信号が入力される。
【0019】
すなわち、ロウデコーダ6は、アドレス信号に応じて、メモリセルアレイ1の後述の複数のブロックのうちの何れかを選択し、ワード線の電圧を制御するようになっている。
【0020】
ソース線制御回路9は、メモリセルアレイ1に接続されている。このソース線制御回路9は、ソース線SRCの電圧を制御するようになっている。
【0021】
ウェル制御回路10は、メモリセルアレイ1に接続されている。このウェル制御回路10は、メモリセルが形成される半導体基板(ウェル)の電圧を制御するようになっている。
【0022】
制御回路7は、メモリセルアレイ(ブロック)1、ビット線制御回路2、カラムデコーダ3、データ入出力バッファ4、ロウデコーダ6、ソース線制御回路9、及び、ウェル制御回路10の動作を、制御するようになっている。
【0023】
ここでは、この制御回路7には、電源電圧を昇圧する後述のポンプ回路等が含まれている。制御回路7は、該ポンプ回路により電源電圧を必要に応じて昇圧し、ビット線制御回路2、カラムデコーダ3、データ入出力バッファ4、ロウデコーダ6、ソース線制御回路9、及び、ウェル制御回路10に、供給するようになっている。
【0024】
この制御回路7は、外部から制御信号入力端子8を介して入力される制御信号(コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、レディ/ビジー信号RY/BY等)及びデータ入出力端子5からデータ入出力バッファ4を介して入力されるコマンドに応じて制御動作する。すなわち、制御回路7は、該制御信号及びコマンドに応じて、データのプログラム、ベリファイ、読み出し、消去時に、所望の電圧を発生し、メモリセルアレイ1の各部に供給する。
【0025】
また、制御回路7は、既述のテスターから入力されるテストコマンドに応じて、アドレス信号で選択されたブロック以外の他のブロックを同時に選択するための同時選択信号をロウデコーダ6に出力して、複数(例えば、2つ)のブロックをロウデコーダ6に同時に選択させるようになっている。
【0026】
ここで、図2に示すように、メモリセルアレイ1は、複数のNANDセルユニット1aが接続されて構成されるブロックBLK0〜BLKM(なお、以下では、便宜上、単にBLKと表記する場合もある)を有する。このブロックBLK0〜BLKMは、データの書き込み・消去単位となる。
【0027】
NANDセルユニット1aは、NANDストリングを構成する直列接続された複数(n+1(例えば64))個のメモリセルM0〜MNと、ドレイン側選択MOSトランジスタSGDTrと、ソース側選択MOSトランジスタSGSTrとにより、構成されている。また、ソース側選択MOSトランジスタSGSTrは、ソース線SRC(図示せず)に接続されている。なお、ソース側選択ゲートトランジスタSGSTr、及び、ドレイン側選択ゲートトランジスタSGDTrは、ここでは、nMOSトランジスタである。
【0028】
各行に配置されたメモリセルM0〜MNの制御ゲートは、それぞれ、ワード線WL0〜WLNに接続されている。
【0029】
ビット線BL0〜BLPは、ワード線WL0〜WLNと直行するように配置されている。
【0030】
また、ドレイン側選択MOSトランジスタSGDTrのゲートは、ドレイン側選択ゲート線SGDに接続されている。そして、ドレイン側選択ゲートトランジスタSGDTrは、NANDストリング1a1の一端とビット線BL0〜BLPとの間に接続されている。
【0031】
また、ソース側選択MOSトランジスタSGSTrのゲートは、ソース側選択ゲート線SGSに接続されている。そして、ソース側選択ゲートトランジスタSGSTrは、NANDストリング1a1の他端とソース線SRCとの間に接続されている。
【0032】
すなわち、ロウデコーダ6は、入力された該アドレスに応じて、メモリセルアレイ1の各ブロックBLK0〜BLKMを選択し、選択したブロックの書き込み・読み出し動作を制御する。すなわち、ロウデコーダ6は、入力された該アドレスに応じて、ドレイン側選択ゲート線とソース側ゲート線に印加する電圧を制御し、且つ、ワード線(メモリセルの制御ゲート)に印加する電圧を制御することによりメモリセルを選択する。
【0033】
ここで、図3は、図2に示すメモリセルアレイ1の1つのメモリセルの断面を示す断面図である。
【0034】
図3に示すように、メモリセルM(M0〜MN)は、浮遊ゲートFGと、制御ゲートCG(WL:WL0〜WLN)と、拡散層42と、を有する。なお、制御ゲートCGは、ワード線WLと電気的に接続され、ビット線と直交する方向に列んだ複数のメモリセルM間において共通となっている(図2)。
【0035】
半導体基板に形成されたウェル(ここではpウェル)41には、メモリセルMのソース・ドレイン拡散層(ここではn+拡散層)となる拡散層42が形成されている。また、ウェル41の上にはゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)43を介して浮遊ゲートFGが形成されている。この浮遊ゲートFG上には、ゲート絶縁膜45を介して制御ゲートCGが形成されている。
【0036】
このメモリセルMは、閾値電圧に応じてデータを記憶し且つ閾値電圧を制御することにより記憶されているデータを電気的に書き換え可能になっている。この閾値電圧は、浮遊ゲートFGに蓄えられる電荷量により決まる。浮遊ゲートFG中の電荷量は、ゲート絶縁膜43を通るトンネル電流で変化させることができる。
【0037】
すなわち、ウェル41と拡散層(ソース拡散層/ドレイン拡散層)42とに対して、制御ゲートCGを十分高い電圧にすると、ゲート絶縁膜43を通して電子が浮遊ゲートFGに注入される。これにより、メモリセルMの閾値電圧が高くなる(例えば、記憶されるデータが2値の場合、書き込み状態に相当する)。
【0038】
一方、制御ゲートCGに対して、ウェル41と拡散層(ソース拡散層/ドレイン拡散層)42とを十分高い電圧にすると、ゲート絶縁膜43を通して電子が浮遊ゲートFGから放出される。これにより、メモリセルMの閾値電圧が低くなる(例えば、記憶されるデータが2値の場合、消去状態に相当する)。
【0039】
このように、メモリセルMは、浮遊ゲートFGに蓄積する電荷量を制御することにより、記憶するデータを書き換え可能である。
【0040】
また、図4は、図2に示すメモリセルアレイ1のドレイン側選択MOSトランジスタSGDTr、ソース側選択MOSトランジスタSGSTrの断面を示す断面図である。
【0041】
図4に示すように、ウェル41には、ドレイン側選択MOSトランジスタSGDTr、ソース側選択MOSトランジスタSGSTrのソース拡散層/ドレイン拡散層となる拡散層47が形成されている。また、ウェル41の上にはゲート絶縁膜48を介して制御ゲート49(SGS、SGD)が形成されている。
【0042】
以下、本実施形態による半導体記憶装置の評価方法の一例について説明する。なお、以下では、浮遊ゲート型EEPROMとして、特に、既述のような構成を有するNAND型フラッシュメモリを選択した場合について説明するが、NOR型フラッシュメモリを用いた場合も同様に説明される。また、トンネル絶縁膜がSiOの場合について説明するが、他の絶縁膜であっても同様に説明される。
【0043】
なお、この実施例1においては、データ保持(Data retention)におけるメモリセルの閾値電圧の変化から概略的にトンネル酸化膜中の電子濃度分布を求める原理と、それをベーク温度(放置温度)85℃におけるデータ保持の測定結果に応用した例を説明する。また、後述の実施例2においてはベーク温度を25℃から125℃まで広く振り、より広い領域の電子濃度分布を解析した例を説明する。更に、後述の実施例3、4においては、より詳細(高分解能)な電子濃度分布を求める方法とその例を説明する。
【0044】
ここで、既述のように、浮遊ゲート型の半導体記憶装置のデータ保持(Data retention)においては、トンネル絶縁膜への電子のトラップ/デトラップが問題になる。
【0045】
このトンネル絶縁膜からの電荷のデトラップのモデルとしては、TFM(Tunneling front model)が一般的に知られている。
【0046】
このTFMでは、トンネリングフロント(tunneling front)がトンネル絶縁膜中に仮想的に形成される。このトンネリングフロントのトンネル絶縁膜の表面(例えば、図3のトンネル絶縁膜43の表面43a(ウェル41との界面))からトンネル絶縁膜43中の位置x(t)は、時間tの関数として、以下の式(1)で表される。
【0047】
なお、式(1)において、mは、電子の質量、Eはトラップ(trap)のエネルギー準位、hはプランク定数である。また、t0は、トンネリングフロントの位置の変化が始まる時間であり、定数である。kは電荷がデトラップする時の存在確率の減衰率であり、mは電子の質量であり、 Eはトンネル絶縁膜のトラップのエネルギー準位であり、hはプランク定数であり、πは円周率である。
【0048】

x(t)=(1/2k)*ln(t/t0) (1)
k=(2mE/(h/2π)2)0.5

ここで、トンネル絶縁膜の表面からの位置x(t)におけるトンネル絶縁膜の電子濃度分布を R(x(t))とすると、閾値電圧Vtの変化dVtは、次の式(2)で表される。
【0049】

dVt=(Tox-x(t))*dQ/(Cr*ε)
= (Tox-x(t))*R(x(t))*q*dx/(Cr*ε)
= (Tox-x(t))*R(x(t))*q*(1/2k)*d(ln(t))/ (Cr*ε) (2)

ここで、上記式(2)において、位置x(t)がトンネル絶縁膜の表面近傍であり、x(t) <<Toxとすると、式(2)から以下の式(3)が得られる。なお、実施例はこの式(3)に基づいて解析を進めるがx(t)<<Toxが成り立たないような場合は式(2)に戻って解析する必要がある。
【0050】

dVt=Tox*dQ/(Cr*ε)
= Tox*R(x(t))*q*dx/(Cr*ε)
= Tox*R(x(t))*q*(1/2k)*d(ln(t))/ (Cr*ε) (3)

なお、式(2)、(3)において、Crはメモリセルのカップリング比、Toxはトンネル絶縁膜の膜厚、dQはトンネル絶縁膜がデトラップする電荷量、εはトンネル絶縁膜の誘電率、qは電子の電荷である。
【0051】
従って、電子密度分布R(x)は、(3)式から以下の式(4)のように求められる。
【0052】

R(x) = (dVt/d(ln(t)))*ε*Cr*2k/Tox/q (4)

すなわち、式(4)に示すように、時間tの対数で閾値電圧Vtを微分する(時間の対数の変化に対する閾値電圧Vtの変化率dVt/d(ln(t))を求める)。そして、この変化率dVt/d(ln(t))にε*Cr*2k/Tox/qを掛けることにより電子濃度分布R(x)を求めることができる。
【0053】
実際の例として、NAND型フラッシュメモリを用い、複数のサンプルに書込み/消去を行った後、85℃で放置し、所定のラップタイムの各時間t(以下では、便宜上、必要に応じて、時間t(i)、i=1、2、3・・・、と表記する)でメモリセルの閾値電圧Vt(以下では、便宜上、必要に応じて、閾値電圧Vt(i)、i=1、2、3・・・、と表記する)を測定した。
【0054】
ここで、図5は、メモリセルに書込み/消去を行った後、85℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。また、図6は、メモリセルに書込み/消去を行った後、85℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。
【0055】
或る時間t(i)における閾値電圧Vtを閾値電圧Vt(i)とすると、或る時間tiから時間t(i+1)の対数の変化に対する閾値電圧Vt(i)の変化率Si(すなわち、ΔVt/Δln(t))は、式(5)で表される。
【0056】

Si=(Vt(i+1)−Vt(i))/(ln(t(i+1))−ln(t(i))) (5)

この式(5)を用いると、例えば、時間t4における閾値電圧Vt4の変化率S4は、S4=(Vt5−Vt4)/(ln(t5)−ln(t4))となる。同様にして、各々のラップタイムの時間t(i)に対して変化率Siを求める(図6)。
【0057】
この変化率Siにε*Cr*2k/Tox/qを掛けることにより、式(1)で表される位置x(t)=(1/2k)*ln(t/t0)における、電子濃度分布R(x)を得ることができる。
【0058】
また、例えば、図5に示す各測定点(ln(t(i))、Vt(i))を通る近似曲線Vt=f(ln(t))を求め、この近似曲線Vtの微分係数S(t)=dVt/d(ln(t))にε*Cr*2k/Tox/qを掛けることにより、電子濃度分布R(x)を求めるようにしてもよい。
【0059】
以上のように、本実施例1に係る半導体記憶装置の評価方法によれば、半導体記憶装置のトンネル絶縁膜の電荷分布を評価することができる。特に、分解能数Åで絶縁膜表面付近の電子濃度分布を得ることができる。
【実施例2】
【0060】
本実施例2では、より広い範囲の電子濃度分布を得るための半導体記憶装置の評価方法の一例について説明する。
【0061】
ここで、図7は、メモリセルに書込み/消去を行った後、25℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。また、図8は、メモリセルに書込み/消去を行った後、25℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。また、図9は、メモリセルに書込み/消去を行った後、40℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。また、図10は、メモリセルに書込み/消去を行った後、40℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。また、図11は、メモリセルに書込み/消去を行った後、125℃で放置した場合の閾値電圧の変化の実測値の一例を示す図である。また、図12は、メモリセルに書込み/消去を行った後、125℃で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)の一例を示す図である。なお、放置温度85℃における、測定結果は図5と同様であり、閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)は図6と同様である。
【0062】
先ず、実施例1と同様に、NAND型フラッシュメモリを用い、複数のサンプルに書込み/消去を行った後、25℃、40℃、85℃、125℃で放置し、所定のラップタイムの各時間tでメモリセルの閾値電圧Vtを測定する。これにより、例えば、図5、図7、図9、図11に示す各温度で放置した場合の閾値電圧の変化結果を得る。
【0063】
次に、各ラップタイム間における時間tの対数の変化に対する閾値電圧Vtの変化率Si=(Vt(i+1)−Vt(i))/(ln(t(i+1))−ln(t(i)))を計算する。
【0064】
これにより、例えば、図6、図8、図10、図12に示す各放置温度で放置した場合の閾値電圧の変化率ΔVt/Δln(t)を得る。
【0065】
次に、各放置温度に対して得られた閾値電圧Vtの変化率ΔVt/Δln(t)を、メモリセルのデータ保持の活性化エネルギーEa(通常、シリコン酸化膜SiO2においてはこの活性化エネルギーは1eV前後)を用いて、25℃換算の時間に換算して重ね合わせる。
【0066】
ここで、図13は、各温度で測定された閾値電圧Vtの変化率を、メモリセルのデータ保持の活性活エネルギーEaを用いて、25℃換算の時間に換算して重ね合わせた結果の一例を示す図である。なお、図13において、四角のプロットが25℃のデータであり、菱形のプロットが40℃のデータを25℃換算したデータであり、三角形のプロットが80℃のデータを25℃換算したデータであり、円形のプロットが125℃のデータを25℃換算したデータである。
【0067】
図13に示すように、25℃換算で、実施例1の場合よりも長い時間の経過に対する閾値電圧Vtの変化率ΔVt/Δln(t)を得ることができる。
【0068】
この図13の縦軸である閾値電圧Vtの変化率dVt/d(ln(t))に、式(4)の右辺に含まれるε*Cr*2k/Tox/qを掛ければ、電子濃度分布を得ることができる。
【0069】
このような加速試験により、より短い測定時間で、より広い範囲の電子濃度分布を得ることができる。
【0070】
また、別な手法として、各温度で測定されたデータを25℃換算の時間に換算して、閾値電圧Vtを重ね合わせ、その全測定点にフィッティングさせた近似曲線Vt=f(ln(t))を求めてもよい。ここで、図14は、各温度で測定された閾値電圧Vtを、メモリセルのデータ保持の活性活エネルギーEaを用いて、25℃換算の時間に換算して重ね合わせた結果の一例を示す図である。
【0071】
図14に示すように、25℃換算で、よりも長い時間の経過に対する閾値電圧Vt、すなわち、近似曲線Vt=f(ln(t))を得ることができる。
【0072】
次に、この近似曲線Vt=f(ln(t))の微分係数S(t)=dVt/d(ln(t))を計算する。ここで、図15は、図14に示す近似曲線Vt=f(ln(t))を微分することにより得られた微分係数S(t)=dVt/d(ln(t))を示す図である。
【0073】
図15に示すように、25℃換算で、より長い時間の経過に対する閾値電圧Vtの変化率ΔVt/Δln(t)を得ることができる。
【0074】
この図15の縦軸である閾値電圧Vtの変化率dVt/d(ln(t))に、式(4)の右辺に含まれるε*Cr*2k/Tox/qを掛けることによっても、より広い範囲の電子濃度分布が得られる。
【0075】
以上のように、本実施例2に係る半導体記憶装置の評価方法によれば、半導体記憶装置のトンネル絶縁膜の電荷分布を評価することができる。特に、分解能数Åで絶縁膜表面付近の電子濃度分布を得ることができる。
【実施例3】
【0076】
この実施例3においては、より詳細(高分解能)な電子濃度分布を求める方法とその例を説明する。
【0077】
既述のTFMの詳細な計算によると、電界が小さく且つトンネル絶縁膜の表面近傍でトンネル絶縁膜の表面から距離xにある電子の存在確率P(x、t) は、時間tと距離xの関数として、次の式(6)のように表される。
【0078】

P(x、t)=exp(-A*t*exp(−2kx)) (6)

なお、この式(6)において、Aは、電子がトンネル絶縁膜をトンネリングする頻度(atempt frequency)に関係する定数である。
【0079】
ここで、時間の対数が等間隔D=ln(t(i+1))-ln(ti)になるように選んだラップタイム毎のこの式(6)に示す関数の曲線を求めた。図16は、式(6)に示す電子の存在確率と時間との関係の一例を示す曲線の図である。なお、図16において、より右側に位置する曲線が、より時間が経過した状態の曲線である、
引き続くラップタイム間における電子の存在確率P(x、t)の差ΔP(x、ti)が、その時間間隔で位置xにある電子がデトラップするデトラップ確率T(x、ti)となる。このデトラップ確率T(x、ti)は、以下の式(7)のように表される。
【0080】

T(x、t(i))=ΔP(x、t(i))=exp(−A*t(i+1)*exp(−2kx))−exp(−A*t(i)*exp(−2kx)) (7)

ここで、図17、図18は、式(7)に示すデトラップ確率と位置xとの関係を示す図である。
【0081】
時間t(i)とt(i+1)との間に測定される閾値電圧Vtの変化ΔVt(t(i))は、以下の式(8)で表される。
【0082】

ΔVt(t(i))= ∫(Tox-x)*T(x,t(i))*R(x)*q/ε/Crdx (8)

そして、x<<Tox の場合はΔQ(ti)=q*∫T(x、t(i))*R(x)dxとすると、式(8)は、式(9)のように表される。なお、Q(t(i))は、時間t(i)でトンネル絶縁膜にトラップされている電荷であり、トンネル絶縁膜にトラップされた電子数の時間変化ΔQ(t(i))/q=Q(t(i+1)))/q−Q(t(i))/qとなる。また、この実施例では、式(9)で解析を進めるが、x(t(i))<<Toxが成り立たない場合は式(8)に戻って解析する必要がある。
【0083】

ΔVt(t(i))= Tox*ΔQ(t(i))/ε/Cr (9)

従って、閾値電圧Vtの変化から求めた電子濃度は、実際の電子濃度にT(x、t(i))を掛けてxで積分したものになっている。
【0084】
図17、図18に示すように、デトラップ確率T(x、t(i))は、位置x(t(i))にピークを持っているとはいえFWHM(full width at half maximum)は約6Åである。従って実施例1、2の評価方法では、電子濃度分布を半値幅約6Å(すなわち空間分解能が約6Å)の顕微鏡で眺めているようなものであり、実際の電子濃度分布よりぼやけたものしか得られていないことが分かる。
【0085】
実際にΔVtの時間変化から電子濃度分布R(x)を求めるには、以下のようにする。
【0086】
まず、T(x、t(i))の関数から電子濃度分布R(x)を電子数の時間変化ΔQ/qへ変換する変換正方行列Tn、m=T(xn、tm)を作る。
【0087】
ここで、xnは計算機で計算するための酸化膜の深さ方向メッシュ点の値を表す。tmはΔVtを求める時間メッシュ点の値である。tmは実際の時間の対数の間隔が等しくなるように測定時間を分割して決める。
【0088】
また、閾値電圧Vtの時間の対数の変化に対する変化率Vt’mは、その時間変化の近似曲線Vt(t)を求め、この近似曲線Vt(t)からVt’m=dVt(tm)/d(ln(t))を求める(図15)。
【0089】
この求められたVt’m=dVt(tm)/d(ln(t))に時間の対数の間隔D=ln(t(i+1))-ln(ti)を掛けたものがΔVtになる。したがって、ΔVt(tm)= D* Vt’m =D* Tox* dQ(tm)/d(ln(t))/ε/Cr、即ち、式(10)、(11)の関係が成り立つ。
【0090】

ΔQ(tm)= D*dQ(tm)/d(ln(t)=D* Vt’m*ε*Cr/ Tox (10)

Σn (Tm,n*Rn)=ΔQ(tm)/q= D* Vt’m*ε*Cr/ Tox/q (11)

ここで、Vt’m、即ちVt’mに比例するΔQ(tm)と、変換正方行列Tm、nとが既知である。そこで、変換正方行列Tm、nの逆行列T’n、mを求め、この逆行列T’n、mとΔQ(tm)/qから次式(12)により、電子濃度分布Rn求める。ここで、図19は、閾値電圧Vtの時間の対数の変化に対する変化率Vt’mと、この変化率Vt’mから得られる電子濃度分布とを示す図である。
【0091】

R(xn)= Rn = Σm(T’n、m*ΔQ(tm)/q) (12)

また、既知のΔQ(tm)/qとTm,nと未知のRnの間の関係は、式(13)のように表される。
【0092】

ΔQ(tm) /q=Σn(Tm,n* Rn) (13)

この式(13)の関係から、ガウス=ザイデル法を用いて電子濃度分布Rn=R(xn)を求めてもよい。
【0093】
以上のように、本実施例3に係る半導体記憶装置の評価方法によれば、半導体記憶装置のトンネル絶縁膜の電荷分布を評価することができる。更に、実施例1、2と比較して、より高分解能で絶縁膜表面付近の電子濃度分布を得ることができる。
【実施例4】
【0094】
この実施例4においては、実施例3と同様に、より詳細(高分解能)な電子濃度分布を求める方法とその例を説明する。
【0095】
トンネリングフロントの動きを表す式(1)を時間tについて解くと次式(14)が得られる。
【0096】

t=t0*exp(2kx(t)) (14)

この式(14)においてx(t)=Xとし、既述の式(6)の電子の存在確率P(x、t)のtに代入すると、次の式(15)が得られる。
【0097】

P(x、t)=exp(-A* t0*exp(2kX)*exp(−2kx))
= exp(-A* t0*exp(2k(X−x)) (15)

ここで、ln(t)=ln(t0)+2kX、なのでd(ln(t))=2kdXである。したがって式(15)の両辺をln(t)で微分すると、式(16)が得られる。
【0098】

d(P(x、t))/ d(ln(t))= d(P(x、t))/2k dX
= (-A* t0)exp(-A* t0*exp(2k(X−x)))* exp(2k(X−x)) (16)
=T(X-x)

この式(16)に示すように、式(16)の左辺の存在確率P(x、t)の微分d(P(x、t))/ d(ln(t))は、変数(X−x)のみの関数であるので、T(X-x)と表すことができる。
【0099】
この式(16)の関係を用いると、トンネリングフロントがXにあるときの時間tの対数の変化に対する電荷の変化率dQ/ d(ln(t)は、式(17)で表される。
【0100】

dQ(X)/ d(ln(t))= q*∫R(x)* T(X-x)dx (17)

この式(17)は、電子濃度分布R(x)を関数T(x)で畳み込み積分したものであり、R*Tと表される。この式(17)を用いると、閾値電圧Vtの時間の対数の変化に対する変化率dVt(t)/d(ln(t))は、式(18)のように表される。
【0101】

dVt(t)/d(ln(t))=(Tox/ε/Cr)*(dQ(x)/d(ln(t))
=(Tox/ε/Cr)*(R*T) (18)

実際には、まず、測定された閾値電圧Vt(t(i))から既述の図14に示すような近似曲線Vt(t)を求め、更に、既述の図15に示すようなVt’(t)= dVt(t)/d(ln(t))を求める。
【0102】
そして、求められたdVt(t)/d(ln(t))に対して変換関数Tで逆畳み込み積分を実行することにより、電子密度分布R(x)を求めることができる。
【0103】
このように、変換行列の求め方が式(7)と式(16)の違いがあるだけであり、これを解く手順は、図17から図19の結果を得るための実施例3の手順と同様である。
【0104】
また、実施例3の場合と同様に、ガウス=ザイデル法を用いて、電子密度分布Rnを求めてもよい。
【0105】
以上のように、本実施例4に係る半導体記憶装置の評価方法によれば、半導体記憶装置のトンネル絶縁膜の電荷分布を評価することができる。更に、実施例1、2と比較して、より高分解能で絶縁膜表面付近の電子濃度分布を得ることができる。
【0106】
なお、以上の各実施例にいては、浮遊ゲート型フラッシュメモリに適用した場合について説明したが、本実施形態による半導体記憶装置の評価方法は、MOS(Metal-Oxide-Silicon)、MNOS(Metal-Nitride-Oxide-Silicon)、MONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)、SONOS(Silicon-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)等の単層ゲートおよび多層ゲートからなるトランジスタやキャパシタのゲート絶縁膜中の電子濃度分布の評価についても適用が可能である。
【0107】
更に、本実施形態による半導体記憶装置の評価方法は、閾値電圧Vtに代えてフラットバンド電圧Vfbを測定しても、同様に電子濃度分布を評価することができる。
【0108】
なお、実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。
【符号の説明】
【0109】
1 メモリセルアレイ
2 ビット線制御回路
3 カラムデコーダ
4 データ入出力バッファ
5 データ入出力端子
6 ロウデコーダ
7 制御回路
8 制御信号入力端子
9 ソース線制御回路
10 ウェル制御回路
100 半導体記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊ゲート型の半導体記憶装置の評価方法であって、
時間の対数の変化に対する前記半導体記憶装置のメモリセルの閾値電圧Vtの変化率に、ε*Cr*2k/Tox/q(なお、εは前記メモリセルのトンネル絶縁膜の誘電率であり、Crは前記メモリセルのカップリング比であり、Toxは前記トンネル酸化膜の膜厚であり、kは電荷がデトラップする時の存在確率の減衰率でありk=(2mE/(h/2π)2)0.5と表され、mは電子の質量、Eは前記トンネル絶縁膜のトラップのエネルギー準位、hはプランク定数、πは円周率である。)を乗じることにより、前記メモリセルのトンネル絶縁膜中の電子濃度分布を求める
ことを特徴とする半導体記憶装置の評価方法。
【請求項2】
浮遊ゲート型の半導体記憶装置の評価方法であって、
複数の放置温度に対して、時間の対数の変化に対する前記半導体記憶装置のメモリセルの閾値電圧Vtの変化をそれぞれ求め、
前記複数の放置温度に対する時間を、前記複数の放置温度のうち選択した1つの放置温度に対する時間に換算して、前記閾値電圧Vtの変化を重ね合わせ、
時間の対数の変化に対する、前記重ね合わせた閾値電圧Vtの変化率に、ε*Cr*2k/Tox/q(なお、εは前記メモリセルのトンネル絶縁膜の誘電率であり、Crは前記メモリセルのカップリング比であり、Toxは前記トンネル酸化膜の膜厚であり、kは電荷がデトラップする時の存在確率の減衰率でありk=(2mE/(h/2π)2)0.5と表され、mは電子の質量、Eは前記トンネル絶縁膜のトラップのエネルギー準位、hはプランク定数、πは円周率である。)を乗じることにより、前記メモリセルのトンネル絶縁膜中の電子濃度分布を求める
ことを特徴とする半導体記憶装置の評価方法。
【請求項3】
浮遊ゲート型の半導体記憶装置の評価方法であって、
時間tiを前記半導体記憶装置のメモリセルの閾値電圧Vtを求める時間とし、前記メモリセルのトンネル絶縁膜の電子濃度分布R(x)を、前記トンネル絶縁膜にトラップされた電子数の時間変化ΔQ(ti)/q=Q(t(i+1))/q−Q(ti)/qに変換する変換関数T(x,ti)=P(x,ti+1)−P(x,ti)=exp(−A*ti+1*exp(−2kx))−exp(−A*ti*exp(−2kx))を求め(なお、Q(ti)は、時間tiでトンネル絶縁膜にトラップされている電荷、qは電子の電荷、xはトンネル酸化膜の表面からの位置、P(x,t)=exp(-A*t*exp(−2kx)) 、Aは定数、k=(2mE/(h/2π)2)0.5、mは電子の質量, Eは前記トンネル絶縁膜のトラップのエネルギー準位、hはプランク定数、πは円周率である。)、
電荷Q(ti)の時間変化ΔQ(ti)=ΔVt(ti)/(Cr*Tox/ε)を求め(なお、ΔVt(ti)は、閾値電圧Vtの時間変化であり、εは前記メモリセルのトンネル絶縁膜の誘電率であり、Crは前記メモリセルのカップリング比であり、Toxは前記トンネル酸化膜の膜厚である)、
ΔQ(ti)=q*∫T(x,ti)* R(x)dxの関係から電子濃度分布R(x)を求める
ことを特徴とする半導体記憶装置の評価方法。
【請求項4】
前記トンネル絶縁膜の表面からの位置xnにおける電子濃度分布をRn=R(xn)とし、
電荷Qの時間変化ΔQ(tm)と、前記変換関数T(x,ti)から行列Tn,m=T(xn,tm)とを求め、
電荷Qの時間変化ΔQ(tm)=q*Σn(Tn,m* Rn)との関係からガウス=ザイデル法を用いて電子濃度分布Rnを求める
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体記憶装置の評価方法。
【請求項5】
前記行列Tn,mの逆行列T’m,nを求め、
Rn=Σm(T’m,n*ΔQ(tm)/q)の関係から電子濃度分布Rnを求める
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体記憶装置の評価方法。
【請求項6】
浮遊ゲート型の半導体記憶装置の評価方法であって、
前記半導体記憶装置のメモリセルのトンネル絶縁膜のトンネリングフロントの位置をX、前記トンネル酸化膜の表面からの位置をxとし、電子濃度分布R(x)を前記トンネル絶縁膜にトラップされた電子数Q/qの時間の対数に対する変化に変換する変換関数T(x,X)は、以下の式(1)で表され(A、t0は定数、k=(2mE/(h/2π)^2)^0.5、mは電子の質量, E はtrapのエネルギー準位、h はプランク定数、πは円周率である)、

T(x,X)=(−A*t0)*exp(−A*t0* exp(−2k(X−x)))* exp(−2k(X−x) ) (1)

トンネリングフロントが位置Xにあるときの時間tの対数の変化に対するトンネル絶縁膜にトラップされている電荷Qの変化率dQ/ d(ln(t)は、以下の式(2)で表され(なお、qは電子の電荷である)、

dQ(X)/ d(ln(t))=q*∫R(x)* T(X-x)dx (2)

閾値電圧Vtの時間tの対数の変化に対する変化率dVt(t)/d(ln(t))は、以下の式(3)で表され(なお、qは電子の電荷である)、

dVt(t)/d(ln(t))=(Cr*Tox/ε)*(dQ(x)/d(ln(t))=(Cr*q*Tox/ε)*(R*T) (3)

式(3)の関係より、実験値dVt(t)/d(ln(t))を変換関数Tで逆畳み込み積分して電子密度分布R(x)を求める(なお、εは前記トンネル絶縁膜の誘電率であり、Crは前記メモリセルのカップリング比であり、Toxは前記トンネル酸化膜の膜厚である)
ことを特徴とする半導体記憶装置の評価方法。
【請求項7】
時間tmにおける閾値電圧Vtの時間tの対数の変化に対する変化率Vt’m= dVt(tm)/d(ln(t))を求め、
変換行列Tn,m=T(Xm−xn)は、電子濃度分布Rn=R(xn)との間に、以下の式(4)に示す関係があり(なお、時間の対数の間隔D=ln(t(i+1))-ln(t(i))である)、

Σn (Tm,n*Rn)=ΔQ(tm)/q= D* Vt’m*ε*Cr/ Tox/q (4)

前記変化率Vt’mと前記行列Tm,nと、式(4)の関係より、ガウス=ザイデル法を用いて電子濃度分布Rnを求める
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体記憶装置の評価方法。
【請求項8】
行列Tm,nの逆行列T’n,mを求め、この逆行列T’n,mと式(4)のΔQ(tm)/q= D* Vt’m*ε*Cr/ Tox/qの関係とから得られる以下の式(5)により電子濃度分布Rnを求める

Rn=Σm(T’n,m*ΔQ(tm)/q) (5)

ことを特徴とする請求項7に記載の半導体記憶装置の評価方法。
【請求項9】
前記半導体記憶装置は、NAND型フラッシュメモリであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の半導体記憶装置の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−79716(P2012−79716A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220397(P2010−220397)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】