説明

半導体集積回路装置

【課題】DLL回路においてロックはずれが発生しても、短時間で確実に正常ロック状態に復帰させる。
【解決手段】遅延回路13の遅延時間が1周期より小さくなると、遅延検出回路15から最小遅延時間検出信号K2が出力される。さらに位相周波数比較器11がUPパルスを出力していると、最小遅延時間検出信号K2とUPパルスとの2NOR論理(否定論理和回路21)によりクロックがUPパルスカウンタ19に伝達し、Hレベルのロックはずれ検出信号K3が出力され、リセット期間保持カウンタ17にLレベルが入力される。これにより、リセット期間保持カウンタ17がカウンタ動作を開始し、所定の期間、リセット信号をLレベルにして制御電圧CNTLを電源電圧にショートし、かつ位相周波数比較器11をリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置において用いられるサンプリングクロックの生成技術に関し、特に、デジタルカメラなどに用いられるサンプリングクロックの生成に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどにおけるサンプリングクロック調整用などとして、DLL(Delay Locked Loop)回路が広く用いられている。このDLL回路は、基本構成として遅延素子、位相周波数比較器、チャージポンプ、およびループフィルタから構成される負帰還回路である。
【0003】
この回路に期待される機能は、入力クロックに対し、遅延素子の出力クロックがちょうど1周期遅れにロックさせる。負帰還動作によって、プロセス、電源電圧、温度のばらつきに依存しないクロック遅延を生成できる。
【0004】
DLL回路を構成する位相周波数比較器は、内部にラッチ回路を含むため、DLL回路が1周期遅れにロックするよう期待動作をさせるには、予めラッチ回路の内部状態をリセットする必要がある。
【0005】
その上、たとえ動作開始時にリセットさせて期待通りの動作をさせても、たとえば、サージが印加され位相周波数比較器の2つの入力クロックに予期せぬパルスが発生し、そのエッジを検出した場合、正常ロックからはずれてしまう。
【0006】
その場合、2周期、またはそれ以上の整数倍周期の遅延時間にロックしたりする(擬似ロック)。または0周期目にロックさせようとし、遅延素子の遅延時間最小値に収束してしまう現象に陥る。前者の擬似ロックは、可変遅延ライン各段から出力される複数のクロックの遅延時間を検出する遅延検出回路を設けることによって対策可能であるが、後者の現象、すなわちロックはずれは新たな対策が必要となった。
【0007】
DLL回路におけるロックはずれの対策技術としては、たとえば、遅延素子の遅延時間が最小値となるときの、ループフィルタ容量電圧値である制御電圧に着目し、位相周波数比較器をリセットするものがある。
【0008】
遅延素子が、その遅延時間が小さくなるほど制御電圧が上昇する伝達特性を持つ場合、ある電圧値以上になるとロックはずれと判定する。回路構成としては電圧比較器を設け、その一つの入力には制御電圧を、他方の入力には任意に設定したバイアス電圧を与える。
【0009】
たとえば、電源電圧が約3V動作の回路では、約2.5Vをバイアス電圧として与え、制御電圧が約2.5V以上の場合にロックはずれと判定し、位相周波数比較器、および制御電圧をリセットする。また、約2.5V未満の場合には、正常ロック状態と判定する。
【0010】
なお、この種のDLL回路としては、制御回路が第1のクロックの供給を開始すると、位相周波数比較器が第2のクロックのエッジを先のタイミングのエッジとして、このタイミングの直後の第1のクロックのエッジとの比較動作を実行し、遅延回路がクロック1周期よりも小さい遅延時間に設定されている際に、第2のクロックのエッジを第1のクロック信号の対応エッジより1サイクル後のエッジと比較することにより、遅延時間を入力クロックの1周期に安定させるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−311543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記のような電圧比較を有するDLL回路におけるロックはずれの防止技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0012】
すなわち、上記したロックはずれ対策では、外部から判定用のバイアス電圧を供給する必要があるので、そのバイアス電圧設定が電源電圧、動作周波数、プロセス、温度などを考慮し選択する必要があり、電圧設定が困難であるという問題がある。
【0013】
また、制御電圧とバイアス電圧とを比較する比較器を新たに設けなければならないので、電力消費が増加してしまうという問題も生じてしまうことになる。
【0014】
さらに、特許文献1の技術においては、ロックはずれから正常ロックに自動復帰させるために別途の発振器が必要となってしまい、それにより、レイアウト面積、消費電力、ならびに雑音増加などの問題が生じる恐れがある。
【0015】
本発明の目的は、DLL回路においてロックはずれが発生しても、短時間で確実に正常ロック状態に復帰させることのできる技術を提供することにある。
【0016】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0018】
本発明は、DLL回路に関するものであり、直列接続された複数の遅延素子からなり、DLL回路への入力クロックである基本クロックを遅延させて遅延クロックとして出力する遅延回路と、該遅延回路が生成した遅延クロックと基本クロックとの位相差を検出し、UPパルス、またはDOWNパルスを生成する位相周波数比較器と、該位相周波数比較器から出力されるUPパルス、またはDOWNパルスに応じて、制御電圧を発生させるチャージポンプ回路と、遅延回路における遅延素子からそれぞれ出力される遅延信号から、遅延素子の遅延時間が縮小し、最小値に収束するロックはずれを検出し、そのロックはずれから正常ロックに復帰させる制御を行うロックはずれ検出制御手段とを備えたクロック発生部を有したものである。
【0019】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0020】
本発明は、前記ロックはずれ検出制御手段が、各々の遅延素子から出力される遅延信号の電圧レベルを取り込み、取り込んだ電圧レベルの組み合わせが所定の組み合わせとなった際に最小遅延時間検出信号を出力する遅延検出回路と、該遅延検出回路から最小遅延時間検出信号が出力され、かつ位相周波数比較器からUPパルスが出力されている際に、ロックはずれと判定し、ロックはずれ検出信号を出力するロックはずれ検出部と、該ロックはずれ検出部から出力されたロックはずれ検出信号基づいて、所定の期間、リセット信号を出力し、位相周波数比較器をリセットするリセット制御部とを備えたものである。
【0021】
さらに、本発明は、前記遅延検出回路が、最小遅延時間検出信号を出力する電圧レベルの所定の組み合わせが、すべての前記遅延素子からHレベルの信号が出力される組み合わせとなるものである。
【0022】
また、本発明は、前記ロックはずれ検出制御手段が、リセット制御部から出力されるリセット信号に基づいて、チャージポンプ回路から出力される制御電圧を電源電圧にショートするスイッチ部を備えたものである。
【0023】
さらに、本発明は、前記遅延検出回路が、UPパルスのグリッチをマスキングするために遅延回路が発生する8/9位相のクロックを最小遅延時間検出信号として出力するものである。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0025】
(1)ロックはずれを確実に排除することができ、安定した高精度なサンプリングクロックを生成することができる。
【0026】
(2)上記(1)により、デジタルカメラなどの電子機器に用いた場合、該電子機器の性能、および信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態によるデジタルカメラシステムなどに用いられる画像前処理部のブロック図、図2は、図1の画像前処理部に設けられたDLL回路における構成の一例を示したブロック図、図3は、図2のDLL回路に用いられる位相周波数比較器の一例を示す回路図、図4は、図3の位相周波数比較器における状態遷移図、図5は、図4の状態遷移におけるタイミングチャート、図6は、図2のDLL回路に設けられた遅延素子各段のクロック波形の一例を示した説明図、図7は、図2のDLL回路に設けられた位相周波数比較器の伝達特性を示した説明図、図8は、図2のDLL回路に設けられた遅延検出回路の回路構成例を示す説明図、図9は、図8の遅延検出回路から出力される最小遅延時間検出信号の説明図である。
【0029】
本実施の形態1において、画像前処理部1は、たとえば、デジタルカメラシステムなどに用いられる画像前処理用半導体集積回路装置である。この画像前処理部1は、各画素から取り込んだ信号レベルと基準となる黒レベルとをそれぞれ交互にサンプリングし、それらを比較することにより信号レベルを決定する。
【0030】
画像前処理部1は、図1に示すように、CDS(差電圧検出部)2、PGA(差電圧増幅部)3、A/D変換器4、ロジック回路5、クロック発生部となるDLL回路6、ならびにタイミング発生器7から構成されており、これらが1チップ化した半導体集積回路装置となって構成されている。
【0031】
CDS2には、撮像素子8が接続されている。撮像素子8は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどからなり、レンズによって結像した映像を電圧信号に変換する。この撮像素子8は、基準となる黒レベルと取り込んだ信号レベルとを交互に出力する。
【0032】
CDS2は、相関二重サンプリング回路であり、撮像素子8から出力される黒レベルと信号レベルとをDLL回路6から出力される黒レベルサンプリングクロックSPBLK、信号サンプリングクロックSPSIGに同期してサンプリングし、その差信号を出力する。
【0033】
CDS2が検出した差信号は、PGA3で増幅し、A/D変換器4でデジタル値に変換して出力される。このA/D変換器4には、DSP9が接続されている。DSP9は、A/D変換器4から出力されたデジタルデータを処理する。
【0034】
ロジック回路5には、DLL回路6が接続されている。このロジック回路5からは、位相遅延の設定信号が出力される。また、DLL回路6には、タイミング発生器7が接続されている。
【0035】
タイミング発生器7は、外部入力された外部クロックから、DLL回路6に供給する基本クロックREFを生成して出力する。DLL回路6は、入力された基本クロックから、CDS2に供給する信号サンプリングクロックSPSIG、黒レベルサンプリングクロックSPBLK、および撮像素子8に供給するサンプリング信号、PGA3に供給するサンプリング信号、およびA/D変換器4に供給するサンプリング信号をそれぞれ生成する。
【0036】
図2は、DLL回路6における構成の一例を示したブロック図である。
【0037】
DLL回路6は、図示するように、クロック発生器10、位相周波数比較器11、チャージポンプ12、遅延回路13、ループフィルタ容量14、ロックはずれ検出制御手段を構成する遅延検出回路15、およびロックはずれ検出制御手段を構成するロックはずれ検出制御部16から構成されている。
【0038】
ロックはずれ検出制御部16は、DLL回路6に後述するロックはずれが発生したことを検出し、そのロックはずれから正常ロックに復帰させる制御を行う。
【0039】
また、ロックはずれ検出制御部16は、リセット制御部となるリセット期間保持カウンタ17、制御電圧ショート用スイッチ18、UPパルスカウンタ19、カウンタ制御部20、カウンタ入力制御部21、ならびにカウンタリセット制御部22から構成されている。
【0040】
さらに、制御電圧ショート用スイッチ18、UPパルスカウンタ19、カウンタ制御部20、カウンタ入力制御部21、およびカウンタリセット制御部22によってロックはずれ検出部が構成されている。
【0041】
位相周波数比較器11の一方の入力部、ならびに遅延検出回路15の入力部には、クロック発生器10から出力される基本クロックがそれぞれ入力されるように接続されている。
【0042】
また、遅延回路13の出力部には、位相周波数比較器11の他方の入力部が接続されている。位相周波数比較器11は、基本クロックと遅延回路13から出力された遅延クロックとの位相差を比較し、UPパルス、DOWNパルスを生成する。
【0043】
位相周波数比較器11には、チャージポンプ12が接続されており、該チャージポンプ12には、ループフィルタ容量14が接続されている。チャージポンプ12は、位相周波数比較器11から出力されるUPまたはDOWNパルスに応じて、充電電流または放電電流をパルス状にそれぞれ発生させる。
【0044】
ループフィルタ容量14は、チャージポンプ12が発生した充放電電流を時間積分して制御電圧CNTLを生成し、遅延回路13に出力する。遅延回路13は、基本クロックに対して電圧制御CNTLに対応した時間だけ遅延した遅延クロックを出力する。
【0045】
遅延回路13は、複数の遅延素子が直列接続された構成からなり、該遅延素子は、たとえば、直列接続された2つのインバータなどから構成されている。さらに、遅延回路13を構成する遅延素子の各段の出力部には、遅延検出回路15に設けられた複数の入力部がそれぞれ接続されている。
【0046】
遅延検出回路15は、遅延素子の遅延時間を検出し、その検出結果に応じて、擬似ロック検出信号K1、および最小遅延時間検出信号K2を出力する。カウンタ制御部20は、インバータ20aと否定論理和回路20bとから構成されている。
【0047】
カウンタ制御部20は、擬似ロック検出信号K1、およびUPパルスカウンタ19から出力されるロックはずれ検出信号K3の信号状態に応じて、リセット期間保持カウンタ17の動作制御を行う。
【0048】
インバータ20aの入力部には、遅延検出回路15から出力される擬似ロック検出信号K1が入力されるように接続されており、該インバータ20aの出力部には、否定論理和回路20bの一方の入力部が接続されている。
【0049】
否定論理和回路20bの他方の入力部には、ロックはずれ検出信号K3が入力されるように接続されており、該否定論理和回路20bの出力部には、リセット期間保持カウンタ17の一方の入力部が接続されている。
【0050】
また、カウンタ入力制御部21は、否定論理和回路からなり、該否定論理和回路の一方の入力部には、遅延検出回路15から出力される最小遅延時間検出信号K2が入力されるように接続されており、否定論理和回路の他方の入力部には、位相周波数比較器11のUPパルスが入力されるように接続されている。
【0051】
そして、否定論理和回路の出力部には、UPパルスカウンタ19の一方の入力部が接続されている。また、カウンタリセット制御部22は、論理積回路からなり、該論理積回路の一方の入力部には、外部リセット信号が入力される外部リセット端子に接続されている。外部リセット端子からの外部リセット信号は、リセット期間保持カウンタ17にも入力されるように接続されている。
【0052】
論理積回路の他方の入力部、スイッチ部となる制御電圧ショート用スイッチ18の制御端子、ならびに位相周波数比較器11の制御端子には、リセット期間保持カウンタ17から出力されるリセット信号が入力されるようにそれぞれ接続されている。
【0053】
また、カウンタリセット制御部22の出力部には、UPパルスカウンタ19のリセット端子に接続されている。リセット期間保持カウンタ17は、カウンタ制御部20からの出力信号、または外部リセット信号に基づいて、所定の期間、リセット信号を出力する。制御電圧ショート用スイッチ18は、リセット期間保持カウンタ17から出力されるリセット信号に基づいて、チャージポンプ12から出力される制御電圧CNTLを電源電圧にショートする。
【0054】
ここでロックはずれについて説明する。
【0055】
図3は、本実施例に用いる位相周波数比較器11の例、図4は、その位相周波数比較器11における状態遷移図を示したものである。位相周波数比較器11は、図3に示すように、インバータIv1〜Iv3、ならびに否定論理積回路ND1〜ND9によって構成されている。
【0056】
また、図4において、図中の円が内部状態および出力状態を表し、円内の左から順に、図3で示すA、Bの状態および出力であるUP、DOWN端子の状態を表す。円と円を結ぶ矢印が状態遷移を表し、状態遷移が起きる条件は、入力端子であるDELおよびREFの状態が矢印の付近に示したHおよびLの組合せとなった場合に遷移が発生する。
【0057】
また、入力端子であるDELおよびREFの状態の中のXは、HレベルまたはLレベルのいずれでもよいことをあらわす。この状態遷移図と図5のタイミングチャートに基づいて、ロック状態およびロックはずれの起こる仕組みを以下に説明する。
【0058】
また、図5においては、上方から下方にかけて、位相周波数比較器11に入力される基本クロックが入力される基本クロック端子REF、位相周波数比較器11に入力される遅延回路からの遅延クロックが入力される遅延クロック端子DEL、位相周波数比較器11から出力されるUPパルスが出力される出力端子UP、ならびに位相周波数比較器11から出力されるDOWNパルスが出力される出力端子DOWNの信号状態をそれぞれ示しており、ロック状態から、遅延クロック端子DELにハザードが入った場合にロックはずれに状態遷移する過程である。
【0059】
基本クロック端子REF、およびLレベルのエッジが合ったロック状態では、図4に示すように、理想的には状態J101、および状態J104間で交互に遷移し続ける。このとき、位相周波数比較器11の出力であるUPパルスはHレベル、DOWNパルスは、Lレベルを出し続け、チャージポンプの充放電が停止している。
【0060】
状態J101でハザードがDEL端子に入った場合、ハザードのライズエッジを検出して状態J101から状態J105へ遷移することが、図4、および図5の対応で読み取れる。
【0061】
なお、図4の太線矢印が、図5でのハザード発生後の状態遷移を表す。状態J105では、本来出力されないUPパルスが出力されることにより、チャージポンプが充電動作を行う。その結果、遅延素子の遅延時間は縮小し、最小値に収束する。この現象がロックはずれである。
【0062】
図6は遅延素子総段数を72段として主な段数でクロック波形を示したものである。図6(a)はロックはずれの状態に安定した場合を示しており、図6(b)は正常ロックの状態に安定した場合を示しており、図6(c)は擬似ロックの状態に安定した場合を示している。
【0063】
また、図7は位相周波数比較器11の伝達特性を示したものであり、図7(a)はロックはずれ、図7(b)は正常ロック、ならびに図7(c)は擬似ロックの状態である。この図7において、横軸は遅延素子の遅延時間にあたり、縦軸は位相周波数比較器の出力となり、後段のチャージポンプを充電させるUPパルス、および該チャージポンプを放電させるDOWNパルスのパルス幅である。
【0064】
期待動作である図7(b)の正常ロック状態をもとに説明すると、遅延時間が1周期の場合に、UPパルス、およびDOWNパルスは発生しないため、伝達特性は横軸と交差する。
【0065】
遅延時間が1周期より小さい場合、DOWNパルスが発生するため、伝達特性に応じたDOWNパルスを発生する。逆に遅延時間が1周期より大きい場合、伝達特性に応じたUPパルスが発生する。
【0066】
同様に、図7(c)に示す2周期遅れの擬似ロックの場合、伝達特性の横軸との交差点、すなわちロック点は2周期遅れのところとなり、ちょうど伝達特性が横軸方向へ平行移動する。
【0067】
また、図7(a)に示すロックはずれの場合には、ハザードにより伝達特性のロック点が0周期に平行移動したことに相当する。その結果、常にUPパルスが出力することにより、現実的には遅延素子の遅延時間は0になることはないので、遅延時間最小値に収束することになる。
【0068】
次に、本実施の形態によるDLL回路6の動作について説明する。
【0069】
遅延検出回路15から出力される擬似ロック検出信号K1は、遅延回路13の遅延素子各段の出力電圧レベルであるHLパターンにしたがって擬似ロック範囲にあるときアクティブとする。
【0070】
このHLパターンとは、遅延素子最終段にライズエッジが到達したときの、遅延素子n段目、およびn+1段目の出力電圧がHレベル、ならびにLレベルの組み合わせになることと定義する。
【0071】
そして、後述する図8に示した遅延検出回路15の構成により、遅延素子最終段にライズエッジが到達するたびに、遅延素子各段の電圧H、またはLレベルが記憶されることとなる。これら各段のフリップフロップに記憶された電圧の組み合わせをもとに擬似ロックとなる条件を、上述のHLパターンにより特定し、ロックはずれを検出する。
【0072】
始めに、図2を用いて各信号の動作を、正常ロックの場合、擬似ロックの場合、ロックはずれの場合に関して説明する。
【0073】
まず、正常ロック状態の場合、擬似ロック検出信号KはHレベル、ロックはずれ検出信号K3はLレベルとする。そのため、リセット期間保持カウンタ17への入力は、Hレベルに保持され、カウンタ動作は行わず、リセット信号はHレベルに保持される。
【0074】
その後、擬似ロックを検出した場合、擬似ロック検出信号K1はLレベルに変化するため、リセット期間保持カウンタへの入力はLレベルに変化しカウンタ動作を開始し、所定の期間、リセット信号をLレベルにして制御電圧ショート用スイッチ18をONさせて制御電圧CNTLを電源電圧にショートし、かつ位相周波数比較器11をリセットする。
【0075】
次に、ロックはずれの場合について説明する。
【0076】
遅延検出回路15から出力される最小遅延時間検出信号K2は、擬似ロック検出信号K1同じくHLパターンを利用して、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる条件でアクティブとする。
【0077】
たとえば、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる場合を特定するには、上述のHLパターンが全段で発生しないことを検出すればよい。これらの記憶された電圧レベルにHLパターンがない場合、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる条件と特定できる。
【0078】
そして、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる条件では、後述の理由により、例えば、8/9位相目のクロックを最小遅延時間検出信号K2としてUPパルスカウンタ19へ出力し、これをアクティブ状態とする。
【0079】
それ以外の、遅延素子の遅延時間が1周期以上の条件、すなわち正常ロック状態、または擬似ロック状態では、UPパルスカウンタ19へはクロックを出力せず、L固定レベルを出力する。
【0080】
以上より、この最小遅延時間検出信号K2がアクティブか否かで、まず遅延素子の遅延時間が1周期より小さいか否かを判定し、さらに位相周波数比較器11がUPパルスを出力しているか否かでそれぞれ、ロックはずれの状態か、または正常ロックで1周期遅れに引き込む過渡期の状態かを判定する。
【0081】
すなわち、ロックはずれの場合、UPパルスが位相周波数比較器11より出力されているため、最小遅延時間検出信号K2とUPパルスとの2NOR論理(否定論理和回路21)によりクロックがUPパルスカウンタ19に伝達し、ロックはずれ検出信号K3をHレベルに変え、リセット期間保持カウンタ17への入力は、Lレベルに変化することによってカウンタ動作を開始し、所定の期間、リセット信号をLレベルにして制御電圧CNTLを電源電圧にショートし、かつ位相周波数比較器11もリセットされる。
【0082】
また、もしUPパルスが出力されていない場合ならば、正常ロックへと引き込まれる過渡期と判定し、リセットは行わない。ただし、正常ロック状態では、理想的には、UPパルスが出力されないが、現実にはグリッチのように細いUPパルスが発生しえるので、このグリッチをマスキングするために上述の8/9位相クロックでUPパルスとの論理和をとる。
【0083】
その結果、遅延時間が最小の状態を検出したとき、ロックはずれの場合は、UPパルスカウンタ19にクロックが印加され、カウントを開始する。一方、正常ロックに引き込む過渡期の場合は、L信号固定レベルがUPパルスカウンタ19に印加されカウンタが動作しない。
【0084】
このようにして、ロックはずれの場合と正常ロックに引き込む過渡期の場合とを、カウンタ動作の有無で判別できる。なお、UPパルスカウンタ19の回数は複数回であればいずれでもよく、たとえば、8回を選択した。
【0085】
リセット動作は擬似ロックでも行うため、カウンタ制御部20のインバータ20a、および否定論理和回路20bによって、リセット期間保持カウンタ17の入力でロックはずれ検出信号K3と擬似ロック検出信号K1の論理を取っている。
【0086】
以上、ロックはずれを特定し、ロックはずれから復帰するしくみについて説明した。
【0087】
次に、ロックはずれの対策で新たに必要となった最小遅延時間検出信号を生成する遅延検出回路15の内部構成について説明する。
【0088】
まず、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる場合を特定するには、上述のHLパターンが全段で発生しないことを検出すればよい。
【0089】
図8は、遅延検出回路15の回路構成例を示す説明図である。この図8では、たとえば、遅延回路13の遅延素子が72段で構成されている場合について記載している。
【0090】
遅延検出回路15は、図示するように、フリップフロップ231〜23n、インバータ241〜24m、否定論理積回路251〜25m、論理積回路26、インバータ27、論理和回路28、および論理積回路29から構成されている。
【0091】
フリップフロップ231〜23nのデータ端子Dには、遅延回路13の遅延素子の1段目〜72段目の出力端子がそれぞれ接続されている。また、フリップフロップ231〜23nのクロック端子CKには、遅延回路13における最終段の遅延素子(72段目の遅延素子)から出力される遅延クロックが入力されるように接続されている。
【0092】
その結果、最終段である72段目の遅延素子の出力端子からライズエッジが出力した直後に直列接続された遅延素子の各段の出力電圧レベルをフリップフロップ231〜23nにそれぞれ記憶させることができる。
【0093】
フリップフロップ231〜23n-1の出力端子Qには、否定論理積回路251〜25mの一方の入力部がそれぞれ接続されている。また、インバータ241〜24mの入力部には、フリップフロップ232〜23nの出力端子Qがそれぞれ接続されており、該インバータ241〜24mの出力部には、否定論理積回路251〜25mの他方の入力部がそれぞれ接続されており、n段目のHLパターンの有無を判別する。
【0094】
否定論理積回路251〜25mの出力部には、論理積回路26に入力部がそれぞれ接続されており、該論理積回路26の出力部には、インバータ27の入力部が接続されている。
【0095】
インバータ27の出力部には、論理和回路28の一方の入力部が接続されており、論理和回路28の他方の入力部には、遅延回路13における64段目の遅延素子の出力部が接続されている。
【0096】
そして、この論理和回路28の出力部から出力される信号が、遅延検出回路15における最小遅延時間検出信号K2となる。
【0097】
また、論理積回路29のそれぞれの入力部には、否定論路積回路2527〜25mの出力部が接続されており、該論理積回路29の出力部から出力される信号が、擬似ロック検出信号K1となる。
【0098】
否定論理積回路251〜25mは、HLパターンがあればLレベル出力、なければHレベル出力となるため、HLパターンが全段で発生しないことを検出するには、論理積回路26によって該否定論理積回路251〜25mから出力される信号の論理積をとることで実現できる。
【0099】
その結果、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる場合、HLパターンが全段で発生しないので、この論理積回路26の出力はHレベルとなる。この論理積回路26の出力をインバータ27によって反転し、8/9位相クロック、ここでは64段目の遅延素子から出力されるクロックとの論理和を論理和回路28によって取ることで最小遅延時間検出信号K2を生成する。
【0100】
これにより、遅延素子の遅延時間が1周期より小さくなる場合、64段目クロックを最小遅延時間検出信号K2として出力し、1周期より大きくなる場合、H固定レベルが最小遅延時間検出信号K2として出力する。
【0101】
以上のように、遅延素子の遅延時間が1周期遅れか否かを判別する役割を、最小遅延時間検出信号K2は持つ。
【0102】
また、擬似ロック検出信号K1を生成する論理積回路29は、正常ロックでHレベル出力となり、擬似ロックではLレベル出力となるのが期待動作であり、フリップフロップ231〜23nが検出したHLパターンにより、遅延素子の遅延時間がある値以上になった場合に擬似ロックと判定している。
【0103】
判定する値としては、本実施の形態における位相周波数比較器11の場合、正常ロック領域最大値は2周期あるが、マージン確保のため、遅延時間が2周期より小さい遅延時間とした。
【0104】
たとえば、遅延時間が1.4周期以上になれば、擬似ロック領域と判定する。そのための回路構成には、図8の場合、遅延素子27段目以降でHLパターンが発生すれば擬似ロック領域と判定すればよく、図8に示すnet27〜net70(否定論理積回路2527〜25mの出力部)までの論理積を論理積回路26で取ることで実現できる。
【0105】
次に、遅延検出回路15の期待動作について説明する。
【0106】
まず、最小遅延時間検出信号K2として、8/9位相クロック、この場合、64段目の遅延素子から出力されるクロックを選択した理由を、図9をもとに説明する。
【0107】
図9(a)は、正常ロック領域内の場合におけるクロック波形であり、図9(b)は、ロックはずれの場合でのクロック波形である。
【0108】
正常ロック領域では、そのまま放置すれば1周期遅れに正常ロックしてくれる。位相周波数比較器11のUP出力は理想的にはHレベル固定であるが、実際には、図9に示したようにグリッチが発生し、これがUPパルスカウンタ19を誤動作させる恐れがある。
【0109】
このグリッチをマスキングするために最小遅延時間検出信号K2として、64段目クロックを選択した。なお、最小遅延時間検出信号K2のクロックとしては、このグリッチを防止できるタイミングのクロックであればよい。グリッチ防止ができれば他の段数のクロックでも可能である。
【0110】
このようにして、正常ロック領域内の場合は、UPパルスのグリッチを最小遅延時間検出信号K2はマスキングし、UPパルスカウンタ19へはL固定レベルを出力する。
【0111】
また、ロックはずれの場合は、UPパルスカウンタ19へは、否定論理和回路21によって最小遅延時間検出信号K2とUPパルス出力との論理をとり、その論理で生成されたクロックを入力することでカウンタ動作を開始する。
【0112】
以上説明した、遅延検出回路15において生成する最小遅延時間検出信号K2と、位相周波数比較器11のUPパルスと、否定論理和回路21によって生成されるクロックを入力とするUPパルスカウンタ19を基本構成として、ロックはずれが対策される。
【0113】
なお、この例では、UPパルスカウンタ19の入力前段は否定論理和回路21を用いて構成したが、論理和回路であってもよい。
【0114】
それにより、本実施の形態によれば、デジタル値である遅延回路13における遅延素子内の電圧レベルの組み合わせ(HLパターン)によって、ロックはずれ特有の条件を判定することができるので、DLL回路6のロックはずれを確実に排除することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、デジタルカメラなどに用いられる高精度なサンプリングクロックの生成技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施の形態によるデジタルカメラシステムなどに用いられる画像前処理部のブロック図である。
【図2】図1の画像前処理部に設けられたDLL回路における構成の一例を示したブロック図である。
【図3】図2のDLL回路に用いられる位相周波数比較器の一例を示す回路図である。
【図4】図3の位相周波数比較器における状態遷移図である。
【図5】図4の状態遷移におけるタイミングチャートである。
【図6】図2のDLL回路に設けられた遅延素子各段のクロック波形の一例を示した説明図である。
【図7】図2のDLL回路に設けられた位相周波数比較器の伝達特性を示した説明図である。
【図8】図2のDLL回路に設けられた遅延検出回路の回路構成例を示す説明図である。
【図9】図8の遅延検出回路から出力される最小遅延時間検出信号の説明図である。
【符号の説明】
【0117】
1 画像前処理部
2 CDS
3 PGA
4 A/D変換器
5 ロジック回路
6 DLL回路
7 タイミング発生器
8 撮像素子
9 DSP
10 クロック発生器
11 位相周波数比較器
12 チャージポンプ
13 遅延回路
14 ループフィルタ容量
15 遅延検出回路
16 ロックはずれ検出制御部
17 リセット期間保持カウンタ
18 制御電圧ショート用スイッチ
19 UPパルスカウンタ
20 カウンタ制御部
20a インバータ
20b 否定論理和回路
21 カウンタ入力制御部
22 カウンタリセット制御部
231〜23n フリップフロップ
241〜24m インバータ
251 〜25m 否定論理積回路
26 論理積回路
27 インバータ
28 論理和回路
29 論理積回路
K1 擬似ロック検出信号
K2 最小遅延時間検出信号
K3 ロックはずれ検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の遅延素子からなり、基本クロックを任意に遅延させて遅延クロック信号として出力する遅延回路と、
前記遅延回路が生成した遅延クロック信号と基本クロック信号との位相差を検出し、UPパルス、またはDOWNパルスを生成する位相周波数比較器と、
前記位相周波数比較器から出力されるUPパルス、またはDOWNパルスに応じて、制御電圧を発生させるチャージポンプ回路と、
前記遅延回路における前記遅延素子からそれぞれ出力される遅延クロック信号から、前記遅延素子の遅延時間が縮小し、最小値に収束するロックはずれを検出し、前記ロックはずれから正常ロックに復帰させる制御を行うロックはずれ検出制御手段とを備えたクロック発生部を有したことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記ロックはずれ検出制御手段は、
各々の前記遅延素子から出力される遅延クロック信号の電圧レベルを取り込み、前記電圧レベルの組み合わせが任意の組み合わせとなった際に最小遅延時間検出信号を出力する遅延検出回路と、
前記遅延検出回路から最小遅延時間検出信号が出力され、かつ前記位相周波数比較器からUPパルスが出力されている際に、ロックはずれと判定し、ロックはずれ検出信号を出力するロックはずれ検出部と、
前記ロックはずれ検出部から出力されたロックはずれ検出信号に基づいて、任意の期間、リセット信号を出力し、前記位相周波数比較器をリセットするリセット制御部とを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体集積回路装置において、
前記遅延検出回路が最小遅延時間検出信号を出力する前記電圧レベルの任意の組み合わせは、すべての前記遅延素子からH信号が出力される組み合わせであることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記ロックはずれ検出制御手段は、
前記リセット制御部から出力されるリセット信号に基づいて、前記チャージポンプ回路から出力される制御電圧を電源電圧にショートするスイッチ部を備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記遅延検出回路は、
前記遅延回路が発生する8/9位相のクロック信号を最小遅延時間検出信号として出力することを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−124166(P2010−124166A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295119(P2008−295119)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】