説明

圧電発振器、電子機器および圧電発振器の製造方法

【課題】データの書き込み時においてプローブを確実に電極に接触させる圧電発振器、この圧電発振器を搭載した電子機器および圧電発振器の製造方法を提供する。
【解決手段】圧電発振器10は、圧電振動片12とこの圧電振動片12を発振させる回路とをパッケージ13に搭載した圧電発振器10であって、前記回路と電気的に接続するとともに前記圧電振動片12の下方に設けられ、前記パッケージ13内部の気密封止に用いられるとともに、気密封止後に周波数調整を行う電極となる貫通孔32を備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電発振器、電子機器および圧電発振器の製造方法に係り、特に小型の圧電発振器の周波数調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器は様々な電子機器に搭載され、基準周波数源や基準信号源として利用されている。そして圧電発振器の構成は、例えばパッケージの凹陥部に圧電振動片と、この圧電振動片よりも大きいサイズの回路部品とが上下に配設され、パッケージ内部を気密封止する蓋が前記パッケージ上面に接合されたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで圧電発振器に搭載されている回路は、圧電発振器の周波数調整等のためにデータが書き込まれる場合、図8に示すように、圧電発振器1の側面に形成され前記回路と電気的に接続されている書き込み用電極2、および圧電発振器1の裏面に形成され前記回路と電気的に接続されている外部電極(不図示)に書き込み用プローブ3が接触されて、書き込みが行われる。
【0004】
また特許文献2に開示された水晶発振器は、基板上に水晶振動子や半導体集積回路等が実装されるとともに、側方に延設された基板上に前記半導体集積回路と電気的に接続する電極パターンが設けられた構成であり、外部機器の端子を電極パターンに接触させて水晶発振器の温度補償データが半導体集積回路に書き込まれた後、電極パターンが形成された延設部分の基板が切除されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−217650号公報
【特許文献2】特開平7−99413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら圧電発振器の側面に形成された書き込み電極と、裏面に形成された外部電極とにプローブを接触させる方法では、圧電発振器の異なる面に存在する電極に対して同時にプローブを接触させなければならないので、接触不良が生じ易かった。この接触不良が発生すると、データは書き込まれないので、不良となった圧電発振器は廃棄または再書き込みされ、製造コストが高くなる等の課題があった。また書き込み電極は多く設けられるので、プローブが電極に接触する面積を確保するために、パッケージを小型化できない課題があった。
【0007】
さらに特許文献2に開示された水晶発振器は、基板の延設部分を切断・削除するので書き込み用の電極数を削減できるが、延設された基板部分を切断・削除する工程が必要になるので、製造工程の増加および製造コストが高くなる等の課題がある。
【0008】
本発明は、データの書き込み時においてプローブを確実に電極に接触させる圧電発振器およびこの圧電発振器を搭載した電子機器を提供することを目的とする。
また圧電発振器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動片とこの圧電振動片を発振させる回路を有する半導体素子とをパッケージに搭載した圧電発振器であって、前記パッケージには貫通孔が形成され、前記貫通孔は導電性の封止材によって閉塞されており、前記封止材と前記半導体素子とが電気的に接続されていることを特徴とする圧電発振器。
【0010】
[適用例2]前記封止材は、前記貫通孔に形成された導電膜と導通されており、前記導電膜と前記半導体素子との間を電気的に接続する電気的接続手段が前記パッケージに形成されていることを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器。
【0011】
[適用例3]前記パッケージは内部に前記圧電振動片を収容する空間を有し、前記貫通孔が前記封止材によって閉塞されることにより前記空間が気密に封止されていることを特徴とする適用例1または2に記載の圧電発振器。
【0012】
[適用例4]前記貫通孔は、信号の入力および出力の少なくともいずれか一方を行う入出力電極であることを特徴とする適用例1ないし3のいずれかに記載の圧電発振器。
これにより貫通孔は、パッケージ内の気密封止に用いることができるとともに、書き込み用プローブが接触する電極として利用できるので、貫通孔の有効活用を図ることができる。したがってデータ書き込み用の電極を新たに設ける必要がないので、パッケージを小型化することができる。
【0013】
[適用例5]前記貫通孔は、前記パッケージに形成された外部電極と同じ面に形成されていることを特徴とする適用例1ないし4のいずれかに記載の圧電発振器。
これにより外部電極と回路に書き込みを行う電極(貫通孔)とを圧電発振器の同一面に設けることができるので、データの書き込みを行うプローブを確実に接触させることができる。したがってデータを確実に回路へ書き込むことができる。
【0014】
[適用例6]前記貫通孔は、前記外部電極に隣接して配置されたことを特徴とする適用例5に記載の圧電発振器。
圧電発振器が導電性接合材を用いて実装基板に実装される場合、前記実装基板に形成された電極パターンに外部電極と貫通孔とが電気的および機械的に接続されるので、前記導電性接合材により外部電極と貫通孔とが電気的に接続される。これにより貫通孔は、前記実装基板に形成された前記電極パターンと電気的に接続するので、前記電極パターンの電位が接地等に固定されている場合は外部からのノイズの影響を受けにくくなる。
【0015】
[適用例7]前記外部電極は、凹部を備えたことを特徴とする適用例5または6に記載の圧電発振器。
これにより凹部の側面は、プローブが接触されるときのガイドとして利用できるので、プローブを確実に外部電極へ接触させることができる。
【0016】
[適用例8]適用例1ないし7のいずれかに記載の圧電発振器を備えたことを特徴とする電子機器。
【0017】
[適用例9]圧電振動片とこの圧電振動片を発振させる回路を有する半導体素子とをパッケージに搭載した圧電発振器の製造方法であって、前記パッケージに形成された貫通孔を導電性の封止材で封止し、前記半導体素子と前記封止材とを電気的に接続する工程と、封止後の前記貫通孔を用いて、発振周波数調整用データを前記半導体素子に書き込む書き込み工程と、を備えたことを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【0018】
[適用例10]前記書き込み工程は、前記貫通孔を封止している前記導電性の封止材に対してプローブを接触させて行うことを特徴とする適用例9に記載の圧電発振器の製造方法。
これによりパッケージを封止材で気密封止した後に、貫通孔を用いて周波数調整用のデータを回路に書き込むことができるので、高精度な圧電発振器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。
【図2】圧電発振器にデータを書き込むときの説明図である。
【図3】第2の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。
【図4】貫通孔の断面図である。
【図5】圧電発振器の底面図である。
【図6】外部電極の断面図である。
【図7】ディジタル式携帯電話の概略構成図である。
【図8】従来技術に係る圧電発振器のデータ書き込み時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る圧電発振器、電子機器および圧電発振器の製造方法についての最良の実施形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る圧電発振器の説明図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は平面図を示す。なお図1(b)では、リッドを省略した形態で記載している。また図2は圧電発振器にデータを書き込むときの説明図である。第1の実施形態に係る圧電発振器10は、圧電振動片12とこの圧電振動片12を発振させる回路をパッケージ13内に収容した構成である。
【0021】
前記圧電振動片12は、圧電基板14の中央部に励振電極16が設けられるとともに、圧電基板14における一方の短辺両端のそれぞれに励振電極16と導通する接続電極18が設けられている。これらの電極16,18は、例えばスパッタや蒸着等の成膜法により金属を成膜して形成されればよい。このような圧電振動片12として、例えばATカット等の圧電振動片を用いればよい。また圧電振動片12として、屈曲振動を生じる音叉型圧電振動片や、圧電基板上に弾性表面波を励起する弾性表面波共振片を用いることもできる。
【0022】
前記回路は、集積化されてICチップ20を構成している。このICチップ20には、電圧制御型発振回路を搭載して圧電発振器を電圧制御型圧電発振器としてもよく、温度補償型発振回路を搭載して圧電発振器を温度補償型圧電発振器としてもよい。またこれらの回路を組み合わせて圧電発振器を電圧制御−温度補償型圧電発振器としてもよい。また圧電発振器10は、ICチップ20と共に抵抗やコンデンサ等を搭載してもよい。なお前記回路はICチップ20で形成された構成ばかりでなく、ディスクリートで形成された構成であってもよい。
【0023】
パッケージベース22は、平面絶縁シート24上に枠部の幅の異なる複数の枠型絶縁シート26(26a,26b)を積層させた構成である。すなわちパッケージベース22は、内部の側面を階段状に形成した凹陥部28を有している。図1では3枚のセラミックシート等の絶縁シートを積層させた構成を記載しているが、積層させる枚数はこれに限定されることはない。そして凹陥部28の底面には、圧電振動片12を実装するためのマウント電極30が形成され、このマウント電極30と圧電振動片12の接続電極18とが導電性接着剤46を介して導通される。なお圧電振動片12は、パッケージベース22に片持ち状に実装されてもよく、両持ち状に実装されてもよい。また中段の絶縁シート26a上には、ICチップ20を実装するための実装電極36が複数形成されている。この実装電極36のうち2つは前記マウント電極30と電気的に接続されている。このパッケージベース22の底面には、圧電振動片12が実装された場合、励振電極16の下方位置に貫通孔32が設けられている。この貫通孔32は、圧電振動片12(圧電発振器10)の発振周波数の調整用、パッケージ13内部の気密封止用、および気密封止後にICチップ20を用いて圧電発振器10の発振周波数調整をする場合に用いられる。この貫通孔32は、側面に導電膜34が形成されており、この開口部に封止材44が配置された後レーザ光により溶融されて、封止される。この導電膜34は、例えば次のようにして形成されればよい。すなわち貫通孔32が形成された平面絶縁シート24上に、貫通孔32を覆ってペースト状のタングステンがスクリーン印刷される。そしてタングステンが印刷された側と反対側から貫通孔32を吸引すると、タングステンは、貫通孔32を覆っていた部分が破れて貫通孔32の側面に密着される。その後タングステンを焼成し、ニッケルと金とがタングステン上に順次メッキされる。これにより導電膜34が形成される。
【0024】
このような導電膜34は、実装電極36の1つと電気的に接続されている。また、電気的接続手段38は、例えばメタライズ等により形成された配線パターンやスルーホール、ビアホール等であり、圧電振動片12とは電気的に接続されていない。なお図1では、パッケージベース22の底面に配線パターンが引き回された構成であるが、平面絶縁シートを2層構造とし、配線パターンがこの2層の間を引き回される構成であってもよい。
【0025】
またパッケージベース22の裏面に外部電極40が設けられ、この外部電極40と、導電膜34と導通していない実装電極36とが電気的に接続されている。そして外部電極40と実装電極36との電気的接続手段(不図示)は、導電膜34と直に導通していない。
またパッケージベース22の上面には、パッケージ13内を気密封止するリッド42が接合されている。
【0026】
次に、圧電発振器10の製造方法および圧電発振器10の周波数調整方法について説明する。まず圧電振動片12は、パッケージベース22のマウント電極30上に導電性接着剤46等を用いて実装される。なお前記導電性接着剤46として、例えばシリコーン系、ブタジエン系またはポリイミド系等を用いればよい。またICチップ20は、実装電極36上に導電性接合材48等を用いて実装され、圧電振動片12の上方に配置される。なお前記導電性接合材48として、例えば導電性接着剤や半田、バンプ接合材等を用いればよい。これによりICチップ20を介して外部電極40と圧電振動片12とが導通するとともに、ICチップ20と貫通孔32の側面に形成された導電膜34とが導通する。そしてパッケージベース22の上面にリッド42が接合される。このとき金属製のリッドを用いた場合にはシーム溶接等により接合され、ガラス製のリッドを用いた場合には低融点ガラス等を介して接合されればよい。
【0027】
そして圧電振動片12の励振電極16は、貫通孔32の上方に配置されるので、この貫通孔32を通してイオンやレーザ、プラズマ等を照射し、励振電極16が削られ、圧電発振器10の発振周波数が調整される。この周波数調整は、例えば圧電発振器10が真空装置内に収容されて発振された後、圧電発振器10の下方に設けられたイオンガンやプラズマガン等から上方へ向けてイオンやプラズマが照射され、所定の周波数調整量になるまで励振電極が削られることにより行われる。なお実施形態によっては圧電振動片12の励振電極16にスパッタや蒸着等の成膜法により金属を付けて、圧電発振器10の発振周波数を調整してもよい。
【0028】
次に、貫通孔32は封止材44によって封止される。具体的には、圧電発振器10が真空容器内または不活性ガス雰囲気中に納置された後、貫通孔32の開口部に封止材44が置かれる。そしてこの封止材44にレーザ光を照射し、溶融させて貫通孔32を塞ぐ。このときパッケージ13内部は真空または不活性ガス雰囲気になっており、また貫通孔32を塞ぐ封止材44は貫通孔32の側面に形成された導電膜34と導通されている。なお封止材44として、例えば金−錫、金−ゲルマニウムまたは銀ロウ等の材料からなる金属ボールを用いればよい。
【0029】
この後、圧電発振器10は、ソケット(不図示)に収められて周波数調整が行われる。前記ソケットは、外部電極40および貫通孔32の位置に対応した底面にプローブ49が配置されたものであり、圧電発振器10が前記ソケットに収められるとプローブ49が外部電極40や貫通孔32に接触する構成となっている。なお貫通孔32に接触するプローブ49aは、貫通孔32を溶融封止した封止材44に接触することになり、貫通孔32がプローブ49aのガイドの役割を果たすので、プローブ49aと封止材44とが確実に接触することが可能になる。そして圧電発振器10は、プローブ49を介して周波数調整用のデータが書き込まれる。このデータは、例えばICチップ20内に配設された容量アレイのスイッチをON/OFFさせるものであり、容量アレイのキャパシタンスをかえることにより圧電発振器10の発振周波数が調整される。またICチップ20に前記電圧制御回路が設けられている場合は電圧制御用のデータが書き込まれ、ICチップ20に前記温度補償回路が設けられている場合は温度補償用のデータが書き込まれる。また圧電発振器10がプログラマブル圧電発振器である場合には、様々な制御用のデータが書き込まれる。なお、貫通孔32の中にプローブ49aの先端部分が収容された状態でICチップ20への書き込むため、書き込み中にプローブ49aまたは圧電発振器10が揺れても、プローブ49aが貫通孔32から外れ難く、接触不良を防止できる。
この後、圧電発振器10は、気密性試験や特性検査、マーキング等が行われて完成する。
【0030】
このような圧電発振器10は、ICチップ20へデータを書き込むための電極となる貫通孔32と外部電極40とが同一面に設けられているので、データの書き込みプローブ49を発振器の一つの面において接触させることができる。したがってプローブ49を電極に確実に接触させることができるので、データの書き込み不良が発生しなくなり、書き込み不良を原因とする圧電発振器10の廃棄や再書き込み作業がなくなり、製造コストを低くすることができる。
【0031】
また貫通孔32は、パッケージ13内部の気密封止に用いられるとともに、ICチップ20のデータの書き込み用の入出力電極として用いられるので、貫通孔32の有効活用を図ることができる。そして貫通孔32は、プローブ49aが封止材44に接触するときのガイドの役割を果たすので、プローブ49aとICチップ20とを確実に接続することができる。すなわち貫通孔32の直径が小さくても確実にデータの書き込みができるので、貫通孔32はプローブ49aを接触させるために大きな面積を必要とせず、パッケージ13を小型化することができる。そしてこの圧電発振器10の製造工程が増加することはない。
【0032】
なお上述した実施形態は、小型の圧電発振器10に対して好適な形態となる。すなわち、従来技術では、圧電振動片はICチップよりもサイズが大きかったため、ICチップの上方に圧電振動片が配置された形態の圧電発振器がほとんどであった。ところが、近年、圧電発振器の搭載される電子機器が小型化されているのに伴い、圧電発振器も小型化・薄型化されているので、圧電振動片やICチップも小型化されているが、ICチップの小型化には限界があるため、圧電振動片がICチップよりも小型になってきている。このため従来の圧電発振器に比べてさらに小型化にするために、上述した実施形態の圧電発振器10のように、圧電振動片12をICチップ20の下方に配置する構成をとったのである。このときICチップ20の周波数調整だけでは、所望の圧電発振器10の発振周波数が得られないので、圧電振動片12の電極厚さを調整する必要がある。そこで圧電振動片12の励振電極16の下方に貫通孔32を設けて、励振電極16の厚さを調整できるようにするとともに、この貫通孔32を用いてパッケージ13内の気密封止とICチップ20による周波数調整をできるようにしたのである。
【0033】
また、本実施形態の圧電発振器10は、貫通孔32に適用した封止材44を溶融して気密封止を行うという構成である。この構成であれば、圧電振動片の励振電極をレーザ等によって周波数調整した後に行われる気密封止時に圧電発振器10にかかる熱は極わずかである。したがって、圧電発振器10は、気密封止時の熱により生じる発振周波数のずれを大幅に押さえることができる。
【0034】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態に係る圧電発振器10の変形例について説明するので、第1の実施形態に係る圧電発振器10と同構成の部分には同番号を付し、その説明を省略または簡略する。図3は第2の実施形態に係る圧電発振器の説明図である。第2の実施形態に係る圧電発振器50は、圧電振動片12とICチップ20とを水平方向に並べて形成した構成である。すなわち圧電発振器50のパッケージベース52は、平面絶縁シート24と枠型絶縁シート26とを積層させた2層構造であり、平面絶縁シート24上にマウント電極30と複数の実装電極36とが設けられている。このマウント電極30と2つの実装電極36とが導通されている。マウント電極30上には圧電振動片12が実装され、実装電極36上にはICチップ20が実装されている。前記圧電振動片12に設けられた励振電極の下方におけるパッケージベース52底面には、貫通孔32が設けられている。この貫通孔32に設けられた導電膜34は、実装電極36の1つと導通されている。なお導電膜34は、圧電振動片12の励振電極16と導通されていない。またパッケージベース52の上面には、リッド42が接合されている。
【0035】
そして圧電振動片12の前記励振電極にレーザを照射することによって、電極の質量をかえて圧電発振器50の発振周波数を調整した後、貫通孔32に封止材44が溶融接合されてパッケージ54の内部が気密封止される。この後、データ書き込みプローブが圧電発振器50の裏面に形成された外部電極40と貫通孔32の封止材44に接触されて、ICチップ20にデータが書き込まれる。
【0036】
このように形成された圧電発振器50は、圧電振動片12とICチップ20とを水平方向に並べて配置した構成なので、薄型にすることができる。また第1の実施形態に係る圧電発振器10と同様の効果を得ることができる。
【0037】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1,2の実施形態で説明した貫通孔の変形例について説明する。なお第1,2の実施形態と同構成の部分には同番号を付し、その説明を省略または簡略する。図4は貫通孔の断面図である。第3の実施形態で説明する貫通孔は2段構造であり、パッケージベースの最下段の平面絶縁シート24(24a,24b)は2枚の平面絶縁シート24a,24bを積層して形成されたものである。そして貫通孔56は、圧電振動片に形成された励振電極の下方に設けられ、上側の平面絶縁シート24bと下側の平面絶縁シート24aとを貫通して設けられているが、下側の平面絶縁シート24aに設けられた孔の直径が上側の平面絶縁シート24bに設けられた孔の直径よりも大きく形成されている。すなわち貫通孔56の側面は階段状に形成され、下部の開口が上部よりも広くなった構成である。このような貫通孔56には、上側の平面絶縁シート24bの側面および底面に導電膜34が形成されている。そして平面絶縁シート24の上面には、ICチップの実装電極と前記導電膜34とを導通させる配線パターン58が形成されている。
【0038】
そして開口の広い貫通孔56の下部に金属ボールや金属ペレット等の封止材44が配置された後、レーザ光が封止材44に照射される。すると封止材44は溶融されて貫通孔56を塞ぐ。
【0039】
このような貫通孔56の構成とすることにより、開口の広い下部の貫通孔56は封止材44の受部になるので、配置された封止材44がレーザ光の照射前に移動することがなくなり、確実に貫通孔56を塞ぐことができる。
【0040】
なお貫通孔56の側面に形成された導電膜34とICチップの実装電極とを電気的に接続させる配線パターン58は、上述したように上側の平面絶縁シート24bの上面に形成されるばかりでなく、上側の平面絶縁シート24bと下側の平面絶縁シート24aとの間に形成されてもよい。
またパッケージベース最下段の平面絶縁シート24は2層構造として説明したが、3枚以上の平面絶縁シートを積層させた構成であってもよい。
【0041】
次に、第4の実施形態について説明する。まず、貫通孔が設けられる位置について説明する。図5は圧電発振器の底面図である。なお図5(a)は貫通孔をパッケージベースの中央部に設けた構成であり、図5(b)は貫通孔を外部電極の近傍に設けた構成を示す。
【0042】
図5(a)に示すように、貫通孔62がパッケージベース64の中央部に設けられた場合、圧電発振器60aが半田等の導電性接合材を用いて実装基板(不図示)に実装されると、前記実装基板上に形成された電極パターン66と外部電極40とが電気的および機械的に接続され、貫通孔62が前記電極パターン66と接続することはない。
【0043】
また図5(b)に示すように、貫通孔62が複数の外部電極40のうちの1つに隣接して設けられた場合、圧電発振器60bが半田等の導電性接合材を用いて実装基板(不図示)に実装されると、外部電極40と共に貫通孔62が前記導電性接合材を介して電極パターン66と電気的および機械的に接続される。また貫通孔62が近傍に設けられていない外部電極40も電極パターン66と電気的および機械的に接続されている。なお貫通孔62が設けられる外部電極40は、接地電極(GND)や電源電圧電極(VDD)になるものであればよい。このように貫通孔62を配置することで、データの書き込み時には外部電極40と貫通孔62とを独立した電極とすることができ、圧電発振器60が前記実装基板に実装されたときには1つの外部電極40と貫通孔62とが前記導電性接合材を介して一体の電極とすることができる。したがって圧電発振器60bは、図5(a)に示すような貫通孔の配置にした圧電発振器60aに比べて外部からのノイズの影響を受けにくくなる。
【0044】
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、外部電極の変形例について説明する。図6は外部電極の断面図である。第5の実施形態で説明する外部電極70は凹陥部72を設けた構成である。具体的には、パッケージベース74の最下段にある平面絶縁シート76(76a,76b)を少なくとも2層構造とし、外部電極70が設けられる位置に対応する下側の平面絶縁シート76aに開口部78を設け、これに上側の平面絶縁シート76bを積層させ、平面絶縁シート76に凹陥部72を設けた構成である。
【0045】
そして凹陥部72の表面は、例えばタングステン等がメタライズ印刷された後、ニッケルや金等がメッキされて、外部電極70が形成される。なおニッケルは、タングステンと金との密着性を向上させるために用いられる金属である。
【0046】
このような構成の外部電極70は、データの書き込み時において、凹陥部72の側面がプローブのガイドの役割を果たすので、プローブを確実に接触させることができる。したがってデータをICチップへ確実に書き込むことができる。また、凹陥部72の中にプローブの先端部分が収容された状態でICチップへの書き込むため、書き込み中にプローブまたは圧電発振器が揺れても、プローブが凹陥部72から外れ難く、プローブの接触不良を有効に防止できる。
【0047】
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、前述した圧電発振器を電子機器に搭載した一例について説明する。図7はディジタル式携帯電話の概略構成図である。ディジタル式携帯電話100は、送受信信号の送信部102および受信部104等を有し、この送信部102および受信部104に、これらを制御する中央演算装置(CPU)106が接続されている。またCPU106は、送受信信号の変調および復調の他に表示部や情報入力のための操作キー等からなる情報の入出力部108や、RAM,ROM等からなるメモリ110の制御を行っている。このためCPU106には圧電デバイス112が取付けられ、その出力周波数をCPU106に内蔵された所定の分周回路(不図示)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。またCPU106は温度補償型圧電発振器114と接続され、この温度補償型圧電発振器114は送信部102と受信部104とに接続されている。これによりCPU106からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償型圧電発振器114により修正されて、送信部102および受信部104に与えられるようになっている。
【0048】
前述した実施形態の圧電発振器が応用されるものとして、例えば温度補償型圧電発振器114がある。また前述した実施形態の圧電発振器は、例えばCPU106を含む携帯電話に日付時刻情報を供給するリアルタイムクロックにも応用することができる。
【0049】
また前述した実施形態に係る圧電発振器は、上記のディジタル式携帯電話に限らず、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、PDA(Personal Digital[Data] Assistants:携帯情報端末)等の、圧電発振器により制御用のクロック信号を得る電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10………圧電発振器、12………圧電振動片、20………ICチップ、32………貫通孔、34………導電膜、40………外部電極、49………プローブ、50………圧電発振器、56………貫通孔、60………圧電発振器、70………外部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片とこの圧電振動片を発振させる回路を有する半導体素子とをパッケージに搭載した圧電発振器であって、
前記パッケージには貫通孔が形成され、
前記貫通孔は導電性の封止材によって閉塞されており、
前記封止材と前記半導体素子とが電気的に接続されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記封止材は、前記貫通孔に形成された導電膜と導通されており、
前記導電膜と前記半導体素子との間を電気的に接続する電気的接続手段が前記パッケージに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記パッケージは内部に前記圧電振動片を収容する空間を有し、
前記貫通孔が前記封止材によって閉塞されることにより前記空間が気密に封止されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記貫通孔は、信号の入力および出力の少なくともいずれか一方を行う入出力電極であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記パッケージに形成された外部電極と同じ面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の圧電発振器。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記外部電極に隣接して配置されたことを特徴とする請求項5に記載の圧電発振器。
【請求項7】
前記外部電極は、凹部を備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の圧電発振器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の圧電発振器を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
圧電振動片とこの圧電振動片を発振させる回路を有する半導体素子とをパッケージに搭載した圧電発振器の製造方法であって、
前記パッケージに形成された貫通孔を導電性の封止材で封止し、前記半導体素子と前記封止材とを電気的に接続する工程と、
封止後の前記貫通孔を用いて、発振周波数調整用データを前記半導体素子に書き込む書き込み工程と、
を備えたことを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項10】
前記書き込み工程は、前記貫通孔を封止している前記導電性の封止材に対してプローブを接触させて行うことを特徴とする請求項9に記載の圧電発振器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−124494(P2010−124494A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49441(P2010−49441)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2004−260145(P2004−260145)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】