基板の処理装置及び処理方法
【課題】ナノバブルを効率よく発生させて基板の処理を良好に行なえるようにした処理装置を提供することにある。
【解決手段】基板を処理液によって処理する処理装置であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを処理液に混合させるナノバブル発生手段を備え、ナノバブル発生手段は、内部に剪断室3が形成された気体剪断器2と、気体剪断器の軸方向の一端部に設けられ気体を剪断室に旋回させて供給する気体供給口6と、気体剪断器の一端部の外周面に設けられ処理液を剪断室に旋回させて供給し、気体との旋回速度の差によって気体からナノバブルを発生させる液体供給口7とによって構成されている。
【解決手段】基板を処理液によって処理する処理装置であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを処理液に混合させるナノバブル発生手段を備え、ナノバブル発生手段は、内部に剪断室3が形成された気体剪断器2と、気体剪断器の軸方向の一端部に設けられ気体を剪断室に旋回させて供給する気体供給口6と、気体剪断器の一端部の外周面に設けられ処理液を剪断室に旋回させて供給し、気体との旋回速度の差によって気体からナノバブルを発生させる液体供給口7とによって構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板などの基板を処理液によって処理するための処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などを製造する場合、半導体ウエハやガラス基板などの基板に回路パタ−ンを形成するリソグラフィプロセスがある。このリソグラフィプロセスは、周知のように上記基板にレジストを塗布し、このレジストに回路パタ−ンが形成されたマスクを介して光を照射する。
【0003】
ついで、レジストの光が照射されない部分あるいは光が照射された部分を除去し、除去された部分をエッチングするなどの一連の工程を複数回繰り返すことで、上記基板に回路パタ−ンを形成するものである。
【0004】
上記一連の各工程において、上記基板が汚染されていると回路パタ−ンを精密に形成することができなくなり、不良品の発生原因となる。したがって、基板に回路パタ−ンを形成する際には、それに先立って基板に付着残留する有機物やレジストなどを除去するなど、その処理目的に応じた処理液を用いて基板を処理するということが行われる。基板の処理に用いられる処理液としては、純水、エッチング液、剥離液、現像液など知られている。
【0005】
一方、基板を処理液で処理する場合、処理液を単に基板に噴射するだけでは処理効率に限界があるため、その処理効率を向上させるために処理液を窒素ガスなどの加圧気体で加圧して噴射させるということが行なわれている。それによって、処理液の使用量を減少させ、コストダウンを図ることが可能となる。
【0006】
最近では、処理液を加圧気体で単に加圧するだけでなく、気体を微細なバブルにして処理液中に混合させることで、上記処理液による処理効率を向上させるということが行なわれている。特許文献1には処理液中にマイクロバブルを混合させることで、処理効率の向上を図るようにした処理装置が示されている。
【0007】
すなわち、特許文献1に示された処理装置は純水及び窒素ガスが導入される混合ポンプを有する。純水と窒素ガスは気液混合ポンプにおいて混合され、旋回加速器に送られる。旋回加速器は純水と窒素ガスを加速して旋回させ、気液2層流を形成して、分散器へ送り出す。分散器は、送り込まれた気液2層流を流体力学的に剪断して窒素ガスのマイクロバブルを形成する。そして、マイクロバブルを含む純水が処理槽に送られて基板を処理するというものである。
【特許文献1】特開2006−179765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、特許文献1に示されたマイクロバブルは直径が10〜100μmである。マイクロバブルは直径が大きいために浮力を受け、液中を上昇して液面ではじけて消えてしまう。
【0009】
それに対して直径がたとえば1μm以下のナノバブルは内圧が低いため、水中で浮力を受けることがほとんどない。そのため、液中を浮遊しながら、外圧によって縮小してゆく。ナノバブルが縮小すると、その表面電荷は表面積の縮小に伴って濃縮され、それによって極めて強い電場を形成することになる。
【0010】
ナノバブルの強い電場は、このナノバブルを活性化させることになるから、ナノバブルが存在する液体に強力な影響を与えることになる。したがって、基板を処理する処理液中にナノバブルが含まれていれば、その処理液による基板の処理効果を大幅に向上させることになる。
【0011】
特許文献1に示された処理装置は、上述したように窒素ガスと純水を気液混合ポンプで混合してから旋回加速器で加速して旋回させて気液2層流を形成したのち、分散器で気液2層流を流体力学的に剪断して窒素ガスのマイクロバブルを形成するようにしている。
【0012】
つまり、特許文献1に示された処理装置では、気液混合ポンプ、旋回加速器及び分散器によって直径が10〜100μm程度のマイクロバブルを形成することはできても、旋回加速器で窒素ガスと純水を予め混合させて気液2層流体としてから、分散器によって流体力学的に剪断するようにしている。
【0013】
そのため、旋回加速器では窒素ガスが純水に溶け込んでしまうから、旋回加速器で形成された気液2層流体を分散器で流体力学的に剪断しても、マイクロバブルを効率よく発生させることができないばかりか、特許文献1にはマイクロバブルに比べて基板の処理に有効なナノバブルを発生させるということがなんら開示されていない。
【0014】
この発明は、マイクロバブルに比べて直径が小さなナノバブルを効率よく発生させて、基板の処理効率を向上させることができるようにした基板の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、基板を処理液によって処理する処理装置であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させるナノバブル発生手段を備え、
上記ナノバブル発生手段は、
内部に剪断室が形成された気体剪断器と、
上記気体剪断器の軸方向の一端部に設けられ上記気体を上記剪断室に旋回させて供給する気体供給部と、
上記気体剪断器の一端部の外周面に設けられ上記処理液を上記剪断室に旋回させて供給し、上記気体との旋回速度の差によって上記気体から上記ナノバブルを発生させる液体供給部と
によって構成されていることを特徴とする基板の処理装置にある。
【0016】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられたナノバブルを含む処理液に、上記ナノバブルを上記基板の板面で圧壊させる超音波振動を付与する超音波振動付与手段を備えていることが好ましい。
【0017】
ナノバブルを含む上記処理液を基板の上面に供給する処理液供給ノズルと、超音波振動が付与された液体を上記基板の下面に供給して上面に供給された処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる超音波付与手段を備えていることが好ましい。
【0018】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられた上記処理液を加圧する加圧手段と、この加圧手段によって加圧されたナノバブルを含む処理液を上記基板の板面に供給する供給手段を具備し、上記処理液に含まれるナノバブルは上記加圧手段による加圧力で上記基板の板面で圧壊されることが好ましい。
【0019】
上記処理液の旋回速度と上記気体の旋回速度が異なることが好ましい。
【0020】
上記気体は酸素であって、上記処理液は純水であることが好ましい。
【0021】
上記気体はオゾンであって、上記処理液は純水であることが好ましい。
【0022】
上記気体は酸素であって、上記処理液はエッチング液であることが好ましい。
【0023】
上記気体は酸素であって、上記処理液は剥離液であることが好ましい。
【0024】
上記気体は二酸化炭素であって、上記処理液は剥離液であることが好ましい。
【0025】
上記気体は窒素であって、上記処理液は剥離液であることが好ましい。
【0026】
上記気体は酸素であって、上記処理液は現像液であることが好ましい。
【0027】
上記気体は窒素であって、上記処理液はエッチング液であることが好ましい。
【0028】
この発明は、基板を処理液によって処理する処理方法であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させる工程と、
ナノバブルを含有する上記処理液によって上記基板を処理する工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法にある。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、気体剪断器の剪断室に気体と処理液を旋回させて供給し、基体と処理液との旋回速度の差によって気体を流体力学的に剪断してナノバブルを発生させる。そのため、気体が処理液に溶け込む前にナノバブルを効率よく発生させることができるから、ナノバブルを含む処理液によって基板を効率よく洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は処理装置を示す概略的構成図であって、この処理装置は処理槽1を備えている。この処理槽1内にはナノバブル発生手段を構成する気体剪断器2が配置されている。この気体剪断器2は図2に示すように内部に剪断室3が形成された中空状の本体4を有する。
【0031】
上記剪断室3は、一端が上記本体4の軸方向先端面に形成された噴射口5に連通し、他端が上記本体4の後端面に形成された気体供給口6に連通している。上記剪断室3は、上記気体供給口6に連通する後端から後端部中途部に向かって拡径した円錘台形状の後部空間部3aと、この後部空間部3aから先端に向かって徐々に縮径形成された円錘台形状の前部空間部3bとによって形成されていて、上記剪断室3の後部空間部3aと前部空間部3bの境界部分には上記本体4の外周面に開口する液体供給口7が形成されている。
【0032】
上記気体供給口6には気体旋回用口金11が設けられている。この気体旋回用口金11には一端が気体供給ポンプ12に接続された気体供給管13の他端が接続されている。この気体供給管13の中途部には第1の開閉弁14が設けられている。上記気体供給ポンプ12の吸引側は図示しない高圧ボンベなどの気体供給源に接続されている。この気体供給源は酸素を供給するようになっている。
【0033】
上記気体旋回用口金11の詳細は図示しないが、この気体旋回用口金11は内部に螺旋溝が形成されている。それによって、上記第1の開閉弁14を開けば、上記気体供給管13を通じて上記気体供給ポンプ12から供給された酸素を旋回させて上記剪断室3の後部空間部3aから前部空間部3bに向かって噴出させ、上記剪断室3内に図2に鎖線で示すように酸素の気体空洞部15を形成するようになっている。この実施の形態では、気体旋回用口金11の螺旋溝は、上記気体を上記本体4の後端側から見て反時計方向に旋回させるようになっている。気体の旋回方向を図2に矢印aで示す。
【0034】
上記液体供給口7には液体供給口金16が本体4の周方向に対して図3に示すように時計方向にθ1の角度で傾斜し、しかも図2に示すように軸線方向に対して後端側に向かってθ2の角度で傾斜して接続されている。
【0035】
上記液体供給口金16には一端が液体供給ポンプ17に接続された液体供給管18の他端が接続されている。この液体供給管18の中途部には第2の開閉弁19が設けられている。上記液体供給ポンプ17の吸引側は上記処理槽1の底部に接続されている。この処理槽1には処理液としての純水Lが収容されている。
【0036】
それによって、上記第2の開閉弁19を開けば、上記液体供給管18を通じて上記液体供給ポンプ17によって上記気体剪断器2に供給された純水Lは、上記液体供給口金16の傾斜角度θ1によって上記酸素と同様、反時計径方向に旋回し、しかも上記液体供給口金16の傾斜角度θ2によって前部空間部3b側に向かって進行する方向に供給される。
【0037】
上記気体供給ポンプ12によって酸素の供給圧力はP1に設定され、上記液体供給ポンプ17によって純水Lの供給圧力はP2に設定されている。P1<P2になるよう設定されている。それによって、上記本体4の剪断室3に供給される酸素の旋回速度V1と純水Lの旋回速度V2の関係は、V1<V2となる。
【0038】
この実施の形態では、酸素の旋回速度V1は毎秒400回転、純水Lの旋回速度V2は毎秒600回転になるよう、酸素の供給圧力P1と純水Lの供給圧力P2が設定されている。
【0039】
上記剪断室3の軸方向後端から供給された酸素は矢印aで示すように旋回する気体空洞部15となって噴射口5に向かって進行する。上記剪断室3の外周面から供給された純水Lは旋回する酸素の気体空洞部15の外周面を旋回しながら上記噴射口5に向かって進行する。純水の旋回方向を図2に矢印bで示す。
【0040】
酸素の旋回速度V1は純水Lの旋回速度V2よりも遅くなるよう設定されている。そのため、酸素と純水Lとの旋回速度の差により、酸素が純水Lによって流体力学的に剪断されるから、その剪断作用によって酸素のナノバブルが発生することになる。そして、上記剪断室3の先端の噴射口5からは酸素のナノバブルを含む純水Lが噴射されることになる。なお、酸素の旋回速度V1を純水Lの旋回速度V2よりも速くなるよう設定しても、流体力学的剪断作用によって酸素のナノバブルが発生されることができる。
【0041】
上記剪断室3に供給された純水Lは、剪断室3内における酸素の気体空洞部15の周囲を旋回することで酸素を流体力学的に剪断する。つまり、剪断室3で、酸素と純水Lが混合して純水Lに酸素が溶け込む前に、酸素を剪断してナノバブルを発生させるため、ナノバブルの発生効率を向上させることができる。
【0042】
上記剪断室3の前部空間部3bは噴射口5に向かって縮径する円錐形状に形成されている。そのため、剪断室3に供給された酸素と純水Lは前部空間部3bを進行するにつれて体積が減少するため圧力減少が制限される。
【0043】
そのため、純水Lによる酸素の流体力学的剪断作用は剪断室3の軸方向全長にわたってほぼ均一に維持されることになる。つまり、酸素と純水Lが剪断室3を進行するにつれてナノバブルの発生効率が低下するのを防止することができる。
【0044】
図1に示すように、上記噴射口5に対向する位置には、洗浄処理される基板Wが上記処理槽1内に満たされた純水Lに浸漬される状態で供給され、ほぼ垂直に起立した状態で保持される。それによって、上記噴射口5から噴射されたナノバブルを含む純水Lは上記基板Wの板面に噴射される。
なお、噴射口5から噴射される純水Lが所定の圧力で基板Wの板面に作用するよう、基板Wと上記噴射口5の間隔が設定される。また、噴射口5から噴射される純水Lを基板Wの全面に作用させるため、上記気体剪断器2は図示しない駆動機構によって基板Wの板面の上下方向及び幅方向に沿って駆動されるようになっている。
【0045】
ナノバブルは上述したように内圧が低いために液中を浮遊しながら外圧によって縮小し、表面電荷が濃縮されて極めて強い電場を形成することで活性化する。それによって、ナノバブルを含む純水Lが基板Wに噴射されれば、基板Wを効率よく確実に洗浄処理することができる。とくに、処理液が純水Lで、気体が酸素であると、酸素のナノバブルを含む純水Lは基板Wに付着した有機物を効率よく洗浄除去することができる。
【0046】
上記気体剪断器2に供給する気体と処理液としては、純水とオゾン、エッチング液と酸素ガス或いはエアー、エッチング液と窒素ガス或いは二酸化炭素ガス、剥離液と酸素ガス、剥離液と二酸化炭素ガス、剥離液と窒素ガス、現像液と酸素ガス、現像液と窒素ガスなどの組み合わせがある。
【0047】
純水とオゾンの組み合わせによれば、純水によって基板Wを単に洗浄するだけでなく、オゾンのナノバブルによって基板Wに酸化膜を強制的に生成する作用と、基板の濡れ性を向上させる作用を持たせることができる。
【0048】
エッチング液と酸素ガス或いはエアーの組み合わせによれば、エッチング液によるエッチング作用だけでなく、酸素ガス或いはエアーのナノバブルによってエッチング液によるエッチング作用によって生じた陽イオン性物質はナノバブルの表面に生じたマイナスイオンによって吸着され、陰イオン性物質は反発して基板Wへの再付着が防止される。
【0049】
しかも、ナノバブルにはメタルイオンなどを取り込む性質があるから、メタルイオンの除去を同時に行なうことができる。さらに、活性化した酸素のナノバブルによってエッチング液の基板Wに対する反応性、つまりエッチング作用を向上させることができる。
【0050】
エッチング液と窒素ガス或いは二酸化炭素ガスの組み合わせによれば、ナノバブルの表面に生じたマイナスイオンにより、エッチング作用によって生じた陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発し、基板Wへの再付着を防止する。
【0051】
ガスの種類に関係なく、ナノバブルを含むエッチング液を使用することにより、ナノバブルのブラウン運動によりエッチング液に流動性が生じ、エッチング処理の均一性を向上させるということがある。
【0052】
剥離液と酸素ガスとの組み合わせによれば、剥離液によるレジストの除去作用を有するばかりでなく、酸素ガスのナノバブルによる作用によって基板Wから剥離されたレジストがマイナス電位を帯電して基板Wに付着するのを防止する再付着防止作用を有するばかりか、活性化した酸素ガスのナノバブルによって剥離液の基板Wに対する反応性、つまり剥離作用を向上させることができる。
【0053】
剥離液と二酸化炭素の組み合わせによれば、剥離液によるレジストの除去作用を有するばかりでなく、二酸化炭素のナノバブルによって剥離液が水と反応することによって生じる強アルカリ溶液がアルミニウムなどの配線パターンにダメージを与えるのを防止する、強アルカリ化防止作用を有する。
【0054】
剥離液と窒素ガスの組み合わせによれば、剥離液によるレジストの除去作用を有するばかりでなく、窒素ガスのナノバブルによって剥離液に酸素が入り込み難くなるから、剥離液が早期に劣化するのを防止する作用を有する。
【0055】
現像液と酸素ガスの組み合わせによれば、現像液による現像作用を有するばかりでなく、酸素ガスのナノバブルによって現像液の反応性、つまり基板Wに対する現像作用を向上させることができる。
【0056】
現像液と窒素ガスの組み合わせによれば、現像液による現像作用を有するばかりでなく、窒素ガスのナノバブルによって現像液に酸素ガスが入り込み難くなるから、現像液が早期に劣化するのを防止する作用を有する。
【0057】
ガス種に関係なく、ナノバブルを含む現像液を使用することにより、ナノバブルの表面に生じたマイナスイオンによって現像された陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発し、基板Wへの再付着を防止する。
【0058】
酸素ガス、オゾンガス或いは水素ガスのナノバブルを含むアルカリ系洗剤、アンモニア水或いは水酸化カリウム水を使用することで、ナノバブルが表面にもつマイナスイオンによって基板Wから剥離された陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発して基板Wへの再付着を防止する。
【0059】
純水やイソプロピルアルコール(IPA)によって90nm以下の微細パターンを洗浄すると、洗浄不足やパターン倒れが生じるが、窒素ガスや二酸化炭素ガスのナノバブルを含む純水を使用して洗浄すれば、その純水の表面張力が低下して界面活性効果が向上するから、洗浄不足やパターン倒れを防止することができる。
【0060】
なお、上記各気体と各処理液との組み合わせで基板Wを処理する場合、処理槽1にはその組み合わせに用いられる処理液が収容される。
【0061】
上記一実施の形態では、気体剪断器の剪断室に供給する気体と処理液の圧力を、それぞれ気体供給ポンプと液体供給ポンプとによって設定するようにしたが、気体供給管と液体供給管とに圧力調整弁を設け、これらの圧力調整弁によって気体と処理液の供給圧力を調整するようにしてもよい。
【0062】
また、気体剪断器を処理槽内に配置して基板を処理するようにしたが、上記気体剪断器を、基板を回転させながら処理するスピン処理装置の回転テーブルの上方に設けられた旋回アームに取り付ける。そして、基板を回転させるとともに、旋回アームを旋回させて上記気体剪断器を基板の径方向中心部から外方に向けて移動させながら、ナノバブルを含む処理液を基板の板面に向かって噴射させることで、基板を処理するようにしてもよい。
【0063】
図4はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態では液晶表示装置に用いられる矩形状のガラス基板からなる基板Wがスピン処理装置21の回転テーブル22に保持される。この回転テーブル22はカップ体23内に収容されていて、スピンドル24を介してモータ25によって回転駆動されるようになっている。
【0064】
上記回転テーブル22はたとえば4本の支持アーム26(2本のみ図示)を有し、各支持アーム26の先端部には上記基板Wの角部の下面を支持する支持ピン27及び角部の側面に係合する一対の係合ピン28(1つのみ図示)が設けられている。
【0065】
上記回転テーブル22に保持された基板Wの上方には超音波ノズル体31が配置されている。この超音波ノズル体31には、第1の実施の形態に示したナノバブル発生手段としての気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液が供給される。超音波ノズル体31は、内部に図示しない振動板が設けられていて、この振動板は内部に供給された処理液に超音波振動を付与するようになっている。
【0066】
上記超音波ノズル体31は回転テーブル22に保持された基板Wの上方で水平方向に揺動駆動される揺動アーム32の先端に取付けられている。それによって、上記超音波ノズル体31から噴射される処理液を上記基板Wの板面全体に均一に供給できるようになっている。
【0067】
このような構成のスピン処理装置21によれば、ナノバブルを含む処理液が超音波ノズル体31を通じて基板Wに供給される。そのため、超音波ノズル体31から基板Wに向けて処理液が供給されると、その処理液に含まれたナノバブルが超音波振動によって基板Wの板面で圧壊される。
【0068】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0069】
図5はこの発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態は第2の実施の形態の変形例である。気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液は処理液供給ノズル35に供給される。この処理液供給ノズル35は、回転テーブル22に保持された基板Wの板面に回転中心に向けて処理液を供給するよう配置されている。
【0070】
一方、揺動アーム32に取付けられた超音波ノズル体31には液体として、たとえば純水が供給される。超音波ノズル体31に供給された純水は超音波振動が付与されて基板Wの板面に供給される。
【0071】
このような構成によれば、処理液供給ノズル35から基板Wの板面に供給されたナノバブルを含む処理液は、超音波ノズル体31から噴射される純水に付与された超音波振動の作用を受けることになる。
【0072】
それによって、処理液に含まれるナノバブルは、処理液が基板Wに供給されてから純水に付与された超音波振動によって圧壊されるから、その圧壊によってキャビテーションが生じ、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0073】
図6はこの発明の第4の実施の形態であって、この実施の形態はスピン処理装置21に代わり、基板Wを水平搬送処理装置36によって水平に搬送しながら処理するようにしている。水平搬送処理装置36は基板Wを矢印方向に搬送するために所定間隔で水平に配置された複数の搬送ローラ37を有する。
【0074】
搬送される基板Wの上面には、基板Wの搬送方向と直交する幅方向に沿って細長い超音波振動付与手段としての超音波ノズル体31Aが配置されている。この超音波ノズル体31Aには気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液が供給されるようになっている。
【0075】
それによって、水平搬送される基板Wの上面には超音波振動が付与されたナノバブルを含む処理液が幅方向全長にわたって供給されるから、基板Wの上面に供給された処理液中のナノバブルが基板Wの上面で圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0076】
図7は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第5の実施の形態を示す。この実施の形態は図6に示す第6の実施の形態の変形例であって、超音波ノズル体31Aからは基板W板面に向けて超音波振動が付与された液体としての純水が供給される。
【0077】
上記超音波ノズル体31Aよりも基板Wの搬送方向の上流側には処理液供給ノズルとしてのシャワーパイプ41が基板Wの幅方向に沿って配置されている。シャワーパイプ41には気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液が供給され、その処理液が上記基板Wの上面に供給されるようになっている。
【0078】
このような構成によれば、シャワーパイプ41によって基板Wの板面にナノバブルを含む処理液が供給されると、その処理液は超音波ノズル体31Aから供給された純水に付与された超音波振動の作用を受けて圧壊される。
【0079】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0080】
図8は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第6の実施の形態を示す。この実施の形態は搬送ローラ37によって水平搬送される基板Wの上面に対向して複数のシャワーパイプ41が配設されている。
【0081】
各シャワーパイプ41は、基板Wの幅方向に全長に渡る長さを有し、基板Wの搬送方向に対して所定間隔で離間している。一方、基板Wの下面の上記シャワーパイプ41と対向する部位には液体としての純水に超音波振動を付与して上記基板を下面に噴射する超音波ノズル体31Aが配置されている。
【0082】
このような構成によれば、複数のシャワーパイプ41から基板Wの上面に処理液を供給するとともに、下面には超音波ノズル体31Aから超音波振動が付与された純水を供給する。それによって、基板Wの上面に供給された処理液に含まれるナノバブルには下面に供給された純水に付与された超音波振動が作用するから、その超音波振動によって処理液に含まれるナノバブルが圧壊される。
【0083】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0084】
しかも、ナノバブルを含む処理液は基板Wの上面に供給され、処理液に含まれるナノバブルを圧壊させるために超音波振動が付与された純水は基板Wの下面に供給されるから、基板Wの上面に供給される処理液が純水によって希釈されてその処理液による基板Wの上面の処理効果が低下するのを防止することができる。
【0085】
図9は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第7の実施の形態を示す。この実施の形態では気体剪断器3によって生成されたナノバルブを含む処理液は加圧手段としての加圧ポンプ42によってたとえば0.7MPa以上の高圧に加圧される。そして、高圧に加圧された処理液は水平搬送される基板Wの上面に配設された、供給手段としての高圧シャワーパイプ43に供給される。
【0086】
ナノバブルを含む処理液は高圧シャワーパイプ43から基板Wの上面に高圧で供給される。それによって、処理液が基板Wの板面に高圧で衝突したときに、その圧力によって処理液に含まれるナノバブルが圧壊される。
【0087】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0088】
図10は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第8の実施の形態を示す。この実施の形態は図9に示す第7の実施の形態の変形例であって、基板Wの上面側には気体剪断器3によって生成されたナノバルブを含む処理液を供給する複数のシャワーパイプ44が基板Wの搬送方向に沿って所定間隔で、しかも基板Wの幅方向に沿って配置されている。なお、シャワーパイプ44は1本であってもよい。
【0089】
さらに、基板Wの上面側であって、上記シャワーパイプ44よりも基板Wの搬送方向下流側には加圧ポンプ42aによってたとえば0.7MPa以上の高圧に加圧された液体としての純水を上記基板Wに供給する高圧シャワーパイプ45が基板Wの幅方向に沿って配置されている。
【0090】
このような構成によれば、複数のシャワーパイプ44から基板Wの上面に処理液が供給されると、その処理液に含まれたナノバブルはシャワーパイプ44よりも基板Wの搬送方向の下流側に配置された高圧シャワーパイプ45から高圧で基板Wの上面に供給される純水の圧力によって崩壊される。
【0091】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が促進されることになる。
【0092】
図4〜図10に示す各実施の形態において、処理液とナノバブルを作る気体との組み合わせとしては、酸素ガスまたはオゾンガスと純水、窒素ガスまたは二酸化炭素ガスとエッチング液、エアー又は酸素ガス又はオゾンガスと剥離液、窒素ガス又は二酸化炭素ガスと剥離液等の組み合わせが考えられる。
【0093】
ナノバブルを含む気体が酸素ガスやオゾンガスで、処理液が純水の場合、キャビテーションの衝撃波によって基板Wの板面からの有機物の分解やパーティクルの離脱を促進させることができる。
【0094】
ナノバブルを含む気体が窒素ガスまたは二酸化炭素ガスで、処理液がエッチング液の場合、ナノバブルが圧壊されることで発生するキャビテーションによって衝撃波が誘起されると、その衝撃波によってエッチングで生じた残渣が除去される。同時に、ナノバブルのガスが処理液に溶け込むことによって、その窒素ガスまたは二酸化炭素ガスによって基板Wの表面が酸化するのを防止するという効果がある。
【0095】
ナノバブルを含む気体がエアーまたは酸素ガス又はオゾンガスであって、処理液が剥離液の場合、ナノバブルの表面のマイナスイオンによって剥離された陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発して基板Wへの再付着を防止する。
【0096】
しかも、ナノバブルにはメタルイオン(アルミ系、モリブデン系、タングステン系、カッパー系)などを取り込む性質があるため、メタルイオンの除去を同時に行なうことができる。
【0097】
ナノバブルを含む気体が窒素ガスまたは炭素ガスで、処理液が剥離液の場合、ナノバブルの圧壊によって発生するキャビテーションが誘起する衝撃波により、剥離液による残渣を除去することができる。さらに、気体が二酸化炭素の場合、ナノバブルが圧壊することで液の劣化を防止することができる。また、基板Wの表面の剥離液を純水でリンスする際、剥離液と純水が反応して強アルカリ性になるのを剥離液に含まれた二酸化炭素が防止する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す処理装置の概略的構成図。
【図2】気体剪断器の軸方向に沿う断面図。
【図3】気体剪断器を後端から見た側面図。
【図4】この発明の第2の実施の形態を示すスピン処理装置の概略的構成図。
【図5】この発明の第3の実施の形態を示すスピン処理装置の概略的構成図。
【図6】この発明の第4の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図7】この発明の第5の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図8】この発明の第6の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図9】この発明の第7の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図10】この発明の第8の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【符号の説明】
【0099】
2…気体剪断器、3…剪断室、4…本体、5…噴射口、6…気体供給口、7…液体供給口、11…気体旋回用口金、12…気体供給ポンプ、13…気体供給管、17…液体供給ポンプ、18…液体供給管。
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板などの基板を処理液によって処理するための処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などを製造する場合、半導体ウエハやガラス基板などの基板に回路パタ−ンを形成するリソグラフィプロセスがある。このリソグラフィプロセスは、周知のように上記基板にレジストを塗布し、このレジストに回路パタ−ンが形成されたマスクを介して光を照射する。
【0003】
ついで、レジストの光が照射されない部分あるいは光が照射された部分を除去し、除去された部分をエッチングするなどの一連の工程を複数回繰り返すことで、上記基板に回路パタ−ンを形成するものである。
【0004】
上記一連の各工程において、上記基板が汚染されていると回路パタ−ンを精密に形成することができなくなり、不良品の発生原因となる。したがって、基板に回路パタ−ンを形成する際には、それに先立って基板に付着残留する有機物やレジストなどを除去するなど、その処理目的に応じた処理液を用いて基板を処理するということが行われる。基板の処理に用いられる処理液としては、純水、エッチング液、剥離液、現像液など知られている。
【0005】
一方、基板を処理液で処理する場合、処理液を単に基板に噴射するだけでは処理効率に限界があるため、その処理効率を向上させるために処理液を窒素ガスなどの加圧気体で加圧して噴射させるということが行なわれている。それによって、処理液の使用量を減少させ、コストダウンを図ることが可能となる。
【0006】
最近では、処理液を加圧気体で単に加圧するだけでなく、気体を微細なバブルにして処理液中に混合させることで、上記処理液による処理効率を向上させるということが行なわれている。特許文献1には処理液中にマイクロバブルを混合させることで、処理効率の向上を図るようにした処理装置が示されている。
【0007】
すなわち、特許文献1に示された処理装置は純水及び窒素ガスが導入される混合ポンプを有する。純水と窒素ガスは気液混合ポンプにおいて混合され、旋回加速器に送られる。旋回加速器は純水と窒素ガスを加速して旋回させ、気液2層流を形成して、分散器へ送り出す。分散器は、送り込まれた気液2層流を流体力学的に剪断して窒素ガスのマイクロバブルを形成する。そして、マイクロバブルを含む純水が処理槽に送られて基板を処理するというものである。
【特許文献1】特開2006−179765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、特許文献1に示されたマイクロバブルは直径が10〜100μmである。マイクロバブルは直径が大きいために浮力を受け、液中を上昇して液面ではじけて消えてしまう。
【0009】
それに対して直径がたとえば1μm以下のナノバブルは内圧が低いため、水中で浮力を受けることがほとんどない。そのため、液中を浮遊しながら、外圧によって縮小してゆく。ナノバブルが縮小すると、その表面電荷は表面積の縮小に伴って濃縮され、それによって極めて強い電場を形成することになる。
【0010】
ナノバブルの強い電場は、このナノバブルを活性化させることになるから、ナノバブルが存在する液体に強力な影響を与えることになる。したがって、基板を処理する処理液中にナノバブルが含まれていれば、その処理液による基板の処理効果を大幅に向上させることになる。
【0011】
特許文献1に示された処理装置は、上述したように窒素ガスと純水を気液混合ポンプで混合してから旋回加速器で加速して旋回させて気液2層流を形成したのち、分散器で気液2層流を流体力学的に剪断して窒素ガスのマイクロバブルを形成するようにしている。
【0012】
つまり、特許文献1に示された処理装置では、気液混合ポンプ、旋回加速器及び分散器によって直径が10〜100μm程度のマイクロバブルを形成することはできても、旋回加速器で窒素ガスと純水を予め混合させて気液2層流体としてから、分散器によって流体力学的に剪断するようにしている。
【0013】
そのため、旋回加速器では窒素ガスが純水に溶け込んでしまうから、旋回加速器で形成された気液2層流体を分散器で流体力学的に剪断しても、マイクロバブルを効率よく発生させることができないばかりか、特許文献1にはマイクロバブルに比べて基板の処理に有効なナノバブルを発生させるということがなんら開示されていない。
【0014】
この発明は、マイクロバブルに比べて直径が小さなナノバブルを効率よく発生させて、基板の処理効率を向上させることができるようにした基板の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、基板を処理液によって処理する処理装置であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させるナノバブル発生手段を備え、
上記ナノバブル発生手段は、
内部に剪断室が形成された気体剪断器と、
上記気体剪断器の軸方向の一端部に設けられ上記気体を上記剪断室に旋回させて供給する気体供給部と、
上記気体剪断器の一端部の外周面に設けられ上記処理液を上記剪断室に旋回させて供給し、上記気体との旋回速度の差によって上記気体から上記ナノバブルを発生させる液体供給部と
によって構成されていることを特徴とする基板の処理装置にある。
【0016】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられたナノバブルを含む処理液に、上記ナノバブルを上記基板の板面で圧壊させる超音波振動を付与する超音波振動付与手段を備えていることが好ましい。
【0017】
ナノバブルを含む上記処理液を基板の上面に供給する処理液供給ノズルと、超音波振動が付与された液体を上記基板の下面に供給して上面に供給された処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる超音波付与手段を備えていることが好ましい。
【0018】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられた上記処理液を加圧する加圧手段と、この加圧手段によって加圧されたナノバブルを含む処理液を上記基板の板面に供給する供給手段を具備し、上記処理液に含まれるナノバブルは上記加圧手段による加圧力で上記基板の板面で圧壊されることが好ましい。
【0019】
上記処理液の旋回速度と上記気体の旋回速度が異なることが好ましい。
【0020】
上記気体は酸素であって、上記処理液は純水であることが好ましい。
【0021】
上記気体はオゾンであって、上記処理液は純水であることが好ましい。
【0022】
上記気体は酸素であって、上記処理液はエッチング液であることが好ましい。
【0023】
上記気体は酸素であって、上記処理液は剥離液であることが好ましい。
【0024】
上記気体は二酸化炭素であって、上記処理液は剥離液であることが好ましい。
【0025】
上記気体は窒素であって、上記処理液は剥離液であることが好ましい。
【0026】
上記気体は酸素であって、上記処理液は現像液であることが好ましい。
【0027】
上記気体は窒素であって、上記処理液はエッチング液であることが好ましい。
【0028】
この発明は、基板を処理液によって処理する処理方法であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させる工程と、
ナノバブルを含有する上記処理液によって上記基板を処理する工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法にある。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、気体剪断器の剪断室に気体と処理液を旋回させて供給し、基体と処理液との旋回速度の差によって気体を流体力学的に剪断してナノバブルを発生させる。そのため、気体が処理液に溶け込む前にナノバブルを効率よく発生させることができるから、ナノバブルを含む処理液によって基板を効率よく洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は処理装置を示す概略的構成図であって、この処理装置は処理槽1を備えている。この処理槽1内にはナノバブル発生手段を構成する気体剪断器2が配置されている。この気体剪断器2は図2に示すように内部に剪断室3が形成された中空状の本体4を有する。
【0031】
上記剪断室3は、一端が上記本体4の軸方向先端面に形成された噴射口5に連通し、他端が上記本体4の後端面に形成された気体供給口6に連通している。上記剪断室3は、上記気体供給口6に連通する後端から後端部中途部に向かって拡径した円錘台形状の後部空間部3aと、この後部空間部3aから先端に向かって徐々に縮径形成された円錘台形状の前部空間部3bとによって形成されていて、上記剪断室3の後部空間部3aと前部空間部3bの境界部分には上記本体4の外周面に開口する液体供給口7が形成されている。
【0032】
上記気体供給口6には気体旋回用口金11が設けられている。この気体旋回用口金11には一端が気体供給ポンプ12に接続された気体供給管13の他端が接続されている。この気体供給管13の中途部には第1の開閉弁14が設けられている。上記気体供給ポンプ12の吸引側は図示しない高圧ボンベなどの気体供給源に接続されている。この気体供給源は酸素を供給するようになっている。
【0033】
上記気体旋回用口金11の詳細は図示しないが、この気体旋回用口金11は内部に螺旋溝が形成されている。それによって、上記第1の開閉弁14を開けば、上記気体供給管13を通じて上記気体供給ポンプ12から供給された酸素を旋回させて上記剪断室3の後部空間部3aから前部空間部3bに向かって噴出させ、上記剪断室3内に図2に鎖線で示すように酸素の気体空洞部15を形成するようになっている。この実施の形態では、気体旋回用口金11の螺旋溝は、上記気体を上記本体4の後端側から見て反時計方向に旋回させるようになっている。気体の旋回方向を図2に矢印aで示す。
【0034】
上記液体供給口7には液体供給口金16が本体4の周方向に対して図3に示すように時計方向にθ1の角度で傾斜し、しかも図2に示すように軸線方向に対して後端側に向かってθ2の角度で傾斜して接続されている。
【0035】
上記液体供給口金16には一端が液体供給ポンプ17に接続された液体供給管18の他端が接続されている。この液体供給管18の中途部には第2の開閉弁19が設けられている。上記液体供給ポンプ17の吸引側は上記処理槽1の底部に接続されている。この処理槽1には処理液としての純水Lが収容されている。
【0036】
それによって、上記第2の開閉弁19を開けば、上記液体供給管18を通じて上記液体供給ポンプ17によって上記気体剪断器2に供給された純水Lは、上記液体供給口金16の傾斜角度θ1によって上記酸素と同様、反時計径方向に旋回し、しかも上記液体供給口金16の傾斜角度θ2によって前部空間部3b側に向かって進行する方向に供給される。
【0037】
上記気体供給ポンプ12によって酸素の供給圧力はP1に設定され、上記液体供給ポンプ17によって純水Lの供給圧力はP2に設定されている。P1<P2になるよう設定されている。それによって、上記本体4の剪断室3に供給される酸素の旋回速度V1と純水Lの旋回速度V2の関係は、V1<V2となる。
【0038】
この実施の形態では、酸素の旋回速度V1は毎秒400回転、純水Lの旋回速度V2は毎秒600回転になるよう、酸素の供給圧力P1と純水Lの供給圧力P2が設定されている。
【0039】
上記剪断室3の軸方向後端から供給された酸素は矢印aで示すように旋回する気体空洞部15となって噴射口5に向かって進行する。上記剪断室3の外周面から供給された純水Lは旋回する酸素の気体空洞部15の外周面を旋回しながら上記噴射口5に向かって進行する。純水の旋回方向を図2に矢印bで示す。
【0040】
酸素の旋回速度V1は純水Lの旋回速度V2よりも遅くなるよう設定されている。そのため、酸素と純水Lとの旋回速度の差により、酸素が純水Lによって流体力学的に剪断されるから、その剪断作用によって酸素のナノバブルが発生することになる。そして、上記剪断室3の先端の噴射口5からは酸素のナノバブルを含む純水Lが噴射されることになる。なお、酸素の旋回速度V1を純水Lの旋回速度V2よりも速くなるよう設定しても、流体力学的剪断作用によって酸素のナノバブルが発生されることができる。
【0041】
上記剪断室3に供給された純水Lは、剪断室3内における酸素の気体空洞部15の周囲を旋回することで酸素を流体力学的に剪断する。つまり、剪断室3で、酸素と純水Lが混合して純水Lに酸素が溶け込む前に、酸素を剪断してナノバブルを発生させるため、ナノバブルの発生効率を向上させることができる。
【0042】
上記剪断室3の前部空間部3bは噴射口5に向かって縮径する円錐形状に形成されている。そのため、剪断室3に供給された酸素と純水Lは前部空間部3bを進行するにつれて体積が減少するため圧力減少が制限される。
【0043】
そのため、純水Lによる酸素の流体力学的剪断作用は剪断室3の軸方向全長にわたってほぼ均一に維持されることになる。つまり、酸素と純水Lが剪断室3を進行するにつれてナノバブルの発生効率が低下するのを防止することができる。
【0044】
図1に示すように、上記噴射口5に対向する位置には、洗浄処理される基板Wが上記処理槽1内に満たされた純水Lに浸漬される状態で供給され、ほぼ垂直に起立した状態で保持される。それによって、上記噴射口5から噴射されたナノバブルを含む純水Lは上記基板Wの板面に噴射される。
なお、噴射口5から噴射される純水Lが所定の圧力で基板Wの板面に作用するよう、基板Wと上記噴射口5の間隔が設定される。また、噴射口5から噴射される純水Lを基板Wの全面に作用させるため、上記気体剪断器2は図示しない駆動機構によって基板Wの板面の上下方向及び幅方向に沿って駆動されるようになっている。
【0045】
ナノバブルは上述したように内圧が低いために液中を浮遊しながら外圧によって縮小し、表面電荷が濃縮されて極めて強い電場を形成することで活性化する。それによって、ナノバブルを含む純水Lが基板Wに噴射されれば、基板Wを効率よく確実に洗浄処理することができる。とくに、処理液が純水Lで、気体が酸素であると、酸素のナノバブルを含む純水Lは基板Wに付着した有機物を効率よく洗浄除去することができる。
【0046】
上記気体剪断器2に供給する気体と処理液としては、純水とオゾン、エッチング液と酸素ガス或いはエアー、エッチング液と窒素ガス或いは二酸化炭素ガス、剥離液と酸素ガス、剥離液と二酸化炭素ガス、剥離液と窒素ガス、現像液と酸素ガス、現像液と窒素ガスなどの組み合わせがある。
【0047】
純水とオゾンの組み合わせによれば、純水によって基板Wを単に洗浄するだけでなく、オゾンのナノバブルによって基板Wに酸化膜を強制的に生成する作用と、基板の濡れ性を向上させる作用を持たせることができる。
【0048】
エッチング液と酸素ガス或いはエアーの組み合わせによれば、エッチング液によるエッチング作用だけでなく、酸素ガス或いはエアーのナノバブルによってエッチング液によるエッチング作用によって生じた陽イオン性物質はナノバブルの表面に生じたマイナスイオンによって吸着され、陰イオン性物質は反発して基板Wへの再付着が防止される。
【0049】
しかも、ナノバブルにはメタルイオンなどを取り込む性質があるから、メタルイオンの除去を同時に行なうことができる。さらに、活性化した酸素のナノバブルによってエッチング液の基板Wに対する反応性、つまりエッチング作用を向上させることができる。
【0050】
エッチング液と窒素ガス或いは二酸化炭素ガスの組み合わせによれば、ナノバブルの表面に生じたマイナスイオンにより、エッチング作用によって生じた陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発し、基板Wへの再付着を防止する。
【0051】
ガスの種類に関係なく、ナノバブルを含むエッチング液を使用することにより、ナノバブルのブラウン運動によりエッチング液に流動性が生じ、エッチング処理の均一性を向上させるということがある。
【0052】
剥離液と酸素ガスとの組み合わせによれば、剥離液によるレジストの除去作用を有するばかりでなく、酸素ガスのナノバブルによる作用によって基板Wから剥離されたレジストがマイナス電位を帯電して基板Wに付着するのを防止する再付着防止作用を有するばかりか、活性化した酸素ガスのナノバブルによって剥離液の基板Wに対する反応性、つまり剥離作用を向上させることができる。
【0053】
剥離液と二酸化炭素の組み合わせによれば、剥離液によるレジストの除去作用を有するばかりでなく、二酸化炭素のナノバブルによって剥離液が水と反応することによって生じる強アルカリ溶液がアルミニウムなどの配線パターンにダメージを与えるのを防止する、強アルカリ化防止作用を有する。
【0054】
剥離液と窒素ガスの組み合わせによれば、剥離液によるレジストの除去作用を有するばかりでなく、窒素ガスのナノバブルによって剥離液に酸素が入り込み難くなるから、剥離液が早期に劣化するのを防止する作用を有する。
【0055】
現像液と酸素ガスの組み合わせによれば、現像液による現像作用を有するばかりでなく、酸素ガスのナノバブルによって現像液の反応性、つまり基板Wに対する現像作用を向上させることができる。
【0056】
現像液と窒素ガスの組み合わせによれば、現像液による現像作用を有するばかりでなく、窒素ガスのナノバブルによって現像液に酸素ガスが入り込み難くなるから、現像液が早期に劣化するのを防止する作用を有する。
【0057】
ガス種に関係なく、ナノバブルを含む現像液を使用することにより、ナノバブルの表面に生じたマイナスイオンによって現像された陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発し、基板Wへの再付着を防止する。
【0058】
酸素ガス、オゾンガス或いは水素ガスのナノバブルを含むアルカリ系洗剤、アンモニア水或いは水酸化カリウム水を使用することで、ナノバブルが表面にもつマイナスイオンによって基板Wから剥離された陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発して基板Wへの再付着を防止する。
【0059】
純水やイソプロピルアルコール(IPA)によって90nm以下の微細パターンを洗浄すると、洗浄不足やパターン倒れが生じるが、窒素ガスや二酸化炭素ガスのナノバブルを含む純水を使用して洗浄すれば、その純水の表面張力が低下して界面活性効果が向上するから、洗浄不足やパターン倒れを防止することができる。
【0060】
なお、上記各気体と各処理液との組み合わせで基板Wを処理する場合、処理槽1にはその組み合わせに用いられる処理液が収容される。
【0061】
上記一実施の形態では、気体剪断器の剪断室に供給する気体と処理液の圧力を、それぞれ気体供給ポンプと液体供給ポンプとによって設定するようにしたが、気体供給管と液体供給管とに圧力調整弁を設け、これらの圧力調整弁によって気体と処理液の供給圧力を調整するようにしてもよい。
【0062】
また、気体剪断器を処理槽内に配置して基板を処理するようにしたが、上記気体剪断器を、基板を回転させながら処理するスピン処理装置の回転テーブルの上方に設けられた旋回アームに取り付ける。そして、基板を回転させるとともに、旋回アームを旋回させて上記気体剪断器を基板の径方向中心部から外方に向けて移動させながら、ナノバブルを含む処理液を基板の板面に向かって噴射させることで、基板を処理するようにしてもよい。
【0063】
図4はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態では液晶表示装置に用いられる矩形状のガラス基板からなる基板Wがスピン処理装置21の回転テーブル22に保持される。この回転テーブル22はカップ体23内に収容されていて、スピンドル24を介してモータ25によって回転駆動されるようになっている。
【0064】
上記回転テーブル22はたとえば4本の支持アーム26(2本のみ図示)を有し、各支持アーム26の先端部には上記基板Wの角部の下面を支持する支持ピン27及び角部の側面に係合する一対の係合ピン28(1つのみ図示)が設けられている。
【0065】
上記回転テーブル22に保持された基板Wの上方には超音波ノズル体31が配置されている。この超音波ノズル体31には、第1の実施の形態に示したナノバブル発生手段としての気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液が供給される。超音波ノズル体31は、内部に図示しない振動板が設けられていて、この振動板は内部に供給された処理液に超音波振動を付与するようになっている。
【0066】
上記超音波ノズル体31は回転テーブル22に保持された基板Wの上方で水平方向に揺動駆動される揺動アーム32の先端に取付けられている。それによって、上記超音波ノズル体31から噴射される処理液を上記基板Wの板面全体に均一に供給できるようになっている。
【0067】
このような構成のスピン処理装置21によれば、ナノバブルを含む処理液が超音波ノズル体31を通じて基板Wに供給される。そのため、超音波ノズル体31から基板Wに向けて処理液が供給されると、その処理液に含まれたナノバブルが超音波振動によって基板Wの板面で圧壊される。
【0068】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0069】
図5はこの発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態は第2の実施の形態の変形例である。気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液は処理液供給ノズル35に供給される。この処理液供給ノズル35は、回転テーブル22に保持された基板Wの板面に回転中心に向けて処理液を供給するよう配置されている。
【0070】
一方、揺動アーム32に取付けられた超音波ノズル体31には液体として、たとえば純水が供給される。超音波ノズル体31に供給された純水は超音波振動が付与されて基板Wの板面に供給される。
【0071】
このような構成によれば、処理液供給ノズル35から基板Wの板面に供給されたナノバブルを含む処理液は、超音波ノズル体31から噴射される純水に付与された超音波振動の作用を受けることになる。
【0072】
それによって、処理液に含まれるナノバブルは、処理液が基板Wに供給されてから純水に付与された超音波振動によって圧壊されるから、その圧壊によってキャビテーションが生じ、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0073】
図6はこの発明の第4の実施の形態であって、この実施の形態はスピン処理装置21に代わり、基板Wを水平搬送処理装置36によって水平に搬送しながら処理するようにしている。水平搬送処理装置36は基板Wを矢印方向に搬送するために所定間隔で水平に配置された複数の搬送ローラ37を有する。
【0074】
搬送される基板Wの上面には、基板Wの搬送方向と直交する幅方向に沿って細長い超音波振動付与手段としての超音波ノズル体31Aが配置されている。この超音波ノズル体31Aには気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液が供給されるようになっている。
【0075】
それによって、水平搬送される基板Wの上面には超音波振動が付与されたナノバブルを含む処理液が幅方向全長にわたって供給されるから、基板Wの上面に供給された処理液中のナノバブルが基板Wの上面で圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0076】
図7は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第5の実施の形態を示す。この実施の形態は図6に示す第6の実施の形態の変形例であって、超音波ノズル体31Aからは基板W板面に向けて超音波振動が付与された液体としての純水が供給される。
【0077】
上記超音波ノズル体31Aよりも基板Wの搬送方向の上流側には処理液供給ノズルとしてのシャワーパイプ41が基板Wの幅方向に沿って配置されている。シャワーパイプ41には気体剪断器2によって発生させられたナノバブルを含む処理液が供給され、その処理液が上記基板Wの上面に供給されるようになっている。
【0078】
このような構成によれば、シャワーパイプ41によって基板Wの板面にナノバブルを含む処理液が供給されると、その処理液は超音波ノズル体31Aから供給された純水に付与された超音波振動の作用を受けて圧壊される。
【0079】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0080】
図8は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第6の実施の形態を示す。この実施の形態は搬送ローラ37によって水平搬送される基板Wの上面に対向して複数のシャワーパイプ41が配設されている。
【0081】
各シャワーパイプ41は、基板Wの幅方向に全長に渡る長さを有し、基板Wの搬送方向に対して所定間隔で離間している。一方、基板Wの下面の上記シャワーパイプ41と対向する部位には液体としての純水に超音波振動を付与して上記基板を下面に噴射する超音波ノズル体31Aが配置されている。
【0082】
このような構成によれば、複数のシャワーパイプ41から基板Wの上面に処理液を供給するとともに、下面には超音波ノズル体31Aから超音波振動が付与された純水を供給する。それによって、基板Wの上面に供給された処理液に含まれるナノバブルには下面に供給された純水に付与された超音波振動が作用するから、その超音波振動によって処理液に含まれるナノバブルが圧壊される。
【0083】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0084】
しかも、ナノバブルを含む処理液は基板Wの上面に供給され、処理液に含まれるナノバブルを圧壊させるために超音波振動が付与された純水は基板Wの下面に供給されるから、基板Wの上面に供給される処理液が純水によって希釈されてその処理液による基板Wの上面の処理効果が低下するのを防止することができる。
【0085】
図9は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第7の実施の形態を示す。この実施の形態では気体剪断器3によって生成されたナノバルブを含む処理液は加圧手段としての加圧ポンプ42によってたとえば0.7MPa以上の高圧に加圧される。そして、高圧に加圧された処理液は水平搬送される基板Wの上面に配設された、供給手段としての高圧シャワーパイプ43に供給される。
【0086】
ナノバブルを含む処理液は高圧シャワーパイプ43から基板Wの上面に高圧で供給される。それによって、処理液が基板Wの板面に高圧で衝突したときに、その圧力によって処理液に含まれるナノバブルが圧壊される。
【0087】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が大幅に促進されることになる。
【0088】
図10は基板Wを水平搬送処理装置36によって搬送しながら処理するこの発明の第8の実施の形態を示す。この実施の形態は図9に示す第7の実施の形態の変形例であって、基板Wの上面側には気体剪断器3によって生成されたナノバルブを含む処理液を供給する複数のシャワーパイプ44が基板Wの搬送方向に沿って所定間隔で、しかも基板Wの幅方向に沿って配置されている。なお、シャワーパイプ44は1本であってもよい。
【0089】
さらに、基板Wの上面側であって、上記シャワーパイプ44よりも基板Wの搬送方向下流側には加圧ポンプ42aによってたとえば0.7MPa以上の高圧に加圧された液体としての純水を上記基板Wに供給する高圧シャワーパイプ45が基板Wの幅方向に沿って配置されている。
【0090】
このような構成によれば、複数のシャワーパイプ44から基板Wの上面に処理液が供給されると、その処理液に含まれたナノバブルはシャワーパイプ44よりも基板Wの搬送方向の下流側に配置された高圧シャワーパイプ45から高圧で基板Wの上面に供給される純水の圧力によって崩壊される。
【0091】
ナノバブルが圧壊されると、その圧壊によってキャビテーションが発生し、そのキャビテーションによって衝撃波が誘起される。それによって、基板Wに対して行なわれる処理液の種類に応じた処理作用が促進されることになる。
【0092】
図4〜図10に示す各実施の形態において、処理液とナノバブルを作る気体との組み合わせとしては、酸素ガスまたはオゾンガスと純水、窒素ガスまたは二酸化炭素ガスとエッチング液、エアー又は酸素ガス又はオゾンガスと剥離液、窒素ガス又は二酸化炭素ガスと剥離液等の組み合わせが考えられる。
【0093】
ナノバブルを含む気体が酸素ガスやオゾンガスで、処理液が純水の場合、キャビテーションの衝撃波によって基板Wの板面からの有機物の分解やパーティクルの離脱を促進させることができる。
【0094】
ナノバブルを含む気体が窒素ガスまたは二酸化炭素ガスで、処理液がエッチング液の場合、ナノバブルが圧壊されることで発生するキャビテーションによって衝撃波が誘起されると、その衝撃波によってエッチングで生じた残渣が除去される。同時に、ナノバブルのガスが処理液に溶け込むことによって、その窒素ガスまたは二酸化炭素ガスによって基板Wの表面が酸化するのを防止するという効果がある。
【0095】
ナノバブルを含む気体がエアーまたは酸素ガス又はオゾンガスであって、処理液が剥離液の場合、ナノバブルの表面のマイナスイオンによって剥離された陽イオン性物質はナノバブルが吸着し、陰イオン性物質は反発して基板Wへの再付着を防止する。
【0096】
しかも、ナノバブルにはメタルイオン(アルミ系、モリブデン系、タングステン系、カッパー系)などを取り込む性質があるため、メタルイオンの除去を同時に行なうことができる。
【0097】
ナノバブルを含む気体が窒素ガスまたは炭素ガスで、処理液が剥離液の場合、ナノバブルの圧壊によって発生するキャビテーションが誘起する衝撃波により、剥離液による残渣を除去することができる。さらに、気体が二酸化炭素の場合、ナノバブルが圧壊することで液の劣化を防止することができる。また、基板Wの表面の剥離液を純水でリンスする際、剥離液と純水が反応して強アルカリ性になるのを剥離液に含まれた二酸化炭素が防止する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す処理装置の概略的構成図。
【図2】気体剪断器の軸方向に沿う断面図。
【図3】気体剪断器を後端から見た側面図。
【図4】この発明の第2の実施の形態を示すスピン処理装置の概略的構成図。
【図5】この発明の第3の実施の形態を示すスピン処理装置の概略的構成図。
【図6】この発明の第4の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図7】この発明の第5の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図8】この発明の第6の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図9】この発明の第7の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【図10】この発明の第8の実施の形態を示す水平搬送処理装置の概略的構成図。
【符号の説明】
【0099】
2…気体剪断器、3…剪断室、4…本体、5…噴射口、6…気体供給口、7…液体供給口、11…気体旋回用口金、12…気体供給ポンプ、13…気体供給管、17…液体供給ポンプ、18…液体供給管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液によって処理する処理装置であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させるナノバブル発生手段を備え、
上記ナノバブル発生手段は、
内部に剪断室が形成された気体剪断器と、
上記気体剪断器の軸方向の一端部に設けられ上記気体を上記剪断室に旋回させて供給する気体供給部と、
上記気体剪断器の一端部の外周面に設けられ上記処理液を上記剪断室に旋回させて供給し、上記気体との旋回速度の差によって上記気体から上記ナノバブルを発生させる液体供給部と
によって構成されていることを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられたナノバブルを含む処理液に、上記ナノバブルを上記基板の板面で圧壊させる超音波振動を付与する超音波振動付与手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
ナノバブルを含む上記処理液を基板の上面に供給する処理液供給ノズルと、超音波振動が付与された液体を上記基板の下面に供給して上面に供給された処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる超音波付与手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項4】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられた上記処理液を加圧する加圧手段と、この加圧手段によって加圧されたナノバブルを含む処理液を上記基板の板面に供給する供給手段を具備し、上記処理液に含まれるナノバブルは上記加圧手段による加圧力で上記基板の板面で圧壊されることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項5】
上記処理液の旋回速度と上記気体の旋回速度が異なることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項6】
上記気体は酸素であって、上記処理液は純水であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項7】
上記気体はオゾンであって、上記処理液は純水であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項8】
上記気体は酸素であって、上記処理液はエッチング液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項9】
上記気体は酸素であって、上記処理液は剥離液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項10】
上記気体は二酸化炭素であって、上記処理液は剥離液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項11】
上記気体は窒素であって、上記処理液は剥離液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項12】
上記気体は酸素であって、上記処理液は現像液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項13】
上記気体は窒素であって、上記処理液はエッチング液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項14】
基板を処理液によって処理する処理方法であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させる工程と、
ナノバブルを含有する上記処理液によって上記基板を処理する工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法。
【請求項1】
基板を処理液によって処理する処理装置であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させるナノバブル発生手段を備え、
上記ナノバブル発生手段は、
内部に剪断室が形成された気体剪断器と、
上記気体剪断器の軸方向の一端部に設けられ上記気体を上記剪断室に旋回させて供給する気体供給部と、
上記気体剪断器の一端部の外周面に設けられ上記処理液を上記剪断室に旋回させて供給し、上記気体との旋回速度の差によって上記気体から上記ナノバブルを発生させる液体供給部と
によって構成されていることを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられたナノバブルを含む処理液に、上記ナノバブルを上記基板の板面で圧壊させる超音波振動を付与する超音波振動付与手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
ナノバブルを含む上記処理液を基板の上面に供給する処理液供給ノズルと、超音波振動が付与された液体を上記基板の下面に供給して上面に供給された処理液に含まれるナノバブルを圧壊させる超音波付与手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項4】
上記ナノバブル発生手段によって発生させられた上記処理液を加圧する加圧手段と、この加圧手段によって加圧されたナノバブルを含む処理液を上記基板の板面に供給する供給手段を具備し、上記処理液に含まれるナノバブルは上記加圧手段による加圧力で上記基板の板面で圧壊されることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項5】
上記処理液の旋回速度と上記気体の旋回速度が異なることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項6】
上記気体は酸素であって、上記処理液は純水であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項7】
上記気体はオゾンであって、上記処理液は純水であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項8】
上記気体は酸素であって、上記処理液はエッチング液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項9】
上記気体は酸素であって、上記処理液は剥離液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項10】
上記気体は二酸化炭素であって、上記処理液は剥離液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項11】
上記気体は窒素であって、上記処理液は剥離液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項12】
上記気体は酸素であって、上記処理液は現像液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項13】
上記気体は窒素であって、上記処理液はエッチング液であることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項14】
基板を処理液によって処理する処理方法であって、
ナノバブルを発生させ、そのナノバブルを上記処理液に混合させる工程と、
ナノバブルを含有する上記処理液によって上記基板を処理する工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−198974(P2008−198974A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226126(P2007−226126)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
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