説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】パターンの間隙内部に入り込んだ液体を凝固させることでパターンを構造的に補強した状態で基板表面を物理洗浄する、基板処理方法および装置においてパーティクル除去効率をさらに高める。
【解決手段】基板表面WfにDIWの液膜11を形成し、パターンFPの間隙内部にDIWを入り込ませた後、HFE液が基板表面Wfに供給されてパターンFPの間隙内部にDIWを孤立して残留させながらパターンFP上面を含む基板表面Wf全体にHFE液の液膜12を形成している。このため、パターンFP上面に付着するパーティクルPはHFE液の液膜12中に存在し、パターンFPの間隙内部のDIWを凝固させた後も当該凝固体から完全に縁切りされる。したがって、パーティクルが凝固体に埋もれてしまうことがあった従来技術に比べて物理洗浄によりパーティクルを効率的に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)に対して洗浄処理を施す基板処理方法および基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要があり、必要に応じて基板表面に対して洗浄処理が行われる。例えば特許文献1に記載された装置においては、微細パターンの間隙内部に入り込ませたDIW(deionized Water:脱イオン水)などの純水を凍結させることで微細パターンを構造的に補強した状態で基板表面に対して物理洗浄が実行される。すなわち、特許文献1に記載の装置では、以下の工程が実行される。まず、基板の表面にDIWを供給することでパターンの間隙内部にDIWを入り込ませるとともに基板表面全体にDIWの液膜を形成する。これに続いて、DIWの供給を停止し、基板の回転数を制御することでパターンの間隙内部に入り込ませたDIWを残留させながら基板表面からDIWを除去する。そして、パターンの間隙内部に残留させられたDIW(内部残留液)を凍結させて凝固体を形成し、これによりパターンを構造的に補強する。その状態で二流体ノズルから冷却洗浄液の液滴を基板表面に供給することで、凝固体を凝固させた状態(凍結状態)を保ちながら基板表面に対して物理洗浄を施す。したがって、パターンがダメージを受けるのを防止しつつ、基板表面から汚染物質を効率良く除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−243981号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、DIWの液膜が形成された基板を回転させることでパターンの間隙内部をDIWを残留しつつ基板表面からDIWを除去しているが、パターン間隙内部のみDIWを残留させることを再現良く実行することは難しく、パターンの間隙内部のみならずパターンの上面にDIWの液膜が残ってしまうことがある。そして、パターン上面の液膜にパーティクルが存在すると、凝固体形成時にパターン上面の液膜も凍結されて当該パーティクルがDIWの凝固体(凍結膜)に埋もれてしまう。この場合、パターン上面を物理洗浄したとしても当該パーティクルを洗浄除去することは困難である。このように、パーティクル除去効率の観点から改良の余地があった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、パターンの間隙内部に入り込んだ液体を凝固させることでパターンを構造的に補強した状態で基板表面を物理洗浄する、基板処理方法および装置においてパーティクル除去効率をさらに高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、所定のパターンが形成された基板表面に対して洗浄処理を施す基板処理方法および装置であって、上記目的を達成するため、以下のように構成されている。すなわち、この発明にかかる基板処理方法は、液体が付着した基板表面に対して有機溶剤の蒸気または液体よりも凝固点が低い溶液を供給してパターンの間隙内部を除く基板表面から液体を除去して液体をパターンの間隙内部に孤立させる液体孤立工程と、パターンの間隙内部で孤立する液体を選択的に凝固させて該パターンの間隙内部に凝固体を形成する凝固体形成工程と、パターンの間隙内部に凝固体を形成した状態を保ちながら基板表面に対して物理的な洗浄作用を有する物理洗浄を施す物理洗浄工程とを備えたことを特徴としている。また、この発明にかかる基板処理装置は、液体が付着した基板表面に対して有機溶剤の蒸気または液体よりも凝固点が低い溶液を供給してパターンの間隙内部を除く基板表面から液体を除去する液体除去手段と、液体除去手段による液体除去後にパターンの間隙の残留する液体を選択的に凝固させて該パターンの間隙内部に凝固体を形成する凝固体形成手段と、パターンの間隙内部に凝固体を形成した状態を保ちながら基板表面に対して物理的な洗浄作用を有する物理洗浄を施す物理洗浄手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された発明(基板処理方法および装置)では、有機溶剤の蒸気または基板表面に付着している液体よりも低凝固点の溶液が基板表面に供給される。これによりパターンの間隙内部に液体を孤立して残留させながらパターン上面から液体が除去される。このようにパターンの間隙内部の液体が凝固されてパターンが構造的に補強される。そして、凝固体を形成した状態(補強状態)を保ちながら基板表面に対して物理的な洗浄作用を有する物理洗浄を実行しているので、パターンがダメージを受けるのを防止しつつ、基板表面から汚染物質を除去することができる。このようにパターン補強に寄与するパターンの間隙内部のみに凝固体を形成しているため、従来技術では除去するのが困難であった、パターン上面のパーティクルも確実に洗浄除去される。
【0008】
ここで、パターンの間隙内部に液体が孤立して残留させるために、(1)基板表面に付着している液体よりも凝固点が低い溶液を供給したり、(2)有機溶剤の蒸気を供給しているが、これらの作用効果は以下のとおりである。
【0009】
溶液を基板に供給した場合(1)、当該溶液で基板表面上の液体が置換されるが、当該溶液はパターンの間隙内部に容易に入り込めない。したがって、パターンの間隙内部に液体を残留させた状態でパターン上面を含む基板表面全体に溶液の液膜が形成される。つまり、液体が入り込んでいるパターンの間隙内部を覆うように溶液の液膜が基板表面全体に形成され、液体がパターンの間隙内部に孤立した状態で残留する。なお、「液体よりも凝固点が低い」という構成要件は凝固点の差を利用してパターンの間隙内部の液体のみを選択的に凝固させるためであり、例えば液体として純水が用いられているとき、溶液としてハイドロフルオロエーテルを主成分とする溶液を用いることができる。また、当該液体のみが選択的に凝固した際には溶液は液相のまま基板表面上に存在している。したがって、物理洗浄を実行することでパターン上面のパーティクルを含め基板表面上のパーティクルを溶液とともに基板表面から効率的に洗浄除去することができる。
【0010】
また、有機溶剤の蒸気を基板表面に供給した場合(2)、有機溶剤の蒸気はパターンの間隙内部に容易に入り込むことができないのに対し、パターンの間隙内部を除く基板表面に対しては広く行き渡り、基板表面を蒸発乾燥させる。このため、上記のように有機溶剤の蒸気を基板表面に供給すると、パターンの間隙内部に液体が孤立して残留しながらも当該パターン上の液体は蒸発乾燥される。そして、このように液体をパターンの間隙内部のみに孤立的に残留させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、パターンが形成された基板表面に対し、(1)基板表面に付着している液体よりも凝固点が低い溶液を供給したり、(2)有機溶剤の蒸気を供給しているので、パターンの間隙内部にのみ液体を孤立して残留させることができる。このため、従来技術では困難であったパターン上面のパーティクルをも洗浄除去することができ、洗浄効率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1の基板処理装置の動作を説明するための模式図である。
【図4】この発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図5】図4の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図6】図4の基板処理装置の動作を説明するための模式図である。
【図7】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着しているパーティクル等の汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。より具体的には、微細パターンが形成された基板表面Wfに対して後述するように一連の洗浄処理(液膜形成工程+置換工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を施す装置である。
【0014】
この基板処理装置は、基板Wに対して洗浄処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1を備え、処理チャンバー1内に基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wに対して凍結処理(凝固体形成処理)を実行するための冷却ガスを吐出する冷却ガス吐出ノズル3と、基板表面Wfに洗浄液の液滴を供給する二流体ノズル5と、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに対向配置された遮断部材7が設けられている。
【0015】
スピンチャック2は、回転支軸21がモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されており、チャック回転機構22の駆動により回転中心A0を中心に回転可能となっている。回転支軸21の上端部には、円盤状のスピンベース23が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(図2)からの動作指令に応じてチャック回転機構22を駆動させることによりスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0016】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0017】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン24を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理を行う際には、複数個のチャックピン24を押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン24は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。
【0018】
スピンチャック2の外方には、第1の回動モータ31が設けられている。第1の回動モータ31には、第1の回動軸33が接続されている。また、第1の回動軸33には、第1のアーム35が水平方向に延びるように連結され、第1のアーム35の先端に冷却ガス吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第1の回動モータ31が駆動されることで、第1のアーム35を第1の回動軸33回りに揺動させることができる。そして、第1の回動モータ31を駆動して第1のアーム35を揺動させると、冷却ガス吐出ノズル3は基板表面Wfに対向しながら基板Wの回転中心位置から基板Wの端縁位置に向かう軌跡に沿って移動する。なお、本実施形態では、特許文献1に記載の装置と同様に、基板Wの回転中心位置は基板表面Wfの上方で、かつ基板Wの回転中心A0上に設定されている。また、冷却ガス吐出ノズル3からの冷却ガスの吐出を行わない間、冷却ガス吐出ノズル3は基板Wの側方に退避した待機位置に移動可能となっている。
【0019】
冷却ガス吐出ノズル3は冷却ガス供給部61(図2)と接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガス供給部61から冷却ガスが圧送されると冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出される。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて冷却ガス吐出ノズル3が基板表面Wfに近接して対向配置されるとともに冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスが吐出されると、基板表面Wfに向けて冷却ガスが局部的に供給される。したがって、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させた状態で、制御ユニット4が基板Wを回転させながら該冷却ガス吐出ノズル3を上記移動軌跡に沿って移動させることで、冷却ガスを基板表面Wfの全面にわたって供給することができる。これにより、基板表面Wfに付着している液体(DIW)に対して凍結処理が施される。
【0020】
冷却ガス供給部61は、例えば冷却ガスの温度を液体窒素などの冷却源により冷却することで調整する。冷却ガスとしては、後述するようにしてパターンの間隙内部に液体を孤立させるために用いる溶液の凝固点よりも高く、しかも溶液供給によりパターンの間隙内部に孤立して残留させられた液体(内部残留液)の凝固点より低い温度に調整されたガス、例えば窒素ガス、酸素ガスおよび清浄なエア等を用いることができる。この実施形態では、上記溶液としてHFE(Hydrofluoroether:ハイドロフルオロエーテル)を主成分とするHFE液、より具体的には住友スリーエム株式会社製の商品名ノベック(登録商標)7100(凝固点:−135゜C)を用いるとともに、内部残留液としてDIWを用いていることから冷却ガスの温度をHFE液の凝固点よりも高く、しかもDIWの凝固点(氷点)よりも低い温度、−60゜Cに調整している。また、このように冷却ガスを用いた場合には次の作用効果を得ることができる。すなわち、冷媒としてガスを用いる場合、基板表面Wfへのガス供給前にフィルタ等を介挿することで冷却ガスに含まれる汚染物質を容易に、高効率で除去することができる。そして、こうして清浄化された冷却ガスを用いることで基板表面Wfに汚染物質が付着するのを確実に防止することができる。なお、HFE液としては、同製の商品名ノベック(登録商標)シリーズのHFE、つまりノベック7200、ノベック7300などを用いることができる。
【0021】
また、スピンチャック2の外方に第2の回動モータ51が設けられている。第2の回動モータ51には、第2の回動軸53が接続され、第2の回動軸53には、第2のアーム55が連結されている。また、第2のアーム55の先端に二流体ノズル5が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、二流体ノズル5を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。二流体ノズル5は、洗浄液とガスとを混合して生成した洗浄液の液滴を基板表面Wfに吹き付ける。なお、二流体ノズル5としては、特許文献1に記載の装置と同様に、洗浄液とガスとを空中(ノズル外部)で衝突させて洗浄液の液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルを用いるが、その洗浄液の温度を内部残留液の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)している。すなわち、二流体ノズル5に洗浄液供給部62が接続されており、この洗浄液供給部62が制御ユニット4からの動作指令に応じて洗浄液を二流体ノズル5内の洗浄液吐出ノズル(図示省略)に圧送する。なお、本実施形態では、洗浄液供給部62は洗浄液を内部残留液(DIW)よりも凝固点が低く、かつ該洗浄液の凝固点よりも高い温度に冷却(温調)している。以下においては、このように冷却された洗浄液を冷却洗浄液といい、例えばイソプロピルアルコール(凝固点:−89.5℃)が用いられる。なお、洗浄液はイソプロピルアルコール(IPA)に限定されず、エチルアルコール(凝固点:−114.5℃)、メチルアルコール(凝固点:−98℃)の各種有機溶剤成分を用いることができる。また、これら有機溶剤成分とDIWとを混合させた混合液を冷却洗浄液として用いてもよい。
【0022】
また、二流体ノズル5には、上記洗浄液供給部62のほかに、工場のユーティリティ等で構成される窒素ガス供給部63に接続されており、制御ユニット4からの動作指令に応じて不活性ガスである窒素ガスを二流体ノズル5内のガス吐出ノズル(図示省略)に圧送する。そして、洗浄液吐出ノズルから吐出された冷却洗浄液の液体流がガス吐出ノズルから吐出されたガス(窒素ガス)流と衝突し、液滴化されて洗浄用液滴が生成される。そして、洗浄用液滴による物理洗浄が実行される。ここで用いる窒素ガスについては冷却洗浄液と同様に冷却しておくのが望ましい。
【0023】
スピンチャック2の回転支軸21は中空軸からなる。回転支軸21の内部には、基板Wの裏面WbにDIWを供給するための処理液供給管25が挿通されている。処理液供給管25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面(裏面Wb)に近接する位置まで延びており、その先端には基板Wの下面中央部に向けてDIWを吐出する処理液ノズル27が設けられている。処理液供給管25は工場のユーティリティ等で構成されるDIW供給部64(図2)と接続されており、DIW供給部64からDIWの供給を受けるようになっている。
【0024】
また、スピンチャック2の上方には、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材7が設けられている。遮断部材7は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。また、遮断部材7は略円筒形状を有する支持軸71の下端部に略水平に取り付けられている。この支持軸71は水平方向に延びるアーム72により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム72には、遮断部材回転機構73と遮断部材昇降機構74が接続されている。
【0025】
遮断部材回転機構73は、制御ユニット4からの動作指令に応じて支持軸71を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構73は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材7を回転させるように構成されている。また、遮断部材昇降機構74は、制御ユニット4からの動作指令に応じて遮断部材7をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット4は遮断部材昇降機構74を作動させることで、装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図1に示す位置)に遮断部材7を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された近接位置まで遮断部材7を下降させる。
【0026】
支持軸71は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材7の開口に連通したガス供給路75が挿通されている。ガス供給路75は、窒素ガス供給部63と接続されており、窒素ガス供給部63から窒素ガスが供給される。この実施形態では、基板Wに対する乾燥時にガス供給路75から遮断部材7と基板表面Wfとの間に形成される空間に窒素ガスを供給する。また、ガス供給路75の内部には、遮断部材7の開口に連通した液供給管76が挿通されており、液供給管76の下端にノズル77が結合されている。液供給管76はDIW供給部64およびHFE液供給部65に接続されている。そして、DIW供給部64からDIWが供給されることでノズル77からDIWが、またHFE液供給部65からHFE液が供給されることでノズル77からHFE液が基板表面Wfに向けて吐出される。
【0027】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図3を参照しつつ説明する。図3は図1の基板処理装置の動作を説明するための模式図である。この装置では、未処理の基板Wが処理チャンバー1内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して基板Wの表面Wfに対して一連の洗浄処理(液膜形成工程+置換工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を実行する。ここで、基板表面Wfには微細パターンFPが形成されている。つまり、基板表面Wfがパターン形成面になっている。そこで、この実施形態では、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持される。なお、このとき遮断部材7は離間位置にあり、基板Wとの干渉を防止している。
【0028】
スピンチャック2に未処理の基板Wが保持されると、遮断部材7が近接位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。これにより、基板表面Wfが遮断部材7の基板対向面に近接した状態で覆われ、基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル77からDIWを基板表面Wfに供給する。これにより、図3(a)に示すように基板表面Wfに供給されたDIWに遠心力を作用させてDIWを均一に広げて基板表面Wfの全面に液膜(水膜)11を形成する(液膜形成工程)。このとき、DIWの流動によりパターンFPの間隙内部にDIWが入り込む。つまり、基板表面Wf上のDIWを流動させてパターンFPの間隙内部にまでDIWを入り込ませるように基板Wの回転速度が設定される。
【0029】
続いて、DIWの供給を停止し、スピンチャック2に保持された基板Wを回転させながらHFE液の供給を開始する。このようにHFE液が基板表面Wfに供給されることで液膜を構成するDIWが基板表面Wfから基板Wの外側に押し出されて基板表面Wf全体でHFE液に置換される。ただし、半導体ウエハなどの基板Wに形成されるパターンFPは微細であり、HFE液はパターンFPの間隙内部に容易に入り込めない。また、HFEとDIWは混ざりにくい。このため、パターンFPの間隙内部にのみDIWを残留させた状態でパターンFP上面を含む基板表面Wf全体にHFE液の液膜12が形成される(図3(b))。つまり、DIWが入り込んでいるパターンFPの間隙内部を覆うようにHFE液の液膜12が基板表面Wf全体に形成され、DIWがパターンFPの間隙内部に孤立した状態で残留する。また、パターンFP上面に付着していたパーティクルPはHFE液の液膜12中に存在することとなり、DIWから完全に切り離された状態となる。このように第1実施形態で実行される置換工程が本発明の「液体孤立工程」に相当しており、HFE液供給部65、液供給管76およびノズル77が本発明の「液体除去手段」として機能している。
【0030】
次に、パターンFPの間隙内部にDIWを孤立的に残留させながらパターンFPの上面を含む基板表面Wf全体がHFE液の液膜12で覆われた基板Wに対して凍結処理(凝固体形成処理)を実行する。すなわち、パターンFPの間隙をHFE液の液膜12で塞いで当該間隙内部にDIWを閉じ込めたまま、制御ユニット4は遮断部材7を離間位置に配置させるとともに、冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を待機位置から供給開始位置、つまり基板Wの回転中心位置に移動させる。そして、回転駆動されている基板Wの表面Wfに向けて冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を徐々に基板Wの端縁位置に向けて移動させていく。この第1実施形態では冷却ガスの温度は上記したように−60゜C程度に設定されているため、冷却ガス吐出ノズル3がいずれの位置に移動してきたとしてもHFE液(凝固点−135゜C)は凍結されることなく液相を維持している。しかしながら、冷却ガス吐出ノズル3がパターンFPの上方を移動してくると、パターンFP上のHFE液については上記したように不凍であるのに対し、パターンFPの間隙内部に残留しているDIWは凍結する(図3(c))。このようにしてHFE液を液相状態に維持させたままパターンFPの間隙内部に入り込んだDIWを凝固させて基板表面Wfの全面でパターンFPの間隙内部に凝固体13が形成される(凝固体形成工程)。このため、凝固体13によってパターンFPが構造的に補強された状態となる。つまり、パターンFPと凝固体13とが一体となった塊(固形物)と見做せる状態となる。このように、この実施形態では、冷却ガス吐出ノズル3が本発明の「凝固体形成手段」として機能する。
【0031】
そして、凝固体13を形成した状態(凍結状態)を保ちながら基板表面Wfに対して物理洗浄処理を実行する(物理洗浄工程)。すなわち、図3(d)に示すように制御ユニット4は二流体ノズル5を回転する基板Wの上方で揺動させながら冷却洗浄液の液滴を基板表面Wfに吹き付ける。これにより、冷却洗浄液の液滴が基板表面Wfに付着するパーティクルPに衝突して液滴が有する運動エネルギーによってパーティクルPが物理的に除去(物理洗浄)される。ここで、冷却洗浄液は内部残留液(DIW)の凝固点よりも低い温度に冷却(温調)されているので、パターンFPの間隙内部に形成された凝固体13を凝固させた状態(凍結状態)のまま洗浄を行うことができる。しかも、パーティクルPはHFE液の液膜12中に存在することから液滴との衝突によりHFE液とともに効率良く基板表面Wfから除去される。このため、凝固体13によってパターンFPを構造的に補強した状態でパターンFPの間隙内部を除く基板表面領域からパーティクルPが除去される。このように、この実施形態では、二流体ノズル5が本発明の「物理洗浄手段」として機能している。
【0032】
こうして、所定時間の物理洗浄処理が完了すると、制御ユニット4は遮断部材7を近接位置に配置させるとともに、スピンチャック2とともに遮断部材7を回転させる。また、基板Wとスピンベース23および基板Wと遮断部材7との間の空間に窒素ガスを供給し、基板Wの周辺雰囲気を不活性ガス雰囲気とするとともに、ノズル77および処理液ノズル27から凝固体除去液としてDIWをそれぞれ、回転駆動されている基板Wの表面Wfに供給する(図3(e))。これにより、凝固体13が融解して基板表面Wfから除去される(凝固体除去工程)。また、パターンFPの間隙内部に付着する汚染物質が凝固体13とともに基板表面Wfから除去される。ここで、パターンFPの間隙内部に付着する汚染物質はパターン表面に対する付着力が低下した状態あるいはパターン表面から脱離した状態にあることから凝固体13を基板表面Wfから除去することによって基板表面Wfから汚染物質が容易に除去される。すなわち、凍結処理の実行により内部残留液(DIW)が凍結(凝固)して体積膨張することでパターン表面と汚染物質との間の付着力が弱められ、あるいは汚染物質がパターンから脱離する。このため、凝固体除去処理において、凝固体13を除去することで凝固体13とともにパターンFPの間隙内部の汚染物質を基板表面Wfから効率良く除去することができる。
【0033】
凝固体除去処理が完了すると、基板Wの本乾燥処理(仕上げ乾燥)が実行される。すなわち、図3(f)に示すように、DIWの供給を停止し、基板Wおよび遮断部材7を回転させることによって基板Wを乾燥させる。なお、ここでは、パターンFPの間隙内部に付着するDIWをDIWよりも表面張力が低いIPAなどの低表面張力液に置換した上で基板Wの回転乾燥(スピンドライ)を行うことが好ましい。これにより、基板乾燥時にパターンFPが倒壊するのを効果的に防止することができる。基板Wの乾燥処理後、基板Wおよび遮断部材7の回転を停止するとともに基板Wへの窒素ガスの供給を停止する。その後、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される。
【0034】
以上のように、第1実施形態によれば、パターンFPの間隙内部に残留させたDIW(内部残留液)を凍結させて凝固体13を形成してパターンFPを構造的に補強した状態で物理洗浄を実行しているので、従来技術と同様にパターンFPがダメージを受けるのを防止するのを防止することができるが、パターンFPの間隙内部のみにDIWを孤立して残留させることができるため、パーティクル除去効率をさらに高めることができる。すなわち、第1実施形態では基板表面WfにDIWの液膜11を形成し、パターンFPの間隙内部にDIWを入り込ませた後、HFE液が基板表面Wfに供給されてパターンFPの間隙内部にDIWを孤立して残留させながらパターンFP上面を含む基板表面Wf全体にHFE液の液膜12を形成している。このため、パターンFP以外の基板表面Wfに付着するパーティクルはもちろんのことパターンFP上面に付着するパーティクルPもHFE液の液膜12中に存在することとなり、パターンFPの間隙内部のDIWを凝固させた後も当該凝固体から完全に縁切りされている。したがって、パーティクルが凝固体に埋もれてしまうことがあった従来技術に比べて物理洗浄によりパーティクルを効率的に除去することができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4はこの発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。また、図5は図4の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、パターンFPの間隙内部のみにDIWを孤立して残留させるために有機溶剤の蒸気を用いている点であり、その他の構成および動作は第1実施形態と同様である。したがって、以下の説明においては、相違点を中心に説明する。
【0036】
第2実施形態では、図4に示すように、液供給管76へのHFE液供給が行われない代わりに、イソプロピルアルコールの蒸気(以下「IPAベーパー」という)を吐出するIPAベーパー吐出ノズル8が設けられている。この吐出ノズル8を駆動するための駆動源としてスピンチャック2の外方に第3の回動モータ31が設けられている。第3の回動モータ81には、第3の回動軸83が接続されている。また、第3の回動軸83には、第3のアーム85が水平方向に延びるように連結され、第3のアーム85の先端にIPAベーパー吐出ノズル8が取り付けられている。そして、制御ユニット4からの動作指令に応じて第3の回動モータ81が駆動されることで、第3のアーム85を第3の回動軸83回りに揺動させることができる。そして、第3の回動モータ81を駆動して第3のアーム85を揺動させると、IPAベーパー吐出ノズル8は基板表面Wfに対向しながら基板Wの回転中心位置から基板Wの端縁位置に向かう軌跡に沿って移動する。そして、当該移動中にIPAベーパー供給部66からIPAベーパーがノズル8に圧送されて当該ノズル8からIPAベーパーが基板表面Wfに供給される。なお、IPAベーパー吐出ノズル8からのIPAベーパーの吐出を行わない間、IPAベーパー吐出ノズル8は基板Wの側方に退避した待機位置に移動可能となっている。
【0037】
次に、上記のように構成された基板処理装置における洗浄処理動作について図6を参照しつつ説明する。図6は図4の基板処理装置の動作を説明するための模式図である。この装置では、未処理の基板Wが処理チャンバー1内に搬入されると、制御ユニット4が装置各部を制御して基板Wの表面Wfに対して一連の洗浄処理(液膜形成工程+粗乾燥工程+凝固体形成工程+物理洗浄工程+リンス工程+本乾燥工程)を実行する。この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wが処理チャンバー1内に搬入され、スピンチャック2に保持された後、遮断部材7が近接位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。そして、制御ユニット4はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2を回転させるとともに、ノズル77からDIWを基板表面Wfに供給して基板表面Wfの全面に液膜(水膜)11を形成する(液膜形成工程)。
【0038】
続いて、DIWの供給を停止し、スピンチャック2に保持された基板Wを回転させながらIPAベーパーの供給を開始する。この点が第1実施形態と大きく異なる点である。このようにIPAベーパーを基板表面Wfに供給した場合、上記したように半導体ウエハなどの基板Wに形成されるパターンFPは微細であるため、IPAベーパーはパターンFPの間隙内部に容易に入り込むことができない。これに対し、パターンFPの間隙内部を除く基板表面Wfに対しては広く行き渡り、基板表面Wfを蒸発乾燥させる。このため、上記のように基板表面WfへのIPAベーパーの供給により、図6(b)に示すように、パターンFPの間隙内部にDIWが孤立して残留しながらもパターンFP以外の基板表面Wf上に存在していたDIWはもとより当該パターンFP上のDIWも確実に蒸発乾燥される(粗乾燥工程)。その結果、DIWをパターンFPの間隙内部のみ孤立的に残留させることができる。このため、パターンFPの間隙内部にDIWを残して基板表面Wfに付着するパーティクルPを確実に露出させることができる。このように第2実施形態で実行される粗乾燥工程が本発明の「液体孤立工程」に相当しており、IPAベーパー供給部66およびノズル8が本発明の「液体除去手段」として機能している。なお、第2実施形態では「有機溶剤の蒸気」としてIPAベーパーを用いているが、他の有機溶剤の蒸気、例えばエチルアルコールやメチルアルコールなどのアルコールの蒸気を用いることも可能である。
【0039】
その後、第1実施形態と同様に、図6(c)に示すように、パターンFPの間隙内部にDIWを孤立的に残留させながらパターンFPの上面を含む基板表面Wf全体が乾燥されている基板Wに対して凍結処理(凝固体形成処理)を実行する。ここでも、第1実施形態と同様に、遮断部材7を離間位置に配置させた状態で冷却ガス吐出ノズル3から冷却ガスを吐出させながら冷却ガス吐出ノズル3を基板表面Wfに沿って移動させることでパターンFPの間隙内部に残留しているDIWを凍結させる(図6(c):凝固体形成工程)。また、これに続いて、第1実施形態と同様に、物理洗浄工程、凝固体除去工程および本乾燥工程を順次実行する。
【0040】
以上のように、第2実施形態によれば、液体孤立工程において基板表面Wfに供給する具体的な供給物質が第1実施形態と異なるものの、第1実施形態と同様にパターンFPの間隙内部のみにDIWを孤立して残留させることができる。このため、パターンFPの間隙内部のDIWを凝固させた後も当該凝固体から完全に縁切りされており、パーティクルPが凝固体に埋もれてしまうことがあった従来技術に比べて物理洗浄によりパーティクルPを効率的に除去することができる。もちろん、第2実施形態においても、第1実施形態と同様にパターンFPの間隙内部に残留させたDIW(内部残留液)を凍結させて凝固体13を形成してパターンFPを構造的に補強した状態で物理洗浄を実行しているので、パターンFPがダメージを受けるのを防止するのを防止することができることは言うまでもない。
【0041】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、洗浄液とガスとをノズル外部(空中)で混合させて洗浄液の液滴を生成する、いわゆる外部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行しているが、これに限定されず、洗浄液とガスとをノズル内部で混合させて洗浄液の液滴を生成する、いわゆる内部混合型の二流体ノズルを用いて液滴洗浄を実行するようにしてもよい。
【0042】
また、上記した二流体ノズルによる物理洗浄以外の物理洗浄を用いてもよい。例えば本発明で用いられる物理洗浄は、これらの物理洗浄に限らず、パターンFPの間隙内部に形成した凝固体13が融解しない条件で洗浄できる限り任意である。例えば、基板表面Wfに対してブラシ等を接触させて基板Wを洗浄するブラシ洗浄、基板表面Wfに向けて洗浄液を高圧で噴射させて基板Wを洗浄する高圧ジェット洗浄、微小な氷粒を基板表面Wfに衝突させて基板Wを洗浄するアイススクラバ、または冷却により固化したドライアイス(CO2)、氷(H2O)あるいはアルゴン(Ar)などの粒子を高速に吹き付けて基板表面Wfを洗浄するエアロゾル洗浄または超音波ノズルを用いた超音波洗浄を用いることができる。特に、アイススクラバおよびエアロゾル洗浄は比較的低温で実行することが可能であるため、内部残留液を凍結により凝固させる場合には凝固体13を形成した状態(凝固した状態)を保ちながら物理洗浄を行うのに有効である。
【0043】
また、図7に示すように過冷却DIWを回転している基板の表面Wfに供給しながら過冷却DIWに冷却ガスを噴射し、当該過冷却DIW中に氷塊を発生させてもよい。以下、図7を参照しつつ第3実施形態の特徴について説明する。
【0044】
図7は本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態では、二流体ノズル5の代わりに、二重管構造のノズル9が設けられており、制御ユニット4からの動作指令に応じて第2の回動モータ51が駆動されることで、ノズル9を第2の回動軸53回りに揺動させることができる。このノズル9では、外管91内に内管92が挿通されており、内管92の先端部が基板表面Wfに向けて開口された吐出口921となっており、その周囲を取り囲むように外管91の先端部が吐出口911となっている。これらのうち内管92の後端部にはDIWの凝固点よりも低いの温度に過冷却された過冷却DIWを供給する過冷却DIW供給部(図示省略)と接続されて過冷却DIW供給部から圧送されてきた過冷却DIWを基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。また、外管91の後端部には冷却ガス供給部61と接続されて冷却ガス供給部61から圧送されてきた過冷却DIWの温度よりも低い、例えば−60゜C程度の冷却ガスを基板表面Wfに向けて吐出可能となっている。
【0045】
このように過冷却DIWを回転している基板Wの表面Wfに供給すると、パターンFPの間隙内部に形成された凝固体13を凝固させた状態(凍結状態)のまま基板表面Wfの洗浄を行うことができるが、次のようなメカニズムにより洗浄効率を高めることができる。つまり、ノズル9から基板Wに向けて吐出された過冷却DIWは基板Wに到達する前後に冷却ガスによりさらに冷やされて局所的に凍結し、図7に菱形印で示すように微小な氷塊Cが過冷却DIW液中に生成する。氷塊Cを含む過冷却DIWは基板Wの回転に起因して生じる遠心力によって中心から端部に向けて基板表面Wfに沿って流れる。このとき、過冷却DIW中の氷塊Cが基板表面Wfに付着したパーティクルPと衝突し、これを基板表面Wfから遊離させる。また、基板表面Wfから遊離したパーティクルPは過冷却DIWの流れによって基板端部方向へ流され、最終的には端部において振り切られる過冷却DIW液滴とともに基板表面Wfから取り除かれる。なお、この第3実施形態では過冷却DIWを用いているが、過冷却DIW以外にDIWにIPA等の凝固点降下物質を混入した溶液を使用しても同様の作用効果が得られる。
【0046】
また、上記第3実施形態では、過冷却DIW等に冷却ガスを供給することで発生させた氷塊Cにより物理洗浄しているが、過冷却DIW等やDIWの凝固点よりも低い温度に冷却しした炭酸水などに超音波ノズルを通して基板表面Wfに供給して物理洗浄を行ってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、パターンFPの間隙内部に残留させる液体、つまり内部残留液としてDIWを使用しているが、これに限定されない。例えば内部残留液としてDIWよりも凝固点の高い液体を用いるようにしてもよい。例えば内部残留液として第3ブチルアルコール(凝固点:25.4゜C)を用いたり、第3ブチルアルコールとDIWとを混合させた混合液を用いるようにしてもよい。このように第3ブチルアルコールにDIWを混合させることで混合液の凝固点を第3ブチルアルコールの凝固点よりも低下させることができる。これにより、第3ブチルアルコールとDIWとの混合比率を変えることで例えば20℃前後で混合液を凝固(または混合液を凝固させた凝固体を融解)させるように調整することができ、使い勝手を向上させることができる。
【0048】
さらに、上記実施形態では、冷却ガスを用いてパターンFPの間隙内部に残留させる液体(内部残留液)を凝固しているが、凝固方法がこれに限定されるものではなく、例えば特許文献1にも記載されているように冷却プレートを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に対して洗浄処理を施す基板処理方法および基板処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
3…冷却ガス吐出ノズル(凝固体形成手段)
5…二流体ノズル(物理洗浄手段)
8…IPAベーパー吐出ノズル(液体除去手段)
9…ノズル(物理洗浄手段)
13…凝固体
65…HFE液供給部(液体除去手段)
66…IPAベーパー供給部(液体除去手段)
77…ノズル(液体除去手段)
91…外管
92…内管
FP…パターン
P…パーティクル
Wf...基板表面
W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが形成された基板表面に対して洗浄処理を施す基板処理方法において、
液体が付着した前記基板表面に対して有機溶剤の蒸気または前記液体よりも凝固点が低い溶液を供給して前記パターンの間隙内部を除く前記基板表面から前記液体を除去して前記液体を前記パターンの間隙内部に孤立させる液体孤立工程と、
前記パターンの間隙内部で孤立する前記液体を選択的に凝固させて該パターンの間隙内部に凝固体を形成する凝固体形成工程と、
前記パターンの間隙内部に前記凝固体を形成した状態を保ちながら前記基板表面に対して物理的な洗浄作用を有する物理洗浄を施す物理洗浄工程と
を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記液体孤立工程は、前記パターンの間隙内部を除く前記基板表面上の前記液体を前記溶液で置換する工程であり、
前記凝固体形成工程は、前記液体の凝固点よりも低く、しかも前記溶液の凝固点よりも高い温度に前記基板を冷却して前記溶液を液相に保ちながら前記液体を凝固させる工程である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記液体は純水であり、前記溶液はハイドロフルオロエーテルを主成分とする溶液である請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記液体孤立工程は、前記パターンの間隙内部を除く前記基板表面上の前記液体を前記蒸気供給により前記基板表面から蒸発乾燥する工程であり、
前記凝固体形成工程は、前記液体の凝固点よりも低い温度に前記基板を冷却して前記液体を凝固させる工程である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記液体は純水であり、前記蒸気はイソプロピルアルコールの蒸気である請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
所定のパターンが形成された基板表面に対して洗浄処理を施す基板処理装置において、
液体が付着した前記基板表面に対して有機溶剤の蒸気または前記液体よりも凝固点が低い溶液を供給して前記パターンの間隙内部を除く前記基板表面から前記液体を除去する液体除去手段と、
前記液体除去手段による液体除去後に前記パターンの間隙の残留する前記液体を選択的に凝固させて該パターンの間隙内部に凝固体を形成する凝固体形成手段と、
前記パターンの間隙内部に前記凝固体を形成した状態を保ちながら前記基板表面に対して物理的な洗浄作用を有する物理洗浄を施す物理洗浄手段と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−186901(P2010−186901A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30690(P2009−30690)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】