説明

基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体

【課題】被処理基板への影響を低減しつつ良好な洗浄、乾燥処理を実行可能な基板処理装置等を提供する。
【解決手段】基板処理装置2に設けられた洗浄槽221では、洗浄液供給部から洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板Wを縦向きの状態で浸漬して洗浄が行われ、この洗浄槽221の上方領域と連通する乾燥室21では、洗浄槽221から引き上げられた被処理基板Wの乾燥が行われる。そして、第1の乾燥ガス供給部及び第2の乾燥ガス供給部からは、洗浄後の被処理基板Wの上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後、少なくとも被処理基板が晒される領域に、前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に液体除去用の溶剤蒸気を含む第1の乾燥ガスと、前記溶剤蒸気を含まない第2の乾燥ガスとが交互に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの被処理基板の洗浄および乾燥を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面には、半導体装置の製造工程において発生する種々の汚染物質が付着しており、これらの汚染物質を除去するため、複数種類の洗浄液を用いてウエハ表面を洗浄する洗浄工程が設けられている。
【0003】
例えばバッチ式の洗浄処理を行う基板処理装置では、処理槽に満たされた薬液やリンス液などの洗浄液内に例えば数十枚のウエハを順次浸漬して洗浄を行う洗浄方法が広く採用されている。また洗浄処理を終えたウエハは洗浄液から引き上げられた後、例えばIPA(イソプロピルアルコール)などの溶剤の蒸気を含む乾燥ガスを吹き付けてウエハ表面の液体(例えば水分など)を除去し、ウォーターマークの発生を防止している。
【0004】
半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィなどを利用してウエハの表面に積層構造を形成していくため、洗浄処理の対象となるウエハの表面にはレジスト膜などの有機物を含む材料からなるパターンが形成されている。近年の半導体装置における配線構造の微細化の進展に伴い、これらのパターンも微細化が進み、その機械的強度や耐薬品性も従来よりも低くなる場合がある。
【0005】
このようなレジスト膜にIPAなどの溶剤を含む乾燥ガスを接触させると、例えば図13(a)に示したトレンチパターン80が、図13(b)に示すように先細りパターン81、パターン倒れ82、パターン消失83やパターン溶解84などとなるおそれがある。これらの現象は、微細化の進展する半導体装置の製造工程において、製品の歩留まりを向上させるうえでの大きな課題となる。
【0006】
このほか、半導体装置の製造工程ではウエハは、搬送アームやピンセットなどにより半導体装置の形成されない周縁側の領域を保持または把持されて搬送される。このため、ウエハの周縁領域には中央側よりも多くのパーティクルなどが付着しており、こうした周縁領域には洗浄処理によっても除去しきれないパーティクルが残存している場合がある。
【0007】
一方、バッチ式の洗浄処理においては、ウエハを縦向きの状態で洗浄液内に浸漬し、縦向きのまま洗浄液から引き上げて乾燥処理を行う場合がある。このような場合にウエハをIPA蒸気に接触させると、IPAがウエハ表面の水分に吸着して水とIPAの混合した液膜を形成し、表面張力の低下やその液膜の自重によってウエハ表面を伝って下方側へ流れ落ちる場合がある。この際、ウエハの周縁領域に比較的多く残るパーティクルが、液膜の流れに乗ってウエハの中央領域側へと流れ出し、半導体装置の形成領域を再汚染してしまうという問題が存在することも発明者らは把握している。
【0008】
特許文献1には、ウエハを浸漬した純水などの洗浄液の上部に、予めIPAなどの乾燥流体の蒸気を供給しておき、ウエハの周囲の雰囲気をゆっくりと洗浄液からIPA蒸気へと直接置換することにより、ウエハの乾燥を行う技術が記載されている。しかしながらこの場合においても乾燥流体として大量のIPAが供給されると、ウエハの引き上げ後にIPA蒸気を供給する既述の乾燥方法と同様の問題が発生し、例えばウエハ表面に凝縮したIPAの液膜が、当該ウエハの表面を伝ってパーティクルと共に下方側へ流れ落ち、半導体装置の形成領域の再汚染を引き起こしてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平6−103686号公報:請求項1、第4ページ左欄第39行目〜43行目
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理基板への影響を低減しつつ良好な洗浄、乾燥処理を実行可能な基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る基板処理方法は、洗浄槽に洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板を縦向きの状態で浸漬して洗浄を行う工程と、
被処理基板を縦向きの姿勢で保持し、前記洗浄槽内から当該被処理基板を引き上げて乾燥室に搬送する工程と、
洗浄後の被処理基板の上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、少なくとも被処理基板が晒される領域であって、前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に液体除去用の溶剤蒸気を含む第1の乾燥ガスと、前記液体除去用の溶剤蒸気を含まない第2の乾燥ガスとを交互に供給し、前記洗浄槽の上方領域と連通する乾燥室にて、当該被処理基板を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記基板処理方法は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)被処理基板の全体が洗浄液に浸漬されている時点から、少なくとも洗浄槽の上方側領域に前記第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを交互に供給する工程を含むこと。
(b)前記洗浄槽の上方領域に第1の乾燥ガスを供給する動作に基づいて当該洗浄槽内に洗浄液を供給する工程を含むこと。
(c)前記被処理基板を洗浄液内から引き上げる速度は、2mm/秒以上、10mm/秒以下であること。
(d)前記第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを各々1回ずつ供給する期間を1サイクルとしたとき、当該1サイクルに要する時間は、被処理基板の上端が洗浄液の上方に引き上げられた時点から、当該被処理基板の全体が洗浄液から引き上げられる時点までの間に、少なくとも1サイクル以上の乾燥ガスの供給を実行可能な時間であること。
(e)前記被処理基板には、KrFエキシマレーザー露光用のレジストパターンが形成され、第1の乾燥ガスは、標準状態で窒素ガスキャリア中に60体積ppm以上、240体積ppm以下の濃度のイソプロピルアルコールを含む混合ガスであり、第2の乾燥ガスは窒素ガスであること。
(f)前記第1の乾燥ガスの供給時間と第2の乾燥ガスの供給時間との供給時間の比が1:1以上、1:10以下の範囲であること。
(g)前記乾燥ガスの供給量が標準状態で100リットル/分以上、200リットル/分以下であること。
【0013】
また、他の発明に係わる基板処理方法は、洗浄槽に洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板を縦向きの状態で浸漬して洗浄を行う工程と、
被処理基板を縦向きの姿勢で保持し、前記洗浄槽内から当該被処理基板を引き上げて乾燥室に搬送する工程と、
洗浄後の被処理基板の上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、少なくとも被処理基板が晒される領域であって、前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に、被処理基板の表面に液膜を形成するために、溶剤蒸気を第1の濃度で含む第1のガスを供給する工程と、
前記溶剤を凝縮させて被処理基板の表面に付着している液体を希釈した後、この溶剤を蒸発させることにより液体を除去するために、洗浄槽の上方領域と連通する乾燥室に被処理基板が搬入された後は、前記溶剤蒸気を第1の濃度より高い第2の濃度で含む第2のガスを供給する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
前記他の発明に係わる基板処理方法は以下の特徴を備えていてもよい。
(h)前記第1のガスを供給する工程及び第2のガスを供給する工程では、前記溶剤蒸気を含むガスと、この溶剤蒸気を含まないガスとを交互供給する間隔を変更することにより、前記第1の濃度と第2の濃度とを切り替えること。
(i)(h)の場合において、前記第2のガスを供給する工程では、前記溶剤蒸気を含むガスと、この溶剤蒸気を含まないガスとを交互供給することに替えて、当該溶剤蒸気を含むガスを連続供給すること。
(j)前記第1のガスを供給する工程及び第2のガスを供給する工程では、溶剤蒸気とこの溶剤蒸気を希釈するガスとの混合比を変更することにより、前記第1の濃度と第2の濃度とを切り替えること。
(k)前記第1のガスを供給する工程及び第2のガスを供給する工程では、予め設定された濃度の溶剤蒸気を含むガスの供給量を変更することにより、このガスが供給される雰囲気での溶剤蒸気の濃度を第1の濃度と第2の濃度とで切り替えること。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被処理基板の洗浄を終えた後、洗浄液内から引き上げられた被処理基板が晒される領域に、液体除去用の溶剤蒸気を含む第1の乾燥ガスと、当該溶剤蒸気を含まない第2の乾燥ガスとを交互に供給して乾燥を行うので、溶剤蒸気による被処理基板表面の液体の除去と、当該溶剤の蒸発とを交互に進行させることができる。この結果、被処理基板表面の溶剤濃度が低くなって、その表面に形成されたパターンへの影響を抑えつつ、ウォーターマークの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係るウエハ洗浄システムの横断平面図である。
【図2】前記ウエハ洗浄システムの内部構成を示す一部破断斜視図である。
【図3】前記ウエハ洗浄システムに設けられている洗浄・乾燥ユニットの構成を示す縦断側面図である。
【図4】前記洗浄・乾燥ユニットの乾燥ガス供給部の構成を示す説明図である。
【図5】前記洗浄・乾燥ユニットの作用を示す第1の説明図である。
【図6】前記洗浄・乾燥ユニットの作用を示す第2の説明図である。
【図7】前記洗浄・乾燥ユニットへの乾燥ガス及び洗浄液の供給シーケンスを示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係わる第1のガス供給シーケンス図である。
【図9】前記第1のガス供給シーケンスの変形例である。
【図10】第2のガス供給シーケンス図である。
【図11】第3のガス供給シーケンス図である。
【図12】実施例の結果を表す説明図である。
【図13】ウエハ表面に形成されたパターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る基板処理装置の実施の形態である洗浄・乾燥ユニット2の説明に入る前に、当該洗浄・乾燥ユニット2を供えるウエハ洗浄システム1の概要について簡単に説明する。図1は本実施の形態に係るウエハ洗浄システム1の平面図、図2はその一部破断斜視図を表している。以下、これらの図に向かって左側を手前とすると、ウエハ洗浄システム1は、筐体100内に、FOUP7の搬入出が行われる搬入出部11と、当該搬入出部11内に搬入されたFOUP7と後段の処理部13との間でウエハWを受け渡すにあたって、ウエハWの位置調整や姿勢変換などを行うインターフェース部12と、ウエハWの液処理並びに乾燥処理を実行する処理部13とを、手前側からこの順に設けた構成となっている。
【0018】
本例に係るウエハ洗浄システム1の最前面には、例えば4個のFOUP7を載置可能なロードポート111が設けられており、例えば手前側から見て右手側の2つの載置台112がウエハ洗浄システム1内へのFOUP7の搬入用、左手側の2つの載置台が搬出用となっている。例えば外部の搬送装置などによって、複数枚のウエハWを収納したFOUP7が搬入用の載置台112上に載置されると、載置台112が後方側へとスライドして、当該FOUP7が筐体100の内に搬入される。筐体100内に搬入されたFOUP7は、例えば搬入出部11内部の左右両側壁に設けられたリフター114a、114bによって、搬入出部11内にスライドした載置台112上と、後段のインターフェース部12とのアクセス位置と、空のFOUP7を保管する不図示のストック領域との間を搬送される。
【0019】
インターフェース部12は、ウエハ洗浄システム1の筐体100内の空間を、隔壁101、102によって搬入出部11及び処理部13から区画して形成される空間であり、さらに隔壁103で区画されてウエハWの搬入用の第1のインターフェース室、搬出用の第2のインターフェース室に分かれている。アクセス位置に載置されたFOUP7は、隔壁101の開口部に設けられた開閉扉127によって、当該FOUP7の側面に設けられた蓋体が取り外される。そしてFOUP7内に格納されているウエハWは、ウエハ取り出しアーム121によって取り出され、第1のインターフェース室120a内に搬入される。
【0020】
取り出されたウエハWは、ノッチアライナー123により、ノッチ位置の検出、ウエハW間でのノッチ位置の位置合わせがなされてウエハWの位置決めが行われ、第1の姿勢変換装置124により、水平方向に棚状に並べられ、その後、各ウエハWの姿勢を90度転動させて、垂直姿勢に変換される。しかる後、これらのウエハWが処理部13の搬送アーム136に受け渡され、搬送アーム136は例えば50枚のウエハWを搬送する。
【0021】
一方、搬出用の第2のインターフェース室120bでは、処理部13での洗浄、乾燥処理を終え、搬送アーム136によって搬送されてきたウエハWが、受け渡しアーム126を介して第2の姿勢変換装置125に受け渡され、この第2の姿勢変換装置125にて垂直の姿勢で並んでいる状態から水平姿勢に変換された後、ウエハ収納アーム122によって搬入出部11側で待機しているFOUP7内に収納される。
【0022】
処理部13の搬送アーム136に受け渡されたウエハWは、搬送軌道137上を前後方向に移動する当該搬送アーム136によって処理部13内を搬送される。そして例えばAPM(Ammonium hydroxide-hydrogen Peroxide-Mixture)溶液(アンモニア、過酸化水素水及び純水の混合溶液)を満たした処理槽である第1の処理ユニット131にてこの薬液内に浸漬され、ウエハWに付着しているパーティクルや有機物汚染を除去された後、例えばHPM(HCl-hydrogen Peroxide-Mixture)溶液(塩酸、過酸化水素水及び純水の混合溶液)を満たした処理槽である第2の処理ユニット133に搬送され、当該約液内に浸漬されてウエハWに付着している金属汚染が除去される。これらの処理ユニット131、133では、ウエハボート134、132を介して、搬送アーム136との間で一括してウエハWの受け渡しが行われる。また図2に示した135は、搬送アーム136に設けられているウエハ保持用のチャックを洗浄するチャック洗浄ユニットである。
【0023】
こうして各種の洗浄処理が行われたウエハWは、既述の搬送アーム136によって、本実施の形態の基板処理装置である洗浄・乾燥ユニット2に搬送される。以下、当該洗浄・乾燥ユニット2の詳細な構成について説明する。洗浄・乾燥ユニット2は、ウエハW表面に形成された化学酸化膜を、薬液、例えばフッ化水素酸にて除去した後、純水によって洗浄する処理と、IPA蒸気や窒素ガスを含む乾燥ガスを用いてウエハW表面に付着した液体を乾燥させる処理との2つの処理を1つのユニット内にて連続して実行する役割を果たす。図3は、洗浄・乾燥ユニット2の縦断側面を搬送アーム136側から見た様子を示している。
【0024】
洗浄・乾燥ユニット2は、例えばフッ化水素酸などの薬液や純水などの洗浄液を貯留する洗浄部22と、この洗浄部22の上方位置に、当該洗浄部22内に設けられた内槽221の上方側領域と連通するように設けられた乾燥室21と、これら乾燥室21と洗浄部22との間の連通領域を開閉可能に構成されたシャッター23と、複数例えば50枚のウエハWを垂直姿勢(縦向きの状態)で保持してこれらのウエハWを洗浄部22内と乾燥室21内との間で上下方向に搬送する基板保持部であるウエハボート213と、を備えている。図3中、216はウエハボート213を昇降する昇降機構であり、後述の制御部5からの制御信号に基づいてウエハボート213を昇降させる。
【0025】
洗浄部22は、例えば石英部材やポリプロピレンなどからなり、上面が開口した本実施の形態の洗浄槽である内槽221と、この内槽221の上端部外周領域に配設され、内槽221からオーバーフローした洗浄液を受け止める外槽222と、この外槽222のさらに外周領域に配設され、洗浄部22の全体を覆う筐体部24内の空間に対して洗浄部22内の空間を液封により区画するための液封部224と、前記内槽221内の下部領域に、図3に向かって左右両側に設けられ、洗浄液供給部から供給された洗浄液を内槽221内のウエハWに向かって噴射する液供給ノズル223と、を備えている。図中、251は内槽221の底部に設けられた第1の排液路、252は外槽222の底部に設けられた第2の排液路であり、各排液路251、252には開閉バルブが介設されている。また、液封部224の底面にも、液封を解除する際に排液を行うための不図示の排液路が配設されている。
【0026】
内槽221は、当該内槽221の全体を覆う筐体部24内に配置されており、この筐体部24は、例えば図1、図2に示すように第2の処理ユニット133の手前側に配設されている。筐体部24は仕切板243によって上部空間241と下部空間242とに上下に分割されており、上部空間241は洗浄部22を格納する一方、下部空間242は各排液路251、252、排気路253からの排液をユニット2外へと排出する役割を果たす。図中、上部空間241、下部空間242に各々設けられた244、245は排気窓、下部空間242に設けられた246は廃液口である。
【0027】
乾燥室21は、下面が開口すると共に縦断面がU字状に形成され、例えば石英部材やポリプロピレンなどからなるフード状の乾燥室本体211により構成されており、その開口部を洗浄部22側の開口部と対向させて連通領域を形成するように洗浄部22の上方位置に配置されている。乾燥室本体211は、例えば既述の筐体部24に固定された基部側の基体部211bと、この基体部211b上に載置された上部側の蓋体部211aとに上下に分割されている。この蓋体部211aは不図示の昇降機構により昇降可能に構成されていて、当該蓋体部211aを上昇させることにより、既述の搬送アーム136により搬送されてきたウエハWを洗浄・乾燥ユニット2内に搬入することができるようになっている。
【0028】
乾燥室21を構成する基体部211b内の上部側、例えば蓋体部211aと分割されている位置の近傍には、乾燥室21内に乾燥ガスを供給するために、例えば上方へ向けて開口する複数の供給孔を備えた、例えば2組の乾燥蒸気供給ノズル212が設けられており、また基体部211bの例えば基端部には、乾燥室21から例えば外部の除外設備へ向けて乾燥ガスを排出するための排気管214が設けられている。図3中、215は例えば制御バルブなどからなる排気制御部であり、後述の制御部5からの制御信号に基づいて乾燥室21からの乾燥ガスの排出量を調節する役割を果たす。
【0029】
洗浄・乾燥ユニット2内に設けられたウエハボート213は、昇降機構216により、搬送アーム136との間でのウエハWの受け渡し位置、乾燥室21内の乾燥処理位置、並びに洗浄部22内の洗浄処理位置の各位置の間を上下方向に昇降可能に構成されている。ここで図3にウエハボート213を実線で示した位置は乾燥処理位置、一点鎖線で示した位置は洗浄処理位置である。
【0030】
また互いに連通する開口部を備えた乾燥室21と洗浄部22との中間の高さ位置には、例えば図3に向かって左右方向に水平方向に移動することにより、乾燥室21-洗浄部22間の連通領域を開閉するためのシャッター23が設けられている。同図中231は、前記連通領域を開放する際にシャッター23を退避させる格納部、232はシャッター23から滴下した洗浄液を受ける液受け部、233は液受け部232に溜まった洗浄液を排出するための開閉バルブ付きの排液路である。また234は、既述の液封部224におけるガスの吹き抜けを防止するために、液封内に挿入される吹き抜け防止壁である。
【0031】
図4は、上述の乾燥室21にウエハWの乾燥用ガスを供給する乾燥ガス供給部3及び洗浄部22に洗浄液を供給する洗浄液供給部4の構成を示している。乾燥ガス供給部3は、IPA及び不活性ガスである窒素の各供給系統から供給されたIPA及び窒素より、ウエハW表面に付着した液体である水分を除去するための第1の乾燥ガスであるIPA蒸気と窒素との混合ガス並びに、水分を取りこんだIPAをウエハW表面から蒸発させるための第2の乾燥ガスである窒素単体のガスを乾燥室21へ供給する役割を果たす。従って、本実施の形態に係る乾燥ガス供給部3は、第1の乾燥ガスを供給する第1の乾燥ガス供給部としての役割と、第2の乾燥ガスを供給する第2の乾燥ガス供給部としての役割とを兼用していることになる。乾燥ガス供給部3は、図1に示すように例えば洗浄・乾燥ユニット2の本体の背面側に設けられている。
【0032】
乾燥ガス供給部3は、窒素ガスとIPAミストの混合流体中のIPAを蒸発させて第1の乾燥ガスを発生させるガス発生部33を備えており、当該ガス発生部33は、IPAの供給系統、窒素の供給系統と接続されている。IPAの供給系統は、外部のIPA供給源31から液体IPAを受け入れて一時的に貯留する中間タンクであるIPAタンク311と、所定量の液体IPAをIPAタンク311から下流側へと払い出す供給制御部312と、液体IPA中に含まれるパーティクルなどを除去するフィルター313と、をこの順にIPA供給路314a、314b上に介設した構成となっている。図4に示すようにIPAの供給系統は、ここで供給制御部312は例えば往復動式のポンプPと開閉バルブV1とを備えている。
【0033】
一方、窒素の供給系統は、例えば外部に設けられた窒素供給源32より所定量の窒素を受け入れる供給制御部321と、窒素ガス中に含まれるパーティクルを除去するフィルター322とを窒素供給路323上にこの順に介設した構成となっており、供給制御部321には開閉バルブV2とマスフローコントローラMとが設けられている。IPA供給路314b及び窒素供給路323は共通の二流体ノズル35に接続されており、二流体ノズル35を流れる窒素ガス雰囲気中に液体IPAをミスト状に噴霧して得られたIPAミストと窒素との混合流体を、混合流体供給路351を介して後段のガス発生部33へ向けて送り出すことができる。
【0034】
ガス発生部33は、二流体ノズル35より供給されたミスト状のIPAと窒素ガスとの混合流体を加熱して、第1の乾燥ガスであるIPA蒸気と窒素との混合ガスを発生させる役割を果たす。ガス発生部33は、例えば5つの小室に区切られた本体容器331の各室内に、IPAと窒素ガスとの混合流体を加熱するための加熱部である加熱ユニット334を配置した構成となっている。各加熱ユニット334は、例えば直棒状に形成されたハロゲンランプ332と、このハロゲンランプ332の周囲に、当該ハロゲンランプ332から径方向に離間した位置に配置されると共に、ハロゲンランプ332の長手方向に螺旋状に伸びるスパイラル管333と、を備えている。
【0035】
スパイラル管333は、ハロゲンランプ332からの輻射熱を吸収しやすくするために例えば黒色に塗装されたステンレス製の配管部材にて構成されている。またスパイラル管333は、長手方向に隣り合って配置された配管同士が互いに接触するように螺旋が形成されており、ハロゲンランプ332の輻射熱がスパイラル管333同士の隙間から外方へと漏れにくい構成となっている。また本体容器331の各小室には、不図示の窒素ガス供給源より窒素ガスが供給されていて、当該加熱雰囲気に、例えば外部雰囲気からIPA蒸気などが侵入するのを防止している。
【0036】
各加熱ユニット334のスパイラル管333は、混合流体を通流させる1本の流路を形成するように、互いに直列に接続されると共に、上流側の一端は混合流体供給路351に接続され、下流側の他端は、乾燥室31にIPA蒸気を供給するためのIPA蒸気供給路341に接続されている。直列に配置された5つの加熱ユニット334のうち、例えば上流側の2つは、混合流体中のミスト状のIPAを蒸発させる役割を果たし、例えば残る3つの加熱ユニット334は、IPAを蒸発させて得られたIPA蒸気と窒素との混合流体である第1の乾燥ガスを、IPA蒸気の露点温度よりも高い例えば150〜200℃の範囲の例えば190℃まで昇温して過熱状態とすることにより、IPAの凝縮を防止する役割を果たしている。このようにして発生した第1の乾燥ガスは、IPA蒸気供給路341を介して乾燥室21内の乾燥ガス供給ノズル212へと送られる。ここで図4に示した36は、乾燥ガス中のパーティクルなどを除去するメタルフィルターである。
【0037】
ガス発生部33の各加熱ユニット334には、不図示の温度検出部が設けられており、各スパイラル管333を流れる混合流体の例えば出口温度を検出することができる。そして、これらの温度検出結果は後述の制御部5に出力され、各ハロゲンランプ332への電力供給を行う電力供給部335に供給電力の調整量としてフィードバックされて各加熱ユニット334の温度調整が行われるようになっている。
【0038】
例えばウエハWの表面にKrFエキシマレーザー露光用のレジスト膜のパターンが形成されている場合には、窒素供給系統からは例えば標準状態(0℃、1気圧)で100リットル/分〜200リットル/分の範囲の例えば120リットル/分の窒素が供給され、ここに同じく標準状態で0.2cc/秒〜0.4cc/秒の範囲の例えば0.2cc/秒のIPA蒸気が供給される。
【0039】
また、IPAの供給制御部312は、制御部5からの指示に基づいて二流体ノズル35へのIPAの供給、遮断を自在に行うことが可能であり、IPAの供給が遮断された場合には、ガス発生部33には窒素の供給系統からの窒素の供給のみが継続される。そしてIPAの供給が遮断され、ガス発生部33に供給されるガスが窒素だけになると、各加熱ユニット334の温度検出部における温度検出結果に基づいて電力供給部335からの供給電力が調整され、例えば第1の乾燥ガスと同じ温度に昇温された窒素が、第2の乾燥ガスとしてIPA蒸気供給路341を介して乾燥ガス供給ノズル212へと送られるようになっている。但し、第2の乾燥ガスは第1の乾燥ガスと同じ温度で供給される場合に限られず、第1の乾燥ガスよりも高い温度、または低い温度で供給してもよいことは勿論である。
【0040】
またここで、第1の乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部3の構成は、ハロゲンランプ332とスパイラル管333とを備え、キャリアガスを成す窒素中に、ミスト状のIPAを混合してから当該混合流体を加熱してIPAを過熱状態とする既述のガス発生部33の例に限定されるものではない。IPA蒸気と窒素とを含む第1の乾燥ガスと、窒素のみからなる第2の乾燥ガスとを切り替えて供給することが可能であれば、どのような構成であってもよい。例えば液体IPAに窒素をバブリングして発生させたIPAと窒素ガスとの混合気体を加熱することなどにより第1の乾燥ガスを発生させてもよいし、液体IPAを加熱して蒸気化してから窒素と混合してもよい。前者の場合は、液体IPAをバイパスしてバブリングを停止することなどにより第2の乾燥ガスが得られ、後者の場合は窒素へのIPAの混合を停止することなどにより第2の乾燥ガスを得ることができる。
【0041】
次に洗浄液供給部4の構成について説明すると、洗浄液供給部4は純水である例えばDIW(DeIonized Water)供給ライン41に接続された第1の分岐ライン402及び、DHF(希フッ酸:Diluted Hydrogen Fluoride)供給ライン42に接続された第2の分岐ライン403が合流して、共通の洗浄液供給ライン401に接続された構成となっている。DIW及びDHFは本実施の形態の洗浄液に相当する。この洗浄液供給ライン401には、各分岐ライン402、403から受け入れた洗浄液を洗浄部22側へ払い出す供給制御部43と、洗浄液中に含まれるパーティクルなどを除去するフィルター44とが上流側からこの順に介設されており、不図示の切り替え弁にて供給制御部43へ供給される洗浄液を切り替えることにより、DIWとDHFを切り替えて洗浄部22へと供給することができる。供給制御部312は例えば液体ポンプPと開閉バルブV3から構成されている。乾燥ガス供給部3と同様に、洗浄液供給部4についても、図1に示すように例えば洗浄・乾燥ユニット2の本体の背面側に設けられている。
【0042】
以上に説明した構成を備えたウエハ洗浄システム1及びその内部に設けられた洗浄・乾燥ユニット2は、図1、図3、図4に示すように制御部5と接続されている。制御部5は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には当該ウエハ洗浄装置1の作用、つまり、搬入出部11内にFOUP7を搬入し、ウエハWを取り出して各種の液処理、乾燥処理を実行してから、再度ウエハWをFOUP7内に収納して当該FOUP7を搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0043】
さらに制御部5の記憶部(記憶媒体)には、洗浄・乾燥ユニット2の洗浄部22内にて洗浄液によるウエハの洗浄処理を実行し、洗浄液からウエハWを引き上げて乾燥ガスによる乾燥処理を行う際の洗浄液の供給タイミング、ウエハボート213の上昇スピードや第1、第2の乾燥ガスの供給タイミングや供給量の制御に係るプログラムが記憶されている。以下、これらのプログラムに基づいて実行される、洗浄・乾燥ユニット2によるウエハWの洗浄、乾燥処理の作用について説明する。
【0044】
ウエハ洗浄システム1の搬入出部11内に搬入されたFOUP7から取り出されたウエハWは、インターフェース部12を介して搬送アーム136に受け渡され、例えば50枚のウエハWが第1、第2の処理ユニット131、33へと順次搬送されて所定の液処理が行われ、搬送アーム136により洗浄・乾燥ユニット2へと搬送される。
【0045】
ウエハWが搬送されてくると、洗浄・乾燥ユニット2では図2、図5(a)に示すように蓋体部211aを上昇させて乾燥室本体211を開放し(図5(a)では蓋体部211aの記載を省略してある)、ウエハボート213を受け渡し位置まで上昇させて搬送アーム136からウエハWを受け取る。このとき洗浄部22の内槽221内には洗浄液である例えばDHFが満たされた状態となっており、さらに図7(c)の洗浄液の供給シーケンス図に示すように、液供給ノズル223からはDHFが連続的に供給されて洗浄液が内槽221から外槽222へとオーバーフローして第2の排液路252へと排出される洗浄液の流れが形成されている。また、排気管214からはウエハWの搬入、洗浄、乾燥、搬出の各動作期間中、常時排気が行われている。
【0046】
ウエハボート213にウエハWを受け渡した搬送アーム136が洗浄・乾燥ユニット2から退避すると、シャッター23を開き、ウエハボート413を洗浄処理位置まで下降させて、図5(b)に示すように内槽221内に満たされた洗浄液中にウエハWを浸漬して洗浄処理を開始する。またこの動作と並行してシャッター23を閉じ、蓋体部211aを降下させて洗浄部22及び乾燥室21を密閉する。
【0047】
洗浄液中に浸漬されたウエハWの表面を、液供給ノズル223から供給されたDHFが流れることにより、当該ウエハW表面に形成された化学酸化膜が除去される。そして予め設定された時間が経過したら、図7(c)のシーケンス図に示すように液供給ノズル223から供給する洗浄液をDHFからDIWに切り替えて、内槽22内の洗浄液を置換することによりウエハWに付着したDHFが洗い流され、ウエハWの洗浄が完了する。
【0048】
こうしてDIWによる洗浄を予め設定された時間だけ実行し、例えば当該洗浄処理を終える数分前、例えば2分前〜4分前程度の時間となったらシャッター23を開く。そして図7(a)、図7(b)に示すように、乾燥室21内及び内槽221の上方の領域に、乾燥ガス供給部3からIPAと窒素との混合ガスである第1の乾燥ガスを満たした状態としておく。
【0049】
こうして洗浄液の上方側に第1の乾燥ガスが満たされ、予め設定されたDIWによる洗浄時間が経過したら、図6(a)に示すようにウエハボート413を上昇させて洗浄液内からウエハを引き上げて、洗浄部22から乾燥室21へとウエハWの移送を開始する。このときウエハWが移送される空間内には、既述のようにIPA蒸気及びそのキャリアガスである窒素からなる第1の乾燥ガスで満たされているところ、例えばレジスト膜により形成されたパターンがこの第1の乾燥ガスと長時間接すると、微細化の進んだパターンのなかには、背景技術にて説明したパターンの先細りや倒れ、パターンの消失や溶解などの現象が発生するおそれがある。一方、当該空間内に第1の乾燥ガスを供給せずにウエハWを引き上げた場合には、移送動作の途中でウエハW表面のDIWが乾燥してしまい、ウォーターマークが形成されるおそれもある。
【0050】
そこで本実施の形態に係る洗浄・乾燥ユニット2においては、ウエハボート213によるウエハWの引き上げ動作の開始と連動して、図7(a)、図7(b)に示すように、窒素ガスの供給を継続しつつ、ガス発生部33へのIPAの供給、停止を間欠的に行う動作を開始する。これによりウエハWの全体がDIWに浸漬されている時点から、第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを交互に供給する動作が開始され、ウエハWの上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、内槽221の上方領域及び乾燥室21内、即ち移動中のウエハWが晒される領域にこれら第1、第2の乾燥ガスの交互供給が実行されている状態となっている。
【0051】
ここで第2の乾燥ガスが「IPA蒸気を含まない」状態とは、当該ガス中のIPA濃度がゼロとなっている場合のみを意味するものではなく、実質的にIPAの供給が停止されていればよい。例えばIPAの供給系統からガス発生部33へのIPAの供給を停止した後、当該ガス発生部や後段のIPA蒸気供給路341内に残存しているIPAが窒素ガスにより押し出されて乾燥室21内等へ供給される乾燥ガスについても「IPA蒸気を含まない」第2の乾燥ガスに相当する。
【0052】
このように第1の乾燥ガス及び第2の乾燥ガスを交互に供給することにより、例えば第1の乾燥ガスの供給期間中は、第1の乾燥ガス中のIPAにウエハW表面のDIWが取り込まれ、次いで第2の乾燥ガスの供給期間中に水分を取り込んだIPAをウエハWの表面から揮発させることにより、ウエハW表面のIPA濃度を低い状態に保ちつつ、引き上げ期間中の水分の蒸発によるウォーターマークの発生を抑えることができる。
【0053】
ここで第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとの供給時間比は、レジスト膜がKrF露光用である場合には、1:1〜1:10の範囲内の例えば1:2に設定される。そして例えば300mmのウエハWを洗浄液から引き上げる動作において、ウエハボート213の上昇速度を例えば2mm/秒〜10mm/秒の範囲内の例えば10mm/秒とし、第1の乾燥ガス及び第2の乾燥ガスが各々1回ずつ供給される合計の期間である1サイクルを例えば15秒とする。このとき、第1の乾燥ガスの供給時間は5秒、第2の乾燥ガスの供給時間は10秒となる。
【0054】
上述の如く、ウエハボート213の上昇速度を10mm/秒、1サイクル中の第1の乾燥ガスの供給時間を5秒、第2の乾燥ガスの供給時間を10秒とすると、300mmのウエハWの先端が洗浄液から乾燥ガス雰囲気に晒されてから、ウエハW全体が引き上げられるまでの約30秒間に、例えば約2サイクル分の第1、第2の乾燥ガスの交互供給が実行されることになる。
また例えばレジスト膜がArF露光用である場合には、第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとの供給時間比は、1:1〜1:10の範囲内に設定することが好ましい。
【0055】
さらにまた、既述のようにウエハボートの213の上昇を開始する前の例えば2分前〜4分前のタイミングで乾燥室21及び洗浄部22内の洗浄液の上方の雰囲気に予め第1の乾燥ガスを供給しておく動作は必須ではない。例えばウエハWの引き上げ動作と連動させてまず、第1の乾燥ガスを供給し、次いで第2の乾燥ガスが供給されるように両乾燥ガスを交互に供給してもよい。
【0056】
そしてこの引き上げ動作の際、洗浄部22側においては、図7(c)のシーケンス図に示すように第1の乾燥ガスの供給タイミングに合わせて液供給ノズル223から内槽221へ向けてDIWを供給してもよい。このような動作により、第1の乾燥ガスが供給されている期間中は、内槽221から外槽222へ向けて洗浄液がオーバーフローし、これにより気液界面付近で洗浄液内に溶解したIPAがウエハW表面から下流へと流されてレジスト膜の先細りや倒れなどが抑えられる。一方、第2の乾燥ガスが供給されている期間中は洗浄液の供給を停止することにより、液の流れを止めて液跳ねなどによるウエハW表面へのDIWの再付着や液中に含有される微小なパーティクルの再付着を防止することができる。またここで、内槽221へのDIWの間欠供給のタイミングは、DIWの供給期間を第1の乾燥ガスの供給期間と完全に一致させる場合に限定されず、例えば第1の乾燥ガスの供給を開始してから数秒、本例では1〜2秒程度遅れてDIWを供給してもよい。このときDIWの停止タイミングは第1の乾燥ガスの停止タイミングに合わせてもよいし、停止タイミングも数秒度遅らせてもよい。
【0057】
ウエハWの全体が洗浄液から引き上げられたら、ウエハボート213の上昇速度を例えば200mm/秒まで上げて、乾燥室21内にウエハWを搬入し、シャッター23を閉じて乾燥室21を洗浄部22から切り離す。このときにも、図7(a)、図7(b)に示すように乾燥ガス供給ノズル212からは第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとが交互に供給される(図6(b))。乾燥室21内に供給されたIPA蒸気は、図6(b)に矢印で示すように乾燥室本体211の両側壁の内面に沿って上方に向けて流れた後、乾燥室本体211の頂部にて流れ方向が下方側に変わり下降して、排気管214から外部へと排出される。なお、本例では処理時間の短縮のためにウエハボート213の上昇速度を200mm/sまで挙げた例を示したが、ウエハWの全体が洗浄液から引き上げられた後も、例えば既述の2mm/秒〜10mm/秒の範囲でウエハボートを上昇させてもよいことは勿論である。
【0058】
この動作の期間中においても、第1の乾燥ガス中のIPAによるウエハW表面のDIWの取り込み、水分を取り込んだIPAのウエハW表面の揮発が交互に進行して、IPAがレジスト膜に与える影響を低減しつつ、ウォーターマークの発生を抑えて乾燥処理を行うことができる。
またこのようにウエハW表面へのIPAの供給とその揮発が交互に行われることから、ウエハW表面におけるIPAの濃度を低く抑えることができ、ウエハW表面でのIPAの凝縮を抑えることができる。この結果、縦向きの状態でウエハWを洗浄液から引き上げても、IPAの液膜が形成されにくく、例えば洗浄後も比較的多くのパーティクルが残存する周縁領域からのIPAの流下に伴うパーティクルの流れ出しを抑制し、洗浄により清浄な状態となっている中央領域の再汚染を防止することができる。
【0059】
またこの第1の乾燥ガス及び第2の乾燥ガスの交互供給は、ウエハWの引き上げ開始前から行ってもよい。これによりIPA蒸気の濃度が更に低く抑えられるので、ウエハWの表面にIPAの液膜が更に形成されにくくなり、仮に液膜が形成されたとしてもその厚さを薄くしてパーティクルの流れ出し現象の発生を抑制することができる。
【0060】
こうして第1の乾燥ガス及び第2の乾燥ガスを交互に供給しつつ予め設定された期間だけ乾燥処理を行ったら、乾燥室21内への乾燥ガスの供給を停止し、乾燥室21内を例えば常温の窒素ガスで置換する。次いで乾燥室本体211の蓋体部211aを上昇させてウエハWをウエハボート413から搬送アーム136へと受け渡し、第2のインターフェース室120bを介してウエハWをFOUP7内に格納し、搬入出部11からFOUP7を取り出して当該FOUP7を外部の搬送ロボットに受け渡し、次の工程へと送り出す。本実施の形態に係るウエハ洗浄システム1では、以上に述べた動作が連続的に実行され、例えば1時間に数百枚のウエハWの処理が行われる。
【0061】
本実施の形態に係る洗浄・乾燥ユニット2によれば以下の効果がある。ウエハWの洗浄を終えた後、洗浄液内から引き上げられたウエハWが晒される領域に、液体除去用のIPA蒸気を含む第1の乾燥ガスと、IPA蒸気を含まない第2の乾燥ガスとを交互に供給して洗浄液の乾燥を行うので、IPA蒸気によるウエハW表面の水分の除去と、IPAの蒸発とを交互に進行させることができる。この結果、ウエハW表面における溶剤濃度が低くなって、その表面に形成されたパターンへの影響を抑えつつ、ウォーターマークの発生を低減することができる。
【0062】
ここで図3を用いて説明した洗浄・乾燥ユニット2においては、乾燥室21と洗浄部22(内槽221)とが上下に積み重ねられた例について説明したが、乾燥室21と洗浄部22とは例えば水平方向に並べて配置されていてもよい。このような場合であっても内槽221の上方側の領域と乾燥室21とが連通し、洗浄液から引き上げられたウエハWが当該連通された空間を通って乾燥室21に移送される場合には、既述の洗浄・乾燥ユニット2と同様の作用、効果を得ることができる。即ち、ウエハWの移送期間から乾燥室21内での乾燥処理の期間にかけてIPA上記を含む第1の乾燥ガスとIPA蒸気を含まない第2の乾燥ガスとを、ウエハWが晒される領域に供給することにより、レジスト膜などの有機物を含む材料からなるパターンへの影響を低減しつつ、ウォーターマークの発生を抑えてウエハWを乾燥することができる。
【0063】
また本発明を適用可能な有機物を含む材料からなるパターンは、既述のレジスト膜の例に限定されない。例えばデュアルダマシン等のプロセスで用いられる有機膜の形成されたウエハWなどにおいても有機膜のパターンへの影響を低減しつつ、ウォーターマークの発生を抑えてウエハWの乾燥処理を行うことができる。
さらに本発明を適用可能な溶剤はIPAに限定されるものではなく、プロセス上、可能であれば他の溶剤蒸気を用いてもよい。更に洗浄液もDIW以外の液体を用いてもよいことは勿論である。
【0064】
このほか、図7(c)に示した例では、ウエハWを引き上げる期間中に第1、第2の乾燥ガスを交互に供給するにあたり、IPA蒸気を含む第1の乾燥ガスの供給に合わせて内槽221にDIWを間欠的に供給するシーケンスを示したが、DIWの供給シーケンスはこの例に限られない。例えば第1、第2の乾燥ガスを交互に供給しながらウエハWを引き上げている期間中に、DIWを連続的に供給してもよいことは勿論である。DIWを連続的に供給供給した場合でも内槽221から外槽222へ向けて洗浄液をオーバーフローさせ、当該DIW中のIPAの濃度を低減してレジスト膜の先細りや倒れなどを抑えると共に、ウエハW表面に形成されるIPAの液膜の厚さを薄くしてパーティクルの流れ出し現象の発生を抑制するという効果は得ることができる。
【0065】
そしてウエハWの引き上げ期間中における第1の乾燥ガス及びDIWの供給タイミングは、第1の乾燥ガスの供給動作に基づいてDIWが供給されていれば本発明の技術的範囲に含まれる。既述のように例えば第1の乾燥ガスの供給開始前又は供給開始後の所定のタイミングでDIWを供給してもよいし、第1のガスの供給の停止期間中、即ち第2の乾燥ガスの供給期間中にDIWを供給してもよい。これらの場合にもDIWの供給を行わない場合に比べて、DIWを内槽221からオーバーフローさせることによる既述の効果を発揮させることができる。
【0066】
また本例では第1の乾燥ガス及び第2の乾燥ガスを共通の乾燥ガス供給部3から供給したが、これらのガスを別々に供給する乾燥ガス供給部を設けてもよい。さらには、例えば内槽221の上方の領域に第1、第2の乾燥ガスを供給するガス供給部と、乾燥室21に第1、第2の乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部とを別々に構成してもよく、この場合には内槽221の上方の領域及び乾燥室21に第1の乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部が第1の乾燥ガス供給部に相当し、内槽221の上方の領域及び乾燥室21に第2の乾燥ガスを供給する乾燥ガス供給部が第2の乾燥ガス供給部に相当する。
【0067】
次に第2の実施の形態に係わる基板処理方法について説明する。第2の実施の形態に係わる基板処理方法は、図3、図5(a)〜図6(b)に示した洗浄・乾燥ユニット2及び図4に示した乾燥ガス供給部3を用いて実施することができるので、以下、第1の実施の形に係わる洗浄・乾燥ユニット2や乾燥ガス供給部3と共通の構成要素には、これらの図に示したものと同じ符号を用いて説明を行う。
第2の実施の形態に係わる洗浄・乾燥ユニット2では、洗浄処理を終え、洗浄液から引き上げられて乾燥室21へとウエハWが移送される領域にIPA蒸気(溶剤蒸気)を含むガスの供給が行われる点は既述の第1の実施の形態と共通している。その一方で、当該領域に供給されるガス中の溶剤の濃度がウエハWの表面に液膜を形成することが可能な濃度である点において第1の実施の形態とは異なっている。また、ウエハWを乾燥室21へと移送した後、乾燥処理を行う際に、ウエハWの引き上げ時よりも高濃度のIPA蒸気を供給する点においても第1の実施の形態とは異なる。
【0068】
例えば第2の実施の形態に係わる洗浄・乾燥ユニット2においても、洗浄処理(図5(b))を終え、図6(a)に示すように洗浄液内からウエハを引き上げる際に、窒素ガスの供給を継続しつつ、ガス発生部33へのIPAの供給、停止を間欠的に行う動作が開始される(図8(a)、図8(b)の供給シーケンス図参照)。この結果、ウエハWの上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、内槽221の上方領域及び乾燥室21内、即ち移動中のウエハWが晒される領域に、IPA蒸気を含むガスとIPA蒸気を含まないガスとが交互に供給される点においては図7(a)、図7(b)に示した第1の実施の形態における動作と同様である。
【0069】
一方、本例ではウエハWが晒される領域に供給されるガス中のIPA蒸気(第1のガス)の平均の濃度(第1の濃度)は、ウエハWに付着した洗浄液やこの洗浄液に溶解したIPA蒸気などによって、ウエハWの表面に薄い液膜が形成される程度に維持されている。但し、ウエハWの表面に形成される液膜は、背景技術において説明したウエハWの汚染を防ぐため、液膜の流れ落ちが発生しない程度の薄い膜が形成される必要がある。
表面にIPAを含む薄い液膜を形成することにより、ウォーターマークの形成を抑えつつ、乾燥室21までウエハWを移送することができる。換言すれば、第1の濃度のガスは、乾燥室21への搬送されるまでの間、ウエハW表面が乾燥せずに液膜が形成された状態にしておくためのものであり、その濃度範囲は例えば150〜250体積ppmの範囲の200体積ppmに調節される。
【0070】
こうして乾燥室21内にウエハWを搬入し、図6(b)に示すようにシャッター23を閉じたら、乾燥室21内に供給されるIPA蒸気(第2のガス)の平均の濃度を第1の濃度より高い250〜400体積ppmの範囲の300体積ppm程度(第2の濃度)に調整する。この結果、ウエハWの表面にIPAが凝縮し、液膜中の洗浄液濃度が低下する。そして、所定時間経過後、IPA蒸気の供給を停止して乾燥室21内の排気を継続すると、低濃度の洗浄液を含むIPAが蒸発してウォーターマークを形成せずにウエハWを乾燥することができる。乾燥室21に搬入された後は、ウエハWは停止した状態となるので、移送時よりも高濃度のIPA蒸気を供給してウエハWの表面に形成される液膜が厚くなっても液膜の流れ落ちは発生しにくくなる。
【0071】
第2の実施の形態に係わる液処理方法では、ウエハWを移送している期間中は、比較的低濃度(第1の濃度)のIPA蒸気を含む第1のガスを供給してウエハWの表面に薄い液膜を形成することにより、液膜の流れ落ちを防ぎつつウエハW表面の乾燥を防止して、ウエハWの再汚染やウォーターマークの発生が防止される。そして、ウエハWが乾燥室21に搬入された後は、第1の濃度より高濃度(第2の濃度)のIPA蒸気を含む第2のガスを供給することで、移送時よりも多い量のIPAをウエハWの表面に凝縮させ、ウエハWの表面に付着している洗浄液を希釈した後、IPAを蒸発させることにより、ウォーターマークの発生を防止しながら、ウエハWに付着している洗浄液を除去することができる。
【0072】
ここで第1のガス中のIPA濃度(第1の濃度)は、ウエハWの表面のパターン形状、材料などにより種々変わるものであり先に例示した濃度範囲(150〜250体積ppm)に限定されるものではない。洗浄液から引き上げられて乾燥室21へと移送されるウエハWの表面に、液流れが発生しない程度の薄い液膜が形成される作用を得ることができれば、これ以外の濃度であってもよい。第1の濃度の上限は、IPA蒸気の濃度を徐々に高くしながらウエハWの乾燥処理を行う予備実験を繰り返し行い、液膜の流れ落ちに伴うウエハWの再汚染が観察される濃度の手前の濃度などから決定できる。また、下限についても同様に、IPA蒸気の濃度を徐々に低くしながらウエハWの乾燥処理を行う予備実験を繰り返し行い、許容量以上のウォーターマークが発生した濃度の手前の濃度を下限として採用すればよい。
【0073】
一方、第2のガス中のIPA濃度(第2の濃度)の下限は、第1の濃度により規定され、またその上限は例えば予備実験により、乾燥室21内で凝縮した液膜の流れ落ちに伴うウエハWの再汚染が観察される濃度の手前の濃度を用いる場合が考えられる。従って第2の濃度についても先に例示した濃度範囲(250〜400体積ppm)に限定されるものではない。
【0074】
またIPA蒸気の濃度を第1の濃度と第2の濃度とで切り替える手法は、図8(a)、図8(b)に示したようにIPA蒸気を含むガスとIPA蒸気を含まないガスとを間欠的に交互に供給する場合において、IPA蒸気の供給時間を長くする場合に限定されない。図8(a)に示す場合とは反対に、IPAの停止時間を短くしてもよいし、図9(a)、図9(b)に示すように、ウエハWが乾燥室21内に搬入された後は、IPA蒸気を間欠供給から連続供給に切り替えて第2の濃度としてもよい。
また、例えば図10(a)、図10(b)に示すように、IPA蒸気及びその希釈ガスである窒素ガスを連続的に供給し、これらのガスの混合比を変化させることにより、第1の濃度と第2の濃度とを切り替えてもよい。
【0075】
この他、例えば図4に示した乾燥ガス供給部3に替えて、液体のIPAに窒素ガスなどのキャリアガスをバブリングしてIPA蒸気を生成する場合には、バブリング時におけるキャリアガスの温度などによりIPAの飽和蒸気量が規定され、IPA濃度が殆ど一定となる場合がある。このような場合には、図11に示すように、ウエハWの移送時におけるガス供給量に対し、乾燥室21内での乾燥処理時におけるガスの供給量を増やすことにより、IPA蒸気の濃度を変化させることができる。例えばウエハWの移送時と乾燥処理時とで排気管214からの排気量が一定である場合には、ガスの供給量を増やすことにより、系内の全圧が上昇し、これによりIPAの分圧も上昇してウエハW表面に供給されるIPAの実濃度が高くなる。
【0076】
以上に説明した実施の形態では、ウエハWを乾燥室21に引き上げる場合について説明したが、ウエハWを乾燥室に移送する代わりに、洗浄槽(内槽221)内のリンス液を排出して、洗浄槽内にIPA蒸気を供給するようにしてもよい。
【実施例】
【0077】
(実験1)
図1〜図7を用いて説明した第1の実施の形態に係る基板処理につき、乾燥ガスの種類、及びその供給方法を変更してレジスト膜の形成されたウエハWに対する影響を調べた。
A.実験条件
KrFレジスト膜からなるトレンチパターン80が形成された300mmのウエハWに対し、図3に示す洗浄・乾燥ユニット2を用いて洗浄、乾燥処理を行い、パーティクルの除去能、レジストへの影響、ウォーターマークの発生状況、パーティクルの流れ落ち現象の発生を観察した。
(実施例1−1) 図7(a)〜図7(c)に記載の乾燥ガス及び洗浄液の供給シーケンスに基づきウエハの洗浄、乾燥処理を行った。但し、ウエハWの引き上げ(移送)動作時には洗浄液の供給を停止し、洗浄液の間欠供給は行わなかった点が図7(c)とは異なる。
第1の乾燥ガス:窒素120リットル/分、IPA蒸気0.2cc/秒(IPA濃度100体積ppm)
第2の乾燥ガス:窒素120リットル/分、
1サイクル中の供給時間:第1の乾燥ガス供給時間5秒、第2の乾燥ガス供給時間10秒(引き上げ時間を含め全16サイクル実施)、
ウエハWの引き上げ速度:10mm/秒
(比較例1−1) 第1の乾燥ガスのみを連続供給した点が(実施例1−1)と異なる。ウエハWの引き上げは第1の乾燥ガスの供給雰囲気下で50mm/秒で行い、その後、シャッター23を閉じて乾燥室21内で90秒間第1の乾燥ガスを連続供給し、乾燥処理を行った。
(比較例1−2) 第2の乾燥ガスのみを連続供給した点が(実施例1−1)と異なる。ウエハWの引き上げは第2の乾燥ガスの供給雰囲気下で50mm/秒で行い、その後、シャッター23を閉じて乾燥室21内で1200秒間第1の乾燥ガスを連続供給し、乾燥処理を行った。
【0078】
B.実験結果
上記の実施例、比較例について、各種評価項目に関する評価をまとめた結果を(表1)に示す。
(表1)

【0079】
(表1)に示した結果によれば、第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを交互に供給する(実施例1−1)では、パーティクルの除去能は問題なく、洗浄処理後の再付着等の問題も観察されなかった。またレジストパターンにおける先細りや倒れ、パターン消失や溶解も観察されず、ウォーターマークの発生状況も目標の範囲内であった。さらには、周辺領域のパーティクルが流れ落ちる現象も観察されなかった。これらのことから、総合評価として第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを交互に供給する洗浄、乾燥処理はレジストパターンに与える影響が小さく、且つ、良好な洗浄結果を得られる手法であるといえる。
【0080】
これに対して、第1の乾燥ガスを連続供給した(比較例1−1)では、レジストパターンの倒れ等の現象が観察されると共に、周辺領域のパーティクルの流れ落ちも発生した。また、第2の乾燥ガスのみを連続供給した(比較例1−2)では、IPAを供給しなかったことからウォーターマークが発生した。これらの結果からも第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスを交互に供給する(実施例1−1)に係る処理法が有効な処理であることを確認できた。
【0081】
(実験2)
第1の乾燥ガス中のIPA上記の混合量を変化させてレジストパターンへの影響を確認した。
A.実験条件
(実施例2−1)(実施例1−1)と同様の条件とした。
(実施例2−2)IPA蒸気の混合量を0.4cc/秒(IPA濃度200体積ppm)とした点以外は(実施例1−1)と同様の条件で実験を行った。
(実施例2−3)IPA蒸気の混合量を0.6cc/秒(IPA濃度300体積ppm)とした点以外は(実施例1−1)と同様の条件で実験を行った。
(実施例2−4)IPA蒸気の混合量を0.8cc/秒(IPA濃度400体積ppm)とした点以外は(実施例1−1)と同様の条件で実験を行った。
【0082】
各実施例におけるレジストパターンへの影響をまとめた結果を(表2)に示す。
(表2)

【0083】
(実施例2−1〜2−4)の結果によれば、いずれもレジストパターンの倒れや消失などの現象は確認されなかった。但し、IPA蒸気の濃度を上げていくにつれて、徐々にレジストパターンが溶解する傾向が確認された。この観点で評価すると、IPA蒸気の供給量が0.2cc/秒〜0.4cc/秒(IPA濃度が100体積ppm〜200体積ppm)の(実施例2−1、2−2)の結果がレジストパターンの溶解の程度が小さく、より好ましいとの結果が得られた。
【0084】
(実験3)
ウエハボート213の上昇速度(ウエハWの引き上げ速度)を変化させ、ウォーターマークの発生に与える影響を評価した。
A.実験条件
(実施例3−1)(実施例1−1)と同様の条件とした。
(実施例3−2)ウエハボート213の上昇速度を2mm/秒とした点以外は(実施例1−1)と同様の条件で実験を行った。
【0085】
B.実験結果
各実施例におけるウォーターマークの発生状況を図12に示す。(実施例3−1、3−2)の結果によれば、ウエハボート213の上昇速度、即ち、洗浄液からのウエハWの引き上げ速度を遅くした方が、ウォーターマークの発生量が少なくなる結果が得られた。これはウエハWの引き上げ速度を遅くすることで、洗浄液からウエハWの先端が乾燥ガス雰囲気中に露出し、ウエハW全体が引き上げられるまでの間に第1、第2の乾燥ガスが供給されるサイクル数が多くなり、よりウォーターマークの発生しにくい条件下でウエハWが引き上げられることになるためであると考えられる。
【符号の説明】
【0086】
W ウエハ
1 ウエハ洗浄システム
2 洗浄・乾燥ユニット
22 洗浄部
21 乾燥室
3 乾燥ガス供給部
4 洗浄液供給部
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽に洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板を縦向きの状態で浸漬して洗浄を行う工程と、
被処理基板を縦向きの姿勢で保持し、前記洗浄槽内から当該被処理基板を引き上げて乾燥室に搬送する工程と、
洗浄後の被処理基板の上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、少なくとも被処理基板が晒される領域であって、前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に液体除去用の溶剤蒸気を含む第1の乾燥ガスと、前記液体除去用の溶剤蒸気を含まない第2の乾燥ガスとを交互に供給し、前記洗浄槽の上方領域と連通する乾燥室にて、当該被処理基板を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
被処理基板の全体が洗浄液に浸漬されている時点から、少なくとも洗浄槽の上方側領域に前記第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを交互に供給する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記洗浄槽の上方領域に第1の乾燥ガスを供給する動作に基づいて当該洗浄槽内に洗浄液を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記被処理基板を洗浄液内から引き上げる速度は、2mm/秒以上、10mm/秒以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを各々1回ずつ供給する期間を1サイクルとしたとき、当該1サイクルに要する時間は、被処理基板の上端が洗浄液の上方に引き上げられた時点から、当該被処理基板の全体が洗浄液から引き上げられる時点までの間に、少なくとも1サイクル以上の乾燥ガスの供給を実行可能な時間であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記被処理基板には、KrFエキシマレーザー露光用のレジストパターンが形成され、第1の乾燥ガスは、標準状態で窒素ガスキャリア中に60体積ppm以上、240体積ppm以下の濃度のイソプロピルアルコールを含む混合ガスであり、第2の乾燥ガスは窒素ガスであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1の乾燥ガスの供給時間と第2の乾燥ガスの供給時間との供給時間の比が1:1以上、1:10以下の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記乾燥ガスの供給量が標準状態で100リットル/分以上、200リットル/分以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
洗浄槽に洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板を縦向きの状態で浸漬して洗浄を行う工程と、
被処理基板を縦向きの姿勢で保持し、前記洗浄槽内から当該被処理基板を引き上げて乾燥室に搬送する工程と、
洗浄後の被処理基板の上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、少なくとも被処理基板が晒される領域であって、前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に、被処理基板の表面に液膜を形成するために、溶剤蒸気を第1の濃度で含む第1のガスを供給する工程と、
前記溶剤を凝縮させて被処理基板の表面に付着している液体を希釈した後、この溶剤を蒸発させることにより液体を除去するために、洗浄槽の上方領域と連通する乾燥室に被処理基板が搬入された後は、前記溶剤蒸気を第1の濃度より高い第2の濃度で含む第2のガスを供給する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
前記第1のガスを供給する工程及び第2のガスを供給する工程では、前記溶剤蒸気を含むガスと、この溶剤蒸気を含まないガスとを交互供給する間隔を変更することにより、前記第1の濃度と第2の濃度とを切り替えることを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第2のガスを供給する工程では、前記溶剤蒸気を含むガスと、この溶剤蒸気を含まないガスとを交互供給することに替えて、当該溶剤蒸気を含むガスを連続供給することを特徴とする請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第1のガスを供給する工程及び第2のガスを供給する工程では、溶剤蒸気とこの溶剤蒸気を希釈するガスとの混合比を変更することにより、前記第1の濃度と第2の濃度とを切り替えることを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第1のガスを供給する工程及び第2のガスを供給する工程では、予め設定された濃度の溶剤蒸気を含むガスの供給量を変更することにより、このガスが供給される雰囲気での溶剤蒸気の濃度を第1の濃度と第2の濃度とで切り替えることを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項14】
洗浄液供給部から洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板を縦向きの状態で浸漬して洗浄するための洗浄槽と、
この洗浄槽の上方領域と連通し、前記洗浄槽から引き上げられた被処理基板を乾燥するための乾燥室と、
前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に液体除去用の溶剤蒸気を含む第1の乾燥ガスを供給するための第1の乾燥ガス供給部と、
前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に前記液体除去用の溶剤蒸気を含まない第2の乾燥ガスを供給するための第2の乾燥ガス供給部と、
被処理基板を縦向きの姿勢で保持し、前記洗浄槽内から当該被処理基板を引き上げて乾燥室に搬送する基板保持部と、
前記基板保持部により洗浄後の被処理基板の上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、少なくとも被処理基板が晒される領域に、前記第1の乾燥ガスと、第2の乾燥ガスとを交互に供給するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、被処理基板の全体が洗浄液に浸漬されている時点から、少なくとも洗浄槽の上方側領域に前記第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを交互に供給するように制御信号を出力することを特徴とする請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記洗浄槽の上方領域に第1の乾燥ガスを供給する動作に基づいて、当該洗浄槽内に洗浄液を供給するように制御信号を出力することを特徴とする請求項14または15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記被処理基板を洗浄液内から引き上げる速度は、2mm/秒以上、10mm/秒以下であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記第1の乾燥ガスと第2の乾燥ガスとを各々1回ずつ供給する期間を1サイクルとしたとき、当該1サイクルに要する時間は、被処理基板の上端が洗浄液の上方に引き上げられた時点から、当該被処理基板の全体が洗浄液から引き上げられる時点までの間に、少なくとも1サイクル以上の乾燥ガスの供給を実行可能な時間であることを特徴とする請求項14ないし17のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項19】
洗浄液供給部から洗浄液を供給しながら当該洗浄液に被処理基板を縦向きの状態で浸漬して洗浄するための洗浄槽と、
この洗浄槽の上方領域と連通し、前記洗浄槽から引き上げられた被処理基板を乾燥するための乾燥室と、
前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に液体除去用の溶剤蒸気の濃度を切り替えて供給するための乾燥ガス供給部と、
被処理基板を縦向きの姿勢で保持し、前記洗浄槽内から当該被処理基板を引き上げて乾燥室に搬送する基板保持部と、
前記基板保持部により洗浄後の被処理基板の上端が洗浄液の液面より上方に引き上げられた後は、少なくとも被処理基板が晒される領域であって、前記洗浄槽の上方領域から乾燥室内に至るまでの雰囲気に、被処理基板の表面に液膜を形成するために、溶剤蒸気を第1の濃度で供給するステップと、前記溶剤を凝縮させて被処理基板の表面に付着している液体を希釈した後、この溶剤を蒸発させることにより液体を除去するために、洗浄槽の上方領域と連通する乾燥室に被処理基板が搬入された後は、前記溶剤蒸気を第1の濃度より高い第2の濃度で供給するステップと、を実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項20】
前記溶剤蒸気を第1の濃度で供給するステップ及び第2の濃度で供給するステップでは、前記溶剤蒸気を含むガスと、この溶剤蒸気を含まないガスとを交互供給する間隔を変更することにより、前記第1の濃度と第2の濃度とを切り替えることを特徴とする請求項19に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記溶剤蒸気を第2の濃度で供給する工程では、前記溶剤蒸気を含むガスと、この溶剤蒸気を含まないガスとを交互供給することに替えて、当該溶剤蒸気を含むガスを連続供給することを特徴とする請求項20に記載の基板処理装置。
【請求項22】
前記溶剤蒸気を第1の濃度で供給するステップ及び第2の濃度で供給するステップでは、溶剤蒸気とこの溶剤蒸気を希釈するガスとの混合比を変更することにより、前記第1の濃度と第2の濃度とを切り替えることを特徴とする請求項19に記載の基板処理装置。
【請求項23】
前記溶剤蒸気を第1の濃度で供給するステップ及び第2の濃度で供給するステップでは、予め設定された濃度の溶剤蒸気を含むガスの供給量を変更することにより、このガスが供給される雰囲気での溶剤蒸気の濃度を第1の濃度と第2の濃度とで切り替えることを特徴とする請求項19に記載の基板処理装置。
【請求項24】
洗浄槽内の洗浄液に被処理基板を浸漬して洗浄を行った後、当該被処理基板を乾燥室搬送して乾燥を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項1ないし13のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−211166(P2011−211166A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293024(P2010−293024)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】