説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の清浄度を高めることができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】第1処理室8および第2処理室9は、それぞれ、第1処理空間S1および第2処理空間S2を区画している。第2処理空間S2は、第1処理空間S1内に設けられ、第1処理空間S1に通じている。スピンチャック10に保持された基板Wは、チャック昇降機構36によって第1処理空間S1または第2処理空間S2に配置される。処理液供給機構12は、第2処理空間S2で基板Wに処理液を供給する。第1処理空間S1および第2処理空間S2の気圧は、排気機構23およびFFU24によって、第1処理空間S1の気圧が第1処理空間S1の外の気圧よりも高く、第2処理空間S2の気圧が第1処理空間S1の気圧よりも低くなるように制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、たとえば、半導体ウエハなどの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に処理液を供給する処理液ノズルとを備えている。スピンチャックおよび処理液ノズルは、処理室内に配置されている。処理室の内部は、密閉されている。処理室は、箱形の隔壁と、隔壁に設けられた開口部を開閉するシャッターとを含む。未処理の基板は、開口部を通って処理室内に搬入される。そして、基板がスピンチャックによって回転されている状態で、処理液ノズルから吐出された処理液が基板に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−26948号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
基板がスピンチャックによって回転されている状態で、処理液が基板に供給されると、処理液が遠心力によって基板から振り切られて、処理液のミストが発生する。また、基板から振り切られた処理液が処理室の内面に衝突して、処理液のミストが発生する。処理液のミスト(特に、薬液のミスト)が処理室の外に漏れないようにするために、処理室内の気圧を陰圧(処理室の外の気圧よりも低い値)に制御することが考えられる。しかしながら、処理室の内部が完全に密閉されていない場合や、密閉度が低下した場合に、処理室内の気圧が陰圧であると、パーティクルが、処理室の外から中に進入して、基板に付着するおそれがある。そのため、基板の清浄度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、基板の清浄度を高めることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、第1処理空間(S1)を区画する第1処理室(8)と、前記第1処理空間内に設けられ、前記第1処理空間に通じる第2処理空間(S2)を区画する第2処理室(9)と、基板(W)を保持する基板保持機構(10)と、前記第2処理室および基板保持機構を相対移動させて、前記基板保持機構に保持された基板を前記第1処理空間または第2処理空間に位置させる相対移動機構(36)と、処理液を吐出する吐出部材(14,15)を含み、前記基板保持機構に保持された基板が前記第2処理空間に位置しているときに、前記吐出部材から処理液を吐出させて前記基板保持機構に保持された基板に処理液を供給する処理液供給機構(12)と、前記第1処理空間の気圧が前記第1処理空間の外の気圧よりも高く、前記第2処理空間の気圧が前記第1処理空間の気圧よりも低くなるように、前記第1処理空間および第2処理空間の気圧を制御する気圧制御機構(23,24)とを含む、基板処理装置(1)である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【0006】
この構成によれば、第1処理空間を区画する第1処理室と、第2処理空間を区画する第2処理室とが設けられている。第2処理空間は、第1処理空間内に設けられており、第1処理空間に通じている。基板保持機構に保持された基板は、第2処理室および基板保持機構が相対移動機構によって相対移動されることにより、第1処理空間または第2処理空間に配置される。また、処理液供給機構は、基板保持機構に保持された基板が第2処理空間に位置しているときに、吐出部材から処理液を吐出させて当該基板に処理液を供給する。また、第1処理空間および第2処理空間の気圧は、気圧制御機構によって制御される。
【0007】
具体的には、第1処理空間の気圧は、第1処理空間の外の気圧よりも高い。したがって、第1処理室の内部が完全に密閉されていない場合や、密閉度が低下した場合であっても、第1処理空間の外で漂うパーティクルが、第1処理空間に進入することが抑制または防止される。そのため、パーティクルが、第1処理空間の外から中に進入して、基板に付着することが抑制または防止される。これにより、基板の清浄度が高められる。また、第2処理空間の気圧は、第1処理空間の気圧よりも低い。したがって、処理液供給機構から基板への処理液の供給に伴って第2処理空間で発生した処理液のミストは、第2処理空間から第1処理空間に移動することが抑制または防止される。これにより、第2処理空間で発生した処理液のミスト(特に、薬液のミスト)が、第1処理空間の外に移動することが抑制または防止される。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記基板保持機構に保持された基板を乾燥させる乾燥機構(35)と、前記乾燥機構、相対移動機構、および処理液供給機構を制御する制御装置(7)とをさらに含み、前記制御装置は、前記処理液供給機構を制御することにより、前記第2処理空間で前記基板保持機構に保持された基板に処理液を供給させる処理液供給工程と、前記相対移動機構を制御することにより、当該基板に処理液を供給させた後に前記第2処理室および基板保持機構を相対移動させて当該基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる移動工程と、前記乾燥機構を制御することにより、当該基板を前記第1処理空間で乾燥させる乾燥工程とを実行する、請求項1記載の基板処理装置である。
【0009】
この構成によれば、処理液供給機構の吐出部材から吐出された処理液が、第2処理空間に位置する基板に供給される。そして、この基板は、第2処理空間から第1処理空間に移動され、乾燥機構によって乾燥される。すなわち、基板保持機構に保持された基板は、第2処理空間で処理液によって処理され、第1処理空間で乾燥される。前述のように、第2処理空間で発生した処理液のミストは、第2処理空間から第1処理空間に移動することが抑制または防止される。したがって、基板は、第2処理空間で発生した処理液のミストから隔離された状態で乾燥される。これにより、基板の清浄度が高められる。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記処理液供給工程は、前記基板保持機構に保持された基板を覆う処理液の液膜を形成する工程を含み、前記移動工程は、前記基板保持機構に保持された基板に前記液膜を保持させ、かつ当該基板への処理液の供給を停止させた状態で当該基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる工程を含む、請求項2記載の基板処理装置である。
【0011】
この構成によれば、基板を覆う処理液の液膜が基板に保持され、かつ当該基板への処理液の供給が停止された状態で、基板保持機構に保持された基板が第2処理空間から第1処理空間に移動される。したがって、基板保持機構に保持された基板は、処理液の液膜によって保護された状態で移動される。これにより、処理液のミストやパーティクルが基板に直接付着することが抑制または防止される。また、基板への処理液の供給が停止された状態で基板が移動されるので、たとえば、基板から排出された処理液が、第1処理室や第2処理室の内面に当たって基板の方に跳ね返ることが抑制または防止される。したがって、跳ね返った処理液に含まれるパーティクルが基板に付着することが抑制または防止される。これにより、基板の清浄度が高められる。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記気圧制御機構は、前記第1および第2処理空間から気体を排出する排気機構(23)を含み、前記制御装置は、前記排気機構および乾燥機構を制御することにより、前記乾燥工程において、前記第1処理空間の気圧が前記第2処理空間の気圧よりも高い状態を維持しつつ、前記第1処理空間の排気流量を増加させる、請求項2または3記載の基板処理装置である。
【0013】
この構成によれば、第1処理空間および第2処理空間内の気体が排気機構によって排出される。基板が第1処理空間で乾燥されるときには、第1処理空間の気圧が第2処理空間の気圧よりも高い状態が維持されつつ、第1処理空間の排気流量が増加される。したがって、基板が第1処理空間で乾燥されるとき、第1処理空間を流れる気体の流速が高まる。これにより、乾燥処理に伴って第1処理空間で発生した処理液のミストは、気流に乗って第1処理空間から効率的に排出される。さらに、第1処理空間の気圧が第2処理空間の気圧よりも高い状態が維持されるから、第2処理空間で発生した処理液のミストが、第1処理空間に移動して、基板に付着することが抑制または防止される。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記第2処理室は、前記第1処理空間および第2処理空間を連通させる連通部(22)を含み、前記基板処理装置は、前記連通部を塞ぐ閉塞部材(11)と、前記閉塞部材を移動させる閉塞部材移動機構(39)とをさらに含み、前記制御装置は、前記閉塞部材移動機構および処理液供給機構を制御することにより、前記閉塞部材によって前記連通部を塞いだ状態で前記処理液供給工程を実行する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この構成によれば、第1処理空間および第2処理空間を連通させる連通部が、第2処理室に設けられている。連通部は、閉塞部材が閉塞部材移動機構によって移動されることにより開閉される。第2処理空間での基板への処理液の供給は、連通部が閉塞部材によって塞がれた状態で行われる。したがって、第2処理空間の密閉度が高められた状態で処理液が基板に供給される。そのため、第2処理空間で発生した処理液のミストは、第2処理空間から第1処理空間に移動することが確実に抑制または防止される。これにより、第2処理空間で発生した処理液のミストは、第1処理空間に移動して、基板に付着することが確実に抑制または防止される。
【0016】
請求項6記載の発明は、周囲の気圧よりも高い気圧を有し、第1処理室によって区画された第1処理空間から、前記第1処理空間の気圧よりも低い気圧を有し、第2処理室によって区画され、前記第1処理空間内に設けられた第2処理空間に基板を移動させる工程と、前記第2処理空間で基板に処理液を供給する処理液供給工程と含む、基板処理方法である。この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、処理液が供給された基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる移動工程と、前記第1処理空間で基板を乾燥させる乾燥工程とをさらに含む、請求項6記載の基板処理方法である。この発明によれば、請求項2の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項8記載の発明は、前記処理液供給工程は、基板を覆う処理液の液膜を形成する工程を含み、前記移動工程は、基板に前記液膜を保持させ、かつ当該基板への処理液の供給を停止させた状態で当該基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる工程を含む、請求項7記載の基板処理方法である。この発明によれば、請求項3の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る処理部の概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る基板の処理例について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
基板処理装置1は、薬液やリンス液などの処理液によって半導体ウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、インデクサブロック2と、インデクサブロック2に結合された処理ブロック3とを備えている。基板処理装置1は、たとえば、クリーンルーム内に配置される。
【0020】
インデクサブロック2は、キャリア保持部4と、インデクサロボットIRと、インデクサロボット移動機構5(以下では、「IR移動機構5」という。)とを備えている。キャリア保持部4は、複数枚の基板Wを収容できるキャリアCを保持する。キャリアCは、所定の配列方向U(以下「キャリア配列方向U」という。)に沿って配列された状態で、キャリア保持部4に保持される。インデクサロボットIRは、キャリア保持部4に保持されたキャリアCに基板Wを搬入する搬入動作、および基板WをキャリアCから搬出する搬出動作を行う。また、IR移動機構5は、キャリア配列方向Uに沿ってインデクサロボットIRを水平に移動させる。
【0021】
一方、処理ブロック3は、それぞれ基板Wを一枚ずつ処理する複数(たとえば4つ以上)の処理部6と、センターロボットCRとを備えている。複数の処理部6は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。複数の処理部6は、キャリア配列方向Uに間隔を空けて配置されている。センターロボットCRは、処理部6に基板Wを搬入する搬入動作、および基板Wを処理部6から搬出する搬出動作を行う。また、センターロボットCRは、インデクサロボットIRから基板Wを受け取ったり、処理部6から搬出した基板WをインデクサロボットIRに渡したりする。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、制御装置7によって制御される。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る処理部6の概略構成を示す模式図である。
処理部6は、第1処理室8と、第1処理室8内に設けられた第2処理室9とを備えている。また、処理部6は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック10(基板保持機構)と、スピンチャック10の真上で水平に配置された遮断板11(閉塞部材)と、スピンチャック10に保持された基板Wに処理液を供給する処理液供給機構12と、スピンチャック10を取り囲む環状のカップ13とを備えている。遮断板11は、第1処理室8内に配置されており、スピンチャック10およびカップ13は、第2処理室9内に配置されている。処理液供給機構12は、第1処理室8内に配置された中心軸ノズル14(吐出部材)と、第2処理室9内に配置された薬液ノズル15(吐出部材)とを含む。
【0023】
第1処理室8は、第1隔壁16、カバー17、およびシャッター18を備えている。また、第1処理室8は、第1処理空間S1を有している。第1処理空間S1は、密閉された空間である。第1処理空間S1は、第1隔壁16、カバー17、およびシャッター18によって区画されている。第1隔壁16は、たとえば、箱形である。カバー17は、第1隔壁16の外に配置されており、シャッター18は、第1隔壁16の中に配置されている。第1隔壁16に設けられた2つの開口は、それぞれ、カバー17およびシャッター18によって覆われている。カバー17は、たとえばメンテナンスが行われるときに第1隔壁16から取り外される。また、シャッター18によって覆われた開口は、センターロボットCRのハンドHが出入りする出入り口19である。この開口(出入り口19)は、シャッター18が開閉機構20によって昇降されることにより開閉される。第1処理空間S1は、出入り口19がシャッター18によって閉じられることにより密閉される。
【0024】
また、第2処理室9は、第2隔壁21を備えている。また、第2処理室9は、第1処理空間S1内に設けられた第2処理空間S2を有している。第2処理空間S2は、第2隔壁21によって区画されている。第2隔壁21は、たとえば、箱形である。第2隔壁21は、第1隔壁16の中に配置されている。第2隔壁21は、第2隔壁21の上部を上下に貫通する開口部22(連通部)を有している。スピンチャック10は、開口部22の真下に配置されており、遮断板11は、開口部22の真上に配置されている。開口部22は、たとえば、基板Wの直径よりも大きな直径を有する円形である。第2隔壁21の内部は、この開口部22を介して、第1隔壁16の内部に接続されている。これにより、第2処理空間S2が第1処理空間S1に連通されている。
【0025】
また、処理部6は、第1隔壁16および第2隔壁21の下部に連結された排気機構23(気圧制御機構)と、第1隔壁16の上部に取り付けられたFFU24(ファン・フィルタ・ユニット)(気圧制御機構)とを備えている。排気機構23は、第1処理空間S1および第2処理空間S2内の空気を下から排出する。また、FFU24は、クリーンルーム内の清浄空気をさらに浄化して、この浄化された清浄空気を下向きに送る。FFU24によって送られた清浄空気は、第1処理空間S1に供給される。また、第1処理空間S1に供給された清浄空気の一部は、開口部22を通って第2処理空間S2に供給される。排気機構23による排気およびFFU24による送風が行われることにより、清浄空気による下降気流(ダウンフロー)が第1処理空間S1および第2処理空間S2に形成される。下降気流は、たとえば、常時形成されている。
【0026】
排気機構23は、第1ダクト25と、第2ダクト26と、排気集合ボックス27と、流量調整弁28と、吸引装置29とを含む。第1ダクト25および第2ダクト26は、それぞれ、第1隔壁16および第2隔壁21の下部に連結されている。また、排気集合ボックス27は、第1ダクト25および第2ダクト26に連結されている。流量調整弁28は、排気集合ボックス27内に配置されている。吸引装置29は、排気集合ボックス27に連結されている。吸引装置29は、たとえば、ポンプを含む。排気集合ボックス27内の空気は、吸引装置29によって吸引されている。また、流量調整弁28は、常時開かれている。したがって、第1処理空間S1および第2処理空間S2内の空気は、それぞれ第1ダクト25および第2ダクト26を通って排気集合ボックス27内に吸引されている。これにより、第1処理空間S1および第2処理空間S2内の空気が個別に排出されている。
【0027】
流量調整弁28は、たとえば、バタフライバルブである。流量調整弁28は、円板状の弁体30と、弁体30の直径に沿って配置された回動軸31と、弁体30を回動軸31まわりに回動させる開度調節機構32とを含む。開度調節機構32は、たとえば、シリンダおよびモータの少なくとも一つを含む。第1処理空間S1および第2処理空間S2からの排気流量は、流量調整弁28によって調整される。具体的には、弁体30が回動軸31まわりに回動されると、第1処理空間S1および第2処理空間S2の一方の空間からの排気流量が増加し、他方の空間からの排気流量が減少する。流量調整弁28は、たとえば、第2処理空間S2からの排気流量が第1処理空間S1からの排気流量よりも大きくなるように設定されている。
【0028】
インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRが配置された空間を含む基板処理装置1の内部の気圧は、基板処理装置1の外の気圧よりも高い値に制御されている。これにより、基板処理装置1の外で漂うパーティクルが、基板処理装置1内に進入して、搬送中の基板Wに付着することが抑制または防止される。また、第1処理空間S1およびの第2処理空間S2の気圧は、排気機構23による排気流量およびFFU24による送風流量によって制御されている。第1処理空間S1の気圧は、第1処理空間S1の外の気圧よりも高い。また、第2処理空間S2の気圧は、第1処理空間S1の気圧よりも低い。また、第2処理空間S2の気圧は、たとえば、第1処理空間S1の外の気圧よりも低い。
【0029】
また、スピンチャック10は、水平に配置された円盤状のスピンベース33と、このスピンベース33上に配置された複数個の挟持部材34と、スピンベース33に連結されたスピンモータ35(乾燥機構)とを含む。複数個の挟持部材34は、スピンベース33の上面周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。スピンチャック10は、各挟持部材34を基板Wの周端面に接触させることにより、基板Wを周囲から挟むことができる。これにより、基板Wが、スピンベース33の上方で水平に保持される。また、複数個の挟持部材34によって基板Wが保持された状態で、スピンモータ35の駆動力がスピンベース33に入力されることにより、基板Wが、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線まわりに回転される。
【0030】
スピンチャック10は、チャック昇降機構36(相対移動機構)に連結されている。チャック昇降機構36は、たとえば、ボールねじ機構およびシリンダの少なくとも一つを含む。スピンチャック10は、チャック昇降機構36によって鉛直方向に昇降される。また、第2隔壁21の開口部22は、スピンベース33の直径よりも大きな直径を有している。スピンチャック10が上昇されると、スピンベース33が、開口部22を通過して第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動する。これにより、スピンチャック10に保持された基板Wが、第1処理空間S1または第2処理空間S2に配置される。
【0031】
スピンチャック10は、チャック昇降機構36によって、第1下位置(図2に示す位置)と第1上位置(たとえば図3参照)との間で昇降される。第1下位置は、スピンチャック10に保持された基板Wが第2処理空間S2に配置される位置である。また、第1上位置は、スピンチャック10に保持された基板Wが第1処理空間S1に配置される位置である。スピンチャック10は、第1上位置および第1下位置に配置される。また、スピンチャック10は、第1上位置および第1下位置の間に設けられた第1中間位置(たとえば図9参照)に配置される。第1中間位置は、たとえば、スピンチャック10に保持された基板Wが開口部22に配置される位置である。
【0032】
また、遮断板11は、たとえば、円板状である。遮断板11の直径は、たとえば、基板Wの直径とほぼ同じ、または基板Wの直径よりもやや大きい。また、遮断板11の直径は、たとえば、開口部22の直径よりもやや小さい。遮断板11は、遮断板11の中心軸線がスピンチャック10の回転軸線上に位置するように配置されている。また、遮断板11は、遮断板11の中心軸線が開口部22の中心軸線上に位置するように配置されている。さらに、遮断板11は、遮断板11の下面が水平になるように配置されている。基板Wがスピンチャック10に保持されている状態では、遮断板11の下面が基板Wの上面に対向する。
【0033】
遮断板11は、水平な姿勢で支軸37の下端に連結されている。遮断板11は、遮断板回転機構38と、遮断板昇降機構39(閉塞部材移動機構)とに連結されている。遮断板回転機構38は、たとえば、モータを含む。遮断板11および支軸37は、遮断板回転機構38によって、スピンチャック10の回転軸線まわりに回転される。また、遮断板昇降機構39は、たとえば、ボールねじ機構およびシリンダの少なくとも一つを含む。遮断板11および支軸37は、遮断板昇降機構39によって、鉛直方向に昇降される。遮断板11および支軸37は、たとえば第1処理空間S1内で昇降される。
【0034】
遮断板11は、第2上位置(たとえば図3参照)と第2下位置(図2に示す位置)との間で昇降される。第2下位置は、遮断板11が第1処理空間S1において開口部22に近接する位置である。遮断板11が第2下位置に配置されると、開口部22の大部分が遮断板11によって塞がれる。遮断板11は、遮断板昇降機構39によって第2上位置および第2下位置に配置される。また、遮断板11は、第2上位置および第2下位置の間に設けられた第2中間位置(たとえば図10参照)に配置される。第2中間位置は、遮断板11の下面が第1上位置に位置するスピンチャック10に保持された基板Wの上面に近接する位置である。
【0035】
また、処理液供給機構12は、中心軸ノズル14と、リンス液供給管40と、リンス液バルブ41とを含む。中心軸ノズル14は、遮断板11の中心軸線に沿って配置されている。中心軸ノズル14は、支軸37の内部で上下に延びている。リンス液供給管40は、中心軸ノズル14の上端部に接続されている。リンス液バルブ41は、リンス液供給管40に介装されている。リンス液バルブ41が開かれると、リンス液供給管40から中心軸ノズル14へのリンス液の供給が開始される。また、リンス液バルブ41が閉じられると、リンス液供給管40から中心軸ノズル14へのリンス液の供給が停止される。中心軸ノズル14に供給されたリンス液は、中心軸ノズル14の下端から下方に吐出される。そして、このリンス液は、遮断板11の中央部を上下に貫通する貫通孔を通って、遮断板11の下面中央部から下方に吐出される。
【0036】
また、処理液供給機構12は、薬液ノズル15と、薬液供給管42と、薬液バルブ43とを含む。薬液ノズル15は、ノズル移動機構44に連結されている。ノズル移動機構44は、たとえば、モータを含む。薬液ノズル15は、ノズル移動機構44によって、第2処理空間S2内で移動される。具体的には、薬液ノズル15は、第1下位置に位置するスピンチャック10の上方に設けられた処理位置(図2に示す位置)と、処理位置から水平に離れた位置に設けられた退避位置(たとえば図3参照)との間で移動される。薬液供給管42は、薬液ノズル15の上端部に接続されている。薬液バルブ43は、薬液供給管42に介装されている。薬液バルブ43が開かれると、薬液供給管42から薬液ノズル15への薬液の供給が開始される。また、薬液バルブ43が閉じられると、薬液供給管42から薬液ノズル15への薬液の供給が停止される。薬液ノズル15に供給された薬液は、薬液ノズル15の下端から下方に吐出される。処理位置は、薬液ノズル15から吐出された薬液がスピンチャック10に保持された基板Wの上面中央部に供給されるように設定されている。
【0037】
中心軸ノズル14から吐出されたリンス液は、スピンチャック10に保持された基板Wの上面中央部に供給される。また、薬液ノズル15が処理位置に位置する状態で、薬液ノズル15から薬液が吐出されると、吐出された薬液が、スピンチャック10に保持された基板Wの上面中央部に供給される。基板Wが回転している状態で、薬液やリンス液などの処理液が、基板Wの上面中央部に供給されると、供給された処理液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板W上を外方に広がっていく。これにより、処理液が基板Wの上面全域に供給される。また、このとき基板Wの上面周縁部に達した処理液は、遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。そして、この処理液は、カップ13によって受け止められる。カップ13によって受け止められた処理液は、回収または廃棄される。
【0038】
図3〜図11は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る基板Wの処理例について説明するための概略図である。以下では、図2を参照して、基板Wの処理例について説明する。また、以下の説明において図3〜図11を適宜参照する。
未処理の基板Wは、センターロボットCRによって第1処理室8内に搬入される。具体的には、制御装置7は、チャック昇降機構36を制御して、図3に示すように、薬液ノズル15が退避位置に配置されており、遮断板11が第2上位置に配置されている状態で、スピンチャック10を第1下位置から第1上位置に移動させる。これにより、スピンベース33が、開口部22を通って第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動する。スピンチャック10が第1上位置に配置された後は、制御装置7が、開閉機構20を制御して、シャッター18を下降させる。これにより、図4に示すように、出入り口19が開かれる。第1処理空間S1の気圧が、第1処理空間S1の外の気圧よりも高いので、このとき、第1処理空間S1の外の空気が、出入り口19を通って第1処理空間S1に進入することはない。そのため、第1処理空間S1の外に存在するパーティクルが、空気と共に第1処理空間S1に進入することはない。
【0039】
出入り口19が開かれた後は、制御装置7が、センターロボットCRを制御して、図4に示すように、ハンドHを第1処理空間S1に進入させる。続いて、制御装置7は、センターロボットCRを制御して、ハンドHに保持された基板Wをスピンチャック10に移動させる。基板Wがスピンチャック10に渡された後は、制御装置7が、センターロボットCRを制御して、ハンドHを第1処理室8の外に移動させる。その後、制御装置7は、開閉機構20を制御して、シャッター18を上昇させる。これにより、図5に示すように、出入り口19が閉じられる。また、制御装置7は、チャック昇降機構36を制御して、薬液ノズル15を退避させた状態でスピンチャック10を第1上位置から第1下位置に移動させる。これにより、図5に示すように、スピンベース33が、開口部22を通って第1処理空間S1から第2処理空間S2に移動する。このようにして、スピンチャック10が元の位置(第1下位置)に戻される。
【0040】
次に、薬液によって基板Wを処理する薬液処理(処理液供給工程)が行われる。具体的には、制御装置7は、遮断板昇降機構39を制御して、図6に示すように、遮断板11を第2上位置から第2下位置に移動させる。これにより、遮断板11が開口部22の近傍に配置され、開口部22の大分部が遮断板11によって塞がれる。そして、制御装置7は、ノズル移動機構44を制御して、薬液ノズル15を処理位置に移動させる。続いて、制御装置7は、スピンモータ35を制御して、スピンチャック10を回転させる。これにより、スピンチャック10に保持された基板Wが鉛直軸線まわりに回転する。基板Wの回転が開始された後は、制御装置7が、薬液バルブ43を開いて、薬液ノズル15から薬液を吐出させる。これにより、図6に示すように、薬液が基板Wの上面全域に供給され、薬液処理が行われる。そして、薬液が吐出されてから所定時間が経過すると、制御装置7は、薬液バルブ43を閉じて、薬液ノズル15からの薬液の吐出を停止させる。さらに、制御装置7は、ノズル移動機構44を制御して、薬液ノズル15を退避位置に移動させる。
【0041】
薬液処理において、基板Wの上面周縁部に達した薬液は、遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。そして、この薬液は、カップ13によって受け止められる。図6に示すように、薬液が基板Wの周囲に振り切られることにより、薬液のミストが第2処理空間S2に発生する。また、振り切られた薬液がカップ13や第2隔壁21の内面に衝突することにより、薬液のミストが第2処理空間S2に発生する。図6に示すように、この薬液のミストは、第2処理空間S2内の空気と共に第2ダクト26を通って第2処理空間S2から排出される。また、第1処理空間S1の気圧が第2処理空間S2の気圧よりも高いので、薬液のミストは、第1処理空間S1への移動が抑制または防止されている。さらに、開口部22の大部分が遮断板11によって塞がれているので、第2処理空間S2から第1処理空間S1への薬液のミストの移動が確実に抑制または防止されている。
【0042】
次に、リンス液の一例である純水(脱イオン水)によって基板Wを洗い流すリンス処理(処理液供給工程)が行われる。具体的には、図7に示すように、制御装置7は、遮断板11が第2下位置に位置する状態で、リンス液バルブ41を開いて、中心軸ノズル14からリンス液を吐出させる。中心軸ノズル14から吐出されたリンス液は、遮断板11の下面中央部から下方に吐出される。これにより、リンス液が基板Wの上面全域に供給される。そのため、基板Wの上面に付着している薬液がリンス液によって洗い流される。このようにして、リンス処理が行われる。また、図7に示すように、リンス処理に伴って第2処理空間S2で発生したリンス液のミストは、薬液のミストと同様に、第1処理空間S1に移動することなく、第2処理空間S2内の空気と共に第2ダクト26を通って第2処理空間S2から排出される。
【0043】
次に、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が形成される。具体的には、制御装置7は、スピンモータ35を制御して、基板Wへのリンス液の供給を継続させた状態で、基板Wの回転を停止、または基板Wの回転速度を低速(たとえば10〜30rpm程度)に変更させる。これにより、基板W上のリンス液に加わる遠心力が弱まって、基板W上から排出されるリンス液が減少する。したがって、中心軸ノズル14から吐出されたリンス液が基板W上に溜まっていく。これにより、図8に示すように、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が形成される。リンス液の液膜が形成された後は、制御装置7が、リンス液バルブ41を閉じて、中心軸ノズル14からのリンス液の吐出を停止させる。リンス液の液膜が基板W上に形成されることにより、基板Wの上面がリンス液の液膜によって保護される。これにより、第2処理空間S2を漂う薬液やリンス液のミストが基板Wの上面に直接付着することが抑制または防止される。
【0044】
次に、スピンチャック10に保持された基板Wが、第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動される(移動工程)。具体的には、制御装置7は、チャック昇降機構36を制御して、図9に示すように、基板W上にリンス液の液膜を保持させた状態で、スピンチャック10を第1下位置から第1中間位置に移動させる。これにより、スピンチャック10に保持された基板Wが開口部22に配置され、基板Wの上面が遮断板11の下面に近接する。その後、制御装置7は、チャック昇降機構36および遮断板昇降機構39を制御して、スピンチャック10および遮断板11を同期させながら、スピンチャック10および遮断板11をそれぞれ第1上位置および第2中間位置まで上昇させる。したがって、図10に示すように、スピンチャック10に保持された基板Wは、遮断板11の下面が基板Wの上面に近接した状態で第1処理空間S1に移動する。遮断板11の下面が基板Wの上面に近接しているので、基板Wの上面は、遮断板11によって保護された状態で第1処理空間S1に移動する。したがって、パーティクルが第1処理空間S1に漂っていたとしても、このパーティクルは、基板Wに付着することが抑制または防止される。
【0045】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(乾燥工程)が行われる。具体的には、制御装置7は、開度調節機構32を制御して、図11に示すように、弁体30を回動軸31まわりに回動させる。これにより、第1処理空間S1からの排気流量が増加され、第1処理空間S1からの排気流量が第2処理空間S2からの排気流量よりも大きくなる。そのため、第1処理空間S1を流れる空気の流速が高まる。また、このとき、第1処理空間S1の気圧は、第1処理空間S1の外の気圧よりも高く、かつ第2処理空間S2の気圧よりも高い状態に維持されている。次に、制御装置7は、スピンモータ35および遮断板回転機構38を制御して、基板Wおよび遮断板11を高速回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、図11に示すように、大きな遠心力が、基板Wに付着しているリンス液に作用し、リンス液が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wが第1処理空間S1で乾燥される。また、図11に示すように、乾燥処理に伴って第1処理空間S1で発生したリンス液のミストは、第1処理空間S1内の空気と共に第1ダクト25を通って第1処理空間S1から排出される。さらに、遮断板11の下面が基板Wの上面に近接した状態で基板Wが乾燥されるので、第1処理空間S1を漂うリンス液のミストは、基板Wに付着することが抑制または防止される。
【0046】
乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御装置7が、スピンモータ35および遮断板回転機構38を制御して、スピンチャック10および遮断板11の回転を停止させる。その後、制御装置7は、遮断板昇降機構39を制御して、遮断板11を第2中間位置から第1上位置に移動させる。また、制御装置7は、開閉機構20を制御して、シャッター18を下降させる。これにより、出入り口19が開かれる。その後、制御装置7は、センターロボットCRを制御して、ハンドHを第1処理空間S1に進入させる。続いて、制御装置7は、センターロボットCRを制御して、スピンチャック10に保持された基板WをハンドHに移動させる。基板WがハンドHによって保持された後は、制御装置7が、センターロボットCRを制御して、ハンドHを第1処理室8の外に移動させる。その後、制御装置7は、開閉機構20を制御して、シャッター18を上昇させる。これにより、出入り口19が閉じられる。
【0047】
以上のように本実施形態では、第1処理空間S1および第2処理空間S2の気圧が、第1処理空間S1の気圧が第1処理空間S1の外の気圧よりも高く、第2処理空間S2の気圧が第1処理空間S1の気圧よりも低くなるように制御されている。第1処理空間S1の気圧が第1処理空間S1の外の気圧よりも高いので、第1処理室8の内部が完全に密閉されていない場合や、密閉度が低下した場合であっても、第1処理空間S1の外を漂うパーティクルは、第1処理空間S1に進入することが抑制または防止される。そのため、パーティクルが、第1処理空間S1の外から中に進入して、基板Wに付着することが抑制または防止される。これにより、基板Wの清浄度が高められる。また、第2処理空間S2の気圧が第1処理空間S1の気圧よりも低いので、第2処理空間S2で発生した処理液のミストが、第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動することが抑制または防止される。これにより、第2処理空間S2で発生した処理液のミスト(特に、薬液のミスト)が、第1処理空間S1の外に移動することが抑制または防止される。
【0048】
また、本実施形態では、中心軸ノズル14および薬液ノズル15から吐出された処理液が、第2処理空間S2に位置する基板Wに供給される。そして、この基板Wは、第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動され、スピンチャック10の高速回転によって乾燥される。すなわち、基板Wは、第2処理空間S2で処理液によって処理され、第1処理空間S1で乾燥される。前述のように、第2処理空間S2で発生した処理液のミストは、第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動することが抑制または防止される。したがって、基板Wは、第2処理空間S2で発生した処理液のミストから隔離された状態で乾燥される。これにより、基板Wの清浄度が高められる。また、基板Wは、リンス液(前述の処理例では、純水)によって洗い流された後に第1処理空間S1で乾燥される。したがって、乾燥処理において第1処理空間S1で発生するのは、純水のミストである。そのため、第1処理空間S1の気圧が第1処理空間S1の外の気圧よりも高い場合であっても、薬液のミストが第1処理空間S1の外に漏れることはない。
【0049】
また、本実施形態では、基板Wを覆う処理液の液膜が基板Wに保持され、かつ当該基板Wへの処理液の供給が停止された状態で、スピンチャック10に保持された基板Wが第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動される。したがって、スピンチャック10に保持された基板Wは、処理液の液膜によって保護された状態で移動される。これにより、処理液のミストやパーティクルが基板Wに直接付着することが抑制または防止される。また、基板Wへの処理液の供給が停止された状態で基板Wが移動されるので、たとえば、基板Wから排出された処理液が、第1処理室8や第2処理室9の内面(特に、開口部22の内面)に当たって基板Wの方に跳ね返ることが抑制または防止される。したがって、跳ね返った処理液に含まれるパーティクルが基板Wに付着することが抑制または防止される。これにより、基板Wの清浄度が高められる。
【0050】
また、本実施形態では、第1処理空間S1および第2処理空間S2内の気体が排気機構23によって排出される。第1処理空間S1および第2処理空間S2の気圧は、排気流量によって制御される。すなわち、排気流量が増加されると気圧が減少し、排気流量が減少されると気圧が増加する。基板Wが第1処理空間S1で乾燥されるときには、第1処理空間S1の気圧が第2処理空間S2の気圧よりも高い状態が維持されつつ、第1処理空間S1の排気流量が増加される。したがって、基板Wが第1処理空間S1で乾燥されるとき、第1処理空間S1を流れる気体の流速が高まる。これにより、乾燥処理に伴って第1処理空間S1で発生した処理液のミストは、気流に乗って第1処理空間S1から効率的に排出される。さらに、第1処理空間S1の気圧が第2処理空間S2の気圧よりも高い状態が維持されているから、第2処理空間S2で発生した処理液のミストが、第1処理空間S1に移動して、基板Wに付着することが抑制または防止される。
【0051】
また、本実施形態では、第1処理空間S1および第2処理空間S2を連通させる開口部22が、第2処理室9に設けられている。開口部22は、遮断板11が遮断板昇降機構39によって移動されることにより開閉される。第2処理空間S2での基板Wへの処理液の供給は、開口部22が遮断板11によって塞がれた状態で行われる。したがって、第2処理空間S2の密閉度が高められた状態で処理液が基板Wに供給される。そのため、第2処理空間S2で発生した処理液のミストは、第2処理空間S2から第1処理空間S1に移動することが確実に抑制または防止される。これにより、第2処理空間S2で発生した処理液のミストは、第1処理空間S1に移動して、基板Wに付着することが確実に抑制または防止される。
【0052】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、スピンチャック10が昇降されることにより、第2処理室9およびスピンチャック10が相対移動する場合について説明した。しかし、第2処理室9のみ、または第2処理室9およびスピンチャック10の両方が移動されることにより、第2処理室9およびスピンチャック10が相対移動されてもよい。
【0053】
また、前述の実施形態では、薬液が薬液ノズル15から吐出され、リンス液が中心軸ノズル14から吐出される場合について説明した。しかし、薬液およびリンス液の両方が薬液ノズル15から吐出されてもよい。また、薬液およびリンス液の両方が中心軸ノズル14から吐出されてもよい。また、中心軸ノズル14を設けずに、薬液ノズル15と同様の構成を有するリンス液ノズルを設けて、このリンス液ノズルからリンス液を吐出させてもよい。
【0054】
また、前述の実施形態では、1つの吸引装置29が、第1処理室8および第2処理室9に接続されている場合について説明した。また、前述の実施形態では、第1処理空間S1および第2処理空間S2の排気流量が1つの流量調整弁28によって調整される場合について説明した。しかし、吸引装置29および流量調整弁28は、それぞれ第1処理室8および第2処理室9ごとに設けられていてもよい。すなわち、第1処理空間S1内の気体を排出する専用の第1排気機構と、第2処理空間S2内の気体を排出する専用の第2排気機構とが設けられていてもよい。また、流量調整弁28は、バタフライバルブに限らず、ゲートバルブ、ボールバルブなどの他の形式のバルブであってもよい。
【0055】
また、前述の実施形態では、開口部22が、遮断板11によって部分的に塞がれる場合について説明した。また、前述の実施形態では、開口部22が円形である場合について説明した。しかし、開口部22は、遮断板11によって完全に塞がれてもよい。また、開口部22を塞ぐ部材が、遮断板11とは別に設けられていてもよい。また、開口部22は、円形でなくてもよい。具体的には、開口部22は、基板Wおよび基板Wを保持する部材(前述の実施形態では、スピンベース33および挟持部材34)が通過できる大きさを有していればよい。
【0056】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 基板処理装置
7 制御装置
8 第1処理室
9 第2処理室
10 スピンチャック(基板保持機構)
11 遮断板(閉塞部材)
12 処理液供給機構
14 中心軸ノズル(吐出部材)
15 薬液ノズル(吐出部材)
22 開口部(連通部)
23 排気機構(気圧制御機構)
24 FFU(気圧制御機構)
35 スピンモータ(乾燥機構)
36 チャック昇降機構(相対移動機構)
39 遮断板昇降機構(閉塞部材移動機構)
S1 第1処理空間
S2 第2処理空間
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1処理空間を区画する第1処理室と、
前記第1処理空間内に設けられ、前記第1処理空間に通じる第2処理空間を区画する第2処理室と、
基板を保持する基板保持機構と、
前記第2処理室および基板保持機構を相対移動させて、前記基板保持機構に保持された基板を前記第1処理空間または第2処理空間に位置させる相対移動機構と、
処理液を吐出する吐出部材を含み、前記基板保持機構に保持された基板が前記第2処理空間に位置しているときに、前記吐出部材から処理液を吐出させて前記基板保持機構に保持された基板に処理液を供給する処理液供給機構と、
前記第1処理空間の気圧が前記第1処理空間の外の気圧よりも高く、前記第2処理空間の気圧が前記第1処理空間の気圧よりも低くなるように、前記第1処理空間および第2処理空間の気圧を制御する気圧制御機構とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持機構に保持された基板を乾燥させる乾燥機構と、前記乾燥機構、相対移動機構、および処理液供給機構を制御する制御装置とをさらに含み、
前記制御装置は、前記処理液供給機構を制御することにより、前記第2処理空間で前記基板保持機構に保持された基板に処理液を供給させる処理液供給工程と、前記相対移動機構を制御することにより、当該基板に処理液を供給させた後に前記第2処理室および基板保持機構を相対移動させて当該基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる移動工程と、前記乾燥機構を制御することにより、当該基板を前記第1処理空間で乾燥させる乾燥工程とを実行する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給工程は、前記基板保持機構に保持された基板を覆う処理液の液膜を形成する工程を含み、
前記移動工程は、前記基板保持機構に保持された基板に前記液膜を保持させ、かつ当該基板への処理液の供給を停止させた状態で当該基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる工程を含む、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記気圧制御機構は、前記第1および第2処理空間から気体を排出する排気機構を含み、
前記制御装置は、前記排気機構および乾燥機構を制御することにより、前記乾燥工程において、前記第1処理空間の気圧が前記第2処理空間の気圧よりも高い状態を維持しつつ、前記第1処理空間の排気流量を増加させる、請求項2または3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2処理室は、前記第1処理空間および第2処理空間を連通させる連通部を含み、
前記基板処理装置は、前記連通部を塞ぐ閉塞部材と、前記閉塞部材を移動させる閉塞部材移動機構とをさらに含み、
前記制御装置は、前記閉塞部材移動機構および処理液供給機構を制御することにより、前記閉塞部材によって前記連通部を塞いだ状態で前記処理液供給工程を実行する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
周囲の気圧よりも高い気圧を有し、第1処理室によって区画された第1処理空間から、前記第1処理空間の気圧よりも低い気圧を有し、第2処理室によって区画され、前記第1処理空間内に設けられた第2処理空間に基板を移動させる工程と、
前記第2処理空間で基板に処理液を供給する処理液供給工程と含む、基板処理方法。
【請求項7】
処理液が供給された基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる移動工程と、
前記第1処理空間で基板を乾燥させる乾燥工程とをさらに含む、請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理液供給工程は、基板を覆う処理液の液膜を形成する工程を含み、
前記移動工程は、基板に前記液膜を保持させ、かつ当該基板への処理液の供給を停止させた状態で当該基板を前記第2処理空間から前記第1処理空間に移動させる工程を含む、請求項7記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−211095(P2011−211095A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79529(P2010−79529)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】