説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の全面を十分に洗浄することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、基板を保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持された基板Wに向けて処理液の液滴を吐出するノズル4とを含む。ノズル4には、処理液の液滴を吐出する複数の吐出口33が一列に並べられた列L1が複数列配置されている。ノズル4はノズルアーム18に保持されて、スピンチャック2に保持された基板Wの主面に垂直な垂直方向D1から見たときに基板Wの主面の回転中心C1を通る軌跡X1に沿って移動する。ノズル4は、垂直方向D1から見たときに複数の列L1と軌跡X1とが交差するようにノズルアーム18に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する処理液の液滴を吐出するノズルを備えた基板処理装置、およびこのノズルを用いた基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板からパーティクルなどの異物を除去する洗浄処理が行われる。たとえば特許文献1には、処理液の液滴を基板に衝突させて基板を洗浄する枚葉式の基板処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献1記載の基板処理装置は、処理液に振動を付与することにより、処理液の液滴を生成する洗浄ヘッドを備えている。洗浄ヘッドは、複数の吐出孔を一列に並べた孔列が複数列設けられた筒状体と、筒状体に取り付けられた圧電素子とを含む。筒状体の内部には、処理液が供給される。交流電圧が圧電素子に印加されると、筒状体内の処理液に振動が付与され、複数の吐出孔から処理液の液滴が噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−29315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の基板処理装置において、基板の洗浄処理が行われる際には、基板を回転させつつ、洗浄ヘッドを基板の中心部上方と端縁部上方との間でスキャンさせる。この際、洗浄ヘッドが洗浄ヘッドに設けられた吐出孔の孔列の配列方向と同じ方向にスキャンされると、基板の中心部においては、洗浄ヘッドに設けられた複数の孔列のうち、一部の孔列から吐出される処理液の液滴しか基板の中心部に供給されないため、基板の中心部が十分に洗浄されないことがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、基板の全面を十分に洗浄することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板を保持して回転させる基板保持回転手段(2)と、処理液の液滴を吐出する複数の吐出口が一列に並べられた列(L1)が複数列配置され、前記基板保持回転手段に保持された基板に向けて処理液の液滴を吐出するノズル(4)と、前記基板保持回転手段に保持された基板の主面に垂直な垂直方向(D1)から見たときに前記主面の回転中心(C1)を通る軌跡(X1)に沿って前記ノズルを移動させるとともに、前記垂直方向から見たときに複数の前記列と前記軌跡とが交差するように前記ノズルを保持するノズル保持移動手段(17)と、を備える基板処理装置(1)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0008】
本発明によれば、ノズル保持移動手段が、基板の主面に垂直な方向から見たときに前記主面の中心を通る軌跡に沿ってノズルを移動させる。さらに、ノズル保持移動手段は、基板の主面に垂直な方向から見たときに複数の吐出口により構成された複数の列と軌跡とが交差するようにノズルを保持している。すなわち、基板の主面に垂直な方向から見たときに、全ての列と軌跡とが交差している。したがって、ノズルから処理液の液滴を噴射させながら、前記軌跡に沿ってノズルを移動させることにより、全ての列から噴射された処理液の液滴を基板の主面中央部に順次衝突させることができる。これにより、基板の主面中央部を良好に洗浄することができる。
【0009】
前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の回転中心に重なる中心位置(Pc1)と、前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の周縁に重なる周縁位置(Pe1)との間で、前記垂直方向から見たときに複数の前記列が前記主面の回転中心に順次重なるように前記軌跡に沿って前記ノズルを移動させるように前記ノズル保持移動手段を制御する制御手段(7)をさらに備えていてもよい。(請求項2)
【0010】
この発明によれば、全ての列から噴射された処理液の液滴を基板の主面中央部に順次衝突させることができる。これにより、基板の主面中央部を良好に洗浄することができる。また、中央位置と周縁位置との間でノズルを移動させる場合には、第1周縁位置と第1周縁位置とは異なる第2周縁位置との間でノズルを移動させる場合に比べて、ノズルの移動範囲が狭い。したがって、中心位置と周縁位置との間でノズルを移動させることにより、基板処理装置内のスペースを有効に利用できる。
【0011】
前記ノズルは、前記列に沿って処理液が流通し、前記吐出口に接続している処理液流路(36)が複数の前記列のそれぞれに対応して設けられている本体(26)と、前記処理液流路を流通する処理液に振動を付与する圧電素子(14)とを含み、前記圧電素子に電圧を印加する電圧印加手段(16)をさらに備えていてもよい。(請求項3)
【0012】
この発明によれば、処理液流路に処理液を流通させると共に、電圧印加手段によって圧電素子に電圧を印加することにより、複数の処理液の液滴をノズルから噴射させることができる。これにより、基板保持手段に保持された基板に処理液の液滴を衝突させて、基板に付着している異物を、液滴の運動エネルギーによって物理的に除去することができる。さらに、たとえば、ノズルに供給される処理液の圧力および圧電素子の振動を制御することにより、液滴の大きさおよび速度のばらつきを抑制することができる。したがって、良好な洗浄を行うことができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、基板を保持して回転させる基板保持回転工程と、処理液の液滴を吐出する複数の吐出口が一列に並べられた列が複数列配置された、基板に向けて処理液の液滴を吐出するノズルを、基板の主面に垂直な垂直方向から見たときに前記主面の回転中心を通る軌跡に沿って移動させるノズル移動工程と、を含み、
前記ノズル移動工程において、前記垂直方向から見たときに複数の前記列と前記軌跡とが交差するように前記ノズルは保持される、基板処理方法である。
【0014】
この発明によれば、請求項1記載の基板処理装置の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0015】
前記ノズル移動工程は、前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の回転中心に重なる中心位置と、前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の周縁に重なる周縁位置との間で、前記垂直方向から見たときに複数の前記列が前記主面の回転中心に順次重なるように前記軌跡に沿って前記ノズルを移動させてもよい。(請求項5)
【0016】
この発明によれば、請求項2記載の基板処理装置の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る噴射ノズルおよびこれに関連する構成の平面図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る噴射ノズルの模式的な側面図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る噴射ノズルの模式的な分解斜視図である。
【図5】この発明の一実施形態に係る噴射ノズルに備えられた本体の構成について説明するための平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿う本体の断面図である。
【図7】図5におけるVII−VII線に沿う本体の断面図である。
【図8】図6の一部を拡大した図である。
【図9】この発明の一実施形態に係る基板処理装置によって行われる基板の処理例について説明するための図である。
【図10】噴射ノズルが中心位置に達する直前の状態を示す平面図である。
【図11】噴射ノズルが中心位置に位置する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式図である。図2は、この発明の一実施形態に係る噴射ノズル4およびこれに関連する構成の平面図である。
【0019】
この基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円形の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック2(基板保持回転手段)と、スピンチャック2を取り囲む筒状のカップ3と、スピンチャック2に保持された基板Wに処理液の液滴を供給する噴射ノズル4と、スピンチャック2に保持された基板Wにリンス液を供給する第1リンス液ノズル5および第2リンス液ノズル6と、スピンチャック2などの基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置7(制御手段)とを備えている。噴射ノズル4は、この発明のノズルの一例である。
【0020】
スピンチャック2は、基板Wを水平に保持して当該基板Wの中心を通る鉛直軸線まわりに回転可能なスピンベース8と、このスピンベース8を鉛直軸線まわりに回転させるスピンモータ9とを含む。スピンチャック2は、基板Wを水平方向に挟んで当該基板Wを水平に保持する挟持式のチャックであってもよいし、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)を吸着することにより当該基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。本実施形態では、スピンチャック2は、挟持式のチャックである。スピンモータ9は、制御装置7によって制御される。
【0021】
噴射ノズル4は、多数の処理液の液滴を下方に噴射するように構成されている。噴射ノズル4は、処理液供給管10を介して処理液供給機構11に接続されている。さらに、噴射ノズル4は、排出バルブ12が介装された処理液排出管13に接続されている。処理液供給機構11は、たとえば、ポンプを含む機構である。処理液供給機構11は、常時、所定圧力(たとえば、10MPa以下)で処理液を噴射ノズル4に供給している。処理液供給機構11から噴射ノズル4に供給される処理液としては、たとえば、純水(脱イオン水)や、炭酸水や、アンモニア水と過酸化水素水の混合液などが挙げられる。制御装置7は、処理液供給機構11を制御することにより、噴射ノズル4に供給される処理液の圧力を任意の圧力に変更することができる。
【0022】
また、図1に示すように、噴射ノズル4は、噴射ノズル4の内部に配置された圧電素子14(piezo element)を含む。圧電素子14は、配線15を介して電圧印加機構16(電圧印加手段)に接続されている。電圧印加機構16は、たとえば、インバータを含む機構である。電圧印加機構16は、交流電圧を圧電素子14に印加する。交流電圧が圧電素子14に印加されると、印加された交流電圧の周波数に対応する周波数で圧電素子14が振動する。制御装置7は、電圧印加機構16を制御することにより、圧電素子14に印加される交流電圧の周波数を任意の周波数(たとえば、数百KHz〜数MHz)に変更することができる。したがって、圧電素子14の振動の周波数は、制御装置7によって制御される。
【0023】
基板処理装置1は、噴射ノズル4を移動させるノズル移動機構17(ノズル保持移動手段)をさらに含む。ノズル移動機構17は、噴射ノズル4を保持するノズルアーム18と、ノズルアーム18に接続された回動機構19と、回動機構19に接続された昇降機構20とを含む。回動機構19は、たとえば、モータを含む機構である。昇降機構20は、ボールねじ機構と、このボールねじ機構を駆動するモータとを含む機構である。回動機構19は、スピンチャック2の周囲に設けられた鉛直な回転軸線A1まわりにノズルアーム18を回動させる。噴射ノズル4は、ノズルアーム18と共に回転軸線A1まわりに回動する。これにより、噴射ノズル4が水平方向に移動する。一方、昇降機構20は、回動機構19を鉛直方向D1に昇降させる。噴射ノズル4およびノズルアーム18は、回動機構19と共に鉛直方向D1に昇降する。これにより、噴射ノズル4が鉛直方向D1に移動する。
【0024】
回動機構19は、スピンチャック2の上方とこの上方から離れた位置を含む水平面内で噴射ノズル4を水平に移動させる。さらに、図2に示すように、回動機構19は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に沿って延びる円弧状の軌跡X1に沿って噴射ノズル4を水平に移動させる。この軌跡X1は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に垂直な垂直方向(本実施形態では、鉛直方向D1)から見たときに基板Wの上面に重ならない2つの位置を結び、鉛直方向D1から見たときに基板Wの上面の中心C1を通る曲線である。噴射ノズル4がスピンチャック2に保持された基板Wの上方に位置する状態で、昇降機構20が噴射ノズル4を降下させると、噴射ノズル4が基板Wの上面に近接する。噴射ノズル4から噴射された処理液の液滴を基板Wに供給するときは、噴射ノズル4が基板Wの上面に近接している状態で、制御装置7が、回動機構19を制御することにより、軌跡X1に沿って噴射ノズル4を水平に移動させる。
【0025】
図1に示すように、第1リンス液ノズル5は、第1リンス液バルブ21が介装された第1リンス液供給管22に接続されている。第1リンス液ノズル5へのリンス液の供給は、第1リンス液バルブ21の開閉により制御される。第1リンス液ノズル5に供給されたリンス液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出される。一方、第2リンス液ノズル6は、第2リンス液バルブ23が介装された第2リンス液供給管24に接続されている。第2リンス液ノズル6へのリンス液の供給は、第2リンス液バルブ23の開閉により制御される。第2リンス液ノズル6に供給されたリンス液は、第2リンス液ノズル6から下方に吐出される。第1リンス液ノズル5および第2リンス液ノズル6に供給されるリンス液としては、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0026】
第2リンス液ノズル6は、ステー25によって噴射ノズル4に固定されている。第2リンス液ノズル6は、噴射ノズル4と共に水平方向および鉛直方向D1に移動する。したがって、第2リンス液ノズル6は、噴射ノズル4と共に、軌跡X1に沿って水平に移動する。図2に示すように、噴射ノズル4および第2リンス液ノズル6は、スピンチャック2による基板Wの回転方向D2に並んでいる。第2リンス液ノズル6に供給されたリンス液は、噴射ノズル4の下方に向けて吐出されてもよいし、噴射ノズル4から基板Wの上面に処理液の液滴が供給される供給位置よりも基板Wの回転方向D2に関して上流側であって、当該供給位置の近傍の位置に供給されてもよい。
【0027】
図3は、この発明の一実施形態に係る噴射ノズル4の模式的な側面図である。図4は、この発明の一実施形態に係る噴射ノズル4の模式的な分解斜視図である。
【0028】
噴射ノズル4は、処理液の液滴を吐出する本体26と、本体26に取り付けられたカバー27と、カバー27によって覆われた圧電素子14と、本体26とカバー27との間に介在するシール28とを含む。本体26およびカバー27は、いずれも耐薬性を有する材料によって形成されている。本実施形態では、本体26は、たとえば、石英によって形成されている。カバー27は、たとえば、フッ素系の樹脂によって形成されている。シール28は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)などの弾力を有した材料などの樹脂によって形成されている。本体26は、高圧に耐えうる強度を有している。本体26の一部と圧電素子14とは、カバー27の内部に収容されている。配線15の端部は、たとえば半田(solder)によって、カバー27の内部で圧電素子14に接続されている。カバー27の内部は、シール28によって密閉されている。
【0029】
図5は、この発明の一実施形態に係る噴射ノズル4に備えられた本体26の構成について説明するための平面図である。図6は、図5におけるVI−VI線に沿う本体26の断面図である。図7は、図5におけるVII−VII線に沿う本体26の断面図である。図8は、図6の一部を拡大した図である。以下では、図5および図6を参照する。また、以下の説明において、図1、図2、図4、図7および図8を適宜参照する。
【0030】
本体26は、処理液が供給される供給口29と、供給口29に供給された処理液を排出する排出口30と、供給口29と排出口30とを接続する処理液流通路31と、処理液流通路31に接続された複数の接続路32と、複数の接続路32にそれぞれ接続された複数の吐出口33とを含む。処理液流通路31および接続路32は、本体26の内部に設けられている。供給口29、排出口30、および吐出口33は、本体26の表面で開口している。供給口29および排出口30は、吐出口33よりも上方に位置している。本体26の下面は、たとえば、平坦面であり、吐出口33は、本体26の下面で開口している。処理液供給管10および処理液排出管13は、それぞれ、供給口29および排出口30に接続されている。処理液供給管10を流れる処理液は、供給口29に供給される。また、排出口30から吐出された処理液は、処理液排出管13に排出される。
【0031】
処理液流通路31は、供給口29に接続された上流側集合流路34と、排出口30に接続された下流側集合流路35と、上流側集合流路34および下流側集合流路35に接続された2つの分岐流路36(処理液流路)とを含む。上流側集合流路34および下流側集合流路35は、それぞれ、供給口29および排出口30から下方に向かって鉛直に延びている。各分岐流路36の一端は、上流側集合流路34の下端に接続されており、各分岐流路36の他端は、下流側集合流路35の下端に接続されている。上流側集合流路34の下端は、分岐位置であり、下流側集合流路35の下端は、集合位置である。2つの分岐流路36は、分岐位置から集合位置に向かって水平に延びている。図5に示すように、2つの分岐流路36は、外側に凸の円弧状の4つの角部を有する平面視長方形状である。2つの分岐流路36は、上流側集合流路34および下流側集合流路35に直交している。後述の中流部39を除く処理液流通路31の断面形状は、たとえば、直径が数mm以下の円形である。
【0032】
各分岐流路36は、上流側集合流路34の下端に接続された上流部37と、下流側集合流路35の下端に接続された下流部38と、上流部37および下流部38に接続された中流部39とを含む。図5に示すように、2つの上流部37は、上流側集合流路34の下端から互いに反対側に延びている。同様に、2つの下流部38は、下流側集合流路35の下端から互いに反対側に延びている。中流部39は、上流部37から下流部38に向かって直線状に延びている。2つの中流部39は、平行である。各中流部39は、直線状に限らず、曲線状に延びていてもよい。各中流部39の少なくとも一部は、圧電素子14の下方に位置している。圧電素子14からの振動は、各中流部39を流れる処理液に付与される。また、中流部39の流路面積は、上流部37および下流部38の流路面積よりも大きい。上流部37および下流部38と、中流部39とは、流路面積が連続的に変化するように接続されている。図7に示すように、各中流部39は、水平方向に長い楕円状の断面形状(中流部39に直交する断面の形状)を有している。各中流部39は、複数の接続路32に接続されている。
【0033】
図6に示すように、各接続路32は、中流部39の下部から下方に向かって鉛直に延びている。接続路32は、中流部39に直交している。各吐出口33は、接続路32を介していずれかの分岐流路36に接続されている。接続路32の断面形状は、たとえば、直径が数mm以下の円形である。吐出口33は、数μm〜数十μmの直径を有する微細孔である。接続路32の流路面積は、分岐流路36の流路面積よりも小さい。吐出口33の流路面積は、接続路32の流路面積よりも小さい。図7に示すように、接続路32は、吐出口33に近づくにしたがって流路面積が連続的に減少する円錐状の減少部40を含む。吐出口33は、接続路32の下端に相当する減少部40の下端に接続されている。対応する接続路32と吐出口33とは、同軸である。図5に示すように、同一の分岐流路36に接続された複数の吐出口33は、2つの列L1を構成している。したがって、本実施形態では、複数の吐出口33が4つの列L1を構成している。
【0034】
各列L1は、多数(たとえば、十個以上)の吐出口33によって構成されている。各列L1は、対応する分岐流路36に沿って直線状に延びている。各列L1は、直線状に限らず、曲線状に延びていてもよい。4つの列L1は、平行である。同一の分岐流路36に対応する2つの列L1は、隣接している。この2つの列L1の間隔は、たとえば、数mm以下である。同一の列L1を構成する複数の吐出口33は、等間隔で配列されている。同一の列L1において隣接する2つの吐出口33の間隔は、たとえば数mm以下であり、いずれの列L1においても一定である。図8に示すように、同一の分岐流路36に対応する2つの列L1において、一方の列L1を構成する複数の吐出口33(図8の吐出口33a)と、他方の列L1を構成する複数の吐出口33(図8の吐出口33b)とは、2つの列L1に直交する水平な方向から見たときに、交互に並ぶように配置されている。したがって、図5に示すように、同一の分岐流路36に対応する2つの列L1は、分岐流路36の長手方向にずれている。
【0035】
図2に示すように、ノズル移動機構17は、円弧状の軌跡X1に沿って噴射ノズル4を水平に移動させる。ノズルアーム18は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に垂直な垂直方向(本実施形態では、鉛直方向D1)から見たときに4つの列L1が軌跡X1に交差するように噴射ノズル4を保持している。第2リンス液ノズル6は、ステー25によって噴射ノズル4に固定されている。噴射ノズル4および第2リンス液ノズル6は、スピンチャック2による基板Wの回転方向D2に並んでいる。
【0036】
また、図4に示すように、本体26は、上側分割体41(分割体)と、下側分割体42(分割体)とを含む。上側分割体41および下側分割体42は、いずれも石英によって形成されている。上側分割体41は、下側分割体42の上方に配置されている。上側分割体41および下側分割体42は、たとえば、溶着によって結合されている。複数の分岐流路36は、上側分割体41と下側分割体42との間に設けられている。すなわち、図6に示すように、下側分割体42の上面には、下側分割体42の上面から下方に凹む下側凹部43が形成されており、上側分割体41の下面には、上側分割体41の下面から上方に凹む上側凹部44が形成されている。上側分割体41および下側分割体42は、上側凹部44と下側凹部43とが上下に重なり合った状態で結合されている。処理液流通路31および接続路32は、上側凹部44と下側凹部43とによって構成されている。
【0037】
処理液供給機構11(図1参照)は、常時、高圧で処理液を噴射ノズル4に供給している。処理液供給管10を介して処理液供給機構11から供給口29に供給された処理液は、処理液流通路31に供給される。排出バルブ12(図1参照)が閉じられている状態では、処理液流通路31での処理液の圧力(液圧)が十分に高まる。そのため、排出バルブ12が閉じられている状態では、液圧によって各吐出口33から処理液が噴射される。さらに、排出バルブ12が閉じられている状態で、交流電圧が圧電素子14に印加されると、分岐流路36を流れる処理液に圧電素子14の振動が付与され、各吐出口33から噴射される処理液が、この振動によって分断される。そのため、排出バルブ12が閉じられている状態で、交流電圧が圧電素子14に印加されると、処理液の液滴が各吐出口33から噴射される。これにより、粒径が均一な多数の処理液の液滴が均一な速度で同時に噴射される。
【0038】
一方、排出バルブ12が開かれている状態では、処理液流通路31に供給された処理液が、排出口30から処理液排出管13に排出される。また、吐出口33の直径が非常に小さいから、接続路32と吐出口33との接続部での圧力損失が大きい。排出バルブ12が開かれている状態では、処理液流通路31での液圧が、十分に上昇しない。そのため、排出バルブ12が開かれている状態では、処理液流通路31に供給された処理液が、排出口30から処理液排出管13に排出され、複数の吐出口33から処理液が吐出されない。したがって、吐出口33からの処理液の吐出は、排出バルブ12の開閉により制御される。制御装置7は、噴射ノズル4を基板Wの処理に使用しない間(噴射ノズル4の待機中)は、排出バルブ12を開いている。そのため、噴射ノズル4の待機中であっても、噴射ノズル4の内部で処理液が流通している状態が維持される。
【0039】
図9は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1によって行われる基板Wの処理例について説明するための図である。図10は、噴射ノズル4が中心位置Pc1に達する直前の状態を示す平面図である。図11は、噴射ノズル4が中心位置Pc1に位置する状態を示す平面図である。以下では、図1および図9を参照する。また、以下の説明において、図2、図10および図11を適宜参照する。
【0040】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって搬送され、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック2上に載置される。そして、制御装置7は、スピンチャック2を制御することにより、スピンチャック2によって基板Wを保持させる。その後、制御装置7は、スピンモータ9を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wを回転させる。基板Wがスピンチャック2上に搬送されるとき、制御装置7は、噴射ノズル4等をスピンチャック2の上方から退避させている。
【0041】
次に、リンス液の一例である純水を第1リンス液ノズル5から基板Wに供給して、基板Wの上面を純水で覆う第1カバーリンス処理が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第1リンス液バルブ21を開いて、図9(a)に示すように、第1リンス液ノズル5からスピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に向けて純水を吐出させる。第1リンス液ノズル5から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、基板Wの上面全域が純水によって覆われる。そして、第1リンス液バルブ21が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置7は、第1リンス液バルブ21を閉じて第1リンス液ノズル5からの純水の吐出を停止させる。
【0042】
次に、処理液の一例である純水の液滴を噴射ノズル4から基板Wに供給して基板Wを洗浄する洗浄処理と、リンス液の一例である純水を第2リンス液ノズル6から基板Wに供給して基板Wの上面を純水で覆う第2カバーリンス処理とが並行して行われる。具体的には、制御装置7は、ノズル移動機構17を制御することにより、噴射ノズル4をスピンチャック2の上方に移動させると共に、噴射ノズル4を基板Wの上面に近接させる。その後、制御装置7は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第2リンス液バルブ23を開いて、図9(b)に示すように、第2リンス液ノズル6から噴射ノズル4の下方に向けて純水を吐出させる。この状態で、制御装置7は、排出バルブ12を閉じるとともに、電圧印加機構16を制御して、所定の周波数の交流電圧を噴射ノズル4の圧電素子14に印加させる。
【0043】
制御装置7は、ノズル移動機構17を制御することにより、排出バルブ12を閉じ、所定の周波数の交流電圧を圧電素子14に印加した状態で、軌跡X1に沿って噴射ノズル4を水平に移動させる。具体的には、図2および図9(b)に示すように、制御装置7は、中心位置Pc1と周縁位置Pe1との間で噴射ノズル4を複数回往復させる。中心位置Pc1は、鉛直方向D1から見たときに噴射ノズル4と基板Wの上面の中心C1とが重なる位置であり、周縁位置Pe1は、鉛直方向D1から見たときに噴射ノズル4と基板Wの周縁とが重なる位置である。図11に示すように、中心位置Pc1は、鉛直方向D1から見たときに周縁位置Pe1側に位置する中流部39が基板Wの上面の中心C1に重なる位置である。噴射ノズル4が中心位置Pc1に位置する状態では、周縁位置Pe1側に位置する中流部39に対応する2つの列L1が、基板Wの半径R1に直交している。さらに、図2に示すように、噴射ノズル4が中心位置Pc1と周縁位置Pe1との間に位置する状態では、基板Wの回転方向D2に関して第2リンス液ノズル6が噴射ノズル4の上流側に位置している。したがって、制御装置7は、基板Wの回転方向D2に関して第2リンス液ノズル6が噴射ノズル4の上流側に位置する範囲で噴射ノズル4を移動させる。
【0044】
また、図10に示すように、噴射ノズル4が中心位置Pc1に達する直前では、周縁位置Pe1と反対側に位置する中流部39が、鉛直方向D1から見たときに基板Wの上面の中心C1に重なっている。また、図11に示すように、噴射ノズル4が中心位置Pc1に位置する状態では、周縁位置Pe1側に位置する中流部39が、鉛直方向D1から見たときに基板Wの上面の中心C1に重なっている。したがって、制御装置7は、中心位置Pc1と周縁位置Pe1との間で、鉛直方向D1から見たときに全ての列L1が基板Wの上面の中心C1に順次重なるように軌跡X1に沿って噴射ノズル4を移動させる。
【0045】
前述のように、排出バルブ12が閉じられている状態で、交流電圧が圧電素子14に印加されると、多数の純水の液滴が噴射ノズル4から下方に噴射される。これにより、純水によって覆われた基板Wの上面に多数の純水の液滴が供給される。したがって、ノズル移動機構17が、中心位置Pc1と周縁位置Pe1との間で噴射ノズル4を移動させることにより、噴射ノズル4から噴射された多数の液滴が、基板Wの上面全域に供給される。また、第2リンス液ノズル6に供給された純水は、噴射ノズル4の下方に向けて吐出される。したがって、噴射ノズル4から噴射された純水の液滴は、第2リンス液ノズル6から吐出された純水によって覆われた基板Wの上面の一部に吹き付けられる。そのため、噴射ノズル4から噴射された多数の液滴は、純水によって覆われた基板Wの上面に衝突する。
【0046】
基板Wの上面に付着しているパーティクルなどの異物は、基板Wの上面に吹き付けられる液滴の運動エネルギーによって物理的に除去される。これにより、基板Wの上面が洗浄される。さらに、純水によって覆われた基板Wの上面に純水の液滴が吹き付けられるので、基板Wの上面にダメージが加わることが抑制または防止される。さらにまた、純水によって覆われた基板Wの上面に純水の液滴が吹き付けられるので、液滴の衝突によって基板Wの上面から剥がれた異物が、再び基板Wの上面に付着することを抑制または防止できる。洗浄処理および第2カバーリンス処理が所定時間に亘って行われると、制御装置7は、排出バルブ12を開くと共に第2リンス液バルブ23を閉じ、噴射ノズル4および第2リンス液ノズル6からの純水の吐出を停止させる。
【0047】
次に、リンス液の一例である純水を第1リンス液ノズル5から基板Wに供給して、基板Wに付着している純水、または第2リンス液ノズル6からリンス液として薬液が吐出される場合はその薬液を洗い流すリンス処理が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンチャック2によって基板Wを回転させながら、第1リンス液バルブ21を開いて、図9(c)に示すように、第1リンス液ノズル5からスピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に向けて純水を吐出させる。第1リンス液ノズル5から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に供給され、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面に沿って外方に広がる。これにより、基板Wの上面全域に純水が供給され、噴射ノズル4および第2リンス液ノズル6から基板Wに供給された純水または薬液が洗い流される。そして、第1リンス液バルブ21が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置7は、第1リンス液バルブ21を閉じて第1リンス液ノズル5からの純水の吐出を停止させる。
【0048】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。具体的には、制御装置7は、スピンモータ9を制御して、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、図9(d)に示すように、基板Wに付着している純水が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する。そして、乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御装置7は、スピンモータ9を制御して、スピンチャック2による基板Wの回転を停止させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットによってスピンチャック2から搬出される。
【0049】
以上のように本実施形態では、処理液供給機構11から噴射ノズル4に処理液を供給すると共に、電圧印加機構16によって圧電素子14に電圧を印加することにより、複数の処理液の液滴を噴射ノズル4から噴射させることができる。これにより、スピンチャック2に保持された基板Wに処理液の液滴を衝突させて、基板Wに付着している異物を、液滴の運動エネルギーによって物理的に除去することができる。さらに、噴射ノズル4に供給される処理液の圧力および圧電素子14の振動を制御することにより、液滴の大きさおよび速度のばらつきを抑制することができる。したがって、良好な洗浄を行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では、ノズル移動機構17は、鉛直方向D1から見たときに複数の吐出口33により構成された複数の列L1と軌跡X1とが交差するように噴射ノズル4を保持している。すなわち、鉛直方向D1から見たときに、全ての列L1と軌跡X1とが交差している。したがって、噴射ノズル4から処理液の液滴を噴射させながら、軌跡X1に沿って噴射ノズル4を移動させることにより、全ての列L1から噴射された処理液の液滴を基板Wの上面中央部に順次衝突させることができる。一方、全ての列L1と軌跡X1とが交差していない場合には、一部の列L1から噴射された処理液の液滴しか基板Wの上面中央部に供給されない。したがって、全ての列L1と軌跡X1とを交差させることにより、基板Wの上面中央部に対する液滴の衝突回数を増加させることができる。これにより、基板Wの上面中央部を良好に洗浄することができる。
【0051】
また、本実施形態では、制御装置7が、中心位置Pc1と周縁位置Pe1との間で噴射ノズル4を移動させる。したがって、鉛直方向D1から見たときに噴射ノズル4が基板Wの上面周縁に重なる2つの位置(第1周縁位置および第2周縁位置)の間で噴射ノズル4を移動させる場合に比べて、噴射ノズル4の移動範囲が狭い。さらに、制御装置7が、中心位置Pc1と周縁位置Pe1との間で噴射ノズル4を移動させるので、第2リンス液ノズル6を常に基板Wの回転方向D2に関して噴射ノズル4の上流側に位置させることができる。したがって、処理液の液滴が吹き付けられる基板Wの上面の一部に、第2リンス液ノズル6から吐出されたリンス液を予め供給することができる。これにより、処理液の液滴が吹きつけられる基板Wの上面の一部をリンス液によって確実に保護することができる。
【0052】
また、本実施形態では、噴射ノズル4の本体26に設けられた処理液流通路31が、複数の分岐流路36を含む。処理液流通路31を分岐させることにより、処理液流通路31の全長を増加させることができる。したがって、より多くの吐出口33を処理液流通路31に個別に接続することができる。これにより、より多くの液滴を噴射ノズル4から同時に噴射させることができる。さらに、最大流路面積の増加を抑制または防止できるから、噴射ノズル4の大型化を抑制できる。さらにまた、複数の吐出口33が対応する分岐流路36に沿って配列されているから、最大流路面積の増加を抑制できる。これにより、噴射ノズル4の大型化を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、噴射ノズル4の本体26が、石英によって形成されている。石英は、たとえば樹脂よりも強度が高い。したがって、石英によって本体26を形成することにより、噴射ノズル4の強度を確保しつつ、噴射ノズル4の大型化を抑制できる。さらに、石英は、耐薬性を有している。したがって、石英によって本体26を形成することにより、噴射ノズル4の腐食を抑制または防止できる。
【0054】
また、本実施形態では、圧電素子14に電圧を印加するための配線15が、カバー27内で圧電素子14に接続されている。したがって、圧電素子14および配線15がカバー27によって保護されている。そのため、噴射ノズル4が薬液雰囲気で使用される場合であっても、圧電素子14および配線15が薬液雰囲気に晒されることを抑制または防止できる。これにより、薬液との接触によって圧電素子14および配線15が腐食することを抑制または防止できる。
【0055】
また、本実施形態では、分岐流路36と吐出口33とを接続する接続路32が、噴射ノズル4の本体26に設けられている。分岐流路36を流れる処理液は、接続路32を通って吐出口33から吐出される。接続路32は、吐出口33に近づくにしたがって流路面積が減少する減少部40を含む。減少部40の流路面積は、吐出口33に近づくにしたがって連続的に減少している。したがって、接続路32での処理液の圧力の低下を低減できる。すなわち、接続路32での圧力損失を低減できる。さらに、減少部40の流路面積が連続的に減少しているので、接続路32での応力集中を抑制または防止できる。
【0056】
また、本実施形態では、上側分割体41および下側分割体42が結合されることにより、本体26が形成されている。上側分割体41および下側分割体42は、互いに結合される前に個別に成形されている。すなわち、上側分割体41および下側分割体42が互いに結合される前に、処理液流通路31および接続路32を構成する上側凹部44および下側凹部43が、それぞれ、上側分割体41および下側分割体42に形成されている。接続路32に設けられた減少部40の流路面積が、吐出口33に近づくにしたがって減少しているので、吐出口33側から減少部40を形成することは困難である。一方、上側分割体41および下側分割体42が結合される前であれば、分岐流路36側から減少部40を形成することができる。したがって、減少部40を容易に形成することができる。
【0057】
また、本実施形態では、噴射ノズル4の排出口30に処理液排出管13が接続されており、この処理液排出管13に排出バルブ12が介装されている。排出バルブ12が閉じられている状態では、噴射ノズル4の供給口29に供給された処理液が、処理液流通路31を通って、複数の吐出口33から吐出される。また、排出バルブ12が開かれている状態では、噴射ノズル4の供給口29に供給された処理液が、処理液流通路31を通って、排出口30から排出される。したがって、排出バルブ12が閉じられている状態、および排出バルブ12が開かれている状態のいずれの状態であっても、処理液流通路31で処理液が留まることが防止される。これにより、処理液の滞留によって噴射ノズル4内でバクテリアが発生することを抑制または防止することができる。したがって、バクテリアを含む処理液の液滴が基板Wに供給され、基板Wが汚染されることを抑制または防止できる。
【0058】
また、本実施形態では、同一の分岐流路36に対応する2つの列L1において、一方の列L1を構成する複数の吐出口33と、他方の列L1を構成する複数の吐出口33とが、2つの列L1に直交する水平な方向から見たときに、交互に並ぶように配置されている。すなわち、異なる2つの列L1において、一方の列L1は、当該2つの列L1に直交するいずれの方向から見たときでも他方の列L1を構成する吐出口33とは重ならないように配置された吐出口33を含む。したがって、複数の処理液の液滴を噴射ノズル4から基板Wの上面に供給しながら噴射ノズル4を移動させたときに、基板Wの上面において処理液の液滴が衝突する範囲が広がると共に、基板Wの上面に処理液の液滴が均一に供給される。そのため、基板Wの洗浄に要する時間を短縮できると共に、洗浄の均一性を高めることができる。
【0059】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、噴射ノズル4が中心位置Pc1に位置する状態では、周縁位置Pe1側に位置する中流部39に対応する2つの列L1が、基板Wの半径R1に直交するように、噴射ノズル4はノズルアーム18に保持されているが、4つの列L1が軌跡X1に交差するように噴射ノズル4を保持されていればよく、たとえば、基板Wの半径R1に対して2つの列L1が斜めになるように噴射ノズル4がノズルアーム18に保持されていてもよい。
【0060】
たとえば、前述の実施形態では、処理液流通路31が、2つの分岐流路36を含む場合について説明したが、処理液流通路31は、3つ以上の分岐流路36を含んでいてもよい。また、前述の実施形態では、一つの分岐流路36に2つの列L1が設けられている場合について説明したが、一つの分岐流路36に設けられる列L1の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0061】
また、前述の実施形態では、2つの分岐流路36に2つずつ列L1が設けられている場合について説明したが、各分岐流路36に設けられる列L1の数は、異なっていてもよい。また、前述の実施形態では、複数の分岐流路36が、分岐位置である上流側集合流路34の下端で分岐し、集合位置である下流側集合流路35の下端で集合している場合について説明したが、分岐位置と集合位置との間に分岐・集合位置が設けられていてもよい。すなわち、分岐位置で分岐した複数の分岐流路36が、分岐・集合位置で集合する共に再び分岐し、集合位置で再び集合していてもよい。
【0062】
また、前述の実施形態では、同一の列L1において隣接する2つの吐出口33の間隔は、いずれの列L1においても一定である場合について説明したが、他の列L1とは異なる間隔で配列された2つの吐出口33を含む列L1が設けられていてもよい。また、前述の実施形態では、同一の列L1を構成する複数の吐出口33が、等間隔で配列されている場合について説明したが、同一の列L1を構成する複数の吐出口33は、等間隔で配列されていなくてもよい。
【0063】
また、前述の実施形態では、1つの圧電素子14が、本体26の上面に取り付けられている場合について説明したが、複数の圧電素子14が本体26に取り付けられていてもよい。この場合、圧電素子14の振動の位相が一致するように複数の圧電素子14に交流電圧が印加されることが好ましい。また、本体26に対する圧電素子14の取付位置は、本体26の上面に限らず、本体26の側面などの上面以外の位置であってもよい。具体的には、全ての圧電素子14が本体26の側面に取り付けられていてもよい。また、複数の圧電素子14が本体26に取り付けられる場合には、本体26の上面および側面に圧電素子14が取り付けられてもよい。
【0064】
また、前述の実施形態では、軌跡X1が曲線である場合について説明したが、軌跡X1は、直線であってもよい。すなわち、軌跡X1は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に沿って延びており、基板Wの上面に垂直な垂直方向から見たときに基板Wの上面の中心C1を通る直線であってもよい。
【0065】
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が、半導体ウエハなどの円形の基板を処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
【0066】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板保持回転手段)
4 噴射ノズル(ノズル)
7 制御装置(制御手段)
11 処理液供給機構
14 圧電素子
15 配線
16 電圧印加機構(電圧印加手段)
17 ノズル移動機構(ノズル保持移動手段)
26 本体
27 カバー
29 供給口
30 排出口
31 処理液流通路
32 接続路
33 吐出口
36 分岐流路(処理液流路)
40 減少部
41 上側分割体
42 下側分割体
C1 中心
D1 鉛直方向(垂直方向)
L1 列
Pc1 中心位置
Pe1 周縁位置
X1 軌跡
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる基板保持回転手段と、
処理液の液滴を吐出する複数の吐出口が一列に並べられた列が複数列配置され、前記基板保持回転手段に保持された基板に向けて処理液の液滴を吐出するノズルと、
前記基板保持回転手段に保持された基板の主面に垂直な垂直方向から見たときに前記主面の回転中心を通る軌跡に沿って前記ノズルを移動させるとともに、前記垂直方向から見たときに複数の前記列と前記軌跡とが交差するように前記ノズルを保持するノズル保持移動手段と、を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の回転中心に重なる中心位置と、前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の周縁に重なる周縁位置との間で、前記垂直方向から見たときに複数の前記列が前記主面の回転中心に順次重なるように前記軌跡に沿って前記ノズルを移動させるように前記ノズル保持移動手段を制御する制御手段をさらに備える、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記列に沿って処理液が流通し、前記吐出口に接続している処理液流路が複数の前記列のそれぞれに対応して設けられている本体と、
前記処理液流路を流通する処理液に振動を付与する圧電素子とを含み、
前記圧電素子に電圧を印加する電圧印加手段をさらに備える、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を保持して回転させる基板保持回転工程と、
処理液の液滴を吐出する複数の吐出口が一列に並べられた列が複数列配置された、基板に向けて処理液の液滴を吐出するノズルを、基板の主面に垂直な垂直方向から見たときに前記主面の回転中心を通る軌跡に沿って移動させるノズル移動工程と、を含み、
前記ノズル移動工程において、前記垂直方向から見たときに複数の前記列と前記軌跡とが交差するように前記ノズルは保持される、基板処理方法。
【請求項5】
前記ノズル移動工程は、前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の回転中心に重なる中心位置と、前記垂直方向から見たときに前記ノズルが前記主面の周縁に重なる周縁位置との間で、前記垂直方向から見たときに複数の前記列が前記主面の回転中心に順次重なるように前記軌跡に沿って前記ノズルを移動させる、請求項4記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−209513(P2012−209513A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75660(P2011−75660)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】