説明

基板処理装置及び半導体デバイスの製造方法

【課題】基板表面へ供給される活性種の濃度を増大させ、基板処理工程の効率や生産性を向上させることが可能な基板処理装置及び半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、該処理室内で処理ガスを基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ基板の積層方向に沿って延在するガスノズル270aと、を備え、前記ガス噴出口から噴出する処理ガスを活性化させて基板に供給するガス活性化部22a,22b,22c,22dを、前記ガスノズル270aの外側に、前記処理ガスの流れが基板の外周縁に対して垂直となるように通過可能な隙間を空けながら、前記ガス噴出口を囲むように、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、複数の基板を処理室内に搬入する工程と、処理室内のガスノズルに設けられる複数のガス噴出口から処理ガスを噴出して基板に供給する工程と、を有する基板処理工程が実施されてきた。係る基板処理工程は、複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、基板を処理する処理ガスを処理室内に供給する処理ガス供給部と、を有する基板処理装置により実施されてきた。処理ガス供給部は、処理ガスを基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ基板の積層方向に沿って延在するガスノズルを備えていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の基板処理工程においては、処理室内に供給された処理ガスを熱により活性化させ、これを基板表面に供給することで所定の基板処理を実施していた。例えば、処理ガスとしてオゾン(O)ガスを用いた場合、処理室内を高温にすることでオゾンを加熱・分解して酸素ラジカルを生成させ、これを基板表面に供給することで酸化処理等を実施していた。
【0004】
しかしながら、処理室内を高温に加熱すると、ガスノズル内までもが高温となってしまい、これにより基板表面へ供給される活性種の濃度が低下してしまう場合があった。すなわち、処理ガスとして例えばオゾンガスを用いた場合、ガスノズル内にてオゾンガスが分解して酸素ラジカルが生成されてしまい、生成された酸素ラジカルがガスノズル内にて他のオゾン分子等と衝突を繰り返して失活してしまうことがあった。これにより基板表面に供給される酸素ラジカルの濃度が低下して所望の基板処理の速度が得られず、基板処理工程の効率や生産性が低下してしまう場合があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、基板表面へ供給される活性種の濃度を増大させることができ、基板処理工程の効率や生産性を向上させることが可能な基板処理装置及び半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、前記基板を処理する処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部と、を有し、前記処理ガス供給部は、前記処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ前記基板の積層方向に沿って延在するガスノズルを備え、前記処理ガスの流れが前記基板の外周縁に対して垂直となるように前記処理ガスが通過可能な隙間を空けつつ前記ガス噴出口を囲むように前記ガスノズルの外側に設けられ、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを活性化させて前記基板に供給するガス活性化部を有する基板処理装置である。
【0007】
本発明の他の態様は、複数の基板を処理室に搬入する工程と、前記基板を処理する処理ガスを、前記処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ前記基板の積層方向に沿って延在するガスノズルから前記処理室内に供給する工程と、前記処理ガスの流れが前記基板の外周縁に対して垂直となるように前記処理ガスが通過可能な隙間を空けつつ前記ガス噴出口を囲むように前記ガスノズルの外側に設けられたガス活性化部に
より、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを活性化させて前記基板に供給する工程と、前記基板を処理室から搬出する工程と、を有する半導体デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る基板処理装置及び半導体デバイスの製造方法によれば、基板表面へ供給される活性種の濃度を増大させることができ、基板処理工程の効率や生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の斜透視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る処理炉の構成図であって、特に処理室部分を断面図で示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る処理炉の構成図であって、特に処理室部分を図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る処理炉が備えるガス活性化機構を示す図であって、(a)は多孔ノズルおよびシースヒータ集合体の構成図であり、(b)はシースヒータの内部構造を示す構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る処理炉が備える多孔ノズルおよびシースヒータ集合体を、図4(a)のB−B断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る基板処理工程を例示するフロー図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る基板処理工程における、ZrO膜形成工程のガス供給タイミング図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る処理炉が備えるガス活性化機構を示す図であって、(a)は多孔ノズルおよびシースヒータ集合体の構成図であり、(b)はシースヒータの内部構造を示す構成図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る処理炉が備える多孔ノズルおよびシースヒータ集合体を、図8(a)のC−C断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る処理炉が備えるガス活性化機構を示す図であって、(a)は多孔ノズルおよびシースヒータ集合体の構成図であり、(b)はシースヒータの内部構造を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置について、その構成を以下に説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の全体構成
図1は、本実施形態に係る基板処理装置101の斜透視図である。カセットステージ114のある面を基板処理装置101の正面とし、正面の側を基板処理装置101の前方、それとは反対の処理炉202のある側を後方、基板処理装置101の正面に向かって右手側を右、左手側を左とした。基板処理装置101の上下は、重力方向のとおりである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。基板としてのウエハ200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。カセット110を筐体111内外へ搬送する開口であるカセット搬入搬出口(基板収納容器搬入搬出口、図示せず)の筐体111内側には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工場内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0013】
カセット110は、工場内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて90°回転させてカセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方に向かせることが可能なように構成されている。
【0014】
筐体111内の前後方向でみた略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備のカセット110を保管するように構成されている。
【0015】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0016】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板保持体)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板保持具)217へ装填(ウエハチャージ)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ウエハディスチャージ)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0017】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0018】
処理炉202の下方には、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からボート(基板保持具)217へ装填・脱装する空間である移載室124が設けられている。移載室124内には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬入搬出させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する炉口蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0019】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、25枚から125枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。
【0020】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0021】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側の反対側にあたる筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0022】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0023】
まず、カセット110が、工場内搬送装置によってカセット搬入搬出口(図示せず)から搬入され、ウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0024】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接、移載棚123に搬送される。
【0025】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(ウエハチャージ)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0026】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、処理炉202の下端部を閉じていた炉口シャッタ147が開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ボートローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ搬出される。
【0027】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態に係る処理炉202の構成について、主に図2および図3を参照しながら説明する。図2は、図1に示す基板処理装置101の処理炉202の構成図であって、特に処理室201部分を断面図で示してある。また図3は、処理炉202部分を図2のA−A断面図で示している。
【0028】
(処理室)
本実施形態に係る処理炉202は、ウエハ200の表面に処理ガスを供給し、CVD(
Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法によりウエハ200上に例えばZrO(酸化ジルコニウム)等の薄膜を形成することが可能なように、例えば縦型処理炉として構成されている。
【0029】
図2に示すように、処理炉202は、反応管203とマニホールド209とを有している。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状に構成されている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端部及び下端部が開放された円筒形状に構成されている。反応管203は、マニホールド209により下端部側から縦向きに支持されている。反応管203の下端部、マニホールド209の上部および下部の開口端部にはそれぞれ環状のフランジが設けられている。反応管203下端部とマニホールド209上端部のフランジ間にはOリングなどの封止部材220が設けられ、両者の間は気密に封止されている。
【0030】
反応管203及びマニホールド209の内部には、基板としてのウエハ200を複数積層して収容する処理室201が形成されている。そして、基板支持機構としてのボート217が、上述した昇降機構としてのボートエレベータ115によって下方から処理室201内に挿入されるように構成されている。
【0031】
ボート217は、複数枚(例えば25枚から125枚程度)のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に積層して保持するように構成されている。ウエハ200を装填したボート217の最大外径は、反応管203及びマニホールド209の内径よりも小さくなるように構成されている。ボート217は、ボート217を保持する保持体としてのボート支持台218を介してシールキャップ219上に搭載されている。シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。ボートエレベータ115が上昇した際には、マニホールド209下端部のフランジとシールキャップ219との間に設けられた封止部材220によって、両者の間は気密に封止される。先に述べた反応管203とマニホールド209との間、並びにマニホールド209とシールキャップ219との間が気密に封止されることで、処理室201内の気密性が保たれる。また、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を垂直方向に昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬送することが可能となっている。
【0032】
シールキャップ219の下方には、回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されており、処理室201内の気密性を保持したまま、複数のウエハ200を搭載したボート217を回転させることができるように構成されている。ボート217を回転させることで、ウエハ200の処理均一性を向上させることができる。
【0033】
反応管203の外周には反応管203と同心円状の円筒形状に、基板加熱部としてのヒータ207が設けられており、処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。ヒータ207は、保持板としてのヒータベース210に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータベース210は、マニホールド209を固定している。
【0034】
また反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づき、ヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、後述する多孔ノズル270aおよび多孔ノズル270bと同様に、L字形
状に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。温度センサ263は、図3に示すように、例えば多孔ノズル270aおよび多孔ノズル270bの間に設けられている。ただし図2においては、多孔ノズル270a、多孔ノズル270bおよび温度センサ263の詳細な構造をそれぞれ示すため、便宜上、温度センサ263を紙面右側の多孔ノズル270a、270bと対向する位置に図示した。
【0035】
主に、反応管203、マニホールド209、及びシールキャップ219により処理室201が構成され、ヒータ207、反応管203、マニホールド209、及びシールキャップ219により処理炉202が構成される。
【0036】
(多孔ノズル)
処理炉202は、処理室201内にウエハ200の積層方向に沿って立設され、複数のガス噴出口248a、248bをそれぞれ有するガスノズルとしての多孔ノズル270aと多孔ノズル270bとを備えている。多孔ノズル270aおよび多孔ノズル270bは、垂直部と水平部とを有するL字形状にそれぞれ構成されている。多孔ノズル270aおよび多孔ノズル270bの垂直部は、反応管203の内壁に沿うように鉛直方向にそれぞれ配設されている。多孔ノズル270aの水平部は、後述する集結部材26(図4(a)参照)を介してマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。多孔ノズル270bの水平部は、多孔ノズル270aとは別個にマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0037】
多孔ノズル270aおよび多孔ノズル270bの垂直部の側面には、複数のガス噴出口248a、248bが鉛直方向に配列するようにそれぞれ設けられている。ガス噴出口248a、248bは、積層されたウエハ200の間にそれぞれ開口するように構成されている。ガス噴出口248a、248bは、処理室201内の略中心(処理室201内に搬入されたウエハ200の略中心)を向くようにそれぞれ構成されており、ガス噴出口248a、248bから供給されるガスは、それぞれ処理室201内の略中心に向けて噴射されるように構成されている。なお、ガス噴出口248a、248bの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一であってもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされてもよい。
【0038】
多孔ノズル270aおよび多孔ノズル270bは、後述するように例えば処理ガスとしての酸化剤や原料(気化ガス)を処理室201内に供給する。酸化剤としては例えばOガス等を用いることができ、原料としては例えばTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム)ガス等を用いることができる。
【0039】
(酸化剤供給部)
多孔ノズル270aの上流端(水平端)には、例えば酸化剤としてのO(オゾン)ガスを供給するガス供給管233aの下流端が接続されている。ガス供給管233aには、上流側から順に、オゾナイザ261a、開閉弁であるバルブ252a、流量制御機構であるマスフローコントローラ241a、バルブ253aが設けられている。オゾナイザ261aには、Oガスを供給するガス供給管232aの下流端が接続されている。ガス供給管232aの上流端には、Oガスを供給する図示しないOガス供給源が接続されている。ガス供給管232aからオゾナイザ261aに供給されたOガスは、オゾナイザ261aによって少なくとも一部がOガスとなる。そして、バルブ252a、253aを開けることにより、マスフローコントローラ241aによって流量制御しながら、オゾナイザ261aで生成されたOガスを処理室201内に供給することが可能なように構成されている。なお、処理室201内に供給されるOガスには、オゾナイザ261aでオゾン化されなかった残留Oガスが含まれるほか、Oガスが分解して再度生成したOガスや酸素(O)ラジカル等が含まれている。
【0040】
ガス供給管233aのバルブ252aの上流側には、ガス排気管236aの上流端が接続されている。ガス排気管236aにはバルブ256aが設けられている。ガス排気管236aの下流端は後述する排気管231に接続されている。バルブ256aを開けることにより、処理室201を介さずにOガスを排気することができる。Oガスを安定して生成するには所定の時間を要するため、処理室201内へのOガスの供給を停止している間も、オゾナイザ261aによるOガスの生成を継続することが望ましい。上述のような構成とすることで、オゾナイザ261aによるOガスの生成を継続したまま、バルブ252a及びバルブ256aの開閉切り替え動作をすることによって、処理室201内へのOガスの供給開始と供給停止とを素早く行なうことができる。
【0041】
ガス供給管233aのバルブ253aの下流側にはさらに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管234aの下流端が接続されている。不活性ガス供給管234aには上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源と、図示しないマスフローコントローラと、バルブ254aとが設けられている。バルブ254aを開けることにより、マスフローコントローラによって流量制御しながら、不活性ガス供給源から処理室201内に不活性ガスを供給可能なように構成されている。不活性ガスを供給することで、例えばOガスの供給終了後、不活性ガスをパージして処理室201内に残留したOガス等を排除することができる。
【0042】
主に、Oガス供給管232a、オゾナイザ261a、ガス排気管236a、バルブ256a、ガス供給管233a、マスフローコントローラ241a、バルブ252a、253a、多孔ノズル270a、ガス噴出口248aにより、処理室201内に酸化剤を供給する酸化剤供給部が構成される。
【0043】
(原料供給部)
多孔ノズル270bの上流端(水平端)には、例えば液体原料としてのTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム:Zr(NEtMe))を気化させて得られる原料(気化ガス)としてのTEMAZガスを供給するガス供給管233bの下流端が接続されている。TEMAZは常温で液体であるため、処理室201内にTEMAZガスを供給するには、TEMAZを加熱して気化させてから供給する方法、キャリアガスとなるHe(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、N(窒素)などの不活性ガスをTEMAZの液体の中に供給し、TEMAZを気化させたガスをキャリアガスと共に処理室201内へと供給する方法(バブリング方式)などがある。以下に述べるのは、例として加熱により気化させたTEMAZガスを供給する場合の構成である。
【0044】
TEMAZガスを供給するガス供給管233bの上流端は、TEMAZの液体が貯蔵されたTEMAZ容器260b内のTEMAZの液面上方に配置されている。ガス供給管233bには上流側から順に、液体原料としてのTEMAZを加熱して気化させる気化部としての気化器261b、マスフローコントローラ241b、バルブ253bが設けられている。ガス供給管233bの下流端は、上述のように多孔ノズル270bの上流端に接続されている。気化器261bからマニホールド209までのガス供給管233bには、ヒータ281bが設けられ、ガス供給管233bを例えば130℃に保っている。TEMAZ容器260b内のTEMAZの液体中には、圧送ガスを供給する圧送ガス供給管232bの下流端が浸漬されている。圧送ガス供給管232bには上流側から順に、図示しない圧送ガス供給源、バルブ252bが設けられている。圧送ガスとしては、例えばNガス等の不活性ガスを用いることができる。バルブ252bを開けることにより圧送ガス供給源から圧送ガスを供給し、TEMAZ容器260bから気化器261bへ液体原料としてのTEMAZを圧送(供給)することが可能となる。気化器261bは圧送されたTEMAZを加熱してTEMAZの気化ガスを発生させることが可能なように構成されている。
そして、マスフローコントローラ241bによって流量制御しながら、バルブ253bを開けることにより、気化器261b内で発生したTEMAZガスを処理室201内に供給することが可能なように構成されている。
【0045】
ガス供給管233bのバルブ253bの上流側には、ガス排気管236bの上流端が接続されている。ガス排気管236bにはバルブ256bが設けられている。ガス排気管236bの下流端は後述する排気管231に接続されている。バルブ256bを開けることにより、処理室201を介さずにTEMAZガスを排気することができる。TEMAZガスを安定して生成するには所定の時間を要するため、処理室201内へのTEMAZガスの供給を停止している間も、気化器261bに液体原料を供給し続けてTEMAZガスの生成を継続することが望ましい。上述のような構成とすることで、気化器261b内でのTEMAZガスの生成を継続したまま、バルブ253b及びバルブ256bの開閉切り替え動作をすることによって、処理室201内へのTEMAZガスの供給開始と供給停止とを素早く行なうことができる。
【0046】
ガス供給管233bのバルブ253bの下流側にはさらに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管234bの下流端が接続されている。不活性ガス供給管234bには上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源と、図示しないマスフローコントローラと、バルブ254bとが設けられている。バルブ254bを開けることにより、マスフローコントローラによって流量制御しながら、不活性ガス供給源から処理室201内に不活性ガスを供給可能なように構成されている。不活性ガスを供給することで、例えばTEMAZガスの供給終了後、不活性ガスをパージして処理室201内に残留したTEMAZガス等を排除することができる。
【0047】
主に、圧送ガス供給管232b、バルブ252b、TEMAZ容器260b、ガス排気管236b、バルブ256b、気化器261b、ガス供給管233b、マスフローコントローラ241b、バルブ253b、多孔ノズル270b、ガス噴出口248bにより、処理室201内に原料を供給する原料供給部が構成される。
【0048】
また主に、原料供給部および上述の酸化剤供給部(Oガス供給管232a、オゾナイザ261a、ガス排気管236a、バルブ256a、ガス供給管233a、マスフローコントローラ241a、バルブ252a、253a、多孔ノズル270a、ガス噴出口248a)により、処理ガス供給部が構成される。
【0049】
(ガス活性化部)
処理炉202は、多孔ノズル270aに沿って立設され、複数のシースヒータ22a、22b、22c、22d等から構成されるシースヒータ集合体319を備えている。シースヒータ集合体319は、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。シースヒータ集合体319の垂直部は、多孔ノズル270aの外壁に沿うように鉛直方向に配設されている。シースヒータ集合体319の水平部は、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。
【0050】
多孔ノズル270aに沿って立設されるシースヒータ集合体319の構成を、図4(a)に示す。図4(a)において、紙面右側がウエハ200の側にあたる。各部の内部構造等を示すため、図中、多孔ノズル270aおよびシースヒータ集合体319は一部分を切り出した形で表わされている。図4(a)に示すように、シースヒータ集合体319は、複数のガス活性化部としてのシースヒータ22a、22b、22c、22dを有している。
【0051】
図4(b)は、シースヒータ22a、22b、22c、22dの内部構造を示す構成図
であって、紙面左側が斜透視図であり、紙面右側が断面図である。シースヒータ22a、22b、22c、22dは、例えばニクロム線等の抵抗線から構成されるヒータ本体221a、221b、221c、221dと、ヒータ本体221a、221b、221c、221dを包むシース223a、223b、223c、223dとを有している。シース223a、223b、223c、223dは、上端部が閉塞されたチューブ状に構成され、例えばSUS等の金属材料から構成されている。ヒータ本体221a、221b、221c、221dとシース223a、223b、223c、223dとの間には、例えばマグネシア(MgO)等の絶縁粉末等からなる充填剤222a、222b、222c、222dが充填されている。ヒータ本体221a、221b、221c、221dは、後述するシースヒータ電源20からの通電により加熱される。つまり本実施形態においては、ガス活性化部としてのシースヒータ22a、22b、22c、22dは、特に加熱体として機能する。
【0052】
シースヒータ22a、22b、22c、22dはそれぞれ、保護管としてのヒータ保護管21a、21b、21c、21dに覆われている。ヒータ保護管21a、21b、21c、21dは、例えば樹脂やセラミック等の誘電体から構成され、上端部が閉塞されたチューブ状に構成されている。ヒータ保護管21a、21b、21c、21dの内部は、例えば大気圧雰囲気となっている。このように、シースヒータ22a、22b、22c、22dをヒータ保護管21a、21b、21c、21dで覆うことで、酸素ラジカル等からシースヒータ22a、22b、22c、22dを保護する。これにより、シースヒータ22a、22b、22c、22dの寿命が延び、処理室201内やウエハ200の汚染を低減できる。
【0053】
ヒータ保護管21a、21b、21c、21dの内部には、図示しない熱電対が設けられている。熱電対により検出された温度情報に基づき、シースヒータ22a、22b、22c、22dが備えるヒータ本体221a、221b、221c、221dへの通電具合を調節することで、シースヒータ22a、22b、22c、22dが所望の温度となるように構成されている。
【0054】
シースヒータ集合体319の垂直部、より具体的には、ヒータ保護管21a、21b、21c、21dに覆われたシースヒータ22a、22b、22c、22dの垂直部は、多孔ノズル270aが備えるガス噴出口248aを取り囲むように、多孔ノズル270aの外壁に沿って鉛直方向にそれぞれ配設されている。シースヒータ22a、22b、22c、22dのそれぞれの配置を図5に示す。図5は、多孔ノズル270aおよびシースヒータ集合体319を図4(a)のB−B断面図である。図5において、紙面右側がウエハ200の側にあたる。図5に示すように、シースヒータ22a、22b、22c、22dは、ガス噴出口248aを囲むように多孔ノズル270aの外側に設けられている。またシースヒータ22a、22b、22c、22dは、ガス噴出口248aから噴出したOガスの流れがウエハ200の外周縁に対して垂直となるようにOガスが通過可能な隙間を有している。すなわち、シースヒータ22a、22bは多孔ノズル270aの外壁に沿ってガス噴出口248aの両側に所定間隔をおいて設けられている。シースヒータ22c、22dは多孔ノズル270aの外壁からシースヒータ22a、22bを隔ててガス噴出口248aの両側に所定間隔をおいて設けられている。ガス噴出口248aから噴出したOガスは、シースヒータ電源20からの通電により加熱されたシースヒータ22aとシースヒータ22bとの隙間、シースヒータ22cとシースヒータ22dとの隙間を通過し、活性化された状態でウエハ200の表面へと供給される。つまり、Oガスはシースヒータ22a、22b、22c、22dにより加熱されて分解し、酸素(O)ラジカルが生成される。
【0055】
ヒータ保護管21a、21b、21c、21dの水平部と、上述の多孔ノズル270a
の水平部とは、例えば石英等からなる集結部材26に溶接されている。このように多孔ノズル270aの水平部と、ヒータ保護管21a、21b、21c、21dの水平部とは、集結部材26によって束ねられ、集結部材26を介してマニホールド209の外部へと貫通している。集結部材26の外周にはOリングなどの封止部材23が設けられ、マニホールド209等により構成される処理室201内の気密性が保持されている。
【0056】
マニホールド209を貫通したヒータ保護管21a、21b、21c、21d内部のシースヒータ22a、22b、22c、22d、より具体的には、ヒータ本体221a、221b、221c、221dは、ガス加熱部としてのシースヒータ電源20にそれぞれ接続されている。シースヒータ電源20からヒータ本体221a、221b、221c、221dに通電すると、ニクロム線等の抵抗線から構成されるヒータ本体221a、221b、221c、221dが加熱され、シースヒータ22a、22b、22c、22dを介してシースヒータ集合体319全体が加熱されるよう構成されている。
【0057】
主に、ガス活性化部(加熱体)としてのシースヒータ22a、22b、22c、22d、保護管としてのヒータ保護管21a、21b、21c、21d、ガス加熱部としてのシースヒータ電源20により、ガス活性化機構が構成される。
【0058】
このようなガス活性化機構を備えることにより、処理室201内、多孔ノズル270a内を低温に保ちつつ、Oガス等の処理ガスを充分に活性化させることができる。
【0059】
なお、多孔ノズル270a内が低温に保たれることで、多孔ノズル270a内でのOガスの活性化を防ぐことができる。これにより多孔ノズル270a内で、酸素ラジカル等の活性種が、他のO分子等との衝突を繰り返すことで失活してしまうのを抑えることができ、Oガスがウエハ200に供給される際、Oガス中の活性種の濃度低下を抑制できる。
【0060】
また、ガス活性化部としてのシースヒータ22a、22b、22c、22dはウエハ200近傍に設けられているため、ウエハ200の表面に効率よく活性種である酸素ラジカルが供給される。すなわち、Oガスが活性化されてからウエハ200の表面に到達するまでの距離(時間)が短く、活性種がウエハ200に到達するまでに他の分子に衝突したりして失活してしまうことを抑制でき、酸素ラジカルを高濃度に含んだ状態で、Oガスをウエハ200に供給することができる。
【0061】
また、ガス活性化部は、多孔ノズル270aのガス噴出口248aの直近に設けられている。すなわち、処理ガスが処理室201内に供給される際に必ず通過する流路上に設けられている。これにより、処理ガスを効率的に加熱して活性化させることができる。
【0062】
さらに、ガス活性化部は、処理ガスの流れがウエハ200の外周縁に対して垂直となるように処理ガスを整流する。これにより、ウエハ200の中心部へ効率的に処理ガス、すなわち活性種を供給することができる。
【0063】
(排気部)
マニホールド209の側壁には、排気管231が接続されている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ251、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。APCバルブ251は、弁を開閉することで真空排気・排気停止ができ、さらに弁を開度調節することが可能な開閉弁である。真空ポンプ246を作動させつつ、APCバルブ251の開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内を所望の圧力とすることが可
能なように構成されている。
【0064】
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ251、真空ポンプ246により、処理室201内の雰囲気を排気する排気部が構成される。なお、排気管231等を含む排気部は、図3に示すように、例えば多孔ノズル270a、270bと近接する位置に設けられている。ただし図2においては、排気部の詳細な構造を示すため、紙面右側の、多孔ノズル270a、270bと対向する位置に図示した。
【0065】
(制御部)
制御部であるコントローラ280は、マスフローコントローラ241a、241b、APCバルブ251、バルブ252a、253a、254a、256a、252b、253b、254b、256b、オゾナイザ261a、シースヒータ電源20、ヒータ207、圧力センサ245、温度センサ263、真空ポンプ246、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。コントローラ280により、マスフローコントローラ241a、241bの流量調整動作、APCバルブ251、バルブ252a、253a、254a、256a、252b、253b、254b、256bの開閉動作、さらにAPCバルブ251の圧力調整動作、オゾナイザ261aによるOガスの生成制御、シースヒータ電源20、ヒータ207の温度調整動作、圧力センサ245の圧力検出動作、温度センサ263による温度検出動作、真空ポンプ246の起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ115の昇降動作の制御が行なわれる。
【0066】
(4)基板処理工程
続いて本実施形態に係る基板処理工程について説明する。本実施形態に係る基板処理工程は、例えばDRAM等の半導体デバイスの製造工程の一工程として上述の処理炉202によりCVD法やALD法を用いて実施される。
【0067】
従来のCVD法やALD法では、例えばCVD法であれば、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを同時に供給し、またALD法であれば、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを交互に供給する。そして、ガス供給時のガス供給流量、ガス供給時間、処理室201内の温度、プラズマ方式の場合はプラズマパワー等の成膜条件を制御することによりZrO(酸化ジルコニウム)膜等を形成する。例えばZrO膜の形成においては、膜の組成比が化学量論組成であるO/Zr≒2となるように、成膜条件を制御する。あるいは、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるように、成膜条件を制御することも可能である。すなわち、形成する膜を構成する複数の元素のうち、少なくともひとつの元素が他の元素よりも化学量論組成に対して過剰となるように、成膜条件を制御する。このように、形成される膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ、成膜を行なうことが可能である。以下において、ALD法により、異なる種類の元素を含む複数種類のガスを交互に供給して、化学量論組成を有する膜を形成するシーケンス例について説明する。
【0068】
CVD法の一種であるALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる2種類(またはそれ以上)の原料を含む反応性ガスを1種類ずつ交互にウエハ200上に供給し、1原子層単位で基板上に吸着させ、表面反応を利用して成膜を行なう手法である。ALD法によりウエハ200上にZrO膜を形成する場合には、例えばZr(ジルコニウム)含有原料を供給する工程と酸化剤を供給する工程とを1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施する。1回のサイクルでは、不連続な1原子層未満、または数原子層のZrO膜が形成される。したがってZrO膜の膜厚は、サイクルの繰り返し回数により制御することができる。例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、サイクルを20回行うことで20ÅのZrO膜を形成することができる。
【0069】
以下に、上述の処理炉202により、Zr含有原料としてTEMAZガスを用い、酸化剤としてOガスを用いてウエハ200上に所望の絶縁膜、例えばZrO膜を成膜する場合の基板処理工程について、主に図6および図7を用いて詳述する。図6は、処理炉202により実施される基板処理工程のフロー図である。また、図7は、本実施形態にかかる原料供給、酸化剤供給を交互に繰り返す際のそれぞれの供給・排気のタイミングを例示するタイミングチャートとしてのシーケンス図である。以下の説明において、図3にかかる処理炉202を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。なお、ここでZrO膜はZrOを含む任意の組成のZrO膜である。また、ウエハ200上にTiN膜等の下地膜を予め形成しておき、下地膜上にZrO膜を形成することとしてもよい。TiN膜等の下地膜は処理炉202とは異なる装置で形成してもよく、あるいは処理炉202にて下地膜を形成した後に連続的にZrO膜の成膜を実施してもよい。
【0070】
(基板搬入工程S1)
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートローディング)する。この状態で、シールキャップ219は封止部材220を介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。基板搬入工程S1においては、バルブ254a,254bを開けて、処理室201内にパージガスとしてのNガス等の不活性ガスを供給し続けることが好ましい。
【0071】
(減圧工程S2、昇温工程S3)
続いて、バルブ254a,254bを閉じ、処理室201内を真空ポンプ246により排気する。また、ウエハ200が所望の温度、例えば150℃〜250℃となるように、ヒータ207によって処理室201内の温度を制御する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200の回転を開始する。
【0072】
(ZrO膜形成工程S4〜S8)
続いて、ウエハ200上にZrO膜を形成する。すなわち、図6のS4〜S7を1サイクルとし、このサイクルを所定回数行なう(S8)ことにより、ウエハ200上に所定膜厚のZrO膜を形成する。以下に、ZrO膜形成工程S4〜S8について詳述する。
【0073】
(原料供給工程S4)
原料供給工程S4では、処理室201内に原料(気化ガス)としてのTEMAZガスを流し、ウエハ200表面にTEMAZ分子を吸着させる。具体的には、予め、図示しない圧送ガス供給源からTEMAZ容器260b内に圧送ガスを供給し、液体原料としてのTEMAZを気化器261bに圧送(供給)してTEMAZガスを安定的に発生させておく。そしてTEMAZガスを処理室201内に供給する際には、ガス排気管236bのバルブ256bを閉じ、ガス供給管233bのバルブ253bを開けることにより、マスフローコントローラ241bにより流量制御しながら、気化器261bで発生させたTEMAZガスを処理室201内に供給する。また、これと同時に、不活性ガス供給管234bのバルブ254bを開けて不活性ガスを処理室201内に供給する。このときAPCバルブ251の開度を調整して、処理室201内の圧力を50Paから400Paの範囲内に維持する。TEMAZガスの供給量は、例えば0.1g/分から0.5g/分の範囲内とする。TEMAZガスの供給時間は、例えば30秒から240秒の範囲内とする。所定時間が経過したら、バルブ253bを閉じると共に、バルブ256b、APCバルブ251を開ける。
【0074】
なお、原料供給工程S4において、処理室201内に流れているガスは主にTEMAZ
ガス並びにNガス等の不活性ガスのみであり、Oガス等の酸化剤は存在しない。したがって、TEMAZガスは気相反応を起こすことなく、ウエハ200の表面、あるいはウエハ200上に形成されたTiN膜等の下地膜の表面と化学吸着(表面反応)を起こして、TEMAZ分子の吸着層またはZr層を形成する。TEMAZ分子の吸着層とは、TEMAZ分子の連続的な吸着層のほか、不連続な吸着層をも含む。Zr層とは、TEMAZ分子が分解して生成されたZrにより構成される連続的な層のほか、これらが重なってできるZr薄膜をも含む。なお、これらすべてを指してZr含有層という場合もある。
【0075】
(真空排気工程S5)
バルブ256bを開けてTEMAZガスをガス排気管236b側へ流すとともに、バルブ253bを閉じて処理室201内への原料の供給を停止した後は、APCバルブ251を開けて処理室201内を真空排気し、残留しているTEMAZの気化ガスや反応後の分解物(排ガス)等を排除する。このとき、不活性ガス供給管234bが備えるバルブ254bは開放したままとし、N等の不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内から残留ガスを排除する効果をさらに高めることができる。
【0076】
(酸化剤供給工程S6)
酸化剤供給工程S6では、処理室201内に酸化剤としてのOガスを流し、ウエハ上にZrO膜を形成する。具体的には、予め、図示しないOガス供給源からオゾナイザ261aにOガスを供給してOガスを安定的に生成させておく。そしてOガスを処理室201内に供給する際には、ガス排気管236aのバルブ256aを閉じ、ガス供給管233aのバルブ252a、253aを開けることにより、マスフローコントローラ241aにより流量制御しながら、オゾナイザ261aで生成させたOガスを処理室201内に供給する。また、これと同時に、不活性ガス供給管234aのバルブ254aを開けて不活性ガスを処理室201内に供給する。このときAPCバルブ251の開度を調整して、処理室201内の圧力を50Paから400Paの範囲内に維持する。Oガスの供給量は、例えば10slmから20slmの範囲内とする。Oガスの供給時間は、例えば60秒から300秒の範囲内とする。所定時間が経過したらバルブ252a、253aを閉じると共に、バルブ256a、APCバルブ251を開ける。
【0077】
なお、Oガスを処理室201内に供給する際には、シースヒータ集合体319が備えるシースヒータ22a、22b、22c、22dが、所定の温度、例えば300℃から400℃となるように、シースヒータ電源20からシースヒータ22a、22b、22c、22dのヒータ本体221a、221b、221c、221dへと電力を供給する。この際、シースヒータ22a、22b、22c、22dが所望の温度となるように、シースヒータ集合体319が備える熱電対が検出した温度情報に基づきヒータ本体221a、221b、221c、221dへの通電具合をフィードバック制御する。多孔ノズル270aのガス噴出口248aから噴出したOガスは、加熱されたシースヒータ22a、22bの隙間、シースヒータ22c、22dの隙間を通過する際、熱により分解されて酸素ラジカルを生成させる。この酸素ラジカルを高濃度に含み、活性化された状態で、Oガスがウエハ200に供給される。
【0078】
このように、シースヒータ22a、22b、22c、22dにより、ガス噴出口248a近傍のウエハ200に近い位置でOガスを加熱し、活性化したOガスをシースヒータ22a、22b、22c、22dの隙間からウエハ200の外周縁に対して垂直となるように通過させている。これにより、処理室201内、多孔ノズル248a内を低温に保ちつつ、高濃度の活性種を含むOガスをウエハ200の中心部へと効率的に供給することができる。
【0079】
なお、酸化剤供給工程S6において、処理室201内に流れているガスは主にOガス
のみであり、TEMAZガス等の原料は存在しない。したがって、Oガスは気相反応を起こすことなく、ウエハ200の表面に形成されたZr含有層の少なくとも一部と反応する。このようにOガスを供給することにより、ウエハ200上に吸着したZr含有層とOガス、より具体的にはOガス中に含まれる酸素(O)ラジカル等とが化学吸着(表面反応)を起こして、1原子層未満から数原子層のZrOの薄膜がウエハ200上に成膜される。
【0080】
(真空排気工程S7)
バルブ256aを開けてOガスをガス排気管236a側へ流すとともに、バルブ252a、253aを閉じて処理室201内へのOガスの供給を停止した後は、APCバルブ251を開けて処理室201内を真空排気し、残留しているOガスや反応後の分解ガス等を排除する。このとき、不活性ガス供給管234aが備えるバルブ254aは開放したままとし、N等の不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内から残留ガスを排除する効果をさらに高めることができる。また、シースヒータ22a、22b、22c、22dのヒータ本体221a、221b、221c、221dへの通電を停止する。
【0081】
(サイクル工程S8)
上記S4〜S7を1サイクルとし、このサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚、例えば30〜100ÅのZrO膜を形成する。図7に、上述のサイクルをnサイクル行なう例を示す。図7の横軸は経過時間を示し、縦軸は各ガスの供給タイミングを示している。
【0082】
(降温工程及び常圧復帰工程S9)
所定のサイクルが繰り返され、所望の膜厚のZrO膜が成膜されたら、ヒータ207への電力供給を停止し、ボート217およびウエハ200を所定の温度にまで降下させる。そして温度を降下させる間、バルブ254a、254bを開放したまま維持し、図示しない不活性ガス供給源から処理室201内に不活性ガスの供給を継続する。これにより、処理室201内を不活性ガスで置換すると共に、処理室201内の圧力を常圧に復帰させる。
【0083】
(基板搬出工程S10)
ウエハ200が所定の温度にまで降下し、処理室201内が常圧に復帰したら、上述の手順とは逆の手順により、成膜後のウエハ200を処理室201内から搬出する。すなわち、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降して、マニホールド209の下端を開口するとともに、処理済のウエハ200をボート217に保持した状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。なお、ボート217を搬出するときには、バルブ254a,254bを開け、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。以上により、処理炉202による基板処理工程を終了する。
【0084】
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示すひとつまたは複数の効果を奏する。
【0085】
(a)本実施形態に係るガス活性化部としてのシースヒータ22a、22b、22c、22dは、Oガスの流れがウエハ200の外周縁に対して垂直となるようにOガスが通過可能な隙間を空けつつ、ガス噴出口248aを囲むように多孔ノズル270aの外側に設けられ、ガス噴出口248aから噴出するOガスを活性化させてウエハ200に供給するように構成されている。これにより、処理室201内、多孔ノズル270a内を低温
に保ちつつ、Oガスを充分に活性化させることができ、ウエハ200の表面へ供給される酸素ラジカルの濃度を増大させることができる。
【0086】
例えば酸化剤としてのOガスにより、上述のようなZr含有層を酸化してZrO膜を成膜する際には、Oガスが分解して生じた酸素ラジカルがZr含有層との酸化反応に寄与する。気相中のOガスの分解は、温度の上昇とともに促進される。これを、気相中のO濃度の半減期でみると、例えば20℃での半減期は2時間〜20時間だが、200℃では数秒になり、350℃では1秒以下となる。そして、このO濃度の減少に応じて酸素ラジカルが生成される。1molのOが分解すると1molの酸素ラジカルが生成されるので、当初のO濃度の50%の量に相当する酸素ラジカルが生成されるまでの時間(つまり、当初、Oガスが100mol存在していた場合に酸素ラジカルが50mol生成されるまでの時間)は、Oガスの温度が20℃から350℃に上昇すると、1/7200〜1/72000に短縮される。本実施形態においては、シースヒータ22a、22b、22c、22dの温度を例えば300℃から400℃としており、このように加熱されたシースヒータ22a、22bの隙間、シースヒータ22c、22dの隙間をOガスが通過する際、分解反応により多量の酸素ラジカルが生成される。これにより、酸素ラジカルを高濃度に含んだOガスをウエハ200に供給することができる。
【0087】
(b)本実施形態によれば、多孔ノズル270a内が低温に保たれることで、多孔ノズル270a内でのOガスの活性化を防ぐことができる。これにより、多孔ノズル270a内で、酸素ラジカルが他のO分子等と衝突するのを防ぐことができ、Oガスがウエハ200に供給される際、Oガス中の酸素ラジカルの濃度低下を抑制できる。よって、ウエハ200の処理速度が向上し、基板処理工程の効率や生産性を向上させることが可能となる。
【0088】
(c)また、本実施形態に係るガス活性化部は、ウエハ200近傍に設けられているため、ウエハ200に効率よく酸素ラジカルが供給される。すなわち、Oガスが活性化されてからウエハ200の表面に到達するまでの距離(時間)が短く、酸素ラジカルがウエハ200に到達するまでに他の分子に衝突したりして失活してしまうことを抑制できる。これによりウエハ200の処理速度が向上する。
【0089】
従来の基板処理装置においては、処理室内の温度を例えば150℃〜250℃となるように保持した状態で、Oガス等の処理ガスを処理室内に供給していた。これにより、Oガスは処理室内で加熱されて分解し、酸素ラジカルを生成させる。この酸素ラジカルがウエハの表面に到達し、Zr含有層との酸化反応によりZrO膜が成膜されていた。しかし、従来の基板処理装置では、Oガスの加熱による分解反応が不充分なことがあり、Oガスが充分に活性化されない状態でウエハの表面に到達することがあった。係る場合、例えば処理室内の温度をさらに高めれば、Oガスの加熱による分解反応を促進させることが可能である。しかし処理室内の温度を高めると、処理室内に立設された多孔ノズルも加熱され、例えば多孔ノズル内でOガスの分解反応が起こってしまうことがあった。通常、酸素ラジカル等の活性種の寿命は非常に短く、多孔ノズル内で生成した酸素ラジカルの多くはウエハの表面に到達することができない。また酸素ラジカルは、Oガスや、Oガスの分解により生じたOガス等との衝突を多孔ノズル内で繰り返し、ガス噴出口から噴出されるOガスの濃度を低下させてしまう。これにより、ウエハに到達する酸素ラジカルの量がさらに低下する結果となる場合があった。
【0090】
しかし本実施形態によれば、処理室201内の温度を例えば150℃〜250℃と比較的低く保ちつつ、ガス噴出口248aを囲むように設けたシースヒータ22a、22b、22c、22dによって、ガス噴出口248aから噴出した直後にOガスを例えば300℃から400℃に加熱している。これにより、多孔ノズル270a内でのOガスの分
解反応を抑制しつつ、処理室201内の、よりウエハ200に近い位置で、より確実にOガスを分解することができ、基板処理の速度を向上させることができる。
【0091】
(d)本実施形態に係るガス活性化部は、多孔ノズル270aのガス噴出口248aの直近に設けられている。すなわち、ガス活性化部は、Oガスが処理室201内に供給される際に必ず通過する流路上に設けられている。これにより、Oガスを漏れなく効率的に加熱して活性化させることができる。
【0092】
(e)本実施形態に係るガス活性化部は、Oガスの流れがウエハ200の外周縁に対して垂直となるようにOガスを整流する。これにより、ウエハ200の中心部へ効率的に処理ガス、すなわち活性種を供給することができる。そのため、基板処理の面内均一性が向上する。
【0093】
(f)本実施形態にかかるガス活性化部は、誘電体により構成されるヒータ保護管21a、21b、21c、21dに覆われヒータ本体221a、221b、221c、221dとヒータ本体221a、221b、221c、221dを包むシース223a、223b、223c、223dとを備えるシースヒータ22a、22b、22c、22dとして構成されている。シースヒータ22a、22b、22c、22dをヒータ保護管21a、21b、21c、21dで覆うことで、活性種等からシースヒータ22a、22b、22c、22dを保護することができる。よって、シースヒータ22a、22b、22c、22dの寿命が延び、また、処理室201内やウエハ200の汚染を回避できる。
【0094】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態にかかる処理炉202の構成について、主に図8および図9を用いて説明する。第2実施形態においては、シースヒータ集合体419のシースヒータ22a、22b、22c、22dの配置および多孔ノズル470aが備えるガス噴出口248aの配置が、第1実施形態とは異なる。以下の説明においては、主にシースヒータ集合体419の異なる構成部分について詳述する。それ以外の構成については、上述のシースヒータ集合体319と同様の機能を有する構成要件に同一の符号を付して説明を省略する。
【0095】
図8の(a)は、本実施形態に係る多孔ノズル470aおよびシースヒータ集合体419の構成図であり、(b)はシースヒータ22a、22b、22c、22dの内部構造を示す構成図である。図9は、多孔ノズル470aおよびシースヒータ集合体419を図8(a)のC−C断面図である。図8(a)、図9とも、紙面右側がウエハ200の側にあたる。図8(a)および図9に示すように、多孔ノズル470aが備えるガス噴出口248aは、ウエハ200に対向する位置からウエハ200の表面に対して水平に90°回転した位置に設けられている。そしてシースヒータ22a、22b、22c、22dも、ガス噴出口419の回転した位置に合わせてガス噴出口248aを取り囲むように設けられている。またシースヒータ22a、22b、22c、22dは、ガス噴出口248aから噴出したOガスの流れがウエハ200の外周縁に対して垂直となるようにOガスが通過可能な隙間を有している。つまり、ガス噴出口248aから噴出したOガスを上述の隙間を通過させてウエハ200の側へ供給するよう、それぞれのシースヒータ22a、22b、22c、22dが配置されている。具体的には、シースヒータ22a、22bは、多孔ノズル270aの外壁に沿ってガス噴出口248aの両側に所定間隔をおいて設けられている。シースヒータ22c、22dは、シースヒータ22bと所定間隔を取りながらシースヒータ22aに隣接してウエハ200の側へとカーブを描くように配置されている。これにより、ガス噴出口248aから噴出したOガスは、シースヒータ22a、22c、22dによって形成されるカーブに沿って流れ、シースヒータ22bとシースヒータ22dとの隙間を通過して活性化された状態でウエハ200の表面へと供給される。
【0096】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。さらには、シースヒータ集合体419のシースヒータ22a、22b、22c、22dおよび多孔ノズル470aが備えるガス噴出口248aをそれぞれ上述のように配置することで、例えば処理炉202の構成上、ウエハ200と多孔ノズル470aとの距離が充分に確保できない場合等であっても、所望の効果が得られるようシースヒータ集合体419を設置することができる。
【0097】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態にかかる処理炉202の構成について、主に図10を用いて説明する。本実施形態においては、ガス活性化部としてのシースヒータ22a、22b、22c、22dが、加熱体としてのみならずプラズマ放電体としても機能する。すなわち、シースヒータ集合体519がさらにプラズマ生成部に接続されている点が、上述の実施形態とは異なる。以下の説明においては、主にシースヒータ集合体519の上記とは異なる構成部分について詳述する。それ以外の構成については、上述のシースヒータ集合体319と同様の機能を有する構成要件に同一の符号を付して説明を省略する。
【0098】
図10の(a)は、本実施形態に係る多孔ノズル270aおよびシースヒータ集合体519の構成図であり、(b)はシースヒータ22a、22b、22c、22dの内部構造を示す構成図である。図10(a)および(b)に示すように、シースヒータ22a、22cが備えるプラズマ放電電極としてのシース223a、223cのいずれかひとつと、シースヒータ22b、22dが備えるプラズマ放電電極としてのシース223b、223dのいずれかひとつ、例えばシース223c、223dには、整合器25を介して高周波電力を印加する高周波電源24がそれぞれ接続されている。この高周波電源24からシースヒータ22c、22dの例えばSUS等の金属材料からなるシース223c、223dに電力を供給し、例えば誘電体から構成されるヒータ保護管21a、21b、21c、21dで囲まれた空間にOガスのプラズマを生成させる。つまり、シースヒータ22a、22bの隙間及びシースヒータ22c、22dの隙間を通過するOガスをプラズマ励起させる。
【0099】
なお、シースヒータ22a、22b、22c、22dが上述の第2実施形態における配置をとるときは、シースヒータ22a、22c、22dの備えるシース223a、223c、223dのいずれかひとつと、シースヒータ22bの備えるシース223bと、に高周波電源24を接続する。好ましくは、シース223dと、シース223bと、に高周波電源24を接続する。
【0100】
主に、プラズマ放電電極としてのシース223a、223b、223c、223dを有するガス活性化部(プラズマ放電体)としてのシースヒータ22a、22b、22c、22d、保護管としてのヒータ保護管21a、21b、21c、21dによりシースヒータ集合体519が構成され、主に、高周波電源24、整合器25によりプラズマ生成部が構成される。そして主に、シースヒータ集合体519、プラズマ生成部、ガス加熱部としてのシースヒータ電源20により、ガス活性化機構が構成される。
【0101】
次に、上記プラズマ生成部を備えるシースヒータ集合体519の動作について説明する。まず、シースヒータ集合体519が備えるシースヒータ電源20からシースヒータ22a、22b、22c、22dのヒータ本体221a、221b、221c、221dに通電して加熱する。次に、多孔ノズル270aの有するガス噴出口248aからOガスを噴出させる。このとき、高周波電源24からシースヒータ22c、22dが備えるシース223c、223dにそれぞれ電力を印加して、ヒータ保護管21a、21b、21c、21dで囲まれた空間に電界を発生させ、Oガスによるプラズマを生成させる。係る構
成により、シースヒータ22a、22b、22c、22dによる加熱と、Oガス自体がプラズマ化されることによって、さらに高濃度の酸素ラジカルを生成させることができる。このように、高濃度の酸素ラジカルを含むOガスをウエハ200に供給して基板処理を行なうことで、ウエハ200の処理速度をより高めることができる。
【0102】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0103】
また本実施形態によれば、シース223a、223b、223c、223dのうちの任意のシースには、高周波電源24、整合器25が接続され、ガス噴出口248aから噴出するOガスをプラズマ化する構成となっている。これにより、より高濃度の酸素ラジカルを含むOガスをウエハ200に供給することができる。よって、基板処理工程の効率や生産性をより向上させることができる。
【0104】
また本実施形態によれば、シースヒータ22a、22b、22c、22dを構成するシース223a、223b、223c、223dのうちの任意のシースを、プラズマ放電電極としている。これにより、新たに構成部材を追加することなく、Oガスのプラズマを生成させることができる。
【0105】
また本実施形態によれば、シースヒータ22a、22b、22c、22dは、誘電体により構成されるヒータ保護管21a、21b、21c、21dに覆われた構成となっている。これにより、シースヒータ22a、22b、22c、22dの近傍でOガスのプラズマを生成させても、プラズマによるシースヒータ22a、22b、22c、22dへのダメージを低減し、シースヒータ22a、22b、22c、22dの寿命を延ばすことができる。
【0106】
さらに本実施形態によれば、ヒータ保護管21a、21b、21c、21dを誘電体により構成することで、シース223a、223b、223c、223dをプラズマ放電電極としたプラズマ放電を妨げることがない。
【0107】
なお、上述の実施形態においては、酸化剤としてOガスを用いる例が記載されているが、これに限らず酸化剤としてOガスを用いてもよい。
【0108】
[他の実施の形態]
以上、上述した実施形態では、シースヒータ集合体319、419、519が備えるシースヒータ22a、22b、22c、22dおよびヒータ保護管21a、21b、21c、21dは各4本ずつとしたが、シースヒータおよびヒータ保護管の本数はこれに限られず、Oガスを通過させる隙間を形成するよう各2本以上のシースヒータおよびヒータ保護管を備えていればよい。
【0109】
また上述の実施形態においては、シースヒータ22a、22b、22c、22dを加熱しつつ、ヒータ保護管21a、21b、21c、21dに高周波電力を印加してプラズマを生成する構成としたが、シースヒータ22a、22b、22c、22dの加熱は行なわず、プラズマ放電のみ行なってもよい。その場合、シースヒータ電源20からシースヒータ22a、22b、22c、22dへの通電は行わず、シースヒータ22a、22b、22c、22dが備えるシース223a、223b、223c、223dのうち、任意のシースへの高周波電力24からの電力供給のみ行なう。
【0110】
また上述の実施形態においては、酸化剤としてOガスを用いることとしたが、プラズマ生成部を有する構成においては、例えばOガスやその他のO原子含有ガスを用いることも可能である。
【0111】
また上述の実施形態においては、ZrO膜の原料としてTEMAZを用いる場合について詳述したが、ZrO膜の原料はTEMAZに限られず、Zr(O−tBu)、TDMAZ(テトラキスジメチルアミノジルコニウム:Zr(NMe)、TDEAZ(テトラキスジエチルアミノジルコニウム:Zr(NEt)、Zr(MMP)等を使用することができる。
【0112】
また上述の実施形態においては、ZrO膜を成膜することとしたが、上述の基板処理装置101においては、ZrO膜に限らず、TiO膜、AlO膜、HfO膜、HfAlO膜、ZrAlO膜等、種々の金属原子を含む絶縁膜をはじめ、SiO膜、SiON膜等、種々の膜を成膜することができる。また、成膜処理に限らず、酸化処理や、基板表面改質処理、拡散処理等、様々な基板処理を行なうことができる。処理室201内に供給する処理ガスは所望の基板処理に応じて種々選択することができるが、本発明は、特に処理ガスとしてOガスを含む場合に、好適に用いることができる。
【0113】
また、ガス活性化部により活性化される処理ガスとしては、上述したような酸化剤や原料ガスに限らず、例えば窒化剤、還元剤、炭化剤など他のガスであってもよい。
【0114】
上述の実施形態では、基板処理装置101が縦型熱処理装置として構成されている場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、横型熱処理装置、枚葉型熱処理装置など、減圧下でウエハ等を処理する処理室を備える基板処理装置にも本発明は好適に適用可能である。
【0115】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0116】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0117】
本発明の第1の態様は、
複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、
前記基板を処理する処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部と、を有し、
前記処理ガス供給部は、前記処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ前記基板の積層方向に沿って延在するガスノズルを備え、
前記処理ガスの流れが前記基板の外周縁に対して垂直となるように前記処理ガスが通過可能な隙間を空けつつ前記ガス噴出口を囲むように前記ガスノズルの外側に設けられ、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを活性化させて前記基板に供給するガス活性化部を有する
基板処理装置である。
【0118】
本発明の第2の態様は、
前記ガス活性化部は、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを加熱する加熱体である
第1の態様に記載の基板処理装置である。
【0119】
本発明の第3の態様は、
前記ガス活性化部は、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスをプラズマ化するプラズマ放電体である
第1の態様又は第2の態様に記載の基板処理装置である。
【0120】
本発明の第4の態様は、
前記処理ガスはオゾンガスであり、
前記ガス活性化部は、オゾンガスを分解して酸素ラジカルを生成させる
第1の態様から第3の態様に記載の基板処理装置である。
【0121】
本発明の第5の態様は、
複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、
前記処理室内に収容された前記基板を加熱する基板加熱部と、
前記基板の積層方向に沿って前記基板の側面近傍に延在するガスノズルと、
前記ガスノズルに設けられ、前記基板を処理する処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口と、
前記ガス噴出口の近傍に設けられる加熱体と、
前記加熱体に電力を供給し、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを前記加熱体により加熱させて活性化させ、活性化させた前記処理ガスを前記基板に供給するガス加熱部と、を備える
基板処理装置である。
【0122】
本発明の第6の態様は、
前記加熱体は、誘電体により構成される保護管に覆われヒータ本体と前記ヒータ本体を包むシースとを備えるシースヒータである
ことを特徴とする第5の態様に記載の基板処理装置である。
【0123】
本発明の第7の態様は、
複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、
前記処理室内に収容された前記基板を加熱する基板加熱部と、
前記基板の積層方向に沿って前記基板の側面近傍に延在するガスノズルと、
前記ガスノズルに設けられ、前記基板を処理する処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口と、
前記ガス噴出口の近傍に設けられるプラズマ放電電極と、
前記プラズマ放電電極に電力を供給し、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを前記プラズマ放電電極によりプラズマ化させて活性化させ、活性化させた前記処理ガスを前記基板に供給するプラズマ生成部と、を備える
基板処理装置である。
【0124】
本発明の第8の態様は、
前記プラズマ放電電極は、シースヒータが備える金属材料からなるシースであり、
前記シースヒータは誘電体により構成される保護管に覆われ、ヒータ本体と前記ヒータ本体を包む前記シースとを備える
ことを特徴とする第8の態様に記載の基板処理装置である。
【0125】
本発明の第9の態様は、
複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、
前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に延在するガスノズルを有し、前記基板を処理する処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部と、
前記ガスノズルに設けられ、前記処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口と、
前記ガスノズルに沿って延在するガス活性化部と、
前記ガス活性化部に接続されるガス活性化機構と、
少なくとも前記処理ガス供給部及び前記ガス活性化機構を制御する制御部と、を備え、
前記ガス活性化機構に接続される前記ガス活性化部は、前記基板の積層方向に延び前記
ガス噴出口から噴出した前記処理ガスを通過させる隙間を有し、
前記制御部は、
前記処理ガス供給部により前記処理ガスを前記ガス噴出口から噴出させ、前記ガス活性化部の前記隙間から前記処理ガスを通過させ、
前記ガス活性化機構により前記隙間を通過する前記処理ガスを前記ガス活性化部を介して活性化させて前記基板に供給させる
基板処理装置である。
【0126】
本発明の第10の態様は、
複数の基板を所定の間隔で多段に積層して処理室内に搬入する工程と、
前記基板の積層方向に沿って前記処理室内に延在するガスノズルに設けられる複数のガス噴出口から処理ガスを噴出し、前記ガス噴出口を囲むように前記ガスノズルの外側に設けられるガス活性化部の隙間から前記処理ガスの流れが前記基板の外周縁に対して垂直となるように前記処理ガスを通過させ、前記ガス活性化部により前記隙間を通過する前記処理ガスを活性化して前記基板に供給し、前記基板を処理する工程と、を有する
半導体デバイスの製造方法である。
【0127】
本発明の第11の態様は、
複数の基板を処理室に搬入する工程と、
基板を処理する処理ガスを、処理ガスを基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ基板の積層方向に沿って延在するガスノズルから処理室内に供給する工程と、
処理ガスの流れが基板の外周縁に対して垂直となるように処理ガスが通過可能な隙間を空けつつガス噴出口を囲むようにガスノズルの外側に設けられたガス活性化部により、ガス噴出口から噴出する処理ガスを活性化させて基板に供給する工程と、
基板を処理室から搬出する工程と、
を有する半導体デバイスの製造方法である。
【符号の説明】
【0128】
101 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
270a、270b 多孔ノズル(ガスノズル)
248a、248b ガス噴出口
22a、22b、22c、22d シースヒータ(ガス活性化部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を所定の間隔で多段に積層して収容する処理室と、
前記基板を処理する処理ガスを前記処理室内に供給する処理ガス供給部と、を有し、
前記処理ガス供給部は、前記処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ前記基板の積層方向に沿って延在するガスノズルを備え、
前記処理ガスの流れが前記基板の外周縁に対して垂直となるように前記処理ガスが通過可能な隙間を空けつつ前記ガス噴出口を囲むように前記ガスノズルの外側に設けられ、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを活性化させて前記基板に供給するガス活性化部を有する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
複数の基板を処理室に搬入する工程と、
前記基板を処理する処理ガスを、前記処理ガスを前記基板の表面へ噴出する複数のガス噴出口が設けられ前記基板の積層方向に沿って延在するガスノズルから前記処理室内に供給する工程と、
前記処理ガスの流れが前記基板の外周縁に対して垂直となるように前記処理ガスが通過可能な隙間を空けつつ前記ガス噴出口を囲むように前記ガスノズルの外側に設けられたガス活性化部により、前記ガス噴出口から噴出する前記処理ガスを活性化させて前記基板に供給する工程と、
前記基板を処理室から搬出する工程と、を有する
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−15460(P2012−15460A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153257(P2010−153257)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】