説明

基板処理装置

【課題】気体の吹き付けより液切りを行う一方で、当該気体の吹き付けに伴い搬入口側に運ばれる処理液等が当該搬入口から外部に漏れるのを防止する。
【解決手段】基板処理装置は、搬入口2aから処理室1に搬入される基板Sに対して剥離液を供給した後、基板Sを搬出口3aから搬出するように構成される。搬出口3aの近傍には、基板Sに対して基板搬送方向における下流側から上流側に向かってエアを吐出することにより剥離液を除去する第1エアナイフ13,13が配置され、搬入口2aの近傍には、基板搬送方向における上流側から下流側に向かってエアを吐出する第2エアナイフ14,14が設けられる。コントローラ30は、第1エアナイフ13,13によるエアの吐出動作中に第2エアナイフ14,14からエアが吐出されるようにエアの吐出動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD(液晶表示装置)やPDP(プラズマディスプレイ)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、半導体基板等の基板に各種処理液を供給して処理を施す基板処理装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の処理室を有し、LCD、PDP用ガラス基板等の基板を搬送しながら、各処理室内で基板に処理液を供給することにより予め定められたプロセス処理を基板に施す装置が知られている。また、この種の装置において、処理室内における基板の搬出口近傍に、所謂エアナイフと呼ばれるスリット状の吐出口を有するノズル部材を設置し、基板に対してその搬送方向下流側から上流側に向かってエアを吐出させることにより、基板上に残った処理液を除去(液切り)することも行われている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−278859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにエアを吹き付けて基板上の処理液を除去する場合、エアナイフからエアが吐出されると、基板に沿ったエア流が形成され、これによって基板から除去された処理液がエア流によって上流側、つまり基板の搬入口側に運ばれることが考えられる。通常、基板の搬入口はシャッタで閉じられているため、上記のように搬入口側に運ばれたミストが搬入口から外部に拡散することはない。
【0004】
ところが、近年、スループットを向上させるために、処理室からの基板の搬出と、次の基板の処理室への搬入とを同時に行うことが求められるケースがあり、このような場合には、処理液を除去するために搬出中の基板に対してエアナイフからエアが吐出される一方で、搬入口が開放されて次の基板が搬入されるため、基板から除去され、上記エア流によって上流側に運ばれた処理液(ミスト状の処理液)が搬入口から外部に拡散することが考えられる。また、搬入口がシャッタで閉じられている場合でも、シャッタのシール性能や、エアナイフから吐出されるエアの圧力等の運転条件によっては搬入口からミストが外部に漏れることも考えられる。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、基板に気体を吹き付けて基板の液切りを行う装置において、当該気体の吹き付けに伴い基板の搬入口側に運ばれる処理液等が当該搬入口から外部に漏れるのを効果的に抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の基板処理装置は、基板の搬送経路上に互いに対向して並ぶ搬入口と搬出口とを備え、かつこれら搬入口と搬出口との間に処理液の供給手段を有する処理室を有し、前記搬入口から処理室に搬入される基板に対して前記処理液を供給した後、当該基板を前記搬出口から搬出する基板処理装置において、前記処理室内における前記搬出口の近傍位置であって基板の搬送経路を挟んだ上下両側の位置のうち少なくとも一方側に配置され、前記供給手段による処理液供給後に、搬出口に向けて搬送される基板に対して基板搬送方向における下流側から上流側に向かって気体を吐出することにより基板に付着した処理液を除去する第1の気体吐出手段と、前記処理室内における前記搬入口の近傍位置であって前記搬送経路を挟んだ上下両側の位置のうち少なくとも前記第1の気体吐出手段が配置される側と同じ側に配置され、基板搬送方向における上流側から下流側に向かって気体を吐出可能な第2の気体吐出手段と、を備えているものである。
【0007】
より具体的には、前記第1の気体吐出手段による気体の吐出動作中に、前記第2の気体吐出手段から気体が吐出されるように第2の気体吐出手段による気体の吐出制御を行う制御手段を備えているものである。
【0008】
上記の基板処理装置では、搬入口を通じて処理室内に搬入された基板に対して供給手段により処理液が供給され、その後、搬出口に向けて搬送される基板に対して基板搬送方向下流側から上流側に向かって第1の気体吐出手段から気体が吐出されることにより、基板に付着した処理液が除去される(基板の液切りが行われる)。そして、第1の気体吐出手段から気体が吐出されているときに、基板搬送方向における上流側から下流側に向かって第2の気体吐出手段から気体が吐出され、これによって基板から除去された処理液等の搬入口側への拡散が抑制される。従って、搬入口から処理室外部への処理液(ミスト状の処理液;以下ミストという)の漏れを抑制することができる。
【0009】
また、上記の基板処理装置は、前記搬入口を開閉可能に設けられ、前記処理室への基板の搬入時に前記搬入口を開くシャッタ部材を有し、前記制御手段は、前記第1の気体吐出手段から気体が吐出され、かつ少なくとも前記搬入口が開いているときに前記第2の気体吐出手段から気体を吐出させるように構成される。
【0010】
この構成によれば、処理室から基板を搬出する一方で、これと同時に次の基板が搬入口から処理室内に搬入されてくるような場合に、搬入口から処理室外にミストが漏れるのを効果的に抑制することができる。
【0011】
なお、前記第2の気体吐出手段は、前記搬送経路に対して直交する成分を含む斜め方向に気体を吐出するものであるのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、搬入口から基板が搬入されている際には、第2の気体吐出手段から当該基板に対して気体が吐出されることとなり、その結果、基板搬送方向における上流側から下流側に向かって基板に沿って流れる気体流が形成される。これによって、第1の気体吐出手段から吐出される気体により搬出中の基板に沿って上流側に流れる気体流が打ち消されることとなり、搬出口側へのミストの拡散が効果的に抑制される。他方、基板の非搬入状態の時には、第2の気体吐出手段から吐出される気体が搬送経路を遮ることで、これがシールドとなって搬入口側へのミストの拡散が防止される。従って、基板の搬入の有無に拘わらず、搬入口側へのミストの拡散を効果的に抑えることができる。
【0013】
この場合、第2の気体吐出手段を、前記搬送経路を挟んだ上下両側の位置にそれぞれ配置した構成によれば、処理室への基板の搬入中には、当該基板の上下両面に沿って上記気体流を形成することができ、また、基板の非搬入時には、上記のようなシールドを搬送経路の上下両側の広範囲に形成することが可能となる。そのため、搬入口側へのミストの拡散をより効果的に防止することが可能となる。
【0014】
また、上記の基板処理装置においては、前記処理室内を排気すると共に、その排気力を変更可能な排気手段を有し、前記制御手段は、さらにこの排気手段を制御し、前記第1の気体吐出手段から気体が吐出されているときの排気力を、前記供給手段から基板に対して処理液が供給されているときの排気力よりも強めるように構成されているのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、処理室内のミストを強制的に排出することができる。特に、第1の気体吐出手段から気体が吐出されているときに処理室内の排気力が強められることで、基板から除去された処理液(ミスト)が効果的に排出される。そのため、搬入口側へのミストの拡散を抑制する上で有効となる。
【0016】
なお、上記シャッタ部材を有する場合、搬入口が閉止された状態でも、第1の気体吐出手段から気体が吐出されて搬入口側へミストが拡散すると、シャッタ部材の隙間等からミストが外部に漏れるこが考えられる。従って、第1の気体吐出手段から気体が吐出されていることを条件に、一律に第2の気体吐出手段から気体を吐出させ、これによって搬入口の開閉状態に拘わらず、搬入口側への処理液(ミスト状の処理液)の拡散を抑制するようにしてもよい。但し、次のような構成によれば、第2の気体吐出手段による気体の吐出動作を合理的に行うことができ、気体の消費量を抑える等のメリットがある。すなわち、前記搬入口が閉じられているときの当該搬入口から処理室外部への処理液の漏れの発生、又は漏れが発生し得る状態に関連付けられた所定の物理量を測定する測定手段をさらに有し、前記制御手段は、前記搬入口が閉じられているときには、前記第1の気体吐出手段から気体が吐出され、かつ前記検出手段により検出される前記物理量が設定値に達していることを条件に前記第2の気体吐出手段から気体を吐出させるように構成される。
【0017】
この構成によれば、現にミストが搬入口から漏れている状態、又は漏れが生じ易い状態のときにだけ第2の気体吐出手段から気体を吐出させることができるため、気体の消費量を抑えてランニングコストを低減させることが可能となる。
【0018】
なお、上記の基板処理装置において、前記処理室は、基板の搬送経路に沿って一列に並ぶ複数の単位処理室と、互いに隣合う単位処理室の間に位置する隔壁とを有し、一端側の単位処理室に前記搬出口が設けられて当該搬出口の近傍位置に前記第1の気体吐出手段が配置される一方、他端側の単位処理室に前記搬入口が設けられて当該搬入口の近傍位置に前記第2の気体吐出手段が配置されているものであってもよい。
【0019】
この構成によれば、処理室が複数の単位処理室を有する場合にも、上記と同様に、搬入口側へのミストの拡散を抑制するという効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る基板処理装置によると、基板に付着した処理液を除去(液切り)するために第1の気体吐出手段から基板に対して気体が吐出されているときに、搬入口側から搬出口側に向かって第2の気体吐出手段から気体を吐出させることで、基板から除去された処理液(ミスト状の処理液)等が搬入口側へ拡散することを阻止することができる。従って、気体を吹き付けて基板の液切りを良好に行う一方で、当該気体の吹き付けに伴い搬入口側に運ばれる処理液等が当該搬入口から外部に漏れるのを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る基板処理装置の一例を示している。この基板処理装置は、基板Sを搬送しながら予め定められた順序で所定の処理を基板Sに施すプロセス処理装置の一部に組込まれたもので、レジスト膜が形成された基板Sに対し剥離処理を施すものである。
【0023】
同図に示すように、この基板処理装置は、基板Sに剥離処理を施すための剥離処理室1(以下、処理室1と略す)を有している。この処理室1は、基板Sの搬入口2aを有する隔壁2と、搬出口3aを有する隔壁3とを隔てて上流側、及び下流側の処理室に連続している。なお、「上流側」「下流側」とは、基板Sの搬送方向に基づくものであり、従って、同装置では図中の左側から右側に向かって基板Sが搬送される。
【0024】
処理室1の内部には、複数の搬送ローラ10が所定間隔で配備されており、搬入口2aを通じて上流側の処理室から搬入されてくる基板Sを、これら搬送ローラ10によって構成される搬送路(搬送経路)に沿って水平姿勢で搬送し、搬出口3aから下流側の処理室に搬出するように構成されている。
【0025】
なお、基板Sの搬入口2a、及び搬出口3aは、幅方向(基板Sの搬送方向と直交する方向;同図では紙面に直交する方向)に細長い長方形の形状であって基板Sを通過させるのに必要かつ十分な大きさとされている。搬入口2a、及び搬出口3aはそれぞれ、シャッタ4,5により開閉可能となっている。これらのシャッタ4,5は、幅方向に細長な平板形状を有すると共に全体が耐薬品性を有する材料から構成されており、モータを駆動源とする図外の駆動機構により駆動されることによって前記隔壁2,3に沿って移動し、前記搬入口2a、及び搬出口3aをそれぞれ開閉するように構成されている。
【0026】
処理室1の内部であってその天井近傍には、基板Sに対して剥離液を供給するための複数の液ノズル12(本発明に係る処理液の供給手段に相当する)が設けられている。各液ノズル12は、剥離液を噴霧する所謂スプレーノズルからなり、前記搬送路の上方位置に所定の配列で配置されている。
【0027】
図示を省略しているが、剥離液の給排系統は、タンクに剥離液を貯溜しつつ所定温度(約40°C〜80°C)に温度調整し、この剥離液をポンプの駆動によりタンクから導出しつつ液供給管を通じて前記液ノズル12に送液することにより基板Sに供給し、使用後の剥離液を処理室1の内底部から抜き出しつつ液回収管を通じて前記タンクに戻すように構成されている。つまり、当実施形態の上記給排系統は、剥離液をタンクと処理室1との間で循環させながら繰り返し使用する構成となっている。
【0028】
処理室1の内部において、搬入口2a、及び搬出口3aの近傍には、それぞれエアナイフが配置されている。具体的には、前記搬出口3aの近傍に、基板Sに付着した剥離液を除去すべく基板Sに気体を吐出する上下一対のエアナイフ13,13(第1エアナイフ13,13という)が配置されている。これら第1エアナイフ13,13は、前記搬送路の幅方向に細長で、かつ長手方向に連続する細長の吐出口をもつ所謂スリットノズルからなり、前記搬送路の上下両側に、それぞれ搬送路側に向かってやや上流側にエアを吐出するように配置されている。また、前記搬入口2aの近傍に、基板Sから除去された剥離液(ミスト化した剥離液等)が搬入口2a側に拡散するのを阻止すべくエアを吐出する上下一対のエアナイフ14,14(第2エアナイフ14,14という)が前記搬送路を挟んで配置されている。これら第2エアナイフ14,14も第1エアナイフ13,13と同様のスリットノズルからなるが、第1エアナイフ13,13とは逆に、それぞれ搬送路側に向かってやや下流側にエアを吐出するように配置されている。
【0029】
第1エアナイフ13,13、及び第2エアナイフ14,14は、それぞれエア供給管16,17を介して図外のエア供給源に接続されており、エア供給管16,17にそれぞれ介設される電磁バルブ16a,17aの操作に応じて、前記エア供給源から所定流量のエア、具体的には清浄度及び温湿度が所定レベルに調整されたCDA(Clean Dry Air)の供給を受けて該エアを吐出するようになっている。なお、当例では、第1エアナイフ13,13等が本発明に係る第1の気体吐出手段に相当し、第2エアナイフ14,14等が本発明に係る第2の気体吐出手段に相当する。
【0030】
さらに、処理室1の内部には、その天井部に排気管20が接続されている。この排気管20は、図外のフィルタ等を介してファン24等の負圧発生源に接続されている。これにより、処理室1の天井面に形成される排気口21を介して処理室1内の雰囲気を排気可能となっている。なお、排気管20内には、その通路開口面積を制御するためのモータ駆動のダンパ22が内蔵されており、このダンパ22の制御により、前記処理室1内の排気力が調整可能となっている。
【0031】
ところで、上記基板処理装置は、CPU等を構成要素とするコントローラ30を有しており、エア供給管16,17の前記電磁バルブ16a,17aや、シャッタ4,5、及びダンパ22の各駆動モータ等は、全てこのコントローラ5に電気的に接続されており、当該コントローラ5によって統括的に制御されるようになっている。特に、装置稼働中は、第1エアナイフ13,13によるエアの吐出状態、及び搬入口2aの開閉状態に応じて第2エアナイフ14,14によるエアの吐出動作、及び処理室1内の排気力が制御されることにより、基板Sから除去された剥離液(ミスト状の剥離液等)が搬入口2aから隣接する処理室へ侵入する(漏れる)ことが防止される。以下、この点について説明する。
【0032】
この装置では、基板Sの処理中は、図1の実線に示すように各シャッタ4,5により搬入口2a、及び搬出口3aが閉止され、停止状態又は微速搬送状態の基板Sに対して液ノズル12から剥離液が供給される。これにより基板Sに剥離処理が施される。この際、処理室1内は、排気口21を通じて排気されており、このように搬入口2a、及び搬出口3aが閉止され、かつ処理室1内が排気されることにより、処理室1内で発生したミスト状の剥離液の隣接処理室への侵入が防止される。
【0033】
基板Sの処理が終了すると、第1エアナイフ13,13からエアの吐出が開始されると共に、基板Sが搬出口3a側へ搬送され、この搬送に伴い基板Sの上下両面に前記エアが吹き付けられることにより基板Sに付着した剥離液等が除去(液切り)される。
【0034】
こうして液切りが行われながら基板Sが搬送され、図外のセンサにより基板先端が検出されると、前記シャッタ5が作動して搬出口3aが開放され、当該搬出口3aを通じて基板Sが下流側の処理室へと搬出される。
【0035】
なお、上記のように第1エアナイフ13,13からエアの吐出が開始されると、これと同時に搬入口2a近傍の第2エアナイフ14,14からのエアの吐出が開始されると共に、処理室1内の排気力が強められ、これによって搬入口2aから隣接する処理室への剥離液(ミスト状の剥離液等)の侵入が防止される。詳しくは、上記のように第1エアナイフ13,13からエアが吐出されると、図2に示すように、搬出途中の基板Sに沿って下流側から上流側に向かうエア流F1が形成され、基板Sから除去された剥離液(ミスト化した剥離液等;以下ミストという)がこのエア流F1によって搬入口2a側に運ばれるが、第2エアナイフ14,14からエアが吐出さることにより、同図に示すように、上側のエアナイフ14から吐出されたエアが搬送経路を遮って下方に向かう一方、下側のエアナイフ14から吐出されたエアが搬送路を遮って上方に向い、これらのエア流F2によって同図中に示すようなシールドが搬入口2aの下流側に形成される。そのため、搬入口2a側へのミストの拡散が有効に防止される。また、処理室1内の排気力が強められることによりミストが効果的に排出され、これにより搬入口2a側へのミストの拡散が防止される。従って、シャッタ4の隙間等からの隣接処理室へのミストの侵入が有効に防止されることとなる。
【0036】
また、この装置では、スループットを高めるために、処理室1から基板Sを搬出する一方で、これと同時に次の基板Sを処理室1へ搬入する場合があるが、この場合も、隣接処理室へのミストの拡散が有効に防止される。すなわち、第2エアナイフ14,14からエアが吐出されている状態で、搬入口2aから基板Sが搬入されて来ると、図3に示すように、基板Sに沿って上流側から下流側に向かうエア流F2が形成され、このエア流F2によって、搬送中の基板Sに沿って形成される上記エア流F1の流れが打ち消される。従って、処理室1に対する基板Sの搬入、及び搬出が同時進行している場合も、搬入口2a側へのミストの拡散が抑制され、その結果、搬入口2aから隣接処理室へのミストの侵入が有効に防止されることとなる。
【0037】
以上説明したように、この基板処理装置は、搬出口3aの近傍に配置した第1エアナイフ13,13から基板Sにエアを吐出することにより基板Sに付着した剥離液を除去するが、上記の通り、搬入口2a近傍に第2エアナイフ14,14が設けられ、第1エアナイフ13,13aによるエアの吐出中は、これら第2エアナイフ14,14からエアを吐出させることにより基板Sから除去された剥離液のミストが搬入口2a側に拡散するのを防止する構成となっている。そのため、エアを吹き付けて基板Sに付着した剥離液等を良好に除去する一方で、基板Sから除去された剥離液のミストが搬入口2aから隣接処理室へ侵入することを有効に防止することができる。
【0038】
特に、この装置では、搬送路側に向かってやや下流側にエアを吐出する(すなわち、搬送経路に対して直交する成分を含む斜め方向に気体を吐出する)ように第2エアナイフ14,14を設けると共に、第1エアナイフ13,13によるエアの吐出動作に同期して第2エアナイフ14,14からエアを吐出させることで、基板Sの搬入中には、当該基板Sに沿ったエア流F2を形成し、これによって搬出中の基板に沿って形成される上記エア流F1を打ち消して搬入口2a側へのミストの拡散を抑制する一方で、基板Sの非搬入時には、上記エア流F2によるシールドを形成して搬入口2a側へのミストの拡散を阻止し得るようになっている。従って、簡単な構成、及び制御でもって搬入口2aから隣接処理室へのミストの拡散を有効に防止することができるという利点がある。
【0039】
また、この装置では、第1エアナイフ13,13からのエアの吐出中、第2エアナイフ14,14からエアを吐出させることに加え、処理室1内の排気力を強めてミスト自体を排出することにより搬入口2a側へのミストの拡散を抑制するようにしている。従って、この点でも、搬入口2aから隣接処理室へのミストの侵入を有効に防止できるという利点がある。
【0040】
なお、図1の基板処理装置は、処理室1が一室から構成される場合の例であり、処理室1内が隔壁により仕切られた複数の単位処理室から構成され、各単位処理室においてそれぞれ基板Sに剥離処理を施すような場合には、例えば図4に示すような構成とすればよい。
【0041】
すなわち、この図に示す剥離処理室1は、隔壁7に仕切られる上流側の第1単位処理室1Aと下流側の第2単位処理室1Bとを有している。各単位処理室1A,1Bには、それぞれ搬送ローラ10、液ノズル12及び排気口21等が設けられており、基板Sは、搬入口2aから処理室1に搬入され、まず、第1単位処理室1Aで前半の剥離処理が施された後、隔壁7に形成される開口部7aを通じて第2単位処理室1Bに搬送され、ここで後半の剥離処理が施された後、搬出口3aから搬出されるようになっている。
【0042】
そして、第2単位処理室1Bの下流端に位置する搬出口3aの近傍に前記第1エアナイフ13,13が配置される一方、第1単位処理室1Aの上流端に位置する搬入口2aの近傍に前記第2エアナイフ14,14が配置されており、図1の例と同様に、第1エアナイフ13,13からエアが吐出されている際に、第2エアナイフ14,14からエアが吐出されることにより、処理室1から上流側の隣接処理室へのミストの侵入が防止されるようになっている。すなわち、このように複数の各単位処理室1A,1Bから処理室1が構成される場合にも、第2単位処理室1Bで基板Sから除去された剥離液(ミスト状の剥離液)が、第1エアナイフ13,13から吐出されたエアの流れによって開口部7aを通じて第2単位処理室1Bから第1単位処理室1Aに拡散することが考えられる。この場合、各単位処理室1A,1Bでは同種の剥離液を使用しているため単位処理室間でのミストの侵入は問題とならないため、上記のように第1単位処理室1Aにだけ第2エアナイフ14,14を配置し、これにより処理室1から上流側隣接室へのミストの侵入(漏れ)を防止る構成となっている。
【0043】
ところで、以上説明した基板処理装置は、本発明に係る基板処理装置の好ましい実施の形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することもできる。
【0044】
例えば、実施形態では、搬入口2aが閉止されている状態でも、第1エアナイフ13,13によるエアの吐出中は、常に第2エアナイフ14,14からエアを吐出させるが(図2参照)、シャッタ4のシール性能が高く、かつ第1エアナイフ13,13から吐出されるエアの圧力が比較的低い場合等、ミストが外部に漏れ難いような場合には、搬入口2aが閉止されている状態では、第2エアナイフ14,14からのエアの吐出を行わないようにしてもよい。
【0045】
また、搬入口2aが閉止されている状態で第2エアナイフ14,14からエアを吐出させる場合には、第1エアナイフ13,13からエアが吐出されていることに加え、他の条件が充足された場合にのみ第2エアナイフ14,14からエアを吐出させるようにしてもよい。例えば、図5に示すように、搬入口2aの近傍であって処理室1の外側に温度計25(本発明に係る測定手段に相当する)を設置して搬入口2aの周辺温度を検出し、搬入口2aの閉止中は、第1エアナイフ13,13によりエアが吐出され、かつ温度計25による検出温度が所定温度に達したときにのみ第2エアナイフ14,14からエアを吐出させるようにしてもよい。すなわち、剥離液の温度は上記の通り約40°C〜80°Cと比較的高く、隣接処理室にミストが侵入(漏れ)している場合には、搬入口2a(隣接処理室では搬出口)の周辺温度が上昇する。従って、搬入口2aの周辺温度の検出に基づいて、現に隣接処理室内にミストが侵入していることが検知された場合にのみ、第2エアナイフ14,14からエアを吐出させるようにしてもよい。また、その他の例として、図示を省略するが、処理室1、及び隣接処理室に圧力計(本発明に係る測定手段に相当する)を設置してその内圧を検出するようにし、上記他の条件として、処理室1内の圧力が隣接処理室内の圧力よりも高いときに第2エアナイフ14,14からエアを吐出させるようにしてもよい。すなわち、処理室1内の圧力が高くなると、その分、その圧力差によって隣接処理室側へミストが侵入し易くなるため、このようにミストが隣接処理室側へ侵入し易くなる状態を検知して第2エアナイフ14,14からエアを吐出させるようにしてもよい。
【0046】
また、処理室1の上流側の隔壁2に、基板Sの通過を許容しつつ搬入口2aの周囲を覆う予備室を一体に形成すると共に、この予備室内をさらに排気する排気手段を設け、搬入口2a周辺のミストを強制的に排出することによって、隣接する処理室へのミストの侵入を防止するように構成してもよい。
【0047】
また、実施形態では、基板Sの搬送路を挟んで上下両側に第1エアナイフ13,13が配置されているため、これに対応して搬送路の上下両側に第2エアナイフ14,14を設けているが、第2エアナイフ14は、搬送路を挟んだ上下両側の位置のうち少なくとも第1エアナイフ13が配置される側と同じ側に配置されていればよい。例えば搬送路の上側にだけ第1エアナイフ13が設けられる場合には、少なくとも搬送路の上側に第2エアナイフ14が設けられていればよい。要するに、第2エアナイフ14は、基板搬入中に、上記エア流F1を打ち消し得るようなエア流F2が基板Sに沿って形成され得るように設けられていればよい。但し、実施形態のように、搬送路の上下両側に第2エアナイフ14,14に設ける場合には、基板の非搬入時に、搬送路上下両側の広範囲にエア流F2による上記シールドを形成することができるため(図2参照)、搬入口2a側へのミストの拡散を防止する上では有効となる。
【0048】
また、実施形態では、エアナイフ13,14から吐出させる気体としてエア(CDA)を適用しているが不活性ガス等を適用するようにしてもよい。
【0049】
また、実施形態では、本発明の適用として基板Sに剥離処理を施す装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、基板にエッチング液を供給してエッチング処理を施す装置等についても、勿論、適用可能である。
【0050】
また、実施形態では、基板Sを水平姿勢で搬送しながら当該基板Sに処理を施す場合について説明した、勿論、傾斜姿勢で基板Sを搬送しながら当該基板Sに処理液を供給して所定の処理を施す装置についても、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る基板処理装置を示す概略断面図である。
【図2】第2エアナイフからエアが吐出されている状況(搬入口が閉止されている状態)を説明する基板処理装置の概略断面図である。
【図3】第2エアナイフからエアが吐出されている状況(搬入口が開放されている状態)を説明する基板処理装置の概略断面図である。
【図4】本発明に係る基板処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係る基板処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 剥離処理室
2,3 隔壁
2a 搬入口
3a 搬出口
4,5 シャッタ
10 搬送ローラ
12 液ノズル
13 第1エアナイフ
14 第2エアナイフ
21 排気口
22 ダンパ
30 コントローラ
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の搬送経路上に互いに対向して並ぶ搬入口と搬出口とを備え、かつこれら搬入口と搬出口との間に処理液の供給手段を有する処理室を有し、前記搬入口から処理室に搬入される基板に対して前記処理液を供給した後、当該基板を前記搬出口から搬出する基板処理装置において、
前記処理室内における前記搬出口の近傍位置であって基板の搬送経路を挟んだ上下両側の位置のうち少なくとも一方側に配置され、前記供給手段による処理液供給後に、搬出口に向けて搬送される基板に対して基板搬送方向における下流側から上流側に向かって気体を吐出することにより基板に付着した処理液を除去する第1の気体吐出手段と、
前記処理室内における前記搬入口の近傍位置であって前記搬送経路を挟んだ上下両側の位置のうち少なくとも前記第1の気体吐出手段が配置される側と同じ側に配置され、基板搬送方向における上流側から下流側に向かって気体を吐出可能な第2の気体吐出手段と、を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記第1の気体吐出手段による気体の吐出動作中に、前記第2の気体吐出手段から気体が吐出されるように第2の気体吐出手段による気体の吐出制御を行う制御手段を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記搬入口を開閉可能に設けられ、前記処理室への基板の搬入時に前記搬入口を開くシャッタ部材を有し、前記制御手段は、前記第1の気体吐出手段から気体が吐出され、かつ少なくとも前記搬入口が開いているときに前記第2の気体吐出手段から気体を吐出させる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記第2の気体吐出手段は、前記搬送経路に対して直交する成分を含む斜め方向に気体を吐出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記第2の気体吐出手段は、前記搬送経路を挟んだ上下両側の位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記処理室内を排気すると共に、その排気力を変更可能な排気手段を有し、前記制御手段は、さらにこの排気手段を制御し、前記第1の気体吐出手段から気体が吐出されているときの排気力を、前記供給手段から基板に対して処理液が供給されているときの排気力よりも強めることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の基板処理装置において、
前記搬入口が閉じられているときの当該搬入口から処理室外部への処理液の漏れの発生、又は漏れが発生し得る状態に関連付けられた所定の物理量を測定する測定手段を有し、
前記制御手段は、さらに前記搬入口が閉じられているときには、前記第1の気体吐出手段から気体が吐出され、かつ前記検出手段により検出される前記物理量が設定値に達していることを条件に前記第2の気体吐出手段から気体を吐出させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記処理室は、基板の搬送経路に沿って一列に並ぶ複数の単位処理室と、互いに隣合う単位処理室の間に位置する隔壁とを有し、一端側の単位処理室に前記搬出口が設けられて当該搬出口の近傍位置に前記第1の気体吐出手段が配置される一方、他端側の単位処理室に前記搬入口が設けられて当該搬入口の近傍位置に前記第2の気体吐出手段が配置されていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−213958(P2009−213958A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57755(P2008−57755)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】