説明

基板処理装置

【課題】隣接する処理室への処理液(ミスト)の侵入をより確実に防止する。
【解決手段】基板処理装置は、基板Sに薬液処理を施すウエット処理部2と、その前処理としてドライ洗浄等の処理を基板Sに施す前処理部1とを有する。各処理部1,2のチャンバ10,20は開口部11aを介して連通しており、この開口部11aは、前処理部1側に設けられるシャッタ装置14と、ウエット処理部2側に設けられるシャッタ本体25とにより開閉可能に設けられている。また、前処理部1のチャンバ10内には、開口部11aの開放中、ウエット処理部2側に向かって開口部11aにエアを吐出するエアノズル19a,19bが配備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD、PDP用ガラス基板および半導体基板等の基板に処理液を供給する等して当該基板に各種処理を施す基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のチャンバ(処理室)を有し、LCD、PDP用ガラス基板等の基板を搬送しながら、各チャンバ内で基板に処理液を供給することによりエッチングや洗浄等、予め定められた処理を順次基板に施す装置が知られている。この種の装置では、処理に伴いチャンバ内に充満したミスト状の処理液が、基板搬送用の開口部を通じて隣接するチャンバ(隣接チャンバという)に侵入し、当該チャンバでの基板の処理に悪影響を与えることが考えられる。そこで、例えば特許文献1に記載されるように、隣接チャンバ内にシャッタを設け、基板の搬送時にだけ開口部を開くことにより隣接するチャンバへのミストの侵入を防止することが行われている。
【特許文献1】特開2000−58501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1の装置では、開口部の閉止時にシャッタに付着したミストがシャッタ作動時に隣接チャンバ内に飛散することが考えられる。特に、特許文献1のシャッタは、水平軸周りに回動してチャンバ内側に倒れ込む可倒式の構造であるため、付着したミスト等がシャッタ作動時(特に開放時)に飛散し易い。
【0004】
また、特許文献1の装置でも、基板の搬送中は、開口部が開き放しになるため、依然として開口部を通じて隣接チャンバにミストが侵入し易く、従って、隣接チャンバ内へのミストの侵入を防止する上で未だ改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、隣接するチャンバ(処理室)内にミスト状の処理液が侵入するのをより効果的に防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の基板処理装置は、基板に処理液を供給して所定のウエット処理を基板に施すウエット処理室を有し、基板が搬送されつつ前記ウエット処理室の隔壁に形成される基板搬送用の開口部を介して当該ウエット処理室に対して基板の出し入れが行われる基板処理装置において、前記開口部を前記ウエット処理室の室内側から開閉するシャッタ本体を備える第1シャッタ手段と、前記開口部を前記ウエット処理室の室外側から開閉するシャッタ本体を備える第2シャッタ手段と、前記ウエット処理室の室外側に配備されて、前記開口部を通過する基板に対して気体を供給することにより、当該基板表面にウエット処理室の室内側に向って流動する気体流を形成する気体流形成手段と、を備えるものである(請求項1)。
【0007】
この構成によると、ウエット処理室内にもシャッタ手段(第1シャッタ手段)が配備されているため、ウエット処理室外のシャッタ手段(第2シャッタ手段)のシャッタ本体に処理液(ミスト)が付着し難くなる。従って、第2シャッタ手段に付着したミストやその乾燥物がシャッタ作動時にウエット処理室の室外側に飛散するのを有効に防止することができる。しかも、開口部の開放中、つまり基板が開口部を通過する際には、気体流形成手段により基板表面にウエット処理室の室内側に向って流動する気体流が形成されるため、
開口部を通じてウエット処理室内からミストが流出することも有効に防止される。
【0008】
この場合、前記開口部を介して前記ウエット処理室に連通し、かつ前記ウエット処理の前処理、又は後処理を基板に施す隣接処理室を有するものでは、この隣接処理室に前記第2シャッタ手段および気体流形成手段が配備される(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、シャッタ作動時に隣接処理室内にミストが飛散したり、基板搬送中に前記開口部を通じてミストが隣接処理室内に侵入するのを有効に防止することができる。
【0010】
上記のような装置においては、前記シャッタ本体により前記開口部を閉止する閉止状態と、所定の退避位置に前記シャッタ本体を退避させることにより前記開口部を開放する開放状態とに前記各シャッタ手段の駆動状態を切り替え制御するシャッタ制御手段をさらに有し、このシャッタ制御手段は、基板が前記開口部を通過する際には、前記第1シャッタ手段を閉止状態から開放状態に切り替える直前に、前記第2シャッタ手段を閉止状態から開放状態に切り替えるものであるのが好適である(請求項3)。
【0011】
このような装置によれば、基板搬送時には、ウエット処理室の室内側の第1シャッタ手段よりも常に室外側の第2シャッタ手段が先に開放状態に切り替えられるため、第2シャッタ手段のシャッタ本体への処理液(ミスト)の付着が有効に防止される。
【0012】
この場合、前記気体流形成手段を制御する気体流形成制御手段をさらに有し、この気体流形成制御手段は、第1シャッタ手段の閉止状態から開放状態への切り替え動作に同期して気体の供給を開始するものであるのが好適である(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、開口部が開放されるのと同時に気体の供給が開始されるため、ウエット処理室内からの処理液(ミスト)の流出がより効果的に防止される。
【0014】
なお、上記のような装置において、前記各シャッタ手段のうち少なくとも第2シャッタ手段は、前記シャッタ本体を前記隔壁の壁面に沿ってスライドさせることにより前記開口部を開閉するように構成されているのが好適である(請求項5)。
【0015】
このように隔壁の壁面に沿ってシャッタ本体をスライドさせる構成によれば、所謂可倒式の開閉構造のようにシャッタ本体が大きく揺動することがなく、そのため、仮にシャッタ本体に処理液(ミスト)が付着した場合でもミスト等の飛散が起きに難くなる。
【0016】
また、ウエット処理室に隣接する隣接処理室を有する装置において、前記隣接処理室は、当該処理室内において前記開口部の近傍を包囲するように形成される予備室と、この予備室内の雰囲気を排気する排気手段とをさらに備えているのが好適である(請求項6)。
【0017】
この構成によると、第2シャッタ手段による開口部の開放動作に伴いシャッタ本体に付着した処理液(ミスト)が飛散し、あるいは開口部を通じてミストがウエット処理室側から隣接処理室側に侵入した場合でも、速やかに予備室から当該ミストが外部排出されることとなる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜6に係る基板処理装置によると、ウエット処理室外への処理液(ミスト)の飛散、流出をより効果的に防止することができる。特に、請求項3や請求項5に係る装置によれば、第2シャッタ手段のシャッタ本体に付着したミストが当該シャッタ本体の作動に伴いウエット処理室外において飛散するという不都合を効果的に防止することができ、
また、請求項4に係る装置によれば、基板搬送中に開口部を通じてミストがウエット処理室外に流出するのを効果的に防止することができる。さらに、請求項6に係る装置によれば、仮に開口部を通じてミストが隣接処理室に侵入等した場合でも、当該ミストは直ちに予備室から外部に排気されるので、隣接処理室への実質的なミストの侵入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る基板処理装置の一例を示している。この図に示す基板処理装置は、基板Sを搬送しながら予め定められた順序で所定の処理を基板Sに施すプロセス処理装置であり、同図はその一部分を概略的に示している。
【0021】
この図に示すように、基板処理装置は、薬液(処理液)を基板Sに供給して所定の薬液処理を施すウエット処理部2と、その前処理としてドライ洗浄等の処理を基板Sに施す前処理部1とを備えている。各処理部1,2は、それぞれ箱形の密閉されたチャンバ10,20(処理室)を有している。これらのチャンバ10,20は、隔壁11を共有して隣接されると共に、当該隔壁11に形成される基板搬送用の開口部11aを通じて互いに連通している。開口部11aは、幅方向(基板Sの搬送方向と直交する方向;同図では紙面に直交する方向)に細長い長方形の形状であって基板Sを通過させるのに必要かつ十分な大きさに形成されている。なお、以下の説明において「上流側」「下流側」というときには基板Sの搬送方向に基づくものとする。
【0022】
各チャンバ10,20の内部には、複数の搬送ローラ5が所定間隔で配備されており、基板Sがこれら搬送ローラ5の駆動により水平姿勢で搬送されるように構成されている。なお、基板Sは、傾斜姿勢(例えば搬送方向と直交する方向においてその一方側から他方側に傾斜する姿勢)で搬送されるものであってもよい。
【0023】
前処理部1のチャンバ10(本発明に係る隣接処理室に相当する)の内部には、同図に示すように、開口部11aを包囲する予備室12が区画形成されている。これによりチャンバ10内において開口部11aを含む一部の空間がそれ以外の空間から隔離されている。
【0024】
予備室12のうち前記隔壁11に対向する壁面には、基板Sの通過口12aが形成されており、この通過口12aを通じて基板Sが予備室12を通過する構成となっている。また、この予備室12には、その天井部分に排気通路12bが連通接続されている。この排気通路12bは、チャンバ10の外部に導出されるとともに負圧ポンプ13等に接続されており、これによって予備室12内の雰囲気が常に排気されるように構成されている。なお、この実施形態では、この排気通路12b及び負圧ポンプ13等が本発明の排気手段に相当する。
【0025】
予備室12内には、前記開口部11aを開閉するシャッタ装置14(本発明の第2シャッタ手段に相当する)が配備されている。
【0026】
このシャッタ装置14は、開口部11aを前処理部1側から開閉するためのシャッタ本体15と、このシャッタ本体15を駆動する駆動機構とから構成されている。
【0027】
シャッタ本体15は、幅方向に細長な平板形状を有し、全体が耐薬品性を有する材料から構成されている。駆動機構は、このシャッタ本体15を隔壁11の壁面に沿って上下動させるように構成されている。具体的には、図2に示すように、隔壁11に沿ってシャッタ本体15を案内するガイド16と、このガイド16に設けられるラック16a,16bと、これらラック16a,16bに各々噛合するピニオン17a,17bを具備する駆動軸17と、この駆動軸17を駆動するモータ18等を有し、前記駆動軸17の正逆回転駆動に応じて、シャッタ本体15を、前記開口部11aを閉止する位置(図1の実線で示す位置)と、開口部11aよりも下方に退避して当該開口部11aを開放する位置(図1の二点鎖線で示す位置)とに移動させるように構成されている。なお、以下の説明では、シャッタ本体15により開口部11aが閉止されている状態をシャッタ装置14の「閉止状態」と、シャッタ本体15が開口部11aの下方に退避して当該開口部11aが開放されている状態をシャッタ装置14の「開放状態」と称する。
【0028】
チャンバ10内には、さらに、予備室12の直ぐ上流側の位置に上下一対のエアノズル19a,19bが配備されている。これらエアノズル19a,19bは、幅方向に連続的に、又は断続的に延びるスリット状の開口を有する、所謂スリットノズルからなり、搬送中の基板Sの上下各面に対してそれぞれ上流側から下流側に向かって(つまり、ウエット処理部2側に向かって)斜め方向に帯状のエアを吐出し得るように構成されている。
【0029】
これらエアノズル19a,19bは、電磁バルブ等を有するエア供給管19を介して図外のエア供給源に接続されており、前記電磁バルブ等の制御に応じて各エアノズル19a,19bからのエアの吐出と停止の切換え、およびエア吐出量の調整が行われるように構成されている。
【0030】
一方、ウエット処理部2のチャンバ20(本発明に係るウエット処理室に相当する)内部には、基板Sに対して薬液を供給するための複数の液ノズル22が配備されている。これらの液ノズル22は、薬液を噴霧する、所謂スプレーノズルからなり、搬送ローラ5の上部に所定の配列で配置されている。これら液ノズル22は、電磁バルブ等を有する薬液供給管23を介して図外のエア供給源に接続されており、前記電磁バルブ等の制御に応じて各液ノズル22からの薬液の噴霧と停止の切換え、および薬液吐出量の調整が行われるように構成されている。
【0031】
また、チャンバ20内には、前記シャッタ装置14とは別に、ウエット処理部2側から前記開口部11aを開閉するためのシャッタ装置24(本発明の第1シャッタ手段に相当する)が配備されている。
【0032】
このシャッタ装置24は、前処理部1のシャッタ装置14と共通の構成を有している。すなわち、開口部11aを開閉するためのシャッタ本体25と、このシャッタ本体25を駆動する駆動機構とから構成されており、シャッタ本体25により開口部11aを塞ぐ「閉止状態」と、シャッタ本体15を開口部11aの下方に退避させて当該開口部11aを開放する「開放状態」とに切り替え可能に構成されている(図1中に実線および二点鎖線で示す状態)。
【0033】
なお、上記基板処理装置は、CPU等を構成要素とするコントローラ6(図2参照)を有しており、排気通路12b、各供給管19,23等に設けられる各電磁バルブや、シャッタ装置14,24のモータ18等は、全てこのコントローラ6に接続されることにより当該コントローラ6によって統括的に制御されるようになっている。特に、前処理部1からウエット処理部2への基板Sの搬送時には、コントローラ6の制御により、シャッタ装置14,24による開口部11aの開閉等の動作が図3に示す順序に従って行われることにより、ウエット処理部2から前処理部1へのミスト状の薬液の侵入が防止されるようになっている。以下、この点について説明する。なお、この実施形態では、このコントローラ6が、本発明に係るシャッタ制御手段および気体流形成制御手段に相当する。
【0034】
この装置では、基板Sの処理中は、図1の実線に示すように各処理部1のシャッタ装置14,24が閉止状態に駆動制御される。これにより各チャンバ10,20が非連通状態となり、基板Sの処理中にウエット処理部2側で発生したミスト状の薬液(以下、単にミストという)が前処理部1側へ侵入することが防止される。
【0035】
各処理部1,2において基板Sの処理が終了すると、ウエット処理部2の基板Sが次工程に搬出されると共に、前処理部1の基板Sがウエット処理部2に搬送される。
【0036】
この際、前処理部1からウエット処理部2への基板Sの搬送に際しては、図3に示す順序に従って開口部11aの開閉等の動作が行われる。
【0037】
まず、連続搬送されてくる基板Sが、エアノズル19a,19bよりも上流側の所定位置に到達したことが図外のセンサにより検出されると、前処理部1のシャッタ装置14が開放状態に切り替えられる。そして、当該シャッタ装置14が完全な開放状態となると、ウエット処理部2のシャッタ装置24が開放状態に切り替えられると共に、エアノズル19a,19bからのエアの吐出が開始される。
【0038】
これによって基板Sが予備室12を通過しつつ開口部11aを通じて前処理部1(チャンバ10)からウエット処理部2(チャンバ20)に搬入される。
【0039】
なお、このように開口部11aが開放されると、ウエット処理部2側から開口部11aを介して前処理部1側にミストが侵入する場合があるが、上記のように予備室12内の雰囲気が吸引排気されている結果、当該ミストは排気通路12bを通じて導出されることとなる。また、基板Sが予備室12を通過している最中は、エアノズル19a,19bから吐出されるエアにより、基板Sの上下両面に沿って上流側から下流側に向かうエア流が形成されることとなり、その結果、開口部11aを通じたチャンバ10内へのミストの侵入や、通過口12aを通じた上流側へのミストの流動が防止される。従って、ミストが予備室12から上流側に侵入することがなく、これによって前処理部1内への実質的なミストの侵入が防止されることとなる。
【0040】
基板Sの搬送が進み、基板Sがウエット処理部2の処理室20内に完全に搬入されると、上記と逆の順序で開口部11aが閉止される。すなわち、ウエット処理部2のシャッタ装置24が閉止状態に切り替えられると共に、これと同時にエアノズル19a,19bからのエアの吐出が停止され、その後、前処理部1のシャッタ装置14が閉止状態に切り替えられる。これによって以降、各処理部1,2において基板Sの処理がそれぞれ開始されることとなる。
【0041】
以上のような基板処理装置によると、前処理部1のチャンバ10内のみならず、ウエット処理部2内にもシャッタ装置24が設けられて、シャッタ本体25により開口部11aが開閉されるように構成されているので、前処理部1側のシャッタ本体15へのミストの付着が効果的に防止される。つまり、開口部11aの閉止中にミストが前処理部1側のシャッタ本体15に付着することが有効に防止される。
【0042】
しかも、この装置では、図3に示すように、開口部11aを開放する際には、まず前処理部1側のシャッタ装置14が開放状態に切り替えられた後に、ウエット処理部2側のシャッタ装置24が開放状態に切り替えられ、他方、開口部11aを閉止する際には、まずウエット処理部2側のシャッタ装置24が閉止状態に切り替えた後に、前処理部1側のシャッタ装置14が閉止状態に切り替えられるので、前処理部1側のシャッタ本体15が単独で開口部11aを塞いでいる状態がない。そのため、前処理部1側のシャッタ本体15へのミストの付着が効果的に防止される。
【0043】
その上、各シャッタ装置14,24は、上記の通り、シャッタ本体15,25を隔壁11に沿って上下にスライドさせることにより開口部11aを開閉する構成であるため、可倒式のシャッタ装置のようにシャッタ本体が大きく揺動することがなく、そのため、シャッタ本体15,25にミストが付着した場合でも開閉動作に伴うミストの飛散が起き難い。
【0044】
従って、開口部11aを開放する際にシャッタ本体15に付着したミストが前処理部1のチャンバ10内に飛散するとう事態が軽減され、その結果、ウエット処理部2から前処理部1へのミストの侵入が効果的に防止されることとなる。
【0045】
加えて、この基板処理装置では、前処理部1のチャンバ10内部に、開口部11aを包囲するように予備室12が区画形成されており、この予備室12の雰囲気が吸引排気されるように構成されると共に、この予備室12の直ぐ上流側にエアノズル19a,19bが配備され、開口部11aの開放中は、エアノズル19a,19bから吐出されるエアにより、基板Sの上下両面に沿ってエア流が形成される構成となっている。そのため、開口部11aを通じたチャンバ10内へのミストの侵入(流出)や、通過口12aを通じた上流側へのミストの流出が防止され、また、開口部11aを通じて予備室12内にミストが侵入した場合でも、当該ミストは速やかに外部に排出される。従って、ウエット処理部2から前処理部1への実質的なミストの侵入が有効に防止されることとなる。
【0046】
ところで、上述した基板処理装置は、本発明に係る基板処理装置の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
例えば、上記の実施形態では、ウエット処理部2から前処理部1へのミストの侵入を防止するために本発明を適用した例について説明したが、本発明は、ウエット処理部2とその後処理部との関係においても適用可能である。例えば図4はその一例を示している。この装置では、ウエット処理部2のチャンバ20と後処理部3のチャンバ30との隔壁11′(境界壁)に基板搬送用の開口部11a′が形成されており、この開口部11a′を通じてウエット処理部2側から後処理部3側へ基板Sが搬送されるように構成されている。同図に示すように、ウエット処理部2のチャンバ20内にはシャッタ装置24′(本発明に係る第1シャッタ手段に相当する)が、後処理部3のチャンバ30内にはシャッタ装置14′(本発明に係る第2シャッタ手段に相当する)がそれぞれ配備されている。これらシャッタ装置14′,24′の構成は、上記実施形態のシャッタ装置14,24と同一である。また、後処理部3のチャンバ30内には、開口部11a′を包囲するように予備室12′が設けられ、この予備室12′内が排気通路12b′を通じて吸引排気されるように構成されている。また、予備室12′(通過口12a′)の直ぐ下流側にはエアノズル19a′,19b′が配備されており、基板Sの搬送中は、これらエアノズル19a′,19b′から吐出されるエアにより基板Sの上下各面に沿ってウエット処理部2側に向かって流動するエア流が形成されるようになっている。なお、シャッタ装置14′,24′等の駆動制御は、図3において、前処理部1のシャッタ装置14の動作を後処理部3のシャッタ装置14′の動作に置き換えた順序で行われる。
【0048】
このような図4に示す基板処理装置の構成によれば、ウエット処理部2側から後処理部3側へのミストの侵入を有効に防止することができ、上述した実施形態と同様の作用効果を享受することができる。
【0049】
また、上記実施形態のシャッタ装置14,24では、ラックとピニオンによる駆動機構を適用してシャッタ本体15,25を隔壁11に沿ってスライドさせるように構成されて
いるが、シャッタ本体15,25の駆動機構は、これ以外のものであってもよい。例えば、シャッタ本体15,25に上下方向に延びるねじ軸を螺合挿入し、このねじ軸の回転に伴いシャッタ本体15,25を上下方向に移動させる構成を作用してもよい。
【0050】
また、シャッタ装置14,24は、上記実施形態のようにシャッタ本体15,25が隔壁11に沿ってスライドするものに限らず、例えば図5(a)に示すようなものであってもよい。同図に示すシャッタ装置14(24)は、開口部11aと略同等の大きさの開口15a(25a)を一部に備えたシャッタ本体15(25)を有している。このシャッタ本体15は、平行リンク32,32を介してそれぞれ隔壁11に固定されたブラケット31に支持されている。平行リンク32,32のうち一方側には駆動用リンク34が一体に固定されており、このリンク34の先端にエアシリンダ36のロッド36aが連結されている。そして、エアシリンダ36のロッド突出駆動状態では、同図に示すように、開口部11aと開口15aとが上下にずれた状態でシャッタ本体15が隔壁11に密接し、これにより開口部11aがシャッタ本体15によって閉止される一方、エアシリンダ36のロッド引き込み駆動状態では、図5(b)に示すように、シャッタ本体15が隔壁11から離間する方向に平行移動し、これにより開口部11aを開放するように構成されている。そして、このように開口部11aが開放された状態では、シャッタ本体15の開口15aと前記開口部11aとが基板搬送方向に並び、これにより開口15aを通じて基板Sの搬送が可能となるように構成されている。このようなシャッタ装置14,24の構成によれば、シャッタ本体15,25の姿勢を保った状態で開口部11aの開閉を行うので、上記実施形態のシャッタ装置14等と同様に作動中にミストの飛散が起きに難く、従って、当該飛散に伴う前処理部1内へのミストの侵入を有効に防止することができる。
【0051】
なお、本発明は、シャッタ装置14,24の具体的な構成として、従来のような可倒式のものを排除するものではないが、可倒式のシャッタ構造は、シャッタ本体をスライド、あるいは平行移動させる構造に比べてミストが飛散し易く、従って、シャッタ作動時のミストの飛散を防止する上では、上記実施形態等のようにシャッタ本体15,25をスライド、あるいは平行移動させる構成を採用するのが望ましい。
【0052】
また、上記実施形態や図4の例では、前処理部1や後処理部3に予備室12,12′を設けているが、これは開口部11a,11a′から侵入したミストを速やかに外部排出するための工夫であり、例えばウエット処理部2内で発生するミストの量が少なく、前処理部1や後処理部3内へのミストの侵入が比較的起き難い場合には、予備室12,12′および排気通路12b等の構成を省略し、エアノズル19a,19b,19a′,19b′を開口部11a、11a′の直ぐ近傍に配置するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態や図4では、ウエット処理部2に前処理部1や後処理部3が隣接された基板処理装置に本発明を適用した例について説明したが、本発明は、前処理部1や後処理部3が隣接されていない装置についても適用可能である。すなわち、ウエット処理部の上流側および下流側に搬送ローラだけが設けられ、基板Sを搬送しつつウエット処理部において処理を行い、その前後では基板Sを搬送するだけの構成とされた基板処理装置や、ウエット処理部の隔壁に基板搬入搬出兼用の単一の開口部が設けられ、搬送ローラの駆動により基板Sを搬送しつつ前記開口部からウエット処理部内に基板Sを搬入して所定の処理を行った後、搬送ローラを反転駆動して前記開口部から基板Sを搬出するように構成された基板処理装置についても本発明は適用可能である。また、ウエット処理部に前処理部や後処理部が隣接されるが、基板の種類によっては前処理部や後処理部で基板の処理を行うことなく単に通過させるように構成された基板処理装置についても、勿論、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る基板処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】前処理部およびウエット処理部の各シャッタ装置の構成を示す斜視図である。
【図3】前処理部からウエット処理部への基板搬送時のシャッタ装置等の動作順序を示す図である。
【図4】本発明に係る基板処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図5】前処理部およびウエット処理部の各シャッタ装置の別の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 前処理部
2 ウエット処理部
10,20 チャンバ(処理室)
11a 開口部
14,24 シャッタ装置
15,25 シャッタ本体
19a,19b エアノズル
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理液を供給して所定のウエット処理を基板に施すウエット処理室を有し、基板が搬送されつつ前記ウエット処理室の隔壁に形成される基板搬送用の開口部を介して当該ウエット処理室に対して基板の出し入れが行われる基板処理装置において、
前記開口部を前記ウエット処理室の室内側から開閉するシャッタ本体を備える第1シャッタ手段と、
前記開口部を前記ウエット処理室の室外側から開閉するシャッタ本体を備える第2シャッタ手段と、
前記ウエット処理室の室外側に配備されて、前記開口部を通過する基板に対して気体を供給することにより、当該基板表面にウエット処理室の室内側に向って流動する気体流を形成する気体流形成手段と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記開口部を介して前記ウエット処理室に連通し、かつ前記ウエット処理の前処理、又は後処理を基板に施す隣接処理室を有し、この隣接処理室に前記第2シャッタ手段および気体流形成手段が配備されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板処理装置において、
前記シャッタ本体により前記開口部を閉止する閉止状態と、所定の退避位置に前記シャッタ本体を退避させることにより前記開口部を開放する開放状態とに前記各シャッタ手段の駆動状態を切り替え制御するシャッタ制御手段をさらに有し、
このシャッタ制御手段は、基板が前記開口部を通過する際には、前記第1シャッタ手段を閉止状態から開放状態に切り替える直前に、前記第2シャッタ手段を閉止状態から開放状態に切り替えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置において、
前記気体流形成手段を制御する気体流形成制御手段をさらに有し、この気体流形成制御手段は、第1シャッタ手段の閉止状態から開放状態への切り替え動作に同期して気体の供給を開始することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記各シャッタ手段のうち少なくとも第2シャッタ手段は、前記シャッタ本体を前記隔壁の壁面に沿ってスライドさせることにより前記開口部を開閉するように構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記隣接処理室は、当該処理室内において前記開口部の近傍を包囲するように形成される予備室と、この予備室内の雰囲気を排気する排気手段とをさらに備えていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−76856(P2009−76856A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146669(P2008−146669)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】