説明

基板処理装置

【課題】液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができ、かつウエハ等の転倒を防止でき、スループットの向上を図れるようにする。
【解決手段】半導体ウエハWを垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置において、搬送手段であるウエハボート5は、ウエハの下端部を支持する下側保持体20と、ウエハの転倒時に該ウエハの下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とを具備し、下側保持体は、ウエハの下端部を直接支持する保持溝21を有する保持溝部22と、該保持溝部に隣接して設けられ、保持溝によるウエハの支持が解かれた際にウエハを保持する転倒防止溝23を有する転倒防止溝部24と、を一体に形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体ウエハやFPD等の基板を複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程においては、基板としての半導体ウエハやFPD等(以下にウエハ等という)にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて回路パターンを縮小してフォトレジストに転写し、これを現像処理し、その後、ウエハ等からフォトレジストを除去する一連の処理が施されている。
【0003】
また、上記処理の過程において、ウエハ等を複数の保持体で垂直に保持する搬送手段によって、ウエハ等を垂直状態のまま処理液例えば薬液を貯留する処理槽内に浸漬した後、ウエハ等の表面に向かってリンス液を吐出して処理する基板処理装置が知られている。
【0004】
従来のこの種の基板処理装置においては、搬送手段は、基板の下端部を支持する例えば下側保持体と、基板の転倒時に該基板の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体とを具備しており、下側保持体にはウエハ等の下端部を直接保持するV字状溝が設けられ、上側保持体には、ウエハ等の倒れを防止するために、略Y字状の転倒防止溝が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記のように構成される特許文献1に記載のものによれば、搬送手段によってウエハ等を垂直状態のまま処理液例えば薬液を貯留する処理槽内に浸漬した後、処理槽内においてウエハ等の表面に向かってリンス液を吐出して処理した後、搬送手段によってウエハ等を垂直状態のまま処理槽から引き上げて乾燥室内に搬送し、乾燥室内に乾燥ガス例えば窒素(N2)ガスを供給して乾燥処理が施される。
【特許文献1】特開平10−284459号公報(図4,図8,図9,図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載のものにおいては、下側保持体に設けられた保持溝すなわちV字状溝はウエハ等を直接保持するため、或る程度の深さ寸法を有する必要がある。しかしながら、保持溝の高さを深くすると、処理に供された処理液例えば薬液の液残りが生じ、液処理後の乾燥処理に時間を要しスループットの低下をきたすと共に、乾燥処理後にウォーターマーク等のしみが生じる懸念があった。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができ、かつウエハ等の転倒を防止でき、スループットの向上を図れるようにした基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の基板処理装置は、基板を複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置であって、上記保持体の少なくとも一つの保持体が基板の下端部を直接支持する保持溝を有する保持溝部と、該保持溝部に隣接して設けられ、上記保持溝による基板の支持が解かれた際に基板を保持する転倒防止溝を有する転倒防止溝部と、を一体に形成してなる、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
この発明において、処理液を貯留する処理槽を更に具備し、基板を上記搬送手段の保持体によって保持した状態で上記処理槽内の処理液に浸漬させて基板に処理を施すように形成するようにしてもよい(請求項2)。
【0010】
また、この発明において、上記搬送手段は、基板の下端部を支持する下側保持体と、基板の転倒時に該基板の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体とを具備するか(請求項3)、あるいは、基板の下部側端部を支持する左右一対の上側保持体と、基板の転倒時に該基板の下端部を保持する下側保持体とを具備する構造とすることができる(請求項4)。この場合、基板の下端部を支持する下側保持体又は基板の下部側端部を支持する左右一対の上側保持体は、複数枚の基板を互いに並行に保持すべく上記保持溝と転倒防止溝を複数並設する構成とすることができる(請求項5,6)。
【0011】
また、この発明において、上記転倒防止溝は、上記保持溝の開口端より高い開口端と、上記保持溝の溝底より深い溝底を有する構成とする方が好ましい(請求項7)。
【0012】
また、この発明において、上記保持溝は略V字状に形成され(請求項8)、また、上記転倒防止溝は保持溝の開き角度より小さい開き角度を有する略V字状、又は略Y字状に形成される(請求項9,10)。
【0013】
また、この発明において、上記保持溝及び保持溝部は、上記転倒防止溝及び転倒防止溝部側に向かって下り傾斜状に形成される方が好ましい(請求項11)。
【0014】
加えて、この発明において、上記保持溝を有する保持溝部は少なくともその表面が親水性を有する部材にて形成され、上記転倒防止溝を有する転倒防止溝部は少なくともその表面が疎水性を有する部材にて形成される方が好ましい(請求項12)。
【0015】
請求項1〜4記載の発明によれば、基板と保持溝との接触面積を小さくすることができ、保持溝による基板の支持が解かれた際、つまり基板が保持溝から浮き上がった際は、転倒防止溝によって基板の転倒が防止できる。
【0016】
また、請求項5,6記載の発明によれば、複数枚の基板を安定させた状態で同時に液処理することができる。
【0017】
また、請求項7〜10記載の発明によれば、保持溝の開口幅に合わせて転倒防止溝を形成することができる。
【0018】
また、請求項11記載の発明によれば、保持溝に溜まった処理液及び保持溝部に付着した処理液を転倒防止溝側に排水することができる。
【0019】
また、請求項12記載の発明によれば、基板が接触する保持溝部は処理液を吸着して基板への処理液の液残りを抑制することができ、基板と非接触の転倒防止溝部は、処理液を弾いて、処理後の液残りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0021】
(1)請求項1〜4記載の発明によれば、基板と保持溝との接触面積を小さくすることができると共に、基板が保持溝から浮き上がった際は、転倒防止溝によって基板の転倒が防止できるので、液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができ、かつウエハ等の転倒を防止でき、スループットの向上を図ることができる。
【0022】
(2)請求項5,6記載の発明によれば、上記(1)に加えて、更に複数枚の基板を安定させた状態で同時に液処理することができる。
【0023】
(3)請求項7〜10記載の発明によれば、保持溝の開口幅に合わせて転倒防止溝を形成することができるので、保持溝と転倒防止溝を同一ピッチに形成することができ、複数の保持溝と転倒防止溝を少ないスペース内に形成することができる。
【0024】
(4)請求項11記載の発明によれば、保持溝に溜まった処理液及び保持溝部に付着した処理液を転倒防止溝側に排水することができるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に液処理後の液残りを確実に少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができる。
【0025】
(5)請求項12記載の発明によれば、基板が接触する保持溝部は処理液を吸着して基板への処理液の液残りを抑制することができ、基板と非接触の転倒防止溝部は、処理液を弾いて、処理後の液残りを抑制することができる。したがって、上記(1)〜(4)に加えて、更に液処理後の液残りを確実に少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る基板処理装置を半導体ウエハの洗浄・乾燥処理装置に適用した場合について説明する。
【0027】
<第1実施形態>
上記洗浄・乾燥処理装置は、図1に示すように、被処理用の基板である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を収容する処理室である処理槽1と、この処理槽1の上方に位置するウエハWを収容する乾燥室2と、処理槽1内のウエハWに処理液である酸化膜除去用の薬液例えば希フッ酸水(DHF)を供給する薬液供給手段3と、処理槽1内のウエハWに別の処理液である洗浄用のリンス液を供給するリンス液供給手段4と、乾燥室2内に例えば窒素ガス(N2ガス)や清浄空気等の乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段6と、薬液供給手段3、リンス液供給手段4及び乾燥気体供給手段6やこの発明における後述する搬送手段であるウエハボート5、容器カバー昇降機構8、シャッタ9等に制御(作動)信号を伝達する制御手段例えば中央演算処理装置10(以下にCPU10という)とを具備している。
【0028】
この場合、上記処理槽1は、ウエハWを収容する内槽1aと、この内槽1aの上端開口の外周部を包囲する外槽1bとで構成されている。また、内槽1aの底部には、ドレイン口1cが設けられており、このドレイン口1cにドレイン弁1dを介設したドレイン管1eが接続されている。また、外槽1bの底部には、排水口1fが設けられており、この排水口1fに開閉弁1gを介設した排水管1hが接続されている。
【0029】
また、処理槽1の内槽1a内の下部側には供給ノズル11が配設されている。この供給ノズル11は、主供給管12を介してリンス液である純水(DIW)の供給源4aに接続されている。主供給管12における純水供給源4a側には第1の開閉弁V1が介設されており、これら純水供給源4a、主供給管12、第1の開閉弁V1及び供給ノズル11によってリンス液供給手段4が形成されている。
【0030】
また、主供給管12の途中には切換開閉弁V0が介設されており、この切換開閉弁V0に接続する薬液供給管13を介して薬液例えばフッ酸水(HF)の供給タンク3aが接続されている。なお、薬液供給管13にはポンプ3bが介設されている。これら供給タンク3a、薬液供給管13、ポンプ3b、切換開閉弁V0、主供給管12及び供給ノズル11によって薬液供給手段3が形成されている。この場合、主供給管12内を流れる純水と供給タンク3aから供給されるHFとが混合されて所定濃度の薬液(DHF)が供給ノズル11から処理槽1内に供給されるように構成されている。
【0031】
一方、乾燥室2は、複数例えば50枚のウエハWを収容可能な大きさを有すると共に、上端部に搬入・搬出口15を有する容器本体16aと、この容器本体16aの上端に形成された搬入・搬出口15を開放又は閉鎖する容器カバー16bとで主に構成されている。この場合、容器カバー16bは、例えば断面逆U字状に形成され、昇降機構8によって昇降可能に形成されている。昇降機構8は、CPU10に電気的に接続されており、CPU10からの制御(作動)信号により、昇降機構8が作動して、容器カバー16bが開放又は閉鎖されるように構成されている。そして、容器カバー16bが上昇した際には、搬入・搬出口15は開放され、容器本体16aに対してウエハWを搬入できる状態となる。容器本体16aにウエハWを搬入して収容した後、容器カバー16bが下降することで、搬入・搬出口15が塞がれる。この場合、容器本体16aと容器カバー16bの間の隙間は、例えばリップ式のOリング17aによって密封されるように構成されている。
【0032】
また、上記ウエハボート5は、図1及び図2に示すように、ガイド部7と、このガイド部7に水平状態に固着された互いに平行な2組の、ウエハWの周縁の下端部を支持する左右一対の下側保持体20と、ウエハWの転倒時に該ウエハWの周縁の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とで主に構成されている。
【0033】
下側保持体20は、ウエハWの下端部を直接支持する保持溝21を等間隔に50箇所形成する保持溝部22と、該保持溝部22より内方側に隣接して設けられ、保持溝21によるウエハWの支持が解かれた際すなわち保持溝21から浮き上がった際にウエハWを保持する転倒防止溝23を等間隔に50箇所形成する転倒防止溝部24と、で一体に形成されている。
【0034】
この場合、保持溝21は、開き角度を大きくした略V字状の浅溝にて形成されている。また、転倒防止溝23は、保持溝21の開口端25より高い開口端26と、保持溝21の溝底27より深い溝底28を有すると共に、保持溝21の開き角度より小さい開き角度を有する略V字状の深溝にて形成されている。なお、転倒防止溝23を保持溝21の開き角度より小さい開き角度を有する略Y字状の深溝にて形成してもよい。
【0035】
このように保持溝21と転倒防止溝23を形成することにより、保持溝21の開口幅に合わせて転倒防止溝23を形成することができる。したがって、保持溝21と転倒防止溝23を同一ピッチに形成することができ、複数の保持溝21と転倒防止溝23を少ないスペース内に形成することができる。
【0036】
また、保持溝21及び保持溝部22は、転倒防止溝23及び転倒防止溝部24側に向かって下り傾斜状に形成され、かつ隣接する保持溝21間の頂部29は円弧状に形成されている。このように、保持溝21及び保持溝部22を転倒防止溝23及び転倒防止溝部24側に向かって下り傾斜状に形成することにより、保持溝21に溜まった処理液及び保持溝部22に付着した処理液を転倒防止溝23側に向かって流すことができる。また、保持溝21間の頂部29を円弧状に形成することにより、保持溝21間の頂部29への液滴の付着を抑制することができる。
【0037】
また、上記のように構成される保持溝21を有する保持溝部22は親水性を有する部材、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて形成されている。一方、転倒防止溝23を有する転倒防止溝部24は疎水性を有する部材、例えばポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)にて形成されている。この場合、保持溝部22は少なくともその表面が親水性を有する部材であってもよい。また、転倒防止溝部24は少なくともその表面が疎水性を有する部材であってもよい。
【0038】
このように、保持溝部22は少なくともその表面が親水性を有する部材にて形成されることにより、ウエハWが接触する保持溝部22は処理液(薬液,リンス液)を吸着してウエハWへの処理液の液残りを抑制することができる。また、転倒防止溝23を有する転倒防止溝部24は少なくともその表面が疎水性を有する部材にて形成されることにより、ウエハWと非接触の転倒防止溝部24は、処理液(薬液,リンス液)を弾いて、処理後の液残りを抑制することができる。したがって、更に液処理後の液残りを確実に少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができる。
【0039】
なお、上側保持体30には、断面形状が2段テーパ形状をなし、開口側の上側テーパ部の開き角度が底溝部の下側テーパ部の開き角度より大きい略Y字状の保持溝31が等間隔に50箇所形成されている。この保持溝31は、ウエハWの転倒防止を図るものであり、下側保持体20の保持溝21によってウエハWを直接支持している状態では、保持溝31とウエハWは非接触の状態になっている。
【0040】
なお、ウエハボート5は、ガイド部7に連なるシャフト14が容器カバー16bの頂部に設けられた透孔16c内に摺動可能に貫通されており、透孔16cとシャフト14との間には、伸縮式のOリング17bが介在されて、乾燥室2内の気水密が維持できるように構成されている。なお、ウエハボート5の昇降機構(図示せず)はCPU10に接続されており、CPU10からの制御(作動)信号によって作動し得るように構成されている。
【0041】
また、処理槽1と乾燥室2とは連通口15aを介して連設されており、連通口15aに開閉手段であるシャッタ9が開閉可能に配設されており、このシャッタ9によって処理槽1と乾燥室2が遮断されるように構成されている。この場合、シャッタ9の駆動部9aはCPU10に電気的に接続されており、CPU10からの制御(作動)信号によって連通口15aを開閉し得るように構成されている。
【0042】
上記乾燥気体供給手段6は、乾燥室2内の中央部両側に配設されるガス供給ノズル11Aと、このガス供給ノズル11Aにガス供給管18を介して接続する乾燥気体例えばN2ガスの供給源6aと、ガス供給管18に介設される第2の開閉弁V2とで主要部が構成されている。この場合、ガス供給管18には、温度調整器6bが介設されており、この温度調整器6bによってホットN2ガスが生成されるようになっている。この温度調整器6bと第2の開閉弁V2は、CPU10からの制御(作動)信号によって作動し得るように構成されている。
【0043】
なお、上記薬液供給手段3、リンス液供給手段4及び乾燥気体供給手段6やウエハボート5、容器カバー昇降機構8、シャッタ9等は、CPU10に予めプログラムされた記憶情報に基いて制御されるようになっている。
【0044】
次に、上記洗浄・乾燥処理装置を用いたウエハWの処理の手順の一例を簡単に説明する。まず、図示しないウエハ搬送手段によって搬送された複数例えば50枚のウエハWを、洗浄・乾燥処理装置の上方に上昇するウエハボート5に受け渡し、次いで、ウエハボート5が下降した後、容器カバー16bが閉鎖してウエハWを処理槽1内に収容する。処理槽1内にウエハWを収容した状態において、最初に、ポンプ3bを作動させると共に、第1の開閉弁V1を開放し、切換開閉弁V0を薬液供給タンク3a側に切り換えて処理槽1内に収容されるウエハWに薬液(DHF)を供給(浸漬)し、DHFによりエッチング処理を施して、ウエハW表面の酸化膜を除去する。次に、ポンプ3bを停止すると共に、切換開閉弁V0を純水供給源4a側のみに切り換えて処理槽1内に収容されるウエハWにリンス液(DIW)を供給すると共に、外槽1bにオーバーフローさせながらウエハW表面を洗浄する。上記エッチング処理又はリンス処理中に、ウエハWが保持溝21から浮き上った場合は、ウエハWは転倒防止溝23によって転倒が防止される。
【0045】
上記のようにして、ウエハW表面の酸化膜を除去するエッチング処理及びウエハW表面を洗浄するリンス処理を行った後、ウエハボート5を上昇させてウエハWを処理槽1の上方の乾燥室2内に移動する。このとき、シャッタ9が閉鎖位置に移動して乾燥室2と処理槽1とが遮断されると共に、乾燥室2内が密閉される。この状態で、第2の開閉弁V2が開放すると共に、温度調整器6bが作動してN2ガス供給源6aから乾燥室2内にホットN2ガスが供給されて、ウエハWの乾燥が行われる。この乾燥工程では、ウエハWと保持溝21の接触面積が小さく、ウエハWに付着する液が少ないので、ウエハW表面にウォーターマークが生じる虞がない。
【0046】
上記のようにして乾燥処理を行った後、昇降機構8を作動させて、容器カバー16bを上昇して、容器本体16aの搬入・搬出口15を開放した後、ウエハボート5を上昇して、ウエハWを乾燥室2の上方に搬出する。そして、図示しないウエハ搬送手段にウエハWを受け渡して、次の処理部に搬送する。
【0047】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、下側保持体20が2本の場合について説明したが、下側保持体20Aを1本にしてもよい。すなわち、第2実施形態のウエハボート5Aは、図9及び図10に示すように、ガイド部7と、このガイド部7に水平状態に固着された互いに平行な、ウエハWの周縁の下端部を支持する1本の下側保持体20Aと、ウエハWの転倒時に該ウエハWの周縁の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とで主に構成されている。
【0048】
この場合、下側保持体20Aには、ウエハWの最下端部を直接支持する保持溝21Aを等間隔に50箇所形成する保持溝部22Aと、該保持溝部22Aより外方側に隣接して設けられ、保持溝21AによるウエハWの支持が解かれた際すなわち保持溝21Aから浮き上がった際にウエハWを保持する転倒防止溝23Aを等間隔に50箇所形成する転倒防止溝部24Aと、を一体に形成してなる。なお図面では、正面視において、転倒防止溝部24Aが保持溝部22Aの左側に設けられているが、転倒防止溝部24Aを保持溝部22Aの右側に設けてもよい。
【0049】
この場合、保持溝21Aは、第1実施形態の保持溝21と同様に、開き角度を大きくした略V字状の浅溝にて形成されている。また、転倒防止溝23Aは保持溝部22Aの外側の隣接位置に設けられる転倒防止溝部24Aに設けられる以外は、第1実施形態の転倒防止溝23と同様に、保持溝21Aの開口端25より高い開口端26と、保持溝21の溝底27より低い溝底28を有すると共に、保持溝21の開き角度より小さい開き角度を有する略V字状又は略Y字状の深溝にて形成されている。
【0050】
このように保持溝21Aと転倒防止溝23Aを形成することにより、保持溝21Aの開口幅に合わせて転倒防止溝23Aを形成することができる。したがって、保持溝21Aと転倒防止溝23Aを同一ピッチに形成することができ、複数の保持溝21Aと転倒防止溝23Aを少ないスペース内に形成することができる。
【0051】
また、保持溝21A及び保持溝部22Aは、転倒防止溝23A及び転倒防止溝部24A側に向かって下り傾斜状に形成され、かつ隣接する保持溝21A間の頂部29は円弧状に形成されている。このように、保持溝21A及び保持溝部22Aを転倒防止溝23A及び転倒防止溝部24A側に向かって下り傾斜状に形成することにより、保持溝21Aに溜まった処理液及び保持溝部22Aに付着した処理液を転倒防止溝23A側に向かって流すことができる。また、保持溝21A間の頂部29Aを円弧状に形成することにより、保持溝21A間の頂部29Aへの液滴の付着を抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態と同様に、保持溝21Aを有する保持溝部22Aは少なくともその表面が親水性を有する部材、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて形成され、転倒防止溝23Aを有する転倒防止溝部24Aは少なくともその表面が疎水性を有する部材、例えばポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)にて形成されている。
【0053】
なお、第2実施形態において、その他のウエハボート5A以外の部分は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0054】
第2実施形態によれば、第1実施形態に比べてウエハWとの接触面積を更に小さくすることができるので、液処理後の液残りを少なくしてウォーターマーク等のしみの発生を抑制することができる。
【0055】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、ウエハWの下端部を支持する下側保持体20,20Aと、ウエハWの転倒時に該ウエハWの下部側端部を保持する左右一対の上側保持体30とを具備する場合について説明したが、逆の構成としてもよい。すなわち、ウエハWの下部側端部を支持する左右一対の上側保持体と、ウエハWの転倒時に該ウエハWの下端部を保持する下側保持体とを具備する構成としてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、この発明に係る基板処理装置をウエハWの洗浄・乾燥処理装置に適用した場合について説明したが、この発明に係る基板処理装置は、ウエハWを垂直状態に保持する搬送手段を具備する基板処理装置の全てに適用可能である。
【0057】
また、この発明に係る基板処理装置は、被処理用の基板がウエハ以外の例えばFPD基板等についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明に係る基板処理装置を適用した洗浄・乾燥処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】この発明におけるウエハボートの第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】この発明における下側保持体の保持溝と転倒防止溝の第1実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】第1実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す平面図である。
【図5】第1実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す要部平面図である。
【図6】図5の正面断面図である。
【図7】図5の左側面図である。
【図8】図5の右側面図である。
【図9】この発明におけるウエハボートの第2実施形態を示す斜視図である。
【図10】この発明における下側保持体の保持溝と転倒防止溝の第2実施形態を示す平面図である。
【図11】この発明における下側保持体の保持溝と転倒防止溝の第2実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図12】第2実施形態のウエハボートによるウエハの保持状態を示す要部正面断面図である。
【図13】図12の左側面図である。
【図14】図12の右側面図である。
【符号の説明】
【0059】
W 半導体ウエハ(基板)
1 処理槽
2 乾燥室
3 薬液供給手段
4 リンス液供給手段
5,5A ウエハボート(搬送手段)
6 乾燥気体供給手段
9 シャッタ
10 CPU(制御手段)
20,20A 下側保持体
21,21A 保持溝
22,22A 保持溝部
23,23A 転倒防止溝
24,24A 転倒防止溝部
25 保持溝の開口端
26 転倒防止溝の開口端
27 保持溝の溝底
28 転倒防止溝の溝底
29 頂部
30 上側保持体
31 保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を複数の保持体で垂直に保持した状態で搬送する搬送手段を具備する基板処理装置であって、
上記保持体の少なくとも一つの保持体が基板の下端部を直接支持する保持溝を有する保持溝部と、該保持溝部に隣接して設けられ、上記保持溝による基板の支持が解かれた際に基板を保持する転倒防止溝を有する転倒防止溝部と、を一体に形成してなる、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽を更に具備し、基板を上記搬送手段の保持体によって保持した状態で上記処理槽内の処理液に浸漬させて基板に処理を施すように形成してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板処理装置において、
上記搬送手段は、基板の下端部を支持する下側保持体と、基板の転倒時に該基板の下部側端部を保持する左右一対の上側保持体とを具備してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の基板処理装置において、
上記搬送手段は、基板の下部側端部を支持する左右一対の上側保持体と、基板の転倒時に該基板の下端部を保持する下側保持体とを具備してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項3記載の基板処理装置において、
上記下側保持体は、複数枚の基板を互いに平行に保持すべく保持溝と転倒防止溝を複数並設してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4記載の基板処理装置において、
上記上側保持体は、複数枚の基板を互いに平行に保持すべく保持溝と転倒防止溝を複数並設してなる、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記転倒防止溝は、上記保持溝の開口端より高い開口端と、上記保持溝の溝底より深い溝底を有する、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記保持溝は略V字状に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記転倒防止溝は保持溝の開き角度より小さい開き角度を有する略V字状に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記転倒防止溝は保持溝の開き角度より小さい開き角度を有する略Y字状に形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記保持溝及び保持溝部は、上記転倒防止溝及び転倒防止溝部側に向かって下り傾斜状に形成されている、ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の基板処理装置において、
上記保持溝を有する保持溝部は少なくともその表面が親水性を有する部材にて形成され、上記転倒防止溝を有する転倒防止溝部は少なくともその表面が疎水性を有する部材にて形成される、ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−80859(P2010−80859A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250343(P2008−250343)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】