説明

基板処理装置

【課題】基板に対する処理液の再付着を抑制または防止することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置1は、基板Wを水平に保持するための支持リング9を有するスピンチャック3と、スピンチャック3に保持された基板Wに処理液を供給する洗浄液ノズル4およびリンス液ノズル5と、基板Wの外方に向かって飛散する処理液の液滴を受け止めるためのスプラッシュガード6とを備えている。支持リング9は、基板Wの上面から外方へと処理液が流れていくように、基板Wの全周を取り囲んで基板Wの外周縁を外方に拡張するように設けられた環状の拡張面61を有している。また、スプラッシュガード6は、スピンチャック3に保持された基板Wの外方において、拡張面61の全周縁部を上方から覆う環状の上壁部45を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理するための基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板の上面に処理液を供給する処理液ノズルと、基板の周囲に飛散する処理液を受け止めて捕獲するためのスプラッシュガードとを備えている。スプラッシュガードは、基板の回転軸線に対して回転対称な形状を有しており、スピンチャックの周囲を取り囲んでいる。
【0003】
この基板処理装置で基板を処理する場合は、たとえば、スピンチャックに保持された基板の周端面にスプラッシュガードを対向させた状態で、スピンチャックによって基板を回転させつつ、当該基板の上面中央部に向けて処理液ノズルから処理液を連続吐出させる。処理液ノズルから吐出された処理液は、基板の上面中央部に着液し、基板の回転による遠心力を受けて、基板の上面周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板の上面全域に処理液が供給され、基板の上面に処理液による処理が行われる。また、処理液による処理が行われた後は、スピンチャックに保持された基板の周端面にスプラッシュガードを対向させた状態で、スピンチャックによって基板を高速回転させる。これにより、基板に付着している処理液を遠心力によって振り切って当該基板を乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。
【特許文献1】特開2008−27931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような構成で処理液による処理や乾燥処理(スピンドライ)を行う場合、基板上の処理液は、液滴となって基板の外周縁からその周囲に排出される。このとき、基板の周囲に飛散する処理液の液滴は、スプラッシュガードによって受け止められ捕獲される。しかしながら、スプラッシュガードに衝突した処理液の一部は、液滴となって基板側に跳ね返ってしまう。また、基板の周囲に飛散する後続の液滴は、この跳ね返った液滴に衝突して、基板側に跳ね返る場合がある。そのため、基板から排出された処理液が基板に再付着して当該基板が汚染されるおそれがある。ところが、前記のような構成では、基板側に跳ね返ってくる処理液を遮るものが設けられていないので、基板に対する処理液の再付着を防止することができない。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、基板に対する処理液の再付着を抑制または防止することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を水平に保持するための保持部(9,109,209,309,409,509)、および前記保持部を鉛直な回転軸線(L1)まわりに回転させる回転手段(9)を有する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液供給手段(4,5)と、前記基板保持手段に保持された基板の周囲を取り囲み、当該基板の外方に向かって飛散する処理液の液滴を受け止めるための処理液捕獲部材(6)とを含み、前記保持部は、基板の全周を取り囲んで当該基板の外周縁を外方に拡張するように設けられた環状の拡張面(61,161,261,361)を有し、前記処理液捕獲部材は、前記保持部に保持された基板の外方において、前記拡張面の全周縁部を上方から覆う環状の被覆部(45)を有している、基板処理装置(1)である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、保持部が、基板の全周を取り囲んで当該基板の外周縁を外方に拡張するように設けられた環状の拡張面を有しているので、処理液供給手段から基板の上面に供給された処理液を拡張面に移動させることができる。また、この拡張面に移動した処理液を拡張面の縁部から飛散させて、拡張面から処理液を排出させることができる。これにより、処理液の飛散点を基板の外方に移動させることができる。
【0008】
また、処理液捕獲部材が基板の周囲を取り囲んでおり、さらに、保持部に保持された基板の外方において、被覆部が拡張面の全周縁部を上方から覆っているので、処理液捕獲部材により覆われた空間で処理液を飛散させて、飛散した処理液を処理液捕獲部材によって確実に捕獲することができる。さらに、処理液捕獲部材に衝突して基板側に跳ね返った処理液の液滴や、この跳ね返った液滴と拡張面から外方に飛散する後続の液滴との衝突により基板側に跳ね返った処理液の液滴を処理液捕獲部材によって受け止めて、この処理液の液滴が基板側に戻ることを抑制または防止することができる。これにより、処理液の再付着による基板の汚染を抑制または防止することができる。
【0009】
また、この発明によれば、処理液捕獲部材の被覆部が保持部に保持された基板の外方において拡張面の全周縁部を上方から覆っているので、被覆部の内側には、基板が通過可能な空間が確保されている。したがって、基板を処理液捕獲部材に衝突させることなく、保持部に対する基板の搬入および搬出を行うことができる。これにより、保持部に対する基板の搬入および搬出を円滑に行うことができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記被覆部は、処理液の液滴が前記拡張面との間を通って当該被覆部よりも前記回転軸線側に進入しないように、前記拡張面に近接されている、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、被覆部が拡張面に近接されているので、基板側に跳ね返ってくる処理液の液滴が、被覆部と拡張面との間を通って被覆部よりも前記回転軸線側(基板側)に移動することを一層確実に抑制または防止することができる。これにより、基板から排出された処理液が基板に再付着することを一層確実に抑制または防止することができ、処理液の再付着による基板の汚染を一層確実に抑制または防止することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記拡張面は、処理液に対する親液性が基板よりも高い親液面とされている、請求項1または2記載の基板処理装置である。
この発明によれば、拡張面の親液性が基板よりも高くされているので、基板の上面周縁部から拡張面へと向かう処理液の外方への移動を拡張面の親液性によって促して、基板から拡張面に処理液を円滑に移動させることができる。これにより、基板から拡張面に処理液を確実に移動させて、処理液捕獲部材により覆われた拡張面の縁部から当該処理液を排出させることができる。その結果、基板側に飛散する処理液の液滴を処理液捕獲部材によって確実に受け止めて、処理液の再付着による基板の汚染を一層確実に抑制または防止することができる。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記保持部は、基板の下方に空間(S1)が生じるように当該基板の下面周縁部を全周にわたって支持できるように形成されたものであり、当該空間を当該保持部の周囲の空間に連通させるための連通部(63,463)を有している、請求項1〜3の何れか1項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、保持部に基板を保持させた状態で当該保持部を前記回転手段によって鉛直な回転軸線まわりに回転させることにより、基板の下方に生じた空間の気体を遠心力によって連通部から排出させて、当該空間を負圧にすることができる。したがって、この負圧により基板を吸着保持することができる。これにより、基板を吸着保持した状態で、保持部とともに一体回転させることができる。
【0013】
また、この発明によれば、保持部が基板の下面周縁部を支持するので、基板の下面周縁部以外の部分を非接触にした状態で、基板を吸着保持することができる。これにより、基板と保持部との接触面積を低減することができる。したがって、パーティクルなどの異物が保持部から基板に移って、当該基板が汚染されることを抑制または防止することができる。
【0014】
さらに、この発明によれば、保持部を回転させることにより基板を吸着保持することができるので、たとえば、複数の挟持部材により基板の周端面を挟持して当該基板を保持するメカニカルチャック機構などの保持機構を別途設けなくてもよい。そのため、基板上で外方に移動する処理液が挟持部材に当たって跳ね返ったり、前記回転軸線まわりの挟持部材の回転により気流が乱れたりして、基板から排出された処理液が当該基板に再付着することを抑制または防止することができる。これにより、処理液の再付着による基板の汚染を抑制または防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解図である。基板処理装置1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板Wは、この実施形態では、半導体ウエハのような円形基板である。
基板処理装置1は、隔壁で区画された処理室2内に、1枚の基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持手段)と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に処理液としての洗浄液を供給するための洗浄液ノズル4(処理液供給手段)と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に処理液としてのリンス液を供給するためのリンス液ノズル5(処理液供給手段)とを備えている。スピンチャック3の周囲には、基板Wの周囲に飛散する処理液を受け止めて捕獲するためのスプラッシュガード6(処理液捕獲部材)が配置されている。
【0016】
スピンチャック3は、鉛直方向に延びる回転軸7と、回転軸7の上端に水平に取り付けられた円板状のスピンベース8と、このスピンベース8上に配置された支持リング9(保持部)と、回転軸7に結合されたモータ10(回転手段)とを備えている。スピンチャック3は、基板Wの下面周縁部を支持リング9により支持した状態で当該基板Wを水平に保持することができる。また、スピンチャック3は、モータ10の駆動力により、保持した基板Wを当該基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに回転させることができる。回転軸7は、筒状のカバー11を挿通しており、カバー11には、モータ10が収容されている。スピンベース8は、この実施形態では、基板Wよりも直径の大きな円板状の部材である。
【0017】
また、回転軸7は中空軸とされている。回転軸7の内部には、下側処理液供給管12が非接触状態で挿通されている。下側処理液供給管12の上端には、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル13が設けられている。下面ノズル13は、その吐出口13aが支持リング9により支持された基板Wの下面中央部に近接するように配置されている。
【0018】
また、下側処理液供給管12には、下側洗浄液供給管14および下側リンス液供給管15が接続されている。下側処理液供給管12には、下側洗浄液供給管14を介して図示しない洗浄液タンクからの洗浄液が供給される。また、下側処理液供給管12には、下側リンス液供給管15を介して図示しないリンス液供給源からのリンス液が供給される。下側処理液供給管12には、処理液としての洗浄液およびリンス液が選択的に供給されるようになっている。これにより、下側処理液供給管12から下面ノズル13に処理液を供給して、下面ノズル13の吐出口13aから基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出させることができる。
【0019】
下側洗浄液供給管14には、下面ノズル13への洗浄液の供給および供給停止を切り換えるための下側洗浄液バルブ16が介装されている。また、下側リンス液供給管15には、下面ノズル13へのリンス液の供給および供給停止を切り換えるための下側リンス液バルブ17が介装されている。
下側処理液供給管12に供給される洗浄液としては、たとえば、薬液やリンス液を用いることができる。薬液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水のうちの少なくとも1つを含む液を例示することができる。また、リンス液としては、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0020】
また、回転軸7と下側処理液供給管12との間には、下側処理液供給管12を取り囲む筒状の下側ガス供給路18が形成されている。下側ガス供給路18の上端は、スピンベース8の上面中央部に位置する環状の下側ガス吐出口19となっている(図3参照)。下側ガス供給路18には、下側ガス供給管20を介して図示しないガス供給源からのガスが供給される。下側ガス供給路18に供給されたガスは、下側ガス吐出口19から上方に向けて吐出される。下側ガス供給管20には、下側ガス供給路18へのガスの供給および供給停止を切り換えるための下側ガスバルブ21と、下側ガス供給路18に供給されるガスの流量を調整するためのガス流量調整バルブ22とが介装されている。下側ガス供給路18に供給されるガスとしては、たとえば、不活性ガスの一例である窒素ガスが用いられている。
【0021】
洗浄液ノズル4は、たとえば、連続流の状態で洗浄液を吐出するストレートノズルである。洗浄液ノズル4は、水平に延びるノズルアーム24の先端部に取り付けられている。洗浄液ノズル4は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック3よりも上側に配置されている。
洗浄液ノズル4には、洗浄液供給管25が接続されている。洗浄液ノズル4には、洗浄液供給管25を介して図示しない洗浄液タンクからの洗浄液が供給される。洗浄液供給管25には、洗浄液ノズル4への洗浄液の供給および供給停止を切り換えるための洗浄液バルブ26が介装されている。この実施形態では、洗浄液ノズル4に対応する洗浄液タンクと下面ノズル13に対応する洗浄液タンクとが共通のタンクにされており、洗浄液ノズル4および下面ノズル13に同一の洗浄液が供給されるようになっている。すなわち、この実施形態では、洗浄液ノズル4および下面ノズル13から同一の洗浄液が吐出されるようになっている。
【0022】
また、ノズルアーム24には、鉛直方向に沿って延びる支持軸27が結合されている。支持軸27は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸27には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構28が結合されている。ノズル揺動駆動機構28の駆動力が支持軸27に入力されることにより、洗浄液ノズル4およびノズルアーム24が、支持軸27の中心軸線まわりに一体的に水平移動させられる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に洗浄液ノズル4を配置したり、スピンチャック3の上方から洗浄液ノズル4を退避させたりすることができる。
【0023】
リンス液ノズル5は、たとえば、連続流の状態でリンス液を吐出するストレートノズルである。リンス液ノズル5は、水平に延びるノズルアーム29の先端部に取り付けられている。リンス液ノズル5は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック3よりも上側に配置されている。
リンス液ノズル5には、リンス液供給管30が接続されている。リンス液ノズル5には、リンス液供給管30を介して図示しないリンス液供給源からのリンス液が供給される。リンス液供給管30には、リンス液ノズル5へのリンス液の供給および供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ31が介装されている。リンス液ノズル5には、たとえば、下側リンス液供給管15を介して下面ノズル13に供給されるリンス液と同種のリンス液が供給されるようになっている。すなわち、この実施形態では、リンス液ノズル5および下面ノズル13から同種のリンス液が吐出されるようになっている。
【0024】
また、ノズルアーム29には、鉛直方向に沿って延びる支持軸32が結合されている。支持軸32は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸32には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構33が結合されている。ノズル揺動駆動機構33の駆動力が支持軸32に入力されることにより、リンス液ノズル5およびノズルアーム29が、支持軸32の中心軸線まわりに一体的に水平移動させられる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方にリンス液ノズル5を配置したり、スピンチャック3の上方からリンス液ノズル5を退避させたりすることができる。
【0025】
スプラッシュガード6は、内構成部材34と外構成部材35とを備えている。内構成部材34は、筒状であり、外構成部材35は、有底筒状である。内構成部材34は、外構成部材35内に収容されている。内構成部材34および外構成部材35は、それぞれスピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。
内構成部材34は、円筒状の外壁部36と、この外壁部36の上端から中心側(回転軸線L1に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる筒状の上壁部37と、外壁部36と同軸になるように外壁部36の内側に配置され、上壁部37の途中部から下方に延びる円筒状の案内部38とを有している。上壁部37の上端部の内周面によってリンス液捕獲部39が形成されている。
【0026】
案内部38は、軸長(中心軸線に沿う方向への長さ)が外壁部36よりも長くされており、その下端は、外壁部36の下端よりも下方に位置している。案内部38の下端における周方向の一部には、支持軸40が結合されている。支持軸40は、外構成部材35を挿通しており、その一部は、外構成部材35の外部に位置している。支持軸40には、外構成部材35の外部において、たとえばエアシリンダからなる昇降機構41が結合されている。この昇降機構41の駆動力を支持軸40に入力することにより、外構成部材35内において、内構成部材34を鉛直方向に昇降させることができる。内構成部材34は、リンス液捕獲部39が支持リング9に支持された基板Wの周端面に対向する排液位置(図1において実線で示す内構成部材34の位置)と、上壁部37の上端が支持リング9の上面より下方に位置する回収位置(図1において二点鎖線で示す内構成部材34の位置)との間で昇降される。
【0027】
外構成部材35は、平面視において円環状をなす底部42と、底部42の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部43と、底部42の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部44と、外壁部43の上端から水平方向に沿って中心側(回転軸線L1に近づく方向)に延びる円環状の上壁部45とを有している。
底部42には、基板Wの処理に用いられた後のリンス液を排液するための排液溝46と、基板Wの処理に用いられた後の洗浄液を回収するための回収溝47とが形成されている。排液溝46には、リンス液排液配管48が接続されており、回収溝47には洗浄液回収管49が接続されている。洗浄液回収管49は、洗浄液ノズル4および下面ノズル13に供給するための洗浄液が貯留された前述の洗浄液タンク(図示せず)に接続されている。回収溝47に集められた洗浄液は、洗浄液回収管49を介して洗浄液タンクに回収され、再び洗浄液ノズル4および下面ノズル13に供給される。これにより、洗浄液が再利用され洗浄液の消費量が低減される。
【0028】
排液溝46および回収溝47は、それぞれ、環状をなしており、スピンチャック3の周囲を取り囲んでいる。底部42には、その径方向に関して段差が設けられており、回収溝47は、排液溝46の外側において排液溝46よりも上方に位置している。また、底部42には、回収溝47の内側に隣接して配置された筒状壁50が形成されている。筒状壁50は、内構成部材34が回収位置(二点鎖線で示す位置)にある状態で、内構成部材34の外壁部36と案内部38との間に収容されるように形成されている。また、内構成部材34の外壁部36は、内構成部材34が回収位置にある状態で、回収溝47に収容されるように形成されている。
【0029】
外壁部43は、内壁部44よりも軸長が長くされている。外壁部43の上端は、スピンベース8とほぼ同じ高さにまで達している。外壁部43は、その径方向に十分な間隔を隔ててスピンチャック3を取り囲んでいる。また、内壁部44は、カバー11の下端部に近接した位置で当該カバー11を取り囲んでいる。
上壁部45は、外壁部43の上端から中心側に向かって斜め上方にゆるやかに傾斜する円環状の主体部51と、主体部51の内周縁から中心側に延びる先端部52とを有している。主体部51の下面は、支持リング9に支持された基板Wの周端面に対向するように形成されており、洗浄液捕獲部54を形成している。また、先端部52は、主体部51の内周縁から中心に向かって水平に延びており、その途中部が下方に折り曲げられて階段状をなしている。先端部52は、上壁部45の内周縁部を構成する円環状の水平部52aと、この水平部52aの外周縁から鉛直上方に立ち上がる円筒状の立ち上がり部52bとを含む。水平部52aの下面は、平坦な水平面とされている。また、立ち上がり部52bの周囲には、立ち上がり部52bを取り囲む筒状の空間が確保されている。
【0030】
先端部52は、支持リング9の上方にまで達しており、支持リング9の外周よりの部分(後述の拡張面61の全域)を全周にわたって上方から覆っている。より詳細には、先端部52は、平面視において、基板Wの外方の領域で支持リング9の上面と重なり合う領域を有している。水平部52aは、支持リング9に近接されており、水平部52aの下面と支持リング9の上面との間には、全周にわたって隙間55が形成されている。水平部52aの下面と支持リング9の上面との間の鉛直方向の間隔は、全周にわたって一定とされており、その大きさは、たとえば、2cm以下、好ましくは、1mm〜5mmにされている。隙間55は、外構成部材35の内部空間であるその周囲の空間に連通している。
【0031】
また、上壁部45の内側には、平面視円形の開口56が形成されている。開口56の直径は、基板Wの直径よりも大きくされ、支持リング9の外径よりも小さくされている。すなわち、上壁部45の内径(水平部52aの内径)は、基板Wの直径よりも大きくされ、支持リング9の外径よりも小さくされている。支持リング9に基板Wを載置するときや、支持リング9から基板Wを払い出すときは、この開口56を基板Wが通過するようになっている。開口56の直径が基板Wの直径よりも大きくされているので、上壁部45に基板Wを衝突させることなく、開口56に対して基板Wを通過させることができる。また、上壁部45の内径が基板Wの直径よりも大きくされ、上壁部45が基板Wの外方において支持リング9を覆っているので、上壁部45の下面に付着した処理液のミストやパーティクルなどの異物が落下して、基板Wに付着することを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの汚染を抑制または防止することができる。
【0032】
基板Wから排出される使用済み洗浄液を捕獲して回収するときは、内構成部材34を回収位置(二点鎖線で示す位置)に位置させる。内構成部材34を回収位置に位置させることにより、内構成部材34の上壁部37の上端と外構成部材35の上壁部45との間に環状の開口が形成され、洗浄液捕獲部54が支持リング9に支持された基板Wの周端面に対向する。これにより、基板Wから排出される洗浄液を、内構成部材34の上壁部37と外構成部材35の上壁部45とを通じて回収溝47に導くことができる。また、基板Wの周囲に勢い良く飛散する洗浄液を洗浄液捕獲部54により受け止めて、回収溝47に導くことができる。回収溝47に導かれた使用済みの洗浄液は、洗浄液回収管49によって洗浄液タンクに回収される。このようにして、基板Wから排出される使用済み洗浄液を捕獲して回収することができる。
【0033】
また、基板Wから排出される使用済みリンス液を捕獲して排液するときには、内構成部材34を排液位置(実線で示す位置)に位置させる。これにより、上壁部37の上端が立ち上がり部52bの周囲の空間に入り込み、リンス液捕獲部39が支持リング9に支持された基板Wの周端面に対向する。すなわち、外構成部材34に立ち上がり部52bを設けることにより、上壁部37の上端を支持リング9に支持された基板Wの上方にまで上昇させて、当該基板Wの周端面にリンス液捕獲部39を確実に対向させることができる。これにより、基板Wから排出されるリンス液を、排液溝46に導くことができる。また、基板Wの周囲に勢い良く飛散するリンス液をリンス液捕獲部39により受け止めて、排液溝46に導くことができる。排液溝46に導かれた使用済みのリンス液は、リンス液排液配管48から排液される。このようにして、基板Wから排出される使用済みリンス液を捕獲して排液することができる。
【0034】
図2は、スピンチャック3の図解的な縦断面図である。また、図3は、スピンチャック3の図解的な平面図である。以下では、図2および図3を参照して、支持リング9およびそれに関連する構成について説明する。
支持リング9は、円環状をなす平板部57と、この平板部57の外周部から鉛直下方に延びる筒状部58とを有している。平板部57および筒状部58は、同軸となるように一体形成されている。平板部57および筒状部58の厚みは、たとえば、数mm〜数cm程度にされている。平板部57の内径は、基板Wの外径よりも小さくされており、平板部57の外径は、基板Wの外径よりも大きくされている。この実施形態では、平板部57の外径が、スピンベース8の外径とほぼ同じ大きさにされている。支持リング9は、平板部57とスピンベース8とが同軸となるように、スピンベース8の上面周縁部に沿って水平に配置されている。筒状部58は、スピンベース8の外側に位置しており、スピンベース8の上端部を全周にわたって取り囲んでいる。筒状部58の内周面と、スピンベース8の外周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0035】
平板部57の断面形状(鉛直面に沿う断面形状)は、その内周側に向かって先細りとなる楔状をなしている。平板部57の下面は、円環状の水平面にされており、平板部57の上面には、円環状の水平面59と、この水平面59の内周縁から支持リング9の内側に向かって下方に傾斜する円環状のテーパ面60とが設けられている。
テーパ面60は、内径が基板Wの外径よりも小さくされており、外径が基板Wの外径よりも大きくされている。テーパ面60は、基板Wの下面外周縁に対して全周にわたって線接触した状態で、当該基板Wを支持することができる。水平面59およびテーパ面60は、テーパ面60によって基板Wが支持された状態で、水平面59の高さが、基板Wの上面と同一または基板Wの上面よりも低くなるように形成されている。テーパ面60によって基板Wの下面周縁部を支持することにより、スピンベース8の上面と基板Wの下面との間に、水平方向に沿う狭空間S1(空間)を形成することができる。
【0036】
図3に示すように、平板部57の上面において基板Wよりも外方に位置する部分(テーパ面60の外周部と水平面59とを含む部分。以下では、「拡張面61」という。)は、当該基板Wの外周縁を外方に拡張するように、当該基板Wの全周を取り囲んでいる。支持リング9は、基板Wの上面に供給された処理液を当該基板Wの上面から拡張面61に向かって外方へと流すことができるように形成されている。拡張面61の内周部は、テーパ面60の外周部に相当するので、支持リング9の内側に向かって下方に傾斜している。また、拡張面61の高さは、支持リング9に支持された基板Wの上面と同一または基板Wの上面よりも低くなっている。
【0037】
拡張面61は、処理液に対する親液性が基板Wよりも高い親液面とされている。具体的には、たとえば、処理液に対する親液性が基板Wよりも高い材料によって支持リング9が形成されている。すなわち、基板Wがシリコンウエハである場合には(シリコンウエハと水との接触角は、70度)、たとえば、石英、窒化珪素、アルミナなどによって支持リング9が形成されている。これにより、拡張面61を含む支持リング9の全ての外表面が処理液に対する親液性が基板Wよりも高い親液面とされている。
【0038】
また、支持リング9は、スピンベース8に一体回転可能に連結されている。具体的には、スピンベース8と平板部57との間に複数の連結部材62が介在しており、これらの連結部材62によって、支持リング9がスピンベース8に一体回転可能に連結されている。支持リング9は、モータ10(図1参照)の駆動力により、スピンベース8および回転軸7とともに回転軸線L1まわりに一体回転させられる。回転軸線L1は、支持リング9により支持される基板Wの中心を通る鉛直な軸線である。
【0039】
図3に示すように、複数の連結部材62は、支持リング9の周方向に間隔を隔てて配置されている。また、図2に示すように、複数の連結部材62は、スピンベース8に対して平板部57を上方に離隔させた状態で、支持リング9をスピンベース8に連結している。スピンベース8の上面と平板部57の下面との間の鉛直方向への間隔G1は、狭くされている(たとえば0.5mmに設定されている。)。スピンベース8と平板部57との間の鉛直方向への間隔G1を狭くすることにより、狭空間S1の高さが低減され、狭空間S1の体積が一層小さくされている。
【0040】
また、平板部57の下面とスピンベース8の上面との間には、水平方向に広がる連通部としての隙間63が形成されている。この隙間63は、支持リング9の内側の空間に連通している。したがって、隙間63は、スピンベース8の上面と基板Wの下面との間に形成される狭空間S1に連通している。狭空間S1は、この隙間63によって、支持リング9の周囲の空間に連通されている。隙間63は、支持リング9の筒状部58によってその周囲が取り囲まれており、処理液のミストやパーティクルなどの異物の進入が抑制または防止されている。
【0041】
支持リング9によって基板Wの下面周縁部が支持された状態で、スピンベース8および支持リング9を低回転速度(たとえば10〜30rpm程度)で回転させると、支持リング9に支持された基板Wが、その中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに回転する。このとき、支持リング9に支持された基板Wは、支持リング9との間に生じる摩擦力により、支持リング9に対して滑ることなく支持リング9と一体回転する。
【0042】
一方、支持リング9によって基板Wの下面周縁部が支持された状態で、スピンベース8および支持リング9を所定の回転速度(たとえば数百rpm以上)で回転させると、スピンベース8の上面と基板Wの下面との間の形成された狭空間S1が負圧となり、支持リング9によって支持された基板Wが、スピンチャック3に吸着保持される。
すなわち、基板Wおよびスピンベース8を前記所定の回転速度で回転させると、狭空間S1に存在する気体には外向きの力(回転軸線L1から離れる方向への遠心力)が作用する。また、狭空間S1は、連通部としての隙間63によって支持リング9の周囲の空間に連通されている。さらに、基板Wの下面周縁部が全周にわたって支持リング9に支持されているので、基板Wの下面周縁部と支持リング9との間は、ほぼ密閉された状態となっている。したがって、基板Wおよびスピンベース8が前記所定の回転速度で回転されると、狭空間S1に存在する気体は遠心力によって隙間63から排出され、狭空間S1が負圧となる。そのため、支持リング9によって支持された基板Wは、スピンチャック3に吸着保持され、この状態で支持リング9とともに回転軸線L1まわりに回転する。これにより、基板Wと支持リング9とを回転軸線L1まわりに一体回転させることができる。支持リング9によって支持された基板Wは、基板Wの下面周縁部以外の部分がスピンチャック3に対して非接触となった状態で、スピンチャック3に吸着保持されるようになっている。
【0043】
次に、支持リング9に対して基板Wを載置するための構成について説明する。以下では、図1、図2および図3を参照する。
支持リング9に対する基板Wの載置は、スピンベース8に取り付けられた複数の突上げピン64により行われる。各突上げピン64は、鉛直方向に延びる軸部65と、軸部65の上端に連結された上端部66とを有している。上端部66の上面には、球面状の微少突起67が形成されている。複数の突上げピン64は、微少突起67を基板Wの下面に点接触させることにより、当該基板Wを協働して支持することができる。
【0044】
複数の突上げピン64は、それぞれ、スピンベース8を厚み方向(図2では、紙面の上下方向)に貫通する複数の貫通孔68を挿通している。各突上げピン64は、スピンベース8に対して上下動可能に取り付けられている。また、各突上げピン64は、スピンベース8に対して一体回転可能に取り付けられている。
図3に示すように、複数の貫通孔68は、支持リング9と同心の所定の円周上で間隔を隔てて配置されている。同様に、複数の突上げピン64も、支持リング9と同心の所定の円周上で間隔を隔てて配置されている。また、図2に示すように、各貫通孔68には、環状のシール69が保持されている。各突上げピン64の軸部65は、対応するシール69を挿通している。これにより、各突上げピン64の軸部65とスピンベース8との間が封止されている。各突上げピン64は、対応するシール69に対して上下動可能となっている。
【0045】
また、各突上げピン64の軸部65の下端は、回転軸7を取り囲む円環状の支持部材70に連結されている。複数の突上げピン64は、上端の高さが揃えられた状態で支持部材70に連結されている。支持部材70の下方には、プッシャ71が配置されており、支持部材70は、プッシャ71によって上昇される。プッシャ71は、本体部72に対してロッド73を上方に進出させることにより、支持部材70を上昇させることができる。プッシャ71が支持部材70を上昇させることにより、複数の突上げピン64が鉛直上方に一体的に上昇される。プッシャ71は、各突上げピン64の上端部66が支持リング9よりも上方となる上位置(図2における上側の突上げピン64の位置)まで各突上げピン64を上昇させることができる。
【0046】
また、各突上げピン64の軸部65には、コイルばね74が外嵌されている。各コイルばね74は、スピンベース8と支持部材70との間で鉛直方向に圧縮されている。各コイルばね74の上端は、スピンベース8の下面に係合しており、各コイルばね74の下端は、支持部材70の上面に係合している。各突上げピン64は、複数のコイルばね74の弾性復元力により、上端部66の上面(微少突起67の周囲の面)がスピンベース8の上面と同じ高さになる下位置で待機させられている。
【0047】
プッシャ71により各突上げピン64が上位置まで上昇されると、各コイルばね74がさらに圧縮され弾性変形する。そして、各突上げピン64が上位置に達した後、プッシャ71のロッド73が降下されると、複数のコイルばね74の弾性復元力により、各突上げピン64が降下していく。これにより、各突上げピン64を上位置から下位置に降下させることができる。
【0048】
処理室2内に基板Wを搬入して、支持リング9に基板Wを載置するときは、最初に、プッシャ71により支持部材70が上昇され、各突上げピン64が上位置まで上昇される。そして、洗浄液ノズル4およびリンス液ノズル5をスピンチャック3の上方から退避させた状態で、図示しない搬送ロボットによって処理室2内に基板Wが搬入され、複数の突上げピン64上に基板Wが載置される。その後、プッシャ71のロッド73が降下されていき、コイルばね74の弾性復元力により各突上げピン64が下位置まで降下される。複数の突上げピン64に載置された基板Wは、各突上げピン64が降下する過程で、スプラッシュガード6に形成された開口56を通過し、支持リング9のテーパ面60上に載置される。これにより、支持リング9に基板Wが載置される。
【0049】
一方、支持リング9から基板Wを払い出すときは、プッシャ71により支持部材70を上昇させ、各突上げピン64を上位置まで上昇させる。支持リング9に支持された基板Wは、各突上げピン64が上昇する過程で、複数の突上げピン64上に移動し、スプラッシュガード6に形成された開口56を通過する。そして、複数の突上げピン64により支持された基板Wが、上位置において、搬送ロボットによって受け取られ、処理室2から搬出される。このとき、洗浄液ノズル4およびリンス液ノズル5は、スピンチャック3の上方から退避されている。これにより、支持リング9から基板Wが払い出され、処理室2から基板Wが搬出される。
【0050】
このように、本実施形態では、搬送ロボットから支持リング9に基板Wを直接載置するのではなく、複数の突上げピン64を介して支持リング9に基板Wを載置することができる。したがって、たとえば搬送ロボットが基板Wの下面を支持する形式のものである場合でも、スピンベース8などに搬送ロボットを衝突させることなく、支持リング9に基板Wを載置することができる。これにより、支持リング9に対して基板Wを確実に載置することができる。同様に、複数の突上げピン64を用いることにより、スピンベース8などに搬送ロボットを衝突させることなく、支持リング9から基板Wを確実に払い出すことができる。
【0051】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
この基板処理装置1は、制御部75を備えている。制御部75は、モータ10、ノズル揺動駆動機構28,33、昇降機構41、プッシャ71などの動作を制御する。また、基板処理装置1に備えられたバルブの開閉、および流量調整バルブの開度の調整は、制御部75によって制御される。
【0052】
図5は、基板処理装置1による基板Wの処理例を説明するための工程図である。また、図6〜図8は、それぞれ、基板Wの処理中におけるスピンチャック3の図解的な側面図である。
以下では、図1および図5を参照して、基板処理装置1による基板Wの処理例について説明する。また、この処理例の各処理工程において、図2、および図6〜図8を適宜参照する。
【0053】
未処理の基板Wは、図示しない搬送ロボットによって処理室2に搬入され(ステップS11)、複数の突上げピン64(図2参照)を介して支持リング9上に載置される。このとき、洗浄液ノズル4およびリンス液ノズル5は、スピンチャック3の上方から退避されている。支持リング9によって基板Wが支持されることにより、スピンベース8の上面と当該基板Wの下面との間には、水平方向に沿う狭空間S1が形成される。
【0054】
次に、基板Wの上面および下面に対する洗浄処理が同時に行われる(ステップS12)。具体的には、最初に、制御部75によりノズル揺動駆動機構28が制御されて、洗浄液ノズル4が基板Wの中心部の上方に配置される。そして、制御部75により昇降機構41が制御されて、スプラッシュガード6の内構成部材34が回収位置(図1において二点鎖線で示す内構成部材34の位置)に移動させられる。これにより、外構成部材35に設けられた洗浄液捕獲部54がスピンチャック3に保持された基板Wの周端面に対向する。
【0055】
次に、制御部75により下側ガスバルブ21が開かれて、下側ガス吐出口19から所定の吐出流量で窒素ガスが吐出される。下側ガス吐出口19から吐出された窒素ガスは、外方(回転軸線L1から離れる方向)に向かって狭空間S1を広がっていき、平板部57の下面とスピンベース8の上面との間の隙間63を通って狭空間S1から排出される。
隙間63から外方に窒素ガスを吹き出させることにより、処理液のミストやパーティクルなどの異物が、隙間63を介して狭空間S1に進入することを抑制または防止することができる。また、この実施形態では、スピンベース8と平板部57との間の鉛直方向への間隔G1が狭くされているので(図2参照)、異物が、隙間63を介して狭空間S1に進入することを一層確実に抑制または防止することができる。これにより、異物が基板Wの下面に付着して、当該下面が汚染されることを抑制または防止することができる。
【0056】
続いて、制御部75によりモータ10が制御されて、所定の回転速度(たとえば数百rpm以上)でスピンベース8が回転させられる。これにより、支持リング9によって支持された基板Wが、スピンベース8に対して非接触の状態で、スピンチャック3に吸着保持され、支持リング9とともに前記所定の回転速度で回転軸線L1まわりに一体回転する。このとき下側ガス吐出口19からの窒素ガスの吐出流量は、制御部75によりガス流量調整バルブ22の開度が制御されて、スピンチャック3による基板Wの吸着状態が維持される量に予め調整されている。
【0057】
次に、制御部75により洗浄液バルブ26および下側洗浄液バルブ16が開かれて、洗浄液ノズル4および下面ノズル13から同一の洗浄液が吐出される。洗浄液ノズル4から吐出された洗浄液は、図6に示すように、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域に洗浄液が供給され、基板Wの上面中心部から上面周縁部に向かう流れを有する洗浄液の液膜が基板Wの上面に沿って形成される。このようにして、基板Wの上面に対する洗浄処理が行われる。
【0058】
基板Wの上面に対する洗浄処理において基板Wの上面周縁部に達した洗浄液は、遠心力によって拡張面61に移動していく。したがって、図6に示すように、拡張面61上には、基板W上に形成された洗浄液の液膜に連なる洗浄液の液膜が形成される。前述のように、拡張面61は、処理液に対する親液性が基板Wよりも高い親液面とされているので、基板Wの上面周縁部に達した洗浄液は、拡張面61によって外方への移動が促され、拡張面61に向かって円滑に移動していく。さらに、拡張面61が、支持リング9に支持された基板Wの上面よりも低くされている場合には、基板Wの上面周縁部に達した洗浄液が重力により拡張面61へと円滑に移動していく。これにより、基板Wからの処理液の排出性が向上されている。したがって、基板W上の洗浄液を後続の洗浄液によって確実に置換して、基板Wの上面に対する洗浄処理を効率的に行うことができる。
【0059】
また、拡張面61上に形成された洗浄液の液膜は、図6に示すように、液滴となって拡張面61の外周縁から外方に飛散し、拡張面61から排出される。すなわち、拡張面61を有する支持リング9により基板Wを支持させることにより、洗浄液の飛散点が基板Wの外方に移動されている。また、洗浄液の飛散点である拡張面61の外周縁が外構成部材35の上壁部45によって覆われているので、スプラッシュガード6により覆われた空間で洗浄液を飛散させることができる。これにより、飛散した洗浄液をスプラッシュガード6によって確実に捕獲することができる。
【0060】
拡張面61の外周縁から外方に排出された洗浄液は、内構成部材34の上壁部37と外構成部材35の上壁部45との間を通って回収溝47に導かれる。このとき、拡張面61から勢い良く外方に飛散する洗浄液は、洗浄液捕獲部54(主体部51の下面)によって受け止められ回収溝47に導かれる。より具体的には、主体部51の下面が中心側(回転軸線L1に近づく方向)に向かって斜め上方に傾斜しているので、主体部51の下面に衝突した洗浄液は、下方に跳ね返り、回収溝47に導かれる。拡張面61から排出された洗浄液を下方に跳ね返らせることにより、拡張面61から排出された洗浄液が基板W側に戻って、当該基板に付着(再付着)することを抑制または防止することができる。これにより、洗浄液の再付着による基板Wの汚染を抑制または防止することができる。
【0061】
一方、下面ノズル13から吐出された洗浄液は、図6に示すように、基板Wの下面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面に沿って中心部から周縁部に向かって広がっていく。これにより、基板Wの下面全域に洗浄液が供給され、その中心部から周縁部に向かう流れを有する洗浄液の液膜が基板Wの下面に沿って形成される。このようにして、基板Wの下面に対する洗浄処理が行われ、基板Wの上面および下面に対する洗浄処理が同時に行われる。
【0062】
また、基板Wの下面に対する洗浄処理において下面ノズル13から吐出された洗浄液は、平板部57の下面とスピンベース8の上面との間の隙間63を通って、狭空間S1から排出される。そして、狭空間S1から排出された洗浄液は、図6に示すように、支持リング9の筒状部58の内周面とスピンベース8の外周面との間を通って流下し、排液溝46に飛入する。これにより、使用済みの洗浄液が排液される。
【0063】
基板Wの下面に対する洗浄処理において、下面ノズル13からの洗浄液の吐出流量は、狭空間S1が液密にならず、狭空間S1と支持リング9の周囲の空間との連通状態が維持される量に設定されている。具体的には、膜厚がたとえば数μm〜数百μmの洗浄液の液膜が基板Wの下面に沿って形成され、さらに、隙間63が洗浄液によって封止されないように、下面ノズル13からの洗浄液の吐出流量が設定されている。これにより、基板Wの下面に対する洗浄処理において、スピンチャック3による基板Wの吸着状態が維持されるようになっている。
【0064】
基板Wの上面および下面に対する洗浄処理が所定時間にわたって行われた後は、制御部75により洗浄液バルブ26および下側洗浄液バルブ16が閉じられて、基板Wの上面および下面への洗浄液の供給が停止される。
次に、基板Wの上面および下面に対するリンス処理が同時に行われる(ステップS13)。具体的には、最初に、制御部75により昇降機構41が制御されて、図7に示すように、リンス液捕獲部39がスピンチャック3に保持された基板Wの周端面に対向する排液位置まで内構成部材34が移動させられる。そして、制御部75により2つのノズル揺動駆動機構28,33が制御されて、洗浄液ノズル4が基板W上から退避された後、リンス液ノズル5が基板Wの中心部の上方に配置される。このとき、スピンベース8は、所定の回転速度(たとえば数百rpm以上)で回転されており、下側ガス吐出口19からはスピンチャック3による基板Wの吸着状態が維持される量で窒素ガスが吐出されている。
【0065】
次に、制御部75によりリンス液バルブ31および下側リンス液バルブ17が開かれて、リンス液ノズル5および下面ノズル13から同種のリンス液が吐出される。リンス液ノズル5から吐出されたリンス液は、図7に示すように、基板Wの上面中心部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面中心部から周縁部に向かって瞬時に広がっていく。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給され、リンス液によって基板W上から洗浄液が洗い流される。このようにして、基板Wの上面に対するリンス処理が行われる。
【0066】
基板Wの下面に対するリンス処理において基板Wの上面に供給されたリンス液は、基板Wの上面周縁部から拡張面61に向かって外方に移動していき、図7に示すように、液滴となって拡張面61の外周縁から排出される。このとき、拡張面61から勢い良く外方に飛散するリンス液の液滴は、リンス液捕獲部39(上壁部37の上端部の内周面)によって受け止められ排液溝46に導かれる。より具体的には、上壁部37の内周面が中心側(回転軸線L1に近づく方向)に向かって斜め上方に傾斜しているので、上壁部37の内周面に衝突したリンス液は、下方に跳ね返り、排液溝46に導かれる。拡張面61から排出されたリンス液を下方に跳ね返らせることにより、拡張面61から排出されたリンス液が基板W側に戻って、当該基板に付着(再付着)することを抑制または防止することができる。これにより、リンス液の再付着による基板Wの汚染を抑制または防止することができる。
【0067】
一方、下面ノズル13から吐出されたリンス液は、図7に示すように、基板Wの下面中央部に着液し、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面に沿って中心部から周縁部に向かって広がっていく。これにより、基板Wの下面全域に洗浄液が供給され、リンス液によって基板Wの下面から洗浄液が洗い流される。このようにして、基板Wの下面に対するリンス処理が行われ、基板Wの上面および下面に対するリンス処理が同時に行われる。
【0068】
基板Wの下面に対するリンス処理において下面ノズル13から吐出されたリンス液は、平板部57の下面とスピンベース8の上面との間の隙間63を通って、狭空間S1から排出される。そして、狭空間S1から排出されたリンス液は、図7に示すように、支持リング9の筒状部58の内周面とスピンベース8の外周面との間を通って流下し、排液溝46に飛入する。これにより、使用済みのリンス液が排液される。
【0069】
基板Wの下面に対するリンス処理において、下面ノズル13からのリンス液の吐出流量は、狭空間S1が液密にならず、狭空間S1と支持リング9の周囲の空間との連通状態が維持される量に設定されている。具体的には、膜厚がたとえば数μm〜数百μmのリンス液の液膜が基板Wの下面に沿って形成され、さらに、隙間63がリンス液によって封止されないように、下面ノズル13からのリンス液の吐出流量が設定されている。これにより、基板Wの下面に対するリンス処理において、スピンチャック3による基板Wの吸着状態が維持されるようになっている。
【0070】
基板Wの上面および下面に対するリンス処理が所定時間にわたって行われた後は、制御部75によりリンス液バルブ31および下側リンス液バルブ17が閉じられて、基板Wの上面および下面へのリンス液の供給が停止される。
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS14)。具体的には、内構成部材34が排液位置(図1において実線で示す内構成部材34の位置)に位置する状態で、制御部75によりモータ10が制御されて、高回転速度(たとえば数千rpm)でスピンベース8が回転される。このとき下側ガス吐出口19からは、スピンチャック3による基板Wの吸着状態が維持される吐出流量で、窒素ガスが吐出されている。
【0071】
スピンベース8が高回転速度で回転されることにより、支持リング9に支持された基板Wは、スピンチャック3に吸着保持された状態で、支持リング9とともに高回転速度で回転軸線L1まわりに一体回転する。また、基板Wに付着しているリンス液は、図8に示すように、液滴となった状態で遠心力によって基板W上を流れていき、基板Wの上面周縁部から拡張面61に移動していく。これにより、基板W上からリンス液が排液され、基板Wが乾燥する。また、基板Wから拡張面61に移動したリンス液の液滴は、遠心力によって拡張面61の外周縁からその周囲に振り切られ、内構成部材34によって排液溝46に導かれる。
【0072】
基板Wの高速回転が所定時間にわたって続けられた後は、モータ10の回転が停止され、スピンチャック3による基板Wの回転が停止される。その後、処理済みの基板Wが、複数の突上げピン64(図2参照)によって支持リング9から受け取られ、当該基板Wが、搬送ロボットによって処理室2から搬出される(ステップS15)。
以上のように本実施形態では、拡張面61を有する支持リング9により基板Wを支持させることにより、処理液による処理(洗浄処理、リンス処理)や乾燥処理における処理液の飛散点を基板Wの外方に移動させることができる。
【0073】
また、スプラッシュガード6が、処理液の飛散点である拡張面61の外周縁をその全周にわたって上方から覆っているので、スプラッシュガード6により覆われた空間で処理液を飛散させて、飛散した処理液をスプラッシュガード6によって確実に捕獲することができる。
さらに、内構成部材34や外構成部材35に衝突して基板W側に跳ね返った処理液の液滴や、この跳ね返った液滴と拡張面61から外方に飛散する後続の液滴との衝突により基板W側に跳ね返った処理液の液滴を内構成部材34および外構成部材35によって受け止めて、この処理液の液滴が基板W側に戻ることを抑制または防止することができる。
【0074】
さらにまた、上壁部45に設けられた水平部52aが、支持リング9に近接されているので、基板W側に跳ね返ってくる比較的粒径の大きな処理液の液滴や、比較的粒径の小さな処理液の液滴群(処理液のミスト)が、水平部52aと拡張面61との間を通って水平部52aよりも基板W側に移動することを一層確実に抑制または防止することができる。これにより、基板Wから排出された処理液が基板Wに付着(再付着)することを一層確実に抑制または防止することができ、処理液の再付着による基板Wの汚染を一層確実に抑制または防止することができる。
【0075】
また、この実施形態では、スプラッシュガード6の上壁部45が支持リング9に支持された基板Wの外方において拡張面61を全周にわたって上方から覆っているので、上壁部45の内側の空間(開口56)を通過させることにより、基板Wをスプラッシュガード6に衝突させることなく、支持リング9に対する基板Wの搬入および搬出を行うことができる。これにより、支持リング9に対する基板Wの搬入および搬出を円滑に行うことができる。
【0076】
さらに、この実施形態では、スピンベース87および支持リング9の回転速度を高めることにより、支持リング9に支持された基板Wを吸着保持できるので、たとえば、複数の挟持部材により基板Wの周端面を挟持して当該基板Wを保持するメカニカルチャック機構や、狭空間S1内の空気を吸引することにより基板Wを吸着保持するためのバキューム機構などの保持機構を別途設けなくてもよい。そのため、基板処理装置1の構造を簡易にすることができ、基板処理装置1の製造コストを低減することができる。また、基板処理装置1を小型化することもできる。さらに、メカニカルチャック機構を設けなくてもよいので、たとえば前述の乾燥処理において、基板W上で外方に移動する処理液が挟持部材に当たって跳ね返ったり、回転軸線L1まわりの挟持部材の回転により気流が乱れたりして、基板Wから排出された処理液(処理液のミストなど)が当該基板Wに再付着することを抑制または防止することができる。これにより、処理液の再付着による基板Wの汚染を抑制または防止することができる。
【0077】
さらにまた、この実施形態では、支持リング9のテーパ面60が基板Wの下面周縁部を線接触で支持するようになっているので、基板Wとテーパ面60との接触面積が小さくなっている。これにより、パーティクルなどの異物がテーパ面60から基板Wに移って、当該基板Wが汚染されることを抑制または防止することができる。また、スピンチャック3によって基板Wを吸着保持するときに、基板Wの下面周縁部以外の部分をスピンチャック3に対して非接触とすることができるので、スピンチャック3から基板Wに異物が移って、当該基板Wが汚染されることを抑制または防止することができる。
【0078】
以下では、図9〜図13を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。この図9〜図13において、前述の図1〜図8に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図8と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
前述の実施形態では、支持リング9の平板部57が円環状であり、その断面形状が、その内周側に向かって先細りとなる楔状をなしている場合について説明したが、平板部57の形状はこれに限らない。具体的には、たとえば、平板部57が図9〜図12に示す形状にされていてもよい。また、前述の実施形態では、平板部57の外周部から鉛直下方に延びる筒状部58が支持リング9に設けられている場合について説明したが、これに限らず、筒状部58は、省略されていてもよいし、たとえば図13に示す形状にされていてもよい。
【0079】
図9に示す支持リング109(保持部)の平板部157は、円環状をなす平板状にされていて、その断面形状(鉛直面に沿う断面形状)が矩形にされていている。平板部157の上面および下面は、それぞれ円環状の水平面となっている。また、平板部157の内径は、基板Wの外径よりも小さくされており、平板部157の外径は、基板Wの外径よりも大きくされている。この実施形態では、平板部157の外径が、スピンベース8の外径とほぼ同じ大きさにされている。支持リング109は、平板部157がスピンベース8と同軸となるように、スピンベース8の上面周縁部に沿って水平に配置されている。基板Wの下面周縁部は、平板部157の上面内周部によって支持されている。平板部157によって基板Wを支持した状態で、基板Wよりも外方に位置する平板部157の上面の一部が、基板Wの外周縁を外方に拡張するように、当該基板Wの全周を取り囲む拡張面161となっている。
【0080】
また、図10に示す支持リング209(保持部)の平板部257は、円環状をなす平板状にされていて、内周上側の角部が全周にわたって下方に切りかかれている。この切りかかれた部分により、支持リング209と同心で円環状をなす環状段部76が形成されている。環状段部76は、平板部257の内周面上端から外方に延びる円環状の水平面77と、この水平面77の外周縁から上方に向かって延びる円筒状の鉛直面78とを有している。水平面77は、内径が基板Wの外径よりも小さくされており、外径が基板Wの外径よりもやや大きくされている。鉛直面78は、高さが基板Wの厚みと同程度にされている。
【0081】
基板Wの下面周縁部は、水平面77によって支持されている。水平面77によって基板Wが支持された状態で、鉛直面78は、基板Wの周端面に近接した位置で対向している。鉛直面78を基板Wの周端面に近接させることで、水平方向への基板Wの位置ずれを抑制または防止することができる。
また、平板部257の上面は、円環状の水平面にされており、水平面77によって基板Wが支持された状態で、基板Wの上面周縁部に連なるように形成されている。この支持リング209の上面が、基板Wの外周縁を外方に拡張するように、当該基板Wの全周を取り囲む拡張面261となっている。
【0082】
また、図11に示す支持リング309(保持部)の平板部357は、円環状をなす平板状にされていて、内周上側の角部が全周にわたって下方に切りかかれている。この切りかかれた部分により、支持リング309と同心で円環状をなす環状段部79が形成されている。環状段部79は、平板部357の内周面上端から外方に延びる円環状のテーパ面80と、このテーパ面80の外周縁から上方に向かって延びる円筒状の鉛直面81とを有している。テーパ面80は、支持リング309の内側に向かって下方に傾斜している。テーパ面80は、内径が基板Wの外径よりも小さくされており、外径が基板Wの外径よりもやや大きくされている。
【0083】
テーパ面80は、線接触で基板Wの下面外周縁を全周にわたって支持することができる。テーパ面80によって基板Wが支持された状態で、鉛直面81は、基板Wの周端面に近接した位置で対向している。鉛直面81を基板Wの周端面に近接させることで、水平方向への基板Wの位置ずれを抑制または防止することができる。
また、平板部357の上面は、円環状の水平面にされており、テーパ面80によって基板Wが支持された状態で、基板Wの上面周縁部に連なるように形成されている。この平板部357の上面が、基板Wの外周縁を外方に拡張するように、当該基板Wの全周を取り囲む拡張面361となっている。
【0084】
また、図12に示す支持リング409(保持部)の平板部457は、図2に示す支持リング9の平板部57と同様の形状にされており、さらに、テーパ面60から上方に突出する複数(3つ以上)の支持部82を有している。図12においては、支持部82を1つだけ図示している。複数の支持部82は、テーパ面60上において、支持リング409の周方向に間隔を隔てて環状に配置されている。
【0085】
各支持部82は、外表面が球面状にされており、点接触で基板Wの下面を支持することができる(いわゆる、プロキシミティボール)。各支持部82は、基板Wの下面においてたとえば外周縁から1〜2mm中心側の位置を支持するように配置されている。支持リング409は、各支持部82を基板Wの下面周縁部に点接触させることにより、これらの支持部82を協働させて基板Wを支持することができる。
【0086】
また、各支持部82のテーパ面60からの突出量は小さくされている。支持リング409は、基板Wの下面周縁部をテーパ面60に近接させた状態で、当該基板Wを支持することができる。複数の支持部82により基板Wを支持した状態で、基板Wの下面周縁部とテーパ面60との間には、支持部82により支持された部分を除き、隙間463が生じるようになっている。スピンベース8の上面と基板Wの下面との間に形成される狭空間S1は、この隙間463により、支持リング409の周囲の空間に連通されている。すなわち、この実施形態では、隙間463が、狭空間S1を支持リング409の周囲の空間に連通させる連通部として機能する。したがって、この実施形態では、図12に示すように、スピンベース8の上面と平板部457の下面との間に隙間を設けずに、スピンベース8の上面に対して平板部457の下面を密着させても、狭空間S1に存在する気体を隙間463から排出させて、狭空間S1を負圧にすることができる。これにより、支持リング409に支持された基板Wを吸着保持することができる。なお、図示はしないが、この実施形態において、スピンベース8の上面と支持リング409の下面との間に、図2に示すような間隔G1を設けるような構成としてもよい。
【0087】
図示はしないが、図9〜図11に示す支持リング109,209,309に、複数の支持部82を設けて、これらの支持部82によって基板Wを支持してもよい。
また、図13に示す支持リング509(保持部)は、平板部57と、この平板部57の外周部から外方に広がりつつ下方に延びる筒状部558とを有している。筒状部558は、スピンベース8の外側に位置しており、隙間63を取り囲んでいる。筒状部558の内周面と、スピンベース8の外周面との間には、所定の隙間が形成されている。
【0088】
この筒状部558により、処理液のミストやパーティクルなどの異物が、隙間63を介して狭空間S1に進入することを抑制または防止することができる。また、筒状部558が平板部57の外周部から外方に広がりつつ下方に延びているので、隙間63から外方に排出された処理液を、筒状部558の内周面により下方に導くことができる。これにより、隙間63から排出された処理液が筒状部558に当たって跳ね返り、再び隙間63に進入することを抑制または防止することができる。その結果、隙間63からの処理液の排出性の低下を抑制または防止することができる。
【0089】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、支持リング9,109,209,309,409,509とスピンベース8とが別体である場合について説明したが、支持リング9,109,209,309,409,509とスピンベース8とが一体形成されていてもよい。具体的には、たとえば図14に示すように、支持リング9、スピンベース8および複数の連結部材62が一体形成されていてもよい。
【0090】
また、前述の実施形態では、保持部として機能する支持リング9,109,209,309,409,509がそれぞれ環状である場合について説明したが、保持部は、環状でなくてもよい。たとえば、平板状の部材を保持部として用いてもよい。この場合、前記平板状の部材に小径の吸引孔を形成し、この吸引孔から基板Wの下面を吸引することにより、前記平板状の部材上で基板Wを吸着保持してもよい。また、ベルヌーイ効果を用いて基板Wの下面を非接触状態で保持するための保持機構を設けて、この保持機構により前記平板状の部材上で基板Wを保持してもよい。
【0091】
また、前述の実施形態では、スプラッシュガード6に内構成部材34が備えられている場合について説明したが、内構成部材34は、省略されていてもよい。さらに、前述の実施形態では、外構成部材35が単一の部材により形成されている場合について説明したが、これに限らず、複数の部材により外構成部材35が形成されていてもよい。たとえば、処理液を受け止めて捕獲するための部材と、捕獲された処理液を集めるための部材とが設けられ、これらの部材が組み合わされることにより外構成部材35が形成されていてもよい。具体的には、たとえば、外構成部材35が外壁部43の中間部で上下に分離されていてもよい。
【0092】
また、前述の実施形態では、スピンベース8の上面中央部に位置する環状の下側ガス吐出口19から上方に向けて窒素ガスを吐出させる場合について説明したが、これに限らず、たとえばスピンベース8の上面周縁部に複数の吐出口を形成し、これらの吐出口から上方に向けて窒素ガスを吐出させてもよい。この場合、スピンベース8と平板部57との間の隙間63から確実に窒素ガスを吹き出させて、この隙間63に異物が進入することを一層確実に抑制または防止することができる。
【0093】
また、前述の実施形態では、処理液に対する親液性が基板Wよりも高い材料によって支持リング9を形成することにより、拡張面61が親液面とされている場合について説明したが、これに限らず、たとえば、処理液に対する親液性が基板Wよりも高い材料によって支持リング9の外表面をコーティングすることにより、拡張面61を親液面としてもよい。
【0094】
また、前述の実施形態では、処理対象となる基板Wとして半導体ウエハを取り上げたが、半導体ウエハに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図2】スピンチャックの図解的な縦断面図である。
【図3】スピンチャックの図解的な平面図である。
【図4】基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図5】基板処理装置による基板の処理例を説明するための工程図である。
【図6】基板の処理中におけるスピンチャックの図解的な側面図である。
【図7】基板の処理中におけるスピンチャックの図解的な側面図である。
【図8】基板の処理中におけるスピンチャックの図解的な側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る支持リングおよびそれに関連する構成の図解的な縦断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る支持リングおよびそれに関連する構成の図解的な縦断面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態に係る支持リングおよびそれに関連する構成の図解的な縦断面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る支持リングおよびそれに関連する構成の図解的な縦断面図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る支持リングおよびそれに関連する構成の図解的な縦断面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係る支持リングおよびそれに関連する構成の図解的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 基板処理装置
3 スピンチャック
4 洗浄液ノズル
5 リンス液ノズル
6 スプラッシュガード
9 支持リング
10 モータ
45 (外構成部材35の)上壁部
61 拡張面
63 隙間
109 支持リング
161 拡張面
209 支持リング
261 拡張面
309 支持リング
361 拡張面
409 支持リング
463 隙間
509 支持リング
L1 回転軸線
S1 狭空間
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持するための保持部、および前記保持部を鉛直な回転軸線まわりに回転させる回転手段を有する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の周囲を取り囲み、当該基板の外方に向かって飛散する処理液の液滴を受け止めるための処理液捕獲部材とを含み、
前記保持部は、基板の全周を取り囲んで当該基板の外周縁を外方に拡張するように設けられた環状の拡張面を有し、
前記処理液捕獲部材は、前記保持部に保持された基板の外方において、前記拡張面の全周縁部を上方から覆う環状の被覆部を有している、基板処理装置。
【請求項2】
前記被覆部は、処理液の液滴が前記拡張面との間を通って当該被覆部よりも前記回転軸線側に進入しないように、前記拡張面に近接されている、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記拡張面は、処理液に対する親液性が基板よりも高い親液面とされている、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記保持部は、基板の下方に空間が生じるように当該基板の下面周縁部を全周にわたって支持できるように形成されたものであり、当該空間を当該保持部の周囲の空間に連通させるための連通部を有している、請求項1〜3の何れか1項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−93191(P2010−93191A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264082(P2008−264082)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】