説明

基板処理装置

【課題】パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置等を提供する。
【解決手段】液槽32は、被処理基板Wを液体に浸漬した状態で保持し、処理容器31では、この液槽32を内部の処理空間310に配置し、当該液槽32内の液体を超臨界状態の流体に置換して被処理基板を乾燥する処理を行う。移動機構352、353は、液槽32を、前記処理容器31内の処理位置と当該処理容器の外部の準備位置との間で移動させ、当該処理容器31に設けられた加熱機構312は、前記流体を超臨界状態としたり、その超臨界状態を維持する一方、冷却機構334、335は、前記処理容器31の外部の準備位置に移動した液槽32を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄などの処理が行われた被処理基板を、超臨界流体を利用して乾燥する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの洗浄液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
例えばウエハの洗浄を行う枚葉式のスピン洗浄装置は、ノズルを用いてウエハの表面に例えばアルカリ性や酸性の薬液を供給しながらウエハを回転させることによってウエハ表面のごみや自然酸化物などを除去する。この場合にはウエハ表面は、例えば純水などによるリンス洗浄により残った薬液が除去された後、ウエハを回転させて残った液体を振り飛ばす振切乾燥などによって乾燥される。
【0004】
ところが半導体装置の高集積化に伴い、こうした液体などを除去する処理において、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0005】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態の流体(超臨界流体)を用いた乾燥方法が知られている。超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0006】
ここで特許文献1には、洗浄部にて洗浄された基板を基板搬送ロボットにより乾燥装置内に搬送し、この乾燥装置内にて基板を超臨界流体と接触させて基板表面に付着している洗浄液を除去する技術が記載されている。この特許文献1に記載の技術では、被処理基板を搬送室に搬入して搬送用のロボットに受け渡し、しかる後、乾燥処理室に移送してから超臨界流体による乾燥を実行するので、処理が開始されるまでの間に被処理基板表面の液体が乾燥してしまいパターン倒れが発生してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−72118号公報:段落0025〜0029、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れや汚染の発生を抑えつつ、被処理基板を乾燥することの可能な基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、被処理基板を保持して液体に浸漬するための液槽と、
この液槽を内部の処理空間に配置し、当該液槽内の液体を超臨界状態の流体に置換してから、この処理空間内を減圧することにより、前記流体を気体にして前記被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
この処理容器に、液状態または超臨界状態で前記流体を供給する流体供給部と、
前記液槽内の液体が排出される排液部と、
前記液槽を、前記処理容器内の処理位置と当該処理容器の外部の準備位置との間で移動させるための移動機構と、
前記処理容器に供給された流体を超臨界状態とし、または、その超臨界状態を維持するために、前記処理空間を加熱する加熱機構と、
前記準備位置に移動した液槽を冷却する冷却機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記液体は揮発性の液体であり、当該液体は前記冷却機構による冷却が行われてから液槽に供給されること。
(b)被処理基板は、前記冷却機構による液槽の冷却が行われてからこの液槽内の液体に浸漬されること。
(c)前記液槽は被処理基板を縦向きに保持するように構成されていること。
(d)前記移動機構は、前記液槽を横方向に移動させるように構成されていること。
(e)前記液槽には、処理容器に形成された搬入出口を開閉する蓋部材が一体に設けられ、前記開口部を塞いでいる蓋部材の開放を阻止するためのストッパ機構を備えること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、処理容器の内外を移動する液槽が当該処理容器の外部の準備位置に移動してきたとき、この液槽を冷却することができる一方、処理容器側では前記液槽とは独立して処理容器を加熱することができる。このため、例えば被処理基板の搬入時には処理容器の外で液槽を冷却して液槽中の液体の蒸発や被処理基板の乾燥を抑制する一方、処理容器は加熱状態を維持し、液槽が処理容器内に移動した後、所定の温度まで処理容器内を昇温する時間を短縮して応答性を向上させるなど、自由度の高い運転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態の洗浄システムの平面図である。
【図2】前記洗浄システム内の洗浄装置の一例を示す縦断側面図である。
【図3】本実施の形態の超臨界処理装置及びウエハの受け渡し機構の一例を示す斜視図である。
【図4】前記超臨界処理装置の外観構成を示す一部破断斜視図である。
【図5】前記超臨界処理装置に設けられている内チャンバーの構成を示す一部破断斜視図である。
【図6】前記超臨界処理装置への各種の処理流体の供給、排出系統を示す説明図である。
【図7】前記超臨界処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図8】前記超臨界処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図9】前記超臨界処理装置の作用を示す第3の説明図である。
【図10】前記超臨界処理装置の作用を示す第4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う洗浄装置2と、超臨界流体を利用して前記洗浄処理後のウエハWを乾燥する超臨界処理装置3とを備えた洗浄処理システム1について説明する。図1は洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図であり、当該図に向かって左側を前方とすると、洗浄処理システム1は、例えば直径300mmの複数枚のウエハWを収納したFOUP7が載置される載置部11と、FOUP7と洗浄処理システム1との間でのウエハWの搬入出が行われる搬入出部12と、搬入出部12と後段のウエハ処理部14との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡し部13と、ウエハWを洗浄装置2、超臨界処理装置3内に順番に搬入して洗浄処理や超臨界処理が行われるウエハ処理部14と、を前方からこの順番に接続した構造となっている。
【0014】
載置部11は、例えば4個のFOUP7が載置可能な載置台として構成され、載置台上に載置された各FOUP7を搬入出部12に接続する。搬入出部12では、各FOUP7との接続面に設けられた不図示の開閉機構により、FOUP7の開閉扉が取り外され、例えば前後方向に進退自在、左右方向に移動自在、及び回動、昇降自在に構成された第1の搬送機構121によって、FOUP7内と受け渡し部13との間でウエハWが搬送される。前後を搬入出部12とウエハ処理部14とに挟まれた受け渡し部13には、例えば8枚のウエハWを載置可能なバッファとしての役割を果たす受け渡し棚131が設けられており、この受け渡し棚131を介してウエハWが搬入出部12とウエハ処理部14との間を搬送される。
【0015】
ウエハ処理部14には、受け渡し部13との間の開口部から前後方向に向かって伸びるウエハ搬送路142が設けられている。そしてこのウエハ搬送路142の手前側から見て左手には、例えば3台の洗浄装置2が当該ウエハ搬送路142に沿って列設されており、同じく右手には、本実施の形態の基板処理装置である例えば2台の超臨界処理装置3が列設されている。ウエハ搬送路142内には、ウエハ搬送路142に沿って移動可能、左右の洗浄装置2、超臨界処理装置3に向けて進退可能、そして回動、昇降可能に構成された第2の搬送機構141が設けられており、既述の受け渡し棚131と各洗浄装置2、超臨界処理装置3との間でウエハWを搬送することができる。ここでウエハ処理部14内に配置される洗浄装置2や超臨界処理装置3の個数は、上述の例に限定されるものではなく、単位時間当たりのウエハWの処理枚数や、洗浄装置2、超臨界処理装置3での処理時間の違いなどにより適宜選択され、またこれら洗浄装置2や超臨界処理装置3のレイアウトも図1に示した例とは異なる配置を採用してもよい。
【0016】
洗浄装置2は例えばスピン洗浄によりウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置2として構成され、例えば図2の縦断側面図に示すように、処理空間を形成するアウターチャンバー21内に配置されたウエハ保持機構23にてウエハWをほぼ水平に保持し、このウエハ保持機構23を鉛直軸周りに回転させることによりウエハWを回転させる。そして回転するウエハWの上方にノズルアーム24を進入させ、その先端部に設けられた薬液ノズル241から薬液及びリンス液を予め定められた順に供給することによりウエハの面の洗浄処理が行われる。また、ウエハ保持機構23の内部にも薬液供給路231が形成されており、ここから供給された薬液及びリンス液によってウエハWの裏面洗浄が行われる。
【0017】
洗浄処理は、例えばアルカリ性の薬液であるSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去→リンス液である脱イオン水(DeIonized Water:DIW)によるリンス洗浄→酸性薬液である希フッ酸水溶液(以下、DHF(Diluted HydroFluoric acid))による自然酸化膜の除去→DIWによるリンス洗浄がこの順に行われる。これらの薬液はアウターチャンバー21内に配置されたインナーカップ22やアウターチャンバー21に受け止められて排液口221、211より排出される。またアウターチャンバー21内の雰囲気は排気口212より排気されている。
【0018】
薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハ保持機構23の回転を停止してから当該表面に乾燥防止用のIPA(IsoPropyl Alcohol)を供給し、ウエハWの表面及び裏面に残存しているDIWと置換する。こうして洗浄処理を終えたウエハWは、その表面にIPAが液盛りされた状態のまま例えばウエハ保持機構23に設けられた不図示の受け渡し機構により第2の搬送機構141に受け渡され、洗浄装置2より搬出される。
【0019】
洗浄装置2での洗浄処理を終えたウエハWは表面にIPAの液盛りがされた状態のまま超臨界処理装置3に搬送され、超臨界流体を利用して表面の液体を除去し、ウエハWを乾燥する超臨界処理が行われる。以下、本実施の形態に係る超臨界処理装置3の構成について図3〜図6を参照しながら説明する。図3〜図10においては、図に向かって左側を前方として説明を行う。
【0020】
図3は、各超臨界処理装置3が格納されている筐体401内の様子を示す一部破断斜視図である。超臨界処理装置3は各筐体401内の例えば床面上に配置されており、その上方側の空間は、超臨界処理装置3と既述の第2の搬送機構141との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構が設けられている。本例では、この受け渡し機構として、ウエハWを保持して搬送する受け渡しアーム41と、超臨界処理前の、超臨界処理装置3へと搬入されるウエハWが専用に載置される搬入棚42と、超臨界処理を終え、超臨界処理装置3から搬出されたウエハWが専用に載置される搬出棚43と、が設けられている。
【0021】
受け渡しアーム41は、例えば筐体401内の底部に配置されている超臨界処理装置3の上方側、後方寄りの位置に配置されており、先端部に設けられたフォーク411によってウエハWの側周面を把持することなどにより、当該ウエハWを1枚ずつ保持することが可能な、多関節型の6軸アームである。また受け渡しアーム41は、仕切板406によって仕切られた空間内に設けられており、受け渡しアーム41の作動によって発生するパーティクルなどがウエハWの搬送される空間へ進入しにくくなっている。図中、405はウエハWの受け渡しを行う空間に受け渡しアーム41を進入させるためのアクセス口である。
【0022】
搬入棚42及び搬出棚43は、例えば超臨界処理装置3の上方側、前方寄りの位置に2つの棚42、43が上下に並ぶように設けられており、超臨界処理前のウエハWが置かれる搬入棚42を下方側に、超臨界処理後のウエハWが置かれる搬出棚43を上方側に配置した構成となっている。これら搬入、搬出棚42、43は、ウエハWを1枚ずつ水平に保持することが可能な載置棚として構成され、例えば各棚42、43に設けられた3本の昇降ピンを介して第2の搬送機構141及び受け渡しアーム41との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0023】
さらに搬入棚42は、液体を満たすことが可能な皿形状に構成され、不図示のIPA供給部から供給されたIPA中に浸漬した状態でウエハWを保持することにより、ウエハW表面の自然乾燥を防いで、超臨界処理前のパターン倒れの発生を防いでいる。
そして筐体401内を手前側から見ると、これら搬入棚42及び搬出棚43の配置位置を手前側から見ると、これらの棚42、43は、ウエハWの受け渡しを行って超臨界処理の準備をする準備位置にて上面に向かって開口する内チャンバー32の上方側、側方寄りの位置に配置されている。これにより、上面に向けて開口する内チャンバー32へのウエハWの搬送経路が確保され、搬入棚42や搬出棚43と干渉することなく迅速にウエハWを搬送することができる。
【0024】
図3中、403は洗浄装置2にて洗浄処理を終えたウエハWが搬入される搬入口、404は超臨界処理を終えたウエハWが搬出される搬出口であり、第2の搬送機構141は、これらの搬入、搬出口403、404を介して筐体401内に進入する。また図3中、402は筐体401内に清浄空気のダウンフローを形成するためのFFU(Fan Filter Unit)、407は当該ダウンフローの排気口である。
【0025】
各筐体401内に設けられた例えば超臨界処理装置3は、互いにほぼ同様の構成を備えており、超臨界流体を利用してウエハW表面に気液界面を形成せずにウエハWを乾燥する超臨界処理を実行することができる。図4、図5に示すように超臨界処理装置3は、超臨界処理が行われる処理容器である外チャンバー31と、ウエハWをIPA中に浸漬した状態で外チャンバー31内に搬入する内チャンバー32とを備えている。内チャンバー32は、本実施の形態の液槽に相当している。
【0026】
図4の各図に示すように外チャンバー31は、縦方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されており、図6に示すように、その内部には内チャンバー32を格納することが可能な処理空間310が形成されている。図1に示すように外チャンバー31は幅の狭い面をウエハ搬送路142の方向に向けて配置されており、その前面には内チャンバー32を搬入出するための開口部311が設けられている(図4(a))。
【0027】
また図6に示すように外チャンバー31には例えば抵抗発熱体からなるヒーター312が設けられていて、電源部313からの給電により、外チャンバー31の本体を加熱し、これにより処理空間310内に供給された例えば液体COを超臨界状態にすることができる。また本例における電源部313はその出力を増減することが可能であり、外チャンバー31本体及び処理空間310の温度を調整することができる。ヒーター312は本実施の形態の加熱機構に相当する。
【0028】
さらに図4に示すように、例えば外チャンバー31の本体側面の底部寄りの位置にはCO供給ライン511が接続されていて、このCO供給ライン511は、図6に示すようにバルブV1、フィルター及びポンプからなる送液機構512を介してCO貯留部51に接続されている。CO貯留部51には液体COが貯留されており、これらCO供給ライン511、送液機構512及びCO貯留部51は、外チャンバー31の処理空間310内に液体COを供給するための流体供給部を構成している。
【0029】
また図4、図6に示す、例えば外チャンバー31本体の天井面に設けられた531は、処理空間310内に液体COを供給する際に処理空間310内の雰囲気を排気し、また超臨界処理を終えた後の超臨界状態のCOを排気して処理容器31内を減圧するための排気ラインであり、バルブV4の開閉により処理空間310内を排気、密閉する役割を果たす。ここでバルブV4は圧力調整弁の役割も果たしており、処理空間310内の圧力を調整しながら処理空間310内の雰囲気を排気することができる。また、処理後の超臨界状態のCOを排気するという観点において、排気ライン531は本実施の形態の排気部に相当している。
【0030】
図4(a)、図5に示すように内チャンバー32は例えば2枚のウエハWを縦向きに格納することが可能に形成された容器であり、乾燥防止用の液体であるIPA中に浸漬した状態でウエハWを保持できる。内チャンバー32は、処理空間310より幅の狭い、縦方向に扁平な形状に形成されており、内チャンバー32を処理空間内310に配置したとき、外チャンバー31の内面と内チャンバー32の外面との間には、処理空間310に供給された液体COや超臨界状態のCOを通流させるための空間が形成されるうになっている。本例に係る内チャンバー32は、超臨界流体を扱う処理空間310の容積をできるだけ小さくする必要性と、洗浄処理システム1全体のウエハWの処理スピードとの兼ね合いから、例えば2枚のウエハWを格納する構成とした。但し、内チャンバー32に格納可能なウエハWの枚数はこれに限られるものではなく、1枚のみまたは3枚以上のウエハWを格納する構成としてもよい。また、内チャンバー32に複数枚のウエハWを格納する場合には、例えば隣り合うウエハWにて、パターンが形成される面同士を対向させるように配置することにより当該面へのパーティクル等の付着を避けるようにするとよい。ウエハWの枚数が奇数枚の場合には、残る1枚のウエハWは、パターンの形成面を他のウエハW側に向け、内チャンバー32の壁面に対向させないようにすることが好ましい。
【0031】
図5に示すように内チャンバー32の上面には開口部が設けられており、受け渡しアーム41に保持されたウエハWはこの開口部を介して内チャンバー32内に搬入される。また内チャンバー32の開口部には例えば鋸歯状の切り欠き部322が形成されており、処理空間310内の超臨界流体を内チャンバー32内へと流れ込みやすくしている。但し図示の便宜上、図4(a)、図5、図6以外の図では内チャンバー32の切り欠き部322の記載は省略してある。
【0032】
また内チャンバー32の底部はウエハWの形状に沿って湾曲した形状となっており、その内部側の底面には2枚のウエハWを保持するためのウエハ保持部材323が設けられている。ウエハ保持部材323には、ウエハWの形状に沿った溝が形成されており、ウエハWの周縁部をこの溝内に嵌合させてウエハWを縦向きに保持することができる。またウエハ保持部材323は、内チャンバー32に供給されたIPAが各ウエハWの表面に十分に接触し、且つ、ウエハWを保持したフォーク411が内チャンバー32内に進入しても、ウエハWやフォーク411が他のウエハWや内チャンバー32本体と干渉しないように溝の配置位置や溝同士の間隔が調整されている。
【0033】
図5に示すように例えば内チャンバー32の底面には、ウエハ保持部材323の形成されていない領域が設けられており、ここには内チャンバー32内にIPAを供給し、また排出するための排液部である開口部324が設けられている。この開口部324はIPAの供給・排液ライン524と接続されており、当該供給・排液ライン524は後述の蓋部材321の内部を通って切替弁525に接続されている(図6)。後述するように内チャンバー32は前後方向に移動可能に構成されているので、供給・排液ライン524は例えば耐圧性を備えたフレキシブル配管などにより構成され、内チャンバー32の移動に伴って変形することができる。図6中、V3はバルブである。
【0034】
切替弁525は、内チャンバー32にIPAを供給するためのIPA供給ライン521、内チャンバー32から排出されたIPAを回収するための回収ライン523及び上述の供給・排液ライン524と接続されている。IPA供給ライン521は、開閉バルブV2、フィルター及びポンプからなる送液機構522を介してIPAを貯留したIPA貯留部52に接続されている。一方、回収ライン523は内チャンバー32から排出されたIPAを回収可能なようにIPA貯留部52に直接接続されている。
【0035】
図5に示すように内チャンバー32は、例えば幅の狭い側面部にて厚板状の蓋部材321に固定されている。そしてこの蓋部材321を横方向に前後に移動させることによって、受け渡しアーム41との間でのウエハWの受け渡しが行われる外チャンバー31外部の準備位置と、処理空間310内の処理位置との間で内チャンバー32を移動させることができる。また図6に破線で示すように、処理位置に内チャンバー32を搬送した蓋部材321は外チャンバー31の開口部311を開閉する役割も果たしている。外チャンバー31の開口部311の周囲には、当該開口部311を取り囲むように不図示のOリングが設けられており、蓋部材321は、このOリングを押しつぶして処理空間310内を密閉する。
【0036】
図4(a)、図4(b)に示すように蓋部材321は台座部35に支持されており、この台座部35には内チャンバー32を搬送する方向に沿って当該台座部35を切り抜いた走行軌道351が形成されている。一方、蓋部材321の下端部には、当該走行軌道351内に向けて下方側に伸びだした走行部材325が設けられている。そして図4(a)、図6に示すように、この走行部材325には走行軌道351に沿って掛け渡されたボールネジ353が貫通していて、これら走行部材325とボールネジ353とはボールネジ機構を構成している。このボールネジ機構は、内チャンバー32を移動させる移動機構に相当している。
【0037】
そしてボールネジ353の一端に設けられた駆動部352により当該ボールネジ353を左右いずれかの方向に回転させ、走行軌道351内で走行部材325を走行させることにより蓋部材321を移動させて、内チャンバー32を準備位置から処理位置まで搬送する。また内チャンバー32を処理位置から準備位置まで搬送する際には、ボールネジ353を反対方向に回転させる。但し蓋部材321を移動させる機構は、上述したボールネジ機構の例に限定されるものではなく、例えばリニアモータや伸縮アーム、エアシリンダーなどを用いて移動させてもよい。
【0038】
また図4(a)、図4(b)に示すように超臨界処理装置3には、蓋部材321や内チャンバー32が移動する領域を側面から覆うように、周囲壁33が設けられている。周囲壁33は蓋部材321の走行方向に沿って伸びる2枚の側壁部材331と、外チャンバー31の開口部311と対向するように設けられた前方壁部材332とから構成されている。そして前記2枚の側壁部材331の外チャンバー31側の一端が当該外チャンバー31の側壁面に強固に固定されていることにより、周囲壁33は外チャンバー31と一体になっている。
【0039】
また超臨界処理装置3は、処理空間310内でCOを超臨界状態とすることなどにより蓋部材321が受ける内圧に抗して、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて押さえつけ、当該蓋部材321の開放を阻止するための固定板34を備えている。この固定板34は、内チャンバー32及び蓋部材321が移動する領域から退避した退避位置と、蓋部材321を外チャンバー31側へ向けて手前側から固定する固定位置との間を、不図示の駆動機構により左右方向に移動可能に構成されている。
【0040】
一方、各側壁部材331には、左右方向に移動する前記固定板34を貫通させることが可能な嵌入孔333が形成されており、周囲壁33(側壁部材331)の外方の待機位置で待機している固定板34は、一方側の側壁部材331の嵌入孔333を通り抜けて固定位置へと移動することができる。また固定位置まで移動した固定板34は、その左右両端部が各側壁部材331の嵌込孔333に嵌め込まれた状態となり、この結果、固定板34が「かんぬき」のように側壁部材331に係止され、処理空間310内の圧力に抗して蓋部材321を外チャンバー31に向けて押さえつけることができる(図1の超臨界処理装置3及び図4(b)参照)。蓋部材321の開放を阻止する役割を果たす固定板34及び嵌入孔333を備えた側壁部材331は、本例のストッパ機構を構成している。
【0041】
さらに本実施の形態に係る超臨界処理装置3には、外チャンバー31の外の例えば準備位置まで移動した内チャンバー32を冷却するための冷却機構が設けられている。図4(b)、図6に示すように、本例に係る冷却機構は、例えば周囲壁33の側壁部材331に形成された冷却用空気の噴出孔335と、この噴出孔335に冷却用空気を供給するために側壁部材331内に形成された拡散空間334と、冷却用空気供給ライン541を介してこの拡散空間334に接続された冷却用空気供給部542と、を備えている。
【0042】
噴出孔335は、外チャンバー31から搬出され、例えば準備位置まで移動した内チャンバー32の、前方から見て左右の側壁面に対向するように、側壁部材331の壁面に多数設けられた開孔部である。噴出孔335は、内チャンバー32へ向けて冷却用の空気を吹き付けることにより、当該内チャンバー32を冷却する役割を果たす。
【0043】
拡散空間334は、各噴出孔335に冷却用の空気を供給するために側壁部材331の内部に形成された空間である。冷却用空気供給ライン541は、当該ライン541に介設された開閉バルブV5の開閉により、拡散空間334へ向けて冷却用空気の給断を行うことができる。また、冷却用空気供給部542は例えばコンプレッサーや工場用力の空気供給配管などから構成され、冷却用空気供給ライン541を介して清浄な冷却用空気を拡散空間334へ向けて供給する。
【0044】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3を含む洗浄処理システム1は、図1、図6に示すように制御部6と接続されている。制御部6は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはこれら洗浄処理システム1や洗浄装置2、超臨界処理装置3の作用、即ちFOUP7からウエハWを取り出して洗浄装置2に搬送し洗浄処理を行い、次いで超臨界処理装置3にてウエハWの超臨界処理を行ってからFOUP7内にウエハWを搬入するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0045】
特に超臨界処理装置3について制御部6は、図6に示すようにCO供給ライン511及びIPA供給ライン521の各送液機構512、522に接続されて液体COやIPAの供給タイミングを調節し、また外チャンバー31に設けられた不図示の圧力計の検出値に基づいて送液機構512の吐出圧を調節することができるようになっている。また制御部6は各バルブV1〜V5の開閉タイミングの調節や、駆動部352よるボールネジ353の回転タイミングや回転方向、回転量の調節、切替弁525に接続されるライン(IPA供給ライン521、回収ライン523)の切り替えなども行うことができる。さらに制御部6は、不図示の温度計からの処理空間310内の温度の検出結果に基づいて、電源部313からヒーター312へ供給される電力を増減し処理空間310内の温度を予め設定した温度に調節し、また準備位置まで移動した内チャンバー32の冷却を実行させるため、冷却機構を作動させるタイミングなどを制御する役割も果たす。
【0046】
以上に説明した構成を備えた超臨界処理装置3の作用について説明する。既述のように洗浄装置2における洗浄処理を終え、乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWが第2の搬送機構141に受け渡されたら、第2の搬送機構141は、例えば予め設定された処理スケジュールに基づいて、いずれか一方の筐体401内に搬入口403を介して進入し、当該ウエハWを搬入棚42の昇降ピンに受け渡す。
【0047】
超臨界処理装置3の内チャンバー32へと直ちにウエハWを搬入することが可能な場合には、搬入棚42ではウエハWを受け取った状態のままウエハWの下方に受け渡しアーム41のフォーク411を進入させ、次いで昇降ピンを降下させることによりウエハWをフォーク411に受け渡す。内チャンバー32にウエハWを搬入するまでに待ち時間が発生する場合には、昇降ピンを降下させて皿状の搬入棚42内にウエハWを載置し、ウエハWの表面にIPAを供給して乾燥を防ぐ。そして内チャンバー32側の準備が整ったら昇降ピンを上昇させてフォーク411にウエハWを受け渡す。
【0048】
一方、内チャンバー32は、図7(a)に示すようにチャンバー内にIPAを満たした状態で待機位置にて待機している。搬入棚42からウエハWを受け取った受け渡しアーム41は、ウエハWを縦向きに起こすと共にフォーク411の先端が内チャンバー32の開口部に向くように各回転軸を回転させた後、フォーク411を降下させてウエハWを内チャンバー32内に搬入する。
【0049】
この搬入動作を迅速に実行することにより、ウエハWの姿勢を縦向きに変換する際に、ウエハW表面に液盛りされているIPAの一部がこぼれ落ちたとしても、短時間の間であればウエハWの表面にIPAの液膜が残っている。そこでこの液膜が残っているうちに内チャンバー32内にウエハWを搬入してしまうことによって、ウエハWの表面が乾燥する前に内チャンバー32のIPA中にウエハWを浸漬し、パターン倒れの発生を抑えつつウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0050】
フォーク411をさらに降下させて、ウエハWの下端部がウエハ保持部材323の溝の内側に嵌って保持されたら、フォーク411によるウエハWの保持を解除して受け渡しアーム41を上昇させ、当該フォーク411を内チャンバー32から退避させる。そして2枚のウエハWに対して上述の受け渡し動作を繰り返し、図7(b)に模式的に示すように2枚のウエハWを内チャンバー32に保持し、IPAに浸漬された状態とする。
【0051】
このように内チャンバー32へのウエハWの搬入操作が実行されている期間中、外チャンバー31側においては、例えば電源部313の出力が低出力状態となっている。本例では例えば外チャンバー31本体は例えばCOの臨界温度より低く、且つ、超臨界処理装置3が設置されている筐体401内の雰囲気の温度よりも高い、例えば28℃程度に予熱されている。
【0052】
そして内チャンバー32に2枚のウエハWが保持されたら、駆動部352によりボールネジ353を駆動させて内チャンバー32を処理位置まで移動させる(図7(c))。このとき内チャンバー32からIPAが排出されないように供給・排液ライン524のバルブV3は閉となっており(図7(c)中に「S」と記してある。以下同じ)、また外チャンバー31側においてもCO供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4は閉となっている。
【0053】
そして図4(b)に示すように固定板34を待機位置から固定位置まで移動させたら、CO供給ライン511側の送液機構512のバルブV1を開とし(図8(a)中に「O」と記してある。以下同じ)、ポンプを作動させて処理空間310内に液体COを供給する。例えば大気圧雰囲気となっている処理空間310内に液体COが供給されると、液体COの一部が気化して処理空間310内の圧力が上昇し、気相側の雰囲気が液体COと平衡状態になる。
【0054】
しかる後、処理空間310内の雰囲気が例えば6MPa〜9MPaの範囲内の例えば7.5MPaとなるように開度を調節しながらバルブV4を開くと、CO供給ライン511から供給されるCOの液体の状態が保たれたまま気相側の雰囲気が追い出され、処理空間310内が液体COで置換されていく(図8(a))。このときにも電源部313からの出力は低出力となっており、外チャンバー31本体や処理空間310内の内チャンバー32やウエハW、液体COなどの温度は、COの臨界温度よりも低く、且つ外部雰囲気の温度よりも高い例えば28℃程度に予熱された状態となっている。
【0055】
そして液体COの液面の位置が、図5に示した内チャンバー32の切り欠き部322の下端程度の位置まで到達し、液体COが内チャンバー32に流れ込むことが可能な状態となったら、CO供給ライン511及び排気ライン531のバルブV1、V4を閉じて外チャンバー31を密閉する(図8(b))。
【0056】
しかる後、図8(c)に示すように電源部313の出力を高出力としてヒーター312への給電量を増やし、処理空間310内の温度が例えば30℃〜90℃の範囲の40℃となるように加熱を行う。COの臨界点は、7.38MPa、31.1℃であるので、この加熱操作により液体COが超臨界状態に変化し、COの気液界面が消失して処理空間310内が超臨界状態のCOで満たされた状態となる。
【0057】
ここで大気圧におけるIPAの沸点は82.4℃であるので、7.5MPa、40℃の処理空間310内においては内チャンバー32内のIPAは液体の状態を保っており、IPAに浸漬されたウエハWの表面も濡れた状態となっている。このとき図9(a)に示すように供給・排液ライン524のバルブV3を開くと、内チャンバー32内のIPAは内チャンバー32の開口部を介して超臨界状態のCOによって押され、また重力が働いて供給・排液ライン524に向けて流れていく。この際に図6に示した切替弁525を回収ライン523側に切り替えておくことにより、内チャンバー32から流れ出たIPAはIPA貯留部52に回収される。
【0058】
内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524からIPAが流出していくと、処理空間310内の超臨界状態のCOが膨張し、上面側の開口部を介して内チャンバー32内へと進入する。この結果、内チャンバー32内のIPAが上方側から下方側へ向けて超臨界状態のCOへと置換されていくことになるが、超臨界状態のCOは表面張力が働かないため、パターン倒れを殆ど引き起こすことなくウエハW表面の雰囲気を液体のIPAから超臨界状態のCOに置換することができる。
【0059】
またこのとき内チャンバー32の上方側から下方側へ向けてIPAを超臨界状態のCOへと置換していくことにより、IPAの排出時にウエハWから飛散したごみを内チャンバー32の底部側の通液口324へ向けてIPAと共に押し流していくので、これらのごみの巻き上げを抑制し、ウエハWへの再付着を低減することができる。
【0060】
ここで既述のように内チャンバー32は2枚のウエハWを格納することが可能な程度の大きさであるので、その容積は比較的小さい。このため、超臨界状態のCOの温度及び圧力を臨界点よりも十分に高い状態としておき、膨張に伴う温度や圧力低下を見越した量のCOを処理空間310内に予め供給しておけば、COの超臨界状態を十分に維持することができる。また例えば、内チャンバー32内のIPAが押し出され、超臨界状態のCOが膨張してもその超臨界状態が維持されるようにヒーター312の出力を増加させてもよい。
【0061】
そしてこのとき、外チャンバー31及び処理空間310は、ヒーター312により外部雰囲気より高く、且つ、COの臨界温度よりも低い温度に予熱されている。このため例えば耐圧性を持たせるために外チャンバー31を厚肉に構成して、外チャンバー31の熱容量が大きい場合であっても、例えば外部雰囲気と同じ温度にまで外チャンバー31の温度が低下してしまっている場合に比べて短い時間で処理空間310内を所望の温度まで昇温することができる。
【0062】
こうして内チャンバー32内のIPAが排出され、処理空間310の系内の雰囲気が全て超臨界状態のCOに置換されたら、供給・排液ライン524のバルブV3を閉じ(図9(b))、排気ライン531のバルブV4を開いて処理空間310内を大気圧まで脱圧する。この結果、超臨界状態のCOが気体の状態に変化することになるが、超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる(図9(c))。
【0063】
このとき内チャンバー32にはウエハWが立て向きに保持されているので、例えばウエハWに付着していたパーティクルなどのごみがIPAや超臨界状態のCOに流れに乗って飛散した場合であっても、これらのごみが重力によって沈降する位置にウエハWの表面が存在しないことからウエハWの再汚染が発生しにくい。
【0064】
ここで図9(c)に示した例では、液体COの供給時に外チャンバー31内の雰囲気を排気する既述の排気ライン531を利用して処理空間310内の脱圧を行う例を示したが、この脱圧操作時に処理空間310内にCOの上昇流が形成されることに起因するごみの巻上げを抑えるため、例えば外チャンバー31の底部側に脱圧時専用の排気ラインを設けて処理空間310内に下降流が形成されるようにしながら脱圧を行ってもよい。また、内チャンバー32の底面に接続された供給・排液ライン524を利用して脱圧を行ってもよい。そして処理空間310内を脱圧する際には、COの膨張により処理空間310内の温度が低下して超臨界状態のCO中に溶解していたIPAがウエハW表面で凝縮したりしないように、ヒーター312によって処理空間310内部の温度を上げるようにしてもよい。
【0065】
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えたら、固定板34を退避位置まで退避させ、蓋部材321を前方側へ移動させて内チャンバー32を準備位置まで移動させ、内チャンバー32内にフォーク411を進入させて処理を終えたウエハWを一枚ずつ取り出す。
そして取り出されたウエハWは搬出棚43を介して第1の搬送機構121に受け渡され、搬入時とは逆の経路を通ってFOUP7内に格納され、ウエハWに対する一連の動作が完了する。
【0066】
一方、図10(a)、図10(b)に示すようにウエハWの準備位置まで移動したとき、内チャンバー32の温度は超臨界処理が終わった直後の処理空間310の温度と同じ、31.1℃以上の例えば40℃〜90℃程度の温度にまで加熱されている。このような温度にまで昇温された内チャンバー32に揮発性の高いIPAを供給すると、IPAの蒸発量が増加し、IPA貯留部52に回収できないIPAの量が増える。また、蒸発したIPAが筐体401内に拡散してダウンフローの排気口407の後段の除外設備の負荷が高くなってしまう場合もある。さらには、内チャンバー32やこれを支持する蓋部材321などの温度が高くなっていると、内チャンバー32の近傍に超臨界処理前のウエハWを搬送してきた際に、当該ウエハWが内チャンバー32からの放射熱を受けて加熱され、その表面に液盛りされたIPAの乾燥を促進してパターン倒れを引き起こしてしまうおそれもある。
【0067】
そこで本実施の形態に係る超臨界処理装置3においては、図10(b)に示すように、側壁部材331に形成された噴出孔335から内チャンバー32へ向けて冷却用の空気を噴出し、内チャンバー32本体やこれを支持する蓋部材321の温度を短時間のうちに低下させる。この結果、内チャンバー32が例えば周囲の雰囲気の温度と同程度、またはこれより低い温度にまで冷却されたら、切替弁525の接続先をIPA供給ライン521側に切り替えて送液機構522を作動させてIPA貯留部52よりIPAを供給し、内チャンバー32にIPAが満たされた状態で次のウエハWが搬入されるまで待機する。
【0068】
内チャンバー32の冷却を停止するタイミングとしては、ウエハWに冷却用空気が直接吹き付けられてウエハWに液盛りされているIPAの蒸発が促進されるのを避けるため、内チャンバー32へのウエハWの搬入動作を開始する前などが考えられる。
一方、外チャンバー31側においては、電源部313の出力を低出力に切り替えて、ヒーター312により外チャンバー31本体が既述の予熱温度に維持された状態で待機する。
【0069】
本実施の形態に係る超臨界処理装置3によれば以下の効果がある。外チャンバー31の内外を移動する内チャンバー32が当該外チャンバー31の外(例えばウエハWの準備位置)に移動してきたとき、冷却用の空気を吹き付けてこの内チャンバー32を冷却することができる一方、外チャンバー31側では前記内チャンバー32とは独立して外チャンバー31を加熱することができる。
【0070】
このため、上述の実施の形態に係る超臨界処理装置3のように、例えばウエハWの搬入時には外チャンバー31の外で内チャンバー32を冷却して内チャンバー中のIPAの蒸発やウエハWの乾燥を抑制する一方、外チャンバー31は予熱状態を維持し、液槽が処理容器内に移動した後、所定の温度まで処理容器内を昇温する時間を短縮して応答性を向上させるなど、自由度の高い運転を実現することができる。
【0071】
ここで上述の実施の形態においては、内チャンバー32が搬出された後の外チャンバー31の温度を、COの臨界温度より低く、且つ、周囲の雰囲気の温度よりも高い予熱状態にする例を示したが、内チャンバー32が搬出されて待機している期間中の外チャンバー31の温度状態はこれに限定されない。例えば電源部313からの給電を停止し、ヒーター312をオフにして自然冷却の状態で待機してもよい。外チャンバー31の外に搬出された内チャンバー32を独立して冷却できる冷却機構を備えていれば、内チャンバー32中のIPAの蒸発やウエハWの乾燥を抑制する効果を得ることはできる。
【0072】
また、例えば外チャンバー31の温度をCOの超臨界温度より高い温度にまで加熱して待機してもよく、この場合には例えば処理空間310に供給した液体COを直ちに超臨界状態にして、この超臨界状態のCOを内チャンバー32内のIPAと置換する構成としてもよい。ここで処理容器31に供給されるCOは、液体の状態で供給される場合に限定されず、予め超臨界状態となっているCOを処理容器31へ供給してもよい。この場合には、ヒーター311は当該COの超臨界状態を維持する役割を果たす。
【0073】
さらにまた、冷却機構により内チャンバー32を冷却するタイミングは、当該内チャンバー32にIPAを供給する前のタイミングに限定されず、例えばIPAの供給を行ってから、ウエハWがIPA中に浸漬される前のタイミングにて冷却を行ってもよい。
【0074】
そして冷却機構により内チャンバーを冷却する準備位置は、ウエハWの受け渡しが行われる位置と必ずしも一致している必要はない。例えば内チャンバー32を外チャンバー31の外部へ移動させたとき、ウエハWの受け渡しが行われる位置の手前の準備位置にて超臨界処理後のウエハWを保持した状態のまま内チャンバー32の冷却を実行し、然る後、冷却後の内チャンバー32を受け渡し位置まで移動させてもよい。
【0075】
このほか、内チャンバー32を冷却する冷却機構の構成は、既述のように側壁部材331などに設けた噴出孔335から空気などの冷却用の気体を吹き付ける方式に限定されるものではない。例えば内チャンバー32本体の外面に冷媒を通流させる通流路を設けたり、この内チャンバー32本体を、内部に冷媒を通流可能なジャケット形状に構成したりして冷却を行ってもよい。また、例えば内チャンバー32の容器の壁面にペルチェ素子や冷媒などで冷却した吸熱体を押し当てるようにしてもよい。
そして外チャンバー31の加熱機構についても抵抗発熱体により形成する場合に限定されず、例えば外チャンバー31本体の内部に熱媒を通流させる通流路を形成して加熱を行ってもよい。
【0076】
また上述の各実施の形態では、ウエハWが浸漬される液体としてIPA、この液体と置換される超臨界状態の流体としてCOを採用した例について説明したが、各流体の例はこれに限定されるものではない。例えば洗浄処理後のウエハWに乾燥防止用のIPAを供給する場合に替えて、ウエハWをリンス液(洗浄液)であるDIWに浸漬したまま超臨界流体と置換してもよい。また例えば超臨界流体としてHFE(Hydro FluoroEther)を利用する場合などに、液体のHFE中に浸漬した状態で外チャンバー31内にウエハWを配置し、この液体HFEを超臨界状態のHFEと置換してもよい。また超臨界状態の流体としてはIPAなども利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
W ウエハ
1 洗浄処理システム
2 洗浄装置
3 超臨界処理装置
31 外チャンバー
310 処理空間
312 ヒーター
313 電源部
32 内チャンバー
331 側壁部材
335 噴出孔
511 CO供給ライン
521 IPA供給ライン
541 冷却用空気供給ライン
542 冷却用空気供給部
591 超臨界流体供給ライン
592 液体排出ライン
6 制御部
7 FOUP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を保持して液体に浸漬するための液槽と、
この液槽を内部の処理空間に配置し、当該液槽内の液体を超臨界状態の流体に置換してから、この処理空間内を減圧することにより、前記流体を気体にして前記被処理基板を乾燥する処理が行われる処理容器と、
この処理容器に、液状態または超臨界状態で前記流体を供給する流体供給部と、
前記液槽内の液体が排出される排液部と、
前記液槽を、前記処理容器内の処理位置と当該処理容器の外部の準備位置との間で移動させるための移動機構と、
前記処理容器に供給された流体を超臨界状態とし、または、その超臨界状態を維持するために、前記処理空間を加熱する加熱機構と、
前記準備位置に移動した液槽を冷却する冷却機構と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液体は揮発性の液体であり、当該液体は前記冷却機構による冷却が行われてから液槽に供給されることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
被処理基板は、前記冷却機構による液槽の冷却が行われてからこの液槽内の液体に浸漬されることを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記液槽は被処理基板を縦向きに保持するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記液槽を横方向に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記液槽には、処理容器に形成された搬入出口を開閉する蓋部材が一体に設けられ、
前記開口部を塞いでいる蓋部材の開放を阻止するためのストッパ機構を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−222697(P2011−222697A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89468(P2010−89468)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】