説明

基板加熱プレートヒータ

【課題】アルミニウム製の支持板を使用したものであっても、高温時の剛性を確保し、高温の下で反りや曲がりが無く、しかもアルミニウム製の支持板としての諸特性(耐食性の優れた絶縁皮膜いわゆるアルマイト処理)を満足することが出来る基板加熱プレートヒータを得る。
【解決手段】基板加熱プレートヒータは、金属製の板体からなる支持板1と、この支持板1の中に埋設されたヒータ線3とを有する。支持板1にヒータ線3に沿って同支持板1より剛性の高い補強部材4が埋め込まれ、この補強部材4が支持板1と同じ材質の蓋体7により覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板上に薄膜パターンを形成したり、あるいはその基板をエッチングする工程、さらには化学的気相堆積法(CVD法)等の手段でガラス基板等の基板上に薄膜を形成する工程において、基板を載せて加熱する基板加熱プレートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製品は、半導体ウエハ等の基板上にフォトマスク等を適用して電極パターン等の薄膜パターンを形成したり、薄膜をエッチングして所定のパターンに形成する工程等を経て製造される。またディスクプレイ装置等に使用される透明基板上に形成される透明導電膜等からなる電極パターンは、いわゆるプラズマCVD法等の化学的気相堆積法等の手段で形成される。
これらの電子デバイス用の基板を製造する工程では、殆どの場合に基板を所定の温度に加熱した状態で行う。この基板の加熱のために基板を載置した状態で加熱するのに使用されるのが基板加熱プレートヒータである。
【0003】
従来において、このような基板の加熱に使用される基板加熱プレートヒータは、熱伝導良好なステンレスやアルミニウム等の金属製の支持板の中にシーズヒータ等のヒータ線を埋め込み、このヒータ線の発熱により支持板を加熱し、その上に載せられた基板を加熱する方式のものが多い。特にアルミニウム製の支持板を使用した基板加熱プレートヒータは、支持板の熱容量が小さいので、温度応答性に優れ、加熱、冷却時間が短く、温度制御も容易である。また、表面をアルマイト処理することにより、基板面を絶縁したり、耐腐食性を増す事が出来る。
【0004】
基板加熱プレートヒータによる基板の加熱温度は薄膜パターンやホトレジスト等の成膜温度により決定されるが、400℃以上の高い加熱温度が要求されることも多い。従来のアルミニウム製の支持板を用いた基板加熱プレートヒータでは、400℃の温度以下において支持体の十分な剛性が確保出来る。しかし加熱温度が400℃を越えると、アルミニウム製の支持板は剛性の低下を来たし、曲がりやすくなるという欠点がある。
【0005】
そのため加熱温度が高く、絶縁が必要な場合は、アルミニウムより高い剛性を有するセラミックやセラミック溶射したステンレス製等の支持板を用いた基板加熱プレートヒータを使用する必要がある。しかしながら、それらはコストが高く、ステンレス製の支持板は、アルミニウム製の支持板に比べて熱容量が大きいため、アルミニウム製の支持板を使用した基板加熱プレートヒータに比べて温度均一性が低く、温度応答性も悪く、コストも高い。また、所定の温度までの加熱や所定の温度から常温への冷却の時間が長くなり、温度制御も容易ではない。
【0006】
【特許文献1】特開2007−184289号公報
【特許文献2】特開2007−184288号公報
【特許文献3】特開2005−123000号公報
【特許文献4】特開2005−122999号公報
【特許文献5】特開2004−193114号公報
【特許文献6】特開平11−40330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における基板加熱プレートヒータの前記の課題に鑑み、アルミニウム製の支持板を使用したものであっても、高温時の剛性を確保し、高温の下で反りや曲がりが無く、しかもアルマイト処理しやすいアルミニウム製の支持板としての諸特性を満足することが出来る基板加熱プレートヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、前記の目的を達成するため、アルミニウム製の支持板1の内部に、ヒータ線3と共に同支持板1より剛性の高い補強部材4を埋め込み、この補強部材4を支持板1と同じ材質の蓋体7で覆うことにより、補強部材4が支持板1の表面に露出しないようにした。
【0009】
すなわち、本発明による基板加熱プレートヒータは、金属製の板体からなる支持板1と、この支持板1の中に埋設されたヒータ線3とを有し、支持板1にヒータ線3に沿って同支持板1より剛性の高い補強部材4が埋め込まれ、この補強部材4が支持板1と同じ材質の蓋体7により覆われているものである。
【0010】
このような特徴を有する基板加熱プレートヒータでは、支持板1にヒータ線3に沿って同支持板1より剛性の高い補強部材4が埋め込まれているので、支持板1が高温になり、剛性が低下しても、補強部材4により補強され、高温時の剛性が確保出来る。しかも、補強部材4が支持板1と同じ材質の蓋体7により覆われ、補強部材4が支持板1の表面に露出しないため、補強部材4として任意のものを使用することが出来る。特に、支持板1の表面を耐食性化処理するとき等に、支持板1の表面全体を一様に表面処理することが出来るので、アルマイト処理等に向いた材質を選定でき、良好な耐食性を有する表面を容易な手段で得ることが出来る。
【0011】
前記蓋体7は支持板1のヒータ線3と補強部材4が埋め込まれた個所を覆うと共に、この蓋体7と支持板1との接合部が一体化されていることが好ましい。例えば蓋体7が支持板1に摩擦撹拌接合により溶接されていることが好ましい。これにより、支持板1と蓋体7との不連続性が無く、耐食性化処理により高温下での接合部の部分的な腐蝕も無く、アルマイト処理等の耐食性に優れた基板加熱プレートヒータが得られる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本発明によれば、高温下でも高い剛性を有する基板加熱プレートヒータを得ることが出来る。しかも補強部材4が支持板1の表面に表れず、同支持板1の表面を一様に表面処理することが出来るので、アルマイト処理等の良好な絶縁表面を形成することが出来、耐食性に優れた基板加熱プレートヒータが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、アルミニウム製の支持板1の内部に、ヒータ線3と共に同支持板1より剛性の高い補強部材4を埋め込み、この補強部材4を支持板1と同じ材質の蓋体7で覆うことにより、補強部材4が支持板1の表面に露出しないようにし、前記の目的を達成するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による基板加熱プレートヒータの底面図であり、図2はその側面図である。
支持板1は金属製の板からなり、最も好ましくはアルミニウム系合金の板が使用される。例えば厚さ50mmのアルミニウム合金の板体からなる。
【0015】
後述するように、支持板1は表面を耐食性化するため陽極酸化等の手段で表面酸化処理し、表面にアルマイト(Al等の酸化膜被膜)を形成する。そのため、支持板1としては陽極酸化等による表面処理に適したアルミニウム合金が使用される。例えば国際アルミニウム合金名として5000番台のAl−Mg系合金や6000番台のAl−Mg−Si系合金等を使用することになる。
【0016】
この支持板1の所要の剛性を維持しながら肉薄化と軽量化を図る目的で、図1に示すように、その裏面にはリブ2が形成され、その間の部分は凹部9となっている。さらに、この支持板1の裏面中央には円筒形のリード線引出筒部6が立設されている。
【0017】
支持板1の中には、ヒータ線3が配線され、このヒータ線3のリード線は前記リード線引出筒部6から電源側に引き出される。このヒータ線3の配線パターンは、例えば図1に示すようなものであるが、これは支持板1の加熱温度が全面にわたって出来るだけ均一になるようなパターンに設計して埋設する。支持板1の放熱量はその中心部より周辺部の大きいが、例えば中心部に前述のようなリード線引出筒部6が立設されているとそこからの放熱もある。これらのバランスが均衡するようにヒータ線3を配線することで、放熱板1の温度分布の均一性が得られるようなヒータ線3の配線パターンを採用する。
【0018】
このヒータ線3は例えばシーズヒータからなり、金属筒状のシースの中にタングステン、ニクロム、タンタル等の高融点金属からなる電熱線が収納され、これがシースの中に充填したマグネシア粉末等からなる無機絶縁材で絶縁されている。シーズヒータのシースは一般にステンレスが使用されるが、支持板1が前述のようなアルミニウム合金の場合、シースには同じようなアルミニウム合金のものを使用するのがよい。これにより、支持板1とヒータ線3との熱膨張率の違いによる熱応力を低減し、熱歪みによる支持板1の反りや曲がりを低減することが出来る。
【0019】
図3は支持板1のヒータ線3が埋設された部分の断面を示す。この図3に示したように、支持板1の裏面に蓋用溝12を設け、この蓋用溝12の底にヒータ用溝11を設け、このヒータ用溝11の中に前記のヒータ線3を埋め込んで装着する。
【0020】
このヒータ線3は支持板1の裏面側、すなわち図1に示した面側、図2において下面側に寄せて支持板1の中に埋設する。支持板1のヒータ線3が埋設された部分の断面を示した図3において表面である加熱面からヒータ線3までの深さ寸法d1と裏面からヒータ線3までの深さ寸法d2をd1>d2し、例えばd1:d2=3:2程度にとる。これにより支持板1の加熱面である表面側の温度分布を均一にすることが出来る。またプラズマCVD法により成膜工程を行う場合等において、支持板1の加熱面である表面側における成膜時の電位分布を均一にすることも出来る。
【0021】
支持板1には前記のヒータ線3に沿って同支持板1の剛性を補強するための補強部材4を埋め込む。補強部材4としては、支持板1に比べてより剛性が高いアルミニウム合金、例えば国際アルミニウム合金名として3000番台のAl−Mn系合金、或いはSi、Ni等の成分が比較的多いアルミニウム合金等を使用する。これを断面矩形等の長尺部材とし、前記ヒータ線3の直線部分に沿って溝に埋め込む。図3に示した実施例では補強部材4がヒータ線3と共にヒータ用溝11の中に埋め込まれることで、同補強部材4がヒータ線3に隣接してその直線部分に沿って支持板1の中に埋設されている。
【0022】
蓋用溝12に蓋体7を嵌め込み、固定する。蓋体7は支持板1と同じ材質のアルミニウム合金からなり、その長さ、幅及び厚さは支持板1の裏面の蓋用溝12の長さ、幅及び深さに対応している。従って、蓋体7は支持板1の裏面の蓋用溝12の中に密に嵌め込まれる。この蓋体7はその縁が蓋用溝12の縁に溶接等の手段で接合される。例えば蓋体7と蓋用溝12の縁が摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)により溶接される。摩擦攪拌接合は先端に突起のある円筒状の工具を回転させながら強い力で押し付けることで突起部を接合させる母材である支持板1と蓋体12の接合部に圧接し、これによって摩擦熱を発生させて母材を軟化させるとともに、工具の回転力によって接合部周辺を塑性流動させて練り混ぜることで支持板1と蓋体12の接合部を一体化させる。摩擦攪拌溶接とも呼ばれる。これにより支持板1と蓋体12の接合部は不連続性が無いよう接合される。こうして溶接された支持板1と蓋体12の接合部は必要に応じて研磨されて溶接部の凹凸が平坦化され、支持板1と蓋体12とが面一とされる。
【0023】
摩擦攪拌接合では支持板1と蓋体12とが一旦溶融して混合し、一体化するため、接合部における不連続性は無くなる。また、この摩擦攪拌接合では入熱を非常に小さくすることが出来、溶け込み深さを深く出来るので、支持板1と蓋体12との接合に最適である。大気中で溶接出来る利点もある。
【0024】
その後、支持板1と蓋体7との全面にわたって表面処理し、耐蝕性化をする。例えば、支持板1と蓋体7とを形成するアルミニウム合金の表面を陽極として強酸中で水の電気分解により酸化させ、酸化被膜でコーティングするいわゆるアルマイト処理を行う。希硫酸やシュウ酸などを用いて支持板1と蓋体7とを形成するアルミニウム合金を陽極として電気分解することにより、支持板1と蓋体7の表面を電気化学的に酸化させて酸化アルミニウムAlの酸化皮膜を生成させる。既に述べた通り、この表面処理のため、前記の支持板1と蓋体7とは、陽極酸化による表面処理に適した国際アルミニウム合金名が5000番台のAl−Mg系合金や6000番台のAl−Mg−Si系合金等を使用する。
【0025】
図4は、本発明の他の実施例について前述した図3と同様に支持板1のヒータ線3が埋設された部分の断面を示している。この図4に示した実施例では、補強部材4がヒータ線3を埋設したヒータ用溝11の上を塞ぐように設けられ、この補強部材4が蓋用溝12に嵌め込まれた蓋体7の下面の溝の中に埋設されている。従って補強部材4はヒータ線3に隣接してそれより支持板1の裏面側に配置されている。
【0026】
図5は、本発明の他の実施例について前述した図3と同様に支持板1のヒータ線3が埋設された部分の断面を示している。この図5に示した実施例では、ヒータ線3を埋設したヒータ用溝11とは別にその両側に補強部材用溝13、13が設けられ、この補強部材用溝13、13の中に補強部材4、4が埋設されている。補強部材4、4はヒータ線3から若干離れているが、ヒータ線3に近い位置でそれに沿って配置されている。補強部材4はヒータ線3の片側のみに設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、半導体ウエハ等の基板上に薄膜パターンを形成したり、あるいはその基板をエッチングする工程、さらには化学的気相堆積法(CVD法)等の手段でガラス基板等の基板上に薄膜を形成する工程において、基板を載せて加熱するのに好適な基板加熱プレートヒータを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例による基板加熱プレートヒータを示す裏面図である。
【図2】本発明の一実施例による基板加熱プレートヒータを示す側面図である。
【図3】本発明の一実施例による基板加熱プレートヒータ支持板のヒータ線が埋設された部分の断面を示す要部断面図である。
【図4】本発明の他の実施例による基板加熱プレートヒータ支持板のヒータ線が埋設された部分の断面を示す要部断面図である。
【図5】本発明の他の実施例による基板加熱プレートヒータ支持板のヒータ線が埋設された部分の断面を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 支持板
3 ヒータ線
4 補強部材
7 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の板体からなる支持板(1)と、この支持板(1)の中に埋設されたヒータ線(3)とを有する基板加熱プレートヒータにおいて、支持板(1)にヒータ線(3)に沿って同支持板(1)より剛性の高い補強部材(4)が埋め込まれ、この補強部材(4)が支持板(1)と同じ材質の蓋体(7)により覆われていることを特徴とする基板加熱プレートヒータ。
【請求項2】
蓋体(7)が支持板(1)のヒータ線(3)と補強部材(4)が埋め込まれた個所を覆うと共に、この蓋体(7)と支持板(1)との接合部が一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の基板加熱プレートヒータ。
【請求項3】
蓋体(7)が支持板(1)に摩擦撹拌接合により溶接されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板加熱プレートヒータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−114280(P2010−114280A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286021(P2008−286021)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】