説明

孔内異物の検出方法及びその検出プログラム

【課題】 紡糸口金に穿設された吐出孔を通過する通過光を奥行き方向に沿って複数箇所で撮像して得た画像データ群から、正確かつ確実に孔内異物を判別する孔内異物の検出する。
【解決手段】 吐出孔の一方側から照射しされて該吐出孔を通過した光を吐出孔Hの奥行き方向に沿って被写界深度が異なる複数箇所において電荷結合素子カメラ(CCDカメラ)で光学的に画像を拡大してそれぞれ撮像し複数の画像データ群を取得し、取得した前記画像データ群に含まれる画素群の明暗の諧調を画像処理装置にそれぞれ記憶すると共に、予め設定した判別基準値を基にして各画像データに含まれる画素群を「明」と「暗」との何れかの値にそれぞれ振り分ける二値化処理を行い、二値化処理された各画像データから画像処理によって吐出孔の奥行き方向に沿って存在する孔内異物の存在を判別することを特徴とする孔内異物の検出方法とその検出プログラムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸口金に穿設された円形断面形状を有するポリマー吐出孔に残留する異物を検出するための孔内異物の検出方法とその検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性高分子重合体(以下、単に“ポリマー”という)を溶融紡糸する工程では、溶融ポリマーを繊維状に紡出するための紡糸口金は必要不可欠である。この紡糸口金は、通常、紡糸口金パックとして紡糸パックに組み込まれた後、スピンブロックに装着されて使用されるが、長期間に渡って使用すると内部に組み込まれた濾過媒体などに異物が捕捉されて濾過媒体が目詰まりを起こしてパック内圧力が上昇するために定期的に交換される。
【0003】
しかしながら、濾過媒体自体は消耗部品として使い捨てすることができるが,紡糸口金は高価であるため、何度も繰返し再使用される。この繰返し再使用の過程においては、一度使用した紡糸口金には当然のことながら使用時のポリマーが残留している。そこで、通常、ソルトバスなどで加熱した薬品を使用した残留ポリマーの焼却洗浄を行い、更に、超音波洗浄を行って、残留したポリマーなどを完全に取り除くような処理が行われる。
【0004】
このように、洗浄された口金に穿設されたポリマー吐出孔は、きれいに掃除されていることが理想であるが、場合によっては、孔内に異物が残っていることがある。もし、このように孔内に異物が除去されずに残留していると、異物が残留した吐出孔から吐出されるポリマーの流量が低下してしまって、生産する単繊維(フィラメント)の繊度が不均一となって品質低下を招く。また、酷い場合には、異物が残留した吐出孔からのポリマーが正常に吐出されずに、吐出不良を惹起して、紡糸不良をとなる事態も起こる。
【0005】
そこで、特開平7−243831号公報に提案されているように、洗浄後において紡糸口金に穿設された吐出孔群の孔内に残留した異物を検出しようとする試みがなされている。しかし、これまでの孔内の残留異物の検査技術は、口金下から光を照射させ、吐出孔を通過してくる光の面積値を求めることによって、異物の有無を判定するものである。つまり、異物が孔内に残留していると、残留した異物によって投光された光が遮られるために、検出する通過光の面積値が小さくなる原理を利用したものである。
【0006】
しかしながら、吐出孔に付着した異物の位置は、吐出孔の長さ方向に沿った何れの位置にも付着する。すなわち、ポリマーが吐出孔に流入する直後の位置に異物が付着することもあれば、ポリマーが吐出孔から流出する直前の位置に付着することもある。そうすると、前述の従来技術では、例えば拡大レンズを装着した電荷結合素子カメラ(以下、“CCDカメラ”という)の焦点を吐出孔のどの位置に合わせるかによって、得られる光量が変化してしまう。
【0007】
特に、紡糸口金に穿設される吐出孔は、その孔径が1mm以下のものが多く、このような吐出孔の画像データを解析しようとすると、どうしても高倍率の光学拡大レンズを使用して画像を拡大する必要があって、この現象はより顕著になる。したがって、CCDカメラの焦点位置に異物が存在する場合と、焦点位置からずれた位置に異物が存在する場合とで、吐出孔を通過する光の量が異なってしまい、通過光の量による面積値判定に誤差が生じてしまう。その結果として、面積値が正常に算出されず、孔内異物が存在するにもかかわらず、異物の存在を見逃してしまうような事態が生じる。
【0008】
なお、このような現象は、CCDカメラの焦点深度が不十分で焦点がぼやけた時の他に、吐出孔に付着している異物の形状が細い時、口金を使用中にポリマーとの摩擦によって吐出孔が磨耗した時、さらには光源の輝度がやや低下した時などにおいても発生する。もちろん、このような事態が生じると、吐出孔を通過する光の量が変わり、その結果として、画像処理後に受光面積値が変化してしまうという問題が生じ、孔内異物を正確に検出することは困難となる。ところが、従来技術のような面積値だけを求める方法では前述のような問題から、吐出孔内に残留する異物を精度よく検出することが難しい。
【特許文献1】特開平7−243831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に述べた従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明の目的は、紡糸口金に穿設された吐出孔内の奥行き方向に付着した異物であっても、その存在を精度よく確実に検出することができる孔内異物の検出方法とそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに、前記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の孔内異物の検出方法に係わる発明のように、「熱可塑性高分子重合体を紡出するために紡糸口金に穿設した円形断面を有する吐出孔の内部に付着した異物を、画像処理によって検出するための異物検出方法において、
A.前記吐出孔の一方側から光を照射し、
B.該吐出孔を通過した光を吐出孔の奥行き方向に沿って被写界深度が異なる複数箇所において電荷結合素子カメラ(CCDカメラ)で光学的に画像を拡大してそれぞれ撮像し複数の画像データ群を取得し、
C.撮像した前記画像データ群に含まれる画素群の明暗の諧調を画像処理装置にそれぞれ記憶し、
D.予め設定した判別基準値を基にして各画像データに含まれる画素群を「明」と「暗」との何れかの値にそれぞれ振り分ける二値化処理を行い、
E.二値化処理された各画像データから画像処理によって吐出孔の奥行き方向に沿って存在する孔内異物の存在を判別する、
ことを特徴とする孔内異物の検出方法」が提供される。
【0011】
このとき、本発明の方法は、請求項2に記載のように、「前記画像処理が、吐出孔を通過した光を検出して「明」と判断された画素群が占有する面積値の大小によって判別する面積判別処理であることを特徴とする、請求項1に記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明の方法は、請求項3に記載のように、「前記吐出孔を通過した光を検出する画素群に対して、中央部を通過した光を検出する画素群についてマスク処理を施し、マスク処理を施した画素群を孔内異物の検出領域から除外することを特徴とする、請求項1又は2に記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明の方法は、請求項4に記載のように、「前記画像処理が、撮像された複数の前記画像データ群のそれぞれに対して前記二値化処理において「明」部と認識された画素群と「暗」部と認識された画素群との境界に位置する画素群を抽出すると共に、隣接する画素同士をその中心点で順次結んだ線分長を総和して算出される境界線長が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物の存在を判別する周長判別処理であることを特徴とする、請求項1に記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明の方法は、請求項5に記載のように、「前記画像処理が、撮像された複数の前記画像データ群のそれぞれに対して前記二値化処理において「明」部と認識された画素群が占有する面積値を求め、該面積値を真円の面積値と仮想して該仮想真円の面積値から仮想真円の円周長を求め、前記前記仮想真円の円周長と前記境界線長との比を『真円度』として求め、該『真円度』が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物の存在を判別する周長判別処理であることを特徴とする、請求項4に記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0015】
また、本発明の方法は、請求項6に記載のように、「前記画像処理が、撮像された複数の前記画像データ群に対して下記F〜Hに記載の半径判別処理であることを特徴とする、請求項1に記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0016】
F.複数の前記画像データ群の少なくとも一つの画像データに対して、二値化処理前に、各画素の明暗の諧調から所定の判別基準値によって「明」部と認識された画素群から吐出孔の中心座標を算出し、該中心座標から放射状に吐出孔壁の存在方向へ向かって「明」部に認識された画素が尽きる位置までの距離をそれぞれ算出し、算出した距離群の平均値を平均半径値Raveとして求め、
G.二値化処理後に、「明」部と判別された画素群から新たに算出した吐出孔の中心座標、又は前記Fで求めた中心座標から吐出孔壁側へ向かって「暗」部と判別された最初の画素に到達するまでの距離を放射状にそれぞれ探索し、探索した距離群の中で最小の距離を抽出し、これを最小の半径値Rminとして求め、
H.前記平均半径値Raveと前記最小半径値Rminとの差又は比を算出して、これらの値が予め設定した判別条件を満足したことによって孔内異物の存在を判別する。
【0017】
また、本発明の方法は、請求項7に記載のように、「請求項1に記載の画像処理が、前記面積判別処理、前記周長判別処理、そして前記半径判別処理の順で行う孔内異物の存在判別の処理であることを特徴とする、孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の方法は、請求項8に記載のように、「前記面積判別処理、前記周長判別処理、そして前記半径判別処理の順で行う孔内異物の存在判別の処理で、何れかで孔内異物が検出されると後続の処理をパスして次の吐出孔の孔内異物の検査に移ることを特徴とする、請求項7に記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0019】
そして、本発明の方法は、請求項9に記載のように、「前記CCDカメラの撮像位置を撮像目標とする前記吐出孔の位置情報に基づいて位置決めして吐出孔を通過した光を画像として撮像し、撮像した画像データから吐出孔の存在領域に位置する画素群を判別し、判別した画素群から吐出孔の中心座標を算出し、CCDカメラの撮像中心を算出した吐出孔の中心座標に合わせる位置補正を行うことを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の孔内異物の検出方法」とすることが好ましい。
【0020】
次に、前記課題を解決するための手段として、請求項10に記載の孔内異物の検出プログラムに係わる発明のように、「熱可塑性高分子重合体を紡出するために紡糸口金に穿設された円形断面を有する吐出孔の内部に付着した異物を画像処理によって検出するために用いるコンピュータで実行可能な異物検出プログラムにおいて、
前記吐出孔の一方側から照射されて吐出孔を通過した光を、電荷結合素子カメラ(CCDカメラ)で光学的に拡大された複数の画像データ群として画像処理装置に取り込む手順と、
複数の前記画像データ群に含まれる画素群の明暗の諧調をそれぞれ記憶し、予め設定した判別基準諧調値を基準にして記憶した各画像データに含まれる画素群を「明」と「暗」との何れかの値にそれぞれ振り分ける二値化処理を行う手順と、
二値化処理された各画像データから画像処理によって吐出孔の奥行き方向に沿って存在する孔内異物の存在を判別する手順と
を含むことを特徴とする孔内異物の検出プログラム」が提供される。
【0021】
その際、本発明のプログラムは、請求項11に記載のように、「前記二値化処理によって「明」と判断された画素群が占有する面積値の大小によって孔内異物の存在を判別する画像処理である面積判別手順を含むことを特徴とする孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0022】
また、本発明のプログラムは、請求項12に記載のように、「前記二値化処理によって吐出孔が存在する位置として「明」と判断された画素群に対して、中央部に存在する画素群についてマスク処理を施し、マスク処理を施した画素群を孔内異物の検出領域から除外するマスク処理手順を含むことを特徴とする、請求項10に記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0023】
また、本発明のプログラムは、請求項13に記載のように、「複数の前記画像データ群のそれぞれに対して二値化処理によって「明」部と認識された画素群と「暗」部と認識された画素群との境界に位置する画素群を抽出する手順と、抽出した境界の画素群から隣接する画素同士をその中心点で順次結んだ線分長を総和して境界線長を算出する手順と、算出した前記境界線長が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物が存在すると判別する周長判別手順とを含むことを特徴とする、請求項10に記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0024】
また、本発明のプログラムは、請求項14に記載のように、「複数の前記画像データ群のそれぞれに対して二値化処理によって「明」部と認識された画素群が占有する面積値を求める手順と、該面積値を真円の面積値と仮想して該仮想真円の面積値から該仮想真円の円周長を求める手順と、前記前記仮想真円の円周長と前記境界線長との比を「真円度」として求める手順と、該「真円度」が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物が存在すると判別する周長判別手順とを含むことを特徴とする、請求項13に記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0025】
また、本発明のプログラムは、請求項15に記載のように、「複数の前記画像データ群の少なくとも一つの画像データに対して、二値化処理前に、各画素の明暗の諧調から所定の判別基準値によって「明」部と認識された画素群から吐出孔の中心座標を算出する手順と、該中心座標から放射状に吐出孔壁の存在方向へ向かって「明」部に認識された画素が尽きる位置までの距離をそれぞれ算出する手順と、算出した距離群の平均値を平均半径値Raveとして求める手順と、二値化処理後に、「明」部と判別された画素群から新たに算出した吐出孔の中心座標又は既に求めた前記中心座標から吐出孔壁側へ向かって「暗」部と判別された最初の画素に到達するまでの距離を放射状にそれぞれ探索する手順と、探索した距離群の中で最小の距離を最小半径値Rminとして求める手順と、前記平均半径値Raveと前記最小半径値Rminとの差又は比を算出する手順と、該差又は比が予め設定した判別条件を満足したことによって孔内異物が存在すると判別する半径判別手順とを含むことを特徴とする、請求項13に記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0026】
また、本発明のプログラムは、請求項16に記載のように、「前記面積判別手順、前記周長判別手順、そして前記半径判別手順の順で行う孔内異物の存在判別の手順で、何れかの手順において孔内異物が検出されると後続の手順を実行せずに、次の吐出孔の孔内異物検査に移る手順を有することを特徴とする、請求項15に記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明のプログラムは、請求項17に記載のように、「前記CCDカメラの撮像位置を撮像目標とする前記吐出孔の位置情報に基づいて位置決めする手順と、前記吐出孔を通過した光を画像として撮像する手順と、撮像した画像データから吐出孔の存在領域に位置する画素群を判別する手順と、判別した画素群から吐出孔の中心座標を算出する手順と、CCDカメラの撮像中心を算出した吐出孔の中心座標に合わせる位置補正を行う手順を含むことを特徴とする、請求項10〜16の何れかに記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【0028】
そして、本発明のプログラムは、請求項18に記載のように、「予め設定した吐出孔の中心位置の座標を原点にして、原点とした吐出孔を基準に自動的に全吐出孔の孔内異物の残存検査を行う手順を備えたことを特徴とする、請求項17に記載の孔内異物の検出プログラム」とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
請求項1又は請求項10に係わる本発明によれば、紡糸口金に穿設されたポリマーの吐出孔を通過した光を拡大レンズを具備したCCDカメラによって光学的に拡大した画像として撮像した場合に、吐出孔の奥行き方向に沿って複数の箇所で画像データを採取する。そして、このようにして複数箇所で採取した画像データ群を基にして、画像処理によって被写界深度などに影響されずに吐出孔内の異物を正確かつ確実に検出することができる。
【0030】
その際、請求項2又は請求項11に係わる本発明によれば、画像処理に供する画像データとして、二値化処理によって「明」と判断された画素群が占有する面積値の大小によって判別する「面積判別」を使用すると、簡便に孔内異物の有無を判別することができる。
【0031】
また、異物は吐出孔の壁面にに付着するので、異物の存在を吐出孔の中心部で確認するのではなく、吐出孔の壁面部、すなわち、周辺部で存在を確認することが、孔内異物の判別を迅速かつ正確に行う上で効果的である。そのために、請求項3又は請求項12の発明のように、吐出孔と認識された領域中でその中心部をマスク処理して、この領域を孔内異物を探索する画像処理領域から除外することが好ましい。
【0032】
なお、異物の形状が微小であったり、細長い形状で合ったりすると、異物が占有する面積が小さくなって、測定誤差の範囲に含まれてしまい、前述の異物の占有面積値による判別では異物の存在判別ができないケースが生じる場合がある。そこで、請求項4及び5、又は請求項13及び14に記載の発明のように、吐出孔壁部において、二値化処理によって「明」と判別された画素群と「暗」と判別された画素群との境界に位置する画素群を抽出し、吐出孔壁に付着した異物の輪郭形状を含む「周長判別」をすることによって、「面積判別」によって判別できなかった異物の存在を判別することができる。
【0033】
ところが、前述の被写界深度などの影響によって、異物が吐出孔壁から分離して撮像された画像データが得られる場合が生じる。特に、異物が吐出孔の奥行き方向に沿って延在するような場合に、このような現象が生ずる。このようなケースでは、前述のような「面積判別」及び「周長判別」によっても、正常に孔内異物の検出を行うことができない。しかしながら、請求項6又は請求項15に記載の本発明によれば、吐出孔の中心から全方位方向から異物までの距離を算出して、その距離の長短に応じて孔内異物の存在を判別するため、異物の位置が吐出孔の壁面から分離した状態の画像データであっても、孔内異物を判別することができる。
【0034】
このとき、更に請求項7及び8、又は請求項16に記載の発明のように、異物の検出を「面積判別」、「周長判別」、そして「半径判別」をこの順で実施することが孔内異物を確実かつ正確に判別する上で好ましく、その際、何れかの判別で孔内異物の存在が確認されたら、後続の「孔内異物の判別」を行わないようにすることが、孔内異物の判別を迅速に行う上で更に効果的である。
【0035】
最後に、請求項9、又は請求項17及び18に記載の発明のように、画像データを採取する吐出孔の位置を正常なデータが得られるように、自動的に最適な撮像領域内に収めるようにすることで、紡糸口金の設置位置がわずかにずれていても、紡糸口金に穿設された多数の吐出孔に対して、自動的に孔内異物の検出を行うことができるという極めて顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明においては、孔内異物の自動検査装置を使用して、吐出孔内に付着した異物を検査する。そこで、本発明に好適に使用できる孔内異物の自動検査装置について、先ず図1(模式斜視図)を参照しながら簡単に説明する。
【0037】
図1において、符号Cは長方形形状を有する紡糸口金であって、この紡糸口金Cには、図示したように複数の吐出孔Hが穿設されている。本発明の孔内異物の自動検査装置1は、この紡糸口金Cに穿設された吐出孔Hの下方から照明を照射して吐出孔Hを通過してきた光を、拡大レンズ4を装着したCCDカメラ3で撮像し、撮像した画像データを画像処理して吐出孔H内に残留する異物の有無を自動的に検査しようとする装置である。なお、10は画像処理装置である。
【0038】
なお、この自動検査装置1は、複数の吐出孔Hを有する紡糸口金Cを載置する支持台2に、それぞれ立体的に直交するX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に独立して摺動できるサーボモータを備えたスライド部材5,6,7を取付け、これらのスライド部材5,6,7に拡大レンズ4を装着したCCDカメラ3を取付ける。したがって、X軸、Y軸、及びZ軸の三軸方向に独立して摺動できるスライド部材5,6,7によってCCDカメラ3は紡糸口金Cに穿設された任意の吐出孔Hの位置(図1では、X−Y平面に沿った方向)と吐出孔Hの奥行き方向(Z軸方向)へ移動することができる。
【0039】
これを具現化するために、前記スライド部材5,6,7には、それぞれマルチサーボコントローラ8に接続されており、このマルチサーボコントローラ8によるスライド量制御によって、CCDカメラ3が任意の位置へ移動することを可能としている。なお、このマルチサーボコントローラ8は、コンピュータ9と接続され、このコンピュータ9に付属する記憶装置(図示せず)に予め記憶された吐出孔Hの穿孔位置に係わる情報を基にして、マルチサーボコントローラ8はスライド部材5,6,7の各スライド量を制御して、CCDカメラ3の位置を目的とする検査孔の位置に位置決めできるように構成されている。
【0040】
ここで、前記支持台2の下には図1には図示省略した照明12(後述の図2参照)が取付けられている。この照明12については、寿命が長く、熱を発生しにくく、高輝度で直進性に優れたスポット照明が可能な発光ダイオード(LED:light emitting diode)を使用することが好ましい。何故ならば、このようなLED照明12を使用することによって、例えば厚みが数cmほどにもなった紡糸口金Cに穿設され、しかも、孔径が小さい吐出孔Hであっても光が直進する指向性が向上して、光が吐出孔H内を通過し易くなるからである。なお、このようなLED照明12を捉えるCCDカメラ3として、本発明の例では、単焦点の光学式拡大レンズ4を装着した、ノイズ低減が期待できるメガピクセルのデジタルカメラを用いた。
【0041】
その際、前記照明12は、図2に例示したように、検査目標である吐出孔Hが穿設された紡糸口金Cを間に挟んで前記CCDカメラ3と正面から対向するように設けることが好ましい。そのためには、例えば、図2のように、紡糸口金Cの下方でCCDカメラ3に常に正面から対向する格好で連結部材11を介して、このLED照明12を連結部材11に固定する。
【0042】
そうすると、CCDカメラ3がどのような位置に移動しても、連結部材11に連結されたLED照明12は、CCDカメラ3の移動に常に同期して、CCDカメラ3の撮像位置に対応した位置に移動できる。そして、支持台2上に載置された紡糸口金Cの吐出孔Hの一つ一つにCCDカメラ3の撮像位置を順次合わせて、照明12から照射した光をCCDカメラ3で受光することによって孔内異物を検査することができる。
【0043】
ここで、本発明においては、以上に述べたCCDカメラ3において、その撮像位置を目標とする吐出孔Hの穿孔位置に位置決め制御する目的を達成するために、X軸とY軸とに沿ってそれぞれ移動するスライド部材5及び6とが使用される。このとき、スライド部材5及び6の移動量(スライド量)は、紡糸口金Cに穿孔された例えば数千個の吐出孔Hの穿孔位置(幾何形状)をコンピュータ9に付設されたハードディスクや半導体メモリーなどからなる記憶装置に記憶させておく。そして、この記憶装置に記憶された情報に基づいて、コンピュータ9によってマルチサーボコントローラ8を制御する。
【0044】
すなわち、スライド部材5及び6を駆動する各サーボモータに入力するパルス数を、コンピュータ9に記憶された目標とする吐出孔Hの位置情報に基づいて算出し、算出したパルスを指令値として各サーボモータに入力している。このようにして、CCDカメラ3を目標とする吐出孔Hの位置へ移動させる。このとき、CCDカメラを移動させた位置の吐出孔Hの散在位置が撮像領域からずれていた場合には、自動的にCCDカメラ3の撮像位置補正して、撮像領域内に収まるようにCCDカメラ3を正常な撮像位置へ微小移動させる。
【0045】
このようにして、検査目標とする吐出孔Hの撮像位置がCCDカメラ3の撮像範囲内に捉えられると、吐出孔Hの奥行き方向(Z軸方向)へCCDカメラ3の焦点距離を移動させながら、少なくとも2箇所(この2箇所は、“最も焦点距離が浅い吐出孔位置”と“最も焦点距離が深い吐出孔位置”である)で画像データを画像処理装置10に取り込む処理を実行し、画像処理によって吐出孔Hの内壁面に付着した異物の存在判別を行う。
【0046】
以下、このような吐出孔Hの内部に存在する異物の検出方法とその検出プログラムプログラムについて、では、大きく分けて二つの処理が行われる。
【0047】
以下、この本発明の自動検査装置1が行う吐出孔内に残留する異物を正確かつ精度よく検出する方法とそのプログラムについて、図3〜図7を参照しながら詳細に説明する。
なお、図3は、紡糸口金Cに穿設した円形断面を有する吐出孔Hの内部に付着した異物を画像処理によって検出するための方法と、これに用いるコンピュータ9で実行可能な異物検出プログラムの実行手順を示したフローチャートである。また、図4は、このとき行うCCDカメラ3による撮像位置の中心座標の判別処理の説明図であり、この処理を基にして、次段階の処理、すなわち、面積判別処理、周長判別処理及び半径判別処理が行われる。
【0048】
先ず、第一番目の中心座標の判別処理は、孔内異物の検出対象とする吐出孔Hの位置を正確に捉えた画像を得るための孔位置移動の処理(ステップS1)である。この処理(ステップS1)では、先ず,照明12から投光されて吐出孔Hを通過した光を非常に多くの画素(ピクセル:pixel)を有するCCDカメラ3で撮像し画像データとして取り込む(ステップS2)。そして、このようにして取り込んだ全画像データを画素毎に撮影された明暗の諧調数(例えば、明暗の諧調を256階調に分類する)に応じて、閾値(例えば、256階調に振り分って、256階調の中間諧調値をとる)を基準にして、コントラストが「明」の部分あるいは「暗」の部分の何れかの値に分別する処理(ニ値化処理)を行う(ステップS3)。
【0049】
つまり、この二値化処理(ステップS3)の実施形態例では、「明」と判別された全画素に例えば「1」を割り振り、「暗」と判別された全画素に対して例えば「0」を割り振るニ値化処理を行っている。なお、このようにして二値化処理(ステップS3)によって得られた画像データの「明」と認識された画素群は、吐出孔Hを通過した光を検出した画素群である。したがって、このような「明」と認識された全画素の集合体の存在領域を画像処理して認識することによって、吐出孔Hの正確な存在領域を判別することができる。なお、当然のことながら、このとき「暗」と判別された画素部は、吐出孔Hが存在しない部分である。
【0050】
そうすると、以上に述べたようにして、「“明”:“1”」と判別された画素群を用いると、吐出孔Hの中心位置(中心座標)Oを計算することが、次に例示するような処理(ステップS4)によってできることになる。そこで、この点について図4を参照しながら以下に説明する。
【0051】
先ず、既に述べたように、コンピュータ9に記憶された撮像目標の吐出孔Hの位置座標からCCDカメラ3の位置を吐出孔Hの撮像位置へ移動させる。そして、CCDカメラ3の撮像位置が目標とする吐出孔Hを撮像できる領域内への移動が完了すると、目標とする吐出孔Hを撮影して画像データを得て、撮影した画像データを基にして前述のように二値化処理した「明」画素群から吐出孔Hが存在する領域の中心座標(すなわち、吐出孔Hの中心座標である)を算出し、この中心座標が「中心座標の判別領域S」の内部に位置しているか否かを判別する(ステップS4)。
【0052】
すなわち、このステップS4について、より具体的に図4を参照しながら説明する。ステップS4では、図4では4つケースにおける一点鎖線で例示した吐出孔H〜Hの存在領域に関して、その何れの中心O〜Oも中心座標の判別領域Sの内部に位置しているかどうかを判断する。しかしながら、この図4の4つのケースでは、吐出孔H〜Hの中心O〜Oが「中心座標の判別領域S」の内部に存在していない。そうすると、吐出孔H〜Hの中心O〜Oを「中心座標の判別領域S」の内部に位置するようにCCDカメラ3の撮像位置を移動する必要があることが以下に述べるような手順によってコンピュータ9に認識される。
【0053】
すなわち、この処理(ステップS4)では、先ず、「明:“1”」に割り振られた画素群は吐出孔Hが存在する位置である。ここで、数値によって具体的にステップS4を説明するために、吐出孔Hが存在する「明」に割り振られた全ての画素がn個存在したと仮定する。そうすると、この「明」に割り振られた任意の画素のX座標とY座標とを(Xo,Yo)で表すと、吐出孔Hの中心位置Oの座標(XOi,YOi)は、下記の(1)式のように表すことができる。なお、以下の実施形態例の説明において、吐出孔Hの中心座標O(XOi,YOi)は、このようにして求めるものとする。
【0054】
【数1】

【0055】
以上に述べたようにして、吐出孔Hの中心座標O(XOi,YOi)が求まると、この中心座標O(XOi,YOi)の位置が正常な画像データ撮像領域内(中心座標判別領域Sの内部)に収まっているか否かを判断して、CCDカメラ3で吐出孔Hを撮像する位置が正常か否かを判定する。このとき、CCDカメラ3で吐出孔Hを撮像する位置が正常ではない、すなわち、「否(NO)」と判断されると、CCDカメラ3を移動させて撮像位置を補正する。すなわち、吐出孔Hの位置が一部でも撮像領域をずれて撮像領域外にある場合には、CCDカメラ3の撮像位置の補正を行って、撮像領域内に位置するようにCCDカメラ3の撮像位置を移動させる(ステップS5)。
【0056】
このCCDカメラ3の撮像位置を補正する際には、全撮像領域D(すなわち、CCDカメラ3の全画素の存在領域である)の中心座標C(Xc,Yc)を前述のようにして求めた吐出孔Hの中心座標O(XOi,YOi)に重なる方向へと移動させることによって行われる。すなわち、CCDカメラ3の撮像中心CをX軸方向へ(XOi−Xc)、Y軸方向へ(YOi−Yc)だけ、マルチサーボコントローラ8によってCCDカメラ3を移動させる。したがって、例えば、吐出孔Hを撮像する際に、CCDカメラ3をセットする位置が吐出孔Hから数十〜数百μmずれていたとしても、吐出孔Hの原点O(吐出孔Hの中心座標)を自動的にさがして位置補正することができる。なお、この位置補正は吐出孔Hの全体がCCDカメラ3の所定の撮像領域Sの内部に入るまで続けられ、吐出孔Hの位置が所定の撮像領域Sの内部に収まったときに終了する(ステップ5に移行する)。
【0057】
しかしながら、このような方法でCCDカメラ3を正確に吐出孔Hの中心にセットして撮像した画像データであっても、孔内異物を正確かつ確実に検出するためには、背景技術欄で詳細に説明したような問題がある。すなわち、異物が吐出孔Hの奥深く存在する場合と、浅い位置に存在する場合とでは、CCDカメラ3に装着する拡大レンズ4と紡糸口金Cとの間の焦点距離が変わるため、被写界深度をこえて画像がピンぼけとなる事態が生じる問題である。もし、このような現象が生じていると、異物の認識が不十分となって、当然のことながら、吐出孔H内の異物を検出する精度が悪くなる。
【0058】
ところが、吐出孔H内の異物の検出においては、孔径が0.01mm〜数mmの吐出孔Hを通過した光を拡大レンズ4によって例えば数cmまで拡大しなければ、非常に微細な汚れについては検知できない。そうだとすると、被写界深度が吐出孔Hの奥行き方向で大きく変化するため、吐出孔Hの手前側に異物が存在する場合と、奥側に異物が存在する場合とで得られる画像データの鮮明度が異なることとなる。それにもかかわらず、一律に拡大レンズ4で撮像する吐出孔Hの焦点距離を一定に設定してしまうと、得られる画像データが異物の付着箇所によって明瞭になったり、不明瞭になったりするという背景技術欄で述べたような問題を惹起する。
【0059】
そこで、本発明の自動検査装置1では、吐出孔Hの奥行き方向に存在する異物も鮮明な画像データとして検出できるように、取り込んだ画像のコントラスト(明暗の諧調)を判定基準に前記スライド部材7を高さ方向(すなわち、Z軸方向)にスライドさせて、CCDカメラ3の焦点距離を吐出孔Hの奥行きに合わせて微調節しながら、取り込む画像のピントを順次合わせて撮像した複数の画像データ群を利用する。
【0060】
このとき、画像データを取り込む奥行き方向(Z軸方向)の撮像位置の数(すなわち、画像データの数)は、焦点距離をできるだけ微調整しながら多くの箇所で採取することが好ましい。なお、このとき吐出孔Hの奥行き方向に沿って取り込む画像データの数を本発明においては制限する理由はないが、後述する画像処理装置10による画像処理を迅速かつ精度良く行うためには、吐出孔Hの孔長にもよるが、通常、2〜10箇所でCCDカメラ3の焦点距離を調整しながら画像データを取り込むことが好ましく、画像処理の速度を考慮すると、より好ましくは、3〜5箇所である。
【0061】
次に、第二番目の処理は、以上のようにして取り込んだ複数の画像データから吐出孔Hに付着した異物の検出を行うための一連の処理(ステップS7〜S9)である。ここでは、孔内異物を正確に検出するために、以下に説明する三つの処理(ステップS7〜S9)が行われる。
【0062】
[面積判別処理(ステップS7)]
この処理(ステップS7)では、先ず、円形断面を有する吐出孔Hの奥行き方向に沿って、CCDカメラ3で撮像したN箇所の画像データ群を画像処理装置10に取り込んでステップS3で説明したものと同様の二値化処理を行う。次に、二値化処理によって、「明:“1”」に振り分けられた全画素データ群から「明:“1”」の画素データ群が占有する面積値を計算する。そして、計算された吐出孔H部分の面積値から孔内異物の存在を判別する処理である。
【0063】
すなわち、このステップS7の処理では、既に吐出孔Hの奥行き方向(Z軸方向)のN箇所で画像データ群が画像処理装置10に取り込まれているので、この画像データ群からN個の面積値A,A,…,Aを求めることができる。ただし、このとき求める面積値A,A,…,Aについては、図5に示したように吐出孔Hの中心から数十%の領域(図5のB領域)についてマスク処理を施す。
【0064】
なお、このマスク処理は前述の二値化処理の前に行うことが好ましい。何故ならば、このマスク処理される部分は必然的に「暗:“0”」の領域と認識されるために、このような領域を孔内異物の存在を探知するための二値化処理の対象とする必然性が無いからである。なお、当然のことながら、このマスク処理は必須の処理というわけではなく、このようなマスク処理を行わなくとも、面積値A,A,…,Aの計算は可能である。また、ここでは、マスク処理を面積値A,A,…,Aの計算について行っているが、後述するように、周長判別処理及び半径判別処理に対しても行うことができる。
【0065】
ここで、本発明においてこのようなマスク処理を行う理由は、検出対象となる異物は当然のことながら吐出孔Hの壁面に付着しているからである。したがって、通常の状態では異物の存在確率が低い中央部(マスク領域)を孔内異物の検査の対象領域から排除して、異物が存在すれば、非常に高い確率で異物を検出できる吐出孔Hの壁面部のみ(マスク領域外)を検査することによって、画像処理の速度向上と、異物の検出精度の向上との両立を図っている。
【0066】
以上に述べたようにして、吐出孔Hの奥行き方向(Z軸方向)に沿ってN箇所で求めた面積値A,A,…,Aと、異物の存在確認のために、各面積値A,A,…,Aにそれぞれ対応させて、予めN箇所の基準面積値A1ref,A2ref,…,ANrefを設定しておき、各面積値A,A,…,Aを対応する各基準面積値A1ref,A2ref,…,ANrefと比較する。そして、基準より小さいものが一つでもあれば、異物が存在するとして認識する。ただし、この面積値による異物の検出処理(ステップS7)では、マスク領域(B領域)は面積値A,A,…,Aの計算から除外してもよい。しかしながら、以下の説明では、マスク領域(B領域)は、吐出孔Hの存在領域(「明」と判別された面積値)に自動的に加算されて計算されるものとして説明する。
【0067】
前述のように、面積値A,A,…,Aの算出によって孔内異物の存在を検出することができる(なお、図7(a)も参照のこと)が、面積値A,A,…,Aによる異物の検出だけに頼っていると、異物が占める面積値が小さい場合、すなわち例えば、図7(b)に示したように、異物が細長い形状であったり、微小形状であったりすると、異物が占有する部分の面積値が過小に評価されてしまい、予め設定しておいた基準面積値A1ref,A2ref,…,ANrefでは異物と判断できない測定誤差の範囲内に含まれてしまうことがある。そうすると、このような細長い形状や微小形状を有する異物が孔内に存在しても検出されないために、その検出精度が悪くなる、という問題が生じる。
【0068】
[周長判別処理(ステップS8)]
そこで、このような問題を回避するために、面積値による異物の存在判定で異物なしと判断された場合であっても、見逃される可能性のある、細長い形状あるいは微小形状を有する孔内異物の検出処理として、以下に述べる第二段階の処理(ステップ8)を実施する。この処理(ステップS8)は、吐出孔Hの「明」部と「暗」部とを区切る境界線の長さを求める処理であって、次に述べるような諸手順よりなる。なお、本発明では、この“境界線の長さを求める処理”を“円周長を求める処理”という。
【0069】
<手順1>:既に述べたように、二値化により「明」と「暗」に分けられた各画素群データから「明」と「暗」との「境界」に位置する画素群(図6の点線で示した部分の画素群)を探して「境界」に位置する抽出する。そして、このようにして抽出した境界に位置する画素群中から互いに隣接する画素同士をその中心点で次々と順番に結んで行った線分の長さを総和し、総和した線分長を境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefとする。
【0070】
このようにして境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefが求められると、例えば、異物が吐出孔H壁に付着していると、境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefの各値は、当然のことながら、図6に示したように異物が付着していない場合よりも大きな値となる。したがって、この境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefが判別基準値よりも大きくなると孔内異物が存在すると判別することができる。ただし、この判別基準値は、実験などで最適値に予め設定されていることは言うまでもない。このように、基本的には、孔内異物の判別処理として、境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefだけを用いても、孔内異物を判別することはできる。
【0071】
<手順2>:しかしながら、背景技術欄で述べたように、被写界深度などの要因から、境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefは常に一定であるとは限らず、吐出孔Hの奥行き方向で異なったり、測定する吐出孔毎に異なったりする。そこで、前述のN箇所で撮像した画像データ群からそれぞれ求めた面積値A,A,…,Aを“真円の面積値”と仮想し、この仮想真円の円周長L,L,…,Lを前述の面積値A,A,…,Aから求める手順を行う。なお、このとき求める任意の仮想真円の面積値をAとすれば、図6に示したように、この仮想真円の円周長Lは、円周率を慣例に従ってπと表記すれば、下記の(2)式によって求めることができる。
【0072】
【数2】

【0073】
<手順3>:以上に述べたように<手順1>と<手順2>とによって、前記仮想真円の円周長L,L,…,Lと、これにそれぞれ対応する前記境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefとが求まると、これらの比(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)をそれぞれ計算する。なお、本発明においては、これらの各比(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)を“真円度”と定義する。
【0074】
このようにして、前述の<手順1〜3>によって、吐出孔Hの奥行き方向のN箇所で採取した画像データ群からN個の真円度(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)が求まると、これらの真円度(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)によって、孔内異物をより正確に検出することができる。次に、その原理について以下に説明する。
【0075】
先ず、吐出孔Hの奥行き方向のN箇所で採取したN個の画像データ群から求めた面積値A,A,…,Aから前記(2)式により算出される仮想真円の円周長L,L,…,Lは、異物によって通過光が遮られた面積分だけ短くなっている。これに対して、前述の<手順1>によって求めた境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefでは異物が存在すれば、異物の輪郭をも取り込んで計算された長さとなるから、異物が無い場合に計算された値よりも当然のことながら、その長さはより長く計算されることになる。
【0076】
したがって、異物が吐出孔壁に付着しない場合と比較して、異物が付着しているとより短く算出される仮想真円の円周長L,L,…,Lと、より長く算出される前記境界線長L1ref,L2ref,…,LNrefとの比で定義される真円度(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)は、異物が付着していれば、より強調された値となるため、孔内異物の判別処理に使用する指標としてより好都合である。
【0077】
これに対して、吐出孔Hの壁面に付着していなければ、理論的にはLとLirefとは同じ値になるから、その真円度(L/Lire f)の値は、「1」となる。ただし、理論値とは異なって測定値には測定誤差が入ると共に、LとLirefとの定義の違いによる差も出るため、実際には精確に「1」となることはない。
【0078】
なお、本発明で言う真円度(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)から孔内異物を判別するための判別基準値が必要であるが、この判別基準値は予め実験などによって好ましい値を選定しておくことは当然である。このようにして、真円度(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)が求まると、前記判別基準値を超える条件を少なくとも一つの真円度(L/L1ref,L/L2ref,…,L/LNref)が満たした場合に、孔内異物が存在していると明確に判別することができる。
【0079】
以上に述べたように、真円度による孔内異物の検出処理(ステップS8)は、既にマスク処理の説明に際して述べたように、異物は吐出孔Hの壁面に付着するため、このような異物を画像処理によって検出するために、壁面部に付着した異物の輪郭部を取り込む処理によって孔内異物を検出することは、極めて効果的な処理である。なお、この判別方法は、吐出孔Hのエッジ部が許容範囲に入ることが前提ではあるが、ある程度磨耗した場合にも有効な孔内異物の検出方法となる。
【0080】
しかしながら、真円度による孔内異物の検出処理(ステップS8)においても問題がある。その問題とは、異物が吐出孔Hの奥行き方向に延在して存在する場合には、図7(c)に例示したように、異物が吐出孔壁に付着して接触する部分が、被写界深度などの影響でCCDカメラ3の焦点調整がうまく調整できずにピンボケとなってしまって、画像処理で「明」部と判断されてしまい、「暗」部と認識されない場合である。
【0081】
このような場合には、ステップS8の境界線長を基本的に用いる孔内異物の判別処理(検出処理)では、異物が検出されないケースが生じる。そこで、このような場合であっても、孔内異物を正常かつ正確に検出するために、次に述べるような第三番目の処理(ステップS9)を行う。
【0082】
[半径判別処理(ステップS9)]
この処理(ステップS9)では、先ず、図8(a)に示したように、撮像したN個の画像データ群を予め設定した判別基準値(閾値)に基づいた二値化処理を実施する前に、明暗(コントラスト)の諧調から吐出孔Hの存在領域に位置する画素群を「明」と判別する処理を行う。そして、このようにして「明」と判別した画素群から、例えば前述の(1)式などを用いて「吐出孔Hの中心座標O(X,Y)」を求める。
【0083】
次に、このようにして求めた中心座標O(X,Y)から図8(a)の有向線分で示した矢印方向(この図8(a)では12方向の例を示す)へ全方位(角度360°)に渡って、前記「明」と判別した画素が尽きるまでの距離を、多数の方位(図8(a)の例では12方位)に渡って放射状に吐出孔壁が存在する方向へ求める。
【0084】
具体的には、図8(a)に示すように、全方位である360°をm等分したm個の方位(図8(a)の例では、説明を簡潔に行う都合上、「12方位」に設定してある)のそれぞれに対して、中心座標O(X,Y)から「明」と判別された画素が尽きるまでの距離(この“距離”を本発明では“半径値”という)を放射状に吐出孔壁が存在する方向へ求める。すなわち、図示したように、半径値R,R,…,Rをそれぞれ求める。なお、この方位の数としては、特に制限する理由は無い。しかしながら、画像処理の速度などを考慮すると、不必要に多くの方位を採用する理由も無い。したがって、画像データとして取り込む画素数に依存するが、この段階では、具体的な方位数としては、例えば10〜100方位とすればよい。
【0085】
更に、これらの半径値R,R,…,Rから下記(3)式によって、平均半径値Raveを求める。なお、これらの処理を二値化処理前に行うのは、これらの処理によって、孔内異物の存在領域を検出することは目的とせず、単に前記平均半径値Raveを求めることに専念しているからである。
【0086】
【数3】

【0087】
以上に述べた二値化処理前の平均半径値Raveを求める処理が終了すると、次に、二値化処理後の半径値群を求める手順に移る。なお、ここで、二値化処理する意義は、異物が存在する画素データ領域をより明瞭かつ正確に認識することにある。この手順では、先ず既に説明したようにして二値化処理をした後の画像データから新たに吐出孔Hの中心座標O(X,Y)を前述の(1)式などから求める。なお、ここでは、中心座標O(X,Y)を二値化処理後に新たに求めているが、新たに求めることなく、二値化処理前に求めたものをそのまま流用して用いても良い。
【0088】
このようにして、吐出孔Hの中心座標Oが求まると、次に、図8(b)に示した矢印方向に、求めた中心座標Oから二値化処理によって「明」と「暗」との「境界」に位置する画素までの距離(この距離が求める「半径値」である)を多数の方位に渡って求める。
【0089】
次に、このようにして多数の方位に渡って求めた半径値群の中で最小の半径値(Rmin)を抽出する。このようにして抽出した最小の半径値Rminは、図8(c)に示したように、吐出孔Hの中心Oから最も近い異物までの距離(図8(c)に示した内接円Cの半径)であり、異物がある場合には、この値Rminは前述の平均半径値Raveより小さくなる。なお、このようにして求めた最小半径値Rminは、図8(c)に示したように、異物の存在領域が被写界深度などの影響によって吐出孔Hの壁面から遊離して検出された場合であっても、良好に孔内異物を検出できるという大きな特長を有している。
【0090】
なお、この「最小半径値Rmin」を求めるのに際して、微小形状の異物を検出するためには、異物を探索する方位数は、画像を処理する時間が許す限り、全方位(角度360°)を可能な限り細分化して探索することが好ましい。当然のことながら、このとき選択する方位数は、検出したい異物の形状や画像データを構成する画素数によって左右されるため、検出したい異物の形状や大きさに応じて適宜選択すればよい性質のものである。しかしながら、画像処理の速度などを考慮すると、通常の条件では20〜720方位とすることが好ましい。
【0091】
以上に述べたように、二値化処理前に検出した平均半径値Raveと、二値化処理後に検出した最小半径値Rminとを比較して、その半径差(ΔR)を下記(4)式から求めて、この半径差ΔRが所定の判別基準値(予め実験などによって選定した閾値)を超えた場合に、孔内異物が存在していると認識する。なお、本発明では、演算の簡便性から半径差ΔRを異物の判別指標として採用したが、平均半径値Raveと最小半径値Rminとの比すなわちRave/Rminを評価指標として採用することもできる。
【0092】
【数4】

【0093】
このようにして、一つの吐出孔Hに対して孔内異物の残留検査が終了すると、次の吐出孔Hに対する孔内異物の残留検査を行うために、CCDカメラ3が移動して、次々と孔内異物の検査が実施される。そして、紡糸口金Cに穿設された全ての吐出孔Hの検査を実行する。なお、孔内異物が検出された吐出孔Hはコンピュータ9に設けられた記憶装置に記憶され、この記憶された情報を基にして孔内異物が残留する吐出孔Hから異物を取り除くための清掃が行われることは言うまでも無い。
【0094】
以上に詳細に説明したように、本発明では、前述のように三段階の処理(ステップS7〜S9)を行って孔内異物の判別処理を行っているが、第一段階の処理(ステップS7)で孔内異物が検出された場合には、その後の第二段階の処理(ステップS8)と第三段階の処理(ステップS9)をスキップするようにすることもできる。また、第一段階の処理(ステップS7)で「孔内異物の存在が無い」と判別された後、第二段階の処理(ステップS8)に移って、この処理で「孔内異物が存在する」と判別された場合には、第三段階の処理(ステップS9)をスキップするようにすることもできる。勿論、孔内異物の検出の有無にかかわらず、これらの三つの処理(ステップS7〜S9)を全て行うようにしてもよい。更には、検出する孔内異物の形状などの条件に合わせて、これらの三つの処理(ステップS7〜S9)を相互に関連を持たせずに、それぞれ単独で実施するようにしてもよい。
【0095】
以上に述べたようにして、画像処理されて孔内異物の有無が検査された後のデータは、各吐出孔Hの位置情報をもとに、記憶装置に逐一記憶しておき、検査後に検査の係りの作業者が目視で不良と判別された吐出孔を再確認するようにすることもできる。その際、当然のことながら、目視確認を行いながら、作業者が拡大鏡などを使用しつつ針状治具などを用いて孔内異物の除去作業を行い、異物を吐出孔Hからきれいに除去することもできる。このとき、本発明では、吐出孔Hの奥行き方向に沿ってN箇所から撮像された画像データによる孔内異物の判別処理を行っているため、吐出孔のどの位置(手前側か、奥側か)に異物が付着しているかを作業者に知らせることも可能である。また、本発明によると、合成繊維生産時に使用される紡糸口金Cの異物残留検査を容易に行えることで、省力化につながり、または労務費の低減にもつながる。
【0096】
なお、本発明の説明ではX軸方向、Y軸方向、そして、Z軸方向の三軸方向へ移動可能な直交座標系のマルチサーボモータを使用した例について述べた。このようなシステムを使用すれば、長方形型口金であっても、あるいは円形型口金であっても自動検査が可能である。しかしながら、円形型口金に対しては、回転ステージなどを有する極座標系のマルチサーボモータを利用して孔内異物を検査するシステムを構築することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に使用できる孔内異物の自動検査装置の実施形態例を示す模式斜視図である。
【図2】照明とCCDカメラ3とが連動する様子を説明するための模式説明図である。
【図3】吐出孔内に付着した異物を画像処理によって検出するためのコンピュータで実行可能な異物検出プログラムの実行手順を示したフローチャートである。
【図4】マスク処理の説明図である。
【図5】吐出孔の撮像中心の位置決め処理の説明図である。
【図6】本発明における「周長判別処理」の説明図である。
【図7】3種類の孔内異物の検出方法の特徴を説明するための図である。
【図8】本発明における「半径判別処理」の説明図である。
【符号の説明】
【0098】
S1〜S8:吐出孔内に付着した異物を画像処理によって検出する各処理ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性高分子重合体を紡出するために紡糸口金に穿設した円形断面を有する吐出孔の内部に付着した異物を、画像処理によって検出するための異物検出方法において、
A.前記吐出孔の一方側から光を照射し、
B.該吐出孔を通過した光を吐出孔の奥行き方向に沿って被写界深度が異なる複数箇所において電荷結合素子カメラ(CCDカメラ)で光学的に画像を拡大してそれぞれ撮像し複数の画像データ群を取得し、
C.撮像した前記画像データ群に含まれる画素群の明暗の諧調を画像処理装置にそれぞれ記憶し、
D.予め設定した判別基準値を基にして各画像データに含まれる画素群を「明」と「暗」との何れかの値にそれぞれ振り分ける二値化処理を行い、
E.二値化処理された各画像データから画像処理によって吐出孔の奥行き方向に沿って存在する孔内異物の存在を判別する、
ことを特徴とする孔内異物の検出方法。
【請求項2】
前記画像処理が、吐出孔を通過した光を検出して「明」と判断された画素群が占有する面積値の大小によって判別する面積判別処理であることを特徴とする、請求項1に記載の孔内異物の検出方法。
【請求項3】
前記吐出孔を通過した光を検出する画素群に対して、中央部を通過した光を検出する画素群についてマスク処理を施し、マスク処理を施した画素群を孔内異物の検出領域から除外することを特徴とする、請求項1又は2に記載の孔内異物の検出方法。
【請求項4】
前記画像処理が、撮像された複数の前記画像データ群のそれぞれに対して前記二値化処理において「明」部と認識された画素群と「暗」部と認識された画素群との境界に位置する画素群を抽出すると共に、隣接する画素同士をその中心点で順次結んだ線分長を総和して算出される境界線長が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物の存在を判別する周長判別処理であることを特徴とする、請求項1に記載の孔内異物の検出方法。
【請求項5】
前記画像処理が、撮像された複数の前記画像データ群のそれぞれに対して前記二値化処理において「明」部と認識された画素群が占有する面積値を求め、該面積値を真円の面積値と仮想して該仮想真円の面積値から仮想真円の円周長を求め、前記前記仮想真円の円周長と前記境界線長との比を「真円度」として求め、該「真円度」が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物の存在を判別する周長判別処理であることを特徴とする、請求項4に記載の孔内異物の検出方法。
【請求項6】
前記画像処理が、撮像された複数の前記画像データ群に対して下記F〜Hに記載の半径判別処理であることを特徴とする、請求項1に記載の孔内異物の検出方法。
F.複数の前記画像データ群の少なくとも一つの画像データに対して、二値化処理前に、各画素の明暗の諧調から所定の判別基準値によって「明」部と認識された画素群から吐出孔の中心座標を算出し、該中心座標から放射状に吐出孔壁の存在方向へ向かって「明」部に認識された画素が尽きる位置までの距離をそれぞれ算出し、算出した距離群の平均値を平均半径値Raveとして求め、
G.二値化処理後に、「明」部と判別された画素群から新たに算出した吐出孔の中心座標、又は前記Fで求めた中心座標から吐出孔壁側へ向かって「暗」部と判別された最初の画素に到達するまでの距離を放射状にそれぞれ探索し、探索した距離群の中で最小の距離を抽出し、これを最小の半径値Rminとして求め、
H.前記平均半径値Raveと前記最小半径値Rminとの差又は比を算出して、これらの値が予め設定した判別条件を満足したことによって孔内異物の存在を判別する。
【請求項7】
請求項1に記載の画像処理が、前記面積判別処理、前記周長判別処理、そして前記半径判別処理の順で行う孔内異物の存在判別の処理であることを特徴とする、孔内異物の検出方法。
【請求項8】
前記面積判別処理、前記周長判別処理、そして前記半径判別処理の順で行う孔内異物の存在判別の処理で、何れかで孔内異物が検出されると後続の処理をパスして次の吐出孔の孔内異物の検査に移ることを特徴とする、請求項7に記載の孔内異物の検出方法。
【請求項9】
前記CCDカメラの撮像位置を撮像目標とする前記吐出孔の位置情報に基づいて位置決めして吐出孔を通過した光を画像として撮像し、撮像した画像データから吐出孔の存在領域に位置する画素群を判別し、判別した画素群から吐出孔の中心座標を算出し、CCDカメラの撮像中心を算出した吐出孔の中心座標に合わせる位置補正を行うことを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の孔内異物の検出方法。
【請求項10】
熱可塑性高分子重合体を紡出するために紡糸口金に穿設された円形断面を有する吐出孔の内部に付着した異物を画像処理によって検出するために用いるコンピュータで実行可能な異物検出プログラムにおいて、
前記吐出孔の一方側から照射されて吐出孔を通過した光を、電荷結合素子カメラ(CCDカメラ)で光学的に拡大された複数の画像データ群として画像処理装置に取り込む手順と、
複数の前記画像データ群に含まれる画素群の明暗の諧調をそれぞれ記憶し、予め設定した判別基準諧調値を基準にして記憶した各画像データに含まれる画素群を「明」と「暗」との何れかの値にそれぞれ振り分ける二値化処理を行う手順と、
二値化処理された各画像データから画像処理によって吐出孔の奥行き方向に沿って存在する孔内異物の存在を判別する手順と
を含むことを特徴とする孔内異物の検出プログラム。
【請求項11】
前記二値化処理によって「明」と判断された画素群が占有する面積値の大小によって孔内異物の存在を判別する画像処理である面積判別手順を含むことを特徴とする孔内異物の検出プログラム。
【請求項12】
前記二値化処理によって吐出孔が存在する位置として「明」と判断された画素群に対して、中央部に存在する画素群についてマスク処理を施し、マスク処理を施した画素群を孔内異物の検出領域から除外するマスク処理手順を含むことを特徴とする、請求項10に記載の孔内異物の検出プログラム。
【請求項13】
複数の前記画像データ群のそれぞれに対して二値化処理によって「明」部と認識された画素群と「暗」部と認識された画素群との境界に位置する画素群を抽出する手順と、抽出した境界の画素群から隣接する画素同士をその中心点で順次結んだ線分長を総和して境界線長を算出する手順と、算出した前記境界線長が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物が存在すると判別する周長判別手順とを含むことを特徴とする、請求項10に記載の孔内異物の検出プログラム。
【請求項14】
複数の前記画像データ群のそれぞれに対して二値化処理によって「明」部と認識された画素群が占有する面積値を求める手順と、該面積値を真円の面積値と仮想して該仮想真円の面積値から該仮想真円の円周長を求める手順と、前記前記仮想真円の円周長と前記境界線長との比を「真円度」として求める手順と、該「真円度」が予め設定された判別基準値を超えたときに孔内異物が存在すると判別する周長判別手順とを含むことを特徴とする、請求項13に記載の孔内異物の検出プログラム。
【請求項15】
複数の前記画像データ群の少なくとも一つの画像データに対して、二値化処理前に、各画素の明暗の諧調から所定の判別基準値によって「明」部と認識された画素群から吐出孔の中心座標を算出する手順と、該中心座標から放射状に吐出孔壁の存在方向へ向かって「明」部に認識された画素が尽きる位置までの距離をそれぞれ算出する手順と、算出した距離群の平均値を平均半径値Raveとして求める手順と、二値化処理後に、「明」部と判別された画素群から新たに算出した吐出孔の中心座標又は既に求めた前記中心座標から吐出孔壁側へ向かって「暗」部と判別された最初の画素に到達するまでの距離を放射状にそれぞれ探索する手順と、探索した距離群の中で最小の距離を最小半径値Rminとして求める手順と、前記平均半径値Raveと前記最小半径値Rminとの差又は比を算出する手順と、該差又は比が予め設定した判別条件を満足したことによって孔内異物が存在すると判別する半径判別手順とを含むことを特徴とする、請求項13に記載の孔内異物の検出プログラム。
【請求項16】
前記面積判別手順、前記周長判別手順、そして前記半径判別手順の順で行う孔内異物の存在判別の手順で、何れかの手順において孔内異物が検出されると後続の手順を実行せずに、次の吐出孔の孔内異物検査に移る手順を有することを特徴とする、請求項15に記載の孔内異物の検出プログラム。
【請求項17】
前記CCDカメラの撮像位置を撮像目標とする前記吐出孔の位置情報に基づいて位置決めする手順と、前記吐出孔を通過した光を画像として撮像する手順と、撮像した画像データから吐出孔の存在領域に位置する画素群を判別する手順と、判別した画素群から吐出孔の中心座標を算出する手順と、CCDカメラの撮像中心を算出した吐出孔の中心座標に合わせる位置補正を行う手順を含むことを特徴とする、請求項10〜16の何れかに記載の孔内異物の検出プログラム。
【請求項18】
予め設定した吐出孔の中心位置の座標を原点にして、原点とした吐出孔を基準に自動的に全吐出孔の孔内異物の残存検査を行う手順を備えたことを特徴とする、請求項17に記載の孔内異物の検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−267000(P2006−267000A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88244(P2005−88244)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(303000545)帝人コードレ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】