説明

干渉計

【課題】移動体までの距離を安全に測定することができる干渉計を提供すること。
【解決手段】干渉計1Aは、干渉計1Aから射出される光の光量を調整可能に構成された調光手段3Aと、受光手段47,49の受光量が所定の第1閾値以下か否かを判定する第1判定手段と、第1判定手段が、受光量が第1閾値以下と判定した場合、調光手段3Aに、干渉計1Aから射出される光の光量の低減を命じる低減信号を出力する低減信号出力手段とを備える。調光手段3Aは、低減信号が入力された場合、光源から射出される光の光量を低減させる。従って、干渉計1Aが反射体101を見失ってしまった場合、調光手段3Aが干渉計1Aから射出される光の光量を低減させることとなるので、干渉計1Aの周囲で作業する人に干渉計1Aから測定光が照射されてしまうことを防止でき、移動体2までの距離を安全に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に取り付けられた再帰反射体までの距離を測定する測定装置として、例えば追尾式レーザ干渉計が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の追尾式レーザ干渉計は、レーザ光を測定光と参照光とに分割し、測定光を移動体に取り付けられた再帰反射体(レトロリフレクタ)に向けて射出する。そして、再帰反射体からの戻り光のずれ量が所定範囲内に収まるようにレーザ光の射出方向を制御することにより再帰反射体を追尾する。また、特許文献1に記載の追尾式レーザ干渉計は、参照光を参照面にて反射させ、前記参照面にて反射された参照光と再帰反射体からの戻り光との干渉光を用いて再帰反射体(移動体)までの距離を測定する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−57522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような追尾式レーザ干渉計では、測定光が再帰反射体から外れたり、干渉計と再帰反射体との間に障害物が位置してしまうことにより、再帰反射体からの戻り光が干渉計に戻らなかった場合、再帰反射体を見失ってしまい、該見失った方向に測定光を射出し続けてしまうことになる。そのため、このような追尾式レーザ干渉計を用いて再帰反射体までの距離を測定する場合には、干渉計が再帰反射体を見失ってしまった際に、干渉計の周囲で作業する人に干渉計から測定光が照射されてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、反射体までの距離を安全に測定することができる干渉計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の干渉計は、光を射出する光源と、移動体に取り付けられて前記光源から射出される光を反射する反射体と、前記反射体にて反射された光を受光して受光信号を出力する受光手段と、前記受光信号を用いて前記反射体までの距離を算出する距離算出手段とを備える干渉計であって、前記光源から射出される光の光量を調整可能に構成された調光手段と、前記受光信号に基づいて前記受光手段の受光量が所定の第1閾値以下か否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段が、前記受光量が前記第1閾値以下と判定した場合、前記調光手段に、前記光源から射出される光の光量の低減を命じる低減信号を出力する低減信号出力手段とを備え、前記調光手段は、前記低減信号が入力された場合、前記光源から射出される光の光量を低減させることを特徴とする。
なお、「光源から射出される光の光量を低減させる」とは、光源による光の射出を停止させることも含む。
【0007】
本発明によれば、光源から射出した光が反射体から外れたり、干渉計と反射体との間に障害物が位置してしまうことにより、反射体からの戻り光が干渉計に戻らず、干渉計が反射体を見失ってしまった場合、第1判定手段が、受光手段の受光量は所定の第1閾値以下であると判定し、低減信号出力手段が調光手段に低減信号を出力する。そして、低減信号を入力された調光手段が、光源から射出される光の光量を低減させる。このように、本発明では、反射体からの戻り光が干渉計に戻らず、干渉計が反射体を見失ってしまった場合、光源から射出される光の光量を低減させることができ、干渉計の周囲で作業する人に干渉計から測定用の強い光が照射されてしまうことを防止することができる。従って、反射体までの距離を安全に測定することができる。
【0008】
本発明の干渉計では、前記調光手段は、前記光源から前記反射体に向けて射出される光を遮断可能なシャッタを備えることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、調光手段はシャッタを備えるので、低減信号が入力された場合、光源から反射体に向けて射出される光をシャッタによって遮断することで、光源による光の射出を停止させることができる。従って、干渉計の周囲で作業する人に干渉計から光が照射されてしまうことを確実に防止することができる。また、調光手段は、シャッタによって光源から射出される光を遮断するので、構成を簡素にすることができ、該調光手段の製造コスト、ひいては干渉計の製造コストを低減することができる。
【0010】
本発明の干渉計では、前記調光手段は、前記光源から前記反射体に向けて射出される光の光路上に配置され、透過する光の減衰量を調整可能な光可変アッテネータを備えることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、調光手段は、該調光手段を透過する光の減衰量を調整可能な光可変アッテネータを備えるので、該調光手段を透過する光を減衰させることで、光源から射出される光の光量を目に安全な光量にまで低減させることができる。
【0012】
本発明の干渉計では、前記低減信号出力手段が前記低減信号を出力した後に、前記受光信号に基づいて前記受光手段の前記受光量が所定の第2閾値以上か否かを判定する第2判定手段と、前記第2判定手段が、前記受光量が前記第2閾値以上であると判定した場合、前記調光手段に、前記光源から射出される光の光量の低減の解除を命じる解除信号を出力する解除信号出力手段とを備え、前記調光手段は、前記解除信号が入力された場合、前記光源から射出される光の光量の低減を解除することが好ましい。
なお、第2閾値は第1閾値と等しくてもよい。
【0013】
本発明によれば、反射体からの戻り光が干渉計に戻ってこないために、調光手段が光源から射出される光の光量を低減させた状態において、反射体からの戻り光が干渉計に戻った場合、第2判定手段が、受光手段の受光量が所定の第2閾値以上であると判定し、解除信号出力手段が、調光手段に解除信号を出力する。そして、解除信号を入力された調光手段が、光源から射出される光の光量の低減を解除し、光源から射出される光の光量を元に戻す。このように、本発明では、光源から射出される光の光量を低減させた状態において反射体からの戻り光が干渉計に戻った場合、光源から射出される光の光量を元に戻すことができるので、干渉計が再び移動体までの距離を測定することが可能となる。
【0014】
本発明の干渉計では、前記反射体は、入射した光と反射された光とが平行となるとともに、入射した光と反射された光とが中心に対して点対称となるように入射した光を反射する再帰反射体であり、前記干渉計は、前記再帰反射体にて反射された光のずれ量が所定範囲内に収まるように前記再帰反射体を追尾する追尾式レーザ干渉計であることが好ましい。
【0015】
ここで、追尾式でない干渉計を用いて移動体に取り付けられた反射体を測定する場合、移動体の移動方向に干渉計を設置しなければならない。従って、移動体を所定の1軸方向に移動させるたびごとに、該1軸方向に干渉計を設置しなければならず、測定に手間がかかる。
これに対し、本発明によれば、干渉計は、追尾式レーザ干渉計であるので、移動体に取り付けられた再帰反射体を追尾することができる。そのため、該干渉計を一度設置してしまえば、設置場所を変えることなく再帰反射体までの距離を測定することができ、測定を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計1(以降、干渉計1と記載)の構成を示す図である。
干渉計1は、移動体2を追尾し、該移動体2までの距離を測定するためのものである。なお、移動体2は、例えば移動体2を移動させることで対象物を測定または加工する産業機械に設けられて該産業機械により駆動される。産業機械としては例えば三次元測定機が挙げられ、移動体としては、例えば対象物を測定するためのプローブが取りつけられた三次元測定機のスライダが挙げられる。
【0017】
干渉計1は、図1に示すように、再帰反射体101、レーザ光源102、レンズ103、調光手段3、測定光学系4、キャリッジ5、基準球104、変位計105、およびPC6(Personal Computer)を備えている。
【0018】
再帰反射体101は、移動体2に取り付けられている。再帰反射体101は、入射した光と反射された光とが平行となるとともに、入射した光と反射された光とが再帰反射体101の中心に対して点対称となるように入射した光を反射する。従って、中心から離れた位置に光が入射した場合には、入射した光と反射された光とはずれることとなる。
【0019】
レーザ光源102は、レーザ光を射出する。
レンズ103は、レーザ光源102から射出されて光ファイバ106を介して入射するレーザ光を、集光および平行化する。
【0020】
調光手段3は、レンズ103の後段に設けられている。この調光手段3は、レンズ103を透過したレーザ光の光路上に進退可能なシャッタを備え、このシャッタをレーザ光の光路上に配置させることで、レーザ光を遮断することが可能に構成されている。
測定光学系4は、該測定光学系4から再帰反射体101までの変位ΔL1を測定するためのものである。
【0021】
図2は、測定光学系4の構成を示す図である。なお、測定光学系4は、公知の構成であるので、ここでは簡略に説明する。
測定光学系4は、図2に示すように、コリメータレンズ41、偏光ビームスプリッタ42(Polarizing Beam Splitter)、λ/4板43,46、参照面としての平面鏡44、無偏光ビームスプリッタ45(Non-Polarizing Beam Splitter)、受光手段47,49、および偏光板48を備えている。このうち、受光手段47は、4分割PD471(Photo Diode)および信号処理回路472(図1)を備えている。なお、受光手段47は、4分割PD471に代えて2次元PSD(Position Sensing Detector)を備えていてもよい。また、受光手段49は、PD491(Photo Detector)および信号処理回路492(図2)を備えている。
【0022】
このような測定光学系4では、レーザ光源102から射出されてレンズ103を透過したレーザ光が、光ファイバ107およびコリメータレンズ41を介して偏光ビームスプリッタ42に入射し、該スプリッタ42により、参照光および測定光に分割される。参照光は、λ/4板43を透過した後、平面鏡44にて反射され、再びλ/4板43を透過した後、偏光ビームスプリッタ42に入射し、該スプリッタ42によりPD491側に反射される。
【0023】
一方、測定光は、無偏光ビームスプリッタ45およびλ/4板46を透過し、再帰反射体101に向けて射出された後、再帰反射体101にて反射されて戻り光となり、再び測定光学系4に入射する。この際、測定光が再帰反射体101の中心に対して離れた位置に入射した場合には、前述したように、測定光は入射方向に対してずれて反射されることとなる。すなわち、戻り光は、再帰反射体101に入射する測定光の光路とは異なる光路を辿って測定光学系4へ入射することとなる。
【0024】
そして、測定光学系4に入射した戻り光は、λ/4板46を透過した後、その一部が無偏光ビームスプリッタ45にて反射され、4分割PD471に受光される。この際、戻り光は、ずれ量に応じて4分割PD471の受光面の中心からずれて入射することとなる。4分割PD471は、受光面が上下左右に4分割されており、各分割面に入射する戻り光の受光量に応じた4つの受光信号を出力する。この4つの受光信号は、戻り光のずれ量ΔTrおよび該4分割PD471の受光量に応じた信号となる。4分割PD471は、この4つの受光信号を、戻り光のずれ量ΔTrおよび受光量に応じた第1受光信号として信号処理回路472を介してPC6に出力する(図1)。
【0025】
一方、無偏光ビームスプリッタ45を透過した残りの戻り光は、偏光ビームスプリッタ42を透過し、平面鏡44にて反射された参照光との干渉光となる。戻り光と参照光との干渉光は、偏光板48を透過した後、PD491に受光される。戻り光と参照光との干渉光を受光したPD491は、測定光学系4と再帰反射体101との距離の変位ΔL1および受光量に応じた第2受光信号を、信号処理回路492を介してPC6に出力する(図1)。
【0026】
図1に戻って、キャリッジ5は、互いに直交する2軸の回転機構51,52、回転機構51を駆動する方位角用モータ53、回転機構52を駆動する仰角用モータ54、および各モータ53,54を制御するモータ駆動回路55,56を備えている。このうち、回転機構52に対して測定光学系4および変位計105が固定されている。また、基準球104が、該基準球104の中心が各回転機構51,52の回転軸が交わる点と一致するように回転機構51,52に固定されている。キャリッジ5は、各回転機構51,52が各モータ53,54に駆動され、測定光の方位角および仰角を変更することにより測定光の射出方向を変更する。
【0027】
変位計105は、該変位計105と基準球104の中心との距離の変位ΔL2を測定するためのものである。この変位計105は、静電容量式変位計または過電流式変位計であり、信号処理回路105Aを備えている。変位計105は、信号処理回路105Aを介して、該変位計105と基準球104の中心との距離の変位ΔL2に応じた信号をPC6に出力する。
【0028】
図3は、PC6を示すブロック図である。
PC6は、図3に示すように、第1判定手段である判定手段61と、距離算出手段62と、キャリッジ制御手段63と、遮断信号出力手段64とを備えている。
【0029】
判定手段61は、各受光手段47,49から出力される受光信号に基づいて、各受光手段47,49の受光量が、各受光手段47,49に対してそれぞれ設定された所定の第1閾値以下であるか否かを判定する。
【0030】
距離算出手段62は、受光手段49から出力される測定光学系4と再帰反射体101との距離の変位ΔL1に応じた第2受光信号、および変位計105から出力される該変位計105と基準球104の中心との距離の変位ΔL2に応じた信号から、基準球104の中心から再帰反射体101までの距離の変位ΔL(=ΔL1+ΔL2)を算出する。そして、距離算出手段62は、該変位ΔLから、基準球104の中心から再帰反射体101(移動体2)までの距離を算出する。
【0031】
キャリッジ制御手段63は、受光手段47から出力される第1受光信号に基づいて、戻り光のずれ量ΔTrが所定範囲内に収まるように、各モータ駆動回路55,56に駆動信号を出力してキャリッジ5を制御し、測定光の射出方向を再帰反射体101に向ける。具体的に、キャリッジ制御手段63は、4分割PD471の各分割面の受光量に応じた第1受光信号を構成する4つの受光信号のうち、上下の分割面に対応する受光信号のレベルが一致するようにキャリッジ5を駆動して測定光の仰角を変更するとともに、左右の分割面に対応する受光信号のレベルが一致するようにキャリッジ5を駆動して測定光の方位角を変更することにより、測定光が常に再帰反射体101の中心に向けて射出されるようにする。
【0032】
遮断信号出力手段64は、判定手段61が、各受光手段47,49の受光量のうち少なくとも一方は所定の第1閾値以下であると判定した場合、調光手段3に、シャッタを駆動してレーザ光を遮断するように命じる遮断信号を出力する。本実施形態では、この遮断信号が低減信号となり、遮断信号出力手段64が低減信号出力手段となる。
【0033】
以下、干渉計1による移動体2までの距離の測定方法について簡略に説明する。
図4は、前記測定方法を示すフローチャートである。
まず、干渉計1は、作業者に操作される等により、移動体2に取り付けられた再帰反射体101に向けて測定光を射出する(射出工程S1)。
射出工程S1の後、受光手段47は再帰反射体101からの戻り光を受光し、受光手段49は、戻り光と参照光との干渉光を受光する(受光工程S2)。
【0034】
受光工程S2の後、判定手段61は、各受光手段47,49から出力される受光信号に基づいて、各受光手段47,49の受光量が、各受光手段47,49に対してそれぞれ設定された所定の第1閾値以下であるか否かを判定する(判定工程S3)。
【0035】
判定工程S3において、判定手段61が、各受光手段47,49の受光量が共に所定の第1閾値以下ではないと判定した場合(S3:NO)、距離算出手段62は、受光手段49から出力される第2受光信号、および変位計105から出力される信号に基づいて再帰反射体101(移動体2)までの距離を算出する(距離算出工程S4)。
【0036】
距離算出工程S4の後、キャリッジ制御手段63は、受光手段47から出力される第1受光信号に基づいて、戻り光のずれ量ΔTrが所定範囲内に収まるようにキャリッジ5を制御し、測定光の射出方向を再帰反射体101に向ける(キャリッジ制御工程S5)。キャリッジ制御工程S5の後、前記工程S2に戻り、前記各工程S2〜S5が繰り返されることにより、再帰反射体101が移動体2と共に移動する間、再帰反射体101の追尾および再帰反射体101までの距離の測定が継続して行われる。
【0037】
一方、判定工程S3において、判定手段61が、各受光手段47,49の受光量のうち少なくとも一方は所定の第1閾値以下であると判定した場合(S3:YES)、遮断信号出力手段64は、調光手段3に遮断信号を出力する(遮断信号出力工程S6)。
遮断信号出力工程S6の後、遮断信号が入力された調光手段3は、シャッタを駆動してレーザ光を遮断し、干渉計1からの測定光の射出を停止させる(遮断工程S7)。
【0038】
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)測定光が再帰反射体101から外れたり、干渉計1と再帰反射体101との間に障害物が位置してしまうことにより、再帰反射体101からの戻り光が干渉計1に戻らず、干渉計1が再帰反射体101を見失ってしまった場合、調光手段3が干渉計1からの測定光の射出を停止させるので、干渉計1の周囲で作業する人に干渉計1から測定光が照射されてしまうことを防止することができる。従って、再帰反射体101までの距離を安全に測定することができる。
【0039】
(2)調光手段3は、シャッタを備えるので、レーザ光をシャッタによって遮断することができ、干渉計1からの測定光の射出を停止させることができる。従って、干渉計1が再帰反射体101を見失ってしまった際に、調光手段3によって干渉計1からの測定光の射出を停止させることができ、干渉計1の周囲で作業する人に干渉計1から測定光が照射されてしまうことを確実に防止することができる。また、調光手段3を、シャッタおよびシャッタを駆動するための駆動部等から構成すればよいので、調光手段3の構成を簡素にできる。そのため、調光手段3の製造コストを低減することができ、ひいては干渉計1の製造コストを低減することができる。
【0040】
(3)干渉計1は、追尾式レーザ干渉計であるので、移動体2に取り付けられた再帰反射体101を追尾することができる。そのため、該干渉計1を一度設置してしまえば、設置場所を変えることなく再帰反射体101までの距離を測定することができ、測定を容易に行うことができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態に係る干渉計1Aの構成を示す図である。以降、前記第1実施形態と同一機能部位には同一符号を付し、それらの説明を省略、若しくは簡略化する。
前記第1実施形態では、調光手段3は、シャッタを備え、該シャッタによりレーザ光を遮断することで、干渉計1からの測定光の射出を停止させることが可能に構成されていた。これに対し、本実施形態では、調光手段3Aは、光可変アッテネータを備え、該調光手段3Aを透過するレーザ光の減衰量を調整することで、干渉計1Aから射出される測定光の光量を調整することが可能に構成されている点が特徴である。
【0042】
また、前記第1実施形態では、干渉計1が再帰反射体101を見失ってしまった場合、調光手段3が干渉計1からの測定光の射出を停止させていた。これに対し、本実施形態では、干渉計1Aが再帰反射体101を見失ってしまった場合、詳しくは後述するが、一端、調光手段3Aによって干渉計1Aから射出される測定光の光量を低減させるが、再帰反射体101からの戻り光が干渉計1Aに戻ってきた場合には、再び調光手段3Aによって干渉計1Aから射出される測定光の光量を元に戻し、再帰反射体101に対する測定を再開する点が特徴である。
【0043】
図6は、本実施形態のPC6を示すブロック図である。
本実施形態のPC6は、図6に示すように、前記第1実施形態と同様の各手段61〜63に加え、低減信号出力手段64A、第2判定手段65、および解除信号出力手段66を備えている。なお、第1判定手段61は前記第1実施形態の判定手段61と同様の機能を有する。
【0044】
低減信号出力手段64Aは、第1判定手段61が、各受光手段47,49の受光量のうち少なくとも一方は所定の第1閾値以下であると判定した場合、調光手段3Aに、レーザ光を減衰させて干渉計1Aから射出される測定光の光量を目に安全な量にまで低減させるように命じる低減信号を出力する。
【0045】
第2判定手段65は、各受光手段47,49から出力された受光信号に基づいて、各受光手段47,49の受光量が、各受光手段47,49に対してそれぞれ設定された所定の第2閾値以上であるか否かを判定する。なお、第2閾値は、本実施形態では、第1閾値より低く設定されているものとするが、第1閾値と等しい値に設定されていてもよい。
解除信号出力手段66は、第2判定手段65が、各受光手段47,49の受光量のうち少なくとも一方は所定の第2閾値以上であると判定した場合、調光手段3Aに、レーザ光の減衰の解除、すなわち干渉計1Aから射出される測定光の光量の低減の解除を命じる解除信号を出力する。
【0046】
以下、干渉計1Aによる移動体2までの距離の測定方法について簡略に説明する。
図7は、前記測定方法を示すフローチャートである。
S1〜S5は、前記第1実施形態と同様である。なお、S3を、本実施形態では、第1判定工程S3と称することとする。
第1判定工程S3において、第1判定手段61が、各受光手段47,49から出力された受光信号に基づいて、各受光手段47,49の受光量のうち少なくとも一方は所定の第1閾値以下であると判定した場合(S3:YES)、低減信号出力手段64Aが調光手段3Aに低減信号を出力する(低減信号出力工程S6)。
【0047】
低減信号出力工程S6の後、低減信号が入力された調光手段3Aは、レーザ光を減衰し、干渉計1Aから射出される測定光の光量を、目に安全な光量にまで低減させる(低減工程S7)。
低減工程S7の後、受光手段47は再帰反射体101からの戻り光を受光し、受光手段49は、戻り光と参照光との干渉光を受光する(受光工程S8)。
【0048】
受光工程S8の後、第2判定手段65は、各受光手段47,49から出力された受光信号に基づいて、各受光手段47,49の受光量が、各受光手段47,49に対してそれぞれ設定された所定の第2閾値以上であるか否かを判定する(第2判定工程S9)。
【0049】
第2判定工程S9において、第2判定手段65が、各受光手段47,49の受光量が共に第2閾値以上ではないと判定した場合(S9:NO)、前記工程S8に戻る。
一方、第2判定工程S9において、第2判定手段65が、各受光手段47,49の受光量のうち少なくとも一方は第2閾値以上であると判定した場合(S9:YES)、解除信号出力手段66は、調光手段3Aに解除信号を出力する(解除信号出力工程S10)。
【0050】
解除信号出力工程S10の後、解除信号が入力された調光手段3Aは、レーザ光の減衰を解除し、干渉計1Aから射出される測定光の光量を元に戻す(解除工程S11)。解除工程S11の後、受光工程S2に戻る。
【0051】
以上のような本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)、(3)に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)調光手段3Aは、該調光手段3Aを透過するレーザ光の減衰量を調整可能な光可変アッテネータを備えるので、レーザ光を減衰させ、干渉計1Aから射出される測定光の光量を目に安全な光量にまで低減させることができる。
【0052】
(5)再帰反射体101からの戻り光が干渉計1に戻らないために調光手段3Aが干渉計1Aから射出される測定光の光量を低減させた状態において、再帰反射体101からの戻り光が干渉計1に戻った場合、調光手段3Aが、干渉計1Aから射出される測定光の光量を元に戻すので、干渉計1Aが再び移動体2までの距離を測定することが可能となる。
【0053】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、調光手段3,3Aは、レンズ103側に配置されていたが、調光手段3,3Aは、測定光学系4の前段など、測定光学系4側に配置されていてもよい。また、調光手段3,3Aは、レーザ光源102とレンズ103との間に配置されていてもよい。
前記各実施形態の干渉計1,1Aは、追尾式レーザ干渉計であったが、移動体を例えば直線的にのみ移動させる場合には、干渉計は追尾式でなくてもよい。この場合、移動体の移動方向に追尾式でない干渉計を設置することで、該干渉計により移動体までの距離を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、干渉計に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る干渉計を示す構成図。
【図2】前記実施形態の測定光学系の構成を示す図。
【図3】前記実施形態のPCを示すブロック図。
【図4】前記実施形態の干渉計による測定方法を示すフローチャート。
【図5】本発明の第2実施形態に係る干渉計の構成を示す図。
【図6】前記実施形態のPCを示すブロック図。
【図7】前記実施形態の干渉計による測定方法を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0056】
1,1A 追尾式レーザ干渉計
2 移動体
3,3A 調光手段
47,49 受光手段
61 判定手段(第1判定手段)
62 距離算出手段
64 遮断信号出力手段(低減信号出力手段)
64A低減信号出力手段
65 第2判定手段
66 解除信号出力手段
101 再帰反射体
102 レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する光源と、移動体に取り付けられて前記光源から射出される光を反射する反射体と、前記反射体にて反射された光を受光して受光信号を出力する受光手段と、前記受光信号を用いて前記反射体までの距離を算出する距離算出手段とを備える干渉計であって、
前記光源から射出される光の光量を調整可能に構成された調光手段と、
前記受光信号に基づいて前記受光手段の受光量が所定の第1閾値以下か否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段が、前記受光量が前記第1閾値以下と判定した場合、前記調光手段に、前記光源から射出される光の光量の低減を命じる低減信号を出力する低減信号出力手段とを備え、
前記調光手段は、前記低減信号が入力された場合、前記光源から射出される光の光量を低減させる
ことを特徴とする干渉計。
【請求項2】
請求項1に記載の干渉計において、
前記調光手段は、前記光源から前記反射体に向けて射出される光を遮断可能なシャッタを備える
ことを特徴とする干渉計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の干渉計において、
前記調光手段は、前記光源から前記反射体に向けて射出される光の光路上に配置され、透過する光の減衰量を調整可能な光可変アッテネータを備える
ことを特徴とする干渉計。
【請求項4】
請求項3に記載の干渉計において、
前記低減信号出力手段が前記低減信号を出力した後に、前記受光信号に基づいて前記受光手段の前記受光量が所定の第2閾値以上か否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段が、前記受光量が前記第2閾値以上であると判定した場合、前記調光手段に、前記光源から射出される光の光量の低減の解除を命じる解除信号を出力する解除信号出力手段とを備え、
前記調光手段は、前記解除信号が入力された場合、前記光源から射出される光の光量の低減を解除する
ことを特徴とする干渉計。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の干渉計において、
前記反射体は、入射した光と反射された光とが平行となるとともに、入射した光と反射された光とが中心に対して点対称となるように入射した光を反射する再帰反射体であり、
前記干渉計は、前記再帰反射体にて反射された光のずれ量が所定範囲内に収まるように前記再帰反射体を追尾する追尾式レーザ干渉計である
ことを特徴とする干渉計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−64609(P2011−64609A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216425(P2009−216425)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】