説明

情報通知システム、携帯端末装置、車載装置及び情報送信方法

【課題】車載装置の演算処理負荷を低減させる。
【解決手段】歩行者が有する携帯端末装置10は、当該携帯端末装置10が存在する現在の位置を特定する現在位置情報を取得し、当該携帯端末装置10の移動速度、移動方向を検出し、検出される移動速度、移動方向から推定される当該携帯端末装置10を有する歩行者の挙動が、この歩行者の近傍を走行する車両にとって、注意を要するかどうかを判定し、注意を要すると判定されたことに応じて、取得された現在位置情報を無線通信により車載装置20に送信するよう制御することで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が有する携帯端末装置と、無線通信によりこの携帯端末装置から取得される情報を車両内の乗員に通知する車両に搭載された車載装置とを備える情報通知システム、携帯端末装置、車載装置及び情報送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歩行者が存在する情報を車両の運転者に通知するために、歩行者が保有する歩行者携帯用送受信機(携帯端末装置)から位置情報を送信させて、車両に搭載された車載機(車載装置)で受信し、この車載機を介して車両内の乗員に通知する技術が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−306995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、各歩行者の所有する歩行者携帯用送受信機から送信される信号を、車載機にて解析することで、危険判定を行うなどの演算処理を実行している。したがって、システムを構成する複数の歩行者携帯用送受信機から送信される全ての信号を車載機側で演算処理する必要があるため、システムに登録される歩行者携帯用送受信機の数が増えれば増えるほど演算処理負荷が増大してしまうといった問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、携帯端末装置から必要な情報だけを車両に搭載された車載装置に送信することで、車載装置の演算処理負荷を低減させることができる情報通知システム、携帯端末装置、車載装置及び情報送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、歩行者が有する携帯端末装置と、前記携帯端末装置との無線通信により取得される情報を車両内の乗員に通知する車両に搭載された車載装置とを備える。
【0006】
そして、前記携帯端末装置が、当該携帯端末装置が存在する現在の位置を特定する現在位置情報を取得し、当該携帯端末装置の移動速度、移動方向を検出し、検出される前記移動速度、移動方向から推定される当該携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって、注意を要するかどうかを判定し、注意を要すると判定されたことに応じて、取得された前記現在位置情報を無線通信により前記車載装置に送信するよう制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、携帯端末装置から必要な情報だけを車両に搭載された車載装置に送信することで、車載装置の演算処理負荷を低減させることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、本発明の実施の形態として示す情報通知システムについて説明をする。
【0009】
図1に示すように、情報通知システムは、複数の歩行者がそれぞれ有する携帯端末装置10と、複数の車両にそれぞれ搭載された車載装置20とを備えている。情報通知システムは、主に、携帯端末装置10で取得された現在位置情報を無線通信により車両に搭載された車載装置20へ送信することで、車両内の乗員に通知することができる。
【0010】
まず、携帯端末装置10について説明をする。携帯端末装置10は、車載装置20と無線通信を行う通信部11と、位置特定部12と、位置履歴記憶部13と、簡易地図記憶部14と、モーションセンサ15と、処理部16とを備えている。携帯端末装置10は、例えば、通話機能を備えた携帯電話装置やPDA(Personal Data Assistance)などである。
【0011】
位置特定部12は、いわゆるGPS(Global Positioning System)であり、処理部16の制御に応じて、GPS衛星から送信される信号をGPSアンテナで受信することで、GPS航法による位置計測を行い、当該携帯端末装置10の絶対位置(緯度、経度)情報を歩行者の現在位置情報として取得する。取得された携帯端末装置10の現在位置情報は、処理部16に出力される。
【0012】
位置履歴記憶部13は、処理部16の制御に応じて、位置特定部12で求められた携帯端末装置10の現在位置情報を履歴として記憶する。
【0013】
簡易地図記憶部14は、当該携帯端末装置10の要求に応じて、外部装置である図示しないセンタ装置などから送信される簡易地図情報を記憶する。
【0014】
モーションセンサ15は、当該携帯端末装置10の前後、左右、上下といった3方向に対する動きを検出するセンサである。モーションセンサ15は、当該携帯端末装置10の前後、左右、上下といった3方向に対する動きを、移動速度、移動方向という物理量にて検出する。このような、モーションセンサ15としては、例えば、当該携帯端末装置10の前後、左右、上下といった3方向に対する加速度の変化を検出することで、当該携帯端末装置10の移動速度、移動方向を検出することができる、いわゆる3次元加速度センサなどを適用することができる。この、3次元加速度センサは、搭載された物体の傾きも検出することができる。モーションセンサ15で検出された移動速度、移動方向は、処理部16に出力される。
【0015】
処理部16は、当該携帯端末装置10を統括的に制御する制御手段である。処理部16は、モーションセンサ15で検出された移動速度、移動方向を取得し、取得した移動速度、移動方向から当該携帯端末装置10を有する歩行者の挙動を推定する。
【0016】
そして、処理部16は、推定した当該携帯端末装置10を有する歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要するかどうかを判定する。処理部16は、取得した当該携帯端末装置10の移動速度、移動方向に急激な変化がみられた場合、推定される歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定する。
【0017】
具体的には、処理部16は、取得した当該携帯端末装置10の移動速度が頻発して変化した場合、歩行者が歩く、停止するという挙動を頻繁に繰り返していると推定されるため、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定する。また、処理部16は、取得した当該携帯端末装置10の移動方向が急激に変化した場合、歩行者が急に進行方向を変えるような挙動であると推定されるため、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定する。また、処理部16は、取得した当該携帯端末装置10の移動速度が急減に変化した場合、歩行者が走り出す、走っているという挙動であると推定されるため、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定する。
【0018】
このように、処理部16は、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定した場合、位置特定部12から取得された現在位置情報を車載装置20に送信するよう通信部11を制御する。
【0019】
例えば、処理部16は、図2に示すように、取得した移動速度、移動方向から当該携帯端末装置10を有する歩行者が矢印MAで示されるような挙動をしていると推定した場合、この矢印MAで示される挙動には移動方向に急激な変化がみられることから、歩行者の近傍を走行する車両5にとって注意を要すると判定し、現在位置情報を車両5に搭載された車載装置20に送信するよう通信部11を制御する。
【0020】
また、処理部16は、推定される歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両にとって、どの程度の注意を要するか、つまり注意のレベルを示した注意度情報を算出する。注意度情報は、モーションセンサ15から取得した当該携帯端末装置10の移動速度、移動方向から変化の度合いを算出した情報であり、この変化の度合いが予め設定されている注意レベルのどのレベルに相当するかという注意度を示した情報である。また、注意度情報には、移動速度、移動方向のいずれかの急激な変化に基づき注意を要すると判定されたかを示す情報を添付するようにしてもよい。
【0021】
処理部16は、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定した場合、上述した現在位置情報とともに、この注意度情報を車載装置20に送信するよう通信部11を制御する。注意度情報で示される注意度は、例えば、予め10段階程度に設定されており、車載装置20に送信された場合に、車両内の乗員に通知する情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態などを制御する際の指標として利用される。
【0022】
処理部16は、図示しない外部装置であるセンタ装置と無線通信をすることにより、位置特定部12で取得される当該携帯端末装置10の現在位置情近傍の簡易地図情報を取得する。この簡易地図情報は、当該携帯端末装置10の処理能力を考慮して、車載装置20などで扱われる地図情報よりも情報量の少ない簡易的な地図情報である。この簡易地図情報には、少なくとも道路の幅を示す情報である道路幅情報が含まれている。
【0023】
処理部16は、通信部11を制御して、現在位置情報、注意度情報を無線通信により車載装置20に送信する際、その送信時間を制御する。具体的には、処理部16は、モーションセンサ15から取得される当該携帯端末装置10の移動速度と、当該携帯端末装置10の現在位置近傍の簡易地図情報に含まれる道路幅情報、つまり、当該携帯端末装置10の現在位置近傍に存在する道路幅情報とに基づき、この送信時間を決定する。
【0024】
図3に示すように、処理部16は、当該携帯端末装置10の現在位置近傍の簡易地図情報に含まれる道路幅情報のうち、GPSである位置特定部12の誤差範囲GR内で最も広い道路幅を示す道路幅情報を選択する。図3に示すようように、誤差範囲GR内の簡易地図情報には、道路幅情報として道路r1の道路幅W、道路r2の道路幅Wを規定した道路幅情報が含まれている。図3に示すように、道路幅W、道路幅Wは、W>Wとなっているため、処理部16は、道路幅Wを選択する。ここで当該携帯端末装置10の移動速度を移動速度Voとすると、処理部16は、以下に示す(1)式のようにして現在位置情報、注意度情報を送信する送信時間Tを算出する。
【0025】
T=W×Vo ・ ・ ・ (1)
このように(1)式を用いて送信時間Tを算出することで、図3に示す誤差範囲GR内において、最も広い道路幅、つまり歩行者が横断するのに最も時間を要する道路幅Wの道路r2を矢印MBに示すように歩行者が横断している場合でも、道路r2を走行している車両、あるいは道路r2を走行しようとしている車両に対して、車載装置20を介して現在位置情報、注意度情報を確実に送信することができるため、注意が必要である旨を車両内の乗員に対して事前に通知することができる。
【0026】
また、携帯端末装置10から車載装置20に対して、無線通信により情報を送信する送信時間Tを制限することで、車載装置20で不必要な情報を受信してしまうことを回避できる。また、携帯端末装置10は、車載装置20と無線通信により情報を送信する送信時間Tを制限することで、消費電力を大幅に削減することができる。
【0027】
また、処理部16は、図示しないメモリに記憶されている当該携帯端末装置10を有する歩行者を特定する属性情報に応じて、(1)式で算出された送信時間Tを変化させるようにしてもよい。歩行者を特定する属性情報とは、例えば、性別や年齢といったユーザ固有の情報であり、携帯端末装置10の購入時にシステム管理者によって登録されるか、ユーザ自身によって登録されることになる。この携帯端末装置10の図示しないメモリへの属性情報の登録処理は、ユーザの希望に応じて任意に実行されるため、必ずしも携帯端末装置10に登録されているとは限らない。
【0028】
処理部16は、図示しないメモリに属性情報が記憶されている場合、この属性情報に応じて送信時間Tを変化させる。例えば、属性情報から当該携帯端末装置10を有している歩行者が、子供や高齢者であると判断できる場合、処理部16は、(1)式を用いて算出された送信時間Tを長くなるように制御する。このように、突発的に変化する動作をするため挙動が不安定となりがちな子供や、動作の機敏でない高齢者の現在位置情報を送信する送信時間Tを長くすることで、車載装置20を搭載した車両内の乗員に対して注意喚起を行う時間も長くなることから、注意が必要であると推定される挙動に確実に対処するよう促すことができる。
【0029】
特に、属性情報から当該携帯端末装置10を有している歩行者が、高齢者であると判断できる場合には、処理部16は、(1)式を用いて算出された送信時間Tをより長くなるように制御する。これにより、他の歩行者と比較して、動作の制約や視覚の衰えなどから周辺状況を把握することが困難であると推定される高齢者に配慮した送信時間Tとすることができる。
【0030】
なお、(1)式を用いて算出される送信時間Tは、あくまでも一つの送信時間の目安となる基準の時間であり、処理部16は、例えば、移動速度、移動方向などから当該携帯端末装置10を有する歩行者が、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意が必要であると継続して判定している場合には、送信時間Tに限定されることなく、通信部11を制御して現在位置情報、注意度情報を車載装置20に送信する。
【0031】
また、処理部16は、モーションセンサ15で検出された移動速度、移動方向から推定した当該携帯端末装置10を有する歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両に対して、歩行者の意思を示す特徴的な動作であるかどうかを判定する。歩行者の意思を示す特徴的な動作としては、例えば、道路を横断する際に歩行者によって一般的になされる“手をあげる”という動作がある。一般に歩行者が、手をあげる動作をした場合、道路を横断する意思があるとみなせるため、処理部16は、上述したように推定した歩行者の挙動から、図4に示す矢印MCのように、下方から上方へと手をあげるといった歩行者の意思を示す特徴的な動作がなされたと判定した場合、現在位置情報を車載装置20に送信するよう通信部11を制御する。
【0032】
このとき、処理部16は、通信部11を制御して、現在位置情報を無線通信により車載装置20に送信する送信時間を、歩行者が手をあげている状態が継続されている時間、つまり、歩行者が道路を横断していると推定される時間に制限することで、車載装置20で不必要な情報を受信してしまうことを回避できる。また、携帯端末装置10は、車載装置20と無線通信により情報を送信する送信時間を制限することで、消費電力を大幅に削減することができる。
【0033】
このように、処理部16は、歩行者の近傍を走行する車両に対して、歩行者の意思を示す特徴的な動作がなされたと判定されたことに応じて、現在位置情報を車載装置20に送信するため、車載装置20を搭載した車両内の乗員に、何らかの挙動を示すであろう歩行者の存在を明確に通知することができる。特に体の小さい子供など、車両内から視認しにくい歩行者に対して有効となる。
【0034】
次に、車載装置20について説明をする。車載装置20は、携帯端末装置10と無線通信を行う通信部21と、位置特定部22と、車両内の乗員によって操作される操作部23と、処理部24と、表示部25と、音響信号を増幅して出力するアンプ、スピーカなどである音響出力部26とを備えている。車載装置20は、移動体である車両に搭載され、車両の現在位置を検出し、地図データから描画された車両の現在位置に対応する地図を表示しながら、所望の目的地までの経路案内をする、例えば、ナビゲーション装置などである。
【0035】
位置特定部22は、いわゆるGPSを有し、処理部24の制御に応じて、GPS衛星から送信される信号をGPSアンテナで受信することで、GPS航法による位置計測を行い、当該車載装置20が搭載された移動体である車両の絶対位置(緯度、経度)情報を求める。また、位置特定部22は、図示しない距離センサから出力された走行距離情報、図示しない方位センサから出力された進行方位情報に基づいて、自律航法による車両の相対位置を求める。
【0036】
さらに、位置特定部22は、上述した絶対位置(緯度、経度)情報と、相対位置情報とから、当該車載装置20が搭載された車両の地図上における位置を算出する。算出された車両の現在位置情報は、処理部24に出力される。
【0037】
処理部24は、当該車載装置20を統括的に制御する制御手段である。処理部24は、位置特定部22から出力された現在位置情報に基づいて、対応する地図情報、道路情報など、ナビゲーションに必要となる各種情報を図示しない記憶部から読み出したり、図示しない外部装置であるセンタ装置などから無線通信により取得するよう制御する。
【0038】
また、処理部24は、ユーザによって入力される目的地と、現在位置情報とを用いて、現在位置から目的地までの最適な走行経路を提示して目的地の近傍領域までの経路案内(ナビゲーション)をするルートガイダンスを行う。このとき、処理部24は、音響出力部26を制御して、音声によるナビゲーションを実行することもできる。
【0039】
さらに、処理部24は、表示部25に表示させる表示画像を生成する。例えば、処理部24は、表示画像としてナビゲーション用の地図を生成したり、さらに、携帯端末装置10から無線通信により取得した現在位置情報を付加した表示画像を生成し表示させる。
【0040】
また、処理部24は、音響出力部26から出力させる音響信号を生成する。例えば、処理部24は、表示部25に表示させる携帯端末装置10から無線通信により取得した現在位置情報を付加した表示画像に連動して音響出力部26から出力させる車両内の乗員に注意喚起を促す音響信号を生成する。
【0041】
また、処理部24は、携帯端末装置10から無線通信により現在位置情報の他に注意度情報も取得した場合には、注意度情報で示される注意度に基づき、表示部25、音響出力部26を介して車両内の乗員に通知する現在位置情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態を制御する。
【0042】
処理部24は、注意度情報で示される注意度が高い場合には、通知する現在位置情報の通知タイミングを早め、通知頻度を多くするように制御する。また、処理部24は、表示部25に表示させる現在位置情報の表示形態を強調するように制御し、音響出力部26から出力させる注意喚起を強調するよう制御する。処理部24は、逆に、注意度情報で示される注意度が低い場合には、通知する情報の通知タイミングを遅め、通知頻度を少なくするよう制御する。また、処理部24は、表示部25に表示させる現在位置情報の表示形態の強調を抑制するように制御し、音響出力部26から出力させる注意喚起の強調を抑制するよう制御する。
【0043】
また、処理部24は、携帯端末装置10から送信される注意度情報に移動速度、移動方向のいずれかの急激な変化に基づき注意を要すると判定されたかを示す情報が添付されている場合、移動速度に急激な変化があったのか、移動方向に急激な変化があったのかを一瞥して視認できるような表示形態で表示させるように制御する。
【0044】
例えば、処理部24は、移動速度に急激な変化があった場合には、歩行者が急に走り出したとして該当する現在位置情報の表示色を赤色にしたり、移動方向に急激な変化があった場合には、歩行者が急に進行方向を変えたとして該当する現在位置情報の表示色をオレンジ色にしたりすることで、移動速度に急激な変化があったのか、移動方向に急激な変化があったのかを一瞥して視認できるような表示形態で表示させるように制御する。
【0045】
また、例えば、処理部24は、移動速度に急激な変化があったのか、移動方向に急激な変化があったのかに応じて、該当する現在位置情報の大きさ自体を変える(一方を大きく、他方を小さく)ことで、移動速度に急激な変化があったのか、移動方向に急激な変化があったのかを一瞥して視認できるような表示形態で表示させるように制御する。
【0046】
この通知する情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態は、必ずしも携帯端末装置10から送信される注意度情報で示される注意度に1対1で対応して制御されるばかりではなく、操作部23を介したユーザによる操作によって任意に設定を変更することで、車両内の乗員にとって最適と思われる通知タイミング、通知頻度、通知形態へと変更することができる。例えば、携帯端末装置10側で10段階に注意度が設定されていたとしても、車載装置20において、操作部23を介したユーザによる操作によって3段階に設定変更すれば、携帯端末装置10から送信される注意度情報で示される10段階の注意度を、処理部24によって、自動的に3段階の注意度へと振り分けられ、各注意度に応じた通知タイミング、通知頻度、通知形態となるように制御される。
【0047】
このように、情報を通知される側である車載装置20が搭載された車両内の乗員の要求に応じて、通知される情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態を調節することができるため、携帯端末装置10側で一意に指定された注意度を単純に反映させるだけでなく、ドライバが所望する通知タイミング、通知頻度、通知形態とすることができるため、ユーザの利便性、嗜好性を向上させることができる。
【0048】
表示部25は、処理部24によって生成された表示画像を表示する表示手段である。表示部25は、液晶ディスプレイなどであり、ユーザから視認し易い位置、例えば、主に運転者に視認し易い位置に設置される。また、表示部25の表示パネルは、タッチパネルになっていてもよい。
【0049】
続いて、図5に示すフローチャートを用いて、携帯端末装置10の処理動作について説明をする。
【0050】
ステップS1において、処理部16は、電源がオン(ON)状態となったかどうか判断し、オン状態となった場合には、ステップS2へと処理を進める一方、オン状態となっていない場合には、待機状態を継続する。
【0051】
ステップS2において、処理部16は、位置特定部12を制御してGPS衛星との無線通信により緯度、経度情報である、当該携帯端末装置10の現在位置情報を取得する。GPS衛星との無線通信は、当該携帯端末装置10の存在位置をロストしない程度の周期とし、当該携帯端末装置10の消費電力をできるだけ制限するようにする。
【0052】
ステップS3において、処理部16は、モーションセンサ15で検出される移動速度、移動方向を取得し、取得した移動速度、移動方向から当該携帯端末装置10を有する歩行者の挙動を推定する。
【0053】
ステップS4において、処理部16は、ステップS3で推定された歩行者の挙動が歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要するかどうかを判定する。処理部16は、歩行者の挙動が注意を要すると判定した場合、ステップS5へと処理を進める一方、歩行者の挙動が注意を要さないと判定した場合、ステップS2へと処理を戻す。
【0054】
ステップS5において、処理部16は、位置履歴記憶部13を参照し、当該携帯端末装置10の現在位置情報に対応する簡易地図情報が簡易地図記憶部14に記憶されているかどうかを判断する。そして、処理部16は、簡易地図記憶部14に該当する簡易地図情報が記憶されている場合、この簡易地図情報に含まれる道路幅情報を参照し、最も広い道路幅の道路幅情報を取得する。
【0055】
ステップS6において、処理部16は、ステップS3で取得された移動速度と、ステップS5で取得された道路幅情報で規定された道路幅とから、上述した(1)式を用いて、送信時間Tを算出する。
【0056】
ステップS7において、処理部16は、通信部11を制御して車載装置20へとアクセスし、車載装置20との接続状態を確立する。そして、処理部16は、通信部11を制御して、ステップS2で取得した現在位置情報を無線通信により車載装置20へと送信する。なお、処理部16は、車載装置20との無線通信が開始されると、図示しないタイマによる計時を開始する。
【0057】
ステップS8において、処理部16は、図示しないタイマで計時されている時間が、ステップS6で算出された送信時間T経過したかどうかを判断する。処理部16は、図示しないタイマで計時されている時間が送信時間Tを経過した場合にはステップS9へと処理を進める一方、送信時間Tを経過していない場合にはステップS7へと処理を戻す。
【0058】
ステップS9において、処理部16は、図示しないタイマで計時されている時間が、送信時間T経過したことに応じて、車載装置20との無線通信を終了する。
【0059】
このように、本発明の実施の形態として示す情報通知システムの携帯端末装置10は、処理部16によって、当該携帯端末装置10の移動速度、移動方向から歩行者の挙動を推定し、推定した歩行者の挙動から、歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要する挙動であるかを判定する。そして、処理部16は、注意を要すると判定した場合に、車載装置20との無線通信を開始して現在位置情報を送信するよう制御する。
【0060】
これにより、携帯端末装置10から必要な情報だけが、車両に搭載された車載装置20に送信されるため、車載装置20の処理部24の演算処理負荷を低減させることができる。また、注意を要するかどうかの判定を携帯端末装置10の処理部16で実行してから現在位置情報を車載装置20に送信するため、車載装置20は、現在位置情報を取得してからすぐに注意を要する旨を通知することができるため、車両内の乗員に対して迅速な注意喚起を行うことができる。
【0061】
次に、図6に示すフローチャートを用いて、携帯端末装置10の別な処理動作について説明をする。図6に示すフローチャートでは、携帯端末装置10の処理部16で、注意度情報を算出する場合における処理動作について説明をする。
【0062】
なお、図6に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのステップS3とステップS4との間にステップS10を挿入し、ステップS7に換えてステップS7Aとしただけであるので、同一の処理ステップについては、同一のステップ番号を付し説明を省略する。
【0063】
ステップS10において、携帯端末装置10の処理部16は、ステップS3で推定された歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両にとって、どの程度の注意を要するか、つまり注意のレベルを示した注意度情報を算出する。
【0064】
ステップS7Aにおいて、処理部16は、通信部11を制御して車載装置20へとアクセスし、車載装置20との接続状態を確立する。そして、処理部16は、通信部11を制御して、ステップS2で取得した現在位置情報と、ステップS10で算出した注意度情報を無線通信により車載装置20へと送信する。なお、処理部16は、車載装置20との無線通信が開始されると、図示しないタイマによる計時を開始する。
【0065】
このように、本発明の実施の形態として示す情報通知システムの携帯端末装置10は、処理部16によって、推定された歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両にとって、どの程度の注意を要するか、つまり注意のレベルを示した注意度情報を算出し、注意を要すると判定した場合に、車載装置20との無線通信を開始して現在位置情報とともに注意度情報を送信するよう制御する。
【0066】
これにより、注意度情報を受信した車載装置20において、処理部24により、注意度情報で示される注意度に基づき、表示部25、音響出力部26を介して車両内の乗員に通知する現在位置情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態を制御することができるため、車両内の乗員に対して注意度に応じて的確な注意喚起を行うことができる。
【0067】
次に、図7に示すフローチャートを用いて、車載装置20の処理動作について説明をする。
【0068】
ステップS11において、車載装置20の処理部24は、携帯端末装置10から送信された情報(現在位置情報、注意度情報)を無線通信を介して受信したかどうかを判断する。処理部24は、携帯端末装置10から送信された情報を受信した場合、ステップS12へと処理を進める一方、受信していない場合、ステップS11へと処理を戻し、情報の受信待機状態を継続する。
【0069】
ステップS12において、処理部24は、受信した情報に基づき、車両内の乗員に対して注意喚起を促す処理を実行する。
【0070】
処理部24は、現在位置情報のみを受信した場合、表示部25を介して現在位置情報を表示させ、音響出力部26から注意喚起を促す音響信号を出力する。また、処理部24は、注意度情報も受信した場合、注意度情報で示される注意度に基づき、表示部25、音響出力部26を介して車両内の乗員に通知する現在位置情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態を制御する。
【0071】
このように、本発明の実施の形態として示す情報通知システムの車載装置20には、注意を要するかどうかの判定を携帯端末装置10で実行されてから現在位置情報が送信されるため、車載装置20の処理部24は、現在位置情報を取得してからすぐに注意を要する旨を通知することができるため、車両内の乗員に対して迅速な注意喚起を行うことができる。
【0072】
また、現在位置情報とともに注意度情報を受信した場合、車載装置20の処理部24は、車両内の乗員に対して注意度情報で示される注意度に応じて的確な注意喚起を行うことができる。
【0073】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態として示す情報通知システムの構成について説明するための図である。
【図2】前記情報通知システムの携帯端末装置によって歩行者の挙動に注意判定がなされ、車載装置と無線通信される様子を示した図である。
【図3】前記携帯端末装置と前記車載装置との無線通信による情報の送信時間を算出する手法について説明するための図である。
【図4】前記携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、歩行者の近傍を走行する車両に対して、歩行者の意思を示す特徴的な動作である場合に、前記車載装置との無線通信がなされることについて説明するための図である。
【図5】前記情報通知システムの携帯端末装置の処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図6】前記情報通知システムの携帯端末装置の別な処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図7】前記情報通知システムの車載装置の処理動作について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
10 携帯端末装置
11 通信部
12 位置特定部
13 位置履歴記憶部
14 簡易地図記憶部
15 モーションセンサ
16 処理部
20 車載装置
21 通信部
23 操作部
24 処理部
25 表示部
26 音響出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者が有する携帯端末装置と、前記携帯端末装置との無線通信により取得される情報を車両内の乗員に通知する車両に搭載された車載装置とを備える情報通知システムにおいて、
前記携帯端末装置は、
当該携帯端末装置が存在する現在の位置を特定する現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
当該携帯端末装置の移動速度、移動方向を検出する移動速度・移動方向検出手段と、
前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される移動速度、移動方向から推定される当該携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって、注意を要するかどうかを判定する注意挙動判定手段と、
前記注意挙動判定手段によって注意を要すると判定されたことに応じて、前記現在位置情報取得手段によって取得された現在位置情報を無線通信により前記車載装置に送信するよう制御する送信制御手段とを有すること
を特徴とする情報通知システム。
【請求項2】
前記携帯端末装置は、
前記注意挙動判定手段によって推定される歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって、どの程度の注意を要するかを示した注意度情報を算出する注意度情報算出手段を有し、
前記送信制御手段は、前記注意挙動判定手段によって注意を要すると判定されたことに応じて、前記注意度情報算出手段によって算出された注意度情報を無線通信により前記車載装置に送信するよう制御すること
を特徴とする請求項1記載の情報通知システム。
【請求項3】
前記携帯端末装置の注意挙動判定手段は、
前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される当該携帯端末装置の移動速度が頻発して変化した場合、
前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される当該携帯端末装置の移動方向が急激に変化した場合、
または前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される当該携帯端末装置の移動速度が急激に変化した場合の少なくともいずれかの場合に、
前記歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって、注意を要すると判定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の情報通知システム。
【請求項4】
前記携帯端末装置の送信制御手段は、前記注意挙動判定手段によって注意を要すると判定されたことに応じて、前記車載装置との無線通信により情報を送信する送信時間を、
前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される当該携帯端末装置の移動速度と、当該携帯端末装置の現在位置近傍に存在する道路の道路幅とに基づき決定すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の情報通知システム。
【請求項5】
前記携帯端末装置の送信制御手段は、当該携帯端末装置に予め与えられた当該携帯端末装置を有する歩行者を特定する属性情報に応じて、前記送信時間を変化させること
を特徴とする請求項4記載の情報通知システム。
【請求項6】
前記携帯端末装置は、
前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される移動速度、移動方向から推定される当該携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両に対して、歩行者の意思を示す特徴的な動作であるかどうかを判定する意思挙動判定手段を有し、
前記送信制御手段は、前記意思挙動判定手段によって歩行者の意思を示す特徴的な動作であると判定されたことに応じて、前記現在位置情報取得手段によって取得された現在位置情報を無線通信により前記車載装置に送信するよう制御すること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の情報通知システム。
【請求項7】
前記車載装置は、前記携帯端末装置から無線通信により送信された注意度情報に基づき、車両内の乗員に通知する現在位置情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態を制御する通知制御手段を有すること
を特徴とする請求項2記載の情報通知システム。
【請求項8】
前記車載装置は、前記通知制御手段によって、注意度情報に基づき制御される、車両内の乗員に通知する現在位置情報の通知タイミング、通知頻度、通知形態を、前記車両内の乗員の操作によって任意に設定変更可能な設定変更手段を有すること
を特徴とする請求項7記載の情報通知システム。
【請求項9】
歩行者が有する当該携帯端末装置との無線通信により取得される情報を車両内の乗員に通知する車両に搭載された車載装置を備える情報通知システムの携帯端末装置において、
当該携帯端末装置が存在する現在の位置を特定する現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
当該携帯端末装置の移動速度、移動方向を検出する移動速度・移動方向検出手段と、
前記移動速度・移動方向検出手段によって検出される移動速度、移動方向から推定される当該携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって、注意を要するかどうかを判定する注意挙動判定手段と、
前記注意挙動判定手段によって注意を要すると判定されたことに応じて、前記現在位置情報取得手段によって取得された現在位置情報を無線通信により前記車載装置に送信するよう制御する送信制御手段とを備えること
を特徴とする携帯端末装置。
【請求項10】
歩行者が有する携帯端末装置との無線通信により取得される情報を車両内の乗員に通知手段を介して通知する車両に搭載された車載装置において、
前記携帯端末装置により、当該携帯端末装置の移動速度、移動方向から推定される携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって注意を要すると判定されたことに応じて送信される前記携帯端末装置の現在位置情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって現在位置情報を受信したことに応じて、前記現在位置情報を通知するよう前記通知手段を制御する通知制御手段とを備えること
を特徴とする車載装置。
【請求項11】
歩行者が有する携帯端末装置と、前記携帯端末装置との無線通信により取得される情報を車両内の乗員に通知する車両に搭載された車載装置とを備える情報通知システムの情報送信方法において、
前記携帯端末装置は、
当該携帯端末装置が存在する現在の位置を特定する現在位置情報を取得し、
当該携帯端末装置の移動速度、移動方向を検出し、
検出される前記移動速度、移動方向から推定される当該携帯端末装置を有する歩行者の挙動が、前記歩行者の近傍を走行する車両にとって、注意を要するかどうかを判定し、
注意を要すると判定されたことに応じて、取得された前記現在位置情報を無線通信により前記車載装置に送信するよう制御すること
を特徴とする情報送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−123105(P2009−123105A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298448(P2007−298448)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】