説明

成膜装置および成膜方法

【課題】ウェハの種類にかかわらずその温度分布を最小限にして成膜することのできる成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜が行なわれるシリコンウェハ101の種類に応じて、シリコンウェハ101の面内の温度分布を均一にするのに最適な第2の部材107を選択して成膜室102内に搬送し、第1の部材103に載置することでサセプタ110を完成させる。第2の部材107は、シリコンウェハ101の温度分布に応じて厚みが変化している。これにより、異なる種類のシリコンウェハ101を処理する場合であっても、温度分布を最小限にして成膜することができる。保管室には、第2の部材を加熱する第2の加熱部が設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャル成長技術は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワーデバイスのように、比較的膜厚の大きい結晶膜を必要とする半導体素子の製造に広く用いられている。
【0003】
エピタキシャル成長技術では、ウェハの温度を均一にすることが重要である。ウェハに温度分布があると、膜厚が不均一になるからである。特に、膜厚の大きいエピタキシャルウェハを製造する際には、エピタキシャル成長に要する時間が長くなるため、僅かな温度差であっても膜厚均一性を大きく低下させる結果となり得る。
【0004】
特許文献1には、ウェハのエッジ部から熱が逃げることによりエッジ部での膜厚均一性が低下するのを防ぐため、ウェハを載置する第1のホルダと、第1のホルダを支持する第2のホルダとを備えた気相成長装置が開示されている。第1のホルダを第2のホルダに用いる材料より熱伝導率の大きい材料で構成することにより、第1のホルダからウェハへの伝熱を良好にするとともに第2のホルダからの放熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−258694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウェハの温度分布は一様ではない。すなわち、エッジ部分での温度低下に限られるものではなく、また、ウェハの種類によっても異なる温度分布を呈する。このため、特許文献1の気相成長装置では、均一な温度分布が得られない場合があった。
【0007】
本発明は、こうした課題を克服するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、ウェハの種類にかかわらずその温度分布を最小限にして成膜することのできる成膜装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、ウェハの種類にかかわらずその温度分布を最小限にして成膜することのできる成膜方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の成膜装置は、
基板を収容する成膜室と、
成膜室内で基板を支持するサセプタと、
サセプタに支持された基板を加熱する第1の加熱部と、
成膜室の外部に設けられてサセプタを保管する保管室と、
成膜室に開閉部を介して接続する待機室と、
基板の種類に応じてサセプタを保管室から取り出し、待機室を介して成膜室にサセプタを搬送する搬送手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の成膜装置は、
基板を収容する成膜室と、
成膜室内で基板を支持する第1の部材と、
第1の部材に支持された基板を加熱する第1の加熱部と、
第1の部材に支持されて基板と加熱部の間に配置される第2の部材と、
成膜室の外部に設けられて第2の部材を保管する保管室と、
成膜室に開閉部を介して接続する待機室と、
基板の種類に応じて第2の部材を保管室から取り出し、待機室を介して成膜室に第2の部材を搬送する搬送手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第1および第2の成膜装置において、保管室には、サセプタおよび第2の部材を加熱する第2の加熱部が設けられていることが好ましい。
第1の成膜装置においては、成膜室内にあるサセプタの温度を測定する第1の温度測定手段と、保管室内にあるサセプタの温度を測定する第2の温度測定手段とを有することが好ましい。また、保管室内には、サセプタを保持するサセプタ保持部材が設けられており、サセプタ保持部材は、サセプタを保管室内の所定位置に移動可能なように構成されていることが好ましい。所定位置は、第2の温度測定手段によって温度測定をする位置、および、搬送手段によって待機室との間でサセプタを搬送可能な位置であることが好ましい。
第2の成膜装置においては、成膜室内にある第1の部材の温度を測定する第1の温度測定手段と、保管室内にある第2の部材の温度を測定する第2の温度測定手段とを有することが好ましい。また、保管室内には、第2の部材を保持するサセプタ保持部材が設けられており、サセプタ保持部材は、第2の部材を保管室内の所定位置に移動可能なように構成されていることが好ましい。所定位置は、第2の温度測定手段によって温度測定をする位置、および、搬送手段によって待機室との間で第2の部材を搬送可能な位置であることが好ましい。
【0013】
本発明の第1の成膜方法は、
第1の加熱部が設けられた成膜室内に基板を搬送してサセプタで支持し成膜処理を行なう成膜方法において、
第2の加熱部を備えた保管室にサセプタを保管し、基板の種類に応じてサセプタを保管室から取り出した後、開閉部を介して成膜室に接続された待機室に搬送し、次いでサセプタを成膜室に搬送することを特徴とするものである。
成膜室内にあるサセプタの温度と保管室内にあるサセプタの温度が同程度となるように、第2の加熱部の出力を調整することが好ましい。
【0014】
本発明の第2の成膜方法は、
第1の加熱部が設けられた成膜室内に基板を搬送して第1の部材で支持し成膜処理を行なう成膜方法において、
第2の加熱部を備えた保管室に第2の部材を保管し、基板の種類に応じて第2の部材を保管室から取り出した後、開閉部を介して成膜室に接続された待機室に搬送し、次いで成膜室に搬送して第1の部材で第2の部材を支持するとともに、基板と第1の加熱部の間に第2の部材を配置して成膜処理を行なうことを特徴とするものである。
成膜室内にある第1の部材の温度と保管室内にある第2の部材の温度が同程度となるように、第2の加熱部の出力を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウェハの種類にかかわらずその温度分布を最小限にして成膜することのできる成膜装置および成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1における枚葉式の成膜装置の模式的な概念図である。
【図2】実施形態1の第2の成膜方法にかかる成膜室の構成を示す断面図である。
【図3】実施形態1の成膜室内に設けられるサセプタを構成する第1の部材を拡大した断面図および対応する上面図である。
【図4】実施形態1のサセプタにシリコンウェハが載置された様子を拡大して示す断面図である。
【図5】平坦な表面を有する第2の部材を用いて複数種のシリコンウェハを加熱したときの温度分布のシミュレーションを示すグラフである。
【図6】第2の部材の模式的な断面図とこれに対応する上面図である。
【図7】他の一例の第2の部材を第1の部材に載置した様子を示す断面図である。
【図8】実施形態1の成膜方法の工程を示すフローチャートである。
【図9】保管室の模式的な断面図である。
【図10】実施形態2の第1の部材の近傍の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態1
図1は、本実施形態における枚葉式の成膜装置100の模式的な概念図である。本実施形態においては、基板の一例としてシリコンウェハ101を用いる。但し、これに限られるものではなく、場合に応じて、他の材料からなるウェハなどを用いてもよい。
また、図2は、本発明の第2の成膜方法にかかる成膜室102の構成を示す断面図である。本実施形態においては、サセプタ110は、シリコンウェハ101を支持する第1の部材103と、第1の部材103に支持されてシリコンウェハ101と第1の加熱部105との間に配置される第2の部材107とからなる。そして、第2の部材107は、第1の加熱部105からの熱によって生じるシリコンウェハ101の温度分布に応じて形状が異なる部材である。
【0018】
成膜装置100には、待機室120が設けられている。この待機室120を中心に、成膜室102、保管室130、ロードロック室140が相互に連通して配置されている。また、それぞれの連結部分には、相互に気密を保持することができる開閉部であるゲートバルブを有する搬送路122、123、124が設けられている。
また、成膜室102、待機室120、保管室130は水素(H)または窒素(N)雰囲気に保持されている。さらに、それぞれ図示しない圧力調整弁および真空ポンプが接続されており、所望の圧力にすることができ、それぞれを等圧に調整することができる。ここでは、700Torr程度の微減圧状態に調圧されている。
【0019】
待機室120には、搬送手段である搬送機構121が設けられている。搬送機構121は、成膜装置100の外部からロードロック室140に搬入されたシリコンウェハ101を順次成膜室102に搬送する。また、搬送機構121は、成膜が完了したシリコンウェハ101を成膜室102から取り出してロードロック室140に搬送する。そして、ロードロック室140から成膜装置100外へと搬出される。
さらに、搬送機構121は、保管室130に収容された第2の部材107も成膜室102へ搬送することができる。
【0020】
後述するように、保管室130には、第2の部材107に限らず、シリコンウェハの種類に応じた複数の種類の第2の部材が収容されている。また、保管室130には、第2の部材を加熱する第2の加熱部131が設けられており、収容される第2の部材を所定の温度に加熱しておくことができる。そのため、第2の部材が成膜室102に搬送された際に急激に温度を変動させることがなく、熱応力による第2の部材の破損を防止することができる。
【0021】
図3は成膜室102内に設けられるサセプタ110を構成する第1の部材103を拡大した断面図および対応する上面図である。さらに、図4は、サセプタ110にシリコンウェハ101が載置された様子を拡大して示す断面図である。
【0022】
成膜室102は、搬送機構121によって搬送されたシリコンウェハ101を収容し、結晶膜の成膜を行なう。ここでは、シリコンウェハ101をサセプタ110に略水平に載置した状態で成膜処理を行なう枚葉式の成膜装置を例として挙げたが、シリコンウェハ101を収容する態様は、これに限定するものではない。
【0023】
成膜室102の内部には、シリコンウェハ101が載置されるSiC(炭化ケイ素)製の第1の部材103が同じくSiC製の略円筒状の回転部104の上部に設けられている。シリコンウェハ101は、搬送機構121によって搬送路122を通して搬入され、第1の部材103上に載置される。
【0024】
回転部104は上部に比べ下部が細く形成されており、成膜室102外において図示しない回転機構と接続されている。これにより、回転部104の水平断面の中心を直交する線を回転軸として所定の回転数で回転させることができる。
【0025】
第1の部材103は中央に開口部を有するリング状であり、周端部が回転部104の上端に固定されている。そして、リング状の第1の部材103の内端部には、上下二段の座ぐりが形成されている。
【0026】
上段の座ぐりである第1座ぐり103aには、シリコンウェハ101が載置される。第1座ぐり103aの内径は、シリコンウェハ101の直径よりも僅かに大きく形成されている。そのため、シリコンウェハ101の略水平方向への移動を拘束することができる。
また、第1の部材103の上面から第1座ぐり103aの水平な面までの深さは、シリコンウェハ101の厚さと略同一かまたはこれ以下に形成されている。そのため、第1座ぐり103aにシリコンウェハ101が載置されると、シリコンウェハ101の上面は、第1の部材103の上面と略同じかまたは上面よりも高い位置になる。よって、供給された成膜ガスがシリコンウェハ101の中心付近から周縁部方向へ流れるとき、第1座ぐり103aの垂直な面にガス流が当たらず、スムーズな成膜ガス流を形成することができる。
【0027】
下段の座ぐりである第2座ぐり103bには、収容されるシリコンウェハ101の種類に応じて搬送された第2の部材107が載置される。
【0028】
第2の部材107は、リング状の第1の部材103の中央に形成された開口部よりも直径が大きく、またその周端部はつば状に形成されているため、第2座ぐり103bの水平な面に懸架するように載置することができる。つまり、第1の部材103の開口部を第2の部材107で蓋をしたような状態となる。
【0029】
第2の部材107が第2座ぐり103bに載置され、第1の部材103と組み合わされることで、サセプタ110が完成される。また、これによりシリコンウェハ101に成膜が行なわれる領域と、回転部104内の下部の領域とが実質的に区画される。これにより、回転部104内に配置された部材から発生する不純物が成膜の行なわれる領域に入りにくくなる。このため、シリコンウェハ101上に形成される結晶膜に不純物が混入するのを防いで、結晶膜の品質低下を抑制することができる。
【0030】
また、サセプタ110は、第1の部材103と第2の部材107から構成されており、第1の部材103は成膜室102内の回転部104に垂直方向の動きが拘束されず着脱可能であって、例えば、保管室130内に第2の部材107とともに保管されていても良い。
その場合、第1の部材103と第2の部材107をそれぞれ待機室120を介して成膜室102内に搬送し、第1の部材103で第2の部材107を上述の形態のように支持するとしても良い。
【0031】
シリコンウェハ101は、下方に設けられたインヒータ105aとアウトヒータ105bとからなる第1の加熱部105によって加熱される。本実施形態では、これらの間に第2の部材107が配置されるので、第1の加熱部105からの熱は、第2の部材107を通じてシリコンウェハ101に伝わる。このとき、シリコンウェハ101と離間している第2の部材107からシリコンウェハ101に伝わる輻射熱の量は、シリコンウェハ101と第2の部材107との間隔が近いほど大きくなる。つまり、第1の加熱部105の温度は一定であっても、シリコンウェハ101と第2の部材107との距離が近ければ輻射熱が伝わりやすくなる。したがって、第2の部材107の厚みを局所的に厚くして第2の部材107からシリコンウェハ101までの距離を短くすることで、シリコンウェハ101の温度を局所的に高めることができる。
また逆に、第2の部材107の表面とシリコンウェハ101の間隔が遠いほど、輻射熱の伝わる量は小さくなる。つまり、第1の加熱部105の温度は一定であっても、シリコンウェハ101と第2の部材との距離が遠ければ輻射熱が伝わりにくくなる。そのため、第2の部材の厚みを局所的に薄くして第2の部材107からシリコンウェハ101までの距離を長くすることで、シリコンウェハ101の過熱を局所的に抑制することができる。
【0032】
成膜室102の上部には、シリコンウェハ101の表面に結晶膜を成膜させるための成膜ガスを供給する成膜ガス供給部150が設けられている。また、成膜ガス供給部150のシリコンウェハ側の端部には、成膜ガスの吐出孔が多数形成されたシャワープレート151が接続されている。シャワープレート151はシリコンウェハ101に対向して配置されており、シリコンウェハ101の表面に向かって成膜ガスを供給することができる。
【0033】
成膜室102の下部には、成膜室102内のガスを排気する排気部152が複数設けられている。排気部152は、図示しない真空ポンプおよび排気機構と接続され、成膜後の成膜ガスを成膜装置100外へと排出する。
【0034】
まず、厚みが均一な第2の部材を用いて成膜する例について述べる。
【0035】
図2、図3、図4において用いられている第2の部材107は、厚みが均一であり、シリコンウェハ101の全面に均一に輻射熱を伝える形状である。
【0036】
図5は、平坦な表面を有する第2の部材107を用いて複数種のシリコンウェハを加熱したときの温度分布のシミュレーションを示すグラフである。
図5のグラフの実線aは、ボロンなどのP型の不純物が1018/cm位程度まで添加された8インチ(約200mmφ)シリコンウェハ101(以後Pウェハ101と称す)の温度分布である。実線aに示されるように、第2の部材107を介して加熱されたPウェハ101は、設定温度1100℃に対し、全面において誤差±1℃以内の良好な温度分布が形成されることが確認された。
上述のような良好な温度分布の状態で成膜ガスが供給されれば、Pウェハ101の全面に良質な結晶膜を均一に成膜させることができる。
【0037】
次に、厚みが均一でない第2の部材を用いて成膜する例について述べる。
【0038】
図5のグラフの点線bは、P型の不純物が1016/cm以下程度に添加された8インチシリコンウェハ(以後Pウェハ101´と称す)の温度分布である。点線bに示されるように、Pウェハ101´は、平坦な表面の第2の部材107を介して加熱されたとき、中央部近傍は設定温度と略同じ温度となる。しかし、中心から50mm程度離れた部分においては設定温度よりも最大で5℃程度低くなり、さらに周縁部付近では設定温度よりも最大で5℃程度高くなる傾向が確認された。つまり、Pウェハ101´を平坦な表面の第2の部材107を介して加熱すると、周方向に最大10℃の誤差のある温度分布が形成されてしまう。
【0039】
そこで、厚みが均一な第2の部材107に代えて、厚みが均一でない第2の部材107´を用いて成膜を行う。すなわち、第2の部材107は、Pウェハ101の成膜には適しているが、Pウェハ101´の成膜には適当でないので、Pウェハ101´の成膜に適した第2の部材107´を保管室130から取り出して搬送機構121によって成膜室102に搬送する。
【0040】
図6は、第2の部材107´の模式的な断面図とこれに対応する上面図である。この図に示すように、第2の部材107´は厚みが均一でなく、表面にPウェハ101´までの距離が短い凸部108と、Pウェハ101´までの距離が長い凹部109とを有する。理解を容易にするために、図6の上面図で凸部108および凹部109の位置を明示するために実線を用いて区画しハッチングを施した。但し、断面図を参照すれば分かるように、凸部108、凹部109、その他平坦な表面との境界はなだらかであり、明確な境界線は存在しない。Pウェハ101´は、同心円状の温度分布を有するので、凸部108および凹部109は、第2の部材107´に同心円状に形成される。
【0041】
図7は、第2の部材107´を第1の部材103に載置した様子を示す断面図である。
【0042】
上述したように、第2の部材から伝わる輻射熱の量は、シリコンウェハからの距離に依存している。そのため、該シリコンウェハの温度分布に応じてシリコンウェハからの距離が局所的に異なるように厚みを変えた第2の部材を用いることで、シリコンウェハの温度分布を均一にすることが可能となる。
すなわち、第2の部材107´には、Pウェハ101´で設定温度よりも温度が低くなる領域の直下に凸部108が形成されており、設定温度よりも温度が高くなる領域の直下に凹部109が形成されている。このような形状の第2の部材107´を用いれば、Pウェハ101´への輻射熱の量を面内で変えることができるので、Pウェハ101´の温度が面内で均一になるようにすることができる。
【0043】
換言すると、第2の部材107´の断面形状は、ウェハ101の温度分布に対応したものとなる。つまり、第2の部材107´の中心を通る垂直断面の形状は、図5の点線bの天地を反転させたものに相似する。
したがって、厚みが均一である第2の部材を介して加熱されたシリコンウェハの温度分布のデータがあれば、温度を均一にするように厚みが調整された第2の部材を設計することができる。
【0044】
上述したように設計された第2の部材を、用いるシリコンウェハの種類の数だけ予め保管室130に収容しておけば、成膜を行なうシリコンウェハの種類に応じて最適な第2の部材を用いることができる。これにより、あらゆるシリコンウェハを均一に加熱することができ、良質な結晶膜を成膜することができる。
また、本実施形態では、通常の生産稼働を行ないながら第2の部材の交換の作業を行なうことができるため、装置の分解などの煩雑な作業が必要ない。そのため、高い稼働率を維持したまま、あらゆるシリコンウェハの特性に合わせて均一な温度分布を得るための調整を行なうことができる。
【0045】
図8は、本実施形態の成膜方法の工程を示すフローチャートである。
本実施形態の成膜方法の一態様は、以下の工程をもって行われる。
【0046】
まず、用いるシリコンウェハ101に応じて、均一な温度分布で加熱できる最適な第2の部材107が選択される。そして、搬送機構121によって保管室130から待機室120を通って成膜室102内へと搬入され、第1の部材103の第2座ぐり103bに載置され、サセプタ110が完成される(S101)。
このとき、成膜室102内は成膜温度(設定温度)にまでは達してはいないものの、第2の部材107が常温の状態で搬入された場合に熱応力がかかるのに十分な例えば700℃以上に調整されている。しかしながら第2の部材107は、保管室130内において第2の加熱部131によって予め700℃〜800℃程度まで加熱されている。そのため、第2の部材107の温度を急激に変動させずにすみ、熱応力による破損を防止することができる。
【0047】
次に、ロードロック室140に供給されたシリコンウェハ101が搬送機構121によって成膜室102へと搬入される。そして、第1の部材103の第1座ぐり103aに載置される(S102)。
【0048】
次に、第1の加熱部105を昇温させ、第2の部材107を加熱する。加熱された第2の部材107は、シリコンウェハ101に対する実質的なヒータとなり、シリコンウェハ101に輻射熱を伝える。そして、第1の部材103に載置されたシリコンウェハ101を設定温度になるまで徐々に加熱する(S103)。
【0049】
そして、シリコンウェハ101が設定温度(例えば1100℃)まで加熱された後に、シャワープレート151から成膜ガスを供給し、結晶膜の成膜を開始する(S104)。シリコンウェハ101には、面内全体に均一な温度分布が形成されているため、全面に良質な結晶膜を成膜させることができる。
【0050】
上述の成膜処理が例えば数十分程度行なわれ、所望の膜厚の結晶膜の成膜が完了したシリコンウェハ101は、搬送機構121によって成膜室102から搬出される。そして、ロードロック室140内に搬送し、成膜装置100の外部へと搬出される(S105)。
上述の工程が順次繰り返されることにより、成膜装置100は良質な結晶膜が均一に成膜されたシリコンウェハ101を連続して製造することができる。
【0051】
ここで、次に成膜室102に搬入されるためにロードロック室140に供給されたシリコンウェハ101が、搬出されていった成膜処理済のシリコンウェハ101と同じ特性のシリコンウェハであれば、第2の部材107を入れ替えることなく、続けて成膜処理を行なえばよい。一方、異なった特性のシリコンウェハを搬入する場合には、工程S101において、新たなシリコンウェハに応じた第2の部材107´と、第1の部材103に載置されている第2の部材107を交換すればよい。
このように、装置の分解などの煩雑な作業を必要とせずに、シリコンウェハ101の特性に応じた第2の部材107を用いることができる。そのため、稼働効率を低下させることなく、あらゆるシリコンウェハに対して良質な結晶膜を得るための調整を行なうことができる。
本実施の形態においては、成膜室102に設けられた、第1の温度測定手段としての放射温度計160によって第1の部材103の温度を測定し、保管室130内に置かれた第2の部材の温度が測定温度となるように、第2の加熱部131の温度を調整することが好ましい。このようにすることにより、例えば、第2の部材107に代えて第2の部材107´を成膜室102に搬送する場合において、第2の部材107′の温度は予め第1の部材103の温度付近まで加熱されているので、第2の部材107′を成膜室102の内部に搬入しても、第2の部材107′の温度を急激に変動させずにすみ、熱応力による破損を防止することができる。
図9は、保管室130の模式的な断面図である。保管室130には、導入口170を通じて水素ガスまたは窒素ガスが導入される。また、排気口171には、図示しない圧力調整弁または真空ポンプが接続していて、保管室130内の圧力を所望の圧力にすることができる。
図9に示すように、保管室130には、サセプタ保持部材180が設けられている。第2の部材107および第2の部材107′は、サセプタ保持部材180によって保持されている。また、保管室130には、第2の温度測定手段としての放射温度計161が設けられていて、サセプタ保持部材180に保持された第2の部材の温度を所定位置で測定可能である。
成膜室102に設けられた放射温度計160によって第1の部材103の温度を測定した結果と、放射温度計161によって測定された保管室130内での第2の部材の温度とに基づいて、第2の加熱部131の温度を調整することにより、保管室130内に置かれた第2の部材の温度が成膜室102内の第1の部材103の温度と同程度となるようにすることが可能である。
尚、図9の例では、第2の加熱部131は1箇所にのみ設けられているが、サセプタ保持部材180を挟んで第2の加熱部131と対向する位置にもう1つ設けることもできる。この構成であれば、第2の部材をより短時間で均一に加熱することが可能である。
サセプタ保持部材180は、保管室130の中で昇降可能なように構成されている。これにより、放射温度計161による温度測定を行う場合には、サセプタ保持部材180を上下に動かして、第2の部材107または第2の部材107′を測定位置まで移動させることができる。また、搬送路123から第2の保持部材107または第2の保持部材107′を搬出する場合にも、サセプタ保持部材180を上下に動かして、第2の部材107または第2の部材107′を搬送路123の高さ、すなわち、搬送機構121によって待機室120との間で第2の部材107または第2の部材107′を搬送可能な位置まで移動させることができる。さらに、搬送路123を通じて保管室130の中に他の第2の保持部材を搬入する場合にも、サセプタ保持部材180を上下に動かして、保持部181の位置を搬送路123の高さに合わせておけば、搬入した第2の保持部材をスムーズにサセプタ保持部材180で保持することができる。
【0052】
また、従来の装置では、シリコンウェハをストックするカセット(図示せず)に収容された複数枚のシリコンウェハの処理を全て完了させるまで、成膜環境を変更することは望ましくなかった。そのため、一連のロットの処理を完了させるまでは他種のシリコンウェハを処理することが難しかった。しかしながら、本実施形態の成膜方法であれば、上述した成膜環境の切り替えの作業を通常の生産稼働中にも行なうことができる。したがって、需要があるシリコンウェハを、需要のあるときに必要なだけ製造するといった柔軟性のある操業を行なうことができる。
【0053】
さらに言えば、カセットに装填されたシリコンウェハが一枚一枚全て異なる特性のものであったとしても、逐一第2の部材107を入れ替えれば、全てのウェハに良質な結晶膜を成長させることもできる。
【0054】
実施形態2
さらに、好ましい他の一態様について説明する。
図10は、本実施形態の第1の部材203の近傍の構成を示す断面図である。
【0055】
この態様では、Pのシリコンウェハ201を加熱する第1の加熱部205は、インヒータ一系統だけとなっている。そして、第1の部材203に載置される第2の部材207は、周縁部に凸部208が形成され、他の部分は平坦な形状となったものである。
【0056】
従来、第1の部材とシリコンウェハが接地した状態で加熱すると、接地面において放熱が起こり、周囲に比べ温度低下が生じていた。これをカバーするためにアウトヒータを設けるなどして、面内の温度分布を均一にする手法が採用されていた。
【0057】
しかし、周縁部に凸部208が形成された第2の部材207を用いれば、シリコンウェハ201の周縁部での放熱をカバーするだけの輻射熱を伝えることができ、温度低下を抑止することができる。よって、シリコンウェハ201面内の均一な温度分布を得ることができる。
これにより、本実施形態の態様においては、良質な結晶膜が形成されたシリコンウェハ201を製造することができる。
【0058】
以上、具体例を参照しながら本発明の実施形態について詳述した。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することもできる。
【0059】
例えば、実施形態1では、搬送機構121は、シリコンウェハ101および第2の部材107の双方を搬送するとした。しかし、シリコンウェハ101を搬送するための搬送機構と、第2の部材107を搬送するための搬送機構をそれぞれ独立して一基ずつ設けても良い。これによれば、一方の搬送中にもう一方の搬送を待たなければならないというような作業ロスが生じないため、リードタイムの短縮に寄与することができる。
【0060】
また、成膜室102、保管室130、ロードロック室140への搬入出を行なう搬送機構を搬送路122、123、124近傍に一基ずつ、合計三基設けてもよい。これによれば、第2の部材やシリコンウェハを搬送機構同士で相互に受け渡して搬入出することもできる。
【0061】
本発明の実施形態1および2では、第2の部材だけが保管室に保管されており、成膜室に搬送されて第1の部材に載置されることでサセプタが完成される態様について説明した。但し、第1の部材、第2の部材が一体型となったサセプタが保管室に保管され、用いられるシリコンウェハに応じて搬送されるような態様であっても良い。
【0062】
また、本発明で用いられている第1の加熱部105、第2の加熱部131に付随して設けられる電気配線や、出力を制御するコントローラ、あるいはシリコンウェハ101の表面温度を検知するセンサなどについては図中においては省略した。
【0063】
本発明の実施形態の一例として、一般的な成膜装置および成膜方法について説明したが、これに限らず、単結晶膜を成膜するエピタキシャル成長装置や、ポリシリコン膜の成膜を目的とする装置などであっても、本発明を適用して同等の作用効果を得ることができる。
【0064】
さらに、装置の構成や制御の手法など、本発明に直接必要としない部分などについては記載を省略したが、必要とされる装置の構成や、制御の手法などを適宜選択して用いることができる。
【0065】
また、本発明を説明するために示した図において、説明のために必要な構成以外は省略し、縮尺等についても原寸大のものとは一致させず、明示できるよう適宜変更した。
【0066】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての成膜装置、および各部材の形状は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
100…成膜装置
101、201…シリコンウェハ(Pウェハ)
101´…Pウェハ
102…成膜室
103、203…第1の部材
103a…第一座ぐり
103b…第二座ぐり
104…回転部
105、205…第1の加熱部
105a…インヒータ
105b…アウトヒータ
107、107´、207…第2の部材
108、208…凸部
109…凹部
110…サセプタ
120…待機室
121…搬送機構
122、123、124…搬送路
130…保管室
131…第2の加熱部
140…ロードロック室
150…成膜ガス供給部
151…シャワープレート
152…ガス排気部
160、161…放射温度計
170…導入口
171…排気口
180…サセプタ保持部材
181…保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する成膜室と、
前記成膜室内で前記基板を支持するサセプタと、
前記サセプタに支持された前記基板を加熱する第1の加熱部と、
前記成膜室の外部に設けられて前記サセプタを保管する保管室と、
前記成膜室に開閉部を介して接続する待機室と、
前記基板の種類に応じて前記サセプタを前記保管室から取り出し、前記待機室を介して前記成膜室に前記サセプタを搬送する搬送手段とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記保管室には、第2の加熱部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記成膜室内にあるサセプタの温度を測定する第1の温度測定手段と、
前記保管室内にあるサセプタの温度を測定する第2の温度測定手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
基板を収容する成膜室と、
前記成膜室内で前記基板を支持する第1の部材と、
前記第1の部材に支持された前記基板を加熱する第1の加熱部と、
前記第1の部材に支持されて前記基板と前記第1の加熱部の間に配置される第2の部材と、
前記成膜室の外部に設けられて前記第2の部材を保管する保管室と、
前記成膜室に開閉部を介して接続する待機室と、
前記基板の種類に応じて前記第2の部材を前記保管室から取り出し、前記待機室を介して前記成膜室に前記第2の部材を搬送する搬送手段とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記保管室には、第2の加熱部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記成膜室内にある前記第1の部材の温度を測定する第1の温度測定手段と、
前記保管室内にある前記第2の部材の温度を測定する第2の温度測定手段とを有することを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
第1の加熱部が設けられた成膜室内に基板を搬送してサセプタで支持し成膜処理を行なう成膜方法において、
第2の加熱部を備えた保管室に前記サセプタを保管し、前記基板の種類に応じて前記サセプタを前記保管室から取り出した後、開閉部を介して前記成膜室に接続された待機室に搬送し、次いで前記サセプタを前記成膜室に搬送することを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
前記成膜室内にあるサセプタの温度と前記保管室内にあるサセプタの温度が同程度となるように、前記第2の加熱部の出力を調整することを特徴とする請求項7に記載の成膜方法。
【請求項9】
第1の加熱部が設けられた成膜室内に基板を搬送して第1の部材で支持し成膜処理を行なう成膜方法において、
第2の加熱部を備えた保管室に第2の部材を保管し、前記基板の種類に応じて前記第2の部材を前記保管室から取り出した後、開閉部を介して前記成膜室に接続された待機室に搬送し、次いで前記成膜室に搬送して前記第1の部材で前記第2の部材を支持するとともに、前記基板と前記第1の加熱部の間に前記第2の部材を配置して成膜処理を行なうことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
前記成膜室内にある前記第1の部材の温度と前記保管室内にある前記第2の部材の温度が同程度となるように、前記第2の加熱部の出力を調整することを特徴とする請求項9に記載の成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−28098(P2010−28098A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127271(P2009−127271)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】