説明

接触式プローブおよび形状測定装置

【課題】 プローブの伸び、及び周辺空気の温度、湿度の影響を抑えた高精度な形状測定を行うことのできる形状測定用の接触式プローブおよび形状測定装置を提供する。
【解決手段】 プローブシャフト2と先端球16を備えた接触式プローブ1において、
前記プローブシャフト2内の測長光路の少なくとも一部に透明体を設けることにより、少なくともこの部分だけ空気に暴露された光路を減らすことができる。その結果、外気の屈折率変化による測定誤差を抑え、精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズやミラーなど光学素子、及び光学素子を製作するための型の表面形状などを測定する接触式プローブを有する形状測定装置に関する。
また、そのプローブの変位を光を用いる変位センサで検出して被測定物面の形状を測定する接触式プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズやミラーもしくは金型の表面など三次元的な構造を有する被測定物の形状や特定部位の座標を測定する形状測定方法として、プローブと呼ばれるシャフト状の触針を用いる形状測定方法がある。この測定方法はプローブを被測定物の表面に所定の接触力で押圧しながら被測定物の表面に倣って移動させ、定められた原点からのプローブの位置やプローブの姿勢を計測することで、その計測値に基づき被測定物の形状を測定するものである。形状測定中のプローブ自体の測長方向への変形(例えば、XY平面内にプローブを走査しつつ、プローブのZ軸座標の変位に基づいて形状計測する場合はZ軸方向への変形)はそのまま測定誤差に現れる。したがって、形状測定中のプローブの変形をいかに考慮に入れて形状計測を行うかが重要な技術課題となっていた。
【0003】
従来、このような形状測定方法に用いられるプローブとして、特許文献1に開示されているようなプローブが知られている。特許文献1に記載のプローブは、中空のプローブシャフトの一端に先端球が設けられ、このプローブシャフトにおける空孔の底部にミラーを設けてある。被測定物の形状測定する際には、このミラーによってプローブの空孔内に導かれたレーザ光を反射し、この反射光と参照光とを重畳して干渉縞を得ることにより、定められた原点からのプローブの位置をレーザ測長する。このプロ―ブの位置に基づいて被測定物の形状を測定するものである。
【0004】
プローブシャフトは空気軸受けに対して移動可能に支持されていて、特定の方向に移動可能である。特許文献1の方式では、レーザ光による測長軸の延長線上に被測定物と接触する先端球が配置されているため、測定値にアッベ誤差が生じない利点を有している。また、ミラーと先端球とが近接しているため、温度変化、外力等によりプローブシャフトが測長方向に変形した場合であっても、その変形量が測定誤差になりにくいという特徴を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−167620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、プローブの測長方向の変形によって生じる測定誤差低減に有力な手段であるが、実際には中空であるプローブ中の光路において、気圧、湿度の変動に伴う屈折率変化に伴う光路長の変化の影響を受けてしまう。このため、特許文献1に開示された方法では、プローブ中の光路における屈折率変動によって生じる測定誤差を、低減させることは困難だった。この屈折率の変動による光路長の変化は、高い測定精度を要求されるほど測定誤差として顕著に表れるようになる。
【0007】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、形状測定においてプローブの変形及びプローブ中の光路の屈折率変動に起因した測定誤差の低減を可能にする、接触式プローブ、及びそれを備えた形状測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本出願に係る発明は、その内部に測長光路が形成されるプローブシャフトと先端球を備えた接触式プローブにおいて、
前記プローブシャフト内の測長光路の少なくとも一部に設けられ、光が透過可能な透明体で構成された透過部と、
前記先端球と前記透過部の間に設けられ、前記測長光路を案内された光を反射する反射部と、
を有する接触式プローブ
である。
【0009】
また上記のプローブを備えた形状測定装置である。
上記構成において被測定物の形状を走査測定する際、測長光が上記のプローブの透明体区間を透過するため、前記の透明体の光路中では外気の屈折率変化に伴う光路長の変化による測定誤差を低減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上に説明するように、本出願にかかる発明によれば、プローブシャフト内の測長光路の少なくとも一部が光を透過する透明体で構成されていることにより、外気の気温、湿度の変動に伴う屈折率変動の影響を低減し、測定誤差を低減することができる。また、プローブシャフト全体を透明体で構成した場合には、プローブシャフトが中実となるため、中空である場合よりも撓み剛性を高くする上で有利であるためプローブシャフトの曲がり、に起因する測定誤差も小さくすることができる。
【0011】
このことにより、撓み変形によるプローブシャフトの測長方向とは垂直な方向の測定誤差を低減させることができる。更に、中空体よりも製作が容易であるため、より難加工であっても高剛性、低熱膨張な素材を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のプローブの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における装置の構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のプローブの構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
図1(a)は本発明の特徴をもっとも良く表す図面であり、第1の実施形態を示す構成図である。同図において1はプローブであり、プローブ支持ベース18に対し懸架された板バネ17によって支持されている。また、プローブ1は空気軸受け19によって支持されている。図1(a)にて示された構成はプローブ支持ベース18と空気軸受け19とは一体に形成されている例であり、プローブ支持ベース18に穿たれた白線で描かれた空孔に不図示の送風手段より空気を送ることで空気圧によってプローブ1を支持する。もちろんプローブ支持ベース18とプローブ1を支持する軸受け(ここでは空気軸受け19)とはそれぞれ個別に設けても良い。
【0015】
プローブ1は、例えばサファイアのような高剛性で光を透過する透明体のプローブシャフト2、と先端球16からなる。なお、プローブシャフト2の内部にはプローブ1の変位を測定するためのレーザ光が通過する測長光路が形成される。プローブシャフト2の先端には先端球16を強固に支持するため超硬合金製の触針子3を設けてもよい。先端球16は例えばルビーなどからなる。透明体からなる透明部がプローブシャフト内の測長光路の少なくとも一部に設けられていればよく、また触針子3とプローブシャフトとを一体に形成するなど、必要に応じてプローブの構成を選択して良い。
【0016】
先端球16と透過部の間で且つ透過部の一部には、プローブ1の変位を測定するためのターゲットとなる反射部として、第1平面ミラー8が構成されている。透明部は、外部から照射された光を第1の平面ミラー8に案内する構成となっていればよい。
【0017】
第1平面ミラー8は、第1レーザ光Gの波長の光を反射する誘電体多層膜を設けること、もしくは透明体の一部を鏡面に加工して構成されている。本実施例ではこの第1レーザ光Gは第1平面ミラー8及びプローブ1の変位を求める干渉計に案内され、波長が632.8nmの波長安定化レーザを用いている。
【0018】
一方で、プローブシャフト2の触針子3と対向する端部には、その焦点が第1平面ミラー8面上となるように、集光する凸面Mが形成されている。本実施例では、プローブシャフト2の全体を透明体で構成しているため、透明体の端部に曲率を持たせることにより凸面Mを形成している。
【0019】
これにより、後述するが、プローブ1の先端部をより細くすることが可能で、測定自由度を向上させることができる。プローブ1にはマグネット20が備えられており、プローブ支持ベース18に備えたコイル21から可変の力を加えられる様になっている。もちろん、プローブシャフト2の透明体の端部に凸面形状を設けずにプローブシャフト2とは別にミラー8に焦点を結ぶように集光用レンズ(不図示)を設ける構成をとっても良い。また、プローブシャフト2を従来のように中空とし、測長光路をなす中空の少なくとも一部に透明体を配置し、その透明体とは別体でプローブシャフト2の端部に集光用レンズを取り付けても良い。図1(b)及び図1(c)はプローブシャフトと先端球からなるプローブの他の構成例について、説明のためプローブのみを図示している。
【0020】
もちろんミラー8へレーザ光を案内するにあたり、プローブ1の先端部にレーザ光を集光する必要が無い場合は、図1(b)に示すように、プローブ1における透明部の他端部(図中の上端)は平面状にしてもよい。
【0021】
また、プローブシャフト2と同じ形状、同じ材質で作られた、参照用ロッドをプローブシャフト2に近い場所に設けても良い。これにより、プローブシャフト2が外気温の変動に伴って熱膨張した場合に、変形した参照用ロッドを測定しておくことで、プローブシャフト2の変形を補償することが可能となる。
【0022】
プローブシャフト2がサファイアのような第1レーザ光Gの波長の光が透過する透明円柱であるため、この透明区間に第1レーザ光Gを通すことで、この区間分だけ空気に暴露された光路を減らすことができる。この区間は、第1平面ミラー8の変位を求める干渉計の測長光路に相当し、該光路上の空気の揺らぎに伴う屈折率変動の影響を低減させるため、プローブ1による形状測定誤差を低減させることになる。プローブシャフト2における透明部が石英やダイヤモンド、光学ガラス、低熱膨張ガラスで作られていても良い。
【0023】
また、プローブシャフト2の全体を透明体で構成する場合には、中空でなく中実であることにより、より撓み剛性を向上させることができる。このことにより、走査の際、被測定物4からの反力によってプローブシャフト2に生じる変形を低減させることができる。このことは、プローブ1の測定方向である移動方向、もしくはその垂直の方向の変形に伴う、誤差成分を減少させる効果を持つ。また、この撓み剛性を向上させる目的には、プローブシャフト2が例えばサファイアのようなコランダム、或いはダイヤモンドのような、二酸化珪素を主成分とする石英や光学ガラスよりも高剛性の材質を用いることも有効な手段である。
【0024】
プローブシャフト2の上端部が、図1(a)もしくは(c)に示されるように集光特性のある凸面Mまたは光学素子を有する構成であれば、第1レーザ光Gの光路を阻害することなく、プローブシャフト2を段付或いはテーパー等を用いた先細り形状にすることが可能となる。つまりプローブの透明体からなる透明部の端部が光を集光または入射した光束を縮小させる光学特性を有していればよい。
【0025】
このことは、深い溝や平面と立直した壁面の隅部などプローブシャフトの進入が困難な形状を有する被測定物4を測定する際、プローブ1と被測定物4との衝突や干渉を防ぐ上で有利である。このような構成を有することでプローブ1により高い測定自由度を持たせることができる。また、プローブシャフト2が光学面を形成するには加工が困難な部材によって形成されている場合等には、第1レーザ光Gを集光させるために、プローブシャフト2上にレンズなどの集光素子を設置しても良い。更に、集光特性を発揮させる目的で、フレネルレンズ、グレーテッドインデックス、回折格子等が配置されても良い。
【0026】
なおプローブシャフト2の透明部の端部に集光特性を持たせた場合には、図1(c)に示すように、先端球16の表面に第1レーザ光Gを直接入射させ、先端球16の表面を球面ミラーとして反射させるように構成しても良い。この構成では、先端球16がミラーの役割を兼ねて、透過部に対して設けられていることになる。
【0027】
この場合には先端球16の材質は、真球度と干渉計で用いることのできる反射特性の得られる表面粗さとが両立できる加工性を有するものが良い。
【0028】
以上のように、本実施例におけるプローブシャフトと先端球を備えた接触式プローブは、プローブシャフト内の測長光路の一部に設けられ、光が透過可能な透明体で構成された透過部と、先端球と透過部の間で且つその透過部に設けられ、透過部を案内された光を反射する反射部、を有する点に特徴がある。
【0029】
図2は第1実施形態における装置の構成図である。マグネット20、コイル21は省略されて描かれている。同図において、床23に形状測定装置が設置される。まず、床23上に除振台24を設け、その上に計測ベース26を設ける。除振台により、床23から計測ベースへ伝わる振動を減衰させることができ、測定誤差を低減させることができる。なお、この計測ベースは被測定物4と、位置の基準となる3つの基準ミラーとの相対位置を固定するものであり、本測定装置は、基準ミラーに対する被測定物4の表面の点の位置を測定するものである。
【0030】
計測ベース26は箱状の構造物であり、これに被測定物4を固定し、水平方向の位置基準であるX基準ミラー27、及び図示しないY基準ミラー28と鉛直方向の位置基準であるZ基準ミラー29を備えている。これらの計測ベース及び基準ミラーは、測定の基準となるものであるので、線膨張係数の小さな材料、例えば低熱膨張セラミック、或いは低熱膨張鋳鉄や低熱膨張ガラスなどの材料を用いて製作する。これらの基準ミラーは前述の干渉計でプローブ位置を測定するときの位置基準となるものである。
【0031】
プローブ支持ベース18に設けられたZ距離測定用小型ミラー37と第1平面ミラー8との変位をZp、Z距離測定用小型ミラー37とZ基準ミラー29との変位をZ1とする。このZpとZ1の値を用い、
Z=Zp+Z1
とすることで、プローブ1のZ基準ミラー29に対するZ方向の変位Zを求めることができる。二つのX距離測定用小型ミラー42a、42bの間の距離をL1、X距離測定用小型ミラー42bから先端球16までの距離をL2とする。X方向及びY方向については、これらL1、L2とX基準ミラー27とX距離測定用小型ミラー42との変位X1及びX2を用いて、
X=X1+(X2−X1)*(L1+L2)/L1
と基準ミラー27に対するX方向のプローブの先端球16の位置あるいはプローブ1の姿勢を求めることができる。Y方向についても同様である。
【0032】
プローブを移動させるスライドについて説明する。架台25上に設けられた走査軸ベース30を固定子として、図中のX方向に相対的に移動可能なX軸スライド31と、X軸モータ32とが走査軸ベース30に設けられている。更に、X軸スライド31に対してY方向に相対的に移動可能なY軸スライド33とY軸モータ34とがX軸スライド31に設けられている。同様にY軸スライド33に対してZ方向に相対的に移動可能なZ軸スライド35とZ軸モータ36とがY軸スライド33に設けられている。
【0033】
このような構成をとることで、Z軸スライド14はXYZ方向の三次元方向に移動可能となる。Z軸スライド35には、プローブ支持ベース18が固定されている。プローブ支持ベース18に固定された板バネ17によって空気軸受け19に備えられたプローブシャフト2は弾性支持されている。また板バネ17は、1枚或いは複数枚の薄い金属製の板によって構成されている。これによりプローブ1は、プローブ支持ベース18に対しZ軸方向に移動可能に支持される。
【0034】
プローブを走査する場合はXY平面上に、例えばラスター軌道のような走査軌道を上位コントローラ40から与え、X軸スライド31及びY軸スライド33を移動させる。このときのX軸及びY軸の動きは、位置制御器38によってモータを駆動し、スライドを所望の位置へ動かす位置制御となっている。一方でZ軸スライド35に関しては、Zpによって求めることができる接触力Fを一定に制御する接触力制御による動作によってのみ動かされることとなる。
【0035】
Z軸について、被測定物4に対するプローブ1の接触力の制御を行いながら、XY軸の位置制御によってプローブ1を移動させることによって、プローブ1が被測定物4上を倣う走査が可能となる。この状態で、干渉計によって得られたXYZの位置基準に対するプローブ位置の変位X、Y、Zを記録することで被測定物4の形状を測定することができる。
【0036】
<第2の実施形態>
図3は本願の第2の実施形態を示す構成図である。プローブは、プローブ1のうちで軸受けにて支持されて変位が制限されたプローブの上端部に対して、被測定物4に当接するプローブの下端部は、外力を受けると比較的撓みやすい。
【0037】
そこで、透明体からなる透明部を有するプローブシャフト2の上端には、同シャフトの上端部の回転角度を測定するためのターゲットとなる第3平面ミラー22が構成されている。本実施例ではプローブの上端部に対する下端部の回転角度もしくは外力によるプローブの下端部の撓みを測定するためにもターゲットとして第1平面ミラー8を用いている。第3平面ミラー22は、プローブシャフト2の上端面に第2レーザ光Hの波長の光を選択的に反射する誘電体多層膜を施すことで構成されている。プローブシャフト2の上端が、第3平面ミラー22を設けているため、第2の実施形態では、プローブシャフト2の上端に集光光学系が構成されていない。
【0038】
第1レーザ光源5から出射した第1レーザ光Gは、ダイクロイックミラー11を透過したのちにハーフミラー6を通過した後、第1平面ミラー8で反射され、干渉計による測長に用いられる。第1ハーフミラー6にて戻り光の一部は第1光位置検出素子15に向かって反射される。集光レンズ13にてPSD素子等からなる第1光位置検出素子15上に集光されることで第1平面ミラー8、即ちプローブシャフト2の下端部の撓みを測定する。つまり、第1光位置検出素子15を受光部とする光学系をプローブ撓み測定手段として、プローブ1の下端に備えた平面ミラーの回転角度もしくは先端球16を球面ミラーとする反射部の位置を測定することでプローブの撓みが測定できる。
【0039】
更に、第2レーザ光源10から出射した第2レーザ光Hは、第2ハーフミラー14、コリメートレンズ7を経てダイクロイックミラー11にてプローブ1に向かって反射し、ハーフミラー6を通過して後に、第1レーザ光Gと同軸にプローブ1の上端部に入射する。
【0040】
第3平面ミラー22は632.8nmを中心波長とする狭帯域透過特性を持たせており、ここで第1レーザ光Gは透過され、第2レーザ光Hは反射される。第2レーザ光Hの戻り光は、ダイクロイックミラー11で反射し、PSD素子等からなる第2光位置検出素子12に入射する。これにより第3平面ミラー22の撓み状態、即ちプローブシャフト2の上端の回転角度を求めることができる。図3中では第1の光位置検出素子15が検出する光点の位置は、ある平面(例えばXY平面)に対する第1平面ミラー8の回転角度を反映した位置となっている。同じく第2の光位置検出素子16は、図3中 第3平面ミラー22のある平面に対する回転角度を反映している。つまり第二光位置検出素子12を受光部とする光学系をプローブの端部の回転角度測定手段として、定められた平面に対する第3平面ミラー22の回転角度を測定することができる。
【0041】
したがって、各光位置検出素子にて検出された光点の位置に基づきプローブの撓みを検出し、検出された撓み量に基づいて被測定物の測定データを補正することで、より高精度な形状測定を行うことができる。
【0042】
図4に第2の実施形態での形状測定装置の構成図を示す。図2とはプローブ支持ベース18の中身にオートコリメータ光学系9が含まれていること以外は同一である。但し図中では、第2レーザ光源10、コリメートレンズ7、第2ハーフミラー14、集光レンズ13等は煩雑を避けるため省略されて描かれている。もちろん必要な測定精度に応じて上記の光学系における光学素子は取捨選択してよい。
【0043】
以上のように、第3平面ミラー22と第1平面ミラー8の傾きを測定することにより、プローブシャフト2に生じ得る撓み量を算出することが可能となる。この撓み量を算出することで、撓み量を考慮しない場合よりも、正確に被測定物4と先端球16との接触点を測定点とすることができる。このことはプローブ1による測定誤差を更に低減させることに有効である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は外気の変動が大きな環境下での被測定物の形状測定をするにあたり、高精度の測定することが可能になり、産業上利用可能であることはもとより、技術上の効果も大きい。
【符号の説明】
【0045】
1 プローブ
2 プローブシャフト
3 触針子
4 被測定物
5 第1レーザ光源
6 第1ハーフミラー
8 第1平面ミラー
9 オートコリメータ光学系
10 第2レーザ光源
11 ダイクロイックミラー
12 第2光位置検出素子
14 第2ハーフミラー
15 第1光位置検出素子
16 先端球
17 板バネ
18 プローブ支持ベース
19 空気軸受け
22 第3平面ミラー
26 計測ベース
27 X基準ミラー
29 Z基準ミラー
30 走査軸ベース
31 X軸スライド
32 X軸モータ
33 Y軸スライド
34 Y軸モータ
35 Z軸スライド
36 Z軸モータ
37 Z距離測定用小型ミラー
42 X距離測定用小型ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に測長光路が形成されるプローブシャフトと先端球を備えた接触式プローブにおいて、
前記プローブシャフトの測長光路の少なくとも一部に設けられ、光が透過可能な透明体で構成された透過部と、
前記先端球と前記透過部の間に設けられ、前記測長光路を案内された光を反射する反射部と、
を有する接触式プローブ。
【請求項2】
前記透明体がコランダム、石英、ダイヤモンド、光学ガラス、低熱膨張ガラスのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の接触式プローブ。
【請求項3】
上記の透明体の一部が、前記光を集光または入射した光束を縮小させる光学特性を有していることを特徴とする請求項1及び2に記載の接触式プローブ。
【請求項4】
レンズ、フレネルレンズ、グレーテッドインデックス、回折格子のいずれかを前記透明体の端面に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の接触式プローブ。
【請求項5】
接触式プローブを被測定物に接触させつつ、前記被測定物の表面を走査させると共に前記接触式プローブの位置を光学的に測定することで、前記被測定物の形状を測定する形状測定装置において、
三次元方向に移動可能なプローブ支持手段と、
前記プローブ支持手段に対して弾性支持された接触式プローブと、
前記接触式プローブの位置および姿勢を測定する測定手段と、
を有し、
前記接触式プローブは、その内部に前記測定のための測長光路が形成されるプローブシャフトと先端球を備え、前記プローブシャフトの測定光路の一部に設けられ、光が透過可能な透明体で構成された透過部、前記先端球と前記透過部の間に設けられ、前記測長光路を案内された光を反射する反射部、を有する接触式プローブであることを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
前記形状測定装置は、さらに、
平面ミラーもしくは球面からなる反射部の定められた平面に対する回転角度または位置を測定するプローブ撓み測定手段と、
透明部の端面の定められた平面に対する回転角度を測定する回転角度測定手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−181021(P2012−181021A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42077(P2011−42077)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】