説明

柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム及び検出方法

【課題】 柔軟性を有する材料をセンサ部位に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システム及び検出方法を提供する。
【解決手段】 圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p1を面内に配置した第1のセンサアレイ21と、第1のセンサアレイ21上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p2を面内に配置した第2のセンサアレイ22とでセンサ部位2を構成し、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で変位した時に、光検出器3で検出された第1のセンサアレイ21の各感圧部p1における圧力の変化と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2における圧力の変化に、時間的差異又は空間的差異が見出された場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、差異が見出されなかった場合に被測定物Mの変位が転がりによると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はすべり・転がり検出システム及び検出方法に関する。詳しくは、柔軟性を有する材料をセンサ部位に用い、押圧による光信号の変化を用いて測定対象物の変位がすべりか転がりかを判定できるすべり・転がり検出システム及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や障害者の自立を支援し、介護者に掛かる負担を軽減しようとする試みが福祉ロボットの実用化という形で進んでいる。一方で福祉ロボットの安全性についても盛んに議論がなされており、特に人と接する環境下においては対人親和性の高いロボットの開発が求められている。人は物をつかむ際に適度な力で把持することができるが、これは人が皮膚感覚(圧覚,温覚など)で力の強さや物体の質感を捉え、力をコントロールしているからである。すなわち、対人親和性の高いロボットの実現には、ロボットに人間と同じような皮膚感覚を持たせることが極めて重要であり、同時に人体に対する接触面の柔軟さも要求されることになる。このことから、福祉ロボットへ応用可能な触覚情報検出システムの開発、特に皮膚感触に近い柔軟性のある材料を用いたセンサ部位の開発が望まれている。
【0003】
他方、介護用ベッドにおける床ずれを想定して、すべりと転がりを判定する方法が、発明者達により開示されている。このシステムは、センサ部位上に置かれた物体の重心変位と接線方向の摩擦力とを比較し、すべりか転がりかの判定を行うことを原理としている。そのため、検出手段には3軸力覚センサを使用する必要があり、センサ部位には金属プレートなどの硬い素材を用いる必要があった。(非特許文献1参照)
【0004】
【非特許文献1】「すべりセンサの開発と応用」、関根俊彰、田中智大、埼玉県産業技術総合センター研究報告、第2巻、2004年、第57〜61頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記すべりと転がりを判定する方法では、センサ部位に硬い素材を用いる必要があった。
そこで発明者達は、皮膚感覚の中でも特に重要となる圧覚及びすべり覚に注目し、上記すべりと転がりを判定する方法を発展させて、皮膚感触に近い柔軟性のある材料を用いたセンサ部位に適用できるようし、さらに、福祉を初めとする各種ロボットへ応用可能な触覚情報検出システムの開発を目指すこととした。
【0006】
本発明は、柔軟性を有する材料をセンサ部位に用いて、被測定物の変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システム及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムは、例えば図1、図2に示すように、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p1を面内に配置した第1のセンサアレイ21と、第1のセンサアレイ21上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p2を面内に配置した第2のセンサアレイ22と、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1に入射光を導く第1の入射光路f11と第1のセンサアレイ21の各感圧部p1からの出射光を導く第1の出射光路f21と、第2のセンサアレイ22の各感圧部p2に入射光を導く第2の入射光路f12と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2からの出射光を導く第2の出射光路f22とを有するセンサ部位2(2A)と、第1の出射光路f21からの出射光を入力して、第1のセンサアレイの各感圧部p1からの透過光量を検出し、また、第2の出射光路f22からの出射光を入力して、第2のセンサアレイ22の各感圧部p2からの透過光量を検出する光検出器3と、光検出器3で検出された透過光量をセンサ部位2(2A)が被測定物Mから受ける圧力に変換する換算手段45と、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1における圧力の変化と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2における圧力の変化とに基づいて、被測定物Mの変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定手段43とを備え、第1のセンサアレイ21及び第2のセンサアレイ22には柔軟性を有する材料が用いられ、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、被測定物Mと第2のセンサアレイ22との摩擦力により、被測定物Mの直下近傍に位置する第2のセンサアレイ22の感圧部p2は、被測定物Mの変位とほぼ同じ方向に変位し、第1のセンサアレイ21の感圧部p1は被測定物Mの変位に対して不変であり、判定手段43は、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内で変位した時に、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2のセンサアレイ22における最大圧力の座標とがほぼ同方向に移動した場合、移動中の所定の時間において、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2のセンサアレイ22における最大圧力の座標とが異なる場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に被測定物Mの変位が転がりによると判定する。
【0008】
ここにおいて、「柔軟なセンサ部位」とは、「柔軟性を有する材料を用いたセンサ部位」の意味である。また、感圧部p1,p2とは、センサアレイ21,22において、入射光路f11,f12と出射光路f21,f22間にあって、被測定物Mによる圧力を受けている状態又は受けていない状態において光が透過する部分をいう。この部分には原則として圧力により透過光量が変化する光透過素材z1,z2が使用される。センサアレイ21,22の他の部分(圧力伝達材z3,z4、基材b1,b2)と同じ材料で形成されても良く、異なる材料で形成されても良い。また、複数の感圧部piを面内に配置とは、全ての感圧部piを厳密に同一面内に配置する必要はなく、多少のずれがあっても二次元的に配置されていれば良い。また、入射光路f11,f12及び出射光路f21,f22は各感圧部p1,p2に対応して複数本あっても良く、1本の光路から分岐して各感圧部p1,p2に導かれても良い。また、第1の出射光路f21からの出射光を入力する光検出器と第2の出射光路f22からの出射光を入力する光検出器とは同じものでも良く、異なるものでも良い。また、直下近傍に位置する感圧部piとは、直下点に最も近いものから1個〜数個程度の感圧部piを意味し、例えば感圧部piがマトリックス状に配置されている場合には、直下点を囲む各四辺形の頂点に位置する感圧部piを意味するのが好ましい。また、ほぼ同じ方向とは、測定精度、センサ部位2の製造のばらつき等を考慮し、実質的に同じ方向をいい、例えば±15度以内が好ましい。また、感圧部p1は被測定物Mの変位に対して不変であるとは、本来は変位に追随しないという意味であり、摩擦力が漏れ伝わって少量動く場合や測定のばらつきにより少量変動する場合も不変に含まれる。
【0009】
また、柔軟性を有する材料とは、弾力性と可撓性を有する材料であり、第1にセンサ部位2の表面を皮膚のような感触に近づけるため、第2に被測定物Mの圧力により感圧部piの透過光量が変化するように、第3に被測定物Mの圧力ができるだけ直下近傍の感圧部piのみに伝わり、他の部分に伝わらないようにするため、第4に被測定物Mと第2のセンサアレイ22との間に摩擦が生じ、被測定物Mの変位により、第1のセンサアレイ21と第2のセンサアレイ22が周辺部で外枠などで固定されている場合には、第2のセンサアレイ22のうち被測定物Mの直下近傍の部分が局部的に被測定物Mの移動に追随して変形するように、第1のセンサアレイ21の上面と第2のセンサアレイ22の下面が固定されている場合には、第1のセンサアレイ21の上面が被測定物Mの移動に追随して移動し、感圧部p1が配置された面との間にずれが生じるように、また、第2のセンサアレイ22が第1のセンサアレイ21に固定されていない場合には、第2のセンサアレイ22全体が被測定物Mの移動に追随して第1のセンサアレイ21上を移動するようにするために用いられる。また、センサ部位2を曲面に取り付ける場合等には材料に可撓性が求められる。
【0010】
また、最大圧力の座標とは、本来なら被測定物Mの直下に位置する座標であるが、ここではその近傍の感圧点における圧力の測定値から圧力が最大となる座標を演算して求めたものをいう。例えば、感圧点piがマトリックス状に配置される場合は、被測定物Mの直下を囲む四辺形とその直ぐ外側の四辺形を構成する4×4の16個の感圧点から演算して求めるのが好適である。また、ほぼ同じ座標とは、測定精度、センサ部位2製造のばらつき等を考慮し、実質的に同じ座標をいう。
【0011】
このように構成すると、柔軟性を有する材料をセンサ部位2に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システムを提供できる。
また、圧力検出に光ファイバを使用することで、ノイズや磁界による影響を排除でき、高精度な計測が可能である。また、短時間で被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システムを提供できる。
【0012】
また、請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムは、例えば図1、図2に示すように、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p1を面内に配置した第1のセンサアレイ21と、第1のセンサアレイ21上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p2を面内に配置した第2のセンサアレイ22と、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1に入射光を導く第1の入射光路f11と第1のセンサアレイ21の各感圧部p1からの出射光を導く第1の出射光路f21と、第2のセンサアレイ22の各感圧部p2に入射光を導く第2の入射光路f12と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2からの出射光を導く第2の出射光路f22とを有するセンサ部位2(2A)と、第1の出射光路f21からの出射光を入力して、第1のセンサアレイの各感圧部p1からの透過光量を検出し、また、第2の出射光路f22からの出射光を入力して、第2のセンサアレイ22の各感圧部p2からの透過光量を検出する光検出器3と、光検出器3で検出された透過光量をセンサ部位2(2A)が被測定物Mから受ける圧力に変換する換算手段45と、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1における圧力の変化と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2における圧力の変化とに基づいて、被測定物Mの変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定手段43とを備え、第1のセンサアレイ21及び第2のセンサアレイ22には柔軟性を有する材料が用いられ、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、被測定物Mと第2のセンサアレイ22との摩擦力により、被測定物Mの直下近傍に位置する第2のセンサアレイ22の感圧部p2は、被測定物Mの変位とほぼ同じ方向に変位し、第1のセンサアレイ21の感圧部p1は被測定物Mの変位に対して不変であり、判定手段43は、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内で変位した時に、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2のセンサアレイ22における最大圧力の座標とがほぼ同じ方向に移動した場合、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標の移動経路近傍の所定の座標において圧力が変化した時間に比して、第2のセンサアレイ22の所定の座標と同じ座標において圧力が変化した時間が遅い場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に被測定物Mの変位が転がりによると判定する。
【0013】
ここにおいて、移動経路近傍の所定の座標とは、移動経路の近傍にある座標から選定された1つの座標を意味する。なお、最大圧力の座標又は感圧点の座標で、移動開始点に近い座標を選ぶことが確実性が高くかつ早く判定ができ好ましい。また、ぼぼ同じ時間とは、測定精度、センサ部位2特性のばらつき等を考慮し、実質的に同じ時間をいう。
このように構成すると、柔軟性を有する材料をセンサ部位2に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システムを提供できる。また、圧力検出に光ファイバを使用することで、ノイズや磁界による影響を排除でき、高精度な計測が可能である。また、少ないデータ量で被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システムを提供できる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムにおいて、例えば図2に示すように、第2のセンサアレイ22には、感圧部p2を搭載する基材b2、第2のセンサアレイ22表面に作用する圧力を感圧部p2に伝達する圧力伝達材z4が使用され、基材b2及び圧力伝達材z4に局部的に変形する材料が使用され、感圧部p2は前記局部的な変形に伴い、局部的に変位する。
このように構成すると、表面に作用する圧力は被測定物M直下近傍の局部的範囲に伝達され、位置精度の良い検出システムを提供できる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムにおいて、例えば図16に示すように、第1のセンサアレイ21には、感圧部p1を搭載する基材b1、第1のセンサアレイ21表面に作用する圧力を感圧部p1に伝達する圧力伝達材z3が使用され、圧力伝達材z3は上面と下面とにずれが生じる材料が使用される。
このように構成すると、第1のセンサアレイ21の感圧部p1と第2のセンサアレイ22の感圧部p2間のずれがセンサアレイ全体に生じるので、多くの感圧部p1,p2から検出に使用する組を選択できる。また、圧力伝達材z3の厚さを変えて感度を調整できる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムにおいて、例えば図18に示すように、第2のセンサアレイ22は、第1のセンサアレイ21上で第1のセンサアレイ21に対して所定の範囲で自由に滑ることができるように構成されている。
ここにおいて、第1のセンサアレイ21と第2のセンサアレイ22の間に中間シート23が存在しても良く、存在しなくても良い。このように構成すると、基材b1,b2にはあまり弾力性が要求されないので、入射光路f1及び出射光路f2を光導波路で構成可能である。また、圧力伝達材z3,z4には局所的変位やずれを生じさせる高い柔軟性を要求されないので、材料選択の幅が大きくなる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムにおいて、例えば図2に示すように、第1の入射光路f11、第1の出射光路f21、第2の入射光路f12及び第2の出射光路f22は光ファイバ又は光導波路からなり、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1及び第2のセンサアレイ22の各感圧部p2には圧力により透過光量が変化する光透過素材z1,z2が使用され、光透過素材z1,z2として弾性プラスチック、固相ゲル又は弾性光ファイバが使用される。
【0018】
なお、光透過素材z1,z2には発泡ウレタンを用いることが好ましい。このように構成すると、柔軟性が大で、光透過量の変化が大きい感圧部piを構成できるので、高感度のすべり・転がり検出システムを提供できる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システムにおいて、例えば図4に示すように、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1及び第2のセンサアレイ22の各感圧部p2は、等しいスケールの座標系の同じ座標にマトリックス状に配置されている。
【0020】
このように構成すると、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2とに1対1の対応関係が成立し、判別精度の高いすべり・転がり検出システムを提供できる。
【0021】
また、上記課題を解決するために、請求項8に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出方法は、例えば図11に示すように(構成は図1、図2参照)、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p1を面内に配置した第1のセンサアレイ21と、第1のセンサアレイ21上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p2を面内に配置した第2のセンサアレイ22と、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1に入射光を導く第1の入射光路f11と第1のセンサアレイ21の各感圧部p1からの出射光を導く第1の出射光路f21と、第2のセンサアレイ22の各感圧部p2に入射光を導く第2の入射光路f12と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2からの出射光を導く第2の出射光路f22とを有するセンサ部位2(2A)の第2のセンサアレイ22上に被測定物Mを搭載し、第1のセンサアレイ21及び第2のセンサアレイ22の各感圧部p1,p2に第1の入射光路f11及び第2の入射光路f12を介して入射光を導入し、各感圧部p1、p2からの透過光を第1の出射光路f21及び第2の出射光路f22を介して光検出器3に出力する測定開始工程(S001)と、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内で変位した時に、光検出器3で、第1のセンサアレイ21及び第2のセンサアレイ22における各感圧部p1,p2からの透過光量の変化を測定するデータ蓄積工程(S002)と、光検出器3で検出された透過光量をセンサ部位2が被測定物Mから受ける圧力に変換する換算工程(S003)と、第1のセンサアレイ21における圧力の変化と第2のセンサアレイ22における圧力の変化とに基づいて、被測定物Mの変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定工程(S004)とを備え、第2のセンサアレイ22には柔軟性を有する材料が用いられ、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、被測定物Mと第2のセンサアレイ22との摩擦力により、被測定物Mの直下近傍に位置する第2のセンサアレイ22の感圧部p2は、被測定物Mの変位とほぼ同じ方向に変位し、第1のセンサアレイ21の感圧部p1は被測定物Mの変位に対して不変であり、判定工程(S004)は、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内で変位した時に、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2のセンサアレイ22における最大圧力の座標とがほぼ同方向に移動した場合、移動中の所定の時間において、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2のセンサアレイ22における最大圧力の座標とが異なる場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に被測定物Mの変位が転がりによると判定する。
【0022】
ここにおいて、測定開始工程(S001)及びデータ蓄積工程(S002)において、各感圧部p1、p2からの透過光量の測定は、必ずしも全ての感圧部について測定する必要はなく、少なくとも最大圧力の座標近傍の感圧部について測定すれば良い。このように構成すると、柔軟性を有する材料をセンサ部位2に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出方法を提供できる。また、短時間で被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出方法を提供できる。
【0023】
また、請求項9に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出方法は、例えば図11に示すように(構成は図1、図2参照)、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p1を面内に配置した第1のセンサアレイ21と、第1のセンサアレイ21上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部p2を面内に配置した第2のセンサアレイ22と、第1のセンサアレイ21の各感圧部p1に入射光を導く第1の入射光路f11と第1のセンサアレイ21の各感圧部p1からの出射光を導く第1の出射光路f21と、第2のセンサアレイ22の各感圧部p2に入射光を導く第2の入射光路f12と第2のセンサアレイ22の各感圧部p2からの出射光を導く第2の出射光路f22とを有するセンサ部位2(2A)の第2のセンサアレイ22上に被測定物Mを搭載し、第1のセンサアレイ21及び第2のセンサアレイ22の各感圧部p1,p2に第1の入射光路f11及び第2の入射光路f12を介して入射光を導入し、各感圧部p1、p2からの透過光を第1の出射光路f21及び第2の出射光路f22を介して光検出器3に出力する測定開始工程(S001)と、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内で変位した時に、光検出器3で、第1のセンサアレイ21及び第2のセンサアレイ22における各感圧部p1,p2からの透過光量の変化を測定するデータ蓄積工程(S002)と、光検出器3で検出された透過光量をセンサ部位2(2A)が被測定物Mから受ける圧力に変換する換算工程(S003)と、第1のセンサアレイ21における圧力の変化と第2のセンサアレイ22における圧力の変化とに基づいて、被測定物Mの変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定工程(S004)とを備え、第2のセンサアレイ22には柔軟性を有する材料が用いられ、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、被測定物Mと第2のセンサアレイ22との摩擦力により、被測定物Mの直下近傍に位置する第2のセンサアレイ22の感圧部p2は、被測定物Mの変位とほぼ同じ方向に変位し、第1のセンサアレイ21の感圧部p1は被測定物Mの変位に対して不変であり、判定工程(S004)は、被測定物Mが第2のセンサアレイ22上で面内で変位した時に、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2のセンサアレイ22における最大圧力の座標とがほぼ同じ方向に移動した場合、第1のセンサアレイ21における最大圧力の座標の移動経路近傍の所定の座標において圧力が変化した時間に比して、第2のセンサアレイ22の所定の座標と同じ座標において圧力が変化した時間が遅い場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、圧力が変化した時間がほぼ同じ場合に被測定物Mの変位が転がりによると判定する。
【0024】
このように構成すると、柔軟性を有する材料をセンサ部位2に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出方法を提供できる。また、少ないデータ量で被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出方法を提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、柔軟性を有する材料をセンサ部位に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システム及び検出方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1に、本発明の第1の実施の形態によるすべり・転がり検出システム100の構成例を示す。
すべり・転がり検出システム100は光源1、センサ部位2、光検出器3、制御端末4、表示手段5、電力供給電源6等で構成される。光源1として例えば赤色の発光ダイオード光源を使用できる。センサ部位2は、面内に複数の感圧部piを配置した光ファイバセンサアレイ21,22を二層に重ねて構成され、搭載された被測定物Mの圧力と変位を検知するために使用される。光検出器3はセンサ部位2からの光信号を取得して電気信号に変換するもので、本実施の形態では、増幅が可能な光増幅器を使用した。光源1で発光された光は入射光路としての入射用光ファイバf1(f11,f12)によりセンサ部位2の各感圧部pi(x,y)(図2参照、iは層を、x,yは座標を示す、以下、個別の座標が不要なときはpiと省略する)に導かれ、各感圧部piを透過した光は出射光路としての出射用光ファイバf2(f21,f22)により光増幅器3に導かれる。
【0028】
制御端末4は、記録手段41、演算手段42(換算手段45を含む)、判定手段43、制御手段44を有する。制御端末4として通常のパーソナルコンピュータを使用できる。記録手段41は光増幅器3から受信した光信号データ、演算手段42での演算結果、判定手段43での判定結果等を記録する。演算手段42は、光増幅器3で検出された透過光量をセンサ部位2が被測定物Mから受ける圧力に変換する換算手段45を含み、第1の光ファイバセンサアレイ21及び第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標の演算、第1の光ファイバセンサアレイ21及び第2の光ファイバセンサアレイ22における圧力分布を表示手段5に表示するための演算等、各種演算処理を行なう。判定手段43は、各感圧部piにおける圧力データに基づいて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるか判定を行なう。制御手段44は、すべり・転がり検出システム100を構成する各手段1〜5を制御して、システム100に変位検出及び判定を実行させる。換算手段45は、光の入力/出力比(典型的には無圧力時の透過光量と押圧下の透過光量との比)と感圧部が受ける圧力との換算表を有し、透過光量を圧力に換算する。
【0029】
表示手段5は各種データや入力コマンド等を画面に表示するものであり、例えば液晶ディスプレイを使用できる。また、例えば移動中の所定の時間における各感圧部piにおける圧力データを3次元的に表示できる(図9,10参照)。電力供給電源6はシステム100を構成する各機器1〜5(2を除く)に電力を供給する。
【0030】
センサ部位2における圧力の検出手段として、静電容量型圧力センサ、感圧導電性ゴム式圧力センサ、光ファイバセンサなどを使用可能であるが、本実施の形態では、システム100が要求する検出精度や素材とのマッチングなどから、光ファイバセンサを採用することとした。光ファイバセンサの特徴としては、データ伝送媒体が光であるため、ノイズや熱に強く、磁気などの影響を受けないなどのメリットが挙げられる。また、通常使用下においては、劣化が少なく半永久的な使用が可能である。
【0031】
図2にセンサ部位2Aの構成例を示す。図2おいて、センサ部位2Aは上下二層の光ファイバセンサアレイ21,22とその間に挿入される中間シート23で構成される。各層の光ファイバセンサアレイ21,22には各々複数の感圧部piが存在するが、説明を簡単にするために、各々1つの感圧部piのみを代表的に示す。感圧部p1,p2とは、入射光路f11,f12と出射光路f21,f22間にあって、被測定物Mによる圧力を受けている状態又は受けていない状態において光が透過する部分をいう。第1の光ファイバセンサアレイ21は、感圧部p1を搭載する基材b1、感圧部p1に使用され圧力により透過光量が変化する光透過素材z1、光ファイバセンサアレイ21表面に作用する圧力を感圧部p1に伝達する圧力伝達材z3、入射用光ファイバf11、出射用光ファイバf21で構成される。基材b1の上に入射用光ファイバf11、出射用光ファイバf21が感圧部p1を挟んで対向して配置され、感圧部p1においては、入射用光ファイバf11、出射用光ファイバf21の間は光透過素材z1で満たされている。感圧部p1には圧力を受けている状態で光を透過する部分も含まれるので、圧力を受けていない状態では光ファイバf11、f21より上に位置する部分も少し含まれる。すなわち、図2では破線の下の部分が光透過素材z1に相当する。基材b1、光透過素材z1及び光ファイバf11、f21上には圧力伝達材z3が配置されている。第2の光ファイバセンサアレイ22は感圧部p2を搭載する基材b2、感圧部p2に使用され圧力により透過光量が変化する光透過素材z2、光ファイバセンサアレイ22表面に作用する圧力を感圧部p2に伝達する圧力伝達材z4、入射用光ファイバf12、出射用光ファイバf22で構成される。基材b2の上に入射用光ファイバf12、出射用光ファイバf22が感圧部p2を挟んで対向して配置され、感圧部p2においては、入射用光ファイバf12、出射用光ファイバf22の間は光透過素材z2で満たされている。感圧部p2には圧力を受けている状態で光を透過する部分も含まれるので、圧力を受けていない状態では光ファイバf12、f22より上に位置する部分も少し含まれる。すなわち、図2では破線の下の部分が光透過素材z2に相当する。基材b2、光透過素材z2及び光ファイバf12、f22上には圧力伝達材z4が配置されている。
【0032】
光透過素材z1,z2は圧力(典型的には押圧)により透過光量が変化する材料で、発泡ウレタン、ゲルシート、立体繊維等を使用できるが、本実施の形態では、柔軟性、応答性に優れ、収縮に伴う透過光の変化率が大きい発泡ウレタンを採用した。発泡ウレタンは外部から圧力を加えることで内部の気泡が収縮し、光の透過率が低下するという特性を有する。すなわち、光ファイバf1,f2が対向して配置された間の感圧部piにおいて、発泡ウレタンが圧迫されると、光の透過率(すなわち透過光量)が低下し、光ファイバf1,f2から照射された光の入力/出力比が増大する。
圧力伝達材z3,z4は光ファイバセンサアレイ21,22表面に作用する圧力を感圧部p1,p2に伝達する材料で、本実施の形態では局部的変形を起こすような高い柔軟性が要求され、発泡ウレタン、ゲルシート、立体繊維等を使用できるが、ここでは光透過素材z1,z2と同じ材料で一体形成して使用することとした。
基材b1,b2は光ファイバを対向配置状態で固定するためのもので、基材b1については光ファイバとの接合度合と柔軟性との兼合いから、低発泡塩化ビニール板を採用した。基材b2については本実施の形態では局部的変形を起こすような高い柔軟性が要求されるので、ゴム板を採用し、感圧部p2の近傍は光ファイバを固定するために局部的に硬化した。
【0033】
第1の光ファイバセンサアレイ21及び第2の光ファイバセンサアレイ22には柔軟性を有する材料が用いられる。柔軟性を有する材料とは、弾力性と可撓性を有する材料であり、第1にセンサ部位2Aの表面を皮膚のような感触に近づけるため(第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z4について)、第2に被測定物Mの圧力により感圧部piの透過光量が変化するように(第1,第2の光ファイバセンサアレイ21,22の光透過素材z1,z2について)、第3に被測定物Mの圧力ができるだけ直下近傍の感圧部piのみに伝わり、他の部分に伝わらないようにするため(第1,第2の光ファイバセンサアレイ21,22の圧力伝達材z3,z4について)、第4に被測定物Mと第2の光ファイバセンサアレイ22との間に摩擦が生じ、被測定物Mの変位により、第1の光ファイバセンサアレイ21と第2の光ファイバセンサアレイ22が周辺部で固定されている場合には、第2の光ファイバセンサアレイ22のうち被測定物Mの直下近傍の部分が局部的に被測定物Mの移動に追随して変形するように(第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z4、基材b2について)、第1の光ファイバセンサアレイ21の上面と第2の光ファイバセンサアレイ22の下面が固定されている場合には、第1の光ファイバセンサアレイ21の上面が被測定物Mの移動に追随して感圧部p1が配置された面との間にずれが生じるように(第1の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z3について)、また、第2の光ファイバ22が第1の光ファイバセンサアレイ21に固定されていない場合には、第2の光ファイバセンサアレイ22全体が被測定物Mの移動に追随して第1の光ファイバセンサアレイ21上を移動するようにするために(第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z4について)用いられる。また、センサ部位2を曲面に取り付ける場合等には材料に可撓性が求められる(第1、第2の光ファイバセンサアレイ21,22の基材b1,b2及び圧力伝達材z3,z4について)。
【0034】
中間シート23は、第1の光ファイバセンサアレイ21に固定され、被測定物Mが第2の光ファイバセンサアレイ22上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、被測定物Mの直下近傍に位置する第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標が被測定物Mの直下近傍に位置する第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標に対して、被測定物Mの変位とほぼ同じ方向に変位できるように、被測定物Mの直下近傍に位置する第2の光ファイバセンサアレイ22の基材b2の部分との間で局部的にすべりが生じるようにするもので、本実施の形態ではビニールを採用した。ただし、第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標の変位は周辺部を除いた広い範囲で生じれば良いので、第2の光ファイバセンサアレイ21の周辺部と、第1の光ファイバセンサアレイ21の周辺部とを図示しない外枠に固定した。
【0035】
図3に光ファイバセンサの負荷圧力特性例を示す。横軸は負荷圧力(kPa)を、縦軸は光増幅器3の出力電圧(V)を示す。光ファイバセンサアレイ21,22における光ファイバセンサ単体の負荷特性を把握するため、1つの光ファイバセンサの感圧部pi上に5〜13kPaの範囲で負荷圧力を加え、そのときの光増幅器3の出力電圧を測定した。負荷圧力が10kPaを超えると光増幅器3の出力電圧は飽和するが、7〜10kPaの範囲内では負荷圧力に対し、ほぼ線形に変化しており、この光ファイバセンサの有効測定範囲は7〜10kPaの範囲内にあると言える。なお、光透過素材z1,z2や圧力伝達材z3,z4を変えることにより、有効測定範囲を調整可能である。
【0036】
図4に各光ファイバセンサアレイ21,22のアレイ構成例を示す。また、図5にその写真を示す。図4(a)は感圧部piのマトリックス配置を示し、図4(b)は1つの感圧部piの構成(押圧前後の状態)を示す。また、図5(a)にアレイ構成の写真を、図5(b)に1つの感圧部の写真を示す。図5(a)において、碁盤目の交点に見える〇の位置に感圧部piが在る。感圧部piを5×5のマトリックス状に配置し、入射用光ファイバf1、出射用光ファイバf2共、行に対応して5つの群構成とし、各群では5本ずつ束ねて各感圧部piまで導いている。入射用光ファイバf1は入力端子Uiを介して光源1に、出射用光ファイバf2は出力端子Uoを介して光増幅器3に導びかれる。
【0037】
ところで、感圧部piに対抗配置した光ファイバf1,f2は柔軟性が大きくないので、被測定物Mの変位に伴う基材b1,b2の変形を妨げないように、かつ、被測定物Mが変位しても対抗配置を保つように、光ファイバf,f2は感圧部piの近傍及び相互に離れた数箇所(0以上)でたるみを持たせて基材b1,b2に固定し、たるみを持たせて群毎に束ね、入力端子Ui及び出力端子Uoに導くようにする。また、基材b2に局所的に変位を起こすような柔軟性が求められる場合は感圧部p2下を局所的に硬化して用いる。
【0038】
図6はすべり検出の原理を説明するための図である。左側から、時刻t0、t1、t2における被測定物Mの位置と感圧部pi(x,y)の座標との関係を示すもので、上側に第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標を、下側に第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標を示す。座標上の円が被測定物Mの直下の位置を示し、その座標pi(x,y)の(x,y)部分が括弧内に示されている。図において、被測定物Mは本来感圧部p2の座標より上方に位置するが、ここでは感圧部p1の座標と感圧部p2の座標との差異にスポットを当てれば良く、便宜上被測定物Mに近い方の感圧部p2の座標上にあるものとして描かれている。なお、すべりには摩擦を伴うものと摩擦を伴わないものがあるが、ここでは摩擦を伴うすべりを検出すべきすべりと定義する。
【0039】
本実施の形態では、光ファイバセンサアレイ21,22を二層に配置することによって、被測定物Mの移動に伴う各層における最大圧力の位置の変化を検出する。下層の第1の光ファイバセンサアレイ21における感圧部p1の位置はセンサ部位2Aに固定され(基材b1が変形しない)、被測定物Mがいずれの位置に移動するかに拘らず不変なので、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の位置の変位量は被測定物Mの移動に伴う変位量に相当する。
【0040】
最大圧力の座標とは、本来なら被測定物Mの直下に位置する座標であるが、ここではその近傍の感圧点piにおける圧力の測定値から演算して求めた座標をいう。感圧点piがマトリックス状に配置される場合は、被測定物Mの直下を囲む四辺形とその外側の四辺形を構成する4×4の16個の感圧点から演算して求めるのが好適である。
【0041】
これに対して上層の第2の光ファイバセンサアレイ22では、柔軟性を有する材料(圧力伝達材z4及び基材b2)が用いられ、被測定物Mの変位がすべりによる場合には、被測定物Mとの摩擦力により、被測定物Mの直下の最大圧力の座標は、その近傍に位置する感圧部p2の座標と共に、圧力伝達材z4と基材b2の変形(第1の変形パタン)を介して、又は光圧力伝達材z3の変形(第2の変形パタン)を介して、又は中間シート23上を自由に移動することにより、被測定物Mの変位と同じ方向に変位する。これらの変形ため又は自由移動のため、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標の変位量は第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の位置の変位量に比して小さくなるか0となる。
【0042】
図6は第1の変形パタンの原理を示す。第1の実施の形態では第1の変形パタンが生じるものとして説明する。第1の変形パタンは、圧力伝達材z4と基材b2の柔軟度が共に大きく、被測定物Mとの摩擦により、被測定物Mの直下近傍の圧力伝達材z4と基材b2とに局部的に変形が生じ、被測定物Mから離れた所では変形が生じないか、回復してしまうパタンである。すなわち、被測定物Mの直下近傍において感圧点p2の座標は圧力伝達材z4及び基材b2と共に変位する。図では5×5のマトリックスの各交点に各感圧部piが配置され、被測定物Mの直下の感圧点pi(ここでは最大圧力の位置に相当)で変位量が最大となり、そこから離れるに従って変位量が小さくなっている。理解を容易にするために、この図では変位量が誇張して記載されている。実際には変位がこのようにマトリックスの広い範囲に及ぶことは少なく、被測定物Mの直下近傍の1個、せいぜい数個の感圧点piを含む領域の場合が多い。このような場合でも、数多くの実験データを用いたコンピュータ演算により、被測定物Mの直下近傍の圧力を高精度にグラフ化可能である。
【0043】
時刻t0において、質量mの被測定物Mがセンサ部位2Aの感圧部p2(1,1)上に置かれている。この被測定物Mに対し面内で(2,2)の方向に力を加えると、この被測定物Mと上層の第2の光ファイバセンサアレイ22との間には摩擦力が生じ、その摩擦係数は第1の光ファイバセンサアレイ21上の中間シート23と第2の光ファイバセンサアレイ22間の摩擦係数よりも十分に大きい。第2の光ファイバセンサアレイ22には柔軟性を有する材料(圧力伝達材z4及び基材b2)が用いられているので、被測定物Mの移動により第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標が(圧力伝達材z4及び基材b2と共に)追随して局部的に変位し、時刻t1において被測定物Mの位置は、上層の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標(1,1)上、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標(2,2)上となる。このように、両者の座標間に差異を生じる。
【0044】
そして、被測定物Mに働く力がさらに大きくなって、最大摩擦力と釣合うと、被測定物Mは光透過素材z2の表面をすべり始める。すべりの間は、圧力伝達材z4と基材b2は被測定物Mの移動に追随して一定の変形状態を引き継ぎながら局部的な変形の位置を移動していくので、被測定物Mの直下における最大圧力の座標は、その近傍に位置する第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標と共に、被測定物Mの移動に追随して変化する。したがって、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標は、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標の変化に遅れて変化し、その遅れは概ね一定である。
【0045】
時刻t1から、被測定物Mはすべり始め、摩擦を伴いながら被測定物Mに働く力の方向に移動する。この時、被測定物M直下の第2の光ファイバセンサアレイ22の座標と第1の光ファイバセンサアレイ21の座標間には大よそ一定の差異が保たれる。時刻t2において被測定物Mは、上層の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標(2,2)上、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標(3,3)上に到達する。
【0046】
図7に上下二層の光ファイバセンサアレイ21,22の座標(1,1)における圧力の時間変化の例を示す。横軸に時間(s)を、縦軸に圧力(kg重)を示す。図より、センサ部位2Aの第2の光ファイバセンサアレイ22の座標(1,1)におけるグラフ(a)と第1の光ファイバセンサアレイ21の座標(1,1)におけるグラフ(b)から、位相差すなわち第2の光ファイバセンサアレイ22における時間遅れを明瞭に確認できる。このように、被測定物Mの変位がすべりによるもので、摩擦を伴いながらセンサ部位2A上を移動する場合には、必ずセンサ部位2Aの第1の光ファイバセンサアレイ21と第2の光ファイバセンサアレイ22との間に位相差が生じるため、この位相差を検出することにより、すべりの検出が可能である。
【0047】
図8に時刻t1における上下二層の光ファイバセンサアレイ21,22における最大圧力の座標の例を示す。最大圧力の座標は、第2の光ファイバセンサアレイ22では座標(1,1)であり、第1の光ファイバセンサアレイ21では座標(2,2)である。このことから、被測定物の変位がすべりによる場合には、移動中の所定の時間において、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標とが異なるため、この座標の差異を検出することにより、すべりの検出が可能である。所定の時間は、すべり開始時刻(t1)から被測定物Mが第2の光ファイバセンサアレイ22の周辺部に到達する迄の(余裕を見込んだ)時刻から適宜選択できる。
【0048】
次に、転がりの場合について説明する。転がりの場合には、被測定物Mと第2の光ファイバセンサアレイ22との間に摩擦は生じないので、第2の光ファイバセンサアレイ22は変形を受けることはなく、被測定物M直下の最大圧力の座標は、第1の光ファイバセンサアレイ21と第2の光ファイバセンサアレイ22で等しく、共に被測定物Mの位置を表す。したがって、第1の光ファイバセンサアレイ21と第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標間に時間的、空間的差異が生じることはない。
【0049】
なお、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判定する場合、時間遅れすなわち位相差で検出する場合には、例えば移動経路近傍(すなわち変位の方向)に存在する特定の座標を選択して測定することが可能であり、少ないデータ量で判定が可能となる。また、座標の差異で検出する場合には、例えば図8の時刻t1で差異を検出でき、短時間での判定が可能となる。
【0050】
再度図1を参照して説明する。センサ部位2Aで検出された光信号は、光増幅器3により直ちにアナログ電気信号に変換され、A/D変換ボード(制御端末4に内蔵)を介して、制御端末4に取り込まれる。制御端末4は、制御手段44にすべり・転がり検出用及び制御用プログラムを格納し、光信号データの取得、圧力への換算、最大圧力の座標の演算、記録手段への記録、表示手段への表示、すべりによるか転がりによるかの判定などの処理はこのプログラムに基づいて行なわれる。
【0051】
制御端末4は、光増幅器3から受信した透過光量データを、センサ部位2Aの各感圧部piにおける時間の関数として記録手段41に記録する。センサ部位2Aの各感圧部piは上下二層の各光ファイバセンサアレイ21,22の位置座標pi(x,y)に対応する。次に換算手段45により透過光量データを圧力に変換して、再度、記録手段41に記録する。
【0052】
次いで、演算手段42は、各光ファイバセンサアレイ21,22において最大圧力の座標を時間の関数として抽出する。第1の光ファイバセンサアレイ21において最大圧力の座標は、被測定物M直下の座標であり、その位置座標の時間変化は被測定物Mの移動の軌跡を表す。これに対して、第2の光ファイバセンサアレイ22において最大圧力の座標の変化は、被測定物Mの変位がすべりによる場合と転がりによる場合で異なるため、かかる変位がすべりによるか転がりによるかの判定に用いられる。
【0053】
判定手段43はこの判定を行う。すなわち、被測定物Mの移動中の所定の時間において、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標と上層の第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標とが異なれば、被測定物Mの変位はすべりによるものと判定し、ほぼ同じであれば被測定物Mの変位は転がりによるものと判定することができる。判定手段43による判定結果は記録手段41に記録される。
【0054】
また、判定手段43は、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標が移動した場合、移動経路近傍の所定の座標において、第1の光ファイバセンサアレイ21の圧力が変化した時間に比して、第2の光ファイバセンサアレイ22の所定の座標と同じ座標において圧力が変化した時間が遅ければ被測定物Mの変位がすべりによると判定し、ほぼ同じであれば被測定物Mの変位が転がりによると判定することができる。移動経路近傍の所定の座標とは、移動経路の近傍にある座標から選定された1つの座標を意味する。なお、最大圧力の座標又は感圧点piの座標で、移動開始点(時刻t1)に近い座標を選ぶことが確実性が高くかつ早く判定ができ好ましい。この場合、判定手段43による判定結果は記録手段41に記録される。
【0055】
なお、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標が移動すること、すなわち被測定物Mが移動することが判定の前提条件である。また、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標が第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標の移動方向とほぼ同方向に移動することが判定の前提条件である。
【0056】
次に、本実施の形態におけるすべり・転がり検出システムにおける圧力検出、すべり及び転がりの判定結果について説明する。センサ部位2A上に質量3kgの物体(被測定物)Mを乗せ、物体Mをすべらせた場合と転がした場合における検出、判定状況について調べた。
【0057】
図9にすべりが生じた場合の圧力分布例を示す。フロント画面d1の中に、左側に下層の第1の光ファイバセンサアレイ21における圧力分布画像d2が、右側に上層の第2の光ファイバセンサアレイ22における圧力分布画像d3が表示される。また、画面の右上に表示されている三つのランプ、圧力検出ランプlp1、すべり検出ランプlp2、転がり検出ランプlp3は、それぞれ、被測定物Mによる押圧が検出された場合、すべり、転がりが判定された場合に点灯する仕組みとなっている。
【0058】
図より、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21と上層の第2の光ファイバセンサアレイ22において検出された圧力分布に差異が生じており、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標がセンサ部位2Aの周辺から中心方向に移動しているのに、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標がまだ、センサ部位2Aの周辺に残っており、第1の光ファイバセンサアレイ21に対して、遅れて移動していることが分かる。これは、すべりの際の摩擦により第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材及び基材b2の被測定物M直下近傍の部分が被測定物Mの移動に引張られて局部的に変形し、この変形に伴って感圧部p2の位置が変位し、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標と第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標との間にズレが生じたためである。また、移動経路近傍の同じ座標、例えば(3,5)において、第1の光ファイバセンサアレイ21の圧力は大方消滅しているのに、第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力は印加中なので、時間遅れすなわち位相差も検出可能である。これらの結果から、被測定物Mの変位がすべりによると判定することができる。また、画面右上にある圧力検出ランプlp1、すべり検出ランプlp2が点灯し、すべり判定が正確に行われていることを確認できた。
【0059】
図10に転がりが生じた場合の圧力分布例を示す。フロント画面d1と圧力分布画像d2,d3の配置は図9と同様である。下層の第1の光ファイバセンサアレイ21と上層の第2の光ファイバセンサアレイ22において検出された圧力分布に明白な差異が生じていない。このことは、被測定物Mが摩擦を伴わず移動したことを示しており、画面右上にある圧力検出ランプlp1、転がり検出ランプlp3が点灯し、転がり判定が正確に行われていることが確認できた。
【0060】
図11に、本実施の形態におけるすべり・転がり検出方法の処理フロー例を示す。まず測定開始工程(ステップS001)において、センサ部位2Aの第2の光ファイバセンサアレイ22上に被測定物Mを搭載し、第1の光ファイバセンサアレイ21及び第2の光ファイバセンサアレイ22の各感圧部piに、光源1から第1の入射光路f11及び第2の入射光路f12を介して入射光を導入し、各感圧部piからの透過光を第1の出射光路f21及び第2の出射光路f22を介して光検出器(光増幅器を含む)3に出力する。これにより、被測定物Mが変位する前の(時刻t0の)データが取得される。
【0061】
次に、データ蓄積工程(ステップS002)において、被測定物Mが第2の光ファイバセンサアレイ22上で面内で変位した時のデータを順次蓄積する。すなわち、被測定物Mの移動中に、光検出器3で、第1の光ファイバセンサアレイ21及び第2の光ファイバセンサアレイ22における各感圧部piからの透過光量の変化を追跡測定する。
【0062】
第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z4及び基材b2には柔軟性を有する材料が用いられている。このため、被測定物Mが第2の光ファイバセンサアレイ22上ですべりによる変位を生じると、被測定物Mと第2の光ファイバセンサアレイ22との摩擦力により、被測定物Mの直下の第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標は、その近傍に位置する第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標と共に、被測定物Mの変位とほぼ同じ方向に局部的に変位する。これに対し、第1の光ファイバセンサアレイ21上の中間シート23と第2の光ファイバセンサアレイ22との摩擦係数が小さいため、第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標は被測定物Mの変位に対して影響を受けず、不変に保たれる。これにより、被測定物Mの直下近傍にある第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標に差異が生じる。また、最大圧力を示す座標で、第1の光ファイバセンサアレイ21と第2の光ファイバセンサアレイ22における同じ座標の感圧部piで圧力変化を追跡すると、第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1に比して第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2で時間的遅れ、すなわち位相差が生じる。
【0063】
次に換算工程(ステップS003)において、光検出器3で検出された透過光量をセンサ部位2Aが被測定物Mから受ける圧力に変換する。
【0064】
次に判定工程(ステップS004)において、第1の光ファイバセンサアレイ21の各感圧部p1における圧力の変化と第2の光ファイバセンサアレイ22の各感圧部p2における圧力の変化とに基づいて、被測定物Mの変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する。
【0065】
すなわち、移動中の所定の時間において、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標と第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標とが異なる場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に被測定物Mの変位が転がりによると判定する。
【0066】
または、第1の光ファイバセンサアレイ21の移動経路近傍の所定の座標において圧力が変化した時間に比して、第2の光ファイバセンサアレイ22の所定の座標と同じ座標において圧力が変化した時間が遅い場合に被測定物Mの変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に転がりによると判定する。
【0067】
なお、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標が移動すること、すなわち被測定物Mが移動することが判定の前提条件である。また、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標が第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標の移動方向とほぼ同方向に移動することが判定の前提条件である。
【0068】
なお、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判定する場合、時間遅れすなわち位相差で検出する場合には、例えば変位の方向に存在する特定の座標を選択して測定することが可能であり、少ないデータ量で判定が可能となる。また、座標の差異で検出する場合には、例えば図8の時刻t1で差異を検出でき、短時間での判定が可能となる。
【0069】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態乃至第5の実施の形態についても第1の変形パタンが適用されるものとして説明する。
【0070】
図12に第2の実施の形態におけるセンサ部位2Bの構成例を示す。第1の実施の形態では圧力伝達材z3、z4に光透過素材z1,z2と同一材料を使用したが、異なる材料を使用する例である。すなわち、感圧部として機能する入射用光ファイバf1と出射用光ファイバf2の間(圧力を受けている状態でこの間に入る部分も含まれる)に光透過素材z1,z2を用い、基材b1,b2、感圧部p1,p2、入射用光ファイバf1、出射用光ファイバf2の上に配置する部分を光透過素材z1,z2と異なる圧力伝達材z3(第1の光ファイバセンサアレイ21内),z4(第2の光ファイバセンサアレイ22内)で構成するものである。すなわち、この部分は押圧を感圧部piに伝達すれば良く、発泡ウレタンを使用できるが、必ずしも光を透過する素材を用いる必要はないので、例えば、不透明性ゴムを使用しても良い。入射用光ファイバf1と出射用光ファイバf2の間の光透過素材z1,z2は押圧を受けると圧縮されて光透過量が減少し、感圧部として機能する。
その他の構成については、第1の実施の形態と同じであり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0071】
図13に第3の実施の形態におけるセンサ部位2Cの構成例を示す。第1の実施の形態で用いた感圧部piにおける入射用光ファイバf1と出射用光ファイバf2の間の光透過素材z1,z2(圧力を受けてない状態でこの間に入る部分のみ)を空間q1(第1の光ファイバセンサアレイ21内),q2(第2の光ファイバセンサアレイ22内)で置換し、基材b1,b2、空間q1,q2、入射用光ファイバf1、出射用光ファイバf2の上に配置する部分を圧力伝達材z3(第1の光ファイバセンサアレイ21内),z4(第2の光ファイバセンサアレイ22内)で構成するものである。このとき、空間q1,q2の上部で押圧を受けた場合、圧力伝達材z3,z4の空間q1,q2に隣接する部分z5、z6が、感圧部piの光が通過する領域に割り込んで光の通過を妨げるので、感圧部piにおける光透過量は減少する。この部分z5、z6は空間q1,q2と協働して実質的に光透過素材z1、z2のように機能するもので、発泡ウレタンを使用できるが、必ずしも光を透過する材料でなくても良く、例えば不透明ゴムを使用しても良い。
その他の構成については、第1の実施の形態と同じであり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0072】
図14に第4の実施の形態におけるセンサ部位2Dの構成例を示す。第2の光ファイバセンサアレイ22において、被測定物Mの押圧が、被測定物M直下近傍の感圧部p2から遠くに広がらないように、各感圧部p2間に圧力伝達材z4及び基材b2を貫通する孔やスリットq3を形成し(圧力伝達材z4や基材b2を切離するものではない)、各感圧部p2相互の影響を弱めるものである。その他の構成については、第1の実施の形態と同じであり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0073】
図15に第5の実施の形態におけるセンサ部位2Eの構成例を示す。第1の光ファイバセンサアレイ21において、被測定物Mの押圧が、被測定物M直下近傍の感圧部p1から遠くに広がらないように、各感圧部p1の直上の圧力伝達材z3に突起q4を設けるものである。その他の構成については、第1の実施の形態と同じであり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0074】
図16に第6の実施の形態におけるセンサ部位2Fの構成例を示す。第1の実施の形態に比して、第1の光ファイバセンサアレイ21では圧力伝達材z3が厚くなっており、その上面と下面(感圧部p1が配列されている)の間にずれによる弾性変形が生じるようになっている。第2の光ファイバセンサアレイ22では圧力伝達材z4が薄いので、ずれによる弾性変形が生じたとしても無視できる。基材b1,b2には撓みは生じるが、弾性変形は生じないか無視できる。また、第2の光ファイバセンサアレイ22は中間シート23に固定されており、中間シート上を滑ることはない。なお、中間シート23は省略可能であり、この場合には第2の光ファイバセンサアレイ22は直接第2の光ファイバセンサアレイ21に固定される。したがって、外枠は不要である。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0075】
図17はすべり検出の別の原理(第2の変形パタン)を説明するための図である。第2の変形パタンは、基材b1,b2は共に弾性変形を起こさず(撓みは生じる)、圧力伝達材z3,z4の柔軟度が比較的小さい。被測定物Mが移動すると、被測定物Mと圧力伝達材z4の摩擦により、第2の光ファイバセンサアレイ22全体が被測定物Mの移動方向に一様に変位し、他方、第1の光ファイバセンサアレイ21では圧力伝達材z3の上面と下面の間にずれによる弾性変形が生じ、上面は第2の光ファイバセンサアレイ22に追随して変位するのに対し、下面は感圧部p1、基材b1と共にセンサ部位2Fに固定され、この結果、第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標全体が、第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標全体に対して被測定物Mの移動方向にシフトする。なお、理解を容易にするために圧力伝達材z3の厚さに対して圧力伝達材z4の厚さを無視でき、第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z4のずれによる弾性変形を無視できるものとし、このため第2の光ファイバセンサアレイ22の最大圧力の位置はほぼ被測定物Mの直下にあるものとする。また、図において、被測定物Mは本来感圧部p2の座標より上方に位置するが、便宜上被測定物Mに近い方の感圧部p2の座標上にあるものとして描かれている。
【0076】
時刻t0において、質量mの被測定物Mがセンサ部位2Fの感圧部p2(1,1)上に置かれている。この被測定物Mに対し面内で(2,2)の方向に力を加えると、この被測定物Mと柔軟性を有する材料(圧力伝達材z4)が用いられている上層の第2の光ファイバセンサアレイ22との間には摩擦力が生じ、被測定物Mの移動により第2の光ファイバセンサアレイ22全体の座標が追随して変位し、時刻t1において被測定物Mの位置は、上層の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標(1,1)上となる。他方、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21には柔軟性を有する材料(圧力伝達材z3)が用いられており、その上面は第2の光ファイバセンサアレイ22の座標の変位に追随して変位するが、下面は基材b1と共にセンサ部位2Fに固定されているので、感圧部p1の座標は被測定物Mの移動に追随せず、上面と下面との間にずれが生じ、被測定物Mの位置は、感圧部p1の座標(2,2)上となる。このように、第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標と第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標間に差異を生じる。
【0077】
そして、被測定物Mに働く力がさらに大きくなって、最大摩擦力と釣合うと、被測定物Mは圧力伝達材z4の表面をすべり始める。すべりの間は、圧力伝達材z3は一定の変形状態を保ちつつ、第1の光ファイバセンサアレイ21の被測定物Mの直下における最大圧力の座標及び、第2の光ファイバセンサアレイ22の被測定物Mの直下における最大圧力の座標はそれぞれ、被測定物Mの移動に追随して変化する。したがって、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標は、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標の変化に遅れて変化し、その遅れは概ね一定である。
【0078】
時刻t1から、被測定物Mはすべり始め、摩擦を伴いながら被測定物Mに働く力の方向に移動する。この時、被測定物M直下の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標と第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標間には大よそ一定の差異が保たれる。時刻t2において被測定物Mは、上層の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標(2,2)上、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標(3,3)上に到達する。
【0079】
第1の光ファイバセンサアレイ21の圧力伝達材z3は上面と下面の間にずれによる弾性変形が生じるよう、柔軟性を適切に調整して(第1の変形パタンよりは柔軟性を小さくして)発泡ウレタンを採用した。第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z4はずれによる弾性変形が小さい方が望ましいが、厚さを薄くすれば影響を無視できるので、圧力伝達材z3と同じ材料とした。光透過素材z1,z2は第1の変形パタンと同様に、発泡ウレタン、ゲルシート、立体繊維等を使用できるが、圧力伝達材z3と同じ材料とした。基材b1,b2についてはあまり弾力性を要求されないので、低発泡塩化ビニール板を採用した。
【0080】
図11で説明した処理フローについては、ステップS002において、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標とその近傍が局部的に変位する代わりに、第1の光ファイバセンサアレイ21の圧力伝達材z3のずれに基づき第2の光ファイバセンサアレイ22全体が変位する。
その他の構成と処理フローについては、第1の実施の形態と同じであり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0081】
なお、第2の光ファイバセンサアレイ22の圧力伝達材z3が厚い場合には、圧力伝達材z3の上下面にもずれが生じるので、感圧部p2の座標が被測定物Mの直下の座標ではなくなるが、第1の光ファイバセンサアレイ21の最大圧力の座標と第2の光ファイバセンサアレイ22の最大圧力の座標とに空間的差異が生じ、また、最大圧力の座標の所定の座標において第2の光ファイバセンサアレイ22で圧力が変化する時間に遅れが生じるので、圧力伝達材z3が薄い場合と同様に、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判定可能である。
【0082】
第2の変形パタンはこのように第1の実施の形態に適用可能であるが、第6の実施の形態のように、圧力伝達材z3の厚さと柔軟度を変更し、その他の構成や材料の性能を変更すれば、第2乃至第5の実施の形態に対しても適用可能である。
【0083】
図18に第7の実施の形態におけるセンサ部位2Gの構成例を示す。第1の光ファイバセンサアレイ21と第2の光ファイバセンサアレイ22とを固定せずに、第1の光ファイバセンサアレイ21上に固定された中間シート23上で第2の光ファイバセンサアレイ22が自由に滑るようにし(図中の矢印は自由に滑ることを表す)、かつ、滑る距離をあまり大きくしないように、第2の光ファイバセンサアレイ22の縦横の寸法を第1の光ファイバセンサアレイ21より幾分小さくし、第1の光ファイバセンサアレイ21の周囲に第2の光ファイバセンサアレイ22の滑りを止める枠24を設ける。
【0084】
図19はすべり検出の別の原理(自由移動による変位)を説明するための図である。第1の光ファイバセンサアレイ21上に中間シート23が固定的に置かれ、第2の光ファイバセンサアレイ22と中間シート23との摩擦係数が非常に小さく、第2の光ファイバセンサアレイ22は中間シート23上を枠24内で自由に移動でき、被測定物Mとの摩擦により、第2の光ファイバセンサアレイ22全体が被測定物Mの移動方向に一様に変位し、他方、第1の光ファイバセンサアレイ21全体がセンサ部位2Gに固定され、この結果、第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標全体が、第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標全体に対して被測定物Mの移動方向にシフトする。また、図において、被測定物Mは本来感圧部p2の座標より上方に位置するが、便宜上被測定物Mに近い方の感圧部p2の座標上にあるものとして描かれている。
【0085】
時刻t0において、質量mの被測定物MがG2の感圧部p2(1,1)上に置かれている。この被測定物Mに対し面内で(2,2)の方向に力を加えると、この被測定物Mと柔軟性を有する材料(圧力伝達材z4)が用いられている上層の第2の光ファイバセンサアレイ22との間には摩擦力が生じ、被測定物Mの移動により第2の光ファイバセンサアレイ22全体の座標が追随して変位し、時刻t1において被測定物Mの位置は、上層の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標(1,1)上となる。他方、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21全体がセンサ部位2Gに固定されているので、感圧部p1の座標は被測定物Mの移動に追随せず、被測定物Mの位置は、感圧部p1の座標(2,2)上となる。このように、両者の座標間に差異を生じる。
【0086】
そして、第2の光ファイバセンサアレイ22の周辺部が枠24に到達して、第2の光ファイバセンサアレイ22が被測定物Mの移動に追随できなくなると、被測定物Mは圧力伝達材z4の表面をすべり始める。すべりの間は、第1の光ファイバセンサアレイ21の被測定物Mの直下における最大圧力の座標及び、第2の光ファイバセンサアレイ22の被測定物Mの直下における最大圧力の座標はそれぞれ、被測定物Mの移動に追随して変化する。したがって、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標は、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標の変化に遅れて変化し、その遅れは概ね一定である。
【0087】
時刻t1から、被測定物Mはすべり始め、摩擦を伴いながら被測定物Mに働く力の方向に移動する。この時、被測定物M直下の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標と第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標間には大よそ一定の差異が保たれる。時刻t2において被測定物Mは、上層の第2の光ファイバセンサアレイ22の感圧部p2の座標(2,2)上、下層の第1の光ファイバセンサアレイ21の感圧部p1の座標(3,3)上に到達する。
【0088】
なお、本実施の形態においては、圧力伝達材z3,z4は、局部的変形やずれを生じるような柔軟性は要求されず、押圧に対する弾力性があれば良く、発泡ウレタン、ゴム等を使用できるが、ここでは光透過素材z1,z2と共用できるよう発泡ウレタンを使用した。また、基材b1,b2もあまり弾力性を要求されないので、低発泡塩化ビニール板を採用した。また、上下層共に光集積回路で構成することも可能である。
図11で説明した処理フローについては、ステップS002において、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標とその近傍が局部的に変位する代わりに、第2の光ファイバセンサアレイ22全体が自由移動により変位する。
その他の構成と処理フローについては、第1の実施の形態と同じであり、したがって、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0089】
自由移動による変位はこのように第1の実施の形態に適用可能であるが、第7の実施の形態のように、第1の光ファイバセンサアレイ21上で第2の光ファイバセンサアレイ22が自由に滑るようにし構成を変更すれば、第2又は第3の実施の形態に対しても適用可能である。
【0090】
図20に第8の実施の形態におけるセンサ部位2Hの構成例を示す。本実施の形態は自由移動による変位を第4の実施の形態に適用したものである。第2の光ファイバセンサアレイ22を各感圧部p2単位にチップ状に切り離して、各感圧部p2間の影響をなくしたものである。各感圧部p2を搭載するチップの移動については、各感圧部に光ファイバf1,f2が接続されているため、アレイ面に垂直方向の移動が抑制され、また、隣接する感圧部p2を搭載するチップの存在により、アレイ面内の移動については感圧部p2の座標周りの微小範囲に制限されている。すなわち、被測定物Mに滑りが生じると、第2の光ファイバセンサアレイ22におけるいずれか1つの感圧部p2を搭載するチップが被測定物Mの移動に追随して移動し、その間は、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標は不変であり、第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標との差異が拡大するが、他のチップにあたって移動できなくなると被測定物Mに滑りが生じ、第2の光ファイバセンサアレイ22における最大圧力の座標と第1の光ファイバセンサアレイ21における最大圧力の座標とはほぼ一定の差異を保って変位を続ける。その他の構成については、第7の実施の形態と同じであり、したがって、第7の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0091】
以上の実施の形態を含め本発明によるすべり・転がり検出方法は、当該すべり・転がり検出方法を制御端末4に実行させるためのプログラム、又は、当該プログラムを記録した制御端末4読み取り可能な記録媒体としても実現可能である。プログラムは、制御端末4の制御手段44に内蔵のROMに記録して用いても良く、FD、CD−ROM、内蔵又は外付けの磁気ディスク等の記録媒体に記録し、制御端末4に読み取って用いても良く、インターネットを介して制御端末4にダウンロードして用いても良い。
【0092】
以上により、本発明によれば、柔軟性を有する材料をセンサ部位に用いて、被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能なすべり・転がり検出システム及び検出方法を提供できる。
また、本発明の一態様によれば、短時間で被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能であり、他の一態様によれば、少ないデータ量で被測定物Mの変位がすべりによるか転がりによるかを判別可能である。また、本発明の好ましい態様によれば、第1の光ファイバセンサアレイ21の各感圧部p1と第2の光ファイバセンサアレイ22の各感圧部p2とに1対1の対応関係が成立し、判別精度を高くできる。また、本発明の別の好ましい態様によれば、柔軟性が大で光透過量の変化が大きい感圧部piを構成でき、高感度の検出ができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態に種々変更を加えられることは明白である。
【0094】
例えば、上記実施の形態では、第1の光ファイバセンサアレイと第2の光ファイバセンサアレイで同じ光透過素材及び同じ基材を用いる例を説明したが、異なる材料を用いても良い。例えば、第1の光ファイバセンサアレイでは光透過素材及び基材にあまり弾力性が要求されないので、弾力性の無い又は小さい材料を使用できる。また、上記実施の形態では入射光路、出射光路に光ファイバを用いる例を説明したが、光導波路を用いても良い。例えば、第1の光ファイバセンサアレイでは弾力性の無い又は小さい材料を使用できるので、高分子材料又はガラスを用いた光集積回路で光導波路を形成しても良い。また、光導波路は埋め込み型でも、ストリップライン型でも良いが、感圧部に光透過素材を挿入可能に構成する。また、光源に赤色以外の色を用いても良く、発光ダイオード以外にレーザ光源なども使用できる。また、第1の光ファイバセンサアレイと第2の光ファイバセンサアレイ間の摩擦係数が小さい場合は、中間シートを省略できる。また、感圧部のマトリックス配置を高密度にすればすべり・転がり検出精度を向上できる。また、第1の光ファイバセンサアレイと第2の光ファイバセンサアレイの座標を極座標にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、福祉などの各種ロボットの触覚情報検出システム等に利用される。ロボットハンドや椅子の背もたれ等の曲面に取り付けて利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】第1の実施の形態によるすべり・転がり検出システムの構成例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図3】光ファイバセンサの負荷圧力特性例を示す図である。
【図4】光ファイバセンサアレイのアレイ構成例を示す図である。
【図5】光ファイバセンサアレイのアレイ構成例を示す写真である。
【図6】すべり検出の原理(第1の変形パタン)を説明するための図である。
【図7】上下二層の光ファイバセンサアレイの座標(1,1)における圧力の時間変化の例を示す図である。
【図8】時刻t1における上下二層の光ファイバセンサアレイにおける最大圧力の座標の例を示す図である。
【図9】すべりが生じた場合の圧力分布例を示す図である。
【図10】転がりが生じた場合の圧力分布例を示す図である。
【図11】第1の実施の形態によるすべり・転がり検出方法の処理フロー例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図13】第3の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図14】第4の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図15】第5の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図16】第6の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図17】すべり検出の別の原理(第2の変形パタン)を説明するための図である。
【図18】第7の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【図19】すべり検出の別の原理(自由移動による変位)を説明するための図である。
【図20】第8の実施の形態によるセンサ部位の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 光源
2、2A〜2H センサ部位
3 光検出器(光増幅器)
4 制御端末
5 表示手段
6 電力供給電源
21 第1のセンサアレイ(第1の光ファイバセンサアレイ)
22 第2のセンサアレイ(第2の光ファイバセンサアレイ)
23 中間シート
24 枠
41 記録手段
42 演算手段
43 判定手段
44 制御手段
45 換算手段
100 すべり・転がり検出システム
b1,b2 基材
d1 フロント画面
d2,d3 圧力分布画像
f1,f11、f12 入射光路(入射用光ファイバ)
f2,f21,f22 出射光路(出射用光ファイバ)
lp1,lp2,lp3 ランプ
M 被測定物
p1,p2,pi,pi(x,y) 感圧部
q1,q2 空間
q3 スリット
q4 突起
t0,t1,t2 時刻
Ui 入力端子
Uo 出力端子
z1,z2 光透過素材
z3,z4 圧力伝達材
z5,z6 圧力伝達材のうち空間に隣接する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第1のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイ上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第2のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第1の入射光路と前記第1のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第1の出射光路と、前記第2のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第2の入射光路と前記第2のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第2の出射光路とを有するセンサ部位と;
前記第1の出射光路からの出射光を入力して、前記第1のセンサアレイの各感圧部からの透過光量を検出し、また、前記第2の出射光路からの出射光を入力して、前記第2のセンサアレイの各感圧部からの透過光量を検出する光検出器と;
前記光検出器で検出された透過光量を前記センサ部位が被測定物から受ける圧力に変換する換算手段と;
前記第1のセンサアレイの各感圧部における圧力の変化と前記第2のセンサアレイの各感圧部における圧力の変化とに基づいて、前記被測定物の変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定手段とを備え;
前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイには柔軟性を有する材料が用いられ、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、前記被測定物と前記第2のセンサアレイとの摩擦力により、前記被測定物の直下近傍に位置する前記第2のセンサアレイの感圧部は、前記被測定物の変位とほぼ同じ方向に変位し、前記第1のセンサアレイの感圧部は前記被測定物の変位に対して不変であり;
前記判定手段は、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内で変位した時に、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標と前記第2のセンサアレイにおける最大圧力の座標とがほぼ同方向に移動した場合、移動中の所定の時間において、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標と前記第2のセンサアレイにおける最大圧力の座標とが異なる場合に前記被測定物の変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に前記被測定物の変位が転がりによると判定する;
柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項2】
圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第1のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイ上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第2のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第1の入射光路と前記第1のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第1の出射光路と、前記第2のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第2の入射光路と前記第2のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第2の出射光路とを有するセンサ部位と;
前記第1の出射光路からの出射光を入力して、前記第1のセンサアレイの各感圧部からの透過光量を検出し、また、前記第2の出射光路からの出射光を入力して、前記第2のセンサアレイの各感圧部からの透過光量を検出する光検出器と;
前記光検出器で検出された透過光量を前記センサ部位が被測定物から受ける圧力に変換する換算手段と;
前記第1のセンサアレイの各感圧部における圧力の変化と前記第2のセンサアレイの各感圧部における圧力の変化とに基づいて、前記被測定物の変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定手段とを備え;
前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイには柔軟性を有する材料が用いられ、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、前記被測定物と前記第2のセンサアレイとの摩擦力により、前記被測定物の直下近傍に位置する前記第2のセンサアレイの感圧部は、前記被測定物の変位とほぼ同じ方向に変位し、前記第1のセンサアレイの感圧部は前記被測定物の変位に対して不変であり;
前記判定手段は、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内で変位した時に、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標と前記第2のセンサアレイにおける最大圧力の座標とがほぼ同方向に移動した場合、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標の移動経路近傍の所定の座標において圧力が変化した時間に比して、前記第2のセンサアレイの前記所定の座標と同じ座標において圧力が変化した時間が遅い場合に前記被測定物の変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に前記被測定物の変位が転がりによると判定する;
柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項3】
前記第2のセンサアレイには、前記感圧部を搭載する基材、前記第2のセンサアレイ表面に作用する圧力を前記感圧部に伝達する圧力伝達材が使用され、前記基材及び前記圧力伝達材に局部的に変形する材料が使用され、前記感圧部は前記局部的な変形に伴い、局部的に変位する;
請求項1又は請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項4】
前記第1のセンサアレイには、前記感圧部を搭載する基材、前記第1のセンサアレイ表面に作用する圧力を前記感圧部に伝達する圧力伝達材が使用され、前記圧力伝達材は上面と下面とにずれが生じる材料が使用される;
請求項1又は請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項5】
前記第2のセンサアレイは、前記第1のセンサアレイ上で前記第1のセンサアレイに対して所定の範囲で自由に滑ることができるように構成されている;
請求項1又は請求項2に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項6】
前記第1の入射光路、前記第1の出射光路、前記第2の入射光路及び前記第2の出射光路は光ファイバ又は光導波路からなり;
前記第1のセンサアレイの各感圧部及び前記第2のセンサアレイの各感圧部には、圧力により透過光量が変化する光透過素材が使用され、前記光透過素材として弾性プラスチック、固相ゲル又は弾性光ファイバが使用される;
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項7】
前記第1のセンサアレイの各感圧部及び前記第2のセンサアレイの各感圧部は、等しいスケールの座標系の同じ座標にマトリックス状に配置されている;
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出システム。
【請求項8】
圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第1のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイ上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第2のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第1の入射光路と前記第1のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第1の出射光路と、前記第2のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第2の入射光路と前記第2のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第2の出射光路とを有するセンサ部位の前記第2のセンサアレイ上に被測定物を搭載し、前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイの各感圧部に前記第1の入射光路及び前記第2の入射光路を介して入射光を導入し、前記各感圧部からの透過光を前記第1の出射光路及び前記第2の出射光路を介して光検出器に出力する測定開始工程と;
前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内で変位した時に、前記光検出器で、前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイにおける各感圧部からの透過光量の変化を測定するデータ蓄積工程と;
前記光検出器で検出された透過光量を前記センサ部位が被測定物から受ける圧力に変換する換算工程と;
前記第1のセンサアレイにおける圧力の変化と前記第2のセンサアレイにおける圧力の変化とに基づいて、前記被測定物の変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定工程とを備え;
前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイには柔軟性を有する材料が用いられ、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、前記被測定物と前記第2のセンサアレイとの摩擦力により、前記被測定物の直下近傍に位置する前記第2のセンサアレイの感圧部は、前記被測定物の変位とほぼ同じ方向に変位し、前記第1のセンサアレイの感圧部は前記被測定物の変位に対して不変であり;
前記判定工程は、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内で変位した時に、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標と前記第2のセンサアレイにおける最大圧力の座標とがほぼ同方向に移動した場合、移動中の所定の時間において、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標と前記第2のセンサアレイにおける最大圧力の座標とが異なる場合に前記被測定物の変位がすべりによると判定し、ほぼ同じ場合に前記被測定物の変位が転がりによると判定する;
柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出方法。
【請求項9】
圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第1のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイ上に重ねて設けられ、圧力により透過光量が変化する複数の感圧部を面内に配置した第2のセンサアレイと、前記第1のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第1の入射光路と前記第1のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第1の出射光路と、前記第2のセンサアレイの各感圧部に入射光を導く第2の入射光路と前記第2のセンサアレイの各感圧部からの出射光を導く第2の出射光路とを有するセンサ部位の前記第2のセンサアレイ上に被測定物を搭載し、前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイの各感圧部に前記第1の入射光路及び前記第2の入射光路を介して入射光を導入し、前記各感圧部からの透過光を前記第1の出射光路及び前記第2の出射光路を介して光検出器に出力する測定開始工程と;
前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内で変位した時に、前記光検出器で、前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイにおける各感圧部からの透過光量の変化を測定するデータ蓄積工程と;
前記光検出器で検出された透過光量を前記センサ部位が被測定物から受ける圧力に変換する換算工程と;
前記第1のセンサアレイにおける圧力の変化と前記第2のセンサアレイにおける圧力の変化とに基づいて、前記被測定物の変位がすべりによるか又は転がりによるかを判定する判定工程とを備え;
前記第1のセンサアレイ及び前記第2のセンサアレイには柔軟性を有する材料が用いられ、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内ですべりによる変位を生じた場合に、前記被測定物と前記第2のセンサアレイとの摩擦力により、前記被測定物の直下近傍に位置する前記第2のセンサアレイの感圧部は、前記被測定物の変位とほぼ同じ方向に変位し、前記第1のセンサアレイの感圧部は前記被測定物の変位に対して不変であり;
前記判定工程は、前記被測定物が前記第2のセンサアレイ上で面内で変位した時に、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標と前記第2のセンサアレイにおける最大圧力の座標とがほぼ同方向に移動した場合、前記第1のセンサアレイにおける最大圧力の座標の移動経路近傍の所定の座標において圧力が変化した時間に比して、前記第2のセンサアレイの前記所定の座標と同じ座標において圧力が変化した時間が遅い場合に前記被測定物の変位がすべりによると判定し、圧力が変化した時間がほぼ同じ場合に前記被測定物の変位が転がりによると判定する;
柔軟なセンサ部位を用いたすべり・転がり検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−343195(P2006−343195A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168549(P2005−168549)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【Fターム(参考)】