説明

機関用燃料診断装置及び同装置を備える自動変速機の制御装置

【課題】想定外燃料の使用状態を診断することのできる機関用燃料診断装置を提供する。また、想定外燃料が使用された場合でも油圧作動部の油圧制御を適切に行うことのできる自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置200は、予め想定された燃料の使用を前提にして機関運転状態に基づきエンジン10の推定出力を算出し、その推定出力に基づいて自動変速機30への入力トルクを算出し、自動変速機30のブレーキ30Bやクラッチ30Cに対する油圧制御を入力トルクに基づいて行う。制御装置200は、登降坂路を走行中の車両100にあって燃料噴射の実行時に得られる車両100の噴射時推定加速度を、エンジン10の推定出力及び登降坂路の勾配に基づき算出する。そして、噴射時推定加速度が算出されたときの車両100の実加速度と噴射時推定加速度との乖離度合を示す値に基づいて想定外燃料の使用状態を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関用燃料診断装置及び同装置を備える自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、これに使用される燃料の成分に応じて混合気の燃焼状態等が変化するため、燃料成分に応じて機関出力も少なからず変化する。
例えば、ガソリン燃料とアルコール燃料とが混合された混合燃料を使用可能な内燃機関では、混合燃料中のアルコール濃度に応じて機関出力が変化する。そこで、こうした内燃機関では、特許文献1に記載の装置によるように、混合燃料中のアルコール濃度を推定するようにしており、推定されたアルコール濃度に応じて内燃機関の制御状態(燃料噴射量や点火時期等)を変更するようにしている。
【特許文献1】特開2007−137321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような混合燃料に対応した内燃機関では、混合燃料中のアルコール濃度が0%〜100%の間で変化する。そこで、そうした濃度範囲内の混合燃料が使用されることを予め想定しておき、こうした想定燃料に対応させてアルコール濃度の推定プログラムを構築したり、アルコール濃度に応じて内燃機関の制御状態を変更する制御プログラムを構築したりしておくことで、予め想定された範囲内の燃料の使用についてはこれに対応することが可能になる。
【0004】
ここで、燃料成分の変化としては、上述したような燃料中のアルコール濃度のみならず、燃料のオクタン価や燃料の劣化度合なども挙げられる。こうした各種の燃料成分の変化についても予め想定された範囲内で変化することが分かっている場合には、予想される変化範囲に対応させて燃料成分を把握するプログラムを構築しておけば、燃料成分の違いが機関出力に与える影響を把握ことができる。
【0005】
他方、こうした技術は、内燃機関で使用される燃料が予め想定可能であり、想定範囲内の燃料の使用に対応した適合値を予めプログラムに用意しておくことができる場合にのみ利用することのできる技術である。一方、内燃機関では、予め想定された燃料以外の想定外燃料(各種プログラムを構築したときには存在していなかった新規開発燃料や、プログラムを構築したときに想定した最大劣化度合よりもさらに劣化した燃料など)が使用されるおそれもある。こうした場合には、未知の想定外燃料の使用を把握することのできる適合値を予めプログラムに用意しておくことが不可能なため、燃料成分の違いが機関出力に与える影響を十分に把握することができない。
【0006】
このように燃料成分の違いが機関出力に与える影響を十分に把握することができない場合には、以下のような不都合も生じ得る。
例えば、内燃機関用の自動変速機では、変速動作に際して作動されるクラッチやブレーキといった油圧作動部に対する供給油圧が機関出力に応じて調整される。より詳細には、内燃機関から自動変速機に伝達される入力トルクが機関出力に基づいて算出され、その算出された入力トルクに基づいて上記油圧作動部に供給する油圧が調整される。例えば、入力トルクが大きいときには、上記油圧作動部の滑りを抑えるために供給油圧は高められる。逆に、入力トルクが小さいときには、過剰な油圧が油圧作動部にかからないように供給油圧は低くされる。こうした油圧制御を通じて、燃費や自動変速機の耐久性などが向上される。こうした油圧制御の実行に際して、燃料成分の違いが機関出力に与える影響を十分に把握することができない場合には、上記入力トルクの推定精度が悪化し、その結果、入力トルクに対して供給油圧の過不足が生じてしまうおそれがある。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述したような想定外燃料の使用状態を診断することのできる機関用燃料診断装置を提供することにある。また、想定外燃料が使用された場合でも油圧作動部の油圧制御を適切に行うことのできる自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、予め想定された燃料以外の想定外燃料が内燃機関で使用されていることを診断する装置であって、前記内燃機関を搭載した車両が登降坂路を走行しているときにその路面の勾配を検出する勾配検出手段と、前記登降坂路を走行中の前記車両にあって前記内燃機関で燃料噴射が実行されているときに得られる車両加速度である噴射時推定加速度を、予め想定された燃料が使用されていることを前提にして機関運転状態に基づき推定される機関出力と検出された前記勾配とに基づいて算出する噴射時加速度推定手段と、車両の実際の加速度である実加速度を検出する加速度検出手段と、前記噴射時推定加速度が算出されたときの前記実加速度と同噴射時推定加速度との乖離度合を示す第1乖離度合を算出し、同第1乖離度合に基づいて前記想定外燃料の使用状態を診断する診断手段とを備えることをその要旨とする。
【0009】
上述したように、燃料成分によって機関出力は変化する。また、実際の機関出力と登降坂路を走行中の車両の加速度とは密接な関係があり、実際の機関出力が高いときほど車両の加速度も高くなる。そこで、同構成では、車両が登降坂路を走行しているときの路面の勾配を検出するようにしている。そして、その検出された勾配の路面を燃料噴射が実行されている状態で、すなわち機関出力が発生している状態で走行しているときに得られる車両の加速度(噴射時推定加速度)が、予め想定された燃料を使用しているときに得られるはずの機関出力と検出された勾配とに基づいて算出される。そして、この噴射時推定加速度が算出されたときに検出された車両の実加速度と噴射時推定加速度との乖離度合を示す第1乖離度合が算出される。ここで、実加速度は、実際の機関出力に応じて変化する値であり、噴射時推定加速度は、予め想定された燃料が使用されていることを前提に推定された機関出力に基づいて算出される。従って、車両の実加速度と噴射時推定加速度との乖離度合を示す第1乖離度合は、推定された機関出力と実際の機関出力との差を示す指標値になり、この第1乖離度合の値には、想定外燃料が使用されたときの機関出力の変化が反映される。そのため、この第1乖離度合に基づいて想定外燃料の使用状態を診断することが可能になる。そこで、同構成では、この第1乖離度合に基づいて想定外燃料の使用状態を診断するようにしており、これにより予め想定された燃料以外の想定外燃料についてその使用状態を診断することのできるようになる。
【0010】
機関燃料に対する想定外燃料の混合率が高くなるほど、車両の実加速度は上記噴射時推定加速度から乖離するようになり、上記第1乖離度合の絶対値は大きくなる。
そこで、想定外燃料の使用状態を診断する具体的な態様としては、請求項2に記載の発明によるように、前記診断手段は、前記使用状態として前記想定外燃料の混合率を算出するものであり、前記混合率は、前記第1乖離度合が大きいときほど高くなるように算出される、といった構成を採用することにより、機関燃料に対する想定外燃料の混合率を算出することができるようになる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明によるように、前記診断手段は、前記使用状態として前記想定外燃料が使用されているか否かを判定するものであり、前記第1乖離度合が予め設定された判定値以上のときに前記想定外燃料が使用されていると判定する、といった構成を採用することにより、想定外燃料が使用されているか否かを診断することができるようになる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機関用燃料診断装置において、前記登降坂路を走行中の前記車両にあって前記内燃機関で燃料噴射が停止されているときに得られる車両加速度である噴射停止時推定加速度を、検出された前記勾配に基づいて算出する噴射停止時加速度推定手段をさらに備え、前記噴射停止時推定加速度が算出されたときの前記実加速度と同噴射停止時推定加速度との乖離度合を示す第2乖離度合を算出し、前記使用状態の診断に際しては、前記第2乖離度合に基づいて前記第1乖離度合を補正することをその要旨とする。
【0013】
同構成では、上記噴射停止時推定加速度を、燃料噴射が停止されているときに検出された勾配に基づいて算出するようにしているため、その噴射停止時推定加速度の値には、機関出力に応じて推定される加速度成分やその推定誤差成分が含まれておらず、勾配に応じて推定される加速度成分とその推定誤差成分のみが含まれることになる。
【0014】
そして、噴射停止時推定加速度と実加速度との差を示す値として上記第2乖離度合が算出されることにより、この第2乖離度合には、勾配に基づいて車両の加速度を推定する際の推定誤差や実加速度を検出する際の検出誤差といった誤差成分が含まれることになる。従って、第2乖離度合に基づいて第1乖離度合を補正する(例えば第1乖離度合の値から第2乖離度合の値を減算するなど)ことにより、その補正された第1乖離度合は各種の誤差成分が除去されて、推定された機関出力と実際の機関出力との差分成分のみが残るようになる。こうして補正された第1乖離度合に基づいて想定外燃料の使用状態の診断を行う同構成によれば、その診断精度を向上させることができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、内燃機関から自動変速機に伝達される入力トルクを推定された機関出力に基づいて算出し、その算出された入力トルクに基づいて前記自動変速機の油圧作動部に供給する油圧を調整する自動変速機の制御装置において、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機関用燃料診断装置を備え、前記第1乖離度合に基づいて前記入力トルクを補正することをその要旨とする。
【0016】
同構成によれば、推定された機関出力と実際の機関出力との差を示す第1乖離度合に基づいて上記入力トルクが補正される。従って、想定外燃料が使用された場合でも、入力トルクの推定精度が向上するようになり、これにより自動変速機の油圧作動部に対する油圧制御を適切に行うことができるようになる。なお、同構成にあっては、第1乖離度合に基づいて入力トルクを直接補正する他、推定された機関出力を第1乖離度合に基づいて補正することにより、結果として入力トルクが補正されるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかる機関用燃料診断装置を自動変速機の制御装置に具体化した一実施形態について、図1〜図5を併せ参照して説明する。
図1に、本実施形態の自動変速機の制御装置が適用された車両についてその全体構成を示す。
【0018】
この図1に示すように、車両100には、エンジン10が搭載されており、その吸気通路11には、吸入空気量を調量するスロットルバルブ12が設けられている。エンジン10では、燃料タンク14から燃料供給系を介して燃料噴射弁13に燃料が供給され、この燃料噴射弁13から吸入空気量に応じた燃料が噴射されることにより、機関出力が調整される。
【0019】
エンジン10のクランクシャフトは、流体継手であるトルクコンバータ20の入力軸に接続されており、トルクコンバータ20の出力軸は、複数の変速段を有する自動変速機30の入力軸に接続されている。この自動変速機30には、油圧にて作動されるブレーキ30Bやクラッチ30Cといった油圧作動部が設けられており、これら油圧作動部への油圧制御を通じて自動変速機30の変速動作が行われる。自動変速機30の出力軸は、プロペラシャフト40に接続されており、プロペラシャフト40の出力軸は、デファレンシャルギヤ50に接続されている。デファレンシャルギヤ50の出力軸は、車両の車輪70に接続されている。
【0020】
車両100の状態は、各種センサ等によって検出される。例えば、クランク角センサ300によって機関回転速度NEが検出され、吸入空気量センサ310によって吸入空気量GAが検出され、スロットル開度センサ320によってスロットルバルブ12の開度であるスロットル開度TAが検出される。また、車速センサ340によって車両の車速SPが検出され、アクセルセンサ350によってアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCPが検出され、加速度センサ360によって車両100の前後方向における実際の加速度である実加速度Gが検出される。なお、この加速度センサ360は上記加速度検出手段を構成している。
【0021】
上述した各種センサ等の信号は、制御装置200に入力され、同制御装置200はそうした信号に基づいて自動変速機30の変速制御等を行う。
そうした変速制御の1つとして、制御装置200は、自動変速機30の変速動作に際して作動されるクラッチ30Cやブレーキ30Bといった油圧作動部に対する供給油圧を機関出力(出力トルク)に応じて調整する。より詳細には、機関回転速度NE及び機関負荷KLに基づいてエンジン10の推定出力トルクTEが算出される。なお、本実施形態では、機関負荷KLを、全負荷時の吸入空気量に対する現在の吸入空気量GAの割合として算出するようにしているが、スロットル開度TAや、アクセル操作量ACCP、あるいは燃料噴射量等に基づいて機関負荷KLを算出するようにしてもよい。
【0022】
そして、エンジン10から自動変速機30に伝達される入力トルクTinが、推定出力トルクTE及びトルクコンバータ20の動力伝達効率等に基づいて算出され、その算出された入力トルクTinに基づいて油圧作動部に供給する油圧が調整される。例えば、入力トルクTinが大きいときには、油圧作動部の滑りを抑えるために供給油圧は高められる。逆に、入力トルクTinが小さいときには、過剰な油圧が油圧作動部にかからないように供給油圧は低くされる。こうした油圧制御を通じて、燃費や自動変速機30の耐久性などが向上される。
【0023】
ところで、エンジン10では、これに使用される燃料の成分に応じて混合気の燃焼状態等が変化するため、機関出力も燃料成分に応じて少なからず変化する。ここで、上述したように、燃料成分の変化について予め想定された範囲内で変化することが分かっている場合には、予想される変化範囲に対応させて燃料成分を把握するプログラムを構築しておくことにより、燃料成分の違いが機関出力に与える影響を把握することができる。
【0024】
しかし、エンジン10では、予め想定された燃料以外の想定外燃料(各種プログラムを構築したときには存在していなかった新規開発燃料や、プログラムを構築したときに想定した最大劣化度合よりもさらに劣化した燃料など)が使用されるおそれもある。こうした場合には、未知の想定外燃料の使用を把握することのできる適合値を予めプログラムに用意しておくことが不可能なため、燃料成分の違いが機関出力に与える影響を十分に把握することができない。
【0025】
このように燃料成分の違いが機関出力に与える影響を十分に把握することができない場合には、上述したような自動変速機30の油圧制御の実行に際して、上記入力トルクTinの推定精度が悪化し、その結果、油圧作動部に対する供給油圧が入力トルクTinに対して過不足となる状態が発生してしまうおそれがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、以下に説明する燃料診断処理の実行することにより、まず、想定外燃料の使用状態を把握するようにしている。そして、その診断結果に基づいて入力トルクTinの補正処理を実行することにより、上述したような不具合の発生を抑えるようにしている。
(燃料診断処理について)
図2に、上記燃料診断処理の手順を示す。なお、本処理は、制御装置200によって実行される。
【0027】
本処理が開始されるとまず、車両100が現在走行している路面の勾配Sが読み込まれる(S100)。この勾配Sは、本処理とは別に行われる勾配判定処理にて算出される値であって、例えば以下のようにして算出される。
【0028】
まず、図3に示すように、機関回転速度NE及び機関負荷KLに基づいてエンジン10の推定出力トルクTEが算出される。なお、このときに算出される推定出力トルクTEは、エンジン10において予め想定された燃料が使用されていることを前提にして推定される値となっている。
【0029】
そして、車両100が平坦地(勾配Sが略「0」の路面)を走行している状態において得られるはずの加速度である基準加速度Gbが、上記推定出力トルクTEや車両100の走行抵抗等に基づいて算出される。そして、この基準加速度Gbから上記実加速度Gを減算した差分ΔGに基づいて勾配Sが算出される。より具体的には、差分ΔGの絶対値が大きいほど勾配Sは大きい値にされる。また、差分ΔGが正の値になる場合には、車両100が登坂路(上り坂)を走行中であると判定され、差分ΔGが負の値になる場合には、車両100が降板路(下り坂)を走行中であると判定される。なお、こうした勾配判定処理は上記勾配検出手段を構成している。
【0030】
次に、噴射時推定加速度Aonが算出される(S110)。この噴射時推定加速度Aonは、登降坂路を走行中の車両100にあってエンジン10で燃料噴射が実行されているときに得られるはずの車両100の推定加速度であり、上記推定出力トルクTEと検出された勾配Sとに基づいて算出される。なお、この噴射時推定加速度Aonは、アクセル操作量ACCPが「0」よりも大きいとき、すなわちアクセルペダルが踏み込まれており、エンジン10で燃料噴射が実行されていると判断された場合に算出される。また、このステップS110の処理は、上記噴射時加速度推定手段を構成している。
【0031】
次に、上記噴射時推定加速度Aonが算出されたときに検出された実加速度Gが噴射時実加速度Gonとして読み込まれ(S120)、噴射時推定加速度Aonと噴射時実加速度Gonとの乖離度合を示す第1乖離度合として第1指標値Donが算出される(S130)。この第1指標値Donは、噴射時推定加速度Aonから噴射時実加速度Gonを減算した値であり、次のような理由により算出される。
【0032】
まず、上述したように、燃料成分によって機関出力、より具体的には出力トルクは変化する。また、実際の出力トルクと登降坂路を走行中の車両100の実加速度Gとは密接な関係があり、実際の出力トルクが高いときほど車両100の実加速度Gも高くなる。そこで、検出された勾配Sの路面を燃料噴射が実行されている状態で、すなわち出力トルクが発生している状態で走行しているときに得られるはずの車両100の加速度である上記噴射時推定加速度Aonが、予め想定された燃料を使用しているときに得られるはずの推定出力トルクTEと検出された勾配Sとに基づいて算出される。そして、この噴射時推定加速度Aonが算出されたときに検出された車両100の噴射時実加速度Gonと噴射時推定加速度Aonとの乖離度合を示す上記第1指標値Donが算出される。ここで、噴射時実加速度Gonは、実際の出力トルクに応じて変化する値であり、噴射時推定加速度Aonは、予め想定された燃料が使用されていることを前提に算出された推定出力トルクTEに基づいて算出される。従って、車両100の噴射時実加速度Gonと噴射時推定加速度Aonとの乖離度合を示す第1指標値Donは、推定された出力トルクと実際の出力トルクとの差を示す指標値になり、この第1指標値Donの値には、想定外燃料が使用されたときの実際の出力トルクの変化が反映される。そのため、この第1指標値Donに基づいて想定外燃料の使用状態を診断することが可能になるためである。
【0033】
なお、想定外燃料の使用により、実際の出力トルクが推定出力トルクTEよりも大きくなるときには、噴射時実加速度Gonが噴射時推定加速度Aonよりも大きくなるため、第1指標値Donは負の値になる。逆に、想定外燃料の使用により、実際の出力トルクが推定出力トルクTEよりも小さくなるときには、噴射時実加速度Gonが噴射時推定加速度Aonよりも小さくなるため、第1指標値Donは正の値になる。そして、機関燃料に対する想定外燃料の混合率が高くなるほど、車両100の噴射時実加速度Gonは上記噴射時推定加速度Aonから乖離するようになるため、第1指標値Donの絶対値は大きくなる。ちなみに、予め想定された燃料が使用されている場合には、第1指標値Donは基本的に「0」になるが、実際には噴射時推定加速度Aonの推定誤差や実加速度Gの検出誤差等があるため、「0」近傍の値になる。
【0034】
次に、噴射停止時推定加速度Aoffが算出される(S140)。この噴射停止時推定加速度Aoffは、登降坂路を走行中の車両100にあってエンジン10で燃料噴射が停止されているとき、すなわち燃料カットが実行されているときに得られるはずの車両100の推定加速度であり、検出された勾配Sに基づいて算出される。なお、この噴射停止時推定加速度Aoffは、アクセル操作量ACCPが「0」であってアクセルペダルが踏み込まれておらず、かつ機関回転速度NEが減速時燃料カット実行領域の範囲内にあり、エンジン10で燃料噴射が停止されていると判断された場合に算出される。また、このステップS140の処理は、上記噴射停止時加速度推定手段を構成している。
【0035】
次に、上記噴射停止時推定加速度Aoffが算出されたときに検出された実加速度Gが噴射停止時実加速度Goffとして読み込まれ(S150)、噴射停止時推定加速度Aoffと噴射停止時実加速度Goffとの乖離度合を示す第2乖離度合として第1指標値用補正値Doffが算出される(S160)。この第1指標値用補正値Doffは、噴射停止時推定加速度Aoffから噴射停止時実加速度Goffを減算した値である。
【0036】
次に、第1指標値Donから第1指標値用補正値Doffを減算した値の絶対値が、燃料診断値FDとして算出される(S170)。こうした燃料診断値FDは、次の理由により算出される。
【0037】
まず、上記噴射停止時推定加速度Aoffは、燃料噴射が停止されているときに検出された勾配Sに基づいて算出されるため、その噴射停止時推定加速度Aoffの値には、推定出力トルクTEに応じて推定される加速度やその加速度の推定誤差が含まれておらず、勾配Sに応じて推定される加速度とその加速度の推定誤差のみが含まれる。
【0038】
そして、噴射停止時推定加速度Aoffと噴射停止時実加速度Goffとの差を示す値として上記第1指標値用補正値Doffが算出されることにより、この第1指標値用補正値Doffには、勾配Sに基づいて車両100の加速度を推定する際の推定誤差や実加速度を検出する際の検出誤差といった誤差成分が含まれることになる。従って、第1指標値用補正値Doffに基づいて第1指標値Donを補正することにより、その補正された第1指標値Donからは上述したような各種の誤差成分が除去されて、推定出力トルクTEと実際の出力トルクとの差分成分のみが残るようになる。そこで、本実施形態では、第1指標値Donを第1指標値用補正値Doffで補正するべく、第1指標値Donから第1指標値用補正値Doffを減算するようにしており、この補正された第1指標値Donの絶対値を上記燃料診断値FDとして設定するようにしている。このようにして算出される燃料診断値FDには、想定外燃料の使用に伴う実際の出力トルクの変化分が精度よく反映されるため、この燃料診断値FD基づいて想定外燃料の使用状態の診断を行うことにより、その診断精度が向上するようになる。
【0039】
次に、上記態様にて算出された燃料診断値FDが予め設定された判定値α以上であるか否かが判定され(S180)、燃料診断値FDが判定値αに満たない場合には(S180:NO)、想定外燃料が使用されていない、換言すれば予め想定された燃料が使用されていると判断されて(S210)、本処理は終了される。
【0040】
一方、燃料診断値FDが判定値α以上である場合には(S180:YES)、想定外燃料が使用されていると判定することも可能であるが、燃料診断値FDが一時的に判定値α以上になった可能性もある。そこで、次のステップS190にて、燃料診断値FDが判定値α以上となっている時間が所定時間T以上継続されているか否かが判定される(S190)。そして、所定時間T以上継続されていない場合には、本処理は終了される。
【0041】
一方、燃料診断値FDが判定値α以上となっている時間が所定時間T以上継続されている場合には、想定外燃料が使用されていると判定されて(S200)、本処理は終了される。
【0042】
こうした燃料診断処理を実行することにより、想定外燃料の使用状態、より具体的には想定外燃料が使用されているか否かが適切に診断される。なお、同燃料診断処理を実行する制御装置200は、上記診断手段を構成している。
(入力トルクの補正処理について)
次に、上述した入力トルクTinの補正処理についてその手順を、図4を参照して説明する。なお、本処理も、制御装置200によって実行される。
【0043】
本処理が開始されるとまず、上記燃料診断処理の実行を通じて、想定外燃料が使用されているとの診断結果が得られているか否かが判定される(S300)。そして、想定外燃料が使用されていないとの診断結果が得られているときには(S300:NO)、本処理は終了される。
【0044】
一方、想定外燃料が使用されているとの診断結果が得られているときには(S300:YES)、次式(1)に基づいて係数Kが算出される(S210)。

係数K=噴射時実加速度Gon/噴射時推定加速度Aon …(1)

上述したように、噴射時実加速度Gonは実際の出力トルクに相関する値であり、噴射時推定加速度Aonは、予め想定された燃料が使用されていることを前提に算出された推定出力トルクTEに相関する値である。従って、上記式(1)にて求められる係数Kは、実際の出力トルクと上記推定出力トルクTEとが一致する場合、すなわち予め想定された燃料であって標準となる燃料が使用されている場合には「1」になる。また、上記推定出力トルクTEよりも実際の出力トルクの方が大きい場合には、係数Kは「1」よりも大きい値になり、上記推定出力トルクTEよりも実際の出力トルクの方が小さい場合には、係数Kは「1」よりも小さい値になる。このように、係数Kは、燃料成分の違いによる出力トルクの増減を示す値となる。なお、この係数Kも、式(1)等から分かるように、噴射時推定加速度Aonと噴射時実加速度Gonとの乖離度合を示す第1乖離度合として算出される値である。
【0045】
次に、入力トルクTinを補正する補正値Pが上記係数Kに基づいて設定される(S320)。この補正値Pは、係数Kが大きくなるほど大きい値に設定される。より詳細には、図5に示すように、係数Kが「1」のときには、実際の出力トルクが上記推定出力トルクTEと一致するため、補正値Pは「1」に設定される。そして、係数Kが「1」よりも小さいときには、実際の出力トルクが上記推定出力トルクTEよりも小さくなっているため、係数Kが「1」よりも小さくなるほど補正値Pも「1」より小さくされていく。また、係数Kが「1」よりも大きいときには、実際の出力トルクが上記推定出力トルクTEよりも大きくなっているため、係数Kが「1」よりも大きくなるほど補正値Pも「1」より大きくされていく。
【0046】
そして、入力トルクTinに補正値Pを乗算することにより入力トルクTinが補正されて(S330)、本処理は終了される。
こうした入力トルクの補正処理が行われることにより、想定外燃料が使用された場合でも、入力トルクTinの推定精度が向上するようになり、これにより自動変速機30の油圧作動部に対する油圧制御を適切に行うことができるようになる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
(1)登降坂路を走行中の車両100にあってエンジン10で燃料噴射が実行されているときに得られる車両加速度である噴射時推定加速度Aonを、予め想定された燃料が使用されていることを前提にして機関運転状態に基づき算出される推定出力トルクTEと検出された路面の勾配Sとに基づいて算出するようにしている。そして、噴射時推定加速度Aonが算出されたときの車両100の実加速度Gである噴射時実加速度Gonと同噴射時推定加速度Aonとの乖離度合を示す第1乖離度合としての第1指標値Donを算出するようにしている。この第1指標値Donは、推定出力トルクTEと実際の出力トルクとの差を示す指標値になり、その値には、想定外燃料が使用されたときの機関出力の変化が反映される。そこで、本実施形態では、そうした第1指標値Donに基づいて想定外燃料の使用状態を診断するようにしており、これにより予め想定された燃料以外の想定外燃料についてその使用状態を診断することができるようになる。
【0048】
(2)登降坂路を走行中の車両100にあってエンジン10で燃料噴射が停止されているときに得られる車両加速度である噴射停止時推定加速度Aoffを、路面の勾配Sに基づいて算出するようにしている。そして、噴射停止時推定加速度Aoffが算出されたときの車両100の実加速度Gである噴射停止時実加速度Goffと同噴射停止時推定加速度Aoffとの乖離度合を示す第2乖離度合として第1指標値用補正値Doffを算出するようにしている。そして、その第1指標値用補正値Doffに基づいて第1指標値Donを補正するようにしている。これにより、補正された第1指標値Donからは各種の誤差成分が除去されて、推定出力トルクTEと実際の出力トルクとの差分成分のみが残るようになる。そして、このように補正された第1指標値Don(燃料診断値FD)に基づいて想定外燃料の使用状態の診断を行うようにしているため、想定外燃料の使用状態についてその診断精度を向上させることができるようになる。
【0049】
(3)想定外燃料の使用状態を診断する具体的な態様として、上記燃料診断値FDが予め設定された判定値α以上のときに、想定外燃料が使用されていると判定するようにしており、これにより想定外燃料が使用されているか否かについてそれを診断することができるようになる。
【0050】
(4)エンジン10から自動変速機30に伝達される入力トルクTinを推定出力トルクTEに基づいて算出し、その算出された入力トルクTinに基づいて自動変速機30の油圧作動部に供給する油圧を調整するようにしている。こうした自動変速機30の制御装置200において、上記噴射時実加速度Gonと上記噴射時推定加速度Aonとの乖離度合を示す第1乖離度合として上記係数Kを算出し、その係数Kに基づいて設定される補正値Pにて入力トルクTinを補正するようにしている。従って、想定外燃料が使用された場合でも、入力トルクTinの推定精度が向上するようになり、これにより自動変速機30の油圧作動部に対する油圧制御を適切に行うことができるようになる。
【0051】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・想定外燃料の使用状態を診断する具体的な態様として、想定外燃料が使用されているか否かを診断するようにした。この他、上述したように、機関燃料に対する想定外燃料の混合率が高くなるほど、車両100の噴射時実加速度Gonは上記噴射時推定加速度Aonから乖離するようになるため、第1指標値Donの絶対値は大きくなる。そこで、想定外燃料の使用状態を診断する具体的な態様として、想定外燃料の混合率Rを算出するようにしてもよい。この変形例は、図6に示すように、先の図2に示した燃料診断処理においてステップS180以降の処理を省略するとともに、燃料診断値FDに基づいて混合率Rを算出するステップS400の処理を追加することにより実施可能である。なお、ステップS300の処理では、図7に示すように、燃料診断値FDが大きくなるほど混合率Rが大きくなるように同混合率Rを算出するようにすればよい。
【0052】
・上述した入力トルクの補正処理では、噴射時推定加速度Aonと噴射時実加速度Gonとの乖離度合を示す第1乖離度合として係数Kを算出するようにしたが、これに代えて上記第1指標値Don(=噴射時推定加速度Aon−噴射時実加速度Gon)を利用するようにしてもよい。この場合には、図8に示すように、第1指標値Donが「0」のときには(噴射時推定加速度Aon=噴射時実加速度Gon)、実際の出力トルクと上記推定出力トルクTEとが一致しているため、補正値Pに「1」を設定する。
【0053】
そして、第1指標値Donが「0」よりも小さいときには(噴射時推定加速度Aon<噴射時実加速度Gon)、実際の出力トルクが上記推定出力トルクTEよりも大きくなっているため、第1指標値Donが「0」よりも小さくなるほど、補正値Pは「1」よりも大きい値になるように設定する。これにより推定出力トルクTEに基づいて算出される入力トルクTinは大きくなる方向に補正されて実際の出力トルクに応じた値になる。
【0054】
また、第1指標値Donが「0」よりも大きいときには(噴射時推定加速度Aon>噴射時実加速度Gon)、実際の出力トルクが上記推定出力トルクTEよりも小さくなっているため、第1指標値Donが「0」よりも大きくなるほど、補正値Pは「1」よりも小さい値になるように設定する。これにより推定出力トルクTEに基づいて算出される入力トルクTinは小さくなる方向に補正されて実際の出力トルクに応じた値になる。
【0055】
なお、同様な思想に基づき、第1指標値Donを上記第1指標値用補正値Doffで補正した値、たとえば第1指標値Donから第1指標値用補正値Doffを減算した値に基づいて上記補正値Pを算出するようにしてもよい。この場合には、上記変形例によるように、第1指標値Donを補正することなくそのまま利用して上記補正値Pを算出する場合と比較して、入力トルクTinの推定精度を向上させることが可能になる。
【0056】
・上記係数Kを次式(2)に基づいて算出するようにしてもよい。
係数K=第1指標値Don/第1指標値用補正値Doff …(2)
この場合にも、第1指標値Don(=噴射時推定加速度Aon−噴射時実加速度Gon)の値に応じて係数Kは変化するため、その係数Kに基づいて入力トルクTinの補正値を求めることができる。具体的には、実際の出力トルクと上記推定出力トルクTEとが一致しているときには(噴射時推定加速度Aon=噴射時実加速度Gon)、第1指標値Donが「0」になるため、係数Kも「0」になり、この場合には補正値として「1」を設定するようにすればよい。
【0057】
また、上記推定出力トルクTEよりも実際の出力トルクの方が大きくなっているときには(噴射時実加速度Gon>噴射時推定加速度Aon)、第1指標値Donが「0」よりも小さくなるため、係数Kは負の値になり、同係数Kの絶対値は、推定出力トルクTEと実際の出力トルクとの乖離度合に応じて大きくなる。従って、係数Kが負の値になるときには、その絶対値の大きさに応じて推定出力トルクTEが大きくなるように、補正値として「1」よりも大きい値を設定するようにすればよい。
【0058】
また、上記推定出力トルクTEよりも実際の出力トルクの方が小さくなっているときには(噴射時実加速度Gon<噴射時推定加速度Aon)、第1指標値Donが「0」よりも大きくなるため、係数Kは正の値になり、同係数Kの絶対値は、推定出力トルクTEと実際の出力トルクとの乖離度合に応じて大きくなる。従って、係数Kが正の値になるときには、その絶対値の大きさに応じて推定出力トルクTEが小さくなるように、補正値として「1」よりも小さい値を設定するようにすればよい。
【0059】
・上述した入力トルクの補正処理では、噴射時推定加速度Aonと噴射時実加速度Gonとの乖離度合を示す第1乖離度合として算出される係数Kに基づいて補正値を算出し、この補正値で入力トルクTinを直接補正するようにした。この他、上記推定出力トルクTEを係数Kに基づいて算出される補正値で補正することにより、結果として入力トルクTinが補正されるようにしてもよい。
【0060】
・第1指標値Donには、少なくとも想定外燃料の使用による機関出力の変化分が反映される。従って、上記実施形態では、第1指標値Donを上記第1指標値用補正値Doffで補正するようにしたが、より簡易的にはそうした補正を省略するようにしてもよい。この変形例は、上記ステップS140〜ステップS160の処理を省略するとともに、ステップS170では第1指標値Donの絶対値を上記燃料診断値FDとして設定することにより実施することができる。そして、この場合でも、想定外燃料の使用状態を診断することが可能になる。
【0061】
・第1指標値Donや第1指標値用補正値Doffを減算値として算出するようにしたが、除算値として算出するようにしてもよい。
・燃料噴射が実行されているか否かをアクセル操作量ACCPに基づいて判断するようにしたが、この他の値、例えば燃料噴射弁13への噴射指令値に基づいて判断するようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態における上記勾配検出手段は、上記基準加速度Gbから車両100の実加速度Gを減算した差分ΔGに基づいて勾配Sを推定するものであった。しかし、こうした勾配Sの推定態様は一例であり、他の態様で勾配Sを推定するようにしてもよい。また、勾配Sを推定するのではなく、角度センサ等によって勾配Sを実際に検出するようにしてもよい。
【0063】
・上記自動変速機30は、油圧作動部としてブレーキ30Bやクラッチ30Cと機構を備える変速機であったが、この他の変速機にも本発明は同様に適用可能である。例えば、2つのプーリとこれらプーリに巻き掛けられるベルトとを有し、各プーリの径を油圧で変更することにより無段階に変速段を変更する、いわゆる無段変速機にも本発明は同様に適用可能である。こうした無段変速機では、プーリに付与される油圧が機関出力に応じて変更されるため、本発明にかかる制御装置を適用することにより、想定外燃料が使用された場合でも、プーリに付与される油圧を適切に調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を具体化した一実施形態にあって、これが適用される車両の構成を説明する模式図。
【図2】同実施形態における燃料診断処理の手順を示すフローチャート。
【図3】機関回転速度及び機関負荷と推定出力トルクとの関係を示す概念図。
【図4】同実施形態における入力トルクの補正処理についてその手順を示すフローチャート。
【図5】係数に対応する補正値の設定傾向を示すグラフ。
【図6】同実施形態の変形例における燃料診断処理についてその一部の手順を示すフローチャート。
【図7】同変形例における燃料診断値と混合率との対応関係を示すグラフ。
【図8】同実施形態の変形例において、第1指標値に対応する補正値の設定傾向を示すグラフ。
【符号の説明】
【0065】
10…エンジン、11…吸気通路、12…スロットルバルブ、13…燃料噴射弁、14…燃料タンク、20…トルクコンバータ、30…自動変速機、30B…ブレーキ、30C…クラッチ、40…プロペラシャフト、50…デファレンシャルギヤ、70…車輪、100…車両、200…制御装置、300…クランク角センサ、310…吸入空気量センサ、320…スロットル開度センサ、340…車速センサ、350…アクセルセンサ、360…加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め想定された燃料以外の想定外燃料が内燃機関で使用されていることを診断する装置であって、
前記内燃機関を搭載した車両が登降坂路を走行しているときにその路面の勾配を検出する勾配検出手段と、
前記登降坂路を走行中の前記車両にあって前記内燃機関で燃料噴射が実行されているときに得られる車両加速度である噴射時推定加速度を、予め想定された燃料が使用されていることを前提にして機関運転状態に基づき推定される機関出力と検出された前記勾配とに基づいて算出する噴射時加速度推定手段と、
車両の実際の加速度である実加速度を検出する加速度検出手段と、
前記噴射時推定加速度が算出されたときの前記実加速度と同噴射時推定加速度との乖離度合を示す第1乖離度合を算出し、同第1乖離度合に基づいて前記想定外燃料の使用状態を診断する診断手段とを備える
ことを特徴とする機関用燃料診断装置。
【請求項2】
前記診断手段は、前記使用状態として前記想定外燃料の混合率を算出するものであり、前記混合率は、前記第1乖離度合が大きいときほど高くなるように算出される
請求項1に記載の機関用燃料診断装置。
【請求項3】
前記診断手段は、前記使用状態として前記想定外燃料が使用されているか否かを判定するものであり、前記第1乖離度合が予め設定された判定値以上のときに前記想定外燃料が使用されていると判定する
請求項1に記載の機関用燃料診断装置。
【請求項4】
前記登降坂路を走行中の前記車両にあって前記内燃機関で燃料噴射が停止されているときに得られる車両加速度である噴射停止時推定加速度を、検出された前記勾配に基づいて算出する噴射停止時加速度推定手段をさらに備え、
前記噴射停止時推定加速度が算出されたときの前記実加速度と同噴射停止時推定加速度との乖離度合を示す第2乖離度合を算出し、前記使用状態の診断に際しては、前記第2乖離度合に基づいて前記第1乖離度合を補正する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の機関用燃料診断装置。
【請求項5】
内燃機関から自動変速機に伝達される入力トルクを機関出力に基づいて推定し、その推定された入力トルクに基づいて前記自動変速機の油圧作動部に供給する油圧を調整する自動変速機の制御装置において、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の機関用燃料診断装置を備え、前記第1乖離度合に基づいて前記入力トルクを補正する
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−37987(P2010−37987A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199926(P2008−199926)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】