説明

液圧源装置

【目的】懸架シリンダにおける要求に合わせて、液圧源から作動液を供給可能とする。
【解決手段】懸架シリンダ10において、液圧が低い場合は高い場合より、車高を同じだけ大きくするのに要する作動液量は多くなる。それに対して、ポンプ装置68において、出力部76の液圧が低い場合は切換弁66は第1位置にあり、2つのポンプ60,61が並列接続状態とされる。2つのポンプ60,61の各々において汲み上げられて吐出された作動液が懸架シリンダ10に供給されるのであり、大流量で作動液を供給することができる。その結果、懸架シリンダ10における要求を速やかに満たすことができる。出力部76の液圧が設定圧以上になると切換弁66は第2位置に切り換えられ、2つのポンプ60,61が直列接続状態とされる。ポンプ装置68から吐出される作動液の流量は小さくなるが、最大吐出圧を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧アクチュエータに接続された液圧源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1つのポンプと、そのポンプを駆動するポンプモータとを備えた液圧源を含む液圧源装置が記載されている。この液圧源装置から、作動液が、車両の車輪に対応して、前記車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられた液圧アクチュエータとしての懸架シリンダに供給されると、車輪保持装置と車体との相対位置関係である車高が大きくされる。
【特許文献1】特開2005−88766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、液圧アクチュエータにおける要求に合わせて、作動液を供給可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、請求項1の発明によれば、車両に設けられて、液圧により作動させられる液圧アクチュエータに接続される液圧源装置に接続される液圧源装置であって、(i)複数個のポンプと、それら複数個のポンプを駆動する1つ以上の電動モータとを含む液圧源と、(ii)前記複数個のポンプのうちの2つのポンプについて、それら2つのポンプの各々とそれらポンプに対応する前記電動モータとの間の接続状態と、前記2つのポンプの間の接続状態との少なくとも一方を変えることにより、前記液圧源からの作動液の吐出状態を、少なくとも、流量が小さく最大吐出圧が高い高圧少量吐出状態と、その高圧少量吐出状態より、流量が大きく最大吐出圧が低い低圧多量吐出状態とに制御する吐出状態制御装置とを含むものとされる。
【0005】
請求項1に記載の液圧源装置においては、液圧源が複数個のポンプを含む。そして、複数個のポンプのうちの2つについて、2つのポンプの接続状態を変えたり、2つのポンプの各々と電動モータとの間の接続状態を変えたりすることにより、少なくとも高圧少量吐出状態と低圧多量吐出状態とに制御される。
それに対して、液圧アクチュエータにおいては、作動量が同じ場合に、液圧が低い場合は高い場合より多量の作動液が必要となることが多い。液圧アクチュエータの液圧が低い場合に高い場合より、作動が速やかに行われるようにするためには、大流量での作動液の供給が要求される。そこで、液圧アクチュエータの液圧が低い場合に低圧多量吐出状態とし、液圧が高い場合に高圧少量吐出状態とすれば、液圧源から液圧アクチュエータに、液圧アクチュエータの作動要求に合わせて作動液を供給することが可能となる。
液圧源にはポンプが2つ含まれるようにしても、3つ以上含まれるようにしてもよい。また、これら複数のポンプはポンプモータである電動モータによって駆動されるのであるが、ポンプと電動モータとは1対1に対応して設けられても、多対1に対応して設けられてもよい。2つ以上のポンプが1つの共通の電動モータによって駆動されるようにしてもよいのである。さらに、ポンプとポンプモータとが1対1に対応して設けられる場合、複数のポンプの作動能力は同じであっても異なってもよい。電動モータの能力、ポンプの1回転当たりの作動液の吐出量等を異ならせることによって、複数のポンプの間で、最大吐出圧を異ならせたり、吐出流量を異ならせたりすることができる。
吐出状態制御装置は、複数のポンプのうちの2つのポンプについて、互いの接続状態と、ポンプと電動モータとの間の接続状態との少なくとも一方(以下、2つのポンプについての接続状態と称する)を制御するが、液圧源に2つのポンプが含まれる場合には、液圧源に含まれるすべてのポンプについての接続状態が制御されることになるが、3つ以上のポンプが含まれる場合には、残りの1つのポンプと他のポンプとの接続状態等は制御対象とされてもされなくてもよい。
2つのポンプの接続状態は、並列接続状態と直列接続状態とのいずれかに切り換えられる。また、2つのポンプが1つの共通の電動モータによって駆動される場合において、2つのポンプの各々と電動モータとの間の接続状態が、2つのポンプの両方に電動モータの駆動力が伝達される両駆動力伝達状態と、いずれか一方に電動モータの駆動力が伝達されるが他方には伝達されない一駆動力伝達状態とに切り換えられる。一駆動力伝達状態においては両駆動力伝達状態における場合より、出力側の液圧が同じ場合に、電動モータに加わる負荷を小さくすることができ、それによって、ポンプから吐出可能な作動液の最大吐出圧を大きくすることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)車両に設けられて、液圧により作動させられる液圧アクチュエータに接続される液圧源装置であって、
複数個のポンプと、それら複数個のポンプを駆動する1つ以上の電動モータとを含む液圧源と、
前記複数個のポンプのうちの2つのポンプについて、それら2つのポンプの各々とそれらポンプに対応する前記電動モータとの間の接続状態と、前記2つのポンプの間の接続状態との少なくとも一方を変えることにより、前記液圧源からの作動液の吐出状態を、少なくとも、流量が小さく最大吐出圧が高い高圧少量吐出状態と、その高圧少量吐出状態より、流量が大きく最大吐出圧が低い低圧多量吐出状態とに制御する吐出状態制御装置と
を含むことを特徴とする液圧源装置(請求項1)。
(2)前記液圧源制御装置が、前記高圧少量吐出状態と低圧多量吐出状態との少なくとも一方の状態において、前記電動モータへの供給電流を制御することにより、吐出状態を制御するモータ電流制御部を含む(1)項に記載の液圧源装置。
高圧少量吐出状態と低圧多量吐出状態との少なくとも一方において、電動モータへの供給電流が制御されるようにすれば、少なくとも一方の状態において、作動液の吐出流量の大きさを制御することが可能となり、液圧源からの作動液の吐出状態をより細かに制御することが可能となる。
(3)前記吐出状態制御装置が、前記2つのポンプを互いに並列に接続することにより前記低圧多量吐出状態とし、前記2つのポンプを互いに直列に接続することにより前記高圧少量吐出状態とする並列・直列接続状態切換部を含む(1)項または(2)項に記載の液圧源装置(請求項2)。
(4)前記2つのポンプの各々が、それぞれ、個別の電動モータに接続された(3)項に記載の液圧源装置。
2つのポンプの各々が、それぞれ、個別の電動モータによって駆動される場合において、2つのポンプが互いに並列に接続されれば、直列に接続される場合に比較して、最大吐出圧は低くなるが、吐出流量が大きくなる。このように、2つのポンプの接続状態を切り換えることにより、液圧源からの作動液の吐出状態を制御することが可能となる。
(5)前記並列・直列接続状態切換部が、前記2つのポンプの間に設けられ、前記液圧源から吐出される作動液の吐出圧が設定圧より高くなると、それら2つのポンプを互いに並列に接続する並列接続状態から互いに直列に接続する直列接続状態に切り換える1つ以上のパイロット式の切換弁を含む(3)項または(4)項に記載の液圧源装置(請求項3)。
前述のように、液圧アクチュエータにおいては、液圧が低い場合は高い場合より、大流量での作動液の供給が要求されるのが普通である。また、液圧アクチュエータと液圧源とが連通状態にある場合には、液圧アクチュエータの液圧と液圧源の出力液圧とは同じである。そこで、液圧源の出力液圧(液圧アクチュエータの液圧)が設定圧より低い場合に低圧多量吐出状態とし、設定圧より高い場合に高圧少量吐出状態とすれば、液圧源から液圧アクチュエータに、液圧アクチュエータの作動要求に合わせて作動液を供給することができる。
この場合に、切換弁を電磁弁とすることも可能であるが、パイロット式の弁とすれば電磁弁とする場合より、消費エネルギの低減を図ることができる。それに対して、切換弁を電磁弁とすれば、任意の時期に並列接続状態と直列接続状態とに切り換えることが可能となる。また、切換弁は1つの場合と2つ以上の場合とがある。1つの切換弁の切り換えにより2つのポンプが並列接続状態と直列接続状態とに切り換えられる場合と、2つ以上の切換弁の切り換えにより、並列接続状態と直列接続状態とに切り換えられる場合とがある。
なお、液圧源が3つのポンプを含む場合において、2つのポンプが並列接続状態とされた場合には、3つのポンプが互いに並列に接続される場合、互いに並列な2つのポンプと1つのポンプとが直列に接続される場合等がある。また、2つのポンプが直列接続状態とされた場合には、3つのポンプが互いに直接に接続される場合、直列な2つのポンプと1つのポンプとが互いに並列に接続される場合等がある。
(6)前記2つのポンプのうちの一方が設けられた一方のポンプ通路と、他方のポンプが設けられた他方のポンプ通路とが互いに並列に接続され、前記切換弁が、前記一方のポンプ通路の前記一方のポンプの吐出側の部分と前記他方のポンプ通路の前記他方のポンプの吸入側の部分とを接続する連結通路と、前記一方のポンプ通路との間に設けられ、パイロット圧が予め定められた設定圧より低い場合に、前記一方のポンプの吐出側を前記連結通路から遮断して前記液圧源の出力部に連通させる第1位置にあり、前記パイロット圧が前記設定圧以上になると、前記一方のポンプの吐出側を前記出力部から遮断して前記連結通路に連通させる第2位置に切り換わるものである(5)項に記載の液圧源装置。
切換弁の第1位置において、2つのポンプによって汲み上げられた作動液は出力部を経て吐出される。この状態が並列接続状態である。切換弁の第2位置において、一方のポンプから吐出された作動液は他方のポンプによって汲み上げられて吐出される。この状態が直列接続状態である。他方のポンプの吸入側の前記連結通路より低圧側には、一方のポンプから吐出された作動液の低圧側への流れを阻止する阻止装置(開閉弁や逆止弁)が設けられる。
(7)前記並列・直列接続状態切換部が、前記低圧多量吐出状態において前記複数個のすべてのポンプを互いに並列に接続し、前記高圧少量吐出状態において前記複数個のすべてのポンプを互いに直列に接続するものである(3)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の液圧源装置(請求項4)。
本項に記載の液圧源装置においては、液圧源に含まれる複数のポンプの接続状態がすべて制御対象とされる。そして、低圧多量吐出状態においては、複数のポンプのすべてが並列に接続され、高圧少量吐出状態においては、すべてのポンプが直列に接続される。
(8)前記2つのポンプが1つの共通の電動モータに接続された(1)項または(2)項に記載の液圧源装置。
(9)前記吐出状態制御装置が、(i)前記低圧多量吐出状態において、前記2つのポンプを互いに並列に接続する並列接続部と、(ii)前記高圧少量吐出状態において、(a)前記2つのポンプのうちの一方と前記共通の電動モータから遮断するポンプ停止部と、(b)前記2つのポンプのうちの一方の吐出側をその一方のポンプの吸入側に戻す循環通路を形成する循環通路形成部とのいずれか一方とを含む(8)項に記載の液圧源装置(請求項5)。
2つのポンプは互いに並列に接続されている。2つのポンプが作動状態にある場合には、2つのポンプの各々において、低圧側から作動液が汲み上げられて吐出される。液圧源からは、これら2つのポンプの各々から吐出された作動液が合わせて出力される。
2つのポンプは1つの電動モータによって駆動されるのであるが、本項に記載の液圧源装置においては、2つのポンプが1つの電動モータによって駆動される両駆動伝達状態と、1つのポンプが駆動されるが他のポンプは駆動されない一駆動伝達状態状態とに切り換えられる。両駆動伝達状態においては、並列接続状態にある2つのポンプが駆動される。両駆動伝達状態と一駆動伝達状態とでは、一駆動伝達状態における場合の方が、電動モータに加わる負荷を小さくすることができる。その結果、吐出流量は小さくなるが、最大吐出圧を大きくすることが可能となる。
例えば、1つの電動モータと2つのポンプのうちの一方との間にクラッチを設け、そのクラッチの切り換えにより、電動モータの出力軸と一方のポンプの駆動軸との連結・切断が切り換えられるようにすることができる。他方のポンプと電動モータとの間を駆動力伝達状態に保って、一方のポンプと電動モータとの間を駆動力伝達状態と、駆動力非伝達状態との間で切り換えられるようにすれば、両駆動力伝達状態と一駆動力伝達状態とに切り換えることができる。なお、クラッチは、1つの電動モータと2つのポンプの各々との間にそれぞれ設けても、いずれか一方のポンプとの間に設けてもよい。いずれか一方のポンプとの間に設ければ、その一方のポンプが作動させられたり、停止させられたりする。2つのポンプとの間にそれぞれ設ければ、2つのポンプのうちの一方が選択的に停止させられる。また、クラッチは、電磁クラッチとしても、油圧クラッチとしてもよい。
また、2つのポンプのうちの一方について、吐出側と吸入側とを接続する戻し通路を設け、戻し通路と液圧源の出力部との間に、一方のポンプの吐出側を出力部に連通させる状態と出力部から遮断して戻し通路に連通させる状態とに切り換え可能な切換弁を設けることができる。切換弁により、一方のポンプの吐出側が出力部に連通させられれば、2つのポンプは並列接続状態とされ、一方のポンプの吐出側が戻し通路に連通させられれば、そのポンプによって吐出される作動液は循環させられることになり、そのポンプの作動が無効にされる。電動モータによって他方のポンプのみが作動させられることになるため、電動モータに加わる負荷を小さくすることが可能となる。
(10)前記循環通路形成部が、前記互いに並列に接続された2つのポンプのうちの一方において、吐出側と吸入側とを接続する戻し通路と前記液圧源の出力部との間に、前記一方のポンプの吐出側を前記戻し通路から遮断して前記出力部に連通させる出力許容状態と、前記出力部から遮断して前記戻し通路に連通させる作動液戻し状態とに、前記液圧源の吐出液圧により切り換える1つ以上のパイロット式の切換弁を含む(9)項に記載の液圧源装置。
(11)前記液圧源が、前記2つ以上のポンプから吐出される作動液を加圧した状態で蓄える蓄圧用アキュムレータを含む(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の液圧源装置。
液圧源が蓄圧用アキュムレータを含む場合に、蓄圧用アキュムレータと液圧源との連通状態で、液圧源が作動させられる場合には、液圧アクチュエータに作動液が供給されるとともに蓄圧用アキュムレータにも作動液が供給される。蓄圧用アキュムレータにおいても液圧アクチュエータにおける場合と同様に、蓄圧用アキュムレータの液圧を同じだけ高くするのに、蓄圧用アキュムレータの液圧が低い場合は高い場合より多量の作動液が必要であり、懸架シリンダに作動液を供給する場合の要求と同じとなる。その意味においても、液圧源からの作動液の吐出状態が低圧多量吐出状態と高圧少量吐出状態とに切り換え可能とすることは妥当なことである。
逆に、蓄圧用アキュムレータが不要となるという利点もある。例えば、液圧アクチュエータを作動させる場合に、液圧アクチュエータに蓄圧用アキュムレータを連通させるとともに液圧源を作動させれば、液圧アクチュエータに大流量で作動液を供給することができるが、液圧源の作動液吐出状態を低圧多量吐出状態とすれば、蓄圧用アキュムレータを設けなくても大流量で作動液を供給することが可能となるからである。
(12)前記液圧源と前記液圧アクチュエータとがともに、前記車両に設けられた複数の作動装置のうちの1つに設けられた(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の液圧源装置。
車両には、例えば、ブレーキ装置、車高調整装置等の作動装置が複数設けられるが、当該液圧源装置はこれら作動装置のうちの1つに設けられる。液圧源装置がブレーキ装置に設けられる場合には、複数の車輪に対応して設けられたブレーキシリンダが液圧アクチュエータに相当し、液圧源装置が車高調整装置に設けられる場合には、複数の車輪に対応して設けられた懸架シリンダが液圧アクチュエータに相当する。作動装置には、作動が同じ(種類が同じ)複数の液圧アクチュエータが含まれる。また、液圧源装置は、ステアリング装置に設けることもできる。この場合には、パワーステアリング機構が液圧アクチュエータに対応する。
(13)前記液圧源が、車両に設けられた複数の作動装置のうちの2つ以上に共通に設けられ、前記液圧アクチュエータが、前記液圧源を共通にする2つ以上の作動装置に設けられたものである(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の液圧源装置。
当該液圧源装置は、例えば、ブレーキ装置と車高調整装置とに共通に設けることができる。この場合には、ブレーキシリンダおよび懸架シリンダが液圧アクチュエータに相当する。例えば、懸架シリンダとブレーキシリンダとのうち少なくとも一方において低圧で多量の作動液が要求される場合には低圧多量吐出状態とし、少なくとも一方が高圧で少量の作動液が要求される場合には高圧少量吐出状態とすることができる。液圧源装置を共通にする作動装置には、種類が異なる複数の液圧アクチュエータが含まれる(4つのブレーキシリンダおよび4つの懸架シリンダ)。
(14)前記液圧アクチュエータが、前記車両の車輪に対応して、前記車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられた懸架シリンダであり、前記液圧源装置が、前記懸架シリンダに作動液を供給して、前記車輪と前記車体との上下方向の相対位置関係である車高を大きくする作動液供給装置を含む(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の液圧源装置(請求項6)。
本項に記載の液圧源装置は車高調整装置に適用される。懸架シリンダは、車輪保持装置と車体との間に、サスペンションスプリングとともに設けられる。懸架シリンダにおいて、その車輪に加わる荷重が同じ場合において、車高が小さい場合は大きい場合より液圧が低くなる。そのため、車高が小さい場合と大きい場合とで、車高増加量を同じにする場合には、車高が小さい場合の方が多量の作動液が必要となる。そのため、車高が小さい場合に、低圧多量吐出状態とし、車高が大きい場合に、高圧少量吐出状態とすれば、車高調整の要求を良好に満たすことができる。
このように、液圧源を複数のポンプを含むものとすれば、懸架シリンダにおける作動液の要求を速やかに満たすことが可能となり、蓄圧用アキュムレータをなくしたり、小型化したりすることが可能となる。
【0008】
(15)車両の車輪に対応して、前記車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられた懸架シリンダと、
作動液を前記懸架シリンダに供給して、前記車輪と前記車体との上下方向の相対位置関係である車高を大きくする作動液供給装置と
を含む車高調整装置であって、
前記作動液供給装置が、作動液を汲み上げて吐出するポンプを複数個含むことを特徴とする車高調整装置。
車高調整装置の作動液供給装置に複数のポンプを設ければ、懸架シリンダにおける作動要求を速やかに満たすことが可能となる。
なお、本項に記載の車高調整装置には、(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(16)前記作動液供給装置が、前記複数のポンプの作動状態を制御することにより、前記懸架シリンダの液圧が予め定められた設定圧より低い場合に設定圧以上である場合より、作動液の流量を大きくする供給流量制御部を含む(15)項に記載の車高調整装置。
懸架シリンダの液圧が低い場合は高い場合より、大きな流量での作動液の供給が要求される。そのため、液圧が設定圧より低い場合に流量を大きくすることは妥当なことである。作動液供給装置から出力される作動液の流量は、ポンプを駆動するポンプモータへの供給電流を制御する(例えば、供給電流の大きさを制御したり、供給電流のON/OFFを制御したりする)ことによって制御することができる。また、流量は3段階以上に切り換えられるようにしたり、連続的に切り換えられるようにしたりすることも可能である。
なお、懸架シリンダの液圧は、車輪に加わる荷重が同じである場合には、車高が大きい場合は小さい場合より大きくなるため、車高が設定値より小さい場合に設定値以上である場合より、流量が大きくなるようにすることもできる。
(17)車両に設けられ、液圧により作動させられる液圧アクチュエータに接続された液圧源装置であって、
3つ以上のポンプと、それら3つ以上のポンプを駆動する1つ以上のポンプモータとを含む液圧源と、
その液圧源から出力される作動液の吐出流量と吐出圧との少なくとも一方を制御する液圧源制御装置と
を含むことを特徴とする液圧源装置。
液圧源において、(i)3つのポンプが互いに並列な状態、2つの互いに並列なポンプと1つのポンプとが直列に接続された状態、3つのポンプが互いに直列な状態に切り換えることができる。また、(ii)2つのポンプが停止させられた状態、1つのポンプが停止させられた状態、3つのポンプが作動させられた状態に切り換えることができる。さらに、それぞれの状態において、ポンプモータの制御により、ポンプの回転速度を制御することが可能となる。それによって、液圧源から液圧アクチュエータへの作動液の供給状態をきめ細かに制御することが可能となる。
なお、本項に記載の液圧源装置には、(1)項ないし(16)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の一実施例としての車高調整装置を、図面に基づいて詳細に説明する。本車高調整装置には、本発明の一実施例としての液圧源制御装置が含まれる。
本サスペンション装置は、図1に示すように、前後左右輪4FL、FR、RL、RRの各々において、車輪4を保持する車輪保持装置6FL、FR、RL、RRと車体8との間に、それぞれ、液圧アクチュエータとしての懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRがサスペンションスプリング21とともに設けられる。懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは作動液により作動させられる。以下、懸架シリンダ10等を車輪位置で区別する必要がある場合には、車輪位置を表す符号FL、FR、RL、RRを付して使用し、区別する必要がない場合に符号を付さないで使用する。
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは、互いに構造が同じものであり、それぞれ、ハウジング11と、ハウジング11の内部を相対移動可能に嵌合されたピストン12と、ピストンロッド14とを含み、ピストンロッド14が車体8に、ハウジング11が車輪保持装置6に、それぞれ上下方向に相対移動不能に連結される。ピストン12には、そのピストン12により仕切られた2つの液室16,18を連通させる連通路20が設けられ、連通路20には絞りが設けられる。絞りにより、ピストン12のハウジング11に対する相対移動速度(絞りを流れる作動液の流速)に応じた減衰力が発生させられる。懸架シリンダ10はショックアブソーバとして機能する。
【0010】
図1に示すように、ピストンロッド14は、サスペンションスプリング21を保持するスプリングリテーナ22にゴム等の弾性部材を介して取り付けられ、スプリングリテーナ22が車体8に上下方向に相対移動不能に取り付けられる。また、スプリングリテーナ22には、バウンド側ストッパ24が取り付けられる。バウンド側ストッパ24にシリンダ本体11の外側上端面26が当接することによってバウンド側の移動限度が規定される。
それに対して、ピストン12のピストンロッド14が設けられた側にはリバウンド側ストッパ28が設けられる。リバウンド側ストッパ28に本体11の内側上端面30が当接することにより、リバウンド側の移動限度が規定される。
【0011】
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液室16には、それぞれ、個別制御通路32FL、FR、RL、RRが接続される。
個別制御通路32FL、FR、RL、RRの各々には、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの各々に対応して、互いに並列にアキュムレータ34FL、FR、RL、RRとアキュムレータ36FL、FR、RL、RRとが接続される。また、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRとアキュムレータ36FL、FR、RL、RRとの間には、それぞればね定数切換弁38FL、FR、RL、RRが設けられる。
【0012】
これらアキュムレータ34、36は、いずれもばねとしての機能を有するものであり、例えば、ハウジングとそのハウジングの内側を仕切る仕切部材とを含み、その仕切部材の一方の容積変化室に個別制御通路32が連通させられ、他方の容積変化室に弾性体が設けられたものであり、一方の容積変化室の容積の増加に起因して他方の容積変化室の容積が減少し、それによって弾性力を発生させるものとすることができる。アキュムレータ34,36は、ベローズ式のものとしたり、ブラダ式のものとしたり、ピストン式のものとしたりすること等ができる。
本実施例においては、アキュムレータ34の方がアキュムレータ36よりばね定数が大きいものとされており、以下、アキュムレータ34を高圧アキュムレータと称し、アキュムレータ36を低圧アキュムレータと称する。ばね定数切換弁38は、常開の電磁開閉弁である。
【0013】
個別制御通路32FL、FR、RL、RRには、それぞれ、可変絞り40FL、FR、RL、RRが設けられる。前述のように、車輪保持装置6の車体8に対する相対的な上下動により液室16において作動液が流入・流出させられるが、この場合に、可変絞り40によって個別制御通路32の流路面積が制御されることにより、懸架シリンダ10において発生させられる減衰力が制御される。本実施例においては、可変絞り40等により減衰力調整機構が構成される。
【0014】
個別制御通路32FL、FR、RL、RRには作動液給排装置50が接続される。
作動液給排装置50は、高圧源52、低圧源54としてのリザーバ、個別制御弁装置58等を含む。
高圧源52は、2つのポンプ60,61と、ポンプ60,61にそれぞれ対応して設けられたポンプモータ63,64と、切換弁66とを備えたポンプ装置68、蓄圧用アキュムレータ70等を含む。ポンプ装置68,蓄圧用アキュムレータ70等は制御通路71に設けられ、ポンプ装置68と蓄圧用アキュムレータ70とは互いに接続される。ポンプ60,61によってリザーバ54の作動液が汲み上げられて吐出され、蓄圧用アキュムレータ70において加圧した状態で蓄えられたり、懸架シリンダ10FR、FL、RR、RLに供給されたりする。
ポンプ装置68において、2つのポンプ60,61は、それぞれ、ポンプ通路72,73に同じ状態で設けられる。2つのポンプ通路72,73は、リザーバ54と制御通路71との間に互いに並列に設けられるのであり、2つのポンプ60,61は互いに並列に接続される。また、ポンプ通路72のポンプ60の吐出側の部分と、ポンプ通路73のポンプ61の吸入側の部分とは連結通路74によって接続され、その連結通路74とポンプ通路72との間に切換弁66が設けられる。
切換弁66は、ポンプ60の吐出側を、ポンプ装置68の出力部76に連通させて連結通路74から遮断する第1位置と、ポンプ60の吐出側を出力部76から遮断して連結通路74に連通させる第2位置とに、出力部76の液圧により切り換わるパイロット式の切換弁である。また、ポンプ通路73のポンプ61の吸入側の連結通路74との接続部77よりリザーバ側の部分には、リザーバ54からの作動液の流出は許容するが、リザーバ54への作動液の流入を阻止する逆止弁78が設けられる。逆止弁78により、ポンプ60から吐出された作動液が連結通路74,ポンプ通路73を経てリザーバ54に戻されることが回避され、ポンプ61の作動状態において、ポンプ60から吐出された作動液はポンプ61によって汲み上げられて吐出される。
【0015】
出力部76の液圧が予め定められた設定圧P0より低い場合には、切換弁66は、図示する第1位置にあり、ポンプ60の吐出側が連結通路74から遮断される。ポンプ60,ポンプ61とは並列接続状態とされ、ポンプ60,61は、それぞれ、リザーバ54から作動液を汲み上げて吐出する。ポンプ60から吐出された作動液とポンプ61から吐出された作動液との両方が出力部76を経て供給される。
出力部76の液圧が設定圧P0以上になると、切換弁66が第2位置に切り換わり、ポンプ60の吐出側が出力部76から遮断されて、ポンプ61の吸入側に連通させられる。ポンプ60,61は直列接続状態とされる。リザーバ54からポンプ60によって汲み上げられて吐出された作動液は、連結通路74を経てポンプ61の吸入側に供給される。ポンプ60から吐出された作動液は、ポンプ61によって汲み上げられて加圧されて吐出される。
このように、2つのポンプ60,61の並列接続状態と直列接続状態とでは、並列接続状態における方が、出力部76から出力される作動液の流量が大きくなり、直列接続状態における方が、最大吐出圧が大きくなる。並列接続状態が低圧多量吐出状態に対応し、直列接続状態が高圧少量吐出状態に対応する。
本実施例において、ポンプ60,61はいずれもギヤポンプであり、ポンプ60,61およびポンプモータ63,64は同じ能力を備えたものである。換言すれば、2つのポンプモータ63,64は、いずれも同じ定格のものなのであり、ポンプ60,61は、いずれも、1回転当たりの作動液の吐出量が同じものである。
【0016】
また、蓄圧用アキュムレータ70は、ハウジングとそのハウジングの内側を仕切る仕切部材とを含むものである。仕切部材の一方の容積変化室(作動液収容室と称する)に制御通路71が接続され、他方の容積変化室(弾性力発生室)に弾性体が設けられる。蓄圧用アキュムレータ70は、例えば、ピストン式のものとすることができるがそれに限らない。
蓄圧用アキュムレータ70は常閉の電磁開閉弁である蓄圧制御弁90を介して制御通路71に接続される。
蓄圧制御弁90は、蓄圧用アキュムレータ70における作動液の流入・流出を許容する許容状態(蓄圧制御弁90の開状態に対応する)と蓄圧用アキュムレータ70における作動液の流入・流出を阻止する阻止状態(蓄圧制御弁90の閉状態に対応する)とに切り換え可能なものである。開状態において、蓄圧用アキュムレータ70からの作動液の流出、ポンプ装置68からの作動液の流入が許容され、閉状態において、作動液の流出も、流入も阻止される。
制御通路71には液圧源液圧センサ92が設けられる。液圧源液圧センサ92は、ポンプ装置68の吐出液圧を検出したり、アキュムレータ液圧を検出したりする。また、液圧源液圧センサ92による検出液圧は、制御通路71に懸架シリンダ10が連通させられている場合には、懸架シリンダ10の液圧と同じである。
制御通路71の出力部76より懸架シリンダ側には、逆止弁94,消音用アキュムレータ96が設けられる。また、ポンプ装置68の高圧側と低圧側とを接続する流出通路104が設けられ、流出通路104に流出制御弁106が設けられる。
流出制御弁106は、ポンプ装置68の吐出液圧をパイロット圧とするメカ式の開閉弁である。ポンプ装置68の非作動時には連通状態にあるが、ポンプ装置68の作動により吐出液圧が高くなると遮断状態とされる。
【0017】
個別制御弁装置58は、個別制御通路32FL、FR、RL、RRに設けられた車高調整弁としての個別制御弁110FL、FR、RL、RRを含む。また、個別制御通路32FL、FRを接続する前輪側左右連通路111に左右連通弁112が設けられ、個別制御通路32RL、RRを接続する後輪側左右連通路113に左右連通弁114が設けられる。
これら車高調整弁110FL、FR、RL、RR、左右連通弁112,114は、常閉の電磁開閉弁であり、左右連通弁112,114の閉状態において車高調整弁110FL、FR、RL、RRを個別に制御することにより、各車輪4FL、FR、RL、RRの各々において、車輪保持装置6FL、FR、RL、RRとそれに対応する車体8の部分(懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRに対応する部分)との間の距離である車高が独立に制御可能とされる。
【0018】
本車高調整装置は、コンピュータを主体とする車高調整ECU150によって制御される。車高調整ECU150は、実行部154,記憶部156,入出力部158等を含み、入出力部158には、ばね定数切換弁38、可変絞り40のコイル、作動液給排装置50(蓄圧用制御弁90,車高調整弁110,左右連通弁112、114のコイル、ポンプモータ63,64等)が図示しない駆動回路を介して接続されるとともに、液圧源液圧センサ92,前後左右の各輪毎に設けられ、車高をそれぞれ検出する車高センサ160,車高調整モード選択スイッチ164,車高調整指示スイッチ166,車高調整要求有無検出装置168等がそれぞれ接続される。
車高調整モード選択スイッチ164は、運転者によって操作されるものであり、スイッチ164の操作により、自動モードとマニュアルモードとのいずれか一方が選択される。
車高調整指示スイッチ166は、車高を増大させる場合、車高を減少させる場合等に運転者によって操作される。
車高調整要求有無検出装置168は、車両の走行状態を検出したり、運転者の発進意図を検出したり、乗員の乗降の可能性を検出したりするものであり、これらに基づいて車高調整要求の有無が検出される。車高調整要求有無検出装置168は、例えば、イグニッションスイッチ、シフト位置センサ、車速センサ等を含む。
記憶部156には、車高調整プログラム等の複数のプログラムが記憶される。
【0019】
以上のように構成された車高調整装置における作動について説明する。
懸架シリンダ10の各々において、減衰特性が可変絞り40の制御により制御される。
可変絞り40により個別制御通路32の流路面積が小さくされた場合には、サスペンションの硬さがハード(車輪と車体との上下方向の相対移動速度が同じ場合の減衰力が大きくなる状態)となり、流路面積が大きくされた場合にはソフト(相対移動速度が同じ場合の減衰力が小さくなる状態)となる。サスペンションの硬さは、図示しないモード選択スイッチの運転者による操作に応じて切り換えられるが、車両の走行状態に基づいて制御されるようにすることもできる。
また、ばね定数切換弁38の制御によりばね定数が切り換えられる。
ばね定数切換弁38が連通状態とされた場合には、液室16に2つのアキュムレータ34,36が連通させられて、ばね定数が小さい状態とされ、ばね定数切換弁38が遮断状態とされた場合には、液室16から低圧アキュムレータ36が遮断されて高圧アキュムレータ34が連通させられるため、ばね定数が大きい状態とされる。
【0020】
4つの車輪4FL,FR,RL,RRに対応する車高が作動液給排装置50の制御により制御される。
車高調整モード選択スイッチ164によって自動モードが選択された場合において、予め定められた条件が満たされた場合(車高調整要求検出装置168によって車高調整要求が有ると検出された場合)にそれに応じて車高が変化させられ、マニュアルモードが選択された場合において、車高調整指示スイッチ166が操作された場合には、その指示に応じて変化させられる。例えば、自動モードが選択された場合において、車両が停止した後に、イグニッションスイッチがON状態からOFF状態に切り換えられた場合には、乗員が降車する可能性があるとされて、車高が小さくされる。また、イグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切り換えられ、かつ、シフト位置がパーキング位置からドライブ位置に切り換えられる等の発進意図が検出された場合には、車高が大きくされ、走行に適した高さとされる。
左右連通弁112,114、車高調整弁110は、通常は、図示する原位置にある。
例えば、左前輪4FLについて車高を大きくする場合には、ポンプ装置68が作動させられ、蓄圧制御弁90が連通状態とされ、車高調整弁110FLが連通状態とされる。ポンプ装置68の作動により流出制御弁106が閉状態に切り換えられるため、ポンプ装置68から吐出された作動液が懸架シリンダ10FLに供給され、車高が大きくなる。懸架シリンダ10FLには、蓄圧用アキュムレータ70からも作動液が供給される。左前輪4FLについて、実際の車高が目標値に達すると、車高調整弁110FLが遮断状態とされ、ポンプ装置68の作動が停止させられる。
車高を小さくする場合は、車高調整弁110FLが連通状態とされる。ポンプ装置68は停止状態にあるため、流出制御弁106は連通状態にある。懸架シリンダ10FLからリザーバ74に作動液が流出させられる。実際の車高が目標値に達すると、車高調整弁110FLが遮断状態とされる。
本実施例においては、前述のように、懸架シリンダ10が車輪保持装置6と車体8との間に、サスペンションスプリング21と並列に設けられる。そのため、車輪4に加わる荷重が一定であると仮定すれば、図2に示すように、車高が大きくなると、サスペンションスプリング21が受ける力(弾性力)が小さくなるため、懸架シリンダ10の液圧(以下、単にシリンダ液圧と略称する)が高くなる。なお、図2には、1輪について、懸架シリンダ10の液圧の変化と車高の変化との関係を示す。
【0021】
また、車高を大きくする車高調整が行われる場合には、蓄圧制御弁90が開状態とされる。車高調整の開始当初においては、蓄圧用アキュムレータ70とポンプ装置68との両方から懸架シリンダ10に作動液が供給されるが、車高調整の途中に蓄圧用アキュムレータ70に蓄えられた作動液がなくなると、ポンプ装置68から吐出された作動液は懸架シリンダ10にも蓄圧用アキュムレータ70にも供給される。
図3に示すように、蓄圧用アキュムレータ70に作動液を蓄える場合に、蓄圧用アキュムレータ70の液圧が低い場合は高い場合より、液圧を同じだけ高くするのに必要な作動液量は多くなる。この事情は、懸架シリンダ10においても同様であり、車高を大きくする車高調整において、懸架シリンダ10の液圧が低い場合は、高い場合より、車高を同じだけ大きくするのに必要な作動液量は多くなる。換言すれば、懸架シリンダ10の液圧が低い場合は高い場合より、車高調整要求を速やかに満たす場合には、大きな流量で作動液が供給されることが要求される。
【0022】
このように、懸架シリンダ10,蓄圧用アキュムレータ70においては、図4の細線A[必要特性]が示すように、液圧が低い場合は高い場合より大きな流量での作動液の供給が要求される。
この場合に、ポンプモータを、大きな回転速度で回転可能なものとしたり、ポンプを、1回転当たりの吐出量が大きいものとすれば、大流量で作動液を吐出することが可能となる。また、ポンプモータを、大きなトルクを出力可能なものとし、ポンプを、強度の大きいものとすれば、ポンプから吐出される作動液の最大吐出圧を大きくすることが可能となり、図4の実線部分の長い破線B[ポンプ・モータ大型化の場合]で表される特性が得られる。しかし、ポンプやポンプモータを、大流量で作動液を吐出可能、かつ、最大吐出圧を大きなものとすると、コストが高くなる。また、車高調整において要求される特性(細線で表される必要特性)に対して、過剰な特性を有する。
一方、ポンプ装置68に実線部分が短い破線C[ポンプ1個の場合]で表される特性のポンプを2つ設け、互いに並列に接続すれば、吐出圧が低い場合に、大流量で作動液を吐出可能な、一点鎖線D[ポンプ2個並列の場合]で表される特性が得られる。また、破線Cの特性を有する2つのポンプを直列に接続すれば、大きな流量は得られないが、吐出可能な最大吐出圧を大きくできる二点鎖線E[ポンプ2個直列の場合]で表される特性が得られる。さらに、ポンプ装置68の吐出圧が設定圧P0より低い場合に2つのポンプを並列に接続し、設定圧P0以上である場合に直列に接続すれば、太い実線F[本実施例の場合]で表される特性が得られる。
【0023】
本実施例においては、ポンプ装置68において、2つのポンプ60,61が設けられ、切換弁66が出力部76の圧力が設定圧P0より低い状態から設定圧P0以上になると、第1位置から第2位置に切り換わり、2つのポンプ60,61が並列接続状態から直列接続状態に切り換わる。
ポンプ装置68の出力部76の液圧が設定圧P0より低い場合、すなわち、蓄圧用アキュムレータ70,懸架シリンダ10の液圧が低い場合には、2つのポンプ60,61が並列接続状態とされ、大流量で作動液が吐出される。出力部76の液圧が設定圧P0以上である場合、すなわち、蓄圧用アキュムレータ70,懸架シリンダ10の液圧が高い場合には、2つのポンプ60,61は直列接続状態とされ、流量が小さくなるが、最大吐出圧を大きくすることができる。
このように、本実施例においては、ポンプ装置68から、太実線で表される特性Fで、作動液を供給することができる。そのため、ポンプ装置68から吐出される作動液の流量や液圧を制御可能な制御弁等を設けなくても、懸架シリンダ10,蓄圧用アキュムレータ70における要求を満たすことが可能となるのであり、コストアップを抑制し、細線Aで表される必要特性(要求)に近づけることが可能となる。
【0024】
また、2つのポンプ60,61の直列接続状態においては、1つのポンプモータ63,64の各々の出力トルクを小さくすることができ、ポンプ60,61における容積効率を向上させ得るという利点もある。
図5(a)、(b)において、破線は、ポンプ装置に含まれるポンプが1つの場合に、そのポンプ、ポンプモータの作動を示し、実線は、ポンプ装置に2つのポンプが含まれ、かつ、直列に接続された場合に、ポンプ装置に含まれるポンプが1つの場合と、吐出される作動液の液圧を同じにした場合の、1つのポンプ、ポンプモータの作動を示す。また、図5(b)において、細線Aは、ポンプモータにおける供給電流とトルクとの関係を示し、二点鎖線Bは、トルクと回転数との関係を示す。
図5(a)に示すように、2つのポンプが直列に接続されると、ポンプ装置から吐出される作動液の液圧を同じにした場合に、1つのポンプモータに加わる負荷を小さくできることがわかる。
図5(b)に示すように、ポンプモータにおいて、大きなトルクを出力するためには大きな電流が必要となることがわかる。また、加える電圧が一定である場合には、ポンプモータの出力トルクが小さい場合は回転数が大きくなり、出力トルクが大きい場合は回転数が小さくなることがわかる。
また、図5(c)において、細線Cは、ポンプにおける回転数Nと理論吐出流量Qpとの関係を表し、一点鎖線Dは回転数Nと実吐出流量Qaとの関係を表す。一点鎖線Dは、ポンプモータに加える電圧を一定にした場合に、そのポンプモータによって駆動されるポンプの回転数N、吐出流量Qaの各々を測定した結果を表す線である。なお、図5(c)において、測定結果[回転数N1、吐出流量Qa1]および[回転数N2、吐出流量Qa2]は、それぞれ、ポンプ装置に含まれるポンプが1つの場合におけるそのポンプについての測定結果、互いに直列に接続された2つのポンプが含まれる場合の1つのポンプについての測定結果を表すのではなく、いずれも1つのポンプについての測定結果である。しかし、これら測定結果は、それぞれ、ポンプ装置に含まれるポンプが1つである場合におけるそのポンプについての測定結果[回転数N1、吐出流量Qa1]、2つのポンプが直列に接続された場合における1つのポンプについての測定結果[回転数N2、吐出流量Qa2]に対応すると考えることができる。
本実施例における測定結果によれば、理論吐出流量Qpと実吐出流量Qaとの差(Qp−Qa)は、回転数Nが変化してもほぼ同じであることがわかる。これらの差(Qp−Qa)は、主として、ポンプにおける漏れに起因して生じると考えられるため、漏れ量と称することができる。その結果、ポンプの1回転当たりの漏れ量{(Qp−Qa)/N}は、回転数Nが大きくトルクTが小さい場合は、回転数Nが小さくトルクTが大きい場合より小さくなることがわかる。また、このことから、回転数Nが大きい場合は小さい場合より容積効率η(実吐出流量/理論吐出流量)が高くなることがわかる。
具体的に、理論吐出流量Qpは、式
Qp=k・N・・・(1)
で表すことができる。また、本実施例における測定結果によれば、実吐出流量Qaは、式
Qa=k・(N−N0)・・・(2)
で近似することができる。
(1)、(2)式から、回転数がN1である場合の容積効率η1は、式
η1=Qa1/Qp1=k(N1−N0)/kN1=1−(N0/N1)・・・(3)
で表すことができ、回転数がN2である場合の容積効率η2は、式
η2=Qa2/Qp2=k(N2−N0)/kN2=1−(N0/N2)・・・(4)
で表すことができる。
(3)、(4)式から、回転数N2は回転数N1より大きいため、回転数N2である場合の容積効率η2は、回転数N1である場合の容積効率η1より高いことがわかる(η2>η1)。
このように、ポンプが1つの場合と2つのポンプが直列に接続された場合とでは、2つのポンプが直列に接続された場合の方が、容積効率が高い状態で作動させることが可能となる。
さらに、ポンプに加わるトルクが大きい場合には、電圧降下が生じ易く、ポンプモータの回転数が低下し、ポンプの回転数が低下し易くなる。それに対して、ポンプが2個直列に接続された場合には、ポンプモータに加わるトルクを小さくすることができるため、電圧降下が生じ難くなり、回転数が低下し、吐出流量が小さくなることを回避することができる。
また、本実施例における測定結果によれば、ポンプの回転数がN0より小さい領域は、ポンプが回転しても作動液を吐出できない領域である。例えば、ポンプの吐出側の液圧が過大となり、ポンプモータのトルクが過大となることに起因して、作動液を吐出できなくなると考えられる。この場合の回転数N0の値は、ポンプおよびポンプモータの能力、ポンプモータに加える電圧等によって決まると考えられる。
以上のように、本実施例においては、切換弁66、連結通路74等により吐出状態制御装置が構成される。吐出状態制御装置は、並列・直列接続状態切換部に対応する。また、ポンプ装置68等により液圧源が構成され、ポンプ装置68と、切換弁66,連結通路74等により液圧源装置が構成される。
【0025】
なお、上記実施例においては、切換弁66がパイロット圧で切り換わるパイロット式の弁であったが、ソレノイドへの供給電流のON・OFFにより切り換わる電磁弁とすることもできる。その場合には、液圧源液圧センサ92の液圧が設定圧P0より低い場合に第1位置とし、設定圧P0以上になった場合に、第2位置に切り換えるようにすることができる。また、切換弁は車高に基づいて切り換えることもできる。例えば、車高センサ160による検出値が設定値(設定圧P0に対応する値)より低い場合に第1位置とし、設定値以上になった場合に第2位置に切り換えるようにするのである。
さらに、ポンプ装置の構造は、上記実施例における場合のそれに限らない。
図6に示すように、ポンプ装置200において、ポンプ通路72のポンプ60の吐出側の部分と、ポンプ通路73のポンプ61の吸入側の部分とを接続する連結通路202を設けるとともに、連結通路202とポンプ通路72との間に吐出側切換弁204を設け、ポンプ路73のポンプ61の吸入側の連結通路202の接続部205よりリザーバ側の部分に吸入側切換弁206を設ける。これら吐出側切換弁204と吸入側切換弁206とは互いに連結されて一体的に設けられ、これら吐出側切換弁204と吸入側切換弁206とによって切換弁210が構成される。切換弁210は、上記実施例における場合と同様に、ポンプ装置200の出力部76の液圧により切り換わるパイロット式の切換弁である。
吐出側切換弁204は、ポンプ60の吐出側を出力部76に連通させて連結通路202から遮断する第1位置と、ポンプ60の吐出側を出力部76から遮断して連結通路202に連通させる第2位置とに切り換わるものであり、吸入側切換弁206は、ポンプ61の吸入側をリザーバ54に連通させる第1位置と、リザーバ54から遮断する第2位置とに切り換わるものである。
出力部76の液圧が設定圧P0より低い場合は、吐出側切換弁204,吸入側切換弁206はいずれも第1位置にある。ポンプ60の吐出側が出力部76に連通させられるとともに、ポンプ61の吸入側がリザーバ54に連通させられる。2つのポンプ60,61は、いずれも、リザーバ54から作動液を汲み上げて吐出する。2つのポンプ60,61は並列接続状態とされる。
また、出力部76の液圧が設定圧P0以上になると、吐出側切換弁204,吸入側切換弁206が第2位置に切り換えられる。ポンプ60の吐出側が出力部76から遮断されて、連結通路202に接続されるとともに、ポンプ61の吸入側がリザーバ54から遮断される。ポンプ60の吐出側がポンプ61の吸入側に接続されるのであり、ポンプ60から吐出された作動液がポンプ61によって汲み上げられて出力部76から吐出される。2つのポンプ60,61は直列接続状態とされる。
【0026】
なお、上記実施例においては、吐出側切換弁204と吸入側切換弁206とが一体的に設けられていたが、これらを、別個に設けることもできる。
【0027】
さらに、上記実施例においては、2つのポンプ60,61のそれぞれが個別のポンプモータ63,64によって駆動されるようにされていたが、2つのポンプ60,61が共通の1つのポンプモータ228によって駆動されるようにすることもできる。その場合の一例を図7に示す。
本実施例においては、ポンプ装置230において、2つのポンプ60,61に対して1つの共通のポンプモータ228が設けられる。また、ポンプ通路72のポンプ60の吐出側と吸入側とを接続する循環通路(戻し通路)232が設けられ、循環通路232とポンプ通路72のポンプ60の吐出側の部分との間に切換弁234が設けられる。切換弁234は、ポンプ60の吐出側を循環通路232から遮断して出力部76に連通させる第1位置と、ポンプ60の吐出側を出力部76から遮断して循環通路232に連通させる第2位置とに出力部76の液圧により切り換わるパイロット式の切換弁である。
出力部76の液圧が設定圧P0より低い場合には、切換弁234は第1位置にあり、ポンプ60,61は並列接続状態とされるが、出力部76の液圧が設定圧P0以上になると、第2位置に切り換わる。第2位置においては、ポンプ60の吐出側と吸入側とが連通させられ、作動液が循環させられる(循環経路が形成される)。ポンプ60の作動は無効化されるのであり、ポンプモータ228からすると、停止状態にあるのと同様の状態となる。その結果、ポンプモータ228に加わる負荷を小さくすることができる。また、それによって、ポンプ装置230から出力される作動液の最大吐出圧を大きくすることができる。懸架シリンダ10,蓄圧用アキュムレータ70の液圧が高い場合には、供給される作動液の流量は小さくてよいため、2つのポンプを作動させる必要性が低いのである。
本実施例においては、切換弁234,循環通路232等により循環通路形成部が構成される。
【0028】
さらに、上記実施例においては、1つのポンプの作動が無効にされたが、1つのポンプを停止状態とすることもできる。その場合の一例を図8に示す。
本実施例におけるポンプ装置250において、2つのポンプ60,61は1つの共通のポンプモータ228によって駆動されるのであるが、ポンプ60とポンプモータ228との間に、電磁クラッチ254が設けられる。電磁クラッチ254は、ポンプモータ228の出力軸とポンプ60の回転軸とを連結する駆動力伝達状態と、これらポンプモータ228の出力軸とポンプ60の回転軸とを切断する駆動力非伝達状態とに、車高調整ECU150からの指令に基づいて切り換えられる。
液圧センサ92による検出液圧が設定圧P0より小さい場合は、駆動力伝達状態とされるが、設定圧P0以上になると、駆動力非伝達状態に切り換えられる。駆動力伝達状態においては、ポンプモータ228の出力軸とポンプ60の回転軸とが連結され、ポンプモータ228によって2つのポンプ60,61が駆動される並列接続状態とされる。駆動力非伝達状態においては、ポンプ60がポンプモータ228から切断されるのであり、ポンプ60は停止させられる。その結果、ポンプモータ228に加わる負荷を小さくすることができ、ポンプ61から吐出可能な作動液の最大吐出圧を大きくすることができる。ポンプ60の吐出側には、出力部76からポンプ60への逆流を防止する逆止弁256が設けられ、ポンプ60の停止状態において、ポンプ61から吐出された作動液がリザーバ54に逆流することが回避される。
本実施例においては、電磁クラッチ254,車高調整ECU150の電磁クラッチ254を制御する部分等により、並列接続部、ポンプ停止部が構成される。
【0029】
なお、ポンプ60とポンプモータ228との間には、電磁クラッチではなく、液圧(パイロット圧)により駆動力伝達状態と、駆動力非伝達状態とに切り換え可能な油圧クラッチを設けることもできる。油圧クラッチにおいて、加わる液圧が設定圧P0より低い状態から設定圧以上になると、駆動力伝達状態から駆動力非伝達状態に切り換えられる。この場合には、油圧クラッチにより、並列接続部、ポンプ停止部が構成されることになる。
【0030】
また、上記各実施例においては、ポンプ装置に含まれるポンプの個数は2個であったが、3個以上とすることもできる。その場合の一例を図9に示す。
本実施例において、ポンプ装置300は、図1のポンプ装置68と図8のポンプ装置250とを組み合わせた構成を成したものである。ポンプ装置300は、互いに並列に設けられたポンプ通路302〜306に、それぞれ設けられた3つのポンプ312〜316を含む。ポンプ312,314は、共通のポンプモータ320によって駆動されるのであるが、ポンプ312とポンプモータ320との間には電磁クラッチ322が設けられる。ポンプ312の吐出側には、ポンプへの逆流を阻止する逆止弁323が設けられる。また、これら並列の2つのポンプ312,314と1つのポンプ316とが並列に設けられる。ポンプ316はポンプモータ324によって駆動される。
ポンプ312,314の出力部330より懸架シリンダ側の部分とポンプ通路306のポンプ316より吸入側の部分とが連結通路332によって接続されるとともに、切換弁334(切換弁66と同じ構成を成したもの)が設けられる。また、ポンプ通路306のポンプ316の吸入側の部分には逆止弁336が設けられる。
ポンプ装置300の出力部338の液圧が設定圧P0より低い場合には切換弁334は第1位置にあり、互いに並列に接続された2つのポンプ312,314と、1つのポンプ316とが並列とされる。すなわち、3つのポンプ312,314,316が互いに並列に接続されることになる。その結果、ポンプ装置300から吐出される作動液の流量を2つのポンプが並列の場合より大きくすることができる。
出力部338の液圧が設定圧P0以上になると切換弁334は第2位置に切り換わる。互いに並列に接続されたポンプ312,314とポンプ316とが直列に接続される。その結果、3つのポンプ312〜316が互いに並列に接続される場合より、流量は小さくなるが、最大吐出圧が大きくなる。
また、電磁クラッチ322を制御することにより、ポンプ312を停止させることができる。
このように、本実施例においては、(i)3つのポンプが互いに並列に接続される状態と、(ii)互いに並列な2つのポンプと1つのポンプとが直列に接続される状態と、(iii)1のポンプの停止状態において、2つのポンプが並列に接続される状態と直列に接続される状態とに切り換えることができる。
【0031】
さらに、図10に示すポンプ装置380は、図1のポンプ装置68を組み合わせたものであり、互いに並列に設けられたポンプ通路302〜306にそれぞれ設けられたポンプ312〜316を含む。ポンプ通路302〜306は、リザーバ54と制御通路71との間に並列に設けられ、ポンプ312〜316は、それぞれ、個別のポンプモータ382〜386によって駆動される。
ポンプ通路302,304のそれぞれのポンプ312,314の吐出側の部分と、ポンプ通路304,306のそれぞれのポンプ314,316の吸入側の部分とが、それぞれ、連結通路390,392によって接続されるとともに、ポンプ通路302と連結通路390との間、ポンプ通路304と連結通路392との間に、それぞれ、切換弁394,396が設けられる。また、ポンプ通路304,306の連結通路390,392との接続部よりリザーバ側の部分には、それぞれ、リザーバ54への作動液の逆流を防止する逆止弁400,402が設けられる。
切換弁394,396は図1の切換弁66と同じ構成を成したものであり、ポンプ装置380の出力部410の液圧により第1位置と第2位置とに切り換えられるパイロット式の切換弁である。切換弁394,396の第1位置においては、3つのポンプ312,314,316は、互いに並列に接続される。切換弁394,396が第2位置に切り換えられると、3つのポンプ312〜316が互いに直列に接続される。
このように、本実施例においては、3つのポンプが互いに並列に接続される状態と、互いに直列に接続される状態とに切り換えることができる。
【0032】
なお、2つの切換弁394,396は、互いに連動可能に連結してもよい。
【0033】
また、図11に示すように、ポンプ装置450は、互いに並列に接続された3つのポンプ通路452〜456にそれぞれ設けられたポンプ462〜466を含むものとすることができる。3つのポンプ462〜466は、それぞれ、個別のポンプモータ472〜476によって駆動される。ポンプ通路452〜456の各々のポンプ462〜466の吐出側の部分には、それぞれ、ポンプへの逆流を防止する逆止弁482〜486が設けられる。本実施例においては、3つのポンプモータ472〜476への供給電流がそれぞれ別個独立に制御可能とされており、それによって、ポンプ装置450からの吐出流量が制御可能とされている。
ポンプモータ462〜466のすべてが作動状態とされれば、3つのポンプ462〜466が並列に接続され、3つのうちの2つが作動状態とされれば、2つのポンプが並列とされ、2つが停止させられれば、1つのポンプのみから作動液が吐出されることになる。
また、ポンプモータ462〜466への供給電流が連続的に制御されるようにすれば、吐出流量を連続的に制御することが可能となる。
【0034】
なお、上記実施例においては、液圧源に含まれる複数個のポンプおよびポンプモータは、互いに能力が同じものであったが、互いに異なるものとすることができる。
また、液圧源装置は、液圧ブレーキ装置において液圧アクチュエータとしてのブレーキシリンダに液圧を供給可能な動力式液圧源装置に適用することもできる。
その他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例である液圧源装置が設けられた車高調整装置全体を示す図である。
【図2】上記車高調整装置に含まれる懸架シリンダにおける液圧の変化状態を示す図である。
【図3】上記液圧源装置に含まれる蓄圧用アキュムレータにおける液圧と供給液量との関係を示す図である。
【図4】上記液圧源装置に含まれるポンプ装置の吐出圧と吐出流量との関係を示す図である。
【図5】上記液圧源装置に含まれるポンプ装置の作動状態を示す図である。
【図6】本発明の別の一実施例である液圧源装置を示す図である。
【図7】本発明のさらに別の一実施例である液圧源装置を示す図である。
【図8】本発明の別の一実施例である液圧源装置を示す図である。
【図9】本発明のさらに別の一実施例である液圧源装置を示す図である。
【図10】本発明の別の一実施例である液圧源装置を示す図である。
【図11】本発明のさらに別の一実施例である液圧源装置を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
60,61,312,314,316,462,464,466:ポンプ 63,64,324,382,384,386,472,474,476:ポンプモータ 66,334,394,396:切換弁 68,200,230,250,300,380,450:ポンプ装置 74,332,390,392:連結通路 76,338,410,490:出力部 78,336,400,402:逆止弁 323,482,484,486:逆止弁 202:連結通路 204:吐出側切換弁 206:吸入側切換弁 210:切換弁 228,320:ポンプモータ 232:循環通路 234:切換弁 254,322:電磁クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられて、液圧により作動させられる液圧アクチュエータに接続される液圧源装置であって、
複数個のポンプと、それら複数個のポンプを駆動する1つ以上の電動モータとを含む液圧源と、
前記複数個のポンプのうちの2つのポンプについて、それら2つのポンプの各々とそれらポンプに対応する前記電動モータとの間の接続状態と、前記2つのポンプの間の接続状態との少なくとも一方を変えることにより、前記液圧源からの作動液の吐出状態を、少なくとも、流量が小さく最大吐出圧が高い高圧少量吐出状態と、その高圧少量吐出状態より、流量が大きく最大吐出圧が低い低圧多量吐出状態とに制御する吐出状態制御装置と
を含むことを特徴とする液圧源装置。
【請求項2】
前記吐出状態制御装置が、前記2つのポンプを互いに並列に接続することにより前記低圧多量吐出状態とし、前記2つのポンプを互いに直列に接続することにより前記高圧少量吐出状態とする並列・直列接続状態切換部を含む請求項1に記載の液圧源装置。
【請求項3】
前記並列・直列接続状態切換部が、前記2つのポンプの間に設けられ、前記液圧源から吐出される作動液の吐出圧が設定圧より高くなると、それら2つのポンプを互いに並列に接続する並列接続状態から互いに直列に接続する直列接続状態に切り換える1つ以上のパイロット式の切換弁を含む請求項2に記載の液圧源装置。
【請求項4】
前記並列・直列接続状態切換部が、前記低圧多量吐出状態において前記複数個のすべてのポンプを互いに並列に接続し、前記高圧少量吐出状態において前記複数個のすべてのポンプを互いに直列に接続するものである請求項2または3に記載の液圧源装置。
【請求項5】
前記2つのポンプが1つの共通の電動モータに接続され、前記吐出状態制御装置が、(i)前記低圧多量吐出状態において、前記2つのポンプを互いに並列に接続する並列接続部と、(ii)前記高圧少量吐出状態において、(a)前記2つのポンプのうちの一方を前記共通の電動モータから遮断するポンプ停止部と、(b)前記2つのポンプのうちの一方の吐出側をその一方のポンプの吸入側に戻す循環通路を形成する循環通路形成部とのいずれか一方とを含む請求項1に記載の液圧源装置。
【請求項6】
前記液圧アクチュエータが、前記車両の車輪に対応して、前記車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられた懸架シリンダであり、当該液圧源装置が、前記懸架シリンダに作動液を供給して、前記車輪と前記車体との上下方向の相対位置関係である車高を大きくする作動液供給装置を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の液圧源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−276525(P2007−276525A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101873(P2006−101873)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】