説明

測位システム及び測位方法及び移動体端末及び地図サーバ装置

【課題】 例えば、移動体端末がより短時間で測位衛星を捕捉することを目的とする。また、例えば、移動体端末が閉空間から開放空間に移動した直後の測位精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】 受信装置700は、GPS衛星500から航法データを受信し、航法データの軌道情報を送信する。無線LANアクセスポイント600は、受信装置700が送信した軌道情報を携帯電話機300に伝送する。携帯電話機300は、無線LANアクセスポイント600から軌道情報を受信する。携帯電話機300は、閉空間から開放空間に移動すると、GPS衛星500から航法データを受信する。携帯電話機300は、受信装置700から受信した軌道情報とGPS衛星500から受信した航法データとを用いて測位を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム及び測位方法及び移動体端末及び地図サーバ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムでは、タグ(RFID(Radio Frequency IDentification)、無線タグ、電子タグ、IC(集積回路)タグとも呼ばれる。)と無線リーダ(タグリーダとも呼ばれる。)との通信距離を伸ばすため、タグと無線リーダとの間の通信に使用される周波数とは別の周波数の電波を放射するエネルギー送信装置を設置し、タグが、エネルギー送信装置が放射する電波のエネルギーを蓄電して、このエネルギーを無線リーダとの通信に利用していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の測位システムでは、位置情報測定端末装置がGPS(全地球測位システム)などの衛星航法が利用できない閉空間でも測位できるようにするため、ID(識別子)を送信するタグと、タグのIDに対応する位置情報を提供する位置情報変換装置とを設置し、位置情報測定端末装置が、周辺に設置されたタグから読み取ったIDに対応する位置情報を位置情報変換装置から受信して、この位置情報を測位に利用していた(例えば、特許文献2参照)。また、他の測位システムでは、擬似衛星と、位置情報を送信するタグとを設置し、位置特定装置が、周辺に設置されたタグから読み取った位置情報を、擬似衛星を用いた測位に利用していた(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−124841号公報
【特許文献2】特開2004−297334号公報
【特許文献3】特開2004−286494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
室内や地下街といった閉空間で移動しながら、携行型の無線リーダを使い、地物に添付されたタグから位置情報を読み取って経路を確認する場合などに、タグの間近に寄らなければデータを読み取れないということが課題となる。通信距離を伸ばしやすいUHF(極超短波)帯を利用したとしても、携行型の無線リーダは送信電力が法律上10mW(ミリワット)程度に制限されているため、50センチメートル程度の距離まで近づかなければタグからデータを読み取ることができない。前述した従来の無線通信システムでも、エネルギー送信装置から離れた場所にあるタグの通信距離を十分に伸ばすことができないという課題があった。さらに、無線リーダがタグからデータを読み取るために読み出し電波を送信しなければならず、複数の無線リーダがランダムに読み出し電波を送信する場合、通信の効率性に影響を与える衝突を回避することができないという課題があった。
【0005】
従来の測位システムでは、移動体端末が屋内に長時間留まった後、屋外に移動してからGPSを利用する場合に、衛星の軌道情報を受信し、衛星を捕捉するまでに数分を要していた。また、衛星を捕捉して測位を開始した後も、詳細軌道情報を完全に受信するまで更に数分を要するため、しばらくは測位精度が悪く、例えばどの出口を通って屋外に移動したのかを認識することが難しいという課題があった。さらに、擬似衛星を用いた測位を行う場合、擬似衛星の設置のために大きなコストがかかるという課題があった。
【0006】
本発明は、例えば、移動体端末がより短時間で測位衛星を捕捉することを目的とする。また、例えば、移動体端末が閉空間から開放空間に移動した直後の測位精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の測位システムは、
測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データに含まれる軌道情報を送信する受信装置と、
前記受信装置が送信した軌道情報を伝送する伝送装置と、
測位衛星の航法データに基づいて測位を行う移動体端末とを備え、
前記移動体端末は、
前記伝送装置が伝送した軌道情報を受信する軌道情報受信部と、
測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信する航法データ受信部と、
前記軌道情報受信部が受信した軌道情報と前記航法データ受信部が受信した航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行う測位部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、移動体端末において、軌道情報受信部が、伝送装置を介して、受信装置が受信した航法データに含まれる軌道情報を受信し、航法データ受信部が、測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信し、測位部が、軌道情報受信部が受信した軌道情報と航法データ受信部が受信した航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行うことにより、移動体端末がより短時間で測位衛星を捕捉することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0010】
実施の形態1.
以下では、携帯電話機の利用者が、複数の店舗が並ぶ地下のショッピング街(閉空間の一例)を歩き回った後、屋外(開放空間の一例)に移動する例を用いて、本実施の形態について説明する。本実施の形態と同様の無線通信システムは、他の閉空間及び開放空間においても実施可能である。また、本実施の形態と同様の測位システムは、他の閉空間から開放空間に移動する場合においても実施可能である。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システム及び測位システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
無線通信システムは、無線リーダ/ライタ100、店舗端末150、タグなどにより構成される。また、測位システムは、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)アクセスポイント600、受信装置700などにより構成され、複数のGPS衛星500を利用する。携帯電話機300、地図サーバ装置400、ネットワーク450は、無線通信システムと測位システムとの両方の構成要素である。無線通信システム及び測位システムの各構成要素は、それぞれが複数存在していてもよい。
【0013】
無線リーダ/ライタ100は、電波照射装置の一例であり、無線リーダと無線ライタ(タグライタとも呼ばれる。)の機能を合わせ持つ。無線リーダ/ライタ100は、例えば、構内無線局免許の基で使用され、1W(ワット)級の送信電力で高周波(UHF帯無変調波)の連続波(CW:Continuous Wave)を周辺の地物に配置されたタグに照射する。連続波は、間歇的に照射される電波であってもよい。
【0014】
店舗端末150は、例えばパーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)であり、店舗に関する情報や店舗の位置情報(以下、これらの情報を店舗情報という。)を入力又は保持する。店舗端末150はLAN650などを通じて、店舗情報を無線リーダ/ライタ100に送信する。無線リーダ/ライタ100はタグに照射する連続波を利用して、店舗情報をタグに書き込む。無線リーダ/ライタ100がタグにデータを書き込む方法については、後述する。ここで、店舗端末150がLAN650を通じて無線LANアクセスポイント600に店舗情報を送信し、無線LAN経由で携帯電話機300に店舗情報を提供してもよい。また、店舗端末150が無線ライタの機能を持つ場合には、店舗端末150が店舗の入口などに設置されたタグに店舗情報を直接書き込んでもよい。この場合、無線リーダ/ライタ100は、タグにデータを書き込めない無線リーダに置き換えてもよいし、他の種類の電波照射装置に置き換えてもよい。
【0015】
タグにはパッシブ型タグ200とセミパッシブ型タグ250との2種類が存在し、どちらも無線通信装置の一例である。いずれかのタグをアクティブ型タグに置き換えてもよいし、全てのタグをパッシブ型タグ200とセミパッシブ型タグ250とのいずれかに統一してもよい。
【0016】
パッシブ型タグ200は、無線リーダ/ライタ100が照射する連続波を検波し、この連続波をメモリ回路や負荷変調(ASK(Amplitude Shift Keying)変調)回路などの電子回路を駆動するためのエネルギー源として利用するとともに、この連続波をメモリ内のデータで変調して送信する。これにより、10mW級の小電力の携帯電話機300であっても、数メートル先のパッシブ型タグ200からデータを読み取ることができる。また、さらに、携帯電話機300が読み出し電波を出さなくても、受信動作のみでタグからデータを読み取ることができる。パッシブ型タグ200の構成を図2に示す。
【0017】
パッシブ型タグ200は、検波部201、蓄電部202、変復調部203、制御部204、メモリ(記憶部)205、放送部206を有する。検波部201は、アンテナを含み、無線リーダ/ライタ100が照射する連続波をアンテナから受信して検波する。蓄電部202は、例えばコンデンサ又は2次電池を含み、検波部201が検波した連続波のエネルギーを蓄電し、蓄電したエネルギーを変復調部203、制御部204、メモリ205などに供給する。変復調部203は、負荷変調回路を含み、検波部201が検波した連続波を復調してデータを取得し、取得したデータを制御部204に入力したり、制御部204から入力されるデータで連続波を負荷変調したりする。制御部204は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、変復調部203から入力されたデータの内容に基づいて各部を制御したり、そのデータをメモリ205に書き込んだり、メモリ205に記憶されたデータを読み出して変復調部203に入力したりする。メモリ205は、店舗情報などのデータを記憶する。放送部206は、変復調部203が変調した電波を送信することで、メモリ205に記憶されたデータを放送する。
【0018】
セミパッシブ型タグ250は、メモリ回路や負荷変調回路などの電子回路を駆動するためのエネルギー源として電池を有するとともに、無線リーダ/ライタ100が照射する連続波を検波し、負荷変調回路のオンとオフとを切り替えて、この連続波をメモリ内のデータで変調して送信する。これにより、10mW級の小電力の携帯電話機300であっても、数メートル先のセミパッシブ型タグ250からデータを読み取ることができる。また、さらに、携帯電話機300が読み出し電波を出さなくても、受信動作のみでタグからデータを読み取ることができる。セミパッシブ型タグ250の構成を図3に示す。
【0019】
セミパッシブ型タグ250は、検波部201、電池(電源部)252、変復調部203、制御部204、メモリ205、放送部206を有する。検波部201、変復調部203、制御部204、メモリ205、放送部206は、パッシブ型タグ200のものと同様である。電池252は、例えば1次電池であり、エネルギーを変復調部203、制御部204、メモリ205などに供給する。ここで、セミパッシブ型タグ250がパッシブ型タグ200と同様の蓄電部202を有し、蓄電部202が蓄電したエネルギーと電池252に予め蓄電されたエネルギーとの両方を利用してもよい。
【0020】
セミパッシブ型タグ250は、アクティブ型タグと異なり発振器などを持たないため、電力消費量が少なく、電池252が数年程度の寿命を持ち、電池252をほとんど取り替えることなく使用できる。
【0021】
このように、本実施の形態におけるタグは、従来のように携帯電話機300からの読み出し電波を必要とせず、無線リーダ/ライタ100が照射する連続波を利用して通信を行う。このため、携帯電話機300は、読み出し電波を出すことなく、受信動作のみでタグからデータを読み取ることができる。これにより、複数の携帯電話機300がランダムに読み出し電波を出す場合にしばしば生じる衝突を回避することができ、例えば大勢の利用者が集うショッピング街などでタグにより位置情報を通知する場合など、円滑なサービスの提供が可能となる。また、例えば店舗の入口などにタグを表札のように貼付けておくだけで、携帯電話機300の利用者が自身の歩行履歴を記録及び確認でき、より人間にとってわかりやすい位置情報の提供が可能となる。
【0022】
GPS衛星500は、測位衛星の一例であり、軌道情報を含む航法データを送信する。軌道情報には、例えば、アルマナックデータやエフェメリスデータが含まれる。アルマナックデータは、各GPS衛星500共通の情報であり、週ごとに更新される。アルマナックデータには大まかな電離層補正モデルのパラメータも含まれる。エフェメリスデータは、各GPS衛星500固有の詳細な軌道パラメータであり、約2時間おきに更新される。エフェメリスデータには衛星時計の補正情報も含まれる。ここで、GPS衛星500は、準天頂衛星など他の種類の測位衛星であってもよい。
【0023】
受信装置700は、GPSアンテナを有し、GPS衛星500から航法データを受信し、受信した航法データに含まれる軌道情報を、ネットワーク450を介して無線LANアクセスポイント600又は地図サーバ装置400に送信する。受信装置700は、軌道情報として、エフェメリスデータ又はエフェメリスデータの一部のみを送信してもよい。
【0024】
受信装置700は、閉空間の近くに設置されていてもよいが、携帯電話機300が閉空間から開放空間に移動した直後に捕捉可能なGPS衛星500のうち少なくとも1機(好ましくは4機)から航法データを受信できる位置に設置されていればよい。
【0025】
無線LANアクセスポイント600は、伝送装置の一例であり、受信装置700が送信した軌道情報を無線LAN経由で携帯電話機300に伝送する。受信装置700が軌道情報を地図サーバ装置400に送信する場合は、地図サーバ装置400から軌道情報を受け取って携帯電話機300に伝送する。ここで、無線LANアクセスポイント600は、携帯電話機300が通常の電話及びデータ通信に利用する移動通信網の無線基地局装置で代替可能である。この場合、携帯電話機300は無線LAN経由ではなく移動通信網経由で軌道情報を受信する。
【0026】
携帯電話機300は、移動体端末の一例である。携帯電話機300は、PDAやノートブックコンピュータなど、他の通信機器で代替可能である。携帯電話機300の構成を図4に示す。
【0027】
携帯電話機300は、位置情報受信部301、地図情報受信部302、制御部303、出力部304、軌道情報受信部305、航法データ受信部306、測位部307を有する。
【0028】
位置情報受信部301は、例えば無線リーダの機能を有し、タグが放送する位置情報を受信する。位置情報受信部301は、店舗に関する情報など位置情報以外のデータをタグから受信してもよい。地図情報受信部302は、例えば無線LANの通信機能を有し、無線LANアクセスポイント600を介して地図サーバ装置400から地図情報を受信する。軌道情報受信部305は、無線LANアクセスポイント600からGPS衛星500の軌道情報を受信する。航法データ受信部306は、GPS受信機を有し、携帯電話機300が開放空間にある場合、GPS衛星500から航法データを受信する。
【0029】
測位部307は、携帯電話機300が閉空間から開放空間に移動した直後は、航法データ受信部306が受信した航法データを軌道情報受信部305が受信した軌道情報で補完して測位を行う。携帯電話機300が閉空間から開放空間に移動してからしばらく経つと、航法データ受信部306が測位に必要な航法データを全て受信することができる。その後、測位部307は、主に、航法データ受信部306が受信した航法データに基づいて測位を行う。
【0030】
制御部303は、例えばCPUであり、各部を制御する。制御部303は、無線通信システムを利用する場合、位置情報受信部301が受信した位置情報と地図情報受信部302が受信した地図情報とに基づいて現在地を示す地図を出力部304に出力させる。一方、測位システムを利用する場合は、測位部307が行った測位の結果と地図情報受信部302が受信した地図情報とに基づいて現在地を示す地図を出力部304に出力させる。また、制御部303は、位置情報受信部301が受信した店舗に関する情報などを出力部304に出力させる。出力部304は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置である。
【0031】
このように、携帯電話機300の利用者が閉空間から開放空間に移動した際に、携帯電話機300が予め閉空間で取得した最新の軌道情報を利用して測位を行うことにより、GPS衛星500の捕捉時間を短縮することができ、さらに、測位のために必要な航法データが完全に受信できなくても測位精度を向上させることが可能である。
【0032】
また、携帯電話機300が無線LAN経由で店舗に関する情報や地図情報を受信することにより、例えば携帯電話機300の利用者がショッピング街の入口で店舗の地図と各店舗の情報を得られ、利便性が向上する。
【0033】
地図サーバ装置400は、地図情報を蓄積し、ネットワーク450を通じて無線LANアクセスポイント600に地図情報を送信し、無線LAN経由で携帯電話機300に地図情報を提供する。ここで、地図サーバ装置400は、LAN650に接続され、LAN650を通じて無線LANアクセスポイント600に地図情報を送信してもよい。また、地図サーバ装置400自体が無線LANアクセスポイント600の機能を備えていてもよい。
【0034】
地図サーバ装置400は、受信装置700からGPS衛星500の軌道情報を受信する場合、地図情報と同様に軌道情報を無線LAN経由で携帯電話機300に送信する。この場合の地図サーバ装置400の構成を図5に示す。
【0035】
地図サーバ装置400は、受信部401、地図情報データベース(蓄積部)402、伝送部403を有する。受信部401は、ネットワーク450を介して、受信装置700が受信した航法データに含まれる軌道情報を受信する。地図情報データベース402は、予め地図情報を蓄積する。伝送部403は、無線LANアクセスポイント600を介して、又は直接携帯電話機300に、受信部401が受信した軌道情報と地図情報データベース402に蓄積された地図情報とを伝送する。地図サーバ装置400が受信装置700からGPS衛星500の軌道情報を受信しない場合には、受信部401は不要である。
【0036】
図6は、本実施の形態における無線リーダ/ライタ及びタグの設置例を示す図である。
【0037】
図6の例では、1つの通路の両側に店舗が並んでおり、各店舗の入口にタグが設置されている。無線リーダ/ライタ100は、通路の真ん中付近の、例えば天井部分に設置されており、約1W級の送信電力でUHF帯の連続波を照射している。この場合、無線リーダ/ライタ100から約10メートル以内の範囲は、照射される連続波の減衰が比較的少ないため、この範囲に設置されるタグをパッシブ型タグ200としている。そして、無線リーダ/ライタ100から約10メートルを超え、無線リーダ/ライタ100からの連続波が利用可能な約50メートル以内の範囲には、セミパッシブ型タグ250を設置している。
【0038】
このように、電池を内蔵するセミパッシブ型タグ250を使用することにより、1台の無線リーダ/ライタ100を利用できる範囲を拡大し、設置すべき無線リーダ/ライタ100の数を減らすことができるため、システムの構成をより単純に、より低いコストで実現することが可能となる。
【0039】
図7は、本実施の形態における無線リーダ/ライタが照射する電波に乗せて送信する命令データの一例を示す図である。この図において、説明の便宜上、無線リーダ/ライタ100が照射する電波を波形で示し、電波がエネルギーを送信しているとき(電波が無変調のとき)の波を小さく、電波にコマンド(命令データ)を乗せているとき(電波が負荷変調されているとき)の波を大きく表しているが、波の大小は必ずしも振幅の大小を示すものではない。
【0040】
無線リーダ/ライタ100は、図7のように、時間ごとにタグを制御するコマンドを送信する。例えば、タグにデータを書き込む場合、無線リーダ/ライタ100は、まず「メモリ内容書換許可」を示すコマンドを作成し、このコマンドにより照射する電波を負荷変調してコマンドを送信する。コマンドを受信したタグは、例えば、「メモリ内容書換許可」を示すフラグを有効にする。次に、無線リーダ/ライタ100は、タグに書き込む記憶データを同様の方法で送信する。記憶データには、例えば店舗情報が含まれる。記憶データを受信したタグは、その記憶データをメモリに書き込むか、又はメモリに記憶されている記憶データを受信した新しい記憶データに更新する。次に、無線リーダ/ライタ100は、「メモリ内容書換不許可」を示すコマンドを作成し、このコマンドを送信する。コマンドを受信したタグは、例えば、「メモリ内容書換許可」を示すフラグを無効にする。タグがパッシブ型タグ200の場合、無線リーダ/ライタ100がコマンドや記憶データを送信していないときには、連続波のエネルギーを蓄電する。ここで、パッシブ型タグ200は、無線リーダ/ライタ100がコマンドや記憶データを送信している間、同時に連続波のエネルギーを蓄電してもよい。
【0041】
無線リーダ/ライタ100が送信する記憶データの先頭には、例えば、タグのメモリに格納するデータであることを示すヘッダが付加されている。また、記憶データの終わりには終わりであることを示すフッタが付加されている。記憶データは分割して送信されてもよい。
【0042】
タグが放送するデータの信頼性を高めるため、上記のコマンド又は記憶データを暗号化し、それらを復号化できるタグのみがメモリの内容を書き換えられるようにしてもよい。
【0043】
図8は、本実施の形態に係る無線通信システムの動作の一例を示すフロー図である。
【0044】
まず、無線リーダ/ライタ100が、UHF帯の連続波を照射する(ステップS101:電波照射工程)。パッシブ型タグ200において、蓄電部202が連続波のエネルギーを蓄電し(ステップS102:蓄電工程)、変復調部203、制御部204、メモリ205が蓄電されたエネルギーを利用して(ステップS103:第1のエネルギー利用工程)、連続波を負荷変調し、位置情報を放送部206により放送する(ステップS105:データ放送工程)。また、セミパッシブ型タグ250において、変復調部203、制御部204、メモリ205が、内蔵された電池252のエネルギーを利用して(ステップS104:第2のエネルギー利用工程)、連続波を負荷変調し、位置情報を放送部206により放送する(ステップS105:データ放送工程)。
【0045】
次に、携帯電話機300において、位置情報受信部301が位置情報を受信し(ステップS106)、位置情報受信部301が受信した位置情報と地図情報受信部302が予め地図サーバ装置400から受信した地図情報とに基づいて現在地を示す地図を画面に表示する(ステップS107)(ステップS106〜S107:データ受信工程)。
【0046】
図9は、本実施の形態に係る測位システムの動作の一例を示すフロー図である。
【0047】
まず、受信装置700が、GPS衛星500から航法データを受信し(ステップS201)、航法データの軌道情報を送信する(ステップS202)(ステップS201〜S202:受信工程)。無線LANアクセスポイント600は、受信装置700が送信した軌道情報を携帯電話機300に伝送する(ステップS203:軌道情報伝送工程)。そして、携帯電話機300において、軌道情報受信部305が無線LANアクセスポイント600から軌道情報を受信する(ステップS204:軌道情報受信工程)。
【0048】
携帯電話機300が閉空間から開放空間に移動すると(ステップS205)、携帯電話機300において、航法データ受信部306がGPS衛星500から航法データを受信する(ステップS206:航法データ受信工程)。そして、ステップS204で軌道情報受信部305が受信した軌道情報とステップS206で航法データ受信部306が受信した航法データとを用いて測位部307が測位を行う(ステップS207:測位工程)。
【0049】
以上のように、本実施の形態では、複数の無線通信装置が、電波照射装置が照射する電波を記憶部に記憶されたデータにより変調してデータを放送し、移動体端末が、無線通信装置が放送するデータを受信して利用することにより、移動体端末が近接していないタグからデータを読み取るとともに、移動体端末がタグからデータを読み取る際の通信の効率性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態では、電波照射装置から所定の距離以内の場所に設置された無線通信装置が、電波照射装置が照射する電波のエネルギーを蓄電し、蓄電したエネルギーを内部の動作に利用し、電波照射装置から所定の距離を超える場所に設置された無線通信装置が、電池を有し、電池に予め蓄電されたエネルギーを内部の動作に利用することにより、多くの無線通信装置が1つの電波照射装置が照射する電波を利用することが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態では、電波照射装置が、各無線通信装置を制御する命令データと各無線通信装置に記憶させる記憶データとを送信し、命令データと記憶データのうちいずれかを送信する場合、照射する電波を送信するデータにより変調し、各無線通信装置が、電波照射装置が照射する電波を復調して命令データを取得し、取得した命令データの内容に応じて、電波を復調して記憶データを取得し、取得した記憶データを記憶部に記憶し、記憶部に記憶された記憶データを放送することにより、電波照射装置が各無線通信装置に記憶されたデータを更新することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、移動体端末において、地図情報受信部が、地図サーバ装置が送信した地図情報を受信し、出力部が、無線通信装置が放送したデータに含まれる位置情報と地図情報受信部が受信した地図情報とに基づいて現在地を示す地図を出力することにより、移動体端末の利用者が現在地を容易に確認することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、電波照射工程で、電波照射装置が、所定の周波数の電波を照射し、データ放送工程で、複数の無線通信装置が、電波照射工程で照射される電波を記憶部に記憶されたデータにより変調してデータを放送し、データ受信工程で、移動体端末が、データ放送工程で放送されるデータを受信して利用することにより、移動体端末が近接していないタグからデータを読み取るとともに、移動体端末がタグからデータを読み取る際の通信の効率性を向上させることが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態では、蓄電工程で、電波照射装置から所定の距離以内の場所に設置された無線通信装置が、電波照射装置が照射する電波のエネルギーを蓄電し、第1のエネルギー利用工程で、それらの無線通信装置が、蓄電工程で蓄電されたエネルギーを内部の動作に利用し、第2のエネルギー利用工程で、電波照射装置から所定の距離を超える場所に設置された他の無線通信装置が、電池に予め蓄電されたエネルギーを内部の動作に利用することにより、多くの無線通信装置が1つの電波照射装置が照射する電波を利用することが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態では、移動体端末において、軌道情報受信部が、伝送装置を介して、受信装置が受信した航法データに含まれる軌道情報を受信し、航法データ受信部が、測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信し、測位部が、軌道情報受信部が受信した軌道情報と航法データ受信部が受信した航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行うことにより、移動体端末がより短時間で測位衛星を捕捉することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、移動体端末において、地図情報受信部が、地図サーバ装置が送信した地図情報を受信し、出力部が、測位部が行った測位の結果と地図情報受信部が受信した地図情報とに基づいて現在地を示す地図を出力することにより、移動体端末の利用者が現在地を容易に確認することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、軌道情報が、GPSのエフェメリスデータの少なくとも一部を含むことにより、移動体端末がさらに短時間で測位衛星を捕捉することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態では、受信工程で、受信装置が、測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データに含まれる軌道情報を送信し、軌道情報伝送工程で、伝送装置が、受信工程で送信された軌道情報を伝送し、軌道情報受信工程で、移動体端末が、軌道情報伝送工程で伝送された軌道情報を受信し、航法データ受信工程で、移動体端末が、測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信し、測位工程で、移動体端末が、軌道情報受信工程で受信された軌道情報と航法データ受信工程で受信された航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行うことにより、移動体端末がより短時間で測位衛星を捕捉することが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態では、地図サーバ装置において、受信部が、受信装置が受信した航法データに含まれる軌道情報を受信し、蓄積部が、地図情報を蓄積し、伝送部が、移動体端末に、受信部が受信した軌道情報と蓄積部に蓄積された地図情報とを伝送することにより、移動体端末が測位のために利用する情報と測位の結果を出力するために利用する情報との両方を地図サーバ装置から提供することができる。
【0060】
実施の形態2.
本実施の形態に係る無線通信システム及び測位システムの構成は、図1に示した実施の形態1のものと同様である。また、本実施の形態におけるパッシブ型タグ、セミパッシブ型タグ、携帯電話機、地図サーバ装置の構成は、それぞれ図2、図3、図4、図5に示した実施の形態1のものと同様である。また、本実施の形態に係る無線通信システム及び測位システムの動作は、例えば、それぞれ図8及び図9に示した実施の形態1のものと同様である。
【0061】
図10は、本実施の形態における無線リーダ/ライタ及びタグの設置例を示す図である
図10の例では、1つの通路の両側に店舗が並んでおり、各店舗の入口にタグが設置されている。無線リーダ/ライタ100は、通路の真ん中付近の、例えば天井部分に設置されており、タグに対して連続波を照射している。各タグはメモリにそれぞれの区別情報としてIDを保持する。無線リーダ/ライタ100から向かって左側に設置されたタグは奇数のIDを、右側に設置されたタグは偶数のIDを保持しているものとする。
【0062】
図10の例では、向かい合う店舗に設置されたタグが送信する電波の干渉を避けるため、奇数のIDを持つタグがデータを放送している間は偶数のIDを持つタグが放送を停止し、偶数のIDを持つタグがデータを放送している間は奇数のIDを持つタグが放送を停止するように、無線リーダ/ライタ100が各タグを制御している。
【0063】
図11は、本実施の形態における無線リーダ/ライタが照射する電波に乗せて送信する命令データの一例を示す図である。この図において、説明の便宜上、無線リーダ/ライタ100が照射する電波を波形で示し、電波が無変調のときの波を小さく、電波が負荷変調されているときの波を大きく表しているが、波の大小は必ずしも振幅の大小を示すものではない。
【0064】
無線リーダ/ライタ100は、図11のように、時間ごとにタグを制御するコマンドを送信する。例えば、データを放送するタグとして偶数のIDを持つタグを選択した場合、無線リーダ/ライタ100は、まず「放送不許可(ID=奇数)」を示すコマンドを作成し、このコマンドにより照射する電波を負荷変調してコマンドを送信する。コマンドを受信したタグは、そのタグが保持するIDが奇数であれば、データの放送を停止する。次に、無線リーダ/ライタ100は、「放送許可(ID=偶数)」を示すコマンドを作成し、このコマンドを送信する。コマンドを受信したタグは、そのタグが保持するIDが偶数であれば、データの放送を開始する。
【0065】
本実施の形態では、無線リーダ/ライタ100が、データの放送を許可するタグをIDが奇数であるか偶数であるかによって指定しているが、例えばIDを指定してタグごとに放送の許可又は不許可を通知してもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態では、電波照射装置が、データを放送させる無線通信装置を選択し、選択した結果に基づいて、各無線通信装置を区別する区別情報を含む命令データを送信し、命令データを送信する場合、照射する電波を前記命令データにより変調し、各無線通信装置が、電波照射装置が照射する電波を復調して命令データを取得し、取得した命令データに含まれる区別情報により、記憶部に記憶されたデータを放送するか否かを判断することにより、無線通信装置同士の電波の干渉を抑制することが可能となる。
【0067】
実施の形態3.
本実施の形態におけるパッシブ型タグ、セミパッシブ型タグ、地図サーバ装置の構成は、それぞれ図2、図3、図5に示した実施の形態1のものと同様である。また、本実施の形態に係る無線通信システムの動作は、例えば、図8に示した実施の形態1のものと同様である。
【0068】
図12は、本実施の形態に係る無線通信システム及び測位システムの構成を示すブロック図である。以下では、図1に示した実施の形態1に係る無線通信システム及び測位システムの構成と異なる部分について説明する。
【0069】
測位システムは、例えばDGPS(ディファレンシャルGPS)の機能を持つ補正システムを有し、補正システムは、予め位置座標が分かっている基準局750を有する。
【0070】
基準局750は、GPSアンテナを有し、GPS衛星500から航法データを受信して測位を行う。基準局750は、測位を行うとともに、電離層やGPS衛星500の軌道誤差などに起因する本当の位置(既知のデータ)との誤差を、位置座標の差やGPS衛星500との疑似距離の誤差として演算し、演算した結果を補正データとして、ネットワーク450を介して無線LANアクセスポイント600又は地図サーバ装置400に送信する。この補正データは軌道情報と同様、携帯電話機300に伝送される。地図サーバ装置400が補正データを受信する場合、軌道情報と同様、受信部401が補正データを受信し、伝送部403が、無線LANアクセスポイント600を介して、又は直接携帯電話機300に、受信部401が受信した補正データを伝送する。
【0071】
図13は、本実施の形態における携帯電話機の構成を示すブロック図である。以下では、図4に示した実施の形態1における携帯電話機の構成と異なる部分について説明する。
【0072】
携帯電話機300は、補正データ受信部308、補正部309を有する。補正データ受信部308は、無線LANアクセスポイント600から基準局750が演算した補正データを受信する。補正部309は、補正データ受信部308が受信した補正データを用いて、測位部307が行った測位の誤差を補正する。
【0073】
図14は、本実施の形態に係る測位システムの動作を示すフロー図である。
【0074】
まず、受信装置700が、GPS衛星500から航法データを受信し(ステップS301)、航法データの軌道情報を送信する(ステップS302)(ステップS301〜S302:受信工程)。無線LANアクセスポイント600は、受信装置700が送信した軌道情報を携帯電話機300に伝送する(ステップS303:軌道情報伝送工程)。そして、携帯電話機300において、軌道情報受信部305が無線LANアクセスポイント600から軌道情報を受信する(ステップS304:軌道情報受信工程)。
【0075】
次に、基準局750が、GPS衛星500から航法データを受信し(ステップS305)、測位を行うとともに補正データを演算し(ステップS306)、演算した補正データを送信する(ステップS307)(ステップS305〜S307:補正データ送信工程)。無線LANアクセスポイント600は、基準局750が送信した補正データを携帯電話機300に伝送する(ステップS308:補正データ伝送工程)。そして、携帯電話機300において、補正データ受信部308が無線LANアクセスポイント600から補正データを受信する(ステップS309:補正データ受信工程)。
【0076】
携帯電話機300が閉空間から開放空間に移動すると(ステップS310)、携帯電話機300において、航法データ受信部306がGPS衛星500から航法データを受信する(ステップS311:航法データ受信工程)。そして、ステップS304で軌道情報受信部305が受信した軌道情報とステップS311で航法データ受信部306が受信した航法データとを用いて測位部307が測位を行う(ステップS312:測位工程)。続いて、携帯電話機300は、ステップS309で補正データ受信部308が受信した補正データを用いて補正部309が測位の誤差を補正する(ステップS313:補正工程)。
【0077】
以上のように、本実施の形態では、移動体端末において、補正データ受信部が、伝送装置を介して、補正システムが演算した補正データを受信し、補正部が、補正データ受信部が受信した補正データを用いて、測位部が行った測位の誤差を補正することにより、移動体端末が閉空間から開放空間に移動した直後の測位精度を向上させることが可能となる。
【0078】
また、本実施の形態では、基準局が、測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データと既知のデータとに基づいて補正データを演算し、演算した補正データを送信し、伝送装置が、基準局が送信した補正データを移動体端末に伝送することにより、移動体端末が閉空間から開放空間に移動した直後の測位精度をさらに向上させることが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態では、補正データ送信工程で、補正システムが、測位の誤差を補正する補正データを演算し、演算した補正データを送信し、補正データ伝送工程で、伝送装置が、補正データ送信工程で送信された補正データを伝送し、補正データ受信工程で、移動体端末が、補正データ伝送工程で伝送された補正データを受信し、補正工程で、移動体端末が、補正データ受信工程で受信された補正データを用いて、測位工程で行われた測位の誤差を補正することにより、移動体端末が閉空間から開放空間に移動した直後の測位精度を向上させることが可能となる。
【0080】
実施の形態4.
本実施の形態におけるパッシブ型タグ、セミパッシブ型タグ、地図サーバ装置の構成は、それぞれ図2、図3、図5に示した実施の形態1のものと同様である。また、本実施の形態に係る無線通信システムの動作は、例えば、図8に示した実施の形態1のものと同様である。
【0081】
図15は、本実施の形態に係る無線通信システム及び測位システムの構成を示すブロック図である。以下では、図1に示した実施の形態1に係る無線通信システム及び測位システムの構成と異なる部分について説明する。
【0082】
測位システムは、例えば面補正パラメータを用いたFKP−DGPS(Flauchen Korrectur Paramater−ディファレンシャルGPS)の機能を持つ補正システムを有し、補正システムは、複数の参照局800、補正サーバ装置850を有する。
【0083】
参照局800は、GPSアンテナを有し、GPS衛星500から航法データを受信し、航法データを参照データとして送信する。複数の参照局800のうち1つを、図15のように受信装置700として利用してもよいが、参照局800とは別に受信装置700が存在していてもよい。
【0084】
補正サーバ装置850は、複数の参照局800から送信された参照データに基づいて、各参照局800の擬似距離補正情報を演算する。補正サーバ装置850は、演算した擬似距離補正情報を各参照局800の位置情報と対応付け、補正データとして、ネットワーク450を介して無線LANアクセスポイント600又は地図サーバ装置400に送信する。この補正データは軌道情報と同様、携帯電話機300に伝送される。地図サーバ装置400が補正データを受信する場合、軌道情報と同様、受信部401が補正データを受信し、伝送部403が、無線LANアクセスポイント600を介して、又は直接携帯電話機300に、受信部401が受信した補正データを伝送する。
【0085】
本実施の形態における携帯電話機の構成は、図13に示した実施の形態3のものと同様である。
【0086】
携帯電話機300において、補正データ受信部308は、無線LANアクセスポイント600から補正サーバ装置850が演算した補正データを受信する。補正部309は、補正データ受信部308が受信した補正データを用いて、測位部307が行った測位の誤差を補正する。
【0087】
ここで、携帯電話機300が、軌道情報受信部305が受信した軌道情報と航法データ受信部306が受信した航法データとを補正サーバ装置850に送信し、補正サーバ装置850が各参照局800の位置情報と擬似距離補正情報と、携帯電話機300からの軌道情報と航法データとに基づいて、携帯電話機300の位置を測定し、測定の結果を携帯電話機300に通知してもよい。この場合、携帯電話機300が補正データ受信部308及び補正部309を有する必要はなく、補正サーバ装置850が代わりに同様の機能を有することになる。
【0088】
図16は、本実施の形態に係る測位システムの動作を示すフロー図である。
【0089】
まず、受信装置700が、GPS衛星500から航法データを受信し(ステップS401)、航法データの軌道情報を送信する(ステップS402)(ステップS401〜S402:受信工程)。無線LANアクセスポイント600は、受信装置700が送信した軌道情報を携帯電話機300に伝送する(ステップS403:軌道情報伝送工程)。そして、携帯電話機300において、軌道情報受信部305が無線LANアクセスポイント600から軌道情報を受信する(ステップS404:軌道情報受信工程)。
【0090】
次に、参照局800が、GPS衛星500から航法データを受信し(ステップS405)、航法データから参照データを求めて(ステップS406)、求められた参照データを送信する(ステップS407)。続いて、補正サーバ装置850が、複数の参照局800から参照データを受信し(ステップS408)、参照データに基づいて補正データを演算し(ステップS409)、演算した補正データを送信する(ステップS410)(ステップS405〜S410:補正データ送信工程)。無線LANアクセスポイント600は、補正サーバ装置850が送信した補正データを携帯電話機300に伝送する(ステップS411:補正データ伝送工程)。そして、携帯電話機300において、補正データ受信部308が無線LANアクセスポイント600から補正データを受信する(ステップS412:補正データ受信工程)。
【0091】
携帯電話機300が閉空間から開放空間に移動すると(ステップS413)、携帯電話機300において、航法データ受信部306がGPS衛星500から航法データを受信する(ステップS414:航法データ受信工程)。そして、ステップS404で軌道情報受信部305が受信した軌道情報とステップS414で航法データ受信部306が受信した航法データとを用いて測位部307が測位を行う(ステップS415:測位工程)。続いて、携帯電話機300は、ステップS412で補正データ受信部308が受信した補正データを用いて補正部309が測位の誤差を補正する(ステップS416:補正工程)。
【0092】
以上のように、本実施の形態では、複数の参照局が、測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データから得られる参照データを送信し、補正サーバ装置が、複数の参照局から受信した参照データに基づいて補正データを演算し、演算した補正データを送信し、伝送装置が、補正サーバ装置が送信した補正データを移動体端末に伝送することにより、移動体端末が閉空間から開放空間に移動した直後の測位精度をさらに向上させることが可能となる。
【0093】
前述した各実施の形態で、無線リーダ/ライタ100、店舗端末150、地図サーバ装置400、無線LANアクセスポイント600、補正サーバ装置850は、コンピュータで実現できるものである。
【0094】
図示していないが、無線リーダ/ライタ100、店舗端末150、地図サーバ装置400、無線LANアクセスポイント600、補正サーバ装置850は、プログラムを実行するCPUを備えている。
【0095】
例えば、CPUは、バスを介して、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信ボード、表示装置、K/B(キーボード)、マウス、FDD(Flexible Disk Drive)、CDD(コンパクトディスクドライブ)、磁気ディスク装置、光ディスク装置、プリンタ装置、スキャナ装置などと接続されている。
【0096】
RAMは、揮発性メモリの一例である。ROM、FDD、CDD、磁気ディスク装置、光ディスク装置は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置あるいは記憶部の一例である。
【0097】
前述した各実施の形態の無線リーダ/ライタ100、店舗端末150、地図サーバ装置400、無線LANアクセスポイント600、補正サーバ装置850が扱うデータや情報は、記憶装置あるいは記憶部に保存され、無線リーダ/ライタ100、店舗端末150、地図サーバ装置400、無線LANアクセスポイント600、補正サーバ装置850の各部により、記録され読み出されるものである。
【0098】
また、通信ボードは、例えば、LAN、インターネット、あるいはISDN(Integrated Services Digital Network)などのWAN(ワイドエリアネットワーク)に接続されている。
【0099】
磁気ディスク装置には、オペレーティングシステム(OS)、ウィンドウシステム、プログラム群、ファイル群(データベース)が記憶されている。プログラム群は、CPU、OS、ウィンドウシステムにより実行される。
【0100】
上記無線リーダ/ライタ100、店舗端末150、地図サーバ装置400、無線LANアクセスポイント600、補正サーバ装置850の各部は、一部あるいはすべてコンピュータで動作可能なプログラムにより構成しても構わない。あるいは、ROMに記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。あるいは、ソフトウェアあるいは、ハードウェアあるいは、ソフトウェアとハードウェアとファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。
【0101】
上記プログラム群には、実施の形態の説明において「〜部」として説明した処理をCPUに実行させるプログラムが記憶される。これらのプログラムは、例えば、C言語やHTML(HyperText Markup Language)やSGML(Standard Generalized Markup Language)やXML(eXtensible Markup Language)などのコンピュータ言語により作成される。
【0102】
また、上記プログラムは、磁気ディスク装置、FD(Flexible Disk)、光ディスク、CD(コンパクトディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)などのその他の記録媒体に記憶され、CPUにより読み出され実行される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施の形態1に係る無線通信システム及び測位システムの構成を示すブロック図。
【図2】実施の形態1におけるパッシブ型タグの構成を示すブロック図。
【図3】実施の形態1におけるセミパッシブ型タグの構成を示すブロック図。
【図4】実施の形態1における携帯電話機の構成を示すブロック図。
【図5】実施の形態1における地図サーバ装置の構成を示すブロック図。
【図6】実施の形態1における無線リーダ/ライタ及びタグの設置例を示す図。
【図7】実施の形態1における無線リーダ/ライタが照射する電波に乗せて送信する命令データの一例を示す図。
【図8】実施の形態1に係る無線通信システムの動作の一例を示すフロー図。
【図9】実施の形態1に係る測位システムの動作の一例を示すフロー図。
【図10】実施の形態2における無線リーダ/ライタ及びタグの設置例を示す図。
【図11】実施の形態2における無線リーダ/ライタが照射する電波に乗せて送信する命令データの一例を示す図。
【図12】実施の形態3に係る無線通信システム及び測位システムの構成を示すブロック図。
【図13】実施の形態3における携帯電話機の構成を示すブロック図。
【図14】実施の形態3に係る測位システムの動作の一例を示すフロー図。
【図15】実施の形態4に係る無線通信システム及び測位システムの構成を示すブロック図。
【図16】実施の形態4に係る測位システムの動作の一例を示すフロー図。
【符号の説明】
【0104】
100 無線リーダ/ライタ、150 店舗端末、200 パッシブ型タグ、201 検波部、202 蓄電部、203 変復調部、204 制御部、205 メモリ、206 放送部、250 セミパッシブ型タグ、252 電池、300 携帯電話機、301 位置情報受信部、302 地図情報受信部、303 制御部、304 出力部、305 軌道情報受信部、306 航法データ受信部、307 測位部、08 補正データ受信部、309 補正部、400 地図サーバ装置、401 受信部、402 地図情報データベース、403 伝送部、450 ネットワーク、500 GPS衛星、600 無線LANアクセスポイント、650 LAN、700 受信装置、750 基準局、800 参照局、850 補正サーバ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データに含まれる軌道情報を送信する受信装置と、
前記受信装置が送信した軌道情報を伝送する伝送装置と、
測位衛星の航法データに基づいて測位を行う移動体端末とを備え、
前記移動体端末は、
前記伝送装置が伝送した軌道情報を受信する軌道情報受信部と、
測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信する航法データ受信部と、
前記軌道情報受信部が受信した軌道情報と前記航法データ受信部が受信した航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行う測位部とを備えることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記測位システムは、さらに、
測位の誤差を補正する補正データを演算し、演算した補正データを送信する補正システムを備え、
前記伝送装置は、
前記補正システムが送信した補正データを伝送し、
前記移動体端末は、さらに、
前記伝送装置が伝送した補正データを受信する補正データ受信部と、
前記補正データ受信部が受信した補正データを用いて、前記測位部が行った測位の誤差を補正する補正部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記補正システムは、
測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データと既知のデータとに基づいて前記補正データを演算し、演算した補正データを送信する基準局を備え、
前記伝送装置は、
前記基準局が送信した補正データを前記移動体端末に伝送することを特徴とする請求項2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記補正システムは、
測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データから得られる参照データを送信する参照局と、
複数の参照局から受信した参照データに基づいて前記補正データを演算し、演算した補正データを送信する補正サーバ装置とを備え、
前記伝送装置は、
前記補正サーバ装置が送信した補正データを前記移動体端末に伝送することを特徴とする請求項2に記載の測位システム。
【請求項5】
前記測位システムは、さらに、
地図情報を蓄積し、蓄積する地図情報を送信する地図サーバ装置を備え、
前記移動体端末は、
前記地図サーバ装置が送信した地図情報を受信する地図情報受信部と、
前記測位部が行った測位の結果と前記地図情報受信部が受信した地図情報とに基づいて現在地を示す地図を出力する出力部とを備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の測位システム。
【請求項6】
前記軌道情報は、GPS(全地球測位システム)のエフェメリスデータの少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の測位システム。
【請求項7】
受信装置が、測位衛星から航法データを受信し、受信した航法データに含まれる軌道情報を送信する受信工程と、
伝送装置が、前記受信工程で送信された軌道情報を伝送する軌道情報伝送工程と、
移動体端末が、前記軌道情報伝送工程で伝送された軌道情報を受信する軌道情報受信工程と、
移動体端末が、測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信する航法データ受信工程と、
移動体端末が、前記軌道情報受信工程で受信された軌道情報と前記航法データ受信工程で受信された航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行う測位工程とを備えることを特徴とする測位方法。
【請求項8】
前記測位方法は、さらに、
補正システムが、測位の誤差を補正する補正データを演算し、演算した補正データを送信する補正データ送信工程と、
伝送装置が、前記補正データ送信工程で送信された補正データを伝送する補正データ伝送工程と、
移動体端末が、前記補正データ伝送工程で伝送された補正データを受信する補正データ受信工程と、
移動体端末が、前記補正データ受信工程で受信された補正データを用いて、前記測位工程で行われた測位の誤差を補正する補正工程とを備えることを特徴とする請求項7に記載の測位方法。
【請求項9】
測位衛星の航法データに基づいて測位を行う移動体端末において、
データを伝送する伝送装置を介して、測位衛星から航法データを受信する受信装置が受信した航法データに含まれる軌道情報を受信する軌道情報受信部と、
測位衛星から航法データの少なくとも一部を受信する航法データ受信部と、
前記軌道情報受信部が受信した軌道情報と前記航法データ受信部が受信した航法データの少なくとも一部とに基づいて測位を行う測位部とを備えることを特徴とする移動体端末。
【請求項10】
測位衛星から航法データを受信する受信装置から、前記受信装置が受信した航法データに含まれる軌道情報を受信する受信部と、
地図情報を蓄積する蓄積部と、
測位衛星の航法データに基づいて測位を行う移動体端末に、前記受信部が受信した軌道情報と前記蓄積部に蓄積された地図情報とを伝送する伝送部とを備えることを特徴とする地図サーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−266876(P2006−266876A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85430(P2005−85430)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】