説明

炭化珪素半導体装置の製造方法および炭化珪素半導体装置

【課題】炭化珪素半導体装置の製造において、上面が平坦な終端構造とリセス状のアライメントマークとを少ないマスク数で形成すると共に、アライメントマークのリセスの深さを最適化する。
【解決手段】ハーフトーン露光法を用いて、SiCエピタキシャル層2に達する第1の開口部12aとSiCエピタキシャル層2に達しない第2の開口部とを有するレジストパターン11を、SiCエピタキシャル層2上に形成する。エッチングにより、第1の開口部12aに露出したSiCエピタキシャル層2にリセス状のアライメントマーク9を形成すると同時に第2の開口部12bをSiCエピタキシャル層2に到達させる。その後、イオン注入により、第2の開口部12bに露出したSiCエピタキシャル層2に、終端領域8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に半導体素子の終端構造およびアライメントマークの形成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、炭化珪素(SiC)を用いた半導体素子が有望視されており、インバータなどのパワー半導体装置への適用が期待されている。しかしSiC半導体装置には、多くの解決すべき課題が残されている。その一つは、半導体素子の外周部である終端部(例えばショットキーバリアダイオードのショットキー電極の端部や、pnダイオードやMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のpn接合の端部)における電界集中より半導体装置の耐電圧特性が低下する問題である。
【0003】
半導体素子の終端部に生じる電界を緩和する終端構造の代表例としては、ガードリング構造や、JTE(Junction Termination Extension)構造、FLR(Field Limiting Ring)構造等がある(例えば特許文献1,2)。これらはいずれも半導体素子を囲むように形成される不純物領域である。一般に、JTE構造は表面電界を低減する目的で設けられ、半導体素子の終端部から外へ向けて段階的に不純物濃度が低くなる構造を有している。これに対し、FLR構造は、同じ濃度の複数の不純物領域から成る。
【0004】
例えば下記の特許文献1には、ガードリングとJTEとを組み合わせた終端構造が開示されている。特許文献1の終端構造は、ガードリングの外側に、当該ガードリングよりも不純物濃度を低くしたJTEが配設された構造である。また特許文献1では、ガードリングおよびJTEを、半導体層表面に設けたリセスの下に形成することにより、電界集中が生じ易いガードリングおよびJTEの底端部と半導体層表面との距離を長くし、半導体層表面の電界を更に緩和させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/116444号
【特許文献2】特開2010−68008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、シリコン(Si)にイオン注入された不純物はある程度拡散するが、SiCにイオン注入された不純物はほとんど拡散しない。そのため特許文献1のようにSiC半導体装置のガードリングやJTE等の不純物領域(以下「終端領域」)をリセスの下に形成すると、リセスの底部の極近傍に、不純物濃度の高い終端領域が形成される。終端領域の不純物濃度が高いと、高電圧が印加されたときの空乏層の伸びが小さく、終端領域内に高電界が生じる。特に、終端領域上のリセスの底端部では電界集中が生じ易いため、その部分で絶縁破壊を引き起こす原因となる。
【0007】
その対策として、特許文献1の終端構造では、終端領域をその上のリセスの外縁部にまで広げて形成している(すなわち各終端領域の幅がその上のリセスの幅よりも広い)。それにより、終端領域の縦断面積が大きくなるので、リセス底端部での電界集中が緩和される。しかし終端領域をリセスよりも幅広に形成するためには、リセスを形成するエッチング用のマスク(エッチングマスク)と、終端領域を形成するイオン注入用のマスク(注入マスク)とをそれぞれ個別に用意する必要があり、製造工程が複雑化するため、製造時間の長期化とコストの増大が問題となる。
【0008】
そのためSiC半導体装置においては、製造工程の簡略化と終端領域の高耐圧化の両立の観点から、特許文献2のように、リセスを有さず上面が平坦な終端構造が好ましい場合がある。しかし,SiC半導体の製造では各注入マスクの位置合わせのためのリセス状のアライメントマークを基板上に直接形成する必要があるため、従来の製造方法では、上面が平坦な終端構造を用いる場合でも、終端領域形成用の注入マスクとは別に、アライメントマーク形成用のエッチングマスクが必要となっていた。
【0009】
また従来はリセス状のアライメントマークの深さが最適化されておらず、アライメントマークを覆う膜の屈折率が製造工程の途中で変化すると、アライメントマーク検出用の回折光の強度が大きく変化する。その場合、アライメントマークを用いたマスクの位置決め精度が低下して、重ね合わせ誤差が大きくなることがあった。その結果、半導体装置の製造の歩留まりが低下するという問題が生じる。
【0010】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、上面が平坦な終端構造とリセス状のアライメントマークを備える炭化珪素半導体装置の製造において、必要なマスク数を少なくすると共に、アライメントマークのリセスの深さの最適化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、(a)炭化珪素の半導体層上にフォトレジストを塗布する工程と、(b)ハーフトーン露光法を用いて前記フォトレジストを露光して現像することにより、前記フォトレジストに、前記半導体層まで達する第1の開口部および前記半導体層まで達しない第2の開口部を形成する工程と、(c)前記フォトレジストをマスクとするエッチングにより、前記第1の開口部に露出した部分の前記半導体層にリセス状のアライメントマークを形成すると同時に前記第2の開口部を前記半導体層に到達させる工程と、(d)前記工程(c)の後に、前記フォトレジストをマスクにして不純物をイオン注入することにより、前記第2の開口部に露出した部分の前記半導体層に、半導体素子の終端領域を形成する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上面が平坦な終端構造とリセス状のアライメントマークとを同一のマスクを用いて形成することができるため、従来よりも必要なマスク数を減らすことができ、製造コストの削減に寄与できる。また製造工程中にアライメントマークを覆う膜が変化しても、アライメントマーク検出用の回折光の強度を高く維持できる。また終端領域の上面に段差が無いため終端領域上面部における電界集中を防止でき、高耐圧な構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の終端構造およびアライメントマークの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図6】レジスト残厚と露光量との関係の例を示す図である。
【図7】アライメントマークのエッジ部の拡大断面図である。
【図8】アライメントマークのエッジの上部および下部からの回折光の正規化された強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の終端構造およびアライメントマークの構成を示す図である。ここではその一例として、炭化珪素(SiC)半導体を用いて形成したショットキーバリアダイオードの外周部に、終端領域としてガードリングを配設した構成を示している。
【0015】
当該半導体装置は、n型のSiC基板1と、当該SiC基板1の上面(第1主面)上に成長させたn型のSiCエピタキシャル層2とから成るエピタキシャル基板を用いて形成されている。SiCエピタキシャル層2の上面には、当該SiCエピタキシャル層2とショットキー接続するショットキー電極3を介して表面電極4が配設される。当該半導体装置の上面はポリイミド等の表面保護膜7で覆われるが、表面電極4は配線を接続するためのパッド電極として機能するため、表面保護膜7における表面電極4上の部分は除去されている。またSiC基板1の下面(第2主面)には、SiC基板1とオーミック接続するオーミック電極5を介して裏面電極6が配設される。
【0016】
SiCエピタキシャル層2の上面部分におけるショットキー電極3の端部下を含む領域には、ショットキー電極3の端部下での電界集中を抑制するため、p型の不純物領域である終端領域8(ガードリング)が形成されている。図1の如く、終端領域8の上面はリセスが形成されておらず平坦である。そのため終端領域8の上面での電界集中をより緩和することができる。
【0017】
またSiCエピタキシャル層2の上面には、各種マスクの位置合わせに用いられるアライメントマーク9が形成されている。詳細は後述するが、本実施の形態の半導体装置には、アライメントマーク9の下にも終端領域8と同様のp型の不純物領域8aが形成されることになる。
【0018】
図2〜図5は、図1に示したショットキーバリアダイオードおよびその終端構造、並びにアライメントマークの形成方法を示す工程図である。以下、これらの図に基づいて、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0019】
まず、n型のSiC基板1を用意し、その上にn型のSiCエピタキシャル層2を成長させる。SiC基板1としては、例えば4Hのポリタイプを有し、上面(第1主面)が面方位(0001)から一定のオフ角だけ傾いたものを使用することができる。SiCエピタキシャル層2は、ドーピング濃度が1〜20×1015/cm3、膜厚が3〜20μm程度とする。SiC基板1およびSiCエピタキシャル層2に導入するn型不純物は例えば窒素(N)等である。
【0020】
SiCエピタキシャル層2上に酸化膜(図示せず)を形成した上で、終端領域8を形成するためのイオン注入マスクと、アライメントマーク9を形成するためのエッチングマスクを兼ねたレジストパターン11をハーフトーン露光法を用いて形成する(図2)。ハーフトーン露光法は、光の一部を遮るハーフトーンマスクを含むフォトマスクを用いて露光を行うものであり、1回の露光により露光部分、中間露光部分、未露光部分を作ることができる。フォトレジストをハーフトーン露光して現像すると、2種類の厚さを持つマスク(2種類の深さ開口を持つマスク)を形成できる。
【0021】
本実施の形態では図2に示すように、現像後のレジストパターン11が、アライメントマーク9の形成領域上で完全に除去され、終端構造部24の形成領域上では薄く残るようにする。つまり現像後のレジストパターン11は、SiCエピタキシャル層2に達する第1の開口部12aをアライメントマーク9の形成領域上に有すると共に、SiCエピタキシャル層2に達しない第2の開口部12bを終端構造部24の形成領域上に有することになる。終端領域8の形成領域(第2の開口部12bの底部)に残すレジストパターン11の厚さについては後述する。
【0022】
次に、レジストパターン11をマスクに用いるエッチングにより、SiCエピタキシャル層2にリセス状のアライメントマーク9を形成する(図3)。このエッチングによって、終端領域8の形成領域上に薄く残したレジストパターン11が除去され、その部分のSiCエピタキシャル層2の上面が露出する。つまり第2の開口部12bの底部のレジストパターン11が除去されて、第2の開口部12bがSiCエピタキシャル層2に達するようになる。
【0023】
但し、このとき終端領域8の形成領域の上面まで削られてその部分に段差が生じない程度に、アライメントマーク9のリセスの深さは浅くする。言い換えれば、ハーフトーン露光法を用いてレジストパターン11を形成する際に終端領域8の形成領域に残存させるレジストパターン11の厚さは、このエッチングによってちょうど除去される程度の厚さとする。
【0024】
終端領域8の形成領域の上面を平坦に維持する理由は、上記したように、終端領域8の上面に段差があるとその段差部分に電界集中が生じやすく耐圧特性が劣化する要因となり得るからである。特にSiC半導体では不純物が拡散しにくく、終端領域8の上面部の不純物濃度が高くなり、その傾向が顕著であるため効果的である。
【0025】
従って本実施の形態では、ハーフトーン露光法を用いてレジストパターン11を形成する際、終端領域8の形成領域に残存させるレジストパターン11の厚さを精度よく制御する必要がある。図6は、典型的なフォトレジストの感度曲線、すなわち露光量とレジスト残厚との関係の例を示す図である。同図の如く、露光量に対するレジスト残厚の変化量は、レジスト残厚が大きい領域では大きいが、レジスト残厚が小さい領域では小さくなる。例えば、レジスト残量を塗布膜厚の50%程度にしようとすると、露光量の揺らぎがレジスト残厚に大きく影響するためレジストの厚さの精度よく制御することは困難であるが、レジスト残量を塗布膜厚の20%以下にすれば、露光量の揺らぎの影響が小さい(露光裕度が大きい)のでレジストの厚さを高い精度で制御できる。より具体的には、レジスト残量の設定値は、レジスト残量の露光量に対する変動量が、レジスト残量を塗布膜厚の50%にする場合の1/2以下に抑えられる領域(つまり感度曲線の傾きがレジスト残量を塗布膜厚の50%にする場合の1/2以下になる領域)の値にすることが望ましい。
【0026】
また、終端領域8の形成領域に残存させるレジストパターン11の厚さが不足した場合だけでなく、アライメントマーク9を形成するエッチングの際にプロセス変動が生じてエッチング量が過剰になった場合にも、終端領域8の形成領域に段差が形成される可能性がある。これらを確実に防止するためには、エンドポイントモニタを用いて、終端領域8の形成領域上のレジストパターン11の残厚を測定しながらエッチングを行い、その残厚がゼロになったこと(第2の開口部12bがSiCエピタキシャル層2に達したこと)を検知した段階でエッチングを停止させるとよい。
【0027】
上記のエッチングによりリセス状のアライメントマーク9を形成した後、残存するレジストパターン11をマスクに用いてp型不純物をイオン注入することにより、終端領域8を形成する(図4)。p型不純物としては、例えばアルミニウム(Al)が挙げられる。このときのレジストパターン11においては、第1の開口部12aおよび第2の開口部12bの両方がSiCエピタキシャル層2に達しているので、p型不純物は終端領域8の部分だけでなく、アライメントマーク9の底部にもイオン注入される。よってアライメントマーク9の底部には、終端領域8と同様の不純物領域8aが形成される。
【0028】
続いてレジストパターン11を除去し、終端領域8に導入したp型不純物を活性化させるために、SiC基板1およびSiCエピタキシャル層2を1500℃以上の温度に加熱する(図5)。
【0029】
その後、SiC基板1の下面(裏面)に、例えばニッケル(Ni)等の金属膜を形成してアニールを行うことで、シリサイド(例えばNiSi)のオーミック電極5を形成する。またSiC基板1の上面に例えばチタン(Ti)等の金属膜を形成し、レジストパターン(不図示)をマスクとするウェットエッチングによりパターニングすることでショットキー電極3を形成する。さらにSiCエピタキシャル層2上にアルミニウム等の金属膜を成膜してパターニングすることで、ショットキー電極3の上に表面電極4を形成する。そしてSiCエピタキシャル層2および表面電極4上に、ポリイミド等の表面封止材料を塗布して焼成することで表面保護膜7を形成する。
【0030】
最後にSiC基板1の下面に裏面電極6を形成する。裏面電極6としては、例えばNi層とAu層の二層構造を用いることができ、その場合、半導体装置の裏面を半田を用いてダイボンドする際、半田の濡れ性が良好になる。
【0031】
以上の工程により、図1に示したショットキーバリアダイオードおよびその終端構造である終端領域8、並びにリセス状のアライメントマーク9が形成される。
【0032】
ここで、本実施の形態の半導体装置におけるアライメントマーク9は、深さが非常に浅い点に特徴がある。以下、アライメントマーク9の深さ(段差の高さ)について説明する。
【0033】
一般に半導体装置の製造の露光工程にはステッパーが用いられている。ステッパーで使用されるアライメントマークは、例えば特公平6−72766号公報に示されているように矩形パターンを複数個並べた構成となっている。その場合、アライメントマークの検出は、それら複数の矩形パターンからの回折光が重畳した光を検出することによって行われる。
【0034】
図7は、ひとつのアライメントマーク9のエッジ部分の拡大断面図である。アライメントマーク9の位置を検出する際、SiCエピタキシャル層2の上面にはマーク検出用のレーザ光(マーク検出用照射光)が照射される。
【0035】
図7のように、SiCエピタキシャル層2の上面に垂直な方向から、マーク検出用照射光40がアライメントマーク9に入射したとする。SiCエピタキシャル層2に到達したマーク検出用照射光40の大半は反射光41となるが、その一部はアライメントマーク9のエッジ部で反射して回折光41aとなる。さらに回折光41aの一部は、アライメントマーク9の位置を検出するための光学経路に進入する、マーク検出用回折光41bとなる。
【0036】
アライメントマーク9のエッジの上部で回折されたマーク検出用回折光41b1と、下部で回折されたマーク検出用回折光41b1とが干渉するため、結果として、それらを含むマーク検出用回折光41bの強度は、そのマーク検出用回折光41b1,41b2の位相差によって決まる。2つのマーク検出用回折光41b1,41b2の位相差は両者の経路差に依存するため、マーク検出用回折光41bの強度はアライメントマーク9のエッジの段差によって決まることになる。
【0037】
図8は、アライメントマーク9の深さ(エッジの段差)とマーク検出用回折光41b1,41b2による正規化された光強度を示す図である。図8に示す実線は、アライメントマーク9が屈折率が1.6のレジストで覆われている場合を示し、破線はアライメントマーク9が屈折率が4のポリシリコンで覆われている場合を示している。またどちらの場合もマーク検出用照射光40の波長は633nmであるとする。
【0038】
図8から分かるように、2つのマーク検出用回折光41b1,41b2の正規化された光強度が1に近づくためのアライメントマーク9の段差は、アライメントマーク9を覆う膜の材質によって異なる。図8に示す例では、アライメントマーク9の段差が0nm付近と400nm付近のときに、アライメントマーク9がレジストとポリシリコンのどちらで覆われていても、マーク検出用回折光41bが強くなる。特に、アライメントマーク9の段差が0nm付近の場合は、マーク検出用回折光41b1,41b2の経路差が小さいので、アライメントマーク9がレジストやポリシリコン以外のあらゆる膜で覆われていても、マーク検出用回折光41bは強くなる。
【0039】
また、アライメントマーク9のエッジの段差が深い時には、エッチングにより段差が逆テーパ形状になったり、段差下の形状がくぼんだりすることにより、段差の下部からのマーク検出用回折光41b1をアライメントマーク9の検出に利用できない場合がある。このような場合には、段差の上部および下部からのマーク検出用回折光41b1,41b2の干渉は生じることがなく、アライメントマーク9検出のための光の強度を確保するのが困難になる。
【0040】
よって本実施の形態のように、アライメントマーク9のエッジの段差を極めて浅くすると、アライメントマーク9を覆う膜の材質を問わず、常に強いマーク検出用回折光41bを得ることができる。具体的には、半導体装置の製造におけるアライメントマーク9を検出する工程の際にアライメントマーク9上に形成されている膜(例えばレジスト、酸化膜、ポリシリコンなど)の屈折率の最大値をnmaxとし、マーク検出用照射光40の波長をλとすると、アライメントマーク9の深さ(段差)がλ/nmax/6以下であれば、アライメントマーク9それらの膜のどれで覆われていてもマーク検出用回折光41b1,41b2の位相差λ/3以下になるので、マーク検出用回折光41b1,41b2は互いに強め合うことになり、常に強いマーク検出用回折光41bを得ることができる。
【0041】
通常、半導体装置の製造ではアライメントマーク9の検出工程は複数回行われ、その工程が行われるたびにアライメントマーク9上に形成されている膜が異なる場合があるが、上記のnmaxは、それら複数回の検出工程を通しての最大値である。
【0042】
また本実施の形態ではアライメントマーク9のエッジの段差を小さくするため、そのアライメントマーク9を形成する前に終端領域8の形成領域に残存させるレジストパターン11の厚さは、薄くてよい。図6を用いて説明したように、残存させるレジストパターン11を初期膜厚の20%以下になるように薄くすれば、その膜厚を高い精度で制御できるという利点も得られる。
【0043】
但し、アライメントマーク9のエッジの段差がSiCエピタキシャル層2の平坦な部分における表面粗さ(数nm程度)よりも小さいと、アライメントマーク9と他の部分との区別がつかないため、その段差はSiCエピタキシャル層2の表面粗さよりも大きくなければならない。つまり本実施の形態のアライメントマーク9の深さは、それが形成されるSiCエピタキシャル層2の表面荒さよりも大きく、且つ、λ/nmax/6以下とするとよい。
【0044】
以上のように本実施の形態によれば、終端領域8の上面が平坦なためその部分での電界集中を抑制でき、高耐圧な終端構造が得られる。また終端領域8を形成する際の注入マスクと、アライメントマーク9を形成する際のエッチングマスクとが、同一のレジストパターン11によって実現されるため、必要なマスク数を減らすことができ、製造コストの削減に寄与できる。さらにアライメントマーク9のエッジの段差が極めて小さいため、半導体装置の製造過程でアライメントマーク9を覆う膜が変化しても、マーク検出用回折光41bの強度を高く維持でき、複数回のマスクの位置合わせを常に良好にでき、SiC半導体装置の製造における歩留まりが向上する。
【0045】
なお本実施の形態において終端領域8はガードリングであったが、上記の製造工程はFLRの形成にも適用可能である。FLRは、不純物濃度が複数あることを除けば基本的にガードリングと同じ構造である。従って、レジストパターン11の形成工程(図2)おいて、薄いレジストパターン11を残存させる部分(ハーフトーン露光で中間露光する部分)を複数にすれば、FLRを形成することができる。
【0046】
また以上の説明では、半導体素子としてショットキーバリアダイオードを例示したが、本発明はIGBTやMOSFET等の終端構造に対しても適用可能である。
【0047】
さらに、本発明の適用は、炭化珪素(SiC)を用いて形成する半導体装置に限られるものではなく、不純物が拡散しにくい性質を持つ半導体材料を用いる半導体装置の製造にも適用可能である。例えばSiCと並んでワイドバンドギャップ半導体として知られるGaNも不純物が拡散しにくい性質がある。本発明をGaNを用いて形成する半導体装置に対しても、上記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 SiC基板、2 SiCエピタキシャル層、3 ショットキー電極、4 表面電極、5 オーミック電極、6 裏面電極、7 表面保護膜、8 終端領域、8a 不純物領域、9 アライメントマーク、11 レジストパターン、40 マーク検出用照射光、41 反射光、41a 回折光、41b マーク検出用回折光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭化珪素半導体層上にフォトレジストを塗布する工程と、
(b)ハーフトーン露光法を用いて前記フォトレジストを露光して現像することにより、前記フォトレジストに、前記炭化珪素半導体層まで達する第1の開口部および前記炭化珪素半導体層まで達しない第2の開口部を形成する工程と、
(c)前記フォトレジストをマスクとするエッチングにより、前記第1の開口部に露出した部分の前記炭化珪素半導体層にリセス状のアライメントマークを形成すると同時に前記第2の開口部を前記炭化珪素半導体層に到達させる工程と、
(d)前記工程(c)の後に、前記フォトレジストをマスクにして不純物をイオン注入することにより、前記第2の開口部に露出した部分の前記炭化珪素半導体層に、炭化珪素半導体素子の終端領域を形成する工程とを備える
ことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(e)前記アライメントマークの検出を行う工程
を1回以上含み、
前記工程(e)の際に前記アライメントマーク上に形成されている膜の屈折率の最大値をnmax、前記アライメントマークの検出のために前記炭化珪素半導体層に照射する光の波長をλとすると、
前記工程(c)で形成される前記アライメントマークの深さは、前記炭化珪素半導体層の表面荒さよりも大きく、且つ、λ/nmax/6以下である
請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)において、前記エッチングは、前記第2の開口部の下の部分の前記炭化珪素半導体層に段差が形成されないように、前記第2の開口部が前記炭化珪素半導体層に到達した段階で停止される
請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)は、前記第2の開口部の底部に残存する前記フォトレジストの厚さを計測しながら行われる
請求項3項記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、現像後に前記第2の開口部の底部に残存させる前記フォトレジストの厚さは、前記フォトレジストの感度曲線の傾きが、残存させる前記フォトレジストの厚さを塗布膜厚の50%にする場合の1/2以下になる領域の値である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(b)において、現像後に前記第2の開口部の底部に残存させる前記フォトレジストの厚さは、露光前の厚さの20%以下である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
炭化珪素半導体層に形成された炭化珪素半導体素子と、
前記炭化珪素半導体層の表面部における前記炭化珪素半導体素子の外周に形成された不純物領域である終端領域と、
前記炭化珪素半導体層の表面に形成されたリセス状のアライメントマークと
を備える炭化珪素半導体装置であって、
当該炭化珪素半導体装置の製造過程における前記アライメントマークの検出工程の際に前記アライメントマーク上に形成されている膜の屈折率の最大値をnmax、前記アライメントマークの検出のために前記炭化珪素半導体層に照射する光の波長をλとすると、
前記アライメントマークの深さは、前記炭化珪素半導体層の表面荒さよりも大きく、且つ、λ/nmax/6以下である
ことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記終端領域の上面は平坦である
請求項7記載の炭化珪素半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21040(P2013−21040A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151423(P2011−151423)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】