説明

熱処理方法および熱処理装置、ならびに基板処理装置

【課題】 塗布によって成膜された膜または低誘電率膜層間絶縁膜の劣化を確実に抑止することが可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】 熱処理装置としての熱処理ユニット4は、低誘電率膜層間絶縁膜が成膜されたウエハWを収容するチャンバー42と、このチャンバー42内に気相の蟻酸を供給する蟻酸供給機構44と、蟻酸供給機構44によって蟻酸が供給されたチャンバー42内でウエハWを加熱するヒーター43とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の膜が塗布によって成膜された基板、あるいは低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理方法および熱処理装置、ならびにこのような熱処理装置を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは近時、動作速度の向上ならびに小型化を目的として、配線が多層に設けられている。また、動作速度を高めるには、配線の抵抗および配線間の電気容量を低減させる必要があるため、配線には抵抗の低いCu(銅)が多く用いられており、Cu配線間に設けられる層間絶縁膜には、Cu配線間の容量が低減されるように低誘電率材料が多く用いられている。
【0003】
低誘電率材料からなる低誘電率層間絶縁膜(low−k膜)は、半導体ウエハの表面に塗布液を供給して半導体ウエハを回転させることにより塗布液を拡げる塗布法(SOD:Spin on Dielectric)、あるいは半導体ウエハの表面に原料ガスを供給して化学反応によって分解または合成することにより生成物を堆積させる化学的気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって半導体ウエハの表面に成膜される。
【0004】
SODによってlow−k膜を成膜した場合には通常、low−k膜の内部応力を緩和するとともに機械的強度を確保するため、成膜後の半導体ウエハに熱処理が施される。また、CVDによるlow−k膜の成膜であっても、選択される低誘電率材料によっては、成膜後に熱処理が必要となる場合がある。熱処理は一般的に、真空または窒素ガス雰囲気下で行われているが、完全な真空または窒素ガス雰囲気を作り出すことは極めて難しく、雰囲気中には酸素等の不純物が含有されやすいため、このような方法では、雰囲気中含まれる酸素によってlow−k膜が劣化(酸化)してしまうおそれがある。
【0005】
このため、反応性(還元性)ガスとして広く用いられている水素ガスまたはアンモニアガスの雰囲気下で熱処理を行う試みもなされているが(例えば特許文献1参照)、水素ガスまたはアンモニアガスの反応性ではlow−k膜の劣化を抑止することができない場合もある。
【特許文献1】特開2003−158126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、塗布によって成膜された膜またはlow−k膜の劣化を確実に抑止することが可能な熱処理方法および熱処理装置、このような熱処理装置を備えた基板処理装置、ならびに前記の熱処理方法を実行させるための制御プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点では、塗布によって成膜された膜を有する基板に熱処理を施す熱処理方法であって、還元性を有する有機化合物の雰囲気下で基板を加熱することを特徴とする熱処理方法を提供する。
【0008】
本発明の第2の観点では、低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理方法であって、還元性を有する有機化合物の雰囲気下で基板を加熱することを特徴とする熱処理方法を提供する。
【0009】
本発明の第3の観点では、塗布によって成膜された膜を有する基板に熱処理を施す熱処理方法であって、基板を処理容器内に収容する工程と、前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する工程と、前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する工程とを含むことを特徴とする熱処理方法を提供する。
【0010】
本発明の第4の観点では、低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理方法であって、基板を処理容器内に収容する工程と、前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する工程と、前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する工程とを含むことを特徴とする熱処理方法を提供する。
【0011】
本発明の第3、4の観点において、前記気相の有機化合物は、液相または固相の有機化合物を不活性ガスによってバブリングさせることにより生成することができる。
【0012】
また、以上の本発明の第3、4の観点において、前記有機化合物の供給工程の際に、前記有機化合物を希釈するための希釈ガスを前記処理容器内に供給する工程をさらに含むことができる。
【0013】
さらに、以上の本発明の第3、4の観点において、前記加熱工程は、前記処理容器内を所定の圧力に減圧しつつ行うことができる。
【0014】
以上の本発明の観点において、前記有機化合物は、アルコール、アルデヒドおよびガルボン酸のうちの少なくとも一種類以上を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の第5の観点では、塗布によって成膜された膜を有する基板に熱処理を施す熱処理装置であって、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する有機化合物供給機構と、前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する加熱機構とを具備することを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0016】
本発明の第6の観点では、低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理装置であって、基板を収容する処理容器と、前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する有機化合物供給機構と、前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する加熱機構とを具備することを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0017】
本発明の第5、6の観点において、前記有機化合物供給機構は、液相または固相の有機化合物を不活性ガスによってバブリングさせることにより気相にして前記処理容器内に供給することができる。
【0018】
また、以上の本発明の第5、6の観点において、前記処理容器内に前記有機化合物を希釈するための希釈ガスを供給する希釈ガス供給機構をさらに具備することができる。
【0019】
さらに、以上の本発明の第5、6の観点において、少なくとも前記加熱機構による基板の加熱の際に、前記処理容器内を所定の圧力に減圧する減圧機構をさらに具備することができる。
【0020】
さらに、以上の本発明の第5、6の観点において、前記有機化合物供給機構は、アルコール、アルデヒドおよびガルボン酸のうちの少なくとも一種類以上を含む有機化合物を供給することが好ましい。
【0021】
本発明の第7の観点では、基板に塗布によって膜を成膜する塗布処理装置と、以上の本発明の第5、6の観点の熱処理装置とを具備することを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0022】
本発明の第8の観点では、コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、実行時に上記熱処理方法が行われるように、コンピュータに処理装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1、2の観点によれば、基板に塗布膜または低誘電率層間絶縁膜を成膜した後に、水素およびアンモニアと比べて高い還元性を有する有機化合物の雰囲気下で基板を加熱するため、有機化合物の還元反応によって加熱雰囲気中の酸素を効果的に除去しつつ基板に熱処理を施すことができる。したがって、塗布によって成膜された所定の膜または低誘電率層間絶縁膜の劣化を確実に抑止することが可能となる。
【0024】
また、本発明の第3、4、5、6、7の観点によれば、基板に塗布膜または低誘電率層間絶縁膜を成膜した後に、基板を処理容器内に収容し、水素およびアンモニアと比べて高い還元性を有する気相の有機化合物を処理容器内に供給し、有機化合物が供給された処理容器内で基板を加熱するため、処理容器内を有機化合物で効率よく満たし、有機化合物の還元反応によって加熱雰囲気中の酸素を効果的に除去しつつ基板に熱処理を施すことができる。したがって、塗布によって成膜された所定の膜または低誘電率層間絶縁膜の劣化を確実に抑止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0026】
図1は本発明に係る熱処理方法を実施可能な熱処理ユニットを備えたSODシステムの概略平面図である。
【0027】
SODシステム100(基板処理装置)は、処理部1とサイドキャビネット2とキャリアステーション(CSB)3とを備えている。サイドキャビネット2およびキャリアステーション(CSB)3はそれぞれ、処理部1の両側に設けられている。
【0028】
処理部1は、塗布処理ユニット(SCT)11、12と、複数の処理ユニットを多段に積層された処理ユニット群13、14と、これらの間で半導体ウエハW(基板)を搬送する搬送アーム15とを有している。搬送アーム15は、処理部1の中央部に設けられ、処理ユニット群13、14はそれぞれ、搬送アーム15のサイドキャビネット2側およびキャリアステーション(CSB)3側に設けられている。塗布処理ユニット(SCT)11、12はそれぞれ、処理ユニット群13、14の手前側に設けられており、塗布処理ユニット(SCT)11、12の例えば下方には、塗布処理ユニット(SCT)11、12で使用される塗布液等を貯留する図示しない塗布液貯留部が設けられている。
【0029】
塗布処理ユニット(SCT)11、12はそれぞれ、例えば、スピンチャックによって保持したウエハWの表面にlow−k膜用やハードマスク層用等の所定の塗布液を供給し、スピンチャックを回転させることによってウエハWの表面に塗布液を拡げてlow−k膜やハードマスク層等の塗布膜を成膜するように構成されている。
【0030】
処理ユニット群13は、ウエハWを低温でベーキングする低温用ホットプレートユニットと、ウエハWに成膜されたlow−k膜等の塗布膜をゲル化するエージングユニットと、ウエハWに成膜された塗布膜に対して本発明の熱処理、例えば硬化処理を行う熱処理ユニットとが上下に積層されて構成されており、熱処理ユニットは、還元性を有する有機化合物の雰囲気下で、塗布膜が成膜されたウエハWを加熱するように構成されている。処理ユニット群14は、ウエハWを高温でベーキングする高温用ホットプレートユニットと、キャリアステーション(CSB)3との間でウエハWの受け渡しを行うための受渡ユニットと、ウエハWを冷却するクーリングプレートユニットとが上下に積層されて構成されている。
【0031】
搬送アーム15は、塗布処理ユニット(SCT)11、12および処理ユニット群13、14の各処理ユニットにアクセスできるように、昇降、水平回転および前後への進退可能に構成されている。
【0032】
サイドキャビネット2には、処理ユニット群13、14等で用いられるバブラー(Bub)27と、各ユニットから排出される排気ガスを洗浄するためのトラップ(TRAP)28とが設けられている。また、バブラー(Bub)27の例えば下方には、電力供給源と、純水や有機化合物、例えば蟻酸(HCOOH)等を貯留するための薬液貯留部と、SODシステム100において使用された処理液の廃液を排出するためのドレインとが設けられている(いずれも図示せず)。
【0033】
キャリアステーション(CSB)3は、ウエハWが収容されたカセットを載置する載置台と、この載置台に載置されたカセットと処理部1に設けられた受渡ユニットとの間でウエハWの搬送を行う搬送機構を有している(いずれも図示せず)。
【0034】
SODシステム100の各構成部、例えば各処理ユニットは、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたシステムコントローラ90に接続されて制御される構成となっている。システムコントローラ90には、工程管理者がSODシステム100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、SODシステム100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース91と、SODシステム100で実行される処理をシステムコントローラ90の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部92とが接続されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース91からの指示等にて任意のレシピを記憶部92から呼び出してシステムコントローラ90に実行させることで、システムコントローラ90の制御下でSODシステム100での処理が行われる。また、前記レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
【0035】
このような構成のSODシステム100において、シルク法およびスピードフィルム法によってウエハWにlow−k膜等の塗布膜を形成する場合には、ウエハWを、キャリアステーション(CSB)3から受渡ユニット→クーリングプレートユニット→塗布処理ユニット(SCT)12→低温用ホットプレートユニット→クーリングプレートユニット→塗布処理ユニット(SCT)11→低温用ホットプレートユニット→高温用ホットプレートユニット→熱処理ユニットの順に搬送し、各ユニットでウエハWに所定の処理を施す。この場合に、塗布処理ユニット(SCT)12ではアドヒージョンプロモータを塗布し、塗布処理ユニット(SCT)11ではlow−k膜用の塗布液を塗布する。フォックス法によってlow−k膜等の塗布膜を形成する場合には、ウエハWを、受渡ユニット→クーリングプレートユニット→塗布処理ユニット(SCT)11→低温用ホットプレートユニット→高温用ホットプレートユニット→熱処理ユニットの順に搬送し、各ユニットでウエハWに所定の処理を施す。ゾルーゲル法によってlow−k膜等の塗布膜を形成する場合には、ウエハWを、受渡ユニット→クーリングプレートユニット→塗布処理ユニット(SCT)11→エージングユニット→低温用ホットプレートユニット→高温用のホットプレートユニットの順に搬送し、各ユニットでウエハWに所定の処理を施す。
【0036】
シルク法、スピードフィルム法またはフォックス法を用いた場合には、最終工程において、熱処理ユニットでlow−k膜等の塗布膜に対して熱処理、例えば硬化処理が施される。塗布膜の硬化処理等の熱処理は従来、前述のように、ウエハを窒素ガスあるいは水素ガスまたはアンモニアガスの雰囲気下で加熱することにより行われていたが、このような方法では、不純物として雰囲気中に含有される酸素による塗布膜の劣化(酸化)を十分に抑止することが難しかった。そこで、本実施形態では、水素やアンモニア等と比較して有機化合物が解離しやすい点に着目し、還元性を有する有機化合物の雰囲気下でウエハWを加熱することによりlow−k膜等の塗布膜に対して熱処理を施すように構成したため、有機化合物の還元反応によってその雰囲気中の酸素を効果的除去することができ、これにより、low−k膜等の塗布膜の劣化を確実に抑止することが可能となる。
【0037】
このような還元性を有する有機化合物としては、ヒドロキシル基(−OH)を有するアルコール、アルデヒド基(−CHO)を有するアルデヒドまたはカルボキシル基(−COOH)を有するガルボン酸が挙げられる。なお、アルコール、アルデヒドおよびガルボン酸のうちの2種類以上を用いてもよい。
【0038】
アルコールとしては、
第1級アルコール、特に以下の一般式(1)
−OH ・・・(1)
(Rは直鎖または分枝鎖状のC〜C20のアルキルまたはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)
を有する第1級アルコール、例えばメタノール(CHOH)、エタノール(CHCHOH)、プロパノール(CHCHCHOH)、ブタノール(CHCHCHCHOH)、2−メチルプロパノール((CHCHCHOH)、2−メチルブタノール(CHCHCH(CH)CHOH);
第2級アルコール、特に以下の一般式(2)
【0039】
【化1】

(Rは直鎖または分枝鎖状のC〜C20のアルキルまたはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)
を有する第2級アルコール、例えば2−プロパノール((CHCHOH)、2−ブタノール(CHCH(OH)CHCH);
ジオールおよびトリオールのようなポリヒドロキシアルコール、例えばエチレングリコール(HOCCHOH)、グリセロール(HOCHCH(OH)CHOH);
1〜10個、典型的に5〜6個の炭素原子を環の一部に有する環状アルコール;
ベンジルアルコール(CCHOH)、o−、p−またはm−クレゾール、レゾルシノール等の芳香族アルコール;
ハロゲン化アルコール、特に以下の一般式(3)
CH3−n−R−OH ・・・(3)
(XはF、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはCl、nは0〜2の整数、Rは直鎖または分枝鎖状のC〜C20のアルキルまたはアルケニル基、好ましくはメチレン、エチレン、 トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン)を有するハロゲン化アルコール、例えば、2,2,2−トリフルオロエタノール(CFCHOH);
他のアルコール誘導体、例えばメテルエタノールアミン(CHNHCHCHOH)
などが挙げられる。
【0040】
アルデヒドとしては、
以下の一般式(4)
−CHO ・・・(4)
(Rは水素、または直鎖もしくは分枝鎖状のC〜C20のアルキルもしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)を有するアルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CHCHO)およびブチルアルデヒド(CHCHCHHO);
以下の一般式(5)
OHC−R−CHO ・・・(5)
(Rは直鎖または分枝鎖状のC〜C20の飽和または不飽和炭化水素であるが、Rが存在しないこと、すなわち両アルデヒド基が互いに結合していることも可能)
を有するアルカンジオール化合物;
ハロゲン化アルデヒド;
他のアルデヒド誘導体
などが挙げられる。
【0041】
カルボン酸としては、
以下の一般式(6)
−COOH ・・・(6)
(Rは水素、または直鎖もしくは分枝鎖状のC〜C20のアルキルもしくはアルケニル基、好ましくはメチル、エテル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル)を有するカルボン酸、例えば、前記の蟻酸、酢酸(CHCOOH);
ポリカルボン酸;
カルボン酸ハロゲン化物;
他のカルボン酸誘導体
などが挙げられる。
【0042】
本実施形態の熱処理方法が特に有効なlow−k膜の材料としては、例えば、シロキサン系であるSi、O、Hを含むHSQ(Hydrogen−silsesquioxane)やSi、C、O、Hを含むMSQ(Methyl−Hydrogen−silsesquioxane)等、有機系であるポリアリレンエーテルからなるFLAME(ハネウエル社製)やポリアリレンハイドロカーボンからなるSILK(ダウ・ケミカル社製)、Parylene、BCB、PTFE、フッ化ポリイミド等、多孔質膜であるポーラスMSQやポーラスSILK、ポーラスシリカ等が挙げられる。
【0043】
また、本実施形態の熱処理方法が特に有効なハードマスク膜またはエッチストッパ膜の材料としては、ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole)が挙げられる。
【0044】
次に、SODシステム100に搭載される熱処理ユニットについて詳細に説明する。
【0045】
図2は熱処理ユニットの概略断面図である。
【0046】
熱処理ユニット4(熱処理装置)は、ウエハWを収容可能な処理容器としてのチャンバー42と、チャンバー42内でウエハWを加熱する加熱機構としてのヒーター43と、前述の還元性を有する有機化合物、例えば蟻酸(HCOOH)をチャンバー42内に供給する有機化合物供給機構としての蟻酸供給機構44を備えている。
【0047】
チャンバー42は、上部が開口した略筒状または箱状のチャンバー本体42aと、チャンバー本体42aの上部開口を閉塞する蓋体42bとを有している。チャンバー本体42aの側壁部には、搬送アーム15(図1参照)によってウエハWをチャンバー42内外との間で搬入出するための搬入出口42cが形成されているとともに、この搬入出口42cを開閉するシャッター42dが設けられている。
【0048】
チャンバー本体42a内の例えば底部には、蟻酸供給機構44によって供給された蟻酸等をチャンバー42外に排出するための排出口42lが設けられている。また、チャンバー本体42a内の例えば底部には、ウエハWを載置するための載置台42hが設けられている。ヒーター43は、載置台42hに内蔵されており、載置台42hを介してウエハWを所定の温度、例えば200〜400℃に加熱するように構成されている。載置台42hには、その上面から突没するように昇降する支持ピン42iが設けられており、支持ピン42iは、突出時に搬送アーム15との間でウエハWの受け渡しを行い、没入時にウエハWを載置台42hに載置させるように構成されている。
【0049】
蓋体42bは、その内部に扁平な拡散空間42jを有する略筒状または箱状に形成されている。また、蓋体42bは、その下面に、蟻酸供給機構44による蟻酸を吐出するための吐出孔42kを多数有しており、その上面から蟻酸供給機構44によって蟻酸が拡散空間42j内に導入され、拡散空間42j内で拡散された蟻酸が吐出孔42kからチャンバー42内またはチャンバー本体42a内に供給されるように構成されている。
【0050】
蟻酸供給機構44は、例えば液体の蟻酸が貯留された蟻酸貯留部44aと、蟻酸貯留部44a内に不活性ガス、例えば窒素(N)ガスを供給して蟻酸貯留部44aの蟻酸をバブリングさせるバブリング機構44bと、バブリング機構44bによってバブリングさせた蟻酸および窒素ガスを蓋体42bの拡散空間42j内に導く供給ライン44cと、供給ライン44cを開閉するバルブ44dとを有しており、バブリング機構44bは、窒素ガスが貯留された不活性ガス貯留部44eと、不活性ガス貯留部44eの窒素ガスを蟻酸貯留部44aに導く供給ライン44fと、供給ライン44fを流通する窒素ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ44gおよびバルブ44hとを有している。
【0051】
熱処理ユニット4は、システムコントローラ90に接続されたユニットコントローラ80によって制御される構成となっている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース91からの指示等にてシステムコントローラ90が任意のレシピを記憶部92から呼び出してユニットコントローラ80に制御させる。
【0052】
次に、熱処理ユニット4での処理について詳細に説明する。
【0053】
熱処理ユニット4においては、まず、ウエハWが搬送アーム15(図1参照)によって搬入出口42cを介してチャンバー42内に搬入されると、支持ピン42iが上昇して載置台42hの上面から突出し、ウエハWを搬送アーム15から受け取る。次に、支持ピン42iが下降して載置台42hに没入し、ウエハWを載置台42hに載置させる。また、この際に、搬送アーム15がチャンバー42外に搬入出口42cから退避し、シャッター42dによって搬入出口42cが閉塞される。
【0054】
ウエハWが載置台42hに載置され、搬入出口42cが閉塞されると、蟻酸供給機構44により、バブリングによって気相となった蟻酸および窒素ガスがチャンバー42に供給され、チャンバー42内が低酸素濃度(例えば50ppm以下)の蟻酸および窒素ガス雰囲気に保持される。常温常圧で液体である蟻酸をバブリングさせてチャンバー42内に供給することにより、チャンバー42内を所定の圧力に減圧することなく、チャンバー42内に蟻酸を拡散させることができ、蟻酸の還元反応によってチャンバー42内の酸素を効果的に除去することができる。また、この際に、蟻酸は窒素ガスによって希釈された状態で供給ライン44cを流通してチャンバー42内に供給されるため、蟻酸による供給ライン44cおよびチャンバー42の腐食を抑止することができる。なお、チャンバー42内に充満した蟻酸および窒素ガスは排出口42lから排出される。
【0055】
チャンバー42内が低酸素濃度の蟻酸および窒素ガス雰囲気に保持されると、ヒーター43によってウエハWが所定の温度、例えば200〜400℃に加熱される。これにより、ウエハWに設けられたlow−k膜等の塗布膜は、酸素にほとんど接触しない状態で硬化が進行するため、劣化が抑止されることとなる。なお、有機化合物である蟻酸の還元反応によって生成された生成物、例えば水分および二酸化炭素は排出口42lから排出される。
【0056】
ヒーター43によるウエハWの加熱が終了すると、蟻酸供給機構44による蟻酸および窒素ガスの供給が停止される。そして、支持ピン42iが上昇して載置台42hからウエハWを受け取るとともに、シャッター42dによって搬入出口42cが開放され、搬送アーム15が、ウエハWを支持ピン42iから受け取って搬入出口42cを介してチャンバー42外に搬出する。
【0057】
なお、熱処理ユニット4による熱処理後には、low−k膜等の塗布膜およびウエハWを速やかに冷却することが好ましいため、ウエハWを冷却する冷却ユニットを熱処理ユニット4に隣接させて設けておき、熱処理ユニット4による熱処理後に、この冷却ユニットにウエハWを搬送し、ここでウエハWの冷却を行うように構成してもよい。
【0058】
次に、熱処理ユニット4による熱処理のダマシンプロセスへの適用例について説明する。
【0059】
図3はダマシンプロセスの過程におけるウエハWの断面図である。
【0060】
ダマシンプロセスにおいては、例えば、まず、Si基板(Sub)200上に第1のlow−k膜101を形成する。第1のlow−k膜101は、前述のSODシステム100の処理工程によって形成され、シルク法、スピードフィルム法またはフォックス法を用いた際の最終工程において熱処理ユニット4での熱処理、例えば硬化処理が施される。次に、第1のlow−k膜101上にハードマスク膜102を形成する。ハードマスク膜102も、第1のlow−k膜101形成工程と同様の工程によって形成される。
【0061】
第1のlow−k膜101およびハードマスク膜102を形成したら、フォトリソグラフィによりパターン化した図示しないレジスト膜をマスクとしてハードマスク膜102をエッチングし、さらに、レジスト膜およびエッチングしたハードマスク膜102をマスクとして第1のlow−k膜101にエッチングによる溝を形成する。そして、第1のlow−k膜101に形成された溝内にバリアメタル膜103および銅(Cu)からなる配線層104を形成し、バリアメタル膜103、配線層104およびハードマスク膜102上にエッチストッパ膜105、第2のlow−k膜106およびハードマスク膜107を順次形成する。エッチストッパ膜105、第2のlow−k膜106およびハードマスク膜107もそれぞれ、第1のlow−k膜101の形成工程と同様の工程によって形成される。
【0062】
ハードマスク膜107を形成したら、フォトリソグラフィによりパターン化した図示しないレジスト膜をマスクとしてハードマスク膜107をエッチングし、さらに、レジスト膜およびエッチングしたハードマスク膜107をマスクとして第2のlow−k膜106にエッチングによる孔108を形成する(図3に示す状態)。
【0063】
その後、ハードマスク膜107をマスクとして、配線層104が露出するようにエッチストッパ膜105をエッチングしてビアホールを形成し、このビアホール内にバリアメタルおよびCuからなるビアコンタクトを埋め込み、さらに、CMP法によりCuの表面を研磨すること(ポリッシング)により、ダマシン構造の配線部が設けられることとなる。
【0064】
ここでは、熱処理ユニット4による第1のlow−k膜101、第2のlow−k膜106、ハードマスク膜102、107およびエッチストッパ膜105の熱処理をエッチング前、かつウエハWに設けた順に個別に行う例について説明したが、これに限らず、第1のlow−k膜101、第2のlow−k膜106、ハードマスク膜102、107およびエッチストッパ膜105のうちの複数の熱処理を同時に行ってもよく、エッチング後やポリッシング後に行ってもよい。
【0065】
次に、本発明に係る熱処理方法を実施可能な他の実施形態としての熱処理装置について説明する。
【0066】
図4は本発明に係る熱処理方法を実施可能な他の実施形態としての熱処理装置の概略断面図である。
【0067】
本実施形態では、ウエハWに所定の減圧雰囲気、例えば真空雰囲気で熱処理を施す熱処理装置5について説明する。熱処理装置5において、図2に示した熱処理ユニット4と同部位については同符号を付して説明を省略する。熱処理装置5は、例えば、low−k膜やハードマスク膜等をCVD法等によって減圧または真空プロセスで成膜する場合に用いられるものであり、ウエハWを収容可能なチャンバー51と、チャンバー51内に蟻酸を供給する蟻酸供給機構52と、蟻酸を希釈する希釈ガスまたは不活性ガスとしての窒素ガスをチャンバー51内に供給する窒素ガス供給機構53と、チャンバー51内を所定の圧力、例えば真空圧に減圧可能な減圧機構54とを備えている。なお、熱処理装置5も、熱処理ユニット4と同様に制御される。
【0068】
チャンバー51は、上部が開口した略筒状または箱状に形成されている。チャンバー51の底部には、収容したウエハWを載置するためのサセプタ51aが設けられ、このサセプタ51aには、ウエハWを加熱する加熱機構としてのヒーター51bが埋設されている。チャンバー51の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口51cが形成されているとともに、この搬入出口51cを開閉するゲートバルブ51dが設けられている。
【0069】
チャンバー51の上部には、開口を閉塞し、かつサセプタ51aに対向するようにシャワーヘッド51eが設けられている。シャワーヘッド51eは、蟻酸供給機構52による蟻酸および窒素ガス供給機構53による窒素ガスを拡散させる拡散空間51fを内部に有するとともに、サセプタ51aとの対向面に、蟻酸供給機構52による蟻酸および窒素ガス供給機構53による窒素ガスをチャンバー51内に吐出する複数または多数の吐出孔51gが形成されている。
【0070】
チャンバー51の底壁には排気口51hが形成されており、減圧機構54は、排気口51hに接続された排気管54aと、この排気管54aを介してチャンバー51内を強制排気する排気装置54bとを有している。
【0071】
蟻酸供給機構52は、蟻酸が貯留された蟻酸貯留部52aと、蟻酸貯留部52aの蟻酸をシャワーヘッド51eの拡散空間51f内に導く供給ライン52bと、供給ライン52bを流通する蟻酸の流量を調整する流量調整機構としてのマスフローコントローラ52cおよびバルブ52dとを有している。蟻酸貯留部52aには、蟻酸を所定の温度に加熱するヒーター52eが設けられている。
【0072】
窒素ガス供給機構53は、窒素ガス供給源53aと、窒素ガス供給源53aの窒素ガスをシャワーヘッド51eの拡散空間51f内に導く供給ライン53bと、供給ライン53bを流通する窒素ガスの流量を調整する流量調整機構としてのマスフローコントローラ53cおよびバルブ53dとを有している。
【0073】
このように構成された熱処理装置5においては、まず、ウエハWを搬入出口51cからチャンバー51内に搬入してサセプタ51aに載置し、ゲートバルブ51dによって搬入出口51cを閉塞してチャンバー51内を密閉する。次に、減圧機構54によってチャンバー51内を所定の圧力、例えば真空圧に減圧するとともに、窒素ガス供給機構53によってチャンバー51内に窒素ガスを供給し、かつ、蟻酸供給機構52によってチャンバー51内に蟻酸を供給して、チャンバー51内を低酸素濃度(例えば50ppm以下)の蟻酸および窒素ガス雰囲気に保持する。ここで、チャンバー51内は減圧機構54によって所定の圧力、例えば真空圧に保持されるため、蟻酸をチャンバー51内に拡散させることができるとともに、チャンバー51内の蟻酸は窒素ガスによって希釈されるため、チャンバー51内の腐食を抑止することができる。なお、減圧機構54による減圧、窒素ガス供給機構53による窒素ガスの供給および蟻酸供給機構52による蟻酸の供給は、同時に行ってもよく、所定の時間ずつ交互に行ってもよい。チャンバー51内を低酸素濃度の蟻酸および窒素ガス雰囲気に保持した後、ヒーター51bによってウエハWを所定の温度、例えば200〜400℃に加熱する。これにより、ウエハWに設けられたlow−k膜やハードマスク膜等の硬化が進行する。ヒーター51bによるウエハWの加熱を終了したら、減圧機構54による減圧、窒素ガス供給機構53による窒素ガスの供給および蟻酸供給機構52による蟻酸の供給を停止し、ゲートバルブ51dによって搬入出口51cを開放し、ウエハWを搬入出口51cからチャンバー51外に搬出する。
【0074】
本実施形態では、ウエハWを大気に晒すことなく蟻酸の雰囲気下で加熱するため、ウエハWに設けられたlow−k膜やハードマスク膜等の膜の劣化をより確実に抑止することが可能となる。
【0075】
CVDによって成膜される、本実施形態の熱処理方法が特に有効なlow−k膜の材料としては、Black Diamond(Applied Materials社製)、Coral(Novellus社製)、Aurora(ASM社製)等のSiOC系材料(SiOのSi−O結合にメチル基(−CH)を導入してSi−CHを混入したもの)やSiOF系材料(SiOにフッ素(F)を導入したもの)、フルオロカーボンガスを用いたCF系材料などが挙げられる。
【0076】
また、CVDによって成膜される、本実施形態の熱処理方法が特に有効なlow−k膜以外の膜、例えばハードマスク膜またはエッチストッパ膜の材料としては、low−k膜と同じ材料(ただしlow−k膜よりも誘電率の高いもの)、さらに、炭化ケイ素(SiC)や炭化ケイ素(SiCN)等が挙げられる。
【0077】
次に、本発明に係る熱処理方法を実施可能な他の実施形態としての熱処理装置について説明する。
【0078】
図5は本発明に係る熱処理方法を実施可能なさらに他の実施形態としての熱処理装置の概略断面図である。
【0079】
前実施形態では、ウエハWを真空雰囲気で1枚ずつ加熱するいわゆる枚葉式の熱処理装置について説明したが、本実施形態では、ウエハWを真空雰囲気で複数枚同時に加熱するいわゆるバッチ式の熱処理装置6について説明する。熱処理装置6において、図4に示した熱処理装置5と同部位については同符号を付して説明を省略する。
【0080】
熱処理装置6は、熱処理装置5と同様に、例えば、low−k膜やハードマスク膜等をCVD法等によって減圧または真空プロセスで成膜する場合に用いられるものであり、下部が開口した、ウエハWを収容して加熱する略筒状の熱処理炉60(処理容器)と、複数枚のウエハWを保持して熱処理炉60内に収容させるためのウエハボート62と、このウエハボート62を昇降させて熱処理炉60内外の間で進退させるボートエレベータ63と、熱処理炉60内に蟻酸を供給する蟻酸供給機構52と、蟻酸を希釈する希釈ガスまたは不活性ガスとしての窒素ガスを熱処理炉60内に供給する窒素ガス供給機構53と、熱処理炉60内を所定の圧力、例えば真空圧に減圧可能な減圧機構54とを備えている。なお、熱処理装置6も、熱処理ユニット4および熱処理装置5と同様に制御される。
【0081】
熱処理炉60内には、熱処理炉60と対応する形状を有する石英製のプロセスチューブ61が設けられ、このプロセスチューブ61の外周に囲繞するように、ウエハWを加熱する加熱機構としてのヒーター64が設けられている。プロセスチューブ61の下端部には、環状または筒状のマニホールド65が設けられており、このマニホールド65には、蟻酸供給機構52の供給ライン52b、窒素ガス供給機構53の供給ライン53bおよび減圧機構54の排気管54aが接続されている(蟻酸供給機構52、窒素ガス供給機構53および減圧機構54の他の構成要素については図示せず)。
【0082】
ボートエレベータ63には、マニホールド65と当接してプロセスチューブ61内を密閉状態に保持する蓋部66が設けられており、この蓋部66の上部に保温筒67が搭載されている。
【0083】
このように構成された熱処理装置6においては、まず、ボートエレベータ63によってウエハボート62を下降させた状態で、ウエハボート62に複数枚のウエハWを保持させる。次に、ボートエレベータ63によってウエハボート62を上昇させて熱処理炉60内に収容させる。そして、減圧機構54によって熱処理炉60内を所定の圧力、例えば真空圧に減圧するとともに、窒素ガス供給機構53によって熱処理炉60内に窒素ガスを供給し、かつ、蟻酸供給機構52によって熱処理炉60内に蟻酸を供給して、熱処理炉60内を低酸素濃度(例えば50ppm以下)の蟻酸および窒素ガス雰囲気に保持する。熱処理炉60内を低酸素濃度の蟻酸および窒素ガス雰囲気に保持した後、ヒーター64によって各ウエハWを所定の温度、例えば200〜400℃に加熱する。これにより、各ウエハWに設けられたlow−k膜やハードマスク膜等の硬化が進行する。ヒーター64によるウエハWの加熱を終了したら、減圧機構54による減圧、蟻酸供給機構52による蟻酸の供給および窒素ガス供給機構53による窒素ガスの供給を停止し、ボートエレベータ63によってウエハボート62を下降させ、複数枚のウエハWを熱処理炉60外に搬出する。
【0084】
本実施形態では、ウエハWを大気に晒すことなく蟻酸の雰囲気下で加熱するため、ウエハWに設けられた膜の酸化をより確実に抑止することが可能となるとともに、複数枚のウエハWに同時に加熱処理を施すことができるため、スループットの向上を図ることが可能となる。
【0085】
なお、本実施形態の熱処理方法が特に有効なlow−k膜、およびlow−k膜以外の膜、例えばハードマスク膜またはエッチストッパ膜の材料としては、前実施形態(熱処理装置5)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、熱処理装置をいわゆるバッチ式とした場合であっても、常圧で基板を加熱するように構成してもよい。また、還元性を有する有機化合物として蟻酸以外の常温常圧で固体または液体の物質を用いて常圧で熱処理を施す場合にも、バブリングさせることで処理容器内に気相で供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、基板に設けられたlow−k膜、ハードマスク膜またはエッチストッパ膜の硬化処理に限らず、加熱温度を適宜設定することにより、硬化処理前の高温または低温でのベーキング処理やゾル−ゲル法を用いた際のエージング等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る熱処理方法を実施可能な熱処理ユニットを備えたSODシステムの概略平面図である。
【図2】熱処理ユニットの概略断面図である。
【図3】ダマシンプロセスの過程におけるウエハWの断面図である。
【図4】本発明に係る熱処理方法を実施可能な他の実施形態としての熱処理装置の概略断面図である。
【図5】本発明に係る熱処理方法を実施可能なさらに他の実施形態としての熱処理装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0089】
4:熱処理ユニット(熱処理装置)
5、6:熱処理装置
11、12:塗布処理ユニット(塗布処理装置)
42、51:チャンバー(処理容器)
43、54、61b:ヒーター(加熱機構)
44、62:蟻酸供給機構(有機化合物供給機構)
44b:バブリング機構
53:窒素ガス供給機構(希釈ガス供給機構)
54:減圧機構
60:熱処理炉(処理容器)
100:SODシステム(基板処理装置)
101:第1のlow−k膜
106:第2のlow−k膜
102、107:ハードマスク膜
105:エッチストッパ膜
W:ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布によって成膜された膜を有する基板に熱処理を施す熱処理方法であって、
還元性を有する有機化合物の雰囲気下で基板を加熱することを特徴とする熱処理方法。
【請求項2】
低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理方法であって、
還元性を有する有機化合物の雰囲気下で基板を加熱することを特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
塗布によって成膜された膜を有する基板に熱処理を施す熱処理方法であって、
基板を処理容器内に収容する工程と、
前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する工程と、
前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する工程と
を含むことを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理方法であって、
基板を処理容器内に収容する工程と、
前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する工程と、
前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する工程と
を含むことを特徴とする熱処理方法。
【請求項5】
前記気相の有機化合物は、液相または固相の有機化合物を不活性ガスによってバブリングさせることにより生成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の熱処理方法。
【請求項6】
前記有機化合物の供給工程の際に、前記有機化合物を希釈するための希釈ガスを前記処理容器内に供給する工程をさらに含むことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の熱処理方法。
【請求項7】
前記加熱工程は、前記処理容器内を所定の圧力に減圧しつつ行うことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の熱処理方法。
【請求項8】
前記有機化合物は、アルコール、アルデヒドおよびガルボン酸のうちの少なくとも一種類以上を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱処理方法。
【請求項9】
塗布によって成膜された膜を有する基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する有機化合物供給機構と、
前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する加熱機構と
を具備することを特徴とする熱処理装置。
【請求項10】
低誘電率層間絶縁(low−k)膜が成膜された基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に還元性を有する気相の有機化合物を供給する有機化合物供給機構と、
前記気相の有機化合物が供給された前記処理容器内で基板を加熱する加熱機構と
を具備することを特徴とする熱処理装置。
【請求項11】
前記有機化合物供給機構は、液相または固相の有機化合物を不活性ガスによってバブリングさせることにより気相にして前記処理容器内に供給することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記処理容器内に前記有機化合物を希釈するための希釈ガスを供給する希釈ガス供給機構をさらに具備することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項13】
少なくとも前記加熱機構による基板の加熱の際に、前記処理容器内を所定の圧力に減圧する減圧機構をさらに具備することを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項14】
前記有機化合物供給機構は、アルコール、アルデヒドおよびガルボン酸のうちの少なくとも一種類以上を含む有機化合物を供給することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項15】
基板に塗布によって膜を成膜する塗布処理装置と、
請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の熱処理装置と
を具備することを特徴とする基板処理装置。
【請求項16】
コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の熱処理方法が行われるように、コンピュータに処理装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−324350(P2007−324350A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152369(P2006−152369)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】