説明

物品搬送設備

【課題】 構成の複雑化を招くことなく、デッドロック状態を極力早く回避すること。
【解決手段】 管理部5は、複数の移動経路1のすべてから複数の移動体2が交差点D2に向けて同時に進入する場合には、退避対象の移動体2aに対して、退避用運行指令情報T1を移動制御手段4に指令し、かつ、退避対象の移動体2a以外の移動体2に対して、停止用運行指令情報T2を移動制御手段4に指令し、次に、退避対象の移動体2a以外の移動体2の一つに対して、指定通過用運行指令情報T3を移動制御手段4に指令する形態で、退避対象の移動体2a以外の移動体2に対して、通過用運行指令情報を移動制御手段4に順次指令し、その後、退避対象の移動体2aに対して、復帰通過用運行指令情報を移動制御手段4に指令するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動経路に沿って移動する物品搬送用の移動体が複数設けられ、前記移動経路の複数が合流する交差点において、前記複数の移動体の運行を管理すべく、前記複数の移動体の夫々に設けられた移動制御手段に運行指令情報を指令する管理手段が設けられ、前記移動制御手段は、前記管理手段からの前記運行指令情報に基づいて、前記移動体の移動を制御するように構成されている物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような物品搬送設備は、管理手段が、交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるための運行指令情報や交差点の手前位置に停止させるための運行指令情報を指令することにより、交差点における移動体どうしの衝突を回避しながら、複数の移動体を運行させるものである。
【0003】
このような物品搬送設備として、従来、管理手段は、交差点に合流する複数の移動経路から複数の移動体が交差点に向けて同時に進入する場合に、予め設定された優先順位に基づいて、その優先順位の高い移動体から順次、交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させる形態で複数の移動体を運行すべく、運行指令情報を複数の移動体の移動制御手段に順次指令するように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1では、例えば、移動経路の三つが合流するT字状の交差点において、二つの移動経路から二つの移動体が交差点に向けて同時に進入する場合に、管理手段は、まず、二つの移動体のうち、優先順位の高い方の移動体に対して、交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるべく、通過用運行指令情報を移動制御手段に指令し、かつ、もう一方の移動体に対して、交差点の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を移動制御手段に指令する。その後、管理手段は、もう一方の移動体に対して、交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるべく、通過用運行指令情報を移動制御手段に指令する。
【0004】
【特許文献1】特開平6−1240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の物品搬送設備では、交差点に合流する複数の移動経路のうち、いずれか一つの移動経路に移動体が位置しない場合には、移動体どうしの衝突を防止しながら運行することができるものの、交差点に合流する複数の移動経路のすべてから複数の移動体が交差点に向けて同時に進入する場合には、複数の移動体のいずれかに対して、通過用運行指令情報を移動制御手段に指令すると、移動体どうしが衝突することになる。
したがって、このような場合には、複数の移動体のいずれもが交差点を通過することができず、デッドロック状態となる。
【0006】
このデッドロック状態を回避するためには、例えば、交差点に合流する複数の移動経路のすべてから複数の移動体が交差点に向けて同時に進入することを防止すべく、管理手段が、交差点に進入する移動体の数を制限するなど、交差点に進入する以前の移動体の運行を管理することが考えられる。
しかしながら、この場合には、管理手段が、複数の移動体のすべてについて、その位置情報や行先情報などを逐次正確に管理しなければならず、構成の複雑化を招いてしまう。
【0007】
そこで、交差点に合流する複数の移動経路のすべてから複数の移動体が交差点に向けて同時に進入する場合には、管理手段が、複数の移動体のいずれかに対して、もと来た移動経路を後退移動させるべく、後退用運行指令情報を移動制御手段に指令することが考えられる。
この場合には、複数の移動体のいずれかを、もと来た移動経路を後退移動させることにより、他の移動体がその移動経路を移動することができることになり、デッドロック状態を回避することができ、しかも、管理手段が、後退用運行指令情報を指令するだけであるので、構成の複雑化を招くこともない。
しかしながら、他の移動体が移動できるようにするためには、移動体を後退移動させる際の移動距離が長くなり、また、後退移動させる移動体の後方にも移動体が位置すると、その移動体も後退移動させる必要があるなど、デッドロック状態を回避できるまでに時間がかかる。
【0008】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、構成の複雑化を招くことなく、デッドロック状態を極力早く回避することができる物品搬送設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明にかかる物品搬送設備の第1特徴構成は、移動経路に沿って移動する物品搬送用の移動体が複数設けられ、前記移動経路の複数が合流する交差点において、前記複数の移動体の運行を管理すべく、前記複数の移動体の夫々に設けられた移動制御手段に運行指令情報を指令する管理手段が設けられ、前記移動制御手段は、前記管理手段からの前記運行指令情報に基づいて、前記移動体の移動を制御するように構成されている物品搬送設備において、
前記交差点に合流する複数の前記移動経路のうち、少なくとも一つの前記移動経路には、その移動経路に位置する前記移動体を退避箇所に退避させる退避経路が分岐接続され、
前記管理手段は、
前記交差点に合流する複数の前記移動経路のすべてから複数の前記移動体が前記交差点に向けて同時に進入する場合には、前記複数の移動体のうち、前記退避経路が分岐接続された前記移動経路に位置する退避対象の移動体に対して、前記退避箇所に退避させるべく、退避用運行指令情報を前記移動制御手段に指令し、かつ、前記退避対象の移動体以外の移動体に対して、前記交差点の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を前記移動制御手段に指令し、次に、前記退避対象の移動体以外の移動体の一つに対して、前記交差点を通過したのち前記退避経路が分岐接続された前記移動経路を移動させるべく、指定通過用運行指令情報を前記移動制御手段に指令する形態で、前記退避対象の移動体以外の移動体に対して、前記交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるべく、通過用運行指令情報を前記移動制御手段に順次指令し、その後、前記退避対象の移動体に対して、前記退避箇所から前記移動経路に復帰して前記交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるべく、復帰通過用運行指令情報を前記移動制御手段に指令するように構成されている点にある。
【0010】
すなわち、管理手段は、交差点に合流する複数の移動経路のすべてから複数の移動体が交差点に向けて同時に進入する場合には、まず、退避対象の移動体に対して、退避用運行指令情報を移動制御手段に指令し、かつ、退避対象の移動体以外の移動体に対して、交差点の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を移動制御手段に指令するので、退避対象の移動体が、移動経路から退避箇所に退避し、その間、退避対象の移動体以外の移動体が、交差点の手前位置に停止する。
退避対象の移動体が退避箇所に退避すると、退避対象の移動体以外の移動体は、交差点を通過したのち、退避経路が分岐接続された移動経路を移動することができることになる。
【0011】
次に、管理手段は、退避対象の移動体以外の移動体の一つに対して、指定通過用運行指令情報を移動制御手段に指令する形態で、退避対象の移動体以外の移動体に対して、通過用運行指令情報を移動制御手段に順次指令するので、指定通過用運行指令情報が指令された移動体が、交差点を通過したのち、退避対象の移動体が退避箇所に退避することによって、移動可能となった移動経路を移動し、その後、通過用運行指令情報が指令された移動体が、順次、交差点を通過したのち、複数の移動経路のいずれかを移動することになる。
【0012】
最後に、管理手段は、退避対象の移動体に対して、復帰通過用運行指令情報を移動制御手段に指令するので、退避対象の移動体が、移動経路の復帰したのち、交差点を通過して複数の移動経路のいずれかを移動することになる。
【0013】
このようにして、交差点に合流する複数の移動経路のすべてから複数の移動体が交差点に向けて同時に進入する場合に、管理手段が、複数の移動体の移動制御手段に対して、退避用運行指令情報、停止用運行指令情報、指定通過用運行指令情報、通過用運行指令情報、復帰通過用運行情報を順次指令するだけで、デッドロック状態を回避することができる。
しかも、退避対象の移動体を退避箇所に退避させる際には、退避対象の移動体を退避経路に沿って退避箇所まで移動させるわけであるが、退避箇所は、移動経路から横方向に外れた箇所など、退避経路が分岐接続された移動経路に位置する移動体と退避箇所に位置する移動体とが干渉しない箇所に設ければよいので、退避対象の移動体を退避箇所に退避させるまでの時間を極力短くすることができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、構成の複雑化を招くことなく、デッドロック状態を極力早く回避することができる物品搬送設備を提供できるに至った。
【0015】
本発明にかかる物品搬送設備の第2特徴構成は、前記交差点は、前記移動経路の四つが合流する十字状の交差点であり、前記管理手段は、前記退避対象の移動体以外の移動体に対して前記通過用運行指令情報を前記移動制御手段に順次指令する際に、前記退避対象の移動体以外の移動体のうち、前記分岐経路が分岐接続された前記移動経路と対向する前記移動経路に位置する前記移動体に対して、前記指定通過用運行指令情報を前記移動制御手段に指令するように構成されている点にある。
【0016】
すなわち、十字状の交差点においては、管理手段が、退避対象の移動体以外の移動体に対して通過用運行指令情報を移動制御手段に順次指令する際に、分岐経路が分岐接続された移動経路と対向する移動経路に位置する移動体に対して、指定通過用運行指令情報を移動制御手段に指令するので、その指定通過用運行指令情報が指令された移動体は、交差点を通過したのち、直進して移動経路を移動することになる。
そして、この指定通過用運行指令情報が指令された移動体は、交差点を通過したのち、右折または左折して移動経路を移動するよりも、その移動にかかる時間を短くすることができる。
したがって、指定通過用運行指令情報を指令してから、次に、通過用運行指令情報を指令できるまでの時間を短くすることができ、デッドロック状態を回避するまでにかかる時間の短縮化を図ることができる。
【0017】
本発明にかかる物品搬送設備の第3特徴構成は、前記退避箇所は、前記移動体の行先箇所となる物品移載箇所を兼用するように設けられている点にある。
【0018】
すなわち、物品移載箇所とは別に、退避箇所を設けるのではなく、退避箇所が、物品移載箇所を兼用する。したがって、それだけ構成の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明にかかる物品搬送設備の実施形態について図面に基づいて説明する。
この物品搬送設備は、図1に示すように、移動経路としての走行経路1に沿って走行する移動体としての物品搬送車2の複数と、走行経路1の側脇に設けられた物品移載箇所としてのステーションSの複数とを設け、複数の物品搬送車2の夫々が走行経路1に沿って自律走行して複数のステーションSの間で物品を搬送するように構成されている。
【0020】
図2に示すように、走行経路1の三つが合流するT字状の交差点D1や、走行経路1の四つが合流する十字状の交差点D2が設けられている。
そして、図1に示すように、交差点D1,D2を整列して配置した格子状となるように、複数の走行経路1を組み合わせて走行経路網3が形成されている。
ちなみに、交差点D1,D2においては、図2に示すように、物品搬送車2が左折または右折するときには、交差点D1,D2よりも手前からカーブするカーブ経路に沿って走行する。
【0021】
図1、および、図2に示すように、複数の交差点D1,D2の一部では、交差点D1,D2に合流する複数の走行経路1のうち、一つの走行経路2に、その走行経路1に位置する物品搬送車2を退避箇所Kに退避させる退避経路13が分岐接続されている。
この退避箇所Kは、交差点D1,D2の近傍において、退避箇所Kに退避した物品搬送車2と走行経路1を走行する物品搬送車2とが干渉しないように、走行経路1から横方向に外れた箇所に設けられている。
【0022】
図1に示すものでは、左右または上下に隣接する二つの交差点D1,D2のいずれか一方のみに、退避箇所Kおよび退避経路13を設けている。そして、T字状の交差点D1では、退避箇所KがステーションSを兼用するように設けられている。
【0023】
前記物品搬送車2には、図1に示すように、その走行を制御する移動制御手段としての走行制御部4が設けられ、地上側には、複数の物品搬送車2の運行を管理する管理手段としての管理部5が設けられている。
前記管理部5は、走行制御部4との間で各種情報を通信しながら、物品搬送車2の運行を管理するように構成されている。
そして、管理部5と走行制御部4との間の通信については、無線によって行い、図示はしないが、管理部5と走行制御部4との通信を中継する中継通信装置が、交差点D1,D2などに複数設けられている。
【0024】
前記物品搬送車2は、平面図である図3に示すように、前後左右の四箇所に走行車輪6が設けられている。
そして、四つの走行車輪6のうち、右前方と左後方とに位置する二つの走行車輪6が、電動モータ7にて回転駆動される駆動用走行車輪6aとして設けられ、左前方と右後方とに位置する二つの走行車輪6が従動用走行車輪6bとして設けられている。
また、二つの駆動用走行車輪6aの夫々には、縦軸心周りで駆動用走行車輪6aを旋回操作する操向装置8が設けられている。
【0025】
そして、物品搬送車2の上部には、斜視図である図4に示すように、測定光を水平またはほぼ水平面内で走査して、反射体9にて反射される光を受光する投受光部10が設けられている。
前記複数の反射体9については、走行経路1の側方に位置する壁部などを利用して、走行経路1に対応して配設されている。
【0026】
また、物品搬送車2には、図5に示すように、物品搬送車2の走行距離を検出するために従動用走行車輪6bに設けられたロータリエンコーダなどの距離検出部11、物品搬送車2の方位を検出するレートジャイロなどの方位検出部12なども設けられている。
【0027】
前記物品搬送車2は、レーザスキャナ式の自律走行型のものであり、管理部5は、走行制御部4に対して、複数のステーションSのうちから目的のステーションSを指令する行先情報や、その目的のステーションSまでどの走行経路1を走行するかを指令する予定走行コースを通信するように構成されている。
そして、走行制御部4は、走行経路網3のうち、管理部5にて指令された予定走行コースにしたがって、目的のステーションSまで走行経路1に沿って物品搬送車2を走行させるように構成されている。
【0028】
前記走行経路1については、物品搬送車2が走行すべき仮想の経路であり、複数の走行経路1の経路情報や交差点D1,D2の位置情報がレイアウトマップとして走行制御部4に記憶されている。ちなみに、走行経路1の経路情報や交差点D1,D2の位置情報は、平面視でのX−Y座標上での走行経路1や交差点D1,D2の位置情報である。
【0029】
前記走行制御部4は、物品搬送車2を走行経路1に沿って走行させる際に、まず、投受光部10が反射光を受光するときの走査角情報および複数の反射体9についての配設位置情報に基づいて、物品搬送車2の現在位置を検出する。
説明を加えると、投受光部10は、物品搬送車2の走行中において、図4に示すように、垂直軸心周りに360度水平方向に測定光(例えば、レーザ光)を走査するように構成されている。
そして、走行制御部4は、走行経路1の位置情報に対応付けて、複数の反射体9についての配設位置情報も、レイアウトマップとして記憶しており、このレイアウトマップおよび投受光部10による走査角情報に基づいて、物品搬送車2の現在位置を検出する。
【0030】
前記走行制御部4は、検出した現在位置、距離検出部11の検出情報、および、方位検出部12の検出情報に基づいて、走行経路1に沿って物品搬送車2を走行させる経路走行を行うべく、電動モータ7および操向装置8の作動を制御するように構成されている。
具体的には、走行制御部4は、走行経路1に合せて駆動用走行車輪6aの向きを操向装置8にて変更しながら、電動モータ7にて駆動用走行車輪6aを回転駆動させるべく、電動モータ7および操向装置8の作動を制御する。
【0031】
以下、図2に示す交差点D1,D2に物品搬送車2が進入する場合の動作について説明する。
前記管理部4は、交差点D1,D2において、物品搬送車2どうしが衝突しないように、複数の物品搬送車2の運行を管理すべく、複数の物品搬送車2の夫々に設けられた走行制御部4に運行指令情報を指令するように構成されている。
そして、走行制御部4は、管理部4からの運行指令情報に基づいて、物品搬送車2の走行を制御するように構成されている。
【0032】
説明を加えると、走行制御部4は、物品搬送車2が交差点D1,D2に進入する手前で、管理部4に対して、運行指令情報の問い合わせを行う。このとき、走行制御部4は、複数の物品搬送車2のうち、どの物品搬送車2であるかを識別する識別情報や、交差点D1,D2を通過したのちどの走行経路1が予定走行コースであるかを示す通過予定コースを送信するように構成されている。
そして、管理部4は、交差点D1,D2に向けてどの走行経路1から物品搬送車2が進入するかやその物品搬送車2の通過予定コースなど、交差点D1,D2に合流する複数の走行経路1における物品搬送車2の運行状況に基づいて、物品搬送車2どうしが衝突しないように、運行指令情報を走行制御部4に指令する。
【0033】
前記管理部5がどのような運行指令情報を指令するかについて、交差点D1,D2に合流する複数の走行経路1における物品搬送車2の運行状況によって場合分けして説明する。
【0034】
はじめに、交差点D1,D2に合流する複数の走行経路1のすべてから複数の物品搬送車2が交差点D1,D2に向けて同時に進入する場合を説明する。
前記管理部5は、まず、複数の物品搬送車2のうち、退避経路13が分岐接続された走行経路1に位置する退避対象の物品搬送車2に対して、退避箇所Kに退避させるべく、退避用運行指令情報を走行制御部4に指令し、かつ、退避対象の物品搬送車2以外の物品搬送車2に対して、交差点D1,D2の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を走行制御部4に指令するように構成されている。
次に、管理部5は、退避対象の物品搬送車2以外の物品搬送車2の一つに対して、交差点D1,D2を通過したのち退避経路13が分岐接続された走行経路1を走行させるべく、指定通過用運行指令情報を走行制御部4に指令する形態で、退避対象の物品搬送車2以外の物品搬送車2に対して、交差点D1,D2を通過したのち複数の走行経路1のいずれかを移動させるべく、通過用運行指令情報を走行制御部4に順次指令するように構成されている。
その後、管理部5は、退避対象の物品搬送車2に対して、退避箇所Kから走行経路1に復帰して交差点D1,D2を通過したのち複数の走行経路1のいずれかを移動させるべく、復帰通過用運行指令情報を走行制御部4に指令するように構成されている。
【0035】
また、管理部5は、十字状の交差点D2においては、退避対象の物品搬送車2以外の物品搬送車2に対して通過用運行指令情報を走行制御部4に順次指令する際に、退避対象の物品搬送車2以外の物品搬送車2のうち、分岐経路13が分岐接続された走行経路1aと対向する走行経路1に位置する物品搬送車2に対して、指定通過用運行指令情報を走行制御部4に指令するように構成されている。
【0036】
図6(イ)に示すように、十字状の交差点D2において、四つの走行経路1のすべてから四台の物品搬送車2が交差点D1,D2に向けて同時に進入する場合を例に挙げて説明する。
まず、管理部5は、図6(ロ)に示すように、退避経路13が分岐接続された走行経路1aに位置する退避対象の物品搬送車2aに対して、退避箇所Kに退避させるべく、退避用運行指令情報T1を走行制御部4に指令し、かつ、残りの三台の物品搬送車2に対して、交差点D2の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報T2を走行制御部4に指令する。
【0037】
退避用運行指令情報T1が指令された走行制御部4は、走行経路1aに沿って後退走行したのち退避経路13に分岐して退避箇所Kまで後退走行させるべく、走行経路1aおよび退避経路13に合せて駆動用走行車輪6aの向きを操向装置8にて変更しながら、電動モータ7にて駆動用走行車輪6aを逆回転駆動させる。
そして、この走行制御部4は、退避箇所Kに物品搬送車2が到着すると、管理部5に対して、退避箇所Kに物品搬送車2が退避したという退避確認情報を送信する。
停止用運行指令情報T2が指令された走行制御部4は、電動モータ7を作動停止させて、物品搬送車2を交差点D2の手前位置に停止させる。
【0038】
次に、管理部5は、退避確認情報を受信すると、図6(ハ)に示すように、分岐経路13が分岐接続された走行経路1aと対向する走行経路1bに位置する物品搬送車2bに対して、交差点D2を通過したのち分岐経路13が分岐接続された走行経路1aを走行させるべく、指定通過用運行指令情報T3を走行制御部4に指令する。
【0039】
指定通過用運行指令情報T3が指令された走行制御部4は、交差点D2を通過したのち走行経路1aに沿って直進走行すべく、走行経路1に合せて駆動用走行車輪6aの向きを操向装置8にて変更しながら、電動モータ7にて駆動用走行車輪6aを回転駆動させる。
そして、この走行制御部4は、交差点D2を通過したのち走行経路1aに沿って直進走行すると、管理部5に対して、物品搬送車2が交差点D2を通過したという通過確認情報を送信する。
【0040】
次に、管理部5は、通過確認情報を受信すると、図7(ニ)に示すように、二台の物品搬送車2のうち、選択した一方の物品搬送車2に対して、交差点D2を通過したのち複数の走行経路1のいずれかを走行させるべく、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令する。
そして、二台の物品搬送車2のうち、どちらを選択するかについては、例えば、通過予定コースの走行経路1に他方の物品搬送車2が存在しない方の物品搬送車2を選択する。
また、二台の物品搬送車2の両方ともが、通過予定コースの走行経路1に他方の物品搬送車2が存在する競合状態である場合には、例えば、管理部5の通信範囲に対して先に進入した方の物品搬送車2を選択したり、予め設定された優先順位の高い方の物品搬送車2を選択することができる。
【0041】
そして、管理部4は、選択した物品搬送車2に対して通過用運行指令情報T4を指令する際に、競合状態であるか否かによって、走行制御部4に指令する通過用運行指令情報T4の内容を異ならせている。
すなわち、管理部5は、競合状態でない場合には、交差点D2を通過したのち通過予定コースの走行経路1を走行させるべく、通過用運行指令情報T4として、予定通過用運行指令情報を指令する。
また、管理部5は、競合状態である場合には、交差点D2を通過したのち他方の物品搬送車2が存在しない走行経路1を走行させるべく、通過用運行指令情報T4として、非予定通過用運行指令情報を指令する。
そして、管理部5は、競合状態である場合には、当初の予定走行コースとは異なる走行経路1を走行することになるので、新たな予定走行コースを走行制御部4に指令する。
【0042】
通過用運行指令情報T4が指令された走行制御部4は、交差点D2を通過したのち走行経路1に沿って走行させるべく、電動モータ7および操向装置8の作動を制御し、交差点D2を通過したのち走行経路1に沿って走行すると、管理部5に対して、物品搬送車2が交差点D2を通過したという通過確認情報を送信する。
【0043】
次に、管理部5は、通過確認情報を受信すると、図7(ホ)に示すように、残りの一台の物品搬送車2に対して、交差点D2を通過したのち複数の走行経路1のいずれかを走行させるべく、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令する。
この場合には、他の走行経路1に物品搬送車2が位置しないので、管理部4は、交差点D2を通過したのち通過予定コースの走行経路1を走行させるべく、通過用運行指令情報T4として、予定通過用運行指令情報を走行制御部4に指令する。
【0044】
通過用運行指令情報T4が指令された走行制御部4は、交差点D2を通過したのち走行経路1に沿って走行させるべく、電動モータ7および操向装置8の作動を制御し、交差点D2を通過したのち走行経路1に沿って走行すると、管理部5に対して、物品搬送車2が交差点D2を通過したという通過確認情報を送信する。
【0045】
最後に、管理部5は、通過確認情報を受信すると、図7(ヘ)に示すように、退避対象の物品搬送車2aに対して、退避箇所Kから走行経路1aに復帰して交差点D2を通過したのち複数の走行経路1のいずれかを走行させるべく、復帰通過用運行指令情報T5を走行制御部4に指令する。
この場合には、他の走行経路2に物品搬送車2が位置しないので、管理部4は、交差点D2を通過したのち通過予定コースの走行経路1を走行させる内容の復帰通過用運行指令情報T5を走行制御部4に指令する。
【0046】
次に、十字状の交差点D2に向けて三つの走行経路1から物品搬送車2が三台同時に進入する場合を説明するが、この場合は、例えば、図6(ハ)において、退避箇所Kに物品搬送車2が存在していない場合である。
したがって、基本的には、上述した如く、図6(ハ)、図7(二)、図7(ホ)の順に動作することになり、簡略して説明を加える。
【0047】
前記管理部4は、まず、図6(ハ)において、三台の物品搬送車2のうち、選択した一台の物品搬送車2に対して、交差点D1,D2を通過したのち物品搬送車2が位置しない走行経路1aを走行させるべく、指定通過用運行指令情報を走行制御部4に指令し、かつ、残りの二台の物品搬送車2に対して、交差点D1,D2の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を走行制御部4に指令するように構成されている。
三台の物品搬送車2のうち、どの物品搬送車2を選択するかについては、上述した如く、管理部5の通信範囲に対して進入した順や予め設定された優先順位の高い順に選択することができる。
【0048】
その後、管理部5は、図7(二)に示すように、二台の物品搬送車2のうち、選択した一方の物品搬送車2に対して、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令したのち、図7(ホ)に示すように、残りの一台の物品搬送車2に対して、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令する。
【0049】
次に、交差点D1,D2に向けて二つの走行経路1から物品搬送車2が二台同時に進入する場合を説明するが、この場合は、例えば、図7(ニ)において、退避箇所Kに物品搬送車2が存在していない場合である。
したがって、基本的には、上述した如く、図7(二)、図7(ホ)の順に動作することになり、簡略して説明を加える。
【0050】
前記管理部4は、まず、図7(ニ)において、二台の物品搬送車2のうち、選択した一方の物品搬送車2に対して、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令し、かつ、他方の物品搬送車2に対して、交差点D1,D2の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を走行制御部4に指令したのち、図7(ホ)に示すように、残りの一台の物品搬送車2に対して、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令する。
【0051】
次に、交差点D1,D2に向けて一つの走行経路1から物品搬送車2が一台進入する場合を説明するが、この場合とは、例えば、図6(ホ)において、退避箇所Kに物品搬送車2が存在していない場合である。
したがって、管理部4は、図6(ホ)に示すように、その物品搬送車2に対して、通過用運行指令情報T4を走行制御部4に指令する。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、交差点D1,D2に合流する複数の走行経路1のうち、一つの走行経路1aに退避箇所Kおよび退避経路13を設けたが、例えば、図6および図7の点線で示すように、交差点D1,D2に合流する複数の走行経路1のうち、二つの走行経路1に退避箇所Kおよび退避経路13を設けて実施することもできる。
このときには、図7(ニ)において、二台の物品搬送車2の両方ともが、通過予定コースの走行経路1に他方の物品搬送車2が存在する競合状態となっていても、二台の物品搬送車2とも、交差点D2を通過したのち通過予定コースの走行経路1を走行させることができる。
【0053】
説明すると、管理部5が、図7(ニ)において、競合状態のときには、まず、ニ台の物品搬送車2のうち、退避経路13が分岐接続された走行経路1に位置する一方の物品搬送車2に対して、退避箇所Kに退避させるべく、退避用運行指令情報を走行制御部4に指令し、次に、他方の物品搬送車2に対して、交差点D2を通過したのち通過予定コースの走行経路1を走行させるべく、通過用運行指令情報T4として、予定通過用運行指令情報を走行制御部4に指令する。
その後、管理部5が、退避箇所13に退避した物品搬送車2に対して、退避箇所Kから走行経路1に復帰して交差点D2を通過したのち通過予定コースの走行経路1を走行させるべく、復帰通過用運行指令情報T5を走行制御部4に指令する。
【0054】
(2)上記実施形態では、管理部5が、十字状の交差点D2において、退避対象の物品搬送車2a以外の物品搬送車2に対して通過用運行指令情報を走行制御部4に順次指令する際に、退避対象の物品搬送車2a以外の物品搬送車2のうち、分岐経路13が分岐接続された走行経路1aと対向する走行経路1に位置する物品搬送車2に対して、指定通過用運行指令情報を走行制御部4に指令するように構成されているが、管理部5が、退避対象の物品搬送車2a以外の物品搬送車2に対して、指定通過用運行指令情報をどの物品搬送車2に指令するかは適宜変更が可能である。
【0055】
(3)上記実施形態では、T字状の交差点D1において、退避箇所KがステーションSを兼用するように設けられているが、十字状の交差点D2においても、退避箇所KがステーションSを兼用することができ、複数の交差点D1,D2において、退避箇所KをステーションSと兼用させるか否かは適宜変更が可能である。
【0056】
(4)上記実施形態では、複数の交差点D1,D2の一部に、退避箇所Kおよび退避経路13を設けているが、すべての交差点D1,D2に退避箇所Kおよび退避経路13を設けることも可能である。
また、複数の交差点D1,D2の一部に、退避箇所Kおよび退避経路13を設ける場合に、どの交差点D1,D2に設けるかについては適宜変更が可能である。
【0057】
(5)上記実施形態では、レーザスキャナ式の自律走行型の物品搬送車2を例示したが、他の自律走行型の物品搬送車2を適応することも可能であり、各種の物品搬送車を
適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】物品搬送設備の概略平面図
【図2】交差点を示す平面図
【図3】物品搬送車の平面図
【図4】物品搬送車の斜視図
【図5】物品搬送設備のブロック図
【図6】十字状の交差点での物品搬送車の運行を示す図
【図7】十字状の交差点での物品搬送車の運行を示す図
【符号の説明】
【0059】
1 移動経路
2 移動体
4 移動制御手段
5 管理手段
13 分岐経路
D1,D2 交差点
K 退避箇所
S 物品移載箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動経路に沿って移動する物品搬送用の移動体が複数設けられ、
前記移動経路の複数が合流する交差点において、前記複数の移動体の運行を管理すべく、前記複数の移動体の夫々に設けられた移動制御手段に運行指令情報を指令する管理手段が設けられ、
前記移動制御手段は、前記管理手段からの前記運行指令情報に基づいて、前記移動体の移動を制御するように構成されている物品搬送設備であって、
前記交差点に合流する複数の前記移動経路のうち、少なくとも一つの前記移動経路には、その移動経路に位置する前記移動体を退避箇所に退避させる退避経路が分岐接続され、
前記管理手段は、
前記交差点に合流する複数の前記移動経路のすべてから複数の前記移動体が前記交差点に向けて同時に進入する場合には、前記複数の移動体のうち、前記退避経路が分岐接続された前記移動経路に位置する退避対象の移動体に対して、前記退避箇所に退避させるべく、退避用運行指令情報を前記移動制御手段に指令し、かつ、前記退避対象の移動体以外の移動体に対して、前記交差点の手前位置に停止させるべく、停止用運行指令情報を前記移動制御手段に指令し、
次に、前記退避対象の移動体以外の移動体の一つに対して、前記交差点を通過したのち前記退避経路が分岐接続された前記移動経路を移動させるべく、指定通過用運行指令情報を前記移動制御手段に指令する形態で、前記退避対象の移動体以外の移動体に対して、前記交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるべく、通過用運行指令情報を前記移動制御手段に順次指令し、
その後、前記退避対象の移動体に対して、前記退避箇所から前記移動経路に復帰して前記交差点を通過したのち複数の移動経路のいずれかを移動させるべく、復帰通過用運行指令情報を前記移動制御手段に指令するように構成されている物品搬送設備。
【請求項2】
前記交差点は、前記移動経路の四つが合流する十字状の交差点であり、
前記管理手段は、前記退避対象の移動体以外の移動体に対して前記通過用運行指令情報を前記移動制御手段に順次指令する際に、前記退避対象の移動体以外の移動体のうち、前記分岐経路が分岐接続された前記移動経路と対向する前記移動経路に位置する前記移動体に対して、前記指定通過用運行指令情報を前記移動制御手段に指令するように構成されている請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記退避箇所は、前記移動体の行先箇所となる物品移載箇所を兼用するように設けられている請求項1または2に記載の物品搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−268769(P2006−268769A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89841(P2005−89841)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】