物理量センサの製造方法
【課題】メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止できる物理量センサの製造方法を提供する。
【解決手段】熱式流量センサを形成するために用いるSOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成とする。これにより、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。このため、シリコン酸化膜12がエッチングされることによるメンブレンの薄厚化を防止することができ、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止することが可能となる。
【解決手段】熱式流量センサを形成するために用いるSOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成とする。これにより、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。このため、シリコン酸化膜12がエッチングされることによるメンブレンの薄厚化を防止することができ、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数層の膜からなるメンブレンが設けられた物理量センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、発熱抵抗体と測温抵抗体を用いた熱式流量センサが開示されている。熱式流量センサは、発熱抵抗体を被測定流体中に設置し、被測定流体によって奪われる発熱抵抗体の放熱量を測温抵抗体により検出して、被測定流体の流量を検出する。このような熱式流量センサでは、基板に凹部や空洞部を形成することにより、基板との接触を減らし、基板への熱伝達を抑制できるようにした薄膜部としてのメンブレンが設けられる。このメンブレンの上に発熱抵抗体と測温抵抗体を配置することで、熱式流量センサの応答性を高めている。
【0003】
この特許文献1に示される熱式流量センサは、SOI(Silicon on insulator)基板を用いて製造されており、メンブレンの最下層をSOI基板における埋め込み層(BOX層)を構成するSiO2により構成している。
【特許文献1】特開2001−12985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された熱式流量センサにおいては、メンブレンの最下層をSOI基板の埋め込み層を構成するSiO2一層のみにより構成しているため、支持基板を構成するシリコン基板に対して凹部を形成するためにKOH等などを用いて異方性エッチングを行うと、SiO2もエッチングされてしまう。したがって、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうという問題が発生する。
【0005】
なお、ここでは上記の問題について、熱式流量センサを例に挙げて説明したが、メンブレンを用いた他の物理量センサに関しても上記と同様の問題が発生する。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止できる物理量センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、シリコン基板(10)を支持基板、絶縁膜(13)を埋め込み層、半導体層(14)をSOI層としたSOI基板を用いて形成され、シリコン基板(10)における空洞部(10a)に形成された絶縁膜(13)をメンブレンとして構成されてなる物理量センサの製造方法において、SOI基板として、絶縁膜(13)がシリコン窒化膜(11)と該シリコン窒化膜(11)よりも半導体層(14)側に配置されたシリコン酸化膜(12)の少なくとも2層を含む積層構造となるものを用意する工程と、SOI基板におけるシリコン基板(10)をエッチングすることで、該シリコン基板(10)に空洞部(10a)を形成する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0008】
このように、熱式流量センサを形成するために用いるSOI基板の埋め込み層をシリコン酸化膜(12)の一層のみによって構成せずに、シリコン酸化膜(12)よりもシリコン基板(10)側に配置したシリコン窒化膜(11)も備えた構成としている。このため、シリコン基板(10)をエッチングする際に、シリコン窒化膜(11)がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜(12)が除去されないようにすることができる。このため、シリコン酸化膜(12)がエッチングされることによるメンブレンの薄厚化を防止することができ、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止することが可能となる。
【0009】
例えば、Si3N4もしくはSiリッチのSixNyを用いて絶縁膜(13)に含まれるシリコン窒化膜(11)を形成することができる。
【0010】
また、このようなシリコン窒化膜(11)は、引っ張り応力を有する膜として形成されると好ましい。このようにすることで、メンブレンを構成する膜全体の平均応力が引っ張り応力となるようにすることが可能となり、メンブレンが挫屈して破損し難くなるようにできる。
【0011】
なお、シリコン窒化膜(11)の形成に関しては、シリコン基板(10)の表面(10b)にシリコン窒化膜(11)を形成することにより行っても良いし、シリコン基板(10)の表面(10b)から窒素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、シリコン基板(10)の決められた深さの位置にシリコン窒化膜(11)を形成することにより行っても良い。
【0012】
一方、例えば、SiO2、Nを微小に含んだSiOxNyおよびポーラスシリカのいずれかを用いて絶縁膜(13)に含まれるシリコン酸化膜(12)を形成することができる。
【0013】
この場合、シリコン酸化膜(12)を形成に関しては、シリコン基板(10)の表面(10b)に形成したシリコン窒化膜(11)の上面、もしくは、SOI層を形成するためのシリコン基板(30)の表面(30a)にシリコン酸化膜(12)を形成することにより行っても良いし、シリコン基板(10)の表面(10b)から酸素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、シリコン基板(10)の決められた深さの位置にシリコン酸化膜(12)を形成することにより行っても良い。
【0014】
例えば、SOI基板を用意する工程は、支持基板となるシリコン基板(10)の表面(10b)にシリコン窒化膜(11)を形成する工程と、SOI層を形成するためのSOI層用シリコン基板(30)を用意し、該SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)にシリコン酸化膜(12)を形成する工程と、シリコン窒化膜(11)とシリコン酸化膜(12)とを貼り合わせることにより、支持基板となるシリコン基板(10)とSOI層用シリコン基板(30)を一体化させる工程と、SOI層用シリコン基板(30)を薄厚化させることで、SOI層を形成する工程と、を含んだ工程により行われる。
【0015】
この場合、SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)からSOI層の膜厚相当分の深さの位置に水素イオンを注入しておき、その後、熱処理を行うことにより、水素イオンを注入した位置においてSOI層用シリコン基板(30)を割ることで、SOI層を形成することができる。
【0016】
以上説明した物理量センサの製造方法は、例えば、メンブレン内に配置される半導体層(14)をヒータ(15a、15b)とし、流体の流動に伴うヒータ(15a、15b)の温度変化に基づき、物理量として流体の流量の検出を行う熱式流量センサ(S1)の製造方法として適用することができる。
【0017】
また、半導体層(14)の上層に配置されると共に半導体層(14)との接触点となる複数の接点を有した配線層(41)と、メンブレン内において配線層(41)よりも上層に配置された赤外線吸収膜(43)とを有し、配線層(41)と半導体層(14)との接点のうちメンブレン内の接点を温接点とし、メンブレン外の接点を冷接点として、赤外線吸収膜(43)に赤外線が照射されたときに、赤外線吸収膜(43)の温度上昇に伴い発生する温接点と冷接点との温度差に起因する起電力に基づき、物理量として赤外線の量を検出する赤外線センサ(S2)の製造方法として適用することもできる。
【0018】
また、半導体層(14)の上層に配置された配線層(51)と、メンブレン内において配線層(51)よりも上層に配置された測定対象ガスとの反応により抵抗値を変化させる感ガス膜(53)とを有し、配線層(51)のうち感ガス膜(53)に電気的に接続されるパッド部(51a、51b)を通じて感ガス膜(53)の抵抗値を検出できると共に、配線層(51)のうち半導体層(14)に電気的に接続されるパッド部(51c、51d)を通じて半導体層(14)に電流が流せるように構成され、半導体層(14)に電流を流して加熱することでメンブレン内の感ガス膜(53)の温度を上げ、感ガス膜(53)を対象ガスと反応させて該感ガス膜(53)の抵抗値を変化させることで、物理量として対象ガスの量を検出するガスセンサ(S3)の製造方法として適用することもできる。
【0019】
また、半導体層(14)の上層に配置されると共に半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、シリコン基板(10)の裏面に配置されることで空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)とを有し、メンブレン内に配置された半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力によるメンブレンの変位に伴う半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、物理量として圧力を検出する圧力センサ(S4)の製造方法として適用することもできる。
【0020】
また、半導体層(14)の上層に配置されて該半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)を有すると共に、空洞部(10a)に形成された絶縁膜(13)に備えられた錘部(10e)を有し、メンブレン内に配置された半導体層(14)をゲージ抵抗とし、加速度によるメンブレンの変位に伴う半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、物理量として加速度を検出する加速度センサ(S5)の製造方法として適用することもできる。
【0021】
さらに、半導体層(14)の上層に配置されると共に半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、シリコン基板(10)の裏面に配置されることで空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)と、空洞部(10a)に形成された絶縁膜(13)に台座(63)から離間するように備えられた錘部(10e)とを有し、メンブレン内に配置された半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力もしくは加速度によるメンブレンの変位に伴う半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、物理量として圧力もしくは加速度を検出する複合センサ(S6)の製造方法として適用することもできる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態を適用した物理量センサとしての熱式流量センサS1の概略平面構成を示す図であり、図2は、図1中のA−A線に沿った熱式流量センサS1の概略断面構成を示す図である。
【0025】
熱式流量センサS1は、例えば板厚が400μmまたは600μmとされたシリコン基板10をベースに形成されている。このシリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0026】
図2に示されるように、空洞部10aは、シリコン基板10の表面10bと裏面10cを貫通するように形成されている。具体的には、空洞部10aは、シリコン基板10の裏面10c側を開口部10dとし、シリコン基板10の裏面10c側から表面10b側へ向かって凹ませた凹部として構成されている。
【0027】
また、図2に示されるように、シリコン基板10の表面10b上には、シリコン窒化膜11、シリコン酸化膜12が積層された絶縁膜13が形成されている。ここでいうシリコン窒化膜11は、SiとNを有する膜のことを意味しており、例えばSi3N4やSiリッチのSixNyが該当する。このシリコン窒化膜11は、引っ張り応力を有する膜となっており、例えば、0.05〜0.5μm程度の膜厚とされている。また、シリコン酸化膜12は、SiとOを有する膜のことを意味しており、例えばSiO2、Nを微小に含んだSiOxNy、ポーラスシリカなどが該当する。このシリコン酸化膜12は、圧縮応力を有する膜となっており、例えば、0.01〜1μm程度の膜厚とされている。
【0028】
この絶縁膜13の表面には、シリコン層に不純物を熱拡散させたことによって形成された半導体層14がパターニングされており、この半導体層14により、ヒータ15a、15bと環境温度を測定するための温度計16a、16bおよび配線層17a〜17fを構成する抵抗体が形成されている。
【0029】
このように構成されたシリコン基板10と絶縁膜13および半導体層14は、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成されたものである。
【0030】
さらに、半導体層14は、BPSG等からなる絶縁膜18によって覆われ、この絶縁膜18の所定部位に形成されたコンタクトホールを通じて、アルミニウムなどで構成されたパッド19a〜19fに電気的に接続されている。
【0031】
また、絶縁膜18の表面において、シリコン基板10のほぼ全域を覆うようにシリコン窒化膜20が形成され、熱式流量センサS1の表面が保護されている。このシリコン窒化膜20におけるパッド19a〜19fと対応する部位には、開口部が形成されており、この開口部を通じてパッド19a〜19fに対してワイヤ21a〜21fがボンディングされることで、熱式流量センサS1の外部に備えられる制御回路に電気的に接続されるようになっている。
【0032】
そして、シリコン基板10における裏面側には、シリコン窒化膜21が形成されている。このシリコン窒化膜21には開口部が形成されており、この開口部を通じてシリコン基板10の開口部10dが形成されている。
【0033】
このような構造により、熱式流量センサS1が構成されている。
【0034】
続いて、このような熱式流量センサS1で被測定流体である空気の流量検出を行うときの動作の一例について説明する。
【0035】
ヒータ15a、15bは、図示しない制御回路によって駆動され、例えば温度計16a、16bで測定される環境温度よりも200℃高い温度となるように制御される。具体的には、制御回路からワイヤ21b、21c、パッド19b、19cおよび配線層17b、17cを通じてヒータ15aに電流が流されると共に、ワイヤ21d、21c、パッド19d、19eおよび配線層17d、17eを通じてヒータ15bに電流が流される。これにより、所定の線幅で構成された各ヒータ15a、15bが加熱される。
【0036】
環境温度の測定は各温度計16a、16bの抵抗値が環境温度に応じて変動するので、温度計16aの抵抗値変化に伴う電流量変化がワイヤ21a、21bやパッド19a、19bおよび配線層17a、17bを通じて、また、温度計16bの抵抗値変化に伴う電流量変化がワイヤ21e、21fやパッド19e、19fおよび配線層17e、17fを通じて、それぞれ制御回路に入力されることになる。これにより、制御回路側で、各温度計16a、16bそれぞれの位置の温度が検出される。
【0037】
したがって、制御回路側で、各温度計16a、16bで検出される環境温度よりも200℃高い温度となるように、各ヒータ15a、15bに流す電流量がフィードバック制御される。
【0038】
例えば、図1中の白抜き矢印方向から空気が流れてくるとする。ここで、上述したように、加熱されたヒータ15a、15bは空気が流れることにより、熱を奪われて温度が下がるが、空気の流れの下流側のヒータ15bは、上流側のヒータ15aを通過する時に加熱された空気が下流側のヒータ15bに接するために、熱が少ししか奪われず、温度の下がりは小さい。そして、このように各ヒータ15a、15bの熱の奪われ方は、空気の流量に応じたものとなる。
【0039】
したがって、制御回路は、ヒータ15aおよびヒータ15bが常に環境温度よりも200℃高い温度になるように各ヒータ15a、15bへの通電量をそれぞれ大きくし、それらの通電量に基づいて、空気の流量および流れの方向を検出することが可能となる。
【0040】
続いて、本実施形態で示される熱式流量センサS1の製造方法について、図3に示す製造工程図を参照して説明する。
【0041】
〔図3(a)に示す工程〕
まず、単結晶シリコンで構成された支持基板となるシリコン基板10を用意する。例えば、シリコン基板10として、面方位が(100)で、400μmまたは600μm程度の板厚を有する6インチウェハを用いる。このときのシリコン基板10には、まだ空洞部10aが形成されていないものとなっている。
【0042】
〔図3(b)に示す工程〕
シリコン基板10における表面10bおよび裏面10c上に、LP−CVD(減圧CVD)法によってシリコン窒化膜11およびシリコン窒化膜21を例えば0.05〜0.5μm程度デポジションにより形成する。このとき、シリコン窒化膜11およびシリコン窒化膜21が引っ張り応力を有する膜となるように、これらの成膜条件を設定する。メンブレンを構成するシリコン窒化膜11、シリコン酸化膜12、絶縁膜18、シリコン窒化膜20のうちの多くが圧縮応力を有する膜として構成されるが、圧縮応力が働くとメンブレンが挫屈して破損しやすくなることが知られている。このため、シリコン窒化膜11が引っ張り応力を有する膜となるようにすることで、メンブレンが挫屈して破損し難くなるようにしている。
【0043】
また、このときシリコン窒化膜11をSi3N4で構成しても良いが、SiリッチのSixNyにすると好ましい。すなわち、Si3N4は引張り応力が大凡1200MPaと高すぎるため、厚く形成するとSi3N4で構成されたシリコン窒化膜11自身にクラックが発生する可能性がある。よって、Si3N4は厚くても1回のデポジションでは0.2μm程度、複数回のデポジションでは0.5μm程度までしか形成できない(Si3N4を複数回のデポジションで形成することによって厚く形成してもクラックの発生を抑制できるので、0.2μm以上の厚さでデポジションする場合には複数回で行うのが好適である)。また、Si3N4を厚く形成すると、シリコン窒化膜11の引っ張り応力が大きくなるシリコン基板10の外縁近傍において表面10bにスリップが発生するという問題もある。それに対して、SiリッチのSixNyはSi3N4より引張り応力を低くすることができるので、Si3N4より厚く形成できる。このため、メンブレンのトータル膜厚を厚くしても、膜全体の平均応力を引張り応力にすることができる。このようなSiリッチのSixNyは、例えばLP−CVD法で形成され、形成温度(700〜900℃)やガス流量比(SiH2Cl2/NH3比≒0.3〜8)によって、Siリッチ量をコントロールでき、所望の引張り応力を得ることができる。
【0044】
なお、メンブレンを構成する膜全体の平均応力が引っ張り応力(望ましくは20MPa以上の引っ張り応力)となるように、シリコン窒化膜をLP−CVD法によって形成しているが、シリコン窒化膜が形成される表面に段差があると、シリコン窒化膜が剥離したり、割れたりするなどの問題がある。しかしながら、ここで説明したように、シリコン窒化膜11を平面となっているシリコン基板10の表面10bに形成することで、シリコン窒化膜11が剥離したり、割れたりするということはない。
【0045】
〔図3(c)、(d)に示す工程〕
一方、単結晶シリコンで構成されたSOI層を構成するシリコン基板30を用意する。例えば、シリコン基板10と同じものを用いることができる。そして、シリコン基板30における表面30a(および裏面30b)上に、熱酸化によってシリコン酸化膜12を例えば0.01〜1μm程度形成する。
【0046】
このとき、シリコン酸化膜12をSiO2で構成することもできるが、SiOxNy(シリコンオキシナイトライド)にすると、SiO2より圧縮応力を低くすることができる。上述したように、メンブレンを構成する膜全体の平均応力が引張り応力である必要があり、シリコン酸化膜12をSiOxNyとすることにより、SiO2とした場合と比べて圧縮応力の膜を厚くすることができる。これにより、メンブレンのトータル膜厚を厚くすることができ、気体中に混ざったダストがメンブレンに衝突したときのメンブレンの破損を防止できると共に、空気の圧力変動に対するメンブレンの変形を抑制できるため、計測精度の悪化も防止できる。このようなSiOxNyは、例えばプラズマCVD法で形成される。
【0047】
また、シリコン酸化膜12をSiO2ではなくポーラスシリカで構成しても、SiO2より圧縮応力を低くすることができる。さらに、ポーラスシリカにすると熱伝導率も小さくすることができるため、上記効果に加えて発熱抵抗体を構成するヒータ15a、15bを少ない電力で同じ温度に制御することができ、省電力化が可能となる。このようなポーラスシリカは、例えば有機SOG(Spin On Glass)をO2アッシングすると形成される。なお、有機SOGとは、メインのネットワークのSi−O結合の一部をメチル基で終端したもののことを指す。
【0048】
〔図3(e)に示す工程〕
シリコン基板10における表面10b側のシリコン窒化膜11とシリコン基板30における表面30a側のシリコン酸化膜12を貼り合わせることで、2枚のシリコン基板10、30を一体化させる。具体的には、シリコン窒化膜11とシリコン酸化膜12をこれらの間にボイド(空孔)が形成されないように重ね合わせ、1000℃以上の高温での熱処理を行う。これにより、埋め込み層を構成する絶縁膜13がシリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12によって構成されたSOI基板が形成される。
【0049】
〔図3(f)に示す工程〕
CMP(Chemical Mechanical polishing)等により、シリコン基板30を研磨し、例えば0.2〜2μmの膜厚となるまで薄厚化することでSOI層を形成する。この後、必要に応じてSOI層の表面を酸化したのち、SOI層に対してドナー不純物(例えば、P、As、Sbなど)もしくはアクセプタ不純物(例えば、B、Al)を例えば1×1019〜1×1021cm-3程度の濃度となるようにイオン注入したのち、活性化熱処理を行うことにより、半導体層14を形成する。活性化熱処理に関しては、後で熱処理工程が行われる場合に、その熱処理では不純物の拡散と電気的な活性化が不十分な場合にのみ行うようにしても良い。
【0050】
なお、ここでは不純物をイオン注入によりドーピングしているが、リンデポのようなイオン注入を行わないドーピング方法を用いても良いし、元々、シリコン基板30を形成する際のシリコン結晶成長時にドナー不純物(例えば、P、As、Sbなど)やアクセプタ不純物(例えば、B、Al)がドーピングされる雰囲気としておけば、ここでのイオン注入を行わなくても良くなり、製造工程の簡略化を図れるという効果も得られる。
【0051】
〔図4(a)に示す工程〕
不純物をイオン注入する前に半導体層14の表面に形成されたシリコン酸化膜を除去する工程等を行ったのち、半導体層14をパターニングする。これにより、ヒータ15a、15bと環境温度を測定するための温度計16a、16bおよび配線層17a〜17fが構成される。このとき、ヒータ15a、15bに関しては、例えば、線幅が10μm程度となるようにする。なお、この半導体層14のパターニングは、エッチングによって行うことになるが、SOI層の下地としてシリコン酸化膜12が形成されているため、エッチング時にシリコン窒化膜11までエッチングされてしまうことを防止することができる。このため、後に形成されるメンブレンの強度を低下させないようにすることができる。
【0052】
〔図4(b)に示す工程〕
半導体層14の表面の安定化のために、必要に応じて半導体層14の表面を微少量酸化させたのち、BPSG層をデポジションにより形成することで絶縁膜18を形成する。続いて、アニール処理を行うことで表面の段差を平坦化したのち、フォトエッチング工程によって絶縁膜18にコンタクトホールを形成する。そして、アルミニウムをデポジションにより形成したのち、フォトエッチング工程によってアルミニウムをパターニングすることでパッド19a〜19fを形成する。なお、ここではアルミニウムをパターニングしてパッド19a〜19fとしたが、引き出し配線を構成するようにしても良い。
【0053】
〔図4(c)に示す工程〕
シリコン基板10の表面10b側の全面に、プラズマCVD法等によって例えば3.2μm程度の膜厚で保護膜となるシリコン窒化膜20をデポジションにより形成する。これにより、アルミニウムで構成されたパッド19a〜19fを保護できると共に、メンブレンの厚膜化を図ることができ、空気中に混ざったダストがメンブレンに衝突したときの破損を防止できると共に、空気の圧力変動に対するメンブレンの変形を抑制できるため、計測精度の悪化も防止できる。なお、ここではシリコン窒化膜20と絶縁膜18の両方を形成する場合について説明したが、これらのうちの一方でもあれば、保護膜として機能する。
【0054】
そして、フォトエッチング工程によってシリコン窒化膜20の所定位置を開口させることで各パッド19a〜19fを露出させる。その後、パッシベーションアニール処理を行う。
【0055】
〔図4(d)に示す工程〕
フォトエッチング工程によってシリコン窒化膜21の所定部位を開口させる。そして、シリコン窒化膜21をマスクとしてシリコン基板10を露出部分から異方性エッチングすることで、シリコン基板10に開口部10dを形成することにより、空洞部10aを構成する。このとき、シリコン基板10の面方位が(100)とされているため、図1に示すような形状に開口部10dが形成される。これにより、図1、図2に示される本実施形態の熱式流量センサS1が完成する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の熱式流量センサS1では、熱式流量センサS1を形成するために用いるSOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。このため、シリコン酸化膜12がエッチングされることによるメンブレンの薄厚化を防止することができ、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止することが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、図3(b)に示す工程において、シリコン基板10の表面10bのシリコン窒化膜11だけでなく裏面10cのシリコン窒化膜21も同時に形成するようにしているが、後の工程で形成しても良い。例えば、図4(b)の工程の後にシリコン窒化膜21を形成しても良い。
【0058】
ただし、シリコン窒化膜11は、上述したように引っ張り応力を有した膜とされるため、シリコン窒化膜11の引っ張り応力によってシリコン基板10に反りが発生する可能性もある。このため、上記第1実施形態のように、シリコン窒化膜11の形成時にシリコン窒化膜21を同時に形成するようにしておけば、シリコン基板10の反りを抑制することも可能である。また、このようにシリコン窒化膜11とシリコン窒化膜21を別々に形成する場合と比べて、上述した第1実施形態のようにこれらを同一工程で形成した方が製造工程の簡略化を図れるという効果も得られる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の熱式流量センサS1は、第1実施形態に対して絶縁膜13の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図5(a)は、本実施形態の熱式流量センサS1の断面図であり、図5(b)は、図5(a)の熱式流量センサS1の形成に用いるSOI基板の断面図である。図5(a)、(b)に示されるように、シリコン基板10の表面10bとシリコン窒化膜11との間に例えば0.02〜1μmの膜厚のシリコン酸化膜22を配置しており、SOI基板における埋め込み層に相当する絶縁膜13をシリコン酸化膜22、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12により構成している。シリコン酸化膜22は、SiとOを有する膜のことを意味しており、例えばSiO2、Nを微小に含んだSiOxNy、ポーラスシリカなどが該当する。
【0061】
このように、絶縁膜13をシリコン酸化膜22、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12の三層構造としても構わない。さらに、シリコン窒化膜11が引っ張り応力を有する膜であるため、シリコン基板10の表面10bにシリコン窒化膜11を直接形成すると、シリコン窒化膜11の引っ張り応力が大きくなるシリコン基板10の外縁近傍において表面10bにスリップが発生することがあるが、シリコン窒化膜11の下地にシリコン酸化膜22を形成することにより、そのようなスリップの発生を防止することも可能となる。
【0062】
ただし、このような構造の場合、図5(b)に示されるように、シリコン基板10に開口部10dを形成するためのエッチング時にシリコン酸化膜22もエッチングされることになるが、その上にシリコン窒化膜11があるため、エッチングされ過ぎてメンブレンが破損することはない。
【0063】
図6は、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程を示した断面図である。なお、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程のうち、SOI基板を形成する前の工程に関しては第1実施形態と異なっているが、SOI基板を形成した後の工程に関しては第1実施形態と全く同じであるため、ここではSOI基板を形成する前の工程に関してのみ示してある。
【0064】
図6(a)に示す工程において、上述した図3(a)に示す工程で説明したシリコン基板10を用意したのち、続く図6(b)に示す工程において、熱酸化等により、シリコン基板10の表面10bにシリコン酸化膜22を形成する。そして、上述した図3(b)に示す工程と同様の方法により、シリコン酸化膜22の上面およびシリコン基板10の裏面10cに対してシリコン窒化膜11、21を形成する。
【0065】
また、図6(c)、(d)に示す工程では、上述した図3(c)、(d)に示す工程と同様の方法により、シリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成する。そして、図6(e)に示す工程において、図3(e)に示す工程と同様の手法により、シリコン基板10におけるシリコン酸化膜22の上面に形成されたシリコン窒化膜11とシリコン基板30における表面30a側のシリコン酸化膜12を貼り合わせる。その後、図6(f)に示す工程において、シリコン基板30を研磨して薄くすることで半導体層14を構成する。
【0066】
なお、図6(b)に示す工程においてシリコン酸化膜22を熱酸化で形成する場合には、シリコン基板10の裏面10cにもシリコン酸化膜が形成されることになるが、このシリコン酸化膜はシリコン窒化膜21で覆われた状態となり、後工程で行われるシリコン基板10に開口部10dを形成するためのエッチングを行ってもあまり除去されないため、形成されていても問題ない。
【0067】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、図6(b)に示す工程において、シリコン基板10の表面10bにシリコン酸化膜22およびシリコン窒化膜11が形成されるようにしている。しかしながら、図6(d)に示す工程において、シリコン酸化膜12、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜22を順に積層しておき、シリコン基板10における表面10bとシリコン酸化膜22を貼り合わせるようにすることも可能である。このようにした場合、シリコン基板30の裏面30bにもシリコン窒化膜やシリコン酸化膜が形成されることになるが、これらは図6(f)に示す工程で行われる研磨によって除去されるため、問題ない。
【0068】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。上記第1実施形態では、図3(f)に示す工程において、シリコン基板30を研磨することによって薄厚化しているが、本実施形態では、第1実施形態と異なる方法によってシリコン基板30を薄厚化する。
【0069】
図7は、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程を示した断面図である。なお、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程のうち、SOI基板を形成する前の工程に関しては第1実施形態と異なっているが、SOI基板を形成した後の工程に関しては第1実施形態と全く同じであるため、ここではSOI基板を形成する前の工程に関してのみ示してある。
【0070】
図7(a)、(b)に示す工程では、上述した図3(a)、(b)に示す工程と同様の手法により、シリコン基板10の表面10bおよび裏面10cにシリコン窒化膜11、21を形成する。
【0071】
一方、図7(c)に示す工程では、上述した図3(c)に示す工程と同様にシリコン基板30を用意し、続く図7(d)に示す工程において、シリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成したのち、シリコン酸化膜12の上方から水素イオンのイオン注入を行う。このときのイオン注入による水素イオンの注入深さは、SOI層(半導体層14)の厚みと同等となるようにしており、SOI層を例えば1μmの厚みとするのであれば、水素イオンの注入深さも1μmとなるようにしている。
【0072】
その後、図7(e)に示す工程において、図3(e)に示す工程と同様の手法により、シリコン基板10におけるシリコン酸化膜22の上面に形成されたシリコン窒化膜11とシリコン基板30における表面30a側のシリコン酸化膜12を貼り合わせる。このとき、貼り合わせの為に行う熱処理を1000℃以上にしているため、水素イオンが注入された深さの位置でシリコン基板30が割れる(スマートカット)。このようにすることで、研磨によらなくても所望膜厚のSOI層を形成することができる。
【0073】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。上記第1実施形態では、基本的に、シリコン基板10とシリコン基板30とを絶縁膜13を介して貼り合わせることでSOI基板を構成しているが、本実施形態では、第1実施形態と異なる方法によってSOI基板を形成する。
【0074】
図8は、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程を示した断面図である。なお、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程のうち、SOI基板を形成する前の工程に関しては第1実施形態と異なっているが、SOI基板を形成した後の工程に関しては第1実施形態と全く同じであるため、ここではSOI基板を形成する前の工程に関してのみ示してある。
【0075】
図8(a)に示す工程において、上述した図3(a)に示すようなシリコン基板10を用意する。その後、シリコン基板10の表面10b側から酸素イオンと窒素イオンをイオン注入する。このとき、酸素イオンに関しては、SOI層の膜厚分を考慮して、例えば、表面10bから1μmの深さの位置からシリコン酸化膜12の厚さ分深い位置まで注入されるようにしている。窒素イオンに関しては、酸素イオンの注入位置の最も深い位置からシリコン窒化膜11の厚さ分深い位置まで注入されるようにしている。
【0076】
図8(b)に示す工程において、この後、シリコン基板10における表層部、具体的にはSOI層相当の深さの位置までドナー不純物(例えば、P、As、Sbなど)もしくはアクセプタ不純物(例えば、B、Al)を例えば1×1019〜1×1021cm-3程度の濃度となるようにイオン注入したのち、1000℃以上の高温で熱処理を行うことにより、不純物の活性化を行うと共に、酸素イオンと窒素イオンをシリコン基板10中のシリコンと反応させる。これにより、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12が形成されると共に、SOI層が形成され、SOI基板が完成する。
【0077】
このように、一枚のシリコン基板10を用いてSOI基板を形成することも可能である。このようにすれば、シリコン基板枚数を少なくできると共に、SOI基板を形成するための製造工程の簡略化を図ることが可能となるため、センサ製造コストを低減できる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について説明する。上記第1〜第6実施形態では、物理量センサとして熱式流量センサS1に本発明の一実施形態を適用する場合について説明したが、本実施形態では、サーモパイル型赤外線センサに本発明の一実施形態を適用する場合について説明する。
【0078】
図9は、本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2の断面図である。この図に示すように、第1〜第6実施形態と同様、本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成され、シリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0079】
本実施形態でも、半導体層14は、シリコン層に不純物を熱拡散させたことによって形成されている。この半導体層14の上層に、例えばBPSGからなる層間絶縁膜40が形成されていると共に、例えばAlにて構成された配線層41が形成され、配線層41が層間絶縁膜40に形成されたコンタクトホールを通じて半導体層14と接触させられている。
【0080】
また、配線層41および層間絶縁膜40の上層には、例えばTEOSからなる保護膜42が形成されている。この保護膜42には、配線層41を部分的に露出させることでパッドを構成するための開口部42aが形成されている。
【0081】
さらに、メンブレン内のみにおいて、保護膜42の上層には、例えばカーボンペーストにより構成された赤外線吸収膜43が形成されている。なお、上述したように、配線層41は半導体層14に接触させられているが、具体的には、配線層41はメンブレン内における赤外線吸収膜43の下方とメンブレン外それぞれにおいて半導体層14と接触させられている。これらの接点のうち赤外線吸収膜43の下方に位置するものが温接点、メンブレン外のものが冷接点となる。
【0082】
このような構成のサーモパイル型赤外線センサS2では、赤外線が照射されると赤外線吸収膜43が赤外線を吸収し、発熱する。その熱が温接点に伝わり、温接点の温度が上るため、冷接点との間に熱起電力が発生する。このため、サーモパイル型赤外線センサS2は、温接点と冷接点との間に発生した熱起電力により、赤外線量を検出することが可能となる。このとき、温接点はメンブレン内にあり、冷接点がメンブレン外にあるため、温接点に関しては効率よく温度が上昇し、冷接点に関しては温接点の温度上昇に伴う温度上昇を少なくすることが可能となる。また、半導体層14が多結晶シリコンではなく単結晶シリコンで構成されているため、同じ不純物濃度でも、低い抵抗値と高い熱起電力を得ることができ、さらに、粒界がなくなるので特性のばらつきも少なくなるという効果も得られる。
【0083】
続いて、本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2の製造方法について、図10に示すサーモパイル型赤外線センサS2の製造工程図を参照して説明する。
【0084】
〔図10(a)に示す工程〕
まず、上記第1〜第6実施形態で説明したSOI基板、例えば、第1実施形態の図3の工程により形成したSOI基板を用意したのち、半導体層14を所望の抵抗値にするために、ドナー不純物(P、As、Sb)やアクセプタ不純物(B、Al)をイオン注入してドーピングし、不純物濃度としては大凡1×1016〜1×1021/cm3にする。このときの手法は、図3(f)に示した工程と同様で良い。
【0085】
〔図10(b)に示す工程〕
半導体層14をエッチングによりパターニングする。これにより、配線層41と接点とされる部分、つまり温接点や冷接点が構成されるように、半導体層14がメンブレン内からメンブレン外に至るように延設される。
【0086】
〔図10(c)に示す工程〕
半導体層14を必要に応じて熱酸化したのち、CVD法によりBPSGからなる層間絶縁膜40を形成し、熱処理を行う。これにより半導体層14の段差を平滑化できる。なお、ここではBPSGにて層間絶縁膜40を形成しているが、BPSG以外の酸化膜で形成しても良い。その後、層間絶縁膜40をエッチングしてコンタクトホールを開ける。さらに、層間絶縁膜40上にAlを成膜したのち、Alをパターニングすることにより、温接点や冷接点およびパッドとなる部分を含む配線層41を形成する。
【0087】
〔図10(d)に示す工程〕
配線層41および層間絶縁膜40の上に、TEOSからなる保護膜42を成膜する。そして、保護膜42のうち配線層41のパッドとなる部分と対応する箇所に開口部42aを形成する。なお、ここではTEOSにより保護膜42を形成しているが、TEOS以外の酸化膜や窒化膜で形成しても良い。
【0088】
そして、SOI基板の裏面にCVD法によりシリコン窒化膜20を形成する。この膜はシリコン酸化膜であっても構わないが、KOHによるエッチングのマスクとして機能するので、シリコン窒化膜20の方が好ましい。このシリコン窒化膜20のうちシリコン基板10の空洞部10aの形成予定領域をエッチングにより開口させたのち、シリコン窒化膜20をマスクとしたKOHによる異方性エッチングを行うことで、空洞部10aを形成する。これにより、メンブレンが構成される。そして、最後に保護膜42の上にカーボンペーストからなる赤外線吸収膜43を形成したのち、これをパターニングしてメンブレン内にのみ残す。これにより、図9に示したサーモパイル型赤外線センサS2が完成する。
【0089】
以上説明した本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0090】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとしてガスセンサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、ガスセンサの構造は、上記第7実施形態で説明したサーモパイル型赤外線センサS2とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0091】
図11、図12は、本実施形態のガスセンサS3を示した図であり、図11は、ガスセンサS3の断面図、図12は、ガスセンサS3の上面レイアウト図である。図11に示すように、第1〜第7実施形態と同様、本実施形態のガスセンサS3も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成され、シリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0092】
半導体層14の上層に、例えばBPSGからなる層間絶縁膜50が形成されていると共に、例えばAlにて構成された配線層51が形成され、配線層51が層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホールを通じて半導体層14と接触させられている。
【0093】
また、配線層51および層間絶縁膜50の上層には、例えばTEOSからなる保護膜52が形成されている。この保護膜52には、配線層51を部分的に露出させることでパッドを構成するための開口部52aや後述する感ガス膜53とのコンタクトを可能にするための開口部52bが形成されている。さらに、メンブレン内を含むように保護膜52の上層には、例えば酸化スズ(CO、NOx、水素などを感知可能)により構成された感ガス膜53が形成されている。図12に示すように、この感ガス膜53はメンブレンを覆うように形成されており、感ガス膜53の下方の半導体層14を挟んだ両側において配線層51と電気的に接続され、パッド部51a、51bに外部端子を接続することで、配線層51を通じて電流を流し、感ガス膜53の抵抗値を検出できる構造とされている。また、半導体層14にも配線層51の一部で構成したパッド部51c、51dが接続されており、このパッド部51a、51bに外部端子を接続することで、半導体層14に電流を流し、半導体層14のうちメンブレン内の細くされた部分を加熱できるようになっている。
【0094】
このような構成のガスセンサS3では、配線層51を通じて半導体層14に電流を流すことによってメンブレン内に形成された感ガス膜53の温度を上げ、大気中の対象ガスとの酸化または還元反応を引き起こさせる。これにより、感ガス膜53の抵抗値が変わるため、配線層51のパッド部を通じて感ガス膜53の抵抗値を検出することで、対象ガスの量を検出することが可能となる。このとき、感ガス膜53がメンブレン内にあるため、効率よく温度を上昇させられる。なお、上昇する温度の管理は、半導体層14の抵抗値に基づいて行うことになるが、半導体層14を多結晶シリコンではなく単結晶シリコンで構成しているため、高い抵抗温度係数(TCR)を得ることができ、正確に温度測定を行うことが可能となる。また、高温時に起きる抵抗値の経時変化に対しても単結晶シリコンの方が多結晶シリコンよりも少なく、安定して使用できるガスセンサS3を得ることができ、さらに、粒界がなくなるので特性のばらつきも少なくなるという効果も得られる。
【0095】
図13は、本実施形態のガスセンサS3の製造工程図である。図13(a)〜(d)に示す工程は、基本的に、上述したサーモパイル型赤外線センサS2と同様であり、層間絶縁膜40の代わりに層間絶縁膜50、配線層41の代わりに配線層51、保護膜42の代わりに配線層52、赤外線吸収膜43の代わりに感ガス膜53を形成することが異なっており、さらに各膜のパターンレイアウトが異なっている。なお、感ガス膜43と配線層51とのコンタクト抵抗を下げるためやミキシングを防止するために、必要に応じて配線層52の上層に薄膜を形成しても良い。
【0096】
以上説明した本実施形態のガスセンサS3においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0097】
なお、ここでは感ガス膜53の抵抗値変化を検出するガスセンサの例を記載したが、他の検出原理のガスセンサにも適用可能である。
【0098】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとして圧力センサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、圧力センサの構造は、上記第7実施形態で説明したサーモパイル型赤外線センサS2とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0099】
図14、図15は、本実施形態の圧力センサS4を示した図であり、図14は、圧力センサS4の断面図、図15は、圧力センサS4の模式的な上面レイアウト図である。図11に示すように、第1〜第8実施形態と同様、本実施形態の圧力センサS4も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成され、シリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0100】
半導体層14は、図15に示すように、面方位が(001)の単結晶シリコンにて構成され、半導体層14のうちメンブレン内に配置される部分により圧力検出に用いられる複数のゲージ抵抗が構成される。複数のゲージ抵抗は、例えばホイートストンブリッジ接続されるが、各ゲージ抵抗の長手方向が<110>方向とされ、その長手方向がゲージ抵抗に対する電流の流れる向き(つまり抵抗値を測定する向き)とされる。また、各ゲージ抵抗は、メンブレンのエッジに配置されている。
【0101】
また、半導体層14の上層に、例えばBPSGからなる層間絶縁膜60が形成されていると共に、例えばAlにて構成された配線層61が形成され、配線層61が層間絶縁膜60に形成されたコンタクトホールを通じて半導体層14と接触させられている。
【0102】
また、配線層61および層間絶縁膜60の上層には、例えばTEOSからなる保護膜62が形成されている。この保護膜62には、配線層61を部分的に露出させることでパッドを構成するための開口部62aが形成されている。さらに、SOI基板の裏面には、メンブレン下方の空洞部10aを閉塞した基準圧力室を構成するための台座ガラス63が陽極接合により接合されている。
【0103】
このような構成の圧力センサS4では、メンブレンに測定対象となる圧力が印加されたときに、メンブレンが印加された圧力と基準圧力室内の圧力との差圧に応じて変位し、それに伴ってゲージ抵抗の抵抗値がピエゾ抵抗効果により変化するため、配線層61のパッド部を通じてゲージ抵抗の抵抗値を検出することで、圧力を検出することが可能となる。このとき、本実施形態のようにシリコン基板10が残らない空洞部10aによってメンブレンを構成できるため、極めて低い圧力測定も可能(例えば、フルスケールで1気圧以下)となる。また、小型化にも適している。また、半導体層14を多結晶シリコンではなく単結晶シリコンにすることで、高いピエゾ抵抗効果を得ることができ、さらに、粒界がなくなるので特性のばらつき(オフセット電圧など)も少なくなるという効果を得ることもできる。
【0104】
図16は、本実施形態の圧力センサS4の製造工程図である。図16(a)〜(e)に示す工程は、基本的に、上述したサーモパイル型赤外線センサS2と同様であり、層間絶縁膜40の代わりに層間絶縁膜60、配線層41の代わりに配線層61、保護膜42の代わりに配線層62を形成することが異なっている。そして、シリコン窒化膜20をマスクとして空洞部10aを形成したのち(図16(e)の工程)、シリコン窒化膜20を除去し、陽極接合により台座ガラス63をSOI基板の裏面に接合することで圧力センサS4が完成する。
【0105】
以上説明した本実施形態の圧力センサS4においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0106】
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとして加速度センサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、加速度センサの構造は、上記第9実施形態で説明した圧力センサS4とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0107】
図17は、本実施形態の加速度センサS5の断面図である。図17に示すように、第1〜第7実施形態と同様、本実施形態の加速度センサS5も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成されている。シリコン基板10には、空洞部10aが形成され、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成されているが、メンブレンの中央部においてシリコン基板10が残されることで錘部10eが構成されている。また、圧力センサS4に備えてあった台座ガラス63を無くした構造とされている。この他の構成に関しては、第9実施形態で説明した圧力センサS4と同様であり、半導体層14により複数のゲージ抵抗が構成されており、半導体層14の上面レイアウトも、図15に示す圧力センサS4と同様となっている。
【0108】
このような構成の加速度センサS5では、加速度が発生すると、錘部10eの慣性による応力がメンブレンに印加されたときに、メンブレンが印加された応力に応じて変位し、それに伴ってゲージ抵抗の抵抗値がピエゾ抵抗効果により変化するため、配線層61のパッド部を通じてゲージ抵抗の抵抗値を検出することで、加速度を検出することが可能となる。これにより、第9実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態の加速度センサS5の製造方法は、図16に示す圧力センサS4の製造工程とほぼ同様であり、錘部10eを形成するために、空洞部10aのパターン変更を行うだけでよい。
【0109】
以上説明した本実施形態の加速度センサS5においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0110】
(第11実施形態)
本発明の第11実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとして圧力センサと加速度センサを一体化した複合センサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、複合センサの構造は、上記第9実施形態で説明した圧力センサS4とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0111】
図18は、本実施形態の複合センサS6の断面図である。図18に示すように、第1〜第7実施形態と同様、本実施形態の複合センサS6も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成されている。シリコン基板10には、空洞部10aが形成され、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成されているが、第10実施形態の加速度センサS5と同様、メンブレンの中央部においてシリコン基板10が残されることで錘部10eが構成されている。また、半導体層14により複数のゲージ抵抗が構成されている。そして、第9実施形態の圧力センサS4と同様、SOI基板の裏面に台座ガラス63が備えられている。台座ガラス63のうち錘部10eと対応する場所にはザグリ(凹部)63aが形成されており、錘部10eの変位の妨げとならない構造とされている。この他の構造は、第9実施形態で説明した圧力センサS4と同様である。
【0112】
このような構成の複合センサS6とすることも可能である。なお、複合センサS6の作動原理は、圧力センサS4や加速度センサS5と同様である。また、本実施形態の加速度センサS5の製造方法も、台座ガラス63としてザグリ63aが形成されているものを用いることと、空洞部10aのパターンが錘部10eを形成できるパターンであること以外は、図16に示す圧力センサS4の製造工程と同様で良い。
【0113】
以上説明した本実施形態の複合センサS6においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0114】
なお、上記では、複合センサS6の台座ガラス63にザグリ63aを設けることで、錘部10eが変位できるようにしたが、図19に示すように、錘部10eの先端が台座ガラス63から離間するような構造としても良い。このような構造は、空洞部10aを形成する際のマスクとして用いるシリコン窒化膜20のうち錘部10eと対応する位置に残される領域の面積を小さくし、KOHによるシリコン基板10の異方性エッチング時のサイドエッチにより、その領域のシリコン窒化膜20が取れてなくなるようにすれば良い。
【0115】
(他の実施形態)
上記各実施形態において、SOI基板の製造方法を記載したが、ここに記したものは単なる一例であり、各実施形態に示した手法を組み合わせることも可能である。例えば、上記第6実施形態では、窒素イオンと酸素イオンを共にイオン注入してシリコン窒化膜11やシリコン酸化膜12を形成する場合について説明したが、そのうちの一方のみのイオン注入を行い、他の層に関してはデポジションによって形成するなどの手法をとっても良い。また、第1実施形態では、図3(d)に示すようにシリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成するようにしているが、シリコン基板10に形成したシリコン窒化膜11の表面にシリコン酸化膜12を直接形成した後にシリコン基板30を貼り合わせるようにしても良い。
【0116】
また、第1実施形態では、図3(d)に示すようにシリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成するようにしているが、図3(d)に示す工程においてシリコン基板30の表面30aに形成したシリコン酸化膜12の上にシリコン窒化膜11を形成しておき、シリコン基板10における表面10bとシリコン窒化膜11を貼り合わせるようにすることも可能である。このようにした場合、シリコン基板30の裏面30bにもシリコン窒化膜やシリコン酸化膜が形成されることになるが、これらは図3(f)に示す工程で行われる研磨によって除去されるため、問題ない。
【0117】
また、上記実施形態では、ヒータ15a、15bは特許文献1の発熱抵抗体と測温抵抗体を兼用した構成であるものを例に挙げて説明したが、発熱抵抗体と測温抵抗体を別体とした構成であっても構わない。
【0118】
また、上記各実施形態では、シリコン基板10の裏面10c側からエッチングを行うことで、空洞部10aを形成したが、表面10b側からエッチングを行うことで空洞部10aを形成しても良い。例えば、図20は、第1実施形態の熱式流量センサS1に対してシリコン基板10の表面10b側から空洞部10aを形成した場合の断面図である。この図に示すように、メンブレンおよびその上に配置する各構成要素を形成したのち、これらを貫通してシリコン基板10の表面10bに達する孔部70を形成する。そして、この孔部70を通じて例えば等方性エッチングを行うことで、空洞部10aを形成することができる。この場合にも、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとなるため、上記各実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0119】
また、上記第7〜第11実施形態では、SOI基板として図3に示したものを用いる場合を例に挙げて説明したが、図6〜図8に示したものを用いても良い。
【0120】
さらに、以上の説明では、薄膜(メンブレン)構造を有する半導体装置の例として、物理量センサを例に挙げたが、単結晶シリコンを用いた薄膜構造を有していれば、物理量センサに限るものではない。例えば、単なる加熱ヒータとして用いる薄膜構造部に対して本発明を適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる熱式流量センサS1の概略平面構成を示す図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った熱式流量センサS1の概略断面構成を示す図である。
【図3】図1および図2に示す熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図4】図3に続く熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる熱式流量センサS1に関する図であり、(a)は、熱式流量センサS1の断面図、(b)は、(a)の熱式流量センサS1の形成に用いるSOI基板の断面図である。
【図6】図5に示す熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態にかかる熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態にかかるサーモパイル型赤外線センサS2の断面図である。
【図10】図9に示すサーモパイル型赤外線センサS2の製造工程図である。
【図11】本発明の第8実施形態にかかるガスセンサS3の断面図である。
【図12】図11に示すガスセンサS3の上面レイアウト図である。
【図13】図11に示すガスセンサS3の製造工程図である。
【図14】本発明の第9実施形態にかかる圧力センサS4の断面図である。
【図15】図14に示す圧力センサS4の上面レイアウト図である。
【図16】図14に示す圧力センサS4の製造工程図である。
【図17】本発明の第10実施形態にかかる加速度センサS5の断面図である。
【図18】本発明の第11実施形態にかかる複合センサS6の断面図である。
【図19】複合センサS5の変形例を示した断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態で示す熱式流量センサS1の断面図である。
【符号の説明】
【0122】
10…シリコン基板、10a…空洞部、10b…表面、10c…裏面、
10d…開口部、11…シリコン窒化膜、12…シリコン酸化膜、13…絶縁膜、
14…半導体層、15a、15b…ヒータ、16a、16b…温度計、
17a〜17f…配線層、18…絶縁膜、19a〜19f…パッド、
20…シリコン窒化膜、21…シリコン窒化膜、21a〜21f…ワイヤ、
22…シリコン酸化膜、30…シリコン基板、30a…表面、30b…裏面、
40、50、60…層間絶縁膜、41、51、61…配線層、
42、52、62…保護膜、43…赤外線吸収膜、53…感ガス膜、
63…台座ガラス、S1…熱式流量センサ、S2…赤外線センサ、S3…ガスセンサ、
S4…圧力センサ、S5…加速度センサ、S6…複合センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、数層の膜からなるメンブレンが設けられた物理量センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、発熱抵抗体と測温抵抗体を用いた熱式流量センサが開示されている。熱式流量センサは、発熱抵抗体を被測定流体中に設置し、被測定流体によって奪われる発熱抵抗体の放熱量を測温抵抗体により検出して、被測定流体の流量を検出する。このような熱式流量センサでは、基板に凹部や空洞部を形成することにより、基板との接触を減らし、基板への熱伝達を抑制できるようにした薄膜部としてのメンブレンが設けられる。このメンブレンの上に発熱抵抗体と測温抵抗体を配置することで、熱式流量センサの応答性を高めている。
【0003】
この特許文献1に示される熱式流量センサは、SOI(Silicon on insulator)基板を用いて製造されており、メンブレンの最下層をSOI基板における埋め込み層(BOX層)を構成するSiO2により構成している。
【特許文献1】特開2001−12985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された熱式流量センサにおいては、メンブレンの最下層をSOI基板の埋め込み層を構成するSiO2一層のみにより構成しているため、支持基板を構成するシリコン基板に対して凹部を形成するためにKOH等などを用いて異方性エッチングを行うと、SiO2もエッチングされてしまう。したがって、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうという問題が発生する。
【0005】
なお、ここでは上記の問題について、熱式流量センサを例に挙げて説明したが、メンブレンを用いた他の物理量センサに関しても上記と同様の問題が発生する。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止できる物理量センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、シリコン基板(10)を支持基板、絶縁膜(13)を埋め込み層、半導体層(14)をSOI層としたSOI基板を用いて形成され、シリコン基板(10)における空洞部(10a)に形成された絶縁膜(13)をメンブレンとして構成されてなる物理量センサの製造方法において、SOI基板として、絶縁膜(13)がシリコン窒化膜(11)と該シリコン窒化膜(11)よりも半導体層(14)側に配置されたシリコン酸化膜(12)の少なくとも2層を含む積層構造となるものを用意する工程と、SOI基板におけるシリコン基板(10)をエッチングすることで、該シリコン基板(10)に空洞部(10a)を形成する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0008】
このように、熱式流量センサを形成するために用いるSOI基板の埋め込み層をシリコン酸化膜(12)の一層のみによって構成せずに、シリコン酸化膜(12)よりもシリコン基板(10)側に配置したシリコン窒化膜(11)も備えた構成としている。このため、シリコン基板(10)をエッチングする際に、シリコン窒化膜(11)がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜(12)が除去されないようにすることができる。このため、シリコン酸化膜(12)がエッチングされることによるメンブレンの薄厚化を防止することができ、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止することが可能となる。
【0009】
例えば、Si3N4もしくはSiリッチのSixNyを用いて絶縁膜(13)に含まれるシリコン窒化膜(11)を形成することができる。
【0010】
また、このようなシリコン窒化膜(11)は、引っ張り応力を有する膜として形成されると好ましい。このようにすることで、メンブレンを構成する膜全体の平均応力が引っ張り応力となるようにすることが可能となり、メンブレンが挫屈して破損し難くなるようにできる。
【0011】
なお、シリコン窒化膜(11)の形成に関しては、シリコン基板(10)の表面(10b)にシリコン窒化膜(11)を形成することにより行っても良いし、シリコン基板(10)の表面(10b)から窒素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、シリコン基板(10)の決められた深さの位置にシリコン窒化膜(11)を形成することにより行っても良い。
【0012】
一方、例えば、SiO2、Nを微小に含んだSiOxNyおよびポーラスシリカのいずれかを用いて絶縁膜(13)に含まれるシリコン酸化膜(12)を形成することができる。
【0013】
この場合、シリコン酸化膜(12)を形成に関しては、シリコン基板(10)の表面(10b)に形成したシリコン窒化膜(11)の上面、もしくは、SOI層を形成するためのシリコン基板(30)の表面(30a)にシリコン酸化膜(12)を形成することにより行っても良いし、シリコン基板(10)の表面(10b)から酸素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、シリコン基板(10)の決められた深さの位置にシリコン酸化膜(12)を形成することにより行っても良い。
【0014】
例えば、SOI基板を用意する工程は、支持基板となるシリコン基板(10)の表面(10b)にシリコン窒化膜(11)を形成する工程と、SOI層を形成するためのSOI層用シリコン基板(30)を用意し、該SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)にシリコン酸化膜(12)を形成する工程と、シリコン窒化膜(11)とシリコン酸化膜(12)とを貼り合わせることにより、支持基板となるシリコン基板(10)とSOI層用シリコン基板(30)を一体化させる工程と、SOI層用シリコン基板(30)を薄厚化させることで、SOI層を形成する工程と、を含んだ工程により行われる。
【0015】
この場合、SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)からSOI層の膜厚相当分の深さの位置に水素イオンを注入しておき、その後、熱処理を行うことにより、水素イオンを注入した位置においてSOI層用シリコン基板(30)を割ることで、SOI層を形成することができる。
【0016】
以上説明した物理量センサの製造方法は、例えば、メンブレン内に配置される半導体層(14)をヒータ(15a、15b)とし、流体の流動に伴うヒータ(15a、15b)の温度変化に基づき、物理量として流体の流量の検出を行う熱式流量センサ(S1)の製造方法として適用することができる。
【0017】
また、半導体層(14)の上層に配置されると共に半導体層(14)との接触点となる複数の接点を有した配線層(41)と、メンブレン内において配線層(41)よりも上層に配置された赤外線吸収膜(43)とを有し、配線層(41)と半導体層(14)との接点のうちメンブレン内の接点を温接点とし、メンブレン外の接点を冷接点として、赤外線吸収膜(43)に赤外線が照射されたときに、赤外線吸収膜(43)の温度上昇に伴い発生する温接点と冷接点との温度差に起因する起電力に基づき、物理量として赤外線の量を検出する赤外線センサ(S2)の製造方法として適用することもできる。
【0018】
また、半導体層(14)の上層に配置された配線層(51)と、メンブレン内において配線層(51)よりも上層に配置された測定対象ガスとの反応により抵抗値を変化させる感ガス膜(53)とを有し、配線層(51)のうち感ガス膜(53)に電気的に接続されるパッド部(51a、51b)を通じて感ガス膜(53)の抵抗値を検出できると共に、配線層(51)のうち半導体層(14)に電気的に接続されるパッド部(51c、51d)を通じて半導体層(14)に電流が流せるように構成され、半導体層(14)に電流を流して加熱することでメンブレン内の感ガス膜(53)の温度を上げ、感ガス膜(53)を対象ガスと反応させて該感ガス膜(53)の抵抗値を変化させることで、物理量として対象ガスの量を検出するガスセンサ(S3)の製造方法として適用することもできる。
【0019】
また、半導体層(14)の上層に配置されると共に半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、シリコン基板(10)の裏面に配置されることで空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)とを有し、メンブレン内に配置された半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力によるメンブレンの変位に伴う半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、物理量として圧力を検出する圧力センサ(S4)の製造方法として適用することもできる。
【0020】
また、半導体層(14)の上層に配置されて該半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)を有すると共に、空洞部(10a)に形成された絶縁膜(13)に備えられた錘部(10e)を有し、メンブレン内に配置された半導体層(14)をゲージ抵抗とし、加速度によるメンブレンの変位に伴う半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、物理量として加速度を検出する加速度センサ(S5)の製造方法として適用することもできる。
【0021】
さらに、半導体層(14)の上層に配置されると共に半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、シリコン基板(10)の裏面に配置されることで空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)と、空洞部(10a)に形成された絶縁膜(13)に台座(63)から離間するように備えられた錘部(10e)とを有し、メンブレン内に配置された半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力もしくは加速度によるメンブレンの変位に伴う半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、物理量として圧力もしくは加速度を検出する複合センサ(S6)の製造方法として適用することもできる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態を適用した物理量センサとしての熱式流量センサS1の概略平面構成を示す図であり、図2は、図1中のA−A線に沿った熱式流量センサS1の概略断面構成を示す図である。
【0025】
熱式流量センサS1は、例えば板厚が400μmまたは600μmとされたシリコン基板10をベースに形成されている。このシリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0026】
図2に示されるように、空洞部10aは、シリコン基板10の表面10bと裏面10cを貫通するように形成されている。具体的には、空洞部10aは、シリコン基板10の裏面10c側を開口部10dとし、シリコン基板10の裏面10c側から表面10b側へ向かって凹ませた凹部として構成されている。
【0027】
また、図2に示されるように、シリコン基板10の表面10b上には、シリコン窒化膜11、シリコン酸化膜12が積層された絶縁膜13が形成されている。ここでいうシリコン窒化膜11は、SiとNを有する膜のことを意味しており、例えばSi3N4やSiリッチのSixNyが該当する。このシリコン窒化膜11は、引っ張り応力を有する膜となっており、例えば、0.05〜0.5μm程度の膜厚とされている。また、シリコン酸化膜12は、SiとOを有する膜のことを意味しており、例えばSiO2、Nを微小に含んだSiOxNy、ポーラスシリカなどが該当する。このシリコン酸化膜12は、圧縮応力を有する膜となっており、例えば、0.01〜1μm程度の膜厚とされている。
【0028】
この絶縁膜13の表面には、シリコン層に不純物を熱拡散させたことによって形成された半導体層14がパターニングされており、この半導体層14により、ヒータ15a、15bと環境温度を測定するための温度計16a、16bおよび配線層17a〜17fを構成する抵抗体が形成されている。
【0029】
このように構成されたシリコン基板10と絶縁膜13および半導体層14は、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成されたものである。
【0030】
さらに、半導体層14は、BPSG等からなる絶縁膜18によって覆われ、この絶縁膜18の所定部位に形成されたコンタクトホールを通じて、アルミニウムなどで構成されたパッド19a〜19fに電気的に接続されている。
【0031】
また、絶縁膜18の表面において、シリコン基板10のほぼ全域を覆うようにシリコン窒化膜20が形成され、熱式流量センサS1の表面が保護されている。このシリコン窒化膜20におけるパッド19a〜19fと対応する部位には、開口部が形成されており、この開口部を通じてパッド19a〜19fに対してワイヤ21a〜21fがボンディングされることで、熱式流量センサS1の外部に備えられる制御回路に電気的に接続されるようになっている。
【0032】
そして、シリコン基板10における裏面側には、シリコン窒化膜21が形成されている。このシリコン窒化膜21には開口部が形成されており、この開口部を通じてシリコン基板10の開口部10dが形成されている。
【0033】
このような構造により、熱式流量センサS1が構成されている。
【0034】
続いて、このような熱式流量センサS1で被測定流体である空気の流量検出を行うときの動作の一例について説明する。
【0035】
ヒータ15a、15bは、図示しない制御回路によって駆動され、例えば温度計16a、16bで測定される環境温度よりも200℃高い温度となるように制御される。具体的には、制御回路からワイヤ21b、21c、パッド19b、19cおよび配線層17b、17cを通じてヒータ15aに電流が流されると共に、ワイヤ21d、21c、パッド19d、19eおよび配線層17d、17eを通じてヒータ15bに電流が流される。これにより、所定の線幅で構成された各ヒータ15a、15bが加熱される。
【0036】
環境温度の測定は各温度計16a、16bの抵抗値が環境温度に応じて変動するので、温度計16aの抵抗値変化に伴う電流量変化がワイヤ21a、21bやパッド19a、19bおよび配線層17a、17bを通じて、また、温度計16bの抵抗値変化に伴う電流量変化がワイヤ21e、21fやパッド19e、19fおよび配線層17e、17fを通じて、それぞれ制御回路に入力されることになる。これにより、制御回路側で、各温度計16a、16bそれぞれの位置の温度が検出される。
【0037】
したがって、制御回路側で、各温度計16a、16bで検出される環境温度よりも200℃高い温度となるように、各ヒータ15a、15bに流す電流量がフィードバック制御される。
【0038】
例えば、図1中の白抜き矢印方向から空気が流れてくるとする。ここで、上述したように、加熱されたヒータ15a、15bは空気が流れることにより、熱を奪われて温度が下がるが、空気の流れの下流側のヒータ15bは、上流側のヒータ15aを通過する時に加熱された空気が下流側のヒータ15bに接するために、熱が少ししか奪われず、温度の下がりは小さい。そして、このように各ヒータ15a、15bの熱の奪われ方は、空気の流量に応じたものとなる。
【0039】
したがって、制御回路は、ヒータ15aおよびヒータ15bが常に環境温度よりも200℃高い温度になるように各ヒータ15a、15bへの通電量をそれぞれ大きくし、それらの通電量に基づいて、空気の流量および流れの方向を検出することが可能となる。
【0040】
続いて、本実施形態で示される熱式流量センサS1の製造方法について、図3に示す製造工程図を参照して説明する。
【0041】
〔図3(a)に示す工程〕
まず、単結晶シリコンで構成された支持基板となるシリコン基板10を用意する。例えば、シリコン基板10として、面方位が(100)で、400μmまたは600μm程度の板厚を有する6インチウェハを用いる。このときのシリコン基板10には、まだ空洞部10aが形成されていないものとなっている。
【0042】
〔図3(b)に示す工程〕
シリコン基板10における表面10bおよび裏面10c上に、LP−CVD(減圧CVD)法によってシリコン窒化膜11およびシリコン窒化膜21を例えば0.05〜0.5μm程度デポジションにより形成する。このとき、シリコン窒化膜11およびシリコン窒化膜21が引っ張り応力を有する膜となるように、これらの成膜条件を設定する。メンブレンを構成するシリコン窒化膜11、シリコン酸化膜12、絶縁膜18、シリコン窒化膜20のうちの多くが圧縮応力を有する膜として構成されるが、圧縮応力が働くとメンブレンが挫屈して破損しやすくなることが知られている。このため、シリコン窒化膜11が引っ張り応力を有する膜となるようにすることで、メンブレンが挫屈して破損し難くなるようにしている。
【0043】
また、このときシリコン窒化膜11をSi3N4で構成しても良いが、SiリッチのSixNyにすると好ましい。すなわち、Si3N4は引張り応力が大凡1200MPaと高すぎるため、厚く形成するとSi3N4で構成されたシリコン窒化膜11自身にクラックが発生する可能性がある。よって、Si3N4は厚くても1回のデポジションでは0.2μm程度、複数回のデポジションでは0.5μm程度までしか形成できない(Si3N4を複数回のデポジションで形成することによって厚く形成してもクラックの発生を抑制できるので、0.2μm以上の厚さでデポジションする場合には複数回で行うのが好適である)。また、Si3N4を厚く形成すると、シリコン窒化膜11の引っ張り応力が大きくなるシリコン基板10の外縁近傍において表面10bにスリップが発生するという問題もある。それに対して、SiリッチのSixNyはSi3N4より引張り応力を低くすることができるので、Si3N4より厚く形成できる。このため、メンブレンのトータル膜厚を厚くしても、膜全体の平均応力を引張り応力にすることができる。このようなSiリッチのSixNyは、例えばLP−CVD法で形成され、形成温度(700〜900℃)やガス流量比(SiH2Cl2/NH3比≒0.3〜8)によって、Siリッチ量をコントロールでき、所望の引張り応力を得ることができる。
【0044】
なお、メンブレンを構成する膜全体の平均応力が引っ張り応力(望ましくは20MPa以上の引っ張り応力)となるように、シリコン窒化膜をLP−CVD法によって形成しているが、シリコン窒化膜が形成される表面に段差があると、シリコン窒化膜が剥離したり、割れたりするなどの問題がある。しかしながら、ここで説明したように、シリコン窒化膜11を平面となっているシリコン基板10の表面10bに形成することで、シリコン窒化膜11が剥離したり、割れたりするということはない。
【0045】
〔図3(c)、(d)に示す工程〕
一方、単結晶シリコンで構成されたSOI層を構成するシリコン基板30を用意する。例えば、シリコン基板10と同じものを用いることができる。そして、シリコン基板30における表面30a(および裏面30b)上に、熱酸化によってシリコン酸化膜12を例えば0.01〜1μm程度形成する。
【0046】
このとき、シリコン酸化膜12をSiO2で構成することもできるが、SiOxNy(シリコンオキシナイトライド)にすると、SiO2より圧縮応力を低くすることができる。上述したように、メンブレンを構成する膜全体の平均応力が引張り応力である必要があり、シリコン酸化膜12をSiOxNyとすることにより、SiO2とした場合と比べて圧縮応力の膜を厚くすることができる。これにより、メンブレンのトータル膜厚を厚くすることができ、気体中に混ざったダストがメンブレンに衝突したときのメンブレンの破損を防止できると共に、空気の圧力変動に対するメンブレンの変形を抑制できるため、計測精度の悪化も防止できる。このようなSiOxNyは、例えばプラズマCVD法で形成される。
【0047】
また、シリコン酸化膜12をSiO2ではなくポーラスシリカで構成しても、SiO2より圧縮応力を低くすることができる。さらに、ポーラスシリカにすると熱伝導率も小さくすることができるため、上記効果に加えて発熱抵抗体を構成するヒータ15a、15bを少ない電力で同じ温度に制御することができ、省電力化が可能となる。このようなポーラスシリカは、例えば有機SOG(Spin On Glass)をO2アッシングすると形成される。なお、有機SOGとは、メインのネットワークのSi−O結合の一部をメチル基で終端したもののことを指す。
【0048】
〔図3(e)に示す工程〕
シリコン基板10における表面10b側のシリコン窒化膜11とシリコン基板30における表面30a側のシリコン酸化膜12を貼り合わせることで、2枚のシリコン基板10、30を一体化させる。具体的には、シリコン窒化膜11とシリコン酸化膜12をこれらの間にボイド(空孔)が形成されないように重ね合わせ、1000℃以上の高温での熱処理を行う。これにより、埋め込み層を構成する絶縁膜13がシリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12によって構成されたSOI基板が形成される。
【0049】
〔図3(f)に示す工程〕
CMP(Chemical Mechanical polishing)等により、シリコン基板30を研磨し、例えば0.2〜2μmの膜厚となるまで薄厚化することでSOI層を形成する。この後、必要に応じてSOI層の表面を酸化したのち、SOI層に対してドナー不純物(例えば、P、As、Sbなど)もしくはアクセプタ不純物(例えば、B、Al)を例えば1×1019〜1×1021cm-3程度の濃度となるようにイオン注入したのち、活性化熱処理を行うことにより、半導体層14を形成する。活性化熱処理に関しては、後で熱処理工程が行われる場合に、その熱処理では不純物の拡散と電気的な活性化が不十分な場合にのみ行うようにしても良い。
【0050】
なお、ここでは不純物をイオン注入によりドーピングしているが、リンデポのようなイオン注入を行わないドーピング方法を用いても良いし、元々、シリコン基板30を形成する際のシリコン結晶成長時にドナー不純物(例えば、P、As、Sbなど)やアクセプタ不純物(例えば、B、Al)がドーピングされる雰囲気としておけば、ここでのイオン注入を行わなくても良くなり、製造工程の簡略化を図れるという効果も得られる。
【0051】
〔図4(a)に示す工程〕
不純物をイオン注入する前に半導体層14の表面に形成されたシリコン酸化膜を除去する工程等を行ったのち、半導体層14をパターニングする。これにより、ヒータ15a、15bと環境温度を測定するための温度計16a、16bおよび配線層17a〜17fが構成される。このとき、ヒータ15a、15bに関しては、例えば、線幅が10μm程度となるようにする。なお、この半導体層14のパターニングは、エッチングによって行うことになるが、SOI層の下地としてシリコン酸化膜12が形成されているため、エッチング時にシリコン窒化膜11までエッチングされてしまうことを防止することができる。このため、後に形成されるメンブレンの強度を低下させないようにすることができる。
【0052】
〔図4(b)に示す工程〕
半導体層14の表面の安定化のために、必要に応じて半導体層14の表面を微少量酸化させたのち、BPSG層をデポジションにより形成することで絶縁膜18を形成する。続いて、アニール処理を行うことで表面の段差を平坦化したのち、フォトエッチング工程によって絶縁膜18にコンタクトホールを形成する。そして、アルミニウムをデポジションにより形成したのち、フォトエッチング工程によってアルミニウムをパターニングすることでパッド19a〜19fを形成する。なお、ここではアルミニウムをパターニングしてパッド19a〜19fとしたが、引き出し配線を構成するようにしても良い。
【0053】
〔図4(c)に示す工程〕
シリコン基板10の表面10b側の全面に、プラズマCVD法等によって例えば3.2μm程度の膜厚で保護膜となるシリコン窒化膜20をデポジションにより形成する。これにより、アルミニウムで構成されたパッド19a〜19fを保護できると共に、メンブレンの厚膜化を図ることができ、空気中に混ざったダストがメンブレンに衝突したときの破損を防止できると共に、空気の圧力変動に対するメンブレンの変形を抑制できるため、計測精度の悪化も防止できる。なお、ここではシリコン窒化膜20と絶縁膜18の両方を形成する場合について説明したが、これらのうちの一方でもあれば、保護膜として機能する。
【0054】
そして、フォトエッチング工程によってシリコン窒化膜20の所定位置を開口させることで各パッド19a〜19fを露出させる。その後、パッシベーションアニール処理を行う。
【0055】
〔図4(d)に示す工程〕
フォトエッチング工程によってシリコン窒化膜21の所定部位を開口させる。そして、シリコン窒化膜21をマスクとしてシリコン基板10を露出部分から異方性エッチングすることで、シリコン基板10に開口部10dを形成することにより、空洞部10aを構成する。このとき、シリコン基板10の面方位が(100)とされているため、図1に示すような形状に開口部10dが形成される。これにより、図1、図2に示される本実施形態の熱式流量センサS1が完成する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の熱式流量センサS1では、熱式流量センサS1を形成するために用いるSOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。このため、シリコン酸化膜12がエッチングされることによるメンブレンの薄厚化を防止することができ、メンブレンが薄くなり過ぎて割れてしまうことを防止することが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、図3(b)に示す工程において、シリコン基板10の表面10bのシリコン窒化膜11だけでなく裏面10cのシリコン窒化膜21も同時に形成するようにしているが、後の工程で形成しても良い。例えば、図4(b)の工程の後にシリコン窒化膜21を形成しても良い。
【0058】
ただし、シリコン窒化膜11は、上述したように引っ張り応力を有した膜とされるため、シリコン窒化膜11の引っ張り応力によってシリコン基板10に反りが発生する可能性もある。このため、上記第1実施形態のように、シリコン窒化膜11の形成時にシリコン窒化膜21を同時に形成するようにしておけば、シリコン基板10の反りを抑制することも可能である。また、このようにシリコン窒化膜11とシリコン窒化膜21を別々に形成する場合と比べて、上述した第1実施形態のようにこれらを同一工程で形成した方が製造工程の簡略化を図れるという効果も得られる。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の熱式流量センサS1は、第1実施形態に対して絶縁膜13の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図5(a)は、本実施形態の熱式流量センサS1の断面図であり、図5(b)は、図5(a)の熱式流量センサS1の形成に用いるSOI基板の断面図である。図5(a)、(b)に示されるように、シリコン基板10の表面10bとシリコン窒化膜11との間に例えば0.02〜1μmの膜厚のシリコン酸化膜22を配置しており、SOI基板における埋め込み層に相当する絶縁膜13をシリコン酸化膜22、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12により構成している。シリコン酸化膜22は、SiとOを有する膜のことを意味しており、例えばSiO2、Nを微小に含んだSiOxNy、ポーラスシリカなどが該当する。
【0061】
このように、絶縁膜13をシリコン酸化膜22、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12の三層構造としても構わない。さらに、シリコン窒化膜11が引っ張り応力を有する膜であるため、シリコン基板10の表面10bにシリコン窒化膜11を直接形成すると、シリコン窒化膜11の引っ張り応力が大きくなるシリコン基板10の外縁近傍において表面10bにスリップが発生することがあるが、シリコン窒化膜11の下地にシリコン酸化膜22を形成することにより、そのようなスリップの発生を防止することも可能となる。
【0062】
ただし、このような構造の場合、図5(b)に示されるように、シリコン基板10に開口部10dを形成するためのエッチング時にシリコン酸化膜22もエッチングされることになるが、その上にシリコン窒化膜11があるため、エッチングされ過ぎてメンブレンが破損することはない。
【0063】
図6は、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程を示した断面図である。なお、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程のうち、SOI基板を形成する前の工程に関しては第1実施形態と異なっているが、SOI基板を形成した後の工程に関しては第1実施形態と全く同じであるため、ここではSOI基板を形成する前の工程に関してのみ示してある。
【0064】
図6(a)に示す工程において、上述した図3(a)に示す工程で説明したシリコン基板10を用意したのち、続く図6(b)に示す工程において、熱酸化等により、シリコン基板10の表面10bにシリコン酸化膜22を形成する。そして、上述した図3(b)に示す工程と同様の方法により、シリコン酸化膜22の上面およびシリコン基板10の裏面10cに対してシリコン窒化膜11、21を形成する。
【0065】
また、図6(c)、(d)に示す工程では、上述した図3(c)、(d)に示す工程と同様の方法により、シリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成する。そして、図6(e)に示す工程において、図3(e)に示す工程と同様の手法により、シリコン基板10におけるシリコン酸化膜22の上面に形成されたシリコン窒化膜11とシリコン基板30における表面30a側のシリコン酸化膜12を貼り合わせる。その後、図6(f)に示す工程において、シリコン基板30を研磨して薄くすることで半導体層14を構成する。
【0066】
なお、図6(b)に示す工程においてシリコン酸化膜22を熱酸化で形成する場合には、シリコン基板10の裏面10cにもシリコン酸化膜が形成されることになるが、このシリコン酸化膜はシリコン窒化膜21で覆われた状態となり、後工程で行われるシリコン基板10に開口部10dを形成するためのエッチングを行ってもあまり除去されないため、形成されていても問題ない。
【0067】
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、図6(b)に示す工程において、シリコン基板10の表面10bにシリコン酸化膜22およびシリコン窒化膜11が形成されるようにしている。しかしながら、図6(d)に示す工程において、シリコン酸化膜12、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜22を順に積層しておき、シリコン基板10における表面10bとシリコン酸化膜22を貼り合わせるようにすることも可能である。このようにした場合、シリコン基板30の裏面30bにもシリコン窒化膜やシリコン酸化膜が形成されることになるが、これらは図6(f)に示す工程で行われる研磨によって除去されるため、問題ない。
【0068】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。上記第1実施形態では、図3(f)に示す工程において、シリコン基板30を研磨することによって薄厚化しているが、本実施形態では、第1実施形態と異なる方法によってシリコン基板30を薄厚化する。
【0069】
図7は、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程を示した断面図である。なお、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程のうち、SOI基板を形成する前の工程に関しては第1実施形態と異なっているが、SOI基板を形成した後の工程に関しては第1実施形態と全く同じであるため、ここではSOI基板を形成する前の工程に関してのみ示してある。
【0070】
図7(a)、(b)に示す工程では、上述した図3(a)、(b)に示す工程と同様の手法により、シリコン基板10の表面10bおよび裏面10cにシリコン窒化膜11、21を形成する。
【0071】
一方、図7(c)に示す工程では、上述した図3(c)に示す工程と同様にシリコン基板30を用意し、続く図7(d)に示す工程において、シリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成したのち、シリコン酸化膜12の上方から水素イオンのイオン注入を行う。このときのイオン注入による水素イオンの注入深さは、SOI層(半導体層14)の厚みと同等となるようにしており、SOI層を例えば1μmの厚みとするのであれば、水素イオンの注入深さも1μmとなるようにしている。
【0072】
その後、図7(e)に示す工程において、図3(e)に示す工程と同様の手法により、シリコン基板10におけるシリコン酸化膜22の上面に形成されたシリコン窒化膜11とシリコン基板30における表面30a側のシリコン酸化膜12を貼り合わせる。このとき、貼り合わせの為に行う熱処理を1000℃以上にしているため、水素イオンが注入された深さの位置でシリコン基板30が割れる(スマートカット)。このようにすることで、研磨によらなくても所望膜厚のSOI層を形成することができる。
【0073】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。上記第1実施形態では、基本的に、シリコン基板10とシリコン基板30とを絶縁膜13を介して貼り合わせることでSOI基板を構成しているが、本実施形態では、第1実施形態と異なる方法によってSOI基板を形成する。
【0074】
図8は、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程を示した断面図である。なお、本実施形態の熱式流量センサS1の製造工程のうち、SOI基板を形成する前の工程に関しては第1実施形態と異なっているが、SOI基板を形成した後の工程に関しては第1実施形態と全く同じであるため、ここではSOI基板を形成する前の工程に関してのみ示してある。
【0075】
図8(a)に示す工程において、上述した図3(a)に示すようなシリコン基板10を用意する。その後、シリコン基板10の表面10b側から酸素イオンと窒素イオンをイオン注入する。このとき、酸素イオンに関しては、SOI層の膜厚分を考慮して、例えば、表面10bから1μmの深さの位置からシリコン酸化膜12の厚さ分深い位置まで注入されるようにしている。窒素イオンに関しては、酸素イオンの注入位置の最も深い位置からシリコン窒化膜11の厚さ分深い位置まで注入されるようにしている。
【0076】
図8(b)に示す工程において、この後、シリコン基板10における表層部、具体的にはSOI層相当の深さの位置までドナー不純物(例えば、P、As、Sbなど)もしくはアクセプタ不純物(例えば、B、Al)を例えば1×1019〜1×1021cm-3程度の濃度となるようにイオン注入したのち、1000℃以上の高温で熱処理を行うことにより、不純物の活性化を行うと共に、酸素イオンと窒素イオンをシリコン基板10中のシリコンと反応させる。これにより、シリコン窒化膜11およびシリコン酸化膜12が形成されると共に、SOI層が形成され、SOI基板が完成する。
【0077】
このように、一枚のシリコン基板10を用いてSOI基板を形成することも可能である。このようにすれば、シリコン基板枚数を少なくできると共に、SOI基板を形成するための製造工程の簡略化を図ることが可能となるため、センサ製造コストを低減できる。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について説明する。上記第1〜第6実施形態では、物理量センサとして熱式流量センサS1に本発明の一実施形態を適用する場合について説明したが、本実施形態では、サーモパイル型赤外線センサに本発明の一実施形態を適用する場合について説明する。
【0078】
図9は、本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2の断面図である。この図に示すように、第1〜第6実施形態と同様、本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成され、シリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0079】
本実施形態でも、半導体層14は、シリコン層に不純物を熱拡散させたことによって形成されている。この半導体層14の上層に、例えばBPSGからなる層間絶縁膜40が形成されていると共に、例えばAlにて構成された配線層41が形成され、配線層41が層間絶縁膜40に形成されたコンタクトホールを通じて半導体層14と接触させられている。
【0080】
また、配線層41および層間絶縁膜40の上層には、例えばTEOSからなる保護膜42が形成されている。この保護膜42には、配線層41を部分的に露出させることでパッドを構成するための開口部42aが形成されている。
【0081】
さらに、メンブレン内のみにおいて、保護膜42の上層には、例えばカーボンペーストにより構成された赤外線吸収膜43が形成されている。なお、上述したように、配線層41は半導体層14に接触させられているが、具体的には、配線層41はメンブレン内における赤外線吸収膜43の下方とメンブレン外それぞれにおいて半導体層14と接触させられている。これらの接点のうち赤外線吸収膜43の下方に位置するものが温接点、メンブレン外のものが冷接点となる。
【0082】
このような構成のサーモパイル型赤外線センサS2では、赤外線が照射されると赤外線吸収膜43が赤外線を吸収し、発熱する。その熱が温接点に伝わり、温接点の温度が上るため、冷接点との間に熱起電力が発生する。このため、サーモパイル型赤外線センサS2は、温接点と冷接点との間に発生した熱起電力により、赤外線量を検出することが可能となる。このとき、温接点はメンブレン内にあり、冷接点がメンブレン外にあるため、温接点に関しては効率よく温度が上昇し、冷接点に関しては温接点の温度上昇に伴う温度上昇を少なくすることが可能となる。また、半導体層14が多結晶シリコンではなく単結晶シリコンで構成されているため、同じ不純物濃度でも、低い抵抗値と高い熱起電力を得ることができ、さらに、粒界がなくなるので特性のばらつきも少なくなるという効果も得られる。
【0083】
続いて、本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2の製造方法について、図10に示すサーモパイル型赤外線センサS2の製造工程図を参照して説明する。
【0084】
〔図10(a)に示す工程〕
まず、上記第1〜第6実施形態で説明したSOI基板、例えば、第1実施形態の図3の工程により形成したSOI基板を用意したのち、半導体層14を所望の抵抗値にするために、ドナー不純物(P、As、Sb)やアクセプタ不純物(B、Al)をイオン注入してドーピングし、不純物濃度としては大凡1×1016〜1×1021/cm3にする。このときの手法は、図3(f)に示した工程と同様で良い。
【0085】
〔図10(b)に示す工程〕
半導体層14をエッチングによりパターニングする。これにより、配線層41と接点とされる部分、つまり温接点や冷接点が構成されるように、半導体層14がメンブレン内からメンブレン外に至るように延設される。
【0086】
〔図10(c)に示す工程〕
半導体層14を必要に応じて熱酸化したのち、CVD法によりBPSGからなる層間絶縁膜40を形成し、熱処理を行う。これにより半導体層14の段差を平滑化できる。なお、ここではBPSGにて層間絶縁膜40を形成しているが、BPSG以外の酸化膜で形成しても良い。その後、層間絶縁膜40をエッチングしてコンタクトホールを開ける。さらに、層間絶縁膜40上にAlを成膜したのち、Alをパターニングすることにより、温接点や冷接点およびパッドとなる部分を含む配線層41を形成する。
【0087】
〔図10(d)に示す工程〕
配線層41および層間絶縁膜40の上に、TEOSからなる保護膜42を成膜する。そして、保護膜42のうち配線層41のパッドとなる部分と対応する箇所に開口部42aを形成する。なお、ここではTEOSにより保護膜42を形成しているが、TEOS以外の酸化膜や窒化膜で形成しても良い。
【0088】
そして、SOI基板の裏面にCVD法によりシリコン窒化膜20を形成する。この膜はシリコン酸化膜であっても構わないが、KOHによるエッチングのマスクとして機能するので、シリコン窒化膜20の方が好ましい。このシリコン窒化膜20のうちシリコン基板10の空洞部10aの形成予定領域をエッチングにより開口させたのち、シリコン窒化膜20をマスクとしたKOHによる異方性エッチングを行うことで、空洞部10aを形成する。これにより、メンブレンが構成される。そして、最後に保護膜42の上にカーボンペーストからなる赤外線吸収膜43を形成したのち、これをパターニングしてメンブレン内にのみ残す。これにより、図9に示したサーモパイル型赤外線センサS2が完成する。
【0089】
以上説明した本実施形態のサーモパイル型赤外線センサS2においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0090】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとしてガスセンサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、ガスセンサの構造は、上記第7実施形態で説明したサーモパイル型赤外線センサS2とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0091】
図11、図12は、本実施形態のガスセンサS3を示した図であり、図11は、ガスセンサS3の断面図、図12は、ガスセンサS3の上面レイアウト図である。図11に示すように、第1〜第7実施形態と同様、本実施形態のガスセンサS3も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成され、シリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0092】
半導体層14の上層に、例えばBPSGからなる層間絶縁膜50が形成されていると共に、例えばAlにて構成された配線層51が形成され、配線層51が層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホールを通じて半導体層14と接触させられている。
【0093】
また、配線層51および層間絶縁膜50の上層には、例えばTEOSからなる保護膜52が形成されている。この保護膜52には、配線層51を部分的に露出させることでパッドを構成するための開口部52aや後述する感ガス膜53とのコンタクトを可能にするための開口部52bが形成されている。さらに、メンブレン内を含むように保護膜52の上層には、例えば酸化スズ(CO、NOx、水素などを感知可能)により構成された感ガス膜53が形成されている。図12に示すように、この感ガス膜53はメンブレンを覆うように形成されており、感ガス膜53の下方の半導体層14を挟んだ両側において配線層51と電気的に接続され、パッド部51a、51bに外部端子を接続することで、配線層51を通じて電流を流し、感ガス膜53の抵抗値を検出できる構造とされている。また、半導体層14にも配線層51の一部で構成したパッド部51c、51dが接続されており、このパッド部51a、51bに外部端子を接続することで、半導体層14に電流を流し、半導体層14のうちメンブレン内の細くされた部分を加熱できるようになっている。
【0094】
このような構成のガスセンサS3では、配線層51を通じて半導体層14に電流を流すことによってメンブレン内に形成された感ガス膜53の温度を上げ、大気中の対象ガスとの酸化または還元反応を引き起こさせる。これにより、感ガス膜53の抵抗値が変わるため、配線層51のパッド部を通じて感ガス膜53の抵抗値を検出することで、対象ガスの量を検出することが可能となる。このとき、感ガス膜53がメンブレン内にあるため、効率よく温度を上昇させられる。なお、上昇する温度の管理は、半導体層14の抵抗値に基づいて行うことになるが、半導体層14を多結晶シリコンではなく単結晶シリコンで構成しているため、高い抵抗温度係数(TCR)を得ることができ、正確に温度測定を行うことが可能となる。また、高温時に起きる抵抗値の経時変化に対しても単結晶シリコンの方が多結晶シリコンよりも少なく、安定して使用できるガスセンサS3を得ることができ、さらに、粒界がなくなるので特性のばらつきも少なくなるという効果も得られる。
【0095】
図13は、本実施形態のガスセンサS3の製造工程図である。図13(a)〜(d)に示す工程は、基本的に、上述したサーモパイル型赤外線センサS2と同様であり、層間絶縁膜40の代わりに層間絶縁膜50、配線層41の代わりに配線層51、保護膜42の代わりに配線層52、赤外線吸収膜43の代わりに感ガス膜53を形成することが異なっており、さらに各膜のパターンレイアウトが異なっている。なお、感ガス膜43と配線層51とのコンタクト抵抗を下げるためやミキシングを防止するために、必要に応じて配線層52の上層に薄膜を形成しても良い。
【0096】
以上説明した本実施形態のガスセンサS3においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0097】
なお、ここでは感ガス膜53の抵抗値変化を検出するガスセンサの例を記載したが、他の検出原理のガスセンサにも適用可能である。
【0098】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとして圧力センサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、圧力センサの構造は、上記第7実施形態で説明したサーモパイル型赤外線センサS2とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0099】
図14、図15は、本実施形態の圧力センサS4を示した図であり、図14は、圧力センサS4の断面図、図15は、圧力センサS4の模式的な上面レイアウト図である。図11に示すように、第1〜第8実施形態と同様、本実施形態の圧力センサS4も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成され、シリコン基板10には、空洞部10aが形成されており、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成される。
【0100】
半導体層14は、図15に示すように、面方位が(001)の単結晶シリコンにて構成され、半導体層14のうちメンブレン内に配置される部分により圧力検出に用いられる複数のゲージ抵抗が構成される。複数のゲージ抵抗は、例えばホイートストンブリッジ接続されるが、各ゲージ抵抗の長手方向が<110>方向とされ、その長手方向がゲージ抵抗に対する電流の流れる向き(つまり抵抗値を測定する向き)とされる。また、各ゲージ抵抗は、メンブレンのエッジに配置されている。
【0101】
また、半導体層14の上層に、例えばBPSGからなる層間絶縁膜60が形成されていると共に、例えばAlにて構成された配線層61が形成され、配線層61が層間絶縁膜60に形成されたコンタクトホールを通じて半導体層14と接触させられている。
【0102】
また、配線層61および層間絶縁膜60の上層には、例えばTEOSからなる保護膜62が形成されている。この保護膜62には、配線層61を部分的に露出させることでパッドを構成するための開口部62aが形成されている。さらに、SOI基板の裏面には、メンブレン下方の空洞部10aを閉塞した基準圧力室を構成するための台座ガラス63が陽極接合により接合されている。
【0103】
このような構成の圧力センサS4では、メンブレンに測定対象となる圧力が印加されたときに、メンブレンが印加された圧力と基準圧力室内の圧力との差圧に応じて変位し、それに伴ってゲージ抵抗の抵抗値がピエゾ抵抗効果により変化するため、配線層61のパッド部を通じてゲージ抵抗の抵抗値を検出することで、圧力を検出することが可能となる。このとき、本実施形態のようにシリコン基板10が残らない空洞部10aによってメンブレンを構成できるため、極めて低い圧力測定も可能(例えば、フルスケールで1気圧以下)となる。また、小型化にも適している。また、半導体層14を多結晶シリコンではなく単結晶シリコンにすることで、高いピエゾ抵抗効果を得ることができ、さらに、粒界がなくなるので特性のばらつき(オフセット電圧など)も少なくなるという効果を得ることもできる。
【0104】
図16は、本実施形態の圧力センサS4の製造工程図である。図16(a)〜(e)に示す工程は、基本的に、上述したサーモパイル型赤外線センサS2と同様であり、層間絶縁膜40の代わりに層間絶縁膜60、配線層41の代わりに配線層61、保護膜42の代わりに配線層62を形成することが異なっている。そして、シリコン窒化膜20をマスクとして空洞部10aを形成したのち(図16(e)の工程)、シリコン窒化膜20を除去し、陽極接合により台座ガラス63をSOI基板の裏面に接合することで圧力センサS4が完成する。
【0105】
以上説明した本実施形態の圧力センサS4においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0106】
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとして加速度センサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、加速度センサの構造は、上記第9実施形態で説明した圧力センサS4とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0107】
図17は、本実施形態の加速度センサS5の断面図である。図17に示すように、第1〜第7実施形態と同様、本実施形態の加速度センサS5も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成されている。シリコン基板10には、空洞部10aが形成され、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成されているが、メンブレンの中央部においてシリコン基板10が残されることで錘部10eが構成されている。また、圧力センサS4に備えてあった台座ガラス63を無くした構造とされている。この他の構成に関しては、第9実施形態で説明した圧力センサS4と同様であり、半導体層14により複数のゲージ抵抗が構成されており、半導体層14の上面レイアウトも、図15に示す圧力センサS4と同様となっている。
【0108】
このような構成の加速度センサS5では、加速度が発生すると、錘部10eの慣性による応力がメンブレンに印加されたときに、メンブレンが印加された応力に応じて変位し、それに伴ってゲージ抵抗の抵抗値がピエゾ抵抗効果により変化するため、配線層61のパッド部を通じてゲージ抵抗の抵抗値を検出することで、加速度を検出することが可能となる。これにより、第9実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態の加速度センサS5の製造方法は、図16に示す圧力センサS4の製造工程とほぼ同様であり、錘部10eを形成するために、空洞部10aのパターン変更を行うだけでよい。
【0109】
以上説明した本実施形態の加速度センサS5においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0110】
(第11実施形態)
本発明の第11実施形態について説明する。本実施形態では、物理量センサとして圧力センサと加速度センサを一体化した複合センサに対して本発明の一実施形態を適用した場合について説明する。なお、複合センサの構造は、上記第9実施形態で説明した圧力センサS4とほぼ同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0111】
図18は、本実施形態の複合センサS6の断面図である。図18に示すように、第1〜第7実施形態と同様、本実施形態の複合センサS6も、シリコン基板10を支持基板、絶縁膜13を埋め込み層、半導体層14をSOI層とするSOI基板を用いて形成されている。シリコン基板10には、空洞部10aが形成され、この空洞部10aが形成された部位においてメンブレンが構成されているが、第10実施形態の加速度センサS5と同様、メンブレンの中央部においてシリコン基板10が残されることで錘部10eが構成されている。また、半導体層14により複数のゲージ抵抗が構成されている。そして、第9実施形態の圧力センサS4と同様、SOI基板の裏面に台座ガラス63が備えられている。台座ガラス63のうち錘部10eと対応する場所にはザグリ(凹部)63aが形成されており、錘部10eの変位の妨げとならない構造とされている。この他の構造は、第9実施形態で説明した圧力センサS4と同様である。
【0112】
このような構成の複合センサS6とすることも可能である。なお、複合センサS6の作動原理は、圧力センサS4や加速度センサS5と同様である。また、本実施形態の加速度センサS5の製造方法も、台座ガラス63としてザグリ63aが形成されているものを用いることと、空洞部10aのパターンが錘部10eを形成できるパターンであること以外は、図16に示す圧力センサS4の製造工程と同様で良い。
【0113】
以上説明した本実施形態の複合センサS6においても、SOI基板の埋め込み層をSiO2の一層のみによって構成せずに、シリコン基板10の表面10bに配置したシリコン窒化膜11も備えた構成としている。このため、シリコン基板10をエッチングする際に、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとして機能し、シリコン酸化膜12が除去されないようにすることができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0114】
なお、上記では、複合センサS6の台座ガラス63にザグリ63aを設けることで、錘部10eが変位できるようにしたが、図19に示すように、錘部10eの先端が台座ガラス63から離間するような構造としても良い。このような構造は、空洞部10aを形成する際のマスクとして用いるシリコン窒化膜20のうち錘部10eと対応する位置に残される領域の面積を小さくし、KOHによるシリコン基板10の異方性エッチング時のサイドエッチにより、その領域のシリコン窒化膜20が取れてなくなるようにすれば良い。
【0115】
(他の実施形態)
上記各実施形態において、SOI基板の製造方法を記載したが、ここに記したものは単なる一例であり、各実施形態に示した手法を組み合わせることも可能である。例えば、上記第6実施形態では、窒素イオンと酸素イオンを共にイオン注入してシリコン窒化膜11やシリコン酸化膜12を形成する場合について説明したが、そのうちの一方のみのイオン注入を行い、他の層に関してはデポジションによって形成するなどの手法をとっても良い。また、第1実施形態では、図3(d)に示すようにシリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成するようにしているが、シリコン基板10に形成したシリコン窒化膜11の表面にシリコン酸化膜12を直接形成した後にシリコン基板30を貼り合わせるようにしても良い。
【0116】
また、第1実施形態では、図3(d)に示すようにシリコン基板30の表面30aにシリコン酸化膜12を形成するようにしているが、図3(d)に示す工程においてシリコン基板30の表面30aに形成したシリコン酸化膜12の上にシリコン窒化膜11を形成しておき、シリコン基板10における表面10bとシリコン窒化膜11を貼り合わせるようにすることも可能である。このようにした場合、シリコン基板30の裏面30bにもシリコン窒化膜やシリコン酸化膜が形成されることになるが、これらは図3(f)に示す工程で行われる研磨によって除去されるため、問題ない。
【0117】
また、上記実施形態では、ヒータ15a、15bは特許文献1の発熱抵抗体と測温抵抗体を兼用した構成であるものを例に挙げて説明したが、発熱抵抗体と測温抵抗体を別体とした構成であっても構わない。
【0118】
また、上記各実施形態では、シリコン基板10の裏面10c側からエッチングを行うことで、空洞部10aを形成したが、表面10b側からエッチングを行うことで空洞部10aを形成しても良い。例えば、図20は、第1実施形態の熱式流量センサS1に対してシリコン基板10の表面10b側から空洞部10aを形成した場合の断面図である。この図に示すように、メンブレンおよびその上に配置する各構成要素を形成したのち、これらを貫通してシリコン基板10の表面10bに達する孔部70を形成する。そして、この孔部70を通じて例えば等方性エッチングを行うことで、空洞部10aを形成することができる。この場合にも、シリコン窒化膜11がエッチングストッパとなるため、上記各実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0119】
また、上記第7〜第11実施形態では、SOI基板として図3に示したものを用いる場合を例に挙げて説明したが、図6〜図8に示したものを用いても良い。
【0120】
さらに、以上の説明では、薄膜(メンブレン)構造を有する半導体装置の例として、物理量センサを例に挙げたが、単結晶シリコンを用いた薄膜構造を有していれば、物理量センサに限るものではない。例えば、単なる加熱ヒータとして用いる薄膜構造部に対して本発明を適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる熱式流量センサS1の概略平面構成を示す図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った熱式流量センサS1の概略断面構成を示す図である。
【図3】図1および図2に示す熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図4】図3に続く熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかる熱式流量センサS1に関する図であり、(a)は、熱式流量センサS1の断面図、(b)は、(a)の熱式流量センサS1の形成に用いるSOI基板の断面図である。
【図6】図5に示す熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態にかかる熱式流量センサS1の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態にかかるサーモパイル型赤外線センサS2の断面図である。
【図10】図9に示すサーモパイル型赤外線センサS2の製造工程図である。
【図11】本発明の第8実施形態にかかるガスセンサS3の断面図である。
【図12】図11に示すガスセンサS3の上面レイアウト図である。
【図13】図11に示すガスセンサS3の製造工程図である。
【図14】本発明の第9実施形態にかかる圧力センサS4の断面図である。
【図15】図14に示す圧力センサS4の上面レイアウト図である。
【図16】図14に示す圧力センサS4の製造工程図である。
【図17】本発明の第10実施形態にかかる加速度センサS5の断面図である。
【図18】本発明の第11実施形態にかかる複合センサS6の断面図である。
【図19】複合センサS5の変形例を示した断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態で示す熱式流量センサS1の断面図である。
【符号の説明】
【0122】
10…シリコン基板、10a…空洞部、10b…表面、10c…裏面、
10d…開口部、11…シリコン窒化膜、12…シリコン酸化膜、13…絶縁膜、
14…半導体層、15a、15b…ヒータ、16a、16b…温度計、
17a〜17f…配線層、18…絶縁膜、19a〜19f…パッド、
20…シリコン窒化膜、21…シリコン窒化膜、21a〜21f…ワイヤ、
22…シリコン酸化膜、30…シリコン基板、30a…表面、30b…裏面、
40、50、60…層間絶縁膜、41、51、61…配線層、
42、52、62…保護膜、43…赤外線吸収膜、53…感ガス膜、
63…台座ガラス、S1…熱式流量センサ、S2…赤外線センサ、S3…ガスセンサ、
S4…圧力センサ、S5…加速度センサ、S6…複合センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部(10a)が形成されたシリコン基板(10)と、
前記シリコン基板(10)の表面(10b)側において、前記空洞部(10a)を覆うように形成された絶縁膜(13)と、
前記絶縁膜(13)の上に形成された半導体層(14)とを有し、
前記シリコン基板(10)を支持基板、前記絶縁膜(13)を埋め込み層、前記半導体層(14)をSOI層としたSOI基板を用いて形成され、前記シリコン基板(10)における前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)をメンブレンとして構成されてなる物理量センサの製造方法において、
前記SOI基板として、前記絶縁膜(13)が前記シリコン窒化膜(11)と該シリコン窒化膜(11)よりも前記半導体層(14)側に配置されたシリコン酸化膜(12)の少なくとも2層を含む積層構造となるものを用意する工程と、
前記SOI基板における前記シリコン基板(10)をエッチングすることで、該シリコン基板(10)に前記空洞部(10a)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする物理量センサの製造方法。
【請求項2】
前記SOI基板を用意する工程では、Si3N4もしくはSiリッチのSixNyを用いて前記絶縁膜(13)に含まれる前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項3】
前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程では、該シリコン窒化膜(11)を引っ張り応力を有する膜として形成することを特徴とする請求項2に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項4】
前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)に前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程であることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)から窒素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、前記シリコン基板(10)の決められた深さの位置に前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程であることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項6】
前記SOI基板を用意する工程では、SiO2、Nを微小に含んだSiOxNyおよびポーラスシリカのいずれかを用いて前記絶縁膜(13)に含まれる前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項7】
前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)に形成した前記シリコン窒化膜(11)の上面、もしくは、前記SOI層を形成するためのシリコン基板(30)の表面(30a)に前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項8】
前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)から酸素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、前記シリコン基板(10)の決められた深さの位置に前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項9】
前記SOI基板を用意する工程は、
前記支持基板となる前記シリコン基板(10)の表面(10b)に前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程と、
前記SOI層を形成するためのSOI層用シリコン基板(30)を用意し、該SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)に前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜(11)と前記シリコン酸化膜(12)とを貼り合わせることにより、前記支持基板となる前記シリコン基板(10)と前記SOI層用シリコン基板(30)を一体化させる工程と、
前記SOI層用シリコン基板(30)を薄厚化させることで、前記SOI層を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項10】
前記SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)から前記SOI層の膜厚相当分の深さの位置に水素イオンを注入する工程と、
熱処理を行うことにより、前記水素イオンを注入した位置において前記SOI層用シリコン基板(30)を割り、前記SOI層を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項11】
前記半導体層(14)を単結晶シリコンにて構成することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項12】
前記物理量センサは、前記メンブレン内に配置される前記半導体層(14)をヒータ(15a、15b)とし、流体の流動に伴う前記ヒータ(15a、15b)の温度変化に基づき、物理量として前記流体の流量の検出を行う熱式流量センサ(S1)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項13】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されると共に前記半導体層(14)との接触点となる複数の接点を有した配線層(41)と、前記メンブレン内において前記配線層(41)よりも上層に配置された赤外線吸収膜(43)とを有し、前記配線層(41)と前記半導体層(14)との接点のうち前記メンブレン内の接点を温接点とし、前記メンブレン外の接点を冷接点として、前記赤外線吸収膜(43)に赤外線が照射されたときに、前記赤外線吸収膜(43)の温度上昇に伴い発生する前記温接点と前記冷接点との温度差に起因する起電力に基づき、物理量として前記赤外線の量を検出する赤外線センサ(S2)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項14】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置された配線層(51)と、前記メンブレン内において前記配線層(51)よりも上層に配置された測定対象ガスとの反応により抵抗値を変化させる感ガス膜(53)とを有し、前記配線層(51)のうち前記感ガス膜(53)に電気的に接続されるパッド部(51a、51b)を通じて前記感ガス膜(53)の抵抗値を検出できると共に、前記配線層(51)のうち前記半導体層(14)に電気的に接続されるパッド部(51c、51d)を通じて前記半導体層(14)に電流が流せるように構成され、前記半導体層(14)に電流を流して加熱することで前記メンブレン内の前記感ガス膜(53)の温度を上げ、前記感ガス膜(53)を前記対象ガスと反応させて該感ガス膜(53)の抵抗値を変化させることで、前記物理量として前記対象ガスの量を検出するガスセンサ(S3)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項15】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されると共に前記半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、前記シリコン基板(10)の裏面に配置されることで前記空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)とを有し、前記メンブレン内に配置された前記半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力による前記メンブレンの変位に伴う前記半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、前記物理量として前記圧力を検出する圧力センサ(S4)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項16】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されて前記半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)を有すると共に、前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)に備えられた錘部(10e)を有し、前記メンブレン内に配置された前記半導体層(14)をゲージ抵抗とし、加速度による前記メンブレンの変位に伴う前記半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、前記物理量として前記加速度を検出する加速度センサ(S5)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項17】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されると共に前記半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、前記シリコン基板(10)の裏面に配置されることで前記空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)と、前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)に前記台座(63)から離間するように備えられた錘部(10e)とを有し、前記メンブレン内に配置された前記半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力もしくは加速度による前記メンブレンの変位に伴う前記半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、前記物理量として前記圧力もしくは前記加速度を検出する複合センサ(S6)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項18】
空洞部(10a)が形成されたシリコン基板(10)と、
前記シリコン基板(10)の表面(10b)側において、前記空洞部(10a)を覆うように形成された絶縁膜(13)と、
前記絶縁膜(13)の上に形成された半導体層(14)とを有し、
前記シリコン基板(10)を支持基板、前記絶縁膜(13)を埋め込み層、前記半導体層(14)をSOI層としたSOI基板を用いて形成されていると共に、前記シリコン基板(10)における前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)をメンブレンとして構成され、
前記SOI基板は、前記絶縁膜(13)が前記シリコン窒化膜(11)と該シリコン窒化膜(11)よりも前記半導体層(14)側に配置されたシリコン酸化膜(12)の少なくとも2層を含む積層構造からなり、
前記SOI基板における前記シリコン基板(10)が前記シリコン窒化膜(11)をストッパとしてエッチングされることで前記空洞部(10a)が形成されていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項1】
空洞部(10a)が形成されたシリコン基板(10)と、
前記シリコン基板(10)の表面(10b)側において、前記空洞部(10a)を覆うように形成された絶縁膜(13)と、
前記絶縁膜(13)の上に形成された半導体層(14)とを有し、
前記シリコン基板(10)を支持基板、前記絶縁膜(13)を埋め込み層、前記半導体層(14)をSOI層としたSOI基板を用いて形成され、前記シリコン基板(10)における前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)をメンブレンとして構成されてなる物理量センサの製造方法において、
前記SOI基板として、前記絶縁膜(13)が前記シリコン窒化膜(11)と該シリコン窒化膜(11)よりも前記半導体層(14)側に配置されたシリコン酸化膜(12)の少なくとも2層を含む積層構造となるものを用意する工程と、
前記SOI基板における前記シリコン基板(10)をエッチングすることで、該シリコン基板(10)に前記空洞部(10a)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする物理量センサの製造方法。
【請求項2】
前記SOI基板を用意する工程では、Si3N4もしくはSiリッチのSixNyを用いて前記絶縁膜(13)に含まれる前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項3】
前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程では、該シリコン窒化膜(11)を引っ張り応力を有する膜として形成することを特徴とする請求項2に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項4】
前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)に前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程であることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)から窒素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、前記シリコン基板(10)の決められた深さの位置に前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程であることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項6】
前記SOI基板を用意する工程では、SiO2、Nを微小に含んだSiOxNyおよびポーラスシリカのいずれかを用いて前記絶縁膜(13)に含まれる前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項7】
前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)に形成した前記シリコン窒化膜(11)の上面、もしくは、前記SOI層を形成するためのシリコン基板(30)の表面(30a)に前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項8】
前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程は、前記シリコン基板(10)の表面(10b)から酸素イオンをイオン注入したのち、熱処理を行うことで、前記シリコン基板(10)の決められた深さの位置に前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項9】
前記SOI基板を用意する工程は、
前記支持基板となる前記シリコン基板(10)の表面(10b)に前記シリコン窒化膜(11)を形成する工程と、
前記SOI層を形成するためのSOI層用シリコン基板(30)を用意し、該SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)に前記シリコン酸化膜(12)を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜(11)と前記シリコン酸化膜(12)とを貼り合わせることにより、前記支持基板となる前記シリコン基板(10)と前記SOI層用シリコン基板(30)を一体化させる工程と、
前記SOI層用シリコン基板(30)を薄厚化させることで、前記SOI層を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項10】
前記SOI層用シリコン基板(30)の表面(30a)から前記SOI層の膜厚相当分の深さの位置に水素イオンを注入する工程と、
熱処理を行うことにより、前記水素イオンを注入した位置において前記SOI層用シリコン基板(30)を割り、前記SOI層を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の物理量センサの製造方法。
【請求項11】
前記半導体層(14)を単結晶シリコンにて構成することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項12】
前記物理量センサは、前記メンブレン内に配置される前記半導体層(14)をヒータ(15a、15b)とし、流体の流動に伴う前記ヒータ(15a、15b)の温度変化に基づき、物理量として前記流体の流量の検出を行う熱式流量センサ(S1)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項13】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されると共に前記半導体層(14)との接触点となる複数の接点を有した配線層(41)と、前記メンブレン内において前記配線層(41)よりも上層に配置された赤外線吸収膜(43)とを有し、前記配線層(41)と前記半導体層(14)との接点のうち前記メンブレン内の接点を温接点とし、前記メンブレン外の接点を冷接点として、前記赤外線吸収膜(43)に赤外線が照射されたときに、前記赤外線吸収膜(43)の温度上昇に伴い発生する前記温接点と前記冷接点との温度差に起因する起電力に基づき、物理量として前記赤外線の量を検出する赤外線センサ(S2)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項14】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置された配線層(51)と、前記メンブレン内において前記配線層(51)よりも上層に配置された測定対象ガスとの反応により抵抗値を変化させる感ガス膜(53)とを有し、前記配線層(51)のうち前記感ガス膜(53)に電気的に接続されるパッド部(51a、51b)を通じて前記感ガス膜(53)の抵抗値を検出できると共に、前記配線層(51)のうち前記半導体層(14)に電気的に接続されるパッド部(51c、51d)を通じて前記半導体層(14)に電流が流せるように構成され、前記半導体層(14)に電流を流して加熱することで前記メンブレン内の前記感ガス膜(53)の温度を上げ、前記感ガス膜(53)を前記対象ガスと反応させて該感ガス膜(53)の抵抗値を変化させることで、前記物理量として前記対象ガスの量を検出するガスセンサ(S3)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項15】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されると共に前記半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、前記シリコン基板(10)の裏面に配置されることで前記空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)とを有し、前記メンブレン内に配置された前記半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力による前記メンブレンの変位に伴う前記半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、前記物理量として前記圧力を検出する圧力センサ(S4)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項16】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されて前記半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)を有すると共に、前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)に備えられた錘部(10e)を有し、前記メンブレン内に配置された前記半導体層(14)をゲージ抵抗とし、加速度による前記メンブレンの変位に伴う前記半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、前記物理量として前記加速度を検出する加速度センサ(S5)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項17】
前記物理量センサは、前記半導体層(14)の上層に配置されると共に前記半導体層(14)と電気的に接続された配線層(61)と、前記シリコン基板(10)の裏面に配置されることで前記空洞部(10a)を圧力基準室とする台座(63)と、前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)に前記台座(63)から離間するように備えられた錘部(10e)とを有し、前記メンブレン内に配置された前記半導体層(14)をゲージ抵抗とし、圧力もしくは加速度による前記メンブレンの変位に伴う前記半導体層(14)の抵抗値変化に基づき、前記物理量として前記圧力もしくは前記加速度を検出する複合センサ(S6)であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の物理量センサの製造方法。
【請求項18】
空洞部(10a)が形成されたシリコン基板(10)と、
前記シリコン基板(10)の表面(10b)側において、前記空洞部(10a)を覆うように形成された絶縁膜(13)と、
前記絶縁膜(13)の上に形成された半導体層(14)とを有し、
前記シリコン基板(10)を支持基板、前記絶縁膜(13)を埋め込み層、前記半導体層(14)をSOI層としたSOI基板を用いて形成されていると共に、前記シリコン基板(10)における前記空洞部(10a)に形成された前記絶縁膜(13)をメンブレンとして構成され、
前記SOI基板は、前記絶縁膜(13)が前記シリコン窒化膜(11)と該シリコン窒化膜(11)よりも前記半導体層(14)側に配置されたシリコン酸化膜(12)の少なくとも2層を含む積層構造からなり、
前記SOI基板における前記シリコン基板(10)が前記シリコン窒化膜(11)をストッパとしてエッチングされることで前記空洞部(10a)が形成されていることを特徴とする物理量センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−309914(P2007−309914A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9904(P2007−9904)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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