説明

発光素子

【課題】 有機EL発光層などの自発光素子を用いてディスプレイを作製する際に両面で発光するディスプレイを作製することができるようにする。
【解決手段】 薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor TFT)705で発光層713における発光を駆動し、発光層713を下部電極709と上部電極715とで挟む発光素子において、TFT705の活性層がInとGaとZnを含み、かつ電子キャリア濃度が1018/cm3未満であり、かつ少なくとも一部が非晶質の酸化物であり、かつTFT705のドレイン電極に発光層713の一部が電気的に接続され、少なくともTFT705の電極と、下部電極709と、下部電極709とドレイン電極とを接続する電極とが透明である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物を用いた発光素子に関し、特に、有機EL素子や無機EL素子に関する。
【0002】
また、発光素子はトップエミッションもしくはボトムエミッション型又は、両面発光型に関する。また、これら有機EL素子や無機EL素子を用いた画像表示素子に関する。
【背景技術】
【0003】
ITOは、透明電極として透過型の液晶デバイスなどに用いられているが、ITOの主原料であるIn23は希少金属であり、今後も継続的に所望の供給ができるかどうかが懸念されている。
【0004】
そこで、In23の含有量を低く抑え、低抵抗かつ光学吸収端が紫外域にあり、青色透過性に優れた新規な透明導電体材料の製造方法及び電極材が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、ITOに代替し得る材料の研究開発が盛んに行われており、例えば、酸化亜鉛膜(ZnO)、亜鉛−インジウム系酸化物のものが、特許文献2に開示されている。
【0006】
また、亜鉛−インジウム系酸化物に所定量のガリウムなどを加えた酸化物のものが、特許文献3に開示されている。
【0007】
また、近年では、電極のみならず、たとえばトランジスタのチャネル層をも透明な膜で形成しようとする試みもある。
【0008】
例えば、特許文献4に開示されるように、ZnOを主成分として用いた透明伝導性酸化物多結晶薄膜をチャネル層に用いたTFTの開発が活発に行われている。
【0009】
上記の薄膜は、低温で成膜でき、かつ可視光に透明であるため、プラスチック板やフィルムなどの基板上にフレキシブルな透明TFTを形成することが可能であるとされている。
【0010】
また、近年では有機ELの発光素子の研究開発が活発であるが、この有機ELをディスプレイに応用する場合にはアクティブマトリックス型で駆動されるのが主流である。
【0011】
このアクティブマトリックス駆動には通常アモルファスシリコン又はポリシリコンを用いたTFTが利用されている。
【特許文献1】特開2000−044236号公報
【特許文献2】特開平7−235219号公報
【特許文献3】特開2000−044236号公報
【特許文献4】特開2002−76356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、ZnOを主成分とした伝導性透明酸化物では、酸素欠陥が入りやすく、キャリア電子が多数発生し電気伝導度を小さくすることが難しい。
【0013】
このために、ゲート電圧無印加時でも、ソース端子とドレイン端子間に大きな電流が流れてしまい、TFTのノーマリーオフ動作を実現できない。
【0014】
また、トランジスタのオン・オフ比を大きくすることも難しい。
【0015】
また、特許文献3に記載されているような非晶質酸化物膜(ZxyInz(x+3y/2+3z/2)(式中、MはAl及びGaのうち少なくとも一つの元素であり、比率x/yが0.2〜12の範囲であり、比率z/y0.4〜1.4の範囲にある))をTFTのチャネル層に用いたのでは、該非晶質膜の電子キャリア濃度は1018/cm3超である。
【0016】
そのため、ノーマリーオフ型のTFTチャネル層としては好ましくない。
【0017】
従来、このような透明なアモルファス酸化物膜で、電子キャリア濃度が1018/cm3未満の膜を得ることはできていなかった。
【0018】
また、従来のアモルファスシリコンやポリシリコンでは可視光域に、光感度があるため、TFTのチャネル部を遮光する必要があった。
【0019】
そのため、高解像度の画質を得るために画素数を上げた場合、開口効率が極端に下がり、高輝度ディスプレイは期待できないという課題があった。
【0020】
そこで、本発明は、電子キャリア濃度が1018/cm3未満の酸化物を用いた透明TFTを有し、透明電極のみならず少なくとも画素部の配線電極にも透明電極を使用することでプロセスが簡素化できるようにすることを目的とする。それにより、コストダウンが容易となる。
【0021】
また、本発明は、プラスチック基板のような軽量で割れ難い基板、又は可撓性のある基板を用いた発光素子を提供することも目的とする。
【0022】
さらに、本発明は、電子キャリア濃度が1018/cm3未満の酸化物を用いた透明TFTを有し、電極の端部が順テーパーとなるよう配置された発光素子を提供することも目的とする。(ここでいう電極の端部が順テーパーとは、電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも電極の下端部が長い向きにテーパーとなっていることをいう。)
また、本発明は、電子キャリア濃度が1018/cm3未満の酸化物を用いた透明TFTを有し、電極の端部が順テーパーとなるよう配置された透明電極若しくは透明配線電極を有した発光素子を提供することも目的とする。(ここでいう電極の端部が順テーパーとは、電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも電極の下端部が長い向きにテーパーとなっていることをいう。)
なお、上記においては、透明酸化物膜をTFTのチャネル層を使用する場合に主眼をおいて説明したが、本発明はこのようにチャネル層に使用する場合に限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor TFT)で発光層における発光を駆動し、該発光層を第1の電極と第2の電極とで挟む発光素子において、前記TFTの活性層がInとGaとZnを含み、かつ電子キャリア濃度が1018/cm3未満であり、かつ少なくとも一部が非晶質の酸化物であり、かつ前記TFTのドレイン電極に前記発光層の一部が電気的に接続され、少なくとも前記TFTのソース、ドレイン及びゲート電極と、前記第1の電極と、前記第1の電極と前記ドレイン電極とを接続する電極とが透明であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記第2の電極も透明であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、信号線と前記ソース電極とを接続するソース接続線も透明であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、走査線と前記ゲート電極とを接続するゲート接続線も透明であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor TFT)で発光層における発光を駆動し、該発光層を第1の電極と第2の電極とで挟む発光素子において、少なくとも前記TFTのソース、ドレイン及びゲート電極の上面の面積よりも下面の面積の方が広いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、少なくとも上部電極以外の電極について透明導電性物質を用いるので、有機EL発光層などの自発光素子を用いてディスプレイを作製する際に、両面で発光するディスプレイを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0030】
(1)まず、本発明者らが作製することに成功した電子キャリア濃度が1018/cm3未満の透明酸化物膜について詳述する(その後、本発明自体の具体的形態について、(2)として後述する。)。
【0031】
上記透明酸化物膜とは具体的には、In−Ga−Zn−Ga−Zn−Oを含み構成され、結晶状態における組成は、InGaO3(ZnO)m (mは6未満の自然数)で表され、電子キャリア濃度が1018/cm3未満である。結晶状態はアモルファスである。
【0032】
または、In−Ga−Zn−Mg−Oを含み構成され、結晶状態の組成がInGaO3(Zn1-xMgxO)m (mは6未満の自然数)、0<x≦1で表され、電子キャリア濃度が1018/cm3未満である。結晶状態はアモルファスである。
【0033】
なお、これらの膜において、電子移動度が1cm2/(V・秒)超にすることも好ましい形態である。
【0034】
上記膜をチャネル層に用いれば、トランジスタオフ時のゲート電流が0.1マイクロアンペア未満のノーマリーオフで、オン・オフ比が103超のトランジスタ特性を持ち、かつ可視光に透明でフレキシブルにできる。
【0035】
なお、上記透明膜は、伝導電子数の増加とともに、電子移動度が大きくなることを特徴とする。
【0036】
透明膜を形成する基板としては、ガラス基板、プラスチック基板又はプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0037】
上記透明酸化物膜をチャネル層に利用する際には、Al23、Y23若しくはHfO2の1種又はそれらの化合物を少なくとも二種以上含む混晶化合物をゲート絶縁膜を用いトランジスタを形成することも好ましい形態である。
【0038】
また、電気抵抗を高めるための不純物イオンを意図的に添加せず、酸素ガスを含む雰囲気中で成膜することも好ましい形態である。
【0039】
本発明者らは、この半絶縁性酸化物アモルファス薄膜が伝導電子数の増加とともに電子移動度が大きくなるという特異な特性を見出した。
【0040】
この特性を持つ半絶縁性酸化物アモルファス薄膜を用いてTFTを作成し、オン・オフ比、ピンチオフ状態での飽和電流、スイッチ速度などのトランジスタ特性がさらに向上することを見出した。
【0041】
透明半絶縁性アモルファスシリコン酸化物薄膜を膜トランジスタのチャネル層として用いると、電子移動度が1cm2/(V・秒)超、電子キャリア濃度が1018/cm3未満で、オフ時(ゲート電圧無印加時)のドレイン・ソース端子間の電流を10マイクロアンペア未満にすることができる。
【0042】
さらに好ましくは、電子移動度が5cm2/(V・秒)超、電子キャリア濃度が1016/cmで、0.1マイクロアンペア未満にすることができる。
【0043】
また、該薄膜を用いれば、電子移動度が1cm2/(V・秒)超、好ましくは5cm2/(V・秒)超の時は、ピンチオフ後の飽和電流を10マイクロアンペア超にでき、オン・オフ比を103超とすることができる。
【0044】
TFTでは、ピンチオフ状態では、ゲート端子に高電圧が印加され、チャネル中には高密度の電子が存在している。
【0045】
したがって、本実施の形態によれば、電子移動度が増加した分だけ、より飽和電流値を大きくすることができる。
【0046】
この結果、オン・オフ比の増大、飽和電流の増大、スイッチング速度の増大など、ほとんど全てのトランジスタ特性が向上する。
【0047】
なお、通常の化合物中では、電子数が増大すると、電子間の衝突により、電子移動度は減少する。
【0048】
なお、上記TFTの構造としては、半導体チャネル層の上にゲート絶縁膜とゲート端子とを順に形成するスタガ(トップゲート)構造のものが用いることができる。また、ゲート端子の上にゲート絶縁膜と半導体チャネル層を順に形成する逆スタガ(ボトムゲート)構造のものなども用いることができる。
【0049】
(膜組成について)
結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜は、mの値が6未満の場合は、800℃以上の高温までアモルファス状態が安定に保たれる。
【0050】
しかし、mの値が大きくなるにつれ、すなわち、InGaO3に対するZnOの比が増大して、ZnO組成に近づくにつれ結晶化しやすくなる。
【0051】
したがって、アモルファスTFTのチャネル層としては、mの値が6未満であることが好ましい。
【0052】
成膜方法は、InGaO3(ZnO)m組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが良い。
【0053】
気相成膜法の中でも、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法が適している。さらに、量産性の観点からスパッタ法が最も適している。
【0054】
しかしながら、通常の条件で該アモルファス膜を作成すると、主として酸素欠損が生じ、これまで、電子キャリア濃度を1018/cm3未満、電気伝導度にして、10S/cm以下にすることができなかった。
【0055】
そうした薄膜を用いた場合、ノーマリーオフのトランジスタを構成することができない。
【0056】
本発明者らは、パルスレーザー蒸着法で作成したIn−Ga−Zn−Oから構成され、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を酸素分圧を4.5Pa超の高い雰囲気中で成膜することにより、図1に示すように、電子キャリア濃度を1018/cm3未満に低下させることができた。
【0057】
この場合、基板の温度は意図的に加温しない状態で、ほぼ室温に維持されている。プラスチックフィルムを基板として使用できるために、基板温度は100℃未満に保つことが好ましい。
【0058】
酸素分圧をさらに大きくすると、電子キャリア数をさらに低下させることができる。
【0059】
例えば、図1に示すように、基板温度25℃、酸素分圧6Paで成膜したInGaO3(ZnO)4薄膜では、さらに、電子キャリア数を1016/cm3(電気伝導:約10-4S/cm)に低下させることができた。
【0060】
得られた薄膜は、図3に示すように、電子移動度が1cm2/(V・秒)超であった。
【0061】
しかし、パルスレーザー蒸着法では、酸素分圧を6.5Pa以上にすると、堆積した膜の表面が凸凹となり、TFTのチャネル層として用いることができない。
【0062】
すなわち、酸素分圧4.5Pa超6.5Pa未満の雰囲気でパルスレーザー蒸着法で作製されるほうがよい。
【0063】
この方法で作製されれば、In−Ga−Zn−Oから構成され、結晶状態における組成InGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を用いて、ノーマリーオフのトランジスタを作製することができる。
【0064】
すなわち、パルスレーザー蒸着法で膜を作製する場合の酸素分圧としては、4.5Pa以上6.5Pa未満、より好適には5Pa以上6.5Pa未満である。
【0065】
また、該薄膜の電子移動度は、1cm2/V・秒超が得られ、オン・オフ比を103超に大きくすることができた。
【0066】
また、In−Ga−Zn−Oから構成され、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を、図2に示すように、電気伝導度を10S/cm未満に低下させることができる。これは、アルゴンガスも用いたスパッタ蒸着法で酸素分圧を3×10-2Pa超の高い雰囲気中で成膜することにより、作成することができる。
【0067】
この場合、基板の温度は意図的に加温しない状態で、ほぼ室温に維持されている。
【0068】
プラスチックフィルムを基板として使用できるために、基板温度は100℃未満に保つことが好ましい。
【0069】
酸素分圧をさらに大きくすることにより、電子キャリア数を低下させることができた。
【0070】
例えば、図2に示すように、基板温度25℃、酸素分圧10-1Paで成膜したInGaO3(ZnO)4薄膜では、さらに、電気伝導を約10-10S/cmに低下させることができた。
【0071】
また、酸素分圧10-1Pa超で成膜したInGaO3(ZnO)4薄膜は、電気抵抗が高すぎて測定できなかった。
【0072】
電気抵抗が10-2S/cm超の薄膜では、電子移動度が1cm2/(V・秒)超であった。
【0073】
電気抵抗が10-2S/cm以下の薄膜では、電気抵抗が高すぎて、電子移動度は測定できなかったが、その値は、測定できた電気抵抗と電子移動度の関係を外挿して1cm2/(V・秒)超と推定される。
【0074】
すなわち、酸素分圧3×10-1Pa超のアルゴンガス雰囲気で、スパッタ蒸着法で作製されるほうがよい。望ましくは5×10-1Pa超のアルゴンガス雰囲気で、スパッタ蒸着法で作製されるほうがよい。
【0075】
この方法で作製されれば、In−Ga−Zn−Oから構成され、結晶状態における組成InGaO3 (ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される透明アモルファス酸化物薄膜を用いて、ノーマリーオフのトランジスタを作製できる。さらに、オン・オフ比を103超とすることもできる。
【0076】
パルスレーザー蒸着法およびスパッタ法で作成された薄膜では、図3に示すように、キャリア電子密度の増加とともに、電子移動度が増加する。
【0077】
同様に、ターゲットとして、多結晶InGaO3(Zn1-xMgxO)m(mは6未満の自然数、0<x≦1を用いれば、1Pa未満の酸素分圧下でも、高抵抗アモルファスInGaO3(Zn1-xMgxO)m膜を得ることができた。
【0078】
例えば、図4に示すように、Znを80at%のMgで置換したターゲットを使用した場合、酸素分圧0.8Paの雰囲気でパルスレーザー堆積法で得られた膜のキャリア電子密度を1016/cm3未満とすることができる(電気抵抗値は、約10-2S/cmである。)。
【0079】
こうした膜の電子移動度は、Mg無添加膜に比べて低下するが、その程度は少なく、室温での電子移動度は約5cm2/(V・秒)でアモルファスシリコンに比べて1桁程度大きな値を示す。
【0080】
同じ条件で成膜した場合、Mg含有量の増加に対して、電気伝導度と電子移動度は共に低下するので、Mgの含有量は好ましくは、20%超85%未満(xにして、0.2<x<0.85)である。
【0081】
上記のとおり、酸素分圧を制御することにより、酸素欠陥を低減でき、その結果、特定の不純物イオンを添加することなしに、電子キャリア濃度を減少できる。
【0082】
また、アモルファス状態では、多結晶状態とは異なり、本質的に粒子界面が存在しないために、高電子移動度のアモルファス薄膜を得ることができる。
【0083】
さらに、特定の不純物を添加せずに伝導電子数を減少できるので、不純物による散乱がなく電子移動度を高く保つことができる。
【0084】
上記した透明膜を用いた薄膜トランジスタにおいて、Al23,Y23、HfO2又はそれらの化合物を少なくとも二つ以上含む混晶化合物をゲート絶縁膜とすることが好ましい。
【0085】
ゲート絶縁薄膜とチャネル層薄膜との界面に欠陥が存在すると、電子移動度の低下及びトランジスタ特性にヒステリシスが生じる。
【0086】
また、ゲート絶縁膜の種類によりリーク電流が大きく異なる。
【0087】
このために、チャネル層に適合したゲート絶縁膜を選定する必要がある。Al23膜を用いればリーク電流を低減できる。
【0088】
また、Y23膜を用いればヒステリシスを小さくできる。
【0089】
さらに、高誘電率のHfO2膜を用いれば、電子移動度を大きくすることができる。
【0090】
また、これらの膜の混晶を用いて、リーク電流、ヒステリシスが小さく、電子移動度の大きなTFTを形成できる。
【0091】
また、ゲート絶縁膜形成プロセス及びチャネル層形成プロセスは、室温で行うことができるので、TFT構造としてスタガ構造及び逆スタガ構造いずれをも形成することができる。
【0092】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, TFT)は、ゲート端子、ソース端子、及びドレイン端子を備えた3端子素子で、セラミックス、ガラス、又はプラスチックなどの絶縁基板上に成膜した半導体薄膜を、電子又はホールが移動するチャネル層として用いる。
【0093】
この薄膜トランジスタはゲート端子に電圧を印加して、チャンネル層に流れる電流を制御し、ソース端子とドレイン端子間の電流をスイッチングする機能を有するアクティブ素子である。
【0094】
なお、本発明では、活性層の組成としてInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)やInGaO3(Zn1-xMgxO)m(mは6未満の自然数、0<x≦1)に限定されるものではない。電子キャリア濃度が1018/cm3未満であること、特にオン・オフ比が103超であり電子移動度が1cm2/(V・秒)超のトランジスタを構成できれば、In:Ga:(Zn+Mg)の比率は整数1:1:mでなくても構わない。
【0095】
(2)次に、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0096】
本実施の形態は、上記透明膜を用いた発光素子に関する。
【0097】
具体的には、上記透明膜である半導体を用いた TFTにより駆動される発光素子に関するものであり、特に有機ELを駆動して発光させる光源やディスプレイに関するものである。
【0098】
これにより、軽量で割れにくいプラスチック等の基板でも発光素子を提供できる。
【0099】
本発明の基本的構成をまず図7を用いて説明する。
【0100】
図7において、700は基板、701は本発明特有の半導体材料からなる活性層、702は第一透明電極、703は絶縁層、704は第二透明電極(ゲート電極)、705は本発明の駆動トランジスタ、706は保持容量である。
【0101】
また、707は走査線、708は平坦化膜、709は第1の電極としての下部透明電極、710は素子分離膜、711は有機層、712はホール輸送層、713は発光層、714は電子輸送層、715は第2の電極としての上部電極、716は保護層、717はカバーガラス、718はスイッチングトランジスタ、719は半導体層、720は第4透明電極、721は第5透明電極である。
【0102】
ここで、この図では有機EL素子の構成例を示しているが、無機ELでも同様な構成が可能である。
【0103】
まず、本実施の形態の半導体層(活性層)701には第一透明電極702(ソース電極兼保持容量706の電極)と第三透明電極716(ドレイン電極)が直接接合されている。
【0104】
半導体層701は、絶縁層703を介して第二透明電極704(ゲート電極)で制御される。
【0105】
発光部である有機層711(有機EL層)は下部透明電極709を介して第三透明電極716(ドレイン電極)へコンタクトホールを介して接続されている。
【0106】
下部透明電極709とTFT部分の間には平坦化膜708があり、電気的に絶縁されている。
【0107】
この平坦化膜708は単層である必要はない。
【0108】
有機層711(有機EL層)は、ホール輸送層712、発光層713及び電子輸送層714から構成されているが、この構成に何ら限定されるものではない。
【0109】
有機層711(有機EL層)の上部には上部電極715があり、TFTがON状態の時には有機層711(有機EL層)には電圧が印加されて発光に至る。
【0110】
上部電極715は、発光素子がボトムエミッションとして使用する場合には、金属電極を使用し両面発光をさせるには、透明電極を使用してもよい。その発光素子の目的によって変更することができる。
【0111】
また、TFTをON/OFFする走査線707は、発光部の下に位置するので本発明の透明電極にする必要がある。
【0112】
走査線707、第一透明電極702、第二透明電極704、第三透明電極716、下部透明電極709、さらに必要に応じて上部電極715は、InとGaとZnの内少なくとも1原子以上を含むように酸素流量等の堆積条件を調整した。電子キャリア濃度が1018/cm3以上となるようにもした。
【0113】
さらに、少なくとも一部が非晶質の酸化物であるようにした。
【0114】
また、走査線707、第一透明電極702、第二透明電極704、第三透明電極716、下部透明電極709は、電極の端部が電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも電極の下端部が長い向きにテーパーとなっている。
【0115】
また、必要に応じて上部電極715も電極の端部が電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも電極の下端部が長い向きにテーパーとなるようにした。
【0116】
本実施形態のIn−Ga−Zn−O系の活性層を用いることにより、電圧、電流ともに有機EL素子に十分な駆動力が得られるため、発光素子として有用である。
【0117】
図7ではTFT層上部に発光層を用いた例を示しているが、逆でも機能を果たす上で問題なければ構わない。
【0118】
この場合、発光層に隣接する下部電極は見かけ上は上部にあることになるが、機能上ドレイン電極と接続されていれば同じことである。
【0119】
特に、無機ELではプロセス耐性が有機ELと比較して強いので、逆の場合もありえる。
【0120】
図8は本発明の発光素子の画素部の平面を示す模式図である。
【0121】
図8において、901は駆動トランジスタ、902はスイッチングトランジスタ、903は保持容量、904は共通電極線、905は走査線である。
【0122】
図8において、駆動トランジスタ901、スイッチングトランジスタ902、保持容量903は透明である。
【0123】
これにより、画素部の電極が透明になり、発光層における発光が画素部を透過できるようになった。
【0124】
次に、ディスプレイ応用の構成例を図9を用いて説明する。
【0125】
図9において、81は有機層84を駆動するトランジスタ1であり、82は画素を選択するトランジスタ2である。
【0126】
また、コンデンサー83は選択された状態を保持するためのものであり、共通電極線87とトランジスタ2のソース部分との間に電荷を蓄え、トランジスタ1のゲートの信号を保持している。
【0127】
画素選択は走査電極線85と信号電極線86により決定される。画像信号がドライバー回路(不図示)から走査電極線85を通してゲート電極へパルス信号で印加されると同時に、別のドライバー回路(不図示)から信号電極86を通してパルス信号でトランジスタ82へと印加されて画素が選択される。
【0128】
そのとき、トランジスタ82がONとなり信号電極線86とトランジスタ82のソースの間にあるコンデンサー83に電荷が蓄積される。
【0129】
これによりトランジスタ81のゲート電圧が所望の電圧に保持されトランジスタ81はONになる。
【0130】
この状態は次の信号を受け取るまで保持される。
【0131】
トランジスタ81がONである状態の間、有機層84には電圧、電流が供給され続け発光が維持されることになる。
【0132】
この図9の例では1画素にトランジスタ2個、コンデンサー1個の構成であるが、性能を向上させるためにさらに多くのトランジスタ等を組み込んでも構わない。
【0133】
トランジスタ部分に、低温で形成でき透明のTFTであるIn−Ga−Zn−O系のTFTを用いることと、画素部の発光面側に位置する電極が全て透明電極とすることにより、高輝度な発光素子が得られることが重要である。
【0134】
以下、各構成要素について詳しく説明する。
【0135】
1.基板
一般的に発光素子にはガラス基板が用いられているが、本発明に用いる基板としては、基本的には平坦性があれば構わない。
【0136】
本発明で用いているTFTは低温で形成可能であるので、一般的にはアクティブマトリックスでは使用が困難であるプラスチック基板が使用可能である。
【0137】
これにより軽量で壊れにくい発光素子が得られるが、ある程度ならば曲げることも可能になる。
【0138】
これ以外にもSiのような半導体基板やセラミックス基板も利用可能である。また平坦であれば金属基板上に絶縁層を設けた基板も利用可能である。
【0139】
2.トランジスタ
活性層に関しては詳しく上記したようにIn−Ga−Zn−O系の半導体を用いる。
【0140】
この組成にMgなどを置換もしくは添加することが可能であるが、所望の特性すなわち電子キャリア濃度が1018/cm3未満であり、電子移動度が1cm2/(V・秒)超であれば構わない。
【0141】
活性層の形成には前述通りスパッタ法やパルスレーザー蒸着法が適しているが、生産性に有利な各種スパッタリング法がより好ましい。
【0142】
また、この活性層と基板の間には適宜バッファー層を挿入することも有効である。
【0143】
ゲート絶縁膜には前述したAl23,Y23、又はHfO2の1種、又はそれらの化合物を少なくとも二種以上含む混晶化合物が好ましいが、その限りではない。
【0144】
3.平坦化膜
下部電極の下地となる平坦化膜にはゲート絶縁層の素材をそのまま用いることが可能である。
【0145】
平坦化のためにそれ以外の絶縁層も形成可能であり、例えばポリイミド膜をスピンコートさせたり、酸化シリコンをプラズマCVD法やPECVD法、LPCVD法、もしくはアルコキシド等の塗布焼成でも形成可能である。
【0146】
平坦化膜にはソースやドレインを接続するためのコンタクトホールを形成することが適宜必要になる。
【0147】
4.透明電極層
第一透明電極層、第二透明電極層、第三透明電極層、下部透明電極層、必要に応じて上部電極及び発光面側に位置する走査線(走査電極)、信号線は、InとGaとZnの内少なくとも1原子以上を含むように酸素流量等の堆積条件を調整した。電子キャリア濃度が1018/cm3以上となるようにもした。さらに、少なくとも一部が非晶質の酸化物にした。
【0148】
また、電極の端部が、電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも長い向きに電極の下端部がテーパーとなっていることにより、段差による他の電極切れ(いわゆる段切れ現象)やリークパスを抑えることが可能となった。
【0149】
段差による他の電極切れ(いわゆる段切れ現象)は、電極が厚い場合に、電極の厚さから発生すると思われる。また、リークパスは隣接する絶縁層のカバーレッジの悪さから発生すると思われる。
【0150】
テーパーの角度については、電極の厚さと隣接する堆積膜(絶縁層、平坦化膜、保護膜等々)の厚さや素材によって決められるもので、一概には表せないが、金属電極使用時よりもテーパー面を長くするような角度にすべきである。
【0151】
発光層が有機ELに代表される電流注入型のものの場合には、その構成により好ましい電極がある。
【0152】
例えば、下部透明電極に接続される発光層が陽極の場合には仕事関数の大きな透明電極であることが好ましい。
【0153】
例としては、電子キャリア濃度が1018/cm3以上のITOや導電性ZnO、In−Zn−Oなどが挙げられる。また、電子キャリア濃度が1018/cm3以上のIn−Ga−Zn−O系も利用可能である。
【0154】
この場合には、TFTの場合とは異なりキャリア濃度は多いほど、例えば1019/cm3以上が好ましい。
【0155】
5.発光層
発光層としてはIn−Ga−Zn−O系のTFTで駆動できるものであれば限定されるものではないが、特に有機ELが好都合である。
【0156】
本発明に用いる有機層711は、一般的には、
ホール輸送層/発光層+電子輸送層(電子輸送機能を有する発光層の意味)
ホール輸送層/発光層/電子輸送層
ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層
ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
などの複数層の構成となっている。
【0157】
この他電子障壁層や付着改善層なども挿入する場合がある。
【0158】
代表して、ホール輸送層712/発光層713/電子輸送層714を図7に記載したが、何ら限定するものではない。
【0159】
発光層部分には蛍光と燐光を用いる場合があるが発光効率から燐光を用いるのが有効である。
【0160】
燐光材料としてはイリジウム錯体が有用である。
【0161】
また、用いる分子としては低分子系、高分子系双方利用であり、低分子系では一般的に蒸着で、高分子系はインクジェットや印刷で形成可能である。
【0162】
例としては、低分子系ではアミン錯体、アントラセン類、希土類錯体、貴金属錯体、高分子系としてはπ共役系と色素含有ポリマーが挙げられる。
【0163】
電子注入層としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属及びそれらの化合物やアルカリ金属をドープした有機層などが挙げられる。また電子輸送層としてはアルミ錯体やオキサジアゾール、トリアゾール類、フェナントロリン類などが挙げられる。
【0164】
ホール注入層としてはアリールアミン類、フタロシアニン類、ルイス酸ドープ有機層が挙げられ、ホール輸送層としてはアリールアミン類が挙げられる。
【0165】
6.上部電極
上部電極は両面発光タイプかボトムエミッションタイプか、及び陰極や陽極かで好ましい材料が異なってくる。
【0166】
両面発光タイプでは透明であることが必要であり、本発明のInとGaとZnの内少なくとも1原子以上を含み、かつ電子キャリア濃度が1018/cm3以上となるよう酸素流量等の堆積条件を調整した。さらに、少なくとも一部が非晶質の酸化物である。そのような導電性物質としては、ZnO、In−Zn−O又はITOなどが挙げられる。
【0167】
また、電子キャリア濃度が1018/cm3以上のIn−Ga−Zn−O系も利用可能である。
【0168】
また、アルカリ金属やアルカリ土類金属をドープした合金を数10nm以下に形成して、その上部に本発明の透明電極を形成することにより上部電極とすることができる。
【0169】
ボトムエミッションタイプの場合には透明である必要がないので陽極の場合には仕事関数の大きなAu合金やPt合金等が、陰極の場合にはAg添加Mg、Li添加Al、シリサイド、ホウ化物、窒化物などが利用可能である。
【0170】
また、上部電極は、電極の端部が、電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも長い向きに電極の下端部がテーパーとなっている必要は必ずしもなく、必要に応じてテーパー形状とする。
【0171】
7.その他電極線
発光面に位置しない走査電極線や信号電極線等の電極線としては、AlやCr、Wなどの金属やAl合金、WSi等のシリサイドなどが利用可能である。
【0172】
また、電極の端部が、電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも長い向きに電極の下端部がテーパーとなっている必要は必ずしもないが、電極の厚さが厚い場合にはテーパー形状をとる。
【0173】
発光素子の作製について(例)
以下にドレイン電極と下部電極を配線を介して接続し、有機ELを用いた場合の発光素子の作製例を説明する。
【0174】
(トランジスタ形成)
パルスレーザー蒸着法により、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、ガラス基板上にIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物半導体薄膜を酸素分圧は6Pa、室温で60nm堆積させる。
【0175】
その上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、パルスレーザー堆積法により電気伝導度の大きなInGaO3(ZnO)4それぞれ10nm積層する。
【0176】
その上にソース、ドレイン電極としてIn-Zn-Oをスパッタ法により150nm形成する。
【0177】
さらにゲート絶縁膜としてY23膜を、ゲート電極としてIn-Zn-Oをスパッタ法によりそれぞれ150nm、150nm成膜する。
【0178】
上記一連のプロセスにおいてフォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により各々の層を所望のサイズに形成しておく。
【0179】
この際、電極端部が電極の上端部から下地に向けて下ろした垂線よりも電極の下端部が長い向きにテーパーとなるようフォトリゾグラフィー法のレジスト条件及びリフトオフ条件をあらかじめつかんでおく。
【0180】
さらに絶縁層を同様の方法で成膜するが、その際もドレイン電極用のコンタクトホールを形成しておく。
【0181】
(下部電極層形成)
その後にITOをスパッタリング法により350nm形成して下部電極とするが、この際にドレイン電極と下部電極をコンタクトホールを介して接合する。
【0182】
(有機EL発光層)
次に抵抗蒸発法により4,4’−ビス[N,N−ジアミノ]−4”−フェニルートリフェニルアミンをホール注入層として55nm形成する。
【0183】
ホール注入層上にホール輸送層である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル膜を20nmを形成する。
【0184】
ホール輸送層上に発光層として4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル膜を45nmを形成し、発光層上に電子輸送層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム膜を25nm成膜し、全体で有機EL発光層とする。
【0185】
(上部電極)
最後に2元蒸着法によりAlとAgの合金を50nm、Alを50nm成膜して上部電極とする。
【0186】
上記した素子にプローブを当てて駆動すると、基板裏側から、即ちボトムエミッションタイプで青色の発光が得られる。
【0187】
なお、酸素欠損量を制御して所望の電子キャリア濃度を達成できていることが重要である。
【0188】
上記においては、透明酸化物膜の酸素量(酸素欠損量)の制御を成膜時に酸素を所定濃度含む雰囲気中で行うことで制御しているが、成膜後酸化物膜を酸素を含む雰囲気中で後処理して酸素欠損量を制御することも好ましい。
【0189】
効率的に酸素欠損量を制御するには、酸素を含む雰囲気中の温度を0℃以上300℃以下、好ましくは、25℃以上、250℃以下、さらに好ましくは100℃以上200℃以下で行うのがよい。
【0190】
成膜時にも酸素を含む雰囲気中で行い、かつ成膜後の後処理でも酸素を含む雰囲気中で後処理してもよい。
【0191】
また、所定の電子キャリア濃度(1018/cm3未満)を得られるのであれば、成膜時には酸素分圧制御は行わないで、成膜後の後処理を酸素を含む雰囲気中で行ってもよい。
【0192】
なお、電子キャリア濃度の下限としては、得られる酸化物膜をどのような素子や回路あるいは装置に用いるかにもよるが、例えば1014/cm3以上である。
【0193】
なお、上記の実施形態では、画素として駆動トランジスタの他に保持容量と、スイッチングトランジスタを含む構成を記載しているが、これに限定されず、駆動トランジスタのみの構成でも構わない。
【0194】
以上では、In−Ga−Znを含み構成されるアモルファス酸化物を例示して説明しているが、本発明には、Sn、In、Znの少なくとも1種類の元素を含み構成されるアモルファス酸化物に適用できる。
【0195】
さらに、アモルファス酸化物の構成元素の少なくとも一部にSnを選択する場合、Snを、Sn1-xM4x(0<x<1、M4は、Snより原子番号の小さい4族元素のSi、Ge又はZrから選ばれる。)に置換することもできる。
【0196】
また、アモルファス酸化物の構成元素の少なくとも一部にInを選択する場合、InをIn1-yM3y(0<y<1、M3はLu又はInより原子番号の小さい3族元素のB、Al、Ga又はYから選ばれる。)に置換することもできる。
【0197】
また、アモルファス酸化物の構成元素の少なくとも一部にZnを選択する場合、Znを、Zn1-zM2z(0<z<1、M2は、Znより原子番号の小さい2族元素のMg又はCaから選ばれる。)に置換することもできる。
【0198】
適用できるアモルファス材料は、具体的にはSn−In−Zn酸化物、In−Zn−Ga−Mg酸化物、In酸化物、In−Sn酸化物、In−Ga酸化物、In−Zn酸化物、Zn−Ga酸化物、Sn−In−Zn酸化物等である。
【0199】
もちろん、構成材料の組成比は必ずしも1:1である必要は無い。
【0200】
なお、ZnやSnは、単独ではアモルファスを形成し難い場合があるが、Inを含ませることによりアモルファス層が形成され易くなる。
【0201】
例えば、In−Zn系の場合は、酸素を除く原子数割合が、Inが約20原子%以上含まれる組成にするのがよい。
【0202】
Sn−In系の場合は、酸素を除く原子数割合が、Inが約80原子%以上含まれる組成にするのがよい。
【0203】
Sn−In−Zn系の場合は、酸素を除く原子数割合が、Inが約15原子%以上含まれる組成にするのがよい。
【0204】
また、アモルファスとは、測定対象薄膜に、入射角度0.5度程度の低入射角によるX線回折を行った場合に明瞭な回折ピークが検出されない(即ちハローパターンが観測される)ことで確認できる。
【0205】
なお、本発明は、上記した材料を電界効果型トランジスタのチャネル層に用いる場合に、当該チャネル層が微結晶状態の構成材料を含むことを除外するものではない。
【実施例1】
【0206】
次に実施例により発光素子を作製する例について詳しく説明する。
【0207】
まず、上記の実施形態に適用できる透明膜の製造方法について説明する。
【0208】
(アモルファスIn−Ga−Zn−O薄膜の作製)
KrFエキシマレーザーを用いたパルスレーザー蒸着法により、InGaO3(ZnO)4組成を有する多結晶焼結体をターゲットにして、ガラス基板(コーニング社製1737)上にIn−Ga−Zn−O系アモルファス酸化物半導体薄膜を堆積させた。
【0209】
チャンバー内酸素分圧は6.1Pa、基板温度は23℃である。
【0210】
薄膜のすれすれ入射X線回折(薄膜法、入射角0.5度)を行ったところ、明瞭な回折ピークは認めらなかったことから、作製したIn−Ga−Zn−O系薄膜はアモルファスであるといえる。
【0211】
さらに、X線反射率測定を行い、パターンの解析を行った結果、薄膜の平均二乗粗さ(Rrms)は約0.5nmであり、膜厚は約125nmであることが分かった。
【0212】
蛍光X線(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn:Ga:Zn=0.98:1.02:4であった。
【0213】
電気伝導度は、約10-2S/cm未満であった。
【0214】
電子キャリア濃度は約1016/cm3以下、電子移動度は約5cm2/(V・秒)と推定される。
【0215】
光吸収スペクトルの解析から、作製したアモルファス薄膜の禁制帯エネルギー幅は約3.2eVであった。
【0216】
以上のことから、作製したIn−Ga−Zn−O系薄膜は、結晶のInGaO3(ZnO)4の組成に近いアモルファス層であり、酸素欠損が少なく、電気伝導度が小さな透明な平坦薄膜であることが分かった。
【0217】
(MISFET素子の作製)
図5に示すトップゲート型MISFET素子を作製した。
【0218】
まず、ガラス基板(1)上に上記のアモルファスIn−Ga−Zn−O薄膜の作製法により、チャンネル層(2)として用いる厚さ120nmの半絶縁性アモルファスInGaO3(ZnO)4膜を形成した。
【0219】
さらにその上に、チャンバー内酸素分圧を1Pa未満にして、パルスレーザー堆積法により電気伝導度の大きなInGaO3(ZnO)4及び金膜をそれぞれ30nm積層し、フォトリゾグラフィー法とリフトオフ法により、ドレイン端子(5)及びソース端子(6)を形成した。
【0220】
最後にゲート絶縁膜(3)として用いるY23膜を電子ビーム蒸着法により成膜し(厚み:100nm、比誘電率:約15、リーク電流密度:0.5MV/cm印加時に10-3A/cm2)、その上に金を成膜し、フォトリソグラフィー法とリフトオフ法により、ゲート端子(4)を形成した。
【0221】
(MISFET素子の特性評価)
図6に、室温下で測定したMISFET素子の電流−電圧特性を示す。
【0222】
ドレイン電圧VDSの増加に伴い、ドレイン電流IDSが増加したことからチャネルがn型半導体であることが分かる。
【0223】
これは、アモルファスIn−Ga−Zn−O系半導体がn型であるということ矛盾しない。
【0224】
DSはVDS=6V程度で飽和(ピンチオフ)する典型的な半導体トランジスタの挙動を示した。
【0225】
利得特性を調べたところ、VDS=4V印加時におけるゲート電圧VGSの閾値は約−0.5Vであった。
【0226】
また、VG=10V時には、IDS=3.1×10-5Aの電流が流れた。
【0227】
これはゲートバイアスにより絶縁体のIn−Ga−Zn−O系アモルファス半導体薄膜内にキャリアを誘起できたことに対応する。トランジスタのオン・オフ比は、103超であった。
【0228】
また、出力特性から電界効果移動度を算出したところ、飽和領域において約6.5cm2(Vs)-1の電界効果移動度が得られた。
【0229】
作製した素子に可視光を照射して同様の測定を行ったが、トランジスタ特性の変化は認められなかった。
【0230】
このことから、トランジスタ領域を光から遮断する必要がなく、ボトムエミッションタイプでも開口部として利用できることが分かる。
【0231】
上記方法とほぼ同じ方法でMISFET素子を形成する。
【0232】
ただし、電極及び画素部の走査線は全て所望のパルスレーザー堆積法により透明電極(ここではITO使用)を使用し、電極端部は本発明のテーパー形状を形成できるよう、フォトリゾグラフィー法のレジスト条件及びリフトオフ条件を使用した。
【0233】
また、絶縁層は、駆動トランジスタ部のゲート絶縁層と保持容量部の絶縁層を兼用してもよく、又は所望の異なる絶縁層を用いてもよい。本実施例では、同一の絶縁層を用いた。
【0234】
また、MISFET素子形成した後、平坦化膜をパルスレーザー堆積法により400nm成膜する。この際、ドレイン端子と下部電極を接合させるためのコンタクトホールを形成しておく。
【0235】
次に再び、パルスレーザー堆積法により透明電極(ここではITO使用)を420nm形成し、下部電極とする。
【0236】
この下部電極はコンタクトホールを介してドレイン電極と接続されている。
【0237】
次に、抵抗蒸発法によりホール注入層として4,4’−ビス[N,N−ジアミノ]−4”−フェニルートリフェニルアミンを55nm成膜する。
【0238】
ホール注入層上にホール輸送層である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル膜を20nm成膜する。
【0239】
次に、発光層として4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル膜を25nm、さらにその上に電子輸送層としてトリス(8−キノリノール)アルミニウム膜を15nm形成して全体で有機EL発光層とする。
【0240】
最後に抵抗加熱蒸着法によりAlとLiの合金を50nm形成し、その上Alを200nm成膜して上部電極とする。
【0241】
上記した素子にプローブを当てて駆動すると、基板下面から、即ちボトムエミッションタイプで青色の発光が得られた。
【0242】
また同様の方法で、複数の画素を有する発光素子を作成し駆動した。
【0243】
高輝度のきれいな青色の発光が得られた。
【実施例2】
【0244】
次に両面発光タイプの発光素子を作製する例について説明する。
【0245】
上記方法とほぼ同じ方法でMISFET素子を形成する。
【0246】
ただし上部電極は抵抗加熱蒸着法によりマグネシウム銀合金を6nm形成し、パルスレーザー堆積法により透明電極(ここではITO使用)を20nm形成し、上部透明電極とする。
【0247】
全体で両面発光する有機EL発光層とする。
【0248】
上記した素子にプローブを当てて駆動すると、両面から、即ち高輝度の青色の発光が得られる。
【0249】
[比較例1]
前記実施例1と同様な方法で、複数の画素を有する発光素子を、本発明の一つである電極端部のテーパー形状をあえて形成しない方法で作成した。
【0250】
ゲート電極とドレイン電極、ソース電極がほぼリーク状態になり、ON状態となり有機層は発光しつづけ、OFF状態にできない部分が数箇所あり、画質としては、実施例1に比べ若干劣っていた。
【0251】
また、上記の説明では、In−Ga−Znを含み構成される。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明に係る発光素子は、プラスチックフィルムをはじめとするフレキシブル素材に半導体の薄膜を形成し、フレキシブル・ディスプレイをはじめ、ICカードやIDタグなどに幅広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】パルスレーザー蒸着法で成膜したIn−Ga−Zn−O系アモルファス膜のキャリア電子密度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図2】アルゴンガスを用いたスパッタ法で成膜したIn−Ga−Zn−O系アモルファス膜の電気伝導度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図3】パルスレーザー蒸着法で成膜したIn−Ga−Zn−O系アモルファス膜のキャリア電子密度と電子移動度の関係を示すグラフである。
【図4】酸素分圧0.8Paの雰囲気でパルスレーザー蒸着法で成膜したInGaO3(Zn1-xMgxO)のx=0.8の値に対するキャリア電子密度と成膜中の酸素分圧の関係を示すグラフである。
【図5】実施例1で作製したトップゲート型MISFET素子構造を示す模式図である。
【図6】実施例1で作製したトップゲート型MISFET素子の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図7】本発明の発光素子の断面を示す模式図である。
【図8】本発明の発光素子の画素部の平面を示す模式図である。
【図9】本発明の発光素子のディスプレイとして用いる場合の回路図である。
【符号の説明】
【0254】
700 基板
701 半導体層(活性層)
702 第一透明電極
703 絶縁層
704 第二透明電極
705 駆動トランジスタ
706 保持容量
707 走査線
708 平坦化膜
709 下部透明電極
710 素子分離膜
711 有機層(有機EL層)
712 ホール輸送層
713 発光層
714 電子輸送層
715 上部電極
716 第三透明電極
717 カバーガラス
718 スイッチングトランジスタ
719 半導体層
720 第4透明電極
721 第5透明電極
722 第6透明電極
723 保護層
81 トランジスタ1
82 トランジスタ2
83 コンデンサー(保持容量)
84 有機層(有機EL層)
85 走査電極線
86 信号電極線
87 共通電極線
901 駆動トランジスタ
902 スイッチングトランジスタ
903 保持容量
904 共通電極線
905 走査線
906 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor TFT)で発光層における発光を駆動し、該発光層を第1の電極と第2の電極とで挟む発光素子において、
前記TFTの活性層がInとGaとZnを含み、かつ電子キャリア濃度が1018/cm3未満であり、かつ少なくとも一部が非晶質の酸化物であり、かつ前記TFTのドレイン電極に前記発光層の一部が電気的に接続され、
少なくとも前記TFTのソース、ドレイン及びゲート電極と、前記第1の電極と、前記第1の電極と前記ドレイン電極とを接続する電極とが透明であることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2の電極も透明であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
信号線と前記ソース電極とを接続するソース接続線も透明であることを特徴とする請求項1又は2記載の発光素子。
【請求項4】
走査線と前記ゲート電極とを接続するゲート接続線も透明であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の発光素子。
【請求項5】
前記TFTのソース、ドレイン及びゲート電極と、前記第2の電極及び前記第1の電極が、少なくともInとGaとZnの元素の内一つを含み、かつ電子キャリア濃度が1018/cm3以上であり、かつ少なくとも一部が非晶質の酸化物であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項6】
保持容量と、スイッチングトランジスタとをさらに有しており、前記保持容量と、前記スイッチングトランジスタのソース、ドレイン及びゲート電極も透明であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項7】
前記保持容量と、前記スイッチングトランジスタのソース、ドレイン及びゲート電極が、少なくともInとGaとZnの元素の内一つを含み、かつ電子キャリア濃度が1018/cm3以上であり、かつ少なくとも一部が非晶質の酸化物であることを特徴とする請求項4記載の発光素子。
【請求項8】
前記TFTのソース、ドレイン及びゲート電極が透明導電性酸化物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1の電極が透明導電性酸化物であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の発光素子。
【請求項10】
前記第2の電極が透明導電性酸化物であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の発光素子。
【請求項11】
前記保持容量の電極が透明導電性酸化物であることを特徴とする請求項7記載の発光素子。
【請求項12】
前記発光層が有機EL素子であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の発光素子。
【請求項13】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor TFT)で発光層における発光を駆動し、該発光層を第1の電極と第2の電極とで挟む発光素子において、
少なくとも前記TFTのソース、ドレイン及びゲート電極の上面の面積よりも下面の面積の方が広いことを特徴とする発光素子。
【請求項14】
保持容量と、スイッチングトランジスタとをさらに有しており、
前記保持容量と、前記スイッチングトランジスタのソース、ドレイン及びゲート電極の上面の面積より下面の面積の方が広いことを特徴とする請求項13記載の発光素子。
【請求項15】
前記各電極のうちの少なくとも一つが透明導電性酸化物であることを特徴とする請求項14記載の発光素子。
【請求項16】
前記第2の電極以外の電極のうちの少なくとも一つが透明導電性酸化物でできていることを特徴とする請求項13記載の発光素子。

































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−73311(P2007−73311A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258265(P2005−258265)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】