説明

組み付け検査方法

【課題】簡単な構造で、製造ライン上で部品の組み付けの良否を精度良く検査することができる方法を提供する。
【解決手段】製造ライン上で部品の組み付けを検査する方法であって、予め、組み付ける部品の基準となるマスタ画像を複数撮影しておき、部品を実際に組み付ける際の実画像を複数撮影し、各マスタ画像と各実画像との相関値をそれぞれ求め、各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定する。実画像と相関値が最大のマスタ画像を抽出して組み付けられた部品の品番を特定して、特定された部品と組み付けられるべき部品との品番とを照合し、組み付けられるべき部品のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、組み付けた部品が組み付けられるべき部品と一致しているかを判定し、組み付けられるべきでない部品の複数のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、組み付けた部品が組み付けられるべきでない部品と一致していないかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み付け検査方法に関し、特に、組み付けライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否を検査する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、自動車の部品の組み付けラインにおいては、ハンガなどの吊り下げた状態で搬送する吊りタイプコンベアや、パレットなどの上に載置した状態で搬送するフロアコンベアにより、車両を移動させながら、各種部品を組み付けることが一般に行われている。また、自動車の部品をある程度組立てて自動車に組み付けるための所謂サブアセンブリ化することも一般に行われている。このサブアセンブリ化する場合においては、その自動車の車種に応じて異なる部品を組み付ける必要がある。そして、このような組み付けラインにおいては、異なる種類の自動車が同じコンベア上に搬送され、その自動車に応じた部品を組み付けることが一般に行われている。そのため、部品を組み付ける際には、例えば、組み付けられるべき部品を組み付け忘れていないか、組み付けられる部品とは異なる部品が組み付けられていないかなど、誤組み付けがないかを確認するための部品の組み付け検査が必要である。この組み付け検査として、部品を組み付けたであろう箇所を撮影し、その画像に基づいて組み付けが正しいか否かを判定することが考えられるが、組み付けライン上で部品を撮影すると、撮影位置や照度などの撮影環境によってバラツキが生じることから、画像から正確に判定するのは困難であるため、結局、従来では一般に組み付け作業者の目視により組み付け検査を行っていた。
【0003】
また、部品の正誤等を検査する誤欠品検査装置として、特許文献1が知られている。特許文献1には、ワークに組み付けられた部品の撮像画像から輪郭線のパターンを抽出し、その抽出パターンを予め用意された標準パターンと比較することにより上記部品の正誤等を検査する誤欠品検査装置において、上記部品毎に複数種類の標準パターンを記憶する記憶装置と、上記抽出パターンを、上記記憶装置に記憶された撮像対象の部品に対する全ての標準パターンと照合し、標準パターン毎にパターンの一致率を演算する演算手段と、上記演算手段で演算されたパターンの一致率に基づいて、上記部品の正誤等の検査を行う検査手段と、を備えたことを特徴とする誤欠品検査装置が開示されている。また、特許文献1には、上記構成に加えて、上記検査手段は、上記演算手段で演算されたパターンの一致率を上記標準パターン毎に予め設定された所定の閾値と比較し、撮像対象となった種類に対応する部品の標準パターンに対するパターンの一致率のみが上記閾値以上のとき、上記部品の検査結果を合格とすることを特徴とする誤欠品検査装置も開示されている。
【0004】
そして、特許文献1には、「上記構成の誤欠品検査装置によれば、ワークに組み付けられた部品の撮像画像から抽出された輪郭線のパターンは、記憶装置に記憶された撮像対象の部品に対する全ての標準パターンと照合され、標準パターン毎にパターンの一致率が演算される。そして、パターンの一致率は、例えば標準パターン毎に予め設定された所定の閾値と比較され、撮像対象となった種類に対応する部品の標準パターンに対するパターンの一致率のみが閾値以上のとき、部品の検査結果が合格とされる。」などと記載されている(0012)。また、特許文献1には、「標準パターンは、上述したEGRバルブ乃至EXインシュレータの8種類の組付部品7に対してそれぞれ必要数ずつ(各組付部品について複数種類の形状の部品がある場合、その種類数ずつ)用意されている。」などと記載されている(0024)。
【0005】
すなわち、特許文献1において、記憶装置に記憶される部品毎の複数種類の標準パターンとは、各組付部品について複数種類の形状の部品がある場合、部品の種類毎にそれぞれ単独の標準パターンだけを撮影することを意味している。また、特許文献1において、部品の正誤等の検査を行う検査手段では、演算手段で演算されたパターンの一致率を閾値と比較することのみに基づいて合否の判定を行っていた。
【0006】
【特許文献1】特開2005‐147974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の技術のうち、作業者の目視により組み付け検査を行う場合にあっては、作業者の過ちによって誤組み付けを見逃す虞があるという問題があった。
【0008】
また、上記従来の技術のうち、特許文献1にあっては、上述したように、各組付部品について複数種類の形状の部品がある場合、各部品の種類毎にそれぞれ単独の標準パターンを撮影していたため、組み付けライン上で特に移動中に部品を撮影すると、撮影位置や照度などの撮影環境によってバラツキが生じることから、誤欠品検査を精度良く行うことが困難であるという問題があった。また、特許文献1にあっては、部品の正誤等の検査を行う検査手段で、演算手段で演算されたパターンの一致率のみに基づいて合否の判定を行っており、しかも、パターンの一致率を閾値と比較する手法のみで判定していたため、閾値が適正でない場合に誤欠品検査を精度良く行うことが困難であり、かかる閾値を適正に設定するのが容易ではないなどの問題もあった。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、製造ライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否を精度良く検査することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の組み付け検査方法は、組み付けライン上で部品の組み付けを検査する方法であって、予め、組み付ける部品の基準となるマスタ画像を複数撮影し、部品を実際に組み付ける際の実画像を複数撮影し、各マスタ画像と各実画像との相関値をそれぞれ求め、各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予め撮影された組み付ける部品のそれぞれについて基準となる複数のマスタ画像と、部品を実際に組み付ける際に撮影された複数の実画像との相関値をそれぞれ求めて、複数のマスタ画像と複数の実画像との各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定するので、製造ライン上で撮影環境に影響されることなく正しく部品を組み付けたか否かの良否を精度良く検査することが可能な方法を提供することができる。
【0012】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に相当し、(3)項が請求項3に相当し、(4)項が請求項4に相当し、(5)項が請求項5に相当し、(6)項が請求項6に相当し、(7)項が請求項7に相当し、(8)項が請求項8に相当し、(9)項が請求項9に相当する。
【0013】
(1) 組み付けライン上で部品の組み付けを検査する方法であって、
予め、組み付ける部品の基準となるマスタ画像を複数撮影し、
部品を実際に組み付ける際の実画像を複数撮影し、
各マスタ画像と各実画像との相関値をそれぞれ求め、
各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定することを特徴とする組み付け検査方法。
【0014】
(1)項に記載の組み付け検査方法では、予め撮影された組み付ける部品の基準となる複数のマスタ画像と、部品を実際に組み付ける際に複数撮影された実画像との相関値をそれぞれ求めて、各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定するので、製造ライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否を精度良く検査することが可能な方法を提供することができる。
【0015】
(2) 各相関値を複数の手法でそれぞれ評価することにより、前記部品の組み付けの良否を判定することを特徴とする(1)項に記載の組み付け検査方法。
【0016】
(2)項に記載の組み付け検査方法では、(1)項に記載の発明において、各相関値を複数の手法によりそれぞれ評価して前記部品の組み付けの良否を判定するので、製造ライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否をより精度良く検査することが可能な方法を提供することができる。
【0017】
(3) 前記部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法の一つが、
複数のマスタ画像の中から実画像と相関値が最大のマスタ画像を抽出して、該抽出されたマスタ画像に基づいて組み付けられた部品の品番を特定し、
該特定された部品の品番と、組み付けられるべき部品の品番とを照合することにより、前記判定を行うものであることを特徴とする(2)項に記載の組み付け検査方法。
【0018】
(3)項に記載の組み付け検査方法では、(2)項に記載の発明において、複数のマスタ画像の中から実画像と相関値が最大のマスタ画像を抽出して、該抽出されたマスタ画像に基づいて組み付けられた部品の品番を特定し、該特定された部品の品番と、組み付けられるべき部品の品番とを照合することにより、組み付けられた部品が組み付けられるべき部品であるか否かが判定できる。
【0019】
(4) 前記部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法の一つが、
複数のマスタ画像のうちで組み付けられるべき部品のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、該相関値のなかから最大の相関値を抽出し、
該最大の相関値に基づいて、組み付けた部品が組み付けられるべき部品と一致しているかを判定することを特徴とする(2)項または(3)項に記載の組み付け検査方法。
【0020】
(4)項に記載の組み付け検査方法では、(2)項または(3)項に記載の発明において、複数のマスタ画像のうちで組み付けられるべき部品のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、該相関値のなかから最大の相関値を抽出することにより、該最大の相関値から、組み付けた部品が組み付けられるべき部品と一致しているかを判定することができる。
【0021】
(5) 前記部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法の一つが、
複数のマスタ画像のうちで組み付けられるべきでない部品の複数のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、該相関値のなかから最大の相関値を抽出し、
該最大の相関値に基づいて、組み付けた部品が組み付けられるべきでない部品と一致していないかを判定することを特徴とする(2)〜(4)項のいずれかに記載の組み付け検査方法。
【0022】
(5)項に記載の組み付け検査方法では、(2)〜(4)項のいずれかに記載の発明において、複数のマスタ画像のうちで組み付けられるべきでない部品の複数のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、該相関値のなかから最大の相関値を抽出することにより、該最大の相関値から、組み付けた部品が組み付けられるべきでない部品と一致していないかを判定することができる。なお、部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法として、(3)項〜(5)項に記載された手法を一組として行うことが望ましい。
【0023】
(6) 各マスタ画像と各実画像との相関値を、予め設定されたしきい値と照合することにより、前記部品の組み付けの良否の判定を行うことを特徴とする(4)項または(5)項に記載の組み付け検査方法。
【0024】
(6)項に記載の組み付け検査方法では、(4)項または(5)項に記載の発明において、各マスタ画像と各実画像との相関値を、予め設定されたしきい値と照合し比較することにより、前記部品の組み付けの良否を数値化して明確に判定することができる。
【0025】
(7) 組み付けられるべき部品に関する最大の相関値と、組み付けられるべきでない部品に関する最大の相関値との少なくとも一方のデータを各部品毎に蓄積して、
該データの傾向を解析し、マスタ画像が適正であるか否かを判定して、
マスタ画像が適正でない場合には該マスタ画像を適正なマスタ画像に差替えることを特徴とする(4)項または(5)項に記載の組み付け検査方法。
【0026】
(7)項に記載の組み付け検査方法では、(4)項または(5)項に記載の発明において、組み付けられるべき部品に関する最大の相関値と、組み付けられるべきでない部品に関する最大の相関値との少なくとも一方のデータを各部品毎に蓄積して、該データの傾向を解析し、マスタ画像が適正であるか否かを判定することにより、マスタ画像が適正でない場合には該適正でないマスタ画像を適正なマスタ画像に差替えることができ、したがって、製造ライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否を精度良く検査することが可能な方法を提供することができる。
【0027】
(8) 組み付けられるべき部品に関する最大の相関値と、組み付けられるべきでない部品に関する最大の相関値との少なくとも一方のデータを各部品毎に蓄積して、
該データの傾向を解析し、しきい値が適正であるか否かを判定して、
しきい値が適正でない場合にはしきい値を設定しなおすことを特徴とする(6)項に記載の組み付け検査方法。
【0028】
(8)項に記載の組み付け検査方法では、(6)項に記載の発明において、組み付けられるべき部品に関する最大の相関値と、組み付けられるべきでない部品に関する最大の相関値との少なくとも一方のデータを各部品毎に蓄積して、該データの傾向を解析し、しきい値が適正であるか否かを判定することにより、しきい値が適正でない場合にはしきい値を設定しなおすことができ、したがって、製造ライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否を精度良く検査することが可能な方法を提供することができる。
【0029】
(9) 部品にその識別情報を表す表示を設け、該表示のマスタ画像と実画像とを撮影することを特徴とする(1)項〜(8)項のいずれかに記載の組み付け検査方法。
【0030】
(9)項に記載の組み付け検査方法では、(1)項〜(8)項のいずれかに記載の発明において、部品に色彩や、文字、記号、その他の標章など、その識別情報を表す表示を設け、該表示のマスタ画像と実画像とを撮影することにより、撮影されるマスタ画像と実画像とが明確となるため、製造ライン上で正しく部品を組み付けたか否かの良否をより精度良く検査することが可能な方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の一形態を図1〜図10に基づいて詳細に説明する。図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の組み付け検査方法は、概略、製造ライン10上で部品の組み付けを検査するものであって、カメラなどの画像センサ20によって、予め、そのライン10で組み付ける各種類A〜Eの部品の基準となるマスタ画像をそれぞれ複数(図2の画像1〜3)撮影し記憶しておき(図1のS1)、部品aを実際に組み付ける際の実画像を複数(図2の画像1〜3)撮影し(図1のS2)、各マスタ画像(図2の部品A〜Eの画像1〜3)と各実画像(図2の部品aの画像1〜3)との相関値をそれぞれ求め(図1のS3)、各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定する(図1のS4)ものである。
そして、部品の組み付けの良否を判定する(図1のS4)ための手法として、複数のマスタ画像(図2の部品A〜Eの画像1〜3)の中から実画像(図2の部品aの画像1〜3)と相関値が最大のマスタ画像を抽出して(図4のS321)、この抽出されたマスタ画像に基づいて組み付けられた部品aの品番を特定し(図4のS322)、この特定された部品aの品番と、組み付けられるべき部品の品番とを照合する(図4のS323)手法(以下、この手法を相対評価(図3のS32)という)と、複数のマスタ画像(図2の部品A〜Eの画像1〜3)のうちで組み付けられるべき部品のマスタ画像と各実画像(部品aの画像1〜3)との相関値を求めて、これらの相関値のなかから最大の相関値を抽出し(図5のS331)、この最大の相関値に基づいて、組み付けた部品aが組み付けられるべき部品と一致しているかを判定する手法(以下、この手法を絶対評価A(図3のS33)という)と、複数のマスタ画像(図2の部品A〜Eの画像1〜3)のうちで組み付けられるべきでない部品の複数のマスタ画像と各実画像(図2の部品aの画像1〜3)との相関値を求めて、これらの相関値のなかから最大の相関値を抽出し(図6のS341)、この最大の相関値に基づいて、組み付けた部品が組み付けられるべきでない部品と一致していないかを判定する手法(以下、この手法を絶対評価B(図3のS34)という)と、をそれぞれ各実画像(図3においては実画像1〜N)について行うことにより、部品の組み付けの良否を判定するものである。そして、上記の絶対評価Aと絶対評価Bとにおいては、各マスタ画像(図2の部品A〜Eの画像1〜3)と各実画像(図2の部品aの1〜3)との相関値を、予め設定されたしきい値と照合し比較する(図5のS332および図6のS342)ものである。
上記各マスタ画像(図2の部品A〜Eの画像1〜3)と各実画像(図2の部品aの画像1〜3)を撮影するにあたり、組み付け部品に他の品番の部品と区別するために、部品毎に異なる色彩を着色された色表示(カラーペイント)、部品の形状、あるいは部品の寸法を画像から検知したり、その部品の品番などを表す文字・コードなどの識別情報を示す表示Sなどを部品に取付け、この表示Sを撮影した画像データに基づいて部品の組み付けの良否を判定することができる。
【0032】
検査対象となる組み付けられた部品としては、例えば、図8に参照されるように、自動車のサスペンションとデファレンシャルギヤなどを予め組付けることによりモジュール化してなるサブアセンブリなどがある。検査対象は、例えば図7に参照されるように、パレットや治具などに支持された状態で組み付けライン10を構成するコンベア上を連続してまたは断続的に搬送されて、各工程で作業者イ、ロやロボットなどによって所定の部品、すなわち自動車の場合にはその自動車に対応する所定の部品が組み付けられる。ここで、図7に示された実施の形態における検査装置では、作業者イが一の工程で部品を組み付けてから、次の工程の作業者ロによってさらに部品を組み付けるために組み付けライン10の両者イ、ロの間で撮影できるように設置されたカメラなどの画像センサ20と、この画像センサ20により撮影された画像あるいは検知された画像データを後述するように演算処理して記憶し、その内容に基づいて所定の判定を行う処理手段と、判定結果などを表示する結果表示手段Mなどを備えている。なお、カメラなどの画像センサ20は、撮影する部品の判別検査方式(後述する)によって、色、形状パターン、あるいは寸法などを認識するための高解像度カラーカメラや、文字やコードなどの認識処理を行うためのビジョンセンサなどが用いられる。
【0033】
本発明では、最初に、その組み付けライン10で組み付けられる部品全ての品番について、その基準となるマスタ画像がそれぞれ複数撮影され、処理手段に含まれる記憶装置に記憶される(図1のS1)。ここで、図2に示すように、例えば、その組み付けライン1で組み付けられる部品がA〜Eまであるものと仮定し、また、各部品A〜Eについてそれぞれマスタ画像1〜3を撮影しておくものと仮定する。
【0034】
次に、実際に部品を組み付けてその画像を複数撮影する(図1のS2)。ここで、図2に示すように、例えば、組み付けられた部品aについて、実画像1〜3(図3におけるN=3)を撮影するものと仮定する。処理手段では、複数のマスタ画像と各実画像との相関値をそれぞれ求めて(図1のS3)、各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定する(図1のS4)。
【0035】
ここで、処理手段で行う組み付けの良否を判定するための各相関値の評価について、主に図3〜図6に基づいてさらに詳しく説明する。上述したように、実画像は複数撮影される。図2に示した例では、部品aの実画像は1〜3まで撮影されている(図3におけるN=3)。本発明では、各実画像1〜3と各マスタ画像A〜Eの1〜3とそれぞれ照合し(図3のS31)、複数の手法(図3のS32、S33、S34)によって相関値をそれぞれ評価し、これらの各評価に基づいて各実画像に対する判定を行う。ここで、相関値を評価するための3つの手法として、相対評価S32と、絶対評価(A)S33と、絶対評価(B)S34と便宜上呼ぶこととする。
【0036】
最初に、相対評価S32では、図4に示すように、各実画像1〜3について、それぞれ各マスタ画像A〜Eの1〜3との45通りの相関値のなかで、最も高い相関値のマスタ画像を抽出する(図4のS321)。この抽出されたマスタ画像の品番が実際に組み付けられた部品の品番であると、仮に特定することができる(図4のS322)。そして、特定された部品の品番が組み付けられるべき部品の品番と一致しているか照合・判定し(図4のS323)、特定された部品の品番が、組み付けられるべき部品の品番と「一致している」、あるいは、「一致していない」との判定結果を記憶装置に出力して(図4のS324)一時的に記憶させる。
【0037】
次に、絶対評価(A)S33では、最初に組み付けられるべき部品の品番の複数のマスタ画像と、複数の実画像との相関値をそれぞれ求めて、そのなかから最も高い相関値を抽出する(図5のS331)。ここで、具体的に、図2に示したように、組み付けるべき品番の部品をAとし、実際に組み付けられた品番の部品をaと仮定する。組み付けられるべき品番の部品Aのマスタ画像1〜3と組み付けられた品番の部品aの実画像1〜3とから9通りの相関値を求めて、そのなかから最も高い相関値を選択する。そして、この選択された相関値が予め設定されたしきい値よりも高いかを判定し(図5のS332)、しきい値よりも高い場合(YESの場合)には、判定結果=OK(すなわち、組み付けられるべき部品が組み付けられている:S333)としてその結果と選択された相関値を記憶装置に出力して(図5のS335)一時的に記憶させる。また、しきい値に達していない場合(NOの場合)には、判定結果=NG(すなわち、組み付けられるべき部品が組み付けられていない:S334)としてその結果と選択された相関値を同様に記憶装置に出力して(図5のS335)一時的に記憶させる。つまり、絶対評価(A)では、実際に組み付けられた部品aが組み付けられるべき部品Aと近いかを判定する。
【0038】
次に、絶対評価(B)S34では、最初に組み付けられるべきでない部品の品番の複数のマスタ画像と、複数の実画像との相関値をそれぞれ求めて、そのなかから最も高い相関値を抽出する(図6のS341)。ここで、具体的に、図2に示したように、組み付けるべきでない品番の部品をB〜Eとし、実際に組み付けられた品番の部品をaと仮定する。組み付けられるべきでない品番の部品B〜Eのそれぞれマスタ画像1〜3と組み付けられた部品aの実画像1〜3とから36通りの相関値を求めて、そのなかから最も高い相関値を選択する。そして、この選択された相関値が予め設定されたしきい値よりも低いかを判定し(図6のS342)、しきい値よりも低い場合(YESの場合)には、判定結果=OK(すなわち、組み付けられるべきでない部品は組み付けられていない:S343)としてその結果と選択された相関値を記憶装置に出力して(図6のS345)一時的に記憶させる。また、しきい値よりも高い場合(NOの場合)には、判定結果=NG(すなわち、組み付けられるべきでない部品が組み付けられている:S344)としてその結果と選択された相関値を同様に記憶装置に出力して(図6のS345)一時的に記憶させる。つまり、絶対評価(B)では、実際に組み付けられた部品aが組み付けられるべきでない部品B〜Eではないかを判定する。なお、相対評価S32と、絶対評価(A)S33と、絶対評価(B)S34を行う順序は特に限定されることなく、また、各評価S32、S33、S34を同時に演算を並行処理しても良い。
【0039】
続いて、上記相対評価S32と絶対評価(A)S33と絶対評価(B)S34とのいずれの評価でもNGが無いか、すなわち、各評価で実際に組み付けられた部品が組み付けられるべき部品と一致しているかを、各判定結果の出力S324、S335、S345により判定し、いずれの判定結果でもNGが無い場合には暫定総合判定1(図3のS35)=OKとし、また、いずれかの判定結果が一つでもNGがある場合には暫定総合判定1=NGとして記憶装置に出力し一時的に記憶する。すなわち、実画像1〜3毎に相対評価S32と絶対評価(A)S33と絶対評価(B)S34を総合して暫定的な判定を行う。そして、図3に示すように、各マスタ画像との照合S31、各評価S32、S33、S34、および暫定総合判定S35は、実画像Nまでそれぞれ繰り返し行われる。そして、正式総合判定では、実画像1〜N(図2ではN=3)についての各暫定総合判定S35がいずれの結果でもNGが無い場合には正式総合判定S36=OKとし、また、いずれかの結果が一つでもNGがある場合には正式総合判定S36=NGとして、記憶装置に出力し一時的に記憶する。すなわち、実画像1〜N毎の暫定的な判定を総合して、組み付けた部品の良否を判定する。この正式総合判定S36の結果は、結果表示手段Mに表示される。
【0040】
記憶装置では、各実画像1〜Nの評価S32、S33、S34で出力された相関値(図4のS324、図5のS335、図6のS345を参照)とその評価および実際の組み付け状態の結果を蓄積し、部品の組み付け結果が実際にはOK(組み付けられるべき部品)であるにも関わらずNGと判定されることが多い場合、すなわち誤判定が予め設定された規定値を超えるような場合には、予め撮影されたマスタ画像が適正でないと判定して、それまで使用していたマスタ画像を他の適正なマスタ画像に差替える。また、記憶装置では、部品の組み付け結果が実際にはOKであるにも関わらず、絶対評価(A)S33と絶対評価(B)S34での判定結果(図5のS335、図6のS345)でNGと判定されることが多い場合、すなわち誤判定が予め設定された規定値を超えるような場合には、設定されたしきい値が適正ではないと判定して、適正なしきい値を見直して設定しなおす。
【0041】
ここで、マスタ画像および実画像を撮影することによって部品を判別する検査方式のより具体的な実施の形態を、図8〜図10に基づいて説明する。
図8は、自動車のサスペンションとデファレンシャルギヤなどを予め組付けることによりモジュール化してなるサブアセンブリを示したもので、中央のデファレンシャルギヤのハウジングには、その品番を表す英数字や漢字・カナ文字、あるいはバーコードや所謂QRコードなどの二次元コードなどの識別情報が表された表示Sが直接書き込まれ、あるいは、表示Sが書き込まれたシールが貼付されている。また、ロアアーム1、2の左右LH、RH、ドライブシャフトの左右LH、RH、トーコントロールの左右LH、RH、およびアクスルの左右LH、RHには、それぞれ固有の色彩が所定の幅で所定の位置にペイントされている。
【0042】
カメラなどの画像センサ20により撮影されたサブアセンブリの複数の実画像1〜3は、それぞれ組み付けられる部品とその判別検査方式に応じた箇所(図8に示した枠を参照)について、それぞれ、上述した組み付けの良否を判定する。図8において、サブアセンブリの中央に示されたデファレンシャルギヤのハウジングの所定の箇所には、英数字、漢字・カナ文字、二次元コードなど、その品番の識別情報を表す表示Sが設けられている。したがって、この実施の形態では、撮影された実画像1〜3のなかの表示Sの部分について、各マスタ画像のなかの表示Sの部分との相関値をそれぞれ求め、上述したように各相関値により判定評価することができる(表示別判定)。
【0043】
また、処理手段では、撮影されたサブアセンブリのロアアーム1、2の左右LH、RHドライブシャフトの左右LH、RH、トーコントロールの左右LH、RH、アクスルの左右LH、RHにおける所定の箇所のペイントと対応する位置における複数の実画像の着色された色彩が、予め記憶されているマスタ画像から色別判定される。そして、撮影された実画像1〜3は、結果表示手段Mに映し出され、その実画像1〜3なかの表示別判定や色別判定などを行った箇所と共にその判定結果が表示される。
【0044】
ここで、色別判定について図9に基づいて説明する。図9は、各画像を撮影する画像センサのピクセルを説明するために桝目で概念化して示したものである。検査対象である各部品の画像は、画像センサの各ピクセルで、その色相、彩度、および明度からなる所謂HSV色空間がそれぞれ感知され数値化される(以下、色相、彩度、および明度をまとめてHSVという)。処理手段では、組み付けるべき部品に応じて、HSVについて所定の範囲の数値が設定されており、撮影された各実画像について、その部品毎にHSVが設定された範囲にあるピクセル(図9の塗りつぶした桝目を参照)の数をカウントする。そして、カウントされたピクセルの数が所定の範囲にあるかを判定し(色別判定)、マスタ画像と実画像のピクセル数の相関値が所定の範囲にある場合には所定の色彩に着色された部品である、すなわち組み付けられるべき部品であると判定され、所定の範囲にない場合には所定の色彩に着色されていない部品である、すなわち組み付けられるべき部品ではないと判定される。
【0045】
また、図9に斜線を施した部分に現されているように、撮影された部品の外形形状を感知したピクセルの所定方向の数をカウントすることにより撮影された部品の長さLを検知し、マスタ画像と実画像の長さLを比較して相関値を求めることにより、組み付けられた部品の良否を判定することもできる。
【0046】
さらに、図10に単純化して円形と矩形と三角形とで示すように、撮影された部品のピクセルからその外形形状を認識し、マスタ画像と実画像の外形形状の相関値を演算処理し、その相関値に基づいて上述したように判定評価することもできる。
【0047】
なお、図7では、カメラあるいは画像センサを単一でしか示していないが、上述した判別検査方式に応じて複数設けることもできる。
【0048】
本発明では、複数の実画像1〜Nについて、複数のマスタ画像との数値化された相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定するので、撮影位置や照度など、組み付けライン10上を移動する部品に対する撮影環境のバラツキに影響されることなく、その組み付け部品の良否判定の信頼度が非常に向上する。そして、この判定には複数の手法を用いるため、組み付け部品の良否判定の信頼度がさらに向上する。
【0049】
また、上述した相対評価S32では、各実画像aの1〜3と各マスタ画像A〜Eの1〜3との相関値のなかから抽出された、最も高い相関値のマスタ画像により、特定された部品の品番が組み付けられるべき部品の品番と一致しているか照合・判定するが、最も高い相関値がそれ自体低い場合(例えば50%を下回るような場合)には、特定された部品の品番が組み付けられるべき部品の品番との一致判定の信頼度に疑問が生じることも考えられる。しかしながら、本発明では、相対評価S32だけでなく、実際に組み付けられた部品と組み付けられるべき部品とが近いかを判定する絶対評価(A)S33と、実際に組み付けられた部品が組み付けられるべきでない部品とかけ離れているかを判定す絶対評価(B)S34との3つの評価を並行して行うので、組み付け部品の良否判定の信頼度がより一層向上する。
【0050】
そして、本発明では、演算されたマスタ画像A〜Eの1〜3と実画像aの1〜3の相関値を蓄積すると共に判定結果の傾向を管理するので、実画像aの1〜3と照合されるマスタ画像A〜Eの1〜3の適正化を図ることができ、また、絶対評価(A)S33と絶対評価(B)S34とで設定されるしきい値の適正化を図ることができる。
【0051】
なお、本発明は、自動車のサスペンションとデファレンシャルギヤなどをモジュール化してなるサブアセンブリの組み付けラインに限定されることなく、他の組み付けラインにおいて部品が正しく組み付けられているかを検査する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の組み付け検査方法の全体を説明するために示したフローチャートである。
【図2】本発明で複数撮影されるマスタ画像と実画像とを示した説明図である。
【図3】各実画像の判定・評価を説明するために示したフローチャートである。
【図4】図3の相対評価の内容を示すフローチャートである。
【図5】図3の絶対評価(A)の内容を示すフローチャートである。
【図6】図3の絶対評価(B)の内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明が適用される組み付けラインを説明するために概念的に示した部分平面図である。
【図8】自動車のサスペンションとデファレンシャルギヤなどをモジュール化してなるサブアセンブリを撮影した画像の一実施の形態を示す写真である。
【図9】各画像を撮影する画像センサのピクセルを説明するために桝目で概念化して示した図である。
【図10】撮影された画像の形状パターンの認識を説明するために概念化して示した図である。
【符号の説明】
【0053】
10:組み付けライン、 20:画像センサ、 A〜Eの1〜3:マスタ画像、 aの1〜3:実画像、 S32:相対評価、 S33:絶対評価(A)、 S34:絶対評価(B)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み付けライン上で部品の組み付けを検査する方法であって、
予め、組み付ける部品の基準となるマスタ画像を複数撮影し、
部品を実際に組み付ける際の実画像を複数撮影し、
各マスタ画像と各実画像との相関値をそれぞれ求め、
各相関値に基づいて部品の組み付けの良否を判定することを特徴とする組み付け検査方法。
【請求項2】
各相関値を複数の手法でそれぞれ評価することにより、前記部品の組み付けの良否を判定することを特徴とする請求項1に記載の組み付け検査方法。
【請求項3】
前記部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法の一つが、
複数のマスタ画像の中から実画像との相関値が最大のマスタ画像を抽出して、該抽出されたマスタ画像に基づいて組み付けられた部品の品番を特定し、
該特定された部品の品番と、組み付けられるべき部品の品番とを照合することにより、前記判定を行うものであることを特徴とする請求項2に記載の組み付け検査方法。
【請求項4】
前記部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法の一つが、
複数のマスタ画像のうちで組み付けられるべき部品のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、該相関値のなかから最大の相関値を抽出し、
該最大の相関値に基づいて、組み付けた部品が組み付けられるべき部品と一致しているかを判定することを特徴とする請求項2または3に記載の組み付け検査方法。
【請求項5】
前記部品の組み付けの良否の判定を行うための複数の手法の一つが、
複数のマスタ画像のうちで組み付けられるべきでない部品の複数のマスタ画像と各実画像との相関値を求めて、該相関値のなかから最大の相関値を抽出し、
該最大の相関値に基づいて、組み付けた部品が組み付けられるべきでない部品と一致していないかを判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の組み付け検査方法。
【請求項6】
各マスタ画像と各実画像との相関値を、予め設定されたしきい値と照合することにより、前記部品の組み付けの良否の判定を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の組み付け検査方法。
【請求項7】
組み付けられるべき部品に関する最大の相関値と、組み付けられるべきでない部品に関する最大の相関値との少なくとも一方のデータを各部品毎に蓄積して、
該データの傾向を解析し、マスタ画像が適正であるか否かを判定して、
マスタ画像が適正でない場合には該マスタ画像を適正なマスタ画像に差替えることを特徴とする請求項4または5に記載の組み付け検査方法。
【請求項8】
組み付けられるべき部品に関する最大の相関値と、組み付けられるべきでない部品に関する最大の相関値との少なくとも一方のデータを各部品毎に蓄積して、
該データの傾向を解析し、しきい値が適正であるか否かを判定して、
しきい値が適正でない場合にはしきい値を設定しなおすことを特徴とする請求項6に記載の組み付け検査方法。
【請求項9】
部品にその識別情報を表す表示を設け、該表示のマスタ画像と実画像とを撮影することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の組み付け検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−170331(P2008−170331A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4715(P2007−4715)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】