説明

蓄電器加温装置

【課題】電動機及び内燃機関を搭載した車両に設定されたモードに応じて、当該車両が有する蓄電器の加温制御を行う蓄電器加温装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関及び蓄電器を電源として駆動する電動機の少なくとも一方からの動力によって走行可能な車両に搭載される蓄電器加温装置は、蓄電器を加温するための空気を吸引する吸気部と、蓄電器の温度が第1の所定値未満のとき、車両の走行時における内燃機関と電動機の駆動比率が異なる2つのモードの内、内燃機関よりも電動機を積極的に利用する一方のモードに車両が設定された状態では、他方のモードに車両が設定されているときの吸引力よりも大きな吸引力を発生するよう吸気部を制御する吸気制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び内燃機関を搭載した車両に設定されたモードに応じて、当該車両が有する蓄電器の加温制御を行う蓄電器加温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electrical Vehicle:ハイブリッド電気自動車)等の車両には、駆動源としての電動機等に電力を供給する蓄電器が搭載される。蓄電器には、直列に接続された複数の蓄電セルによって構成されている。蓄電セルには、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池が用いられる。これらの2次電池の出力性能は温度に依存し、高温時及び低温時には低下する。例えば、2次電池によって構成される蓄電器を搭載したEVやHEV等の車両が寒冷地で特に冬季に用いられる場合、蓄電器から十分な電力が電動機に供給されないために所望の出力が得られない場合が考えられる。したがって、蓄電器を冷却又は加温する装置が車両に搭載されることが望ましい。
【0003】
特許文献1に開示された車両用電装ユニットの加温冷却装置は、図10に示すように、主空気通路14にバッテリ21とインバータユニット22を収容してなる車両用電装ユニット10と、主空気通路14に車室6内の空気を導入可能な吸気口44と、主空気通路14を流通する空気を電装ユニット10の外へ排出可能にする排気口46と、主空気通路14に接続・遮断可能で、主空気通路14に接続されたときに閉回路60を構成する副空気通路30と、主空気通路14に空気の流れを生じさせるファン40と備える。バッテリ21の冷却時には、図10(a)に示すように、吸気口44から車室6内の空気が主空気通路14に導入され、バッテリ21からインバータユニット22に向けて流した後、排気口46から排出される。一方、バッテリ21の加温時には、図10(b)に示すように、副空気通路30を主空気通路14に接続して構成される閉回路60で空気を循環させる。
【0004】
当該加温冷却装置では、主空気通路14に所定流量以上の風量が流れたときには、第1シャッタ51が閉じ、第2シャッタ52は開く。一方、主空気通路14に所定流量よりも少ない風量が流れたときには、第1シャッタ51が開き、第2シャッタ52は閉じる。このように、主空気通路14を流通する空気の流れに基づく力と、各シャッタの自重又は弾性体の弾性力により、第1シャッタ51及び第2シャッタ52は開閉する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−47489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EVの駆動源は電動機のみであるが、HEVには電動機及び内燃機関の2つの駆動源が搭載されている。したがって、HEVでは、走行状態やモードに応じて少なくとも1つの駆動源を駆動することによって、走行に必要なエネルギーが得られる。例えば、発進時や急加速には電動機と内燃機関の双方を駆動し、低速クルーズ時には電動機のみ、高速クルーズ時には内燃機関のみを駆動して、必要なエネルギーを得ている。
【0007】
また、複数のモードの中から選択されたモードに応じて電動機と内燃機関の駆動比率を変えるHEVも考えられている。複数のモードの一つに、内燃機関よりも電動機を積極的に利用する燃費優先モードが考えられる。燃費に関しては、内燃機関よりも電動機の方が一般的には良い。したがって、燃費優先モードに設定されたHEVは低燃費で走行可能である。
【0008】
但し、上述したように、電動機に電力を供給する蓄電器の出力性能は温度に依存する。このため、蓄電器の温度が低い状態で燃費優先モードに設定しても、走行に必要な所望のエネルギーを電動機から得られない状況が生じ得る。この場合、蓄電器を加温する必要がある。特許文献1の加温冷却装置は、バッテリ21の温度に基づいて、バッテリ21を加温する必要があるか否かを判定し、加温が必要と判定した場合には、ファン40を低回転数で運転する。このとき、車室6に対する空気の出入りがない閉回路60を空気が循環するため、インバータユニット22で発生した熱が空気を介してバッテリ21を暖める。
【0009】
当該加温冷却装置は、HEVに設定されたモードに応じたファン40の制御を行っていない。すなわち、複数のモードに設定可能なHEVにこの加温冷却装置を搭載したとしても、当該加温冷却装置は、上記説明した燃費優先モードと他のモードの区別なく、バッテリ21の温度に基づいてバッテリ21を加温する。このため、HEVに設定されたモードに応じて蓄電器の加温制御を行う装置が望まれる。
【0010】
また、特許文献1の加温冷却装置では、バッテリ21の加温時の熱源はインバータユニット22である。インバータユニット22で発生した熱が空気を暖め、暖められた空気によってバッテリ21を所定の温度まで上げるには、相当の時間を要すると考えられる。
【0011】
本発明の目的は、電動機及び内燃機関を搭載した車両に設定されたモードに応じて、当該車両が有する蓄電器の加温制御を行う蓄電器加温装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明の蓄電器加温装置は、内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関E)及び蓄電器(例えば、実施の形態での蓄電器101)を電源として駆動する電動機(例えば、実施の形態での電動機M)の少なくとも一方からの動力によって走行可能な車両に搭載される蓄電器加温装置であって、前記蓄電器を加温するための空気を吸引する吸気部(例えば、実施の形態での吸気ファン115)と、前記蓄電器の温度(例えば、実施の形態でのバッテリ温度Tb)が第1の所定値(例えば、実施の形態での第2閾値Th2)未満のとき、前記車両の走行時における前記内燃機関と前記電動機の駆動比率が異なる2つのモードの内、前記内燃機関よりも前記電動機を積極的に利用する一方のモード(例えば、実施の形態での燃費優先モード)に前記車両が設定された状態では、他方のモード(例えば、実施の形態での通常モード)に前記車両が設定されているときの吸引力よりも大きな吸引力を発生するよう前記吸気部を制御する吸気制御部(例えば、実施の形態での制御部125)と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項2に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記蓄電器の温度が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値(例えば、実施の形態での第1閾値Th1)以上のとき、前記吸気制御部は、前記蓄電器を加温するための空気を吸引しないよう前記吸気部を制御することを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記蓄電器の温度が前記第1の所定値以上かつ前記第2の所定値未満のとき、前記吸気制御部は、前記一方のモードに設定された状態であっても、前記他方のモードに設定されているときの吸引力と同じ吸引力を発生するよう前記吸気部を制御することを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記内燃機関で発生した熱によって前記車内の室内空間を加温する車室加温部(例えば、実施の形態でのエアコン109)を備え、前記吸気部は、前記蓄電器を加温するための空気を前記車両の室内空間から吸引することを特徴としている。
【0016】
さらに、請求項5に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出部(例えば、実施の形態での冷却水温センサ121)と、前記車両の走行速度を検出する車速検出部(例えば、実施の形態での車速センサ119)と、を備え、前記冷却水温検出部によって検出された前記内燃機関の冷却水の温度(例えば、実施の形態での冷却水温センサ121)が所定値(例えば、実施の形態での所定値Th0)以上のとき、前記吸気制御部は、前記車両が前記2つのモードのいずれに設定されていても、前記車両の走行速度に応じて異なる吸引力が設定されたマップに基づいて、前記車速検出部によって検出された前記車両の走行速度に対応する吸引力を導出し、当該導出した吸引力を発生するよう前記吸気部を制御することを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項6に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記車両の走行速度を検出する車速検出部(例えば、実施の形態での車速センサ119)を備え、前記吸気制御部は、前記車両が前記2つのモードのいずれに設定されていても、前記車両の走行速度に応じて異なる吸引力が設定されたマップに基づいて、前記車速検出部によって検出された前記車両の走行速度に対応する吸引力を導出し、当該導出した吸引力以下の吸引力を発生するよう前記吸気部を制御することを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記一方のモード又は前記他方のモードは、前記車両の運転者の操作によって設定されることを特徴としている。
【0019】
さらに、請求項8に記載の発明の蓄電器加温装置では、前記車両は、前記電動機の駆動軸と直結した駆動軸を有する内燃機関を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜8に記載の発明の蓄電器加温装置によれば、蓄電器の温度が第1の所定値未満であって、内燃機関よりも電動機を積極的に利用するモードに設定されているときには、吸気部によって吸引された空気によって、他の通常モード時よりも短い時間で所望の温度(第2の所定値)に暖められる。このように、車両に設定されたモードに応じて蓄電器の加温制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下説明する実施形態の蓄電器加温装置は、内燃機関及び蓄電器を電源として駆動する電動機が駆動源として設けられたHEV(Hybrid Electrical Vehicle:ハイブリッド電気自動車)に搭載されている。
【0022】
図1は、本発明に係る一実施形態の蓄電器加温装置を含む車両の内部構成の一例を示すブロック図である。図1に示す車両は、内燃機関Eと、電動機Mと、変速機構Tと、駆動輪Wと、蓄電器101と、インバータ(INV)103と、バッテリ温度センサ(Sb)105と、吸気ダクト107と、エアコン109と、DC−DCコンバータ111と、補機用蓄電器113と、吸気ファン115と、指令部117と、車速センサ119と、冷却水温センサ(Sc)121と、記憶部123と、制御部125とを主に備える。なお、蓄電器101の出力電圧は高電圧(例えば100〜200V)であり、補機用蓄電器113の出力電圧は低電圧(例えば12V)である。
【0023】
図1に示す車両は、内燃機関Eと電動機Mと変速機構Tとを直列に直結した構造のパラレル式ハイブリッド車両(以下、単に「車両」という)である。この種の車両では、内燃機関E及び電動機Mの両方の駆動力は変速機構Tを介して駆動輪Wに伝達される。なお、電動機Mは、インバータ103を介して蓄電器101から供給された電力によって駆動する。
【0024】
蓄電器101は、直列に接続された複数の蓄電セルによって構成されている。蓄電セルには、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池が用いられている。インバータ103は、蓄電器101からの直流電圧を交流電圧に変換して、3相電流を電動機Mに供給する。バッテリ温度センサ105は、蓄電器101の温度(以下「バッテリ温度」という)Tbを検出する。バッテリ温度センサ105によって検出されたバッテリ温度Tbを示す信号は、制御部125に入力される。蓄電器101、インバータ103、バッテリ温度センサ105及びDC−DCコンバータ111は、1つのユニット151に一体化されている。
【0025】
吸気ダクト107は、吸気口153から吸入された空気の通気路を形成している。吸気口153は、図2〜図4に示すように、車両のリアシートの脇に設けられている。したがって、吸気ダクト107には車室内の空気が吸入される。なお、車両の室内空間155の温度は、車両に設けられたエアコン109によって調整されている。したがって、外気温が低いときは、エアコン109によって室内空間155が暖められる。なお、エアコン109から出力される温風は、内燃機関Eの冷却水を熱源としている。したがって、本実施形態ではアイドリングストップが禁止されている。
【0026】
吸気ダクト107の途中には、蓄電器101、インバータ103及びバッテリ温度センサ105によって構成されたユニット151が設けられている。吸気口153から吸入された空気は、ユニット151の内部空間を介して、吸気ダクト107の排気口へと流れる。吸気ダクト107内及びユニット151の内の空気の流れは、後述する吸気ファン115の駆動によって発生される。
【0027】
DC−DCコンバータ111は、蓄電器101の出力電圧を降圧して補機用蓄電器113に充電する。吸気ファン115は、吸気ダクト107の排気口に設けられている。吸気ファン115は、ファン161と、ファン161を回転駆動するためのモータ163とを有する。吸気ファン115は、補機用蓄電器113からモータ163に電力が供給されることによって駆動する。吸気ファン115が駆動すると、吸気ダクト107に車室内の空気が吸引され、吸気ダクト107内及びユニット151内に空気の流れが発生する。
【0028】
吸気ファン115のモータ163は、制御部125によってPWM(Pulse Width Modulation)制御される。すなわち、制御部125は、デューティ比を調整することによってモータ163の回転数を制御する。モータ163の回転数が上がれば吸気ファン115の吸引力も上がる。このため、制御部125は、デューティ比を変えることによって吸気ファン115の吸引力を制御して、吸気ダクト107内及びユニット151内の空気流量を調整することができる。
【0029】
指令部117は、車両が加速時又はクルーズ走行時における内燃機関Eと電動機Mの駆動比率が異なる2つのモードの内、車両の運転者によって選択されたモードの設定に関する信号を制御部125に出力する。本実施形態では、内燃機関Eよりも電動機Mを積極的に利用する「燃費優先モード」、又は燃費優先モードよりも電動機Mの駆動率が低い「通常モード」のいずれかを運転者が選択可能である。
【0030】
車速センサ119は、車両の走行速度(車速)を検出する。車速センサ119によって検出された車速を示す信号は、制御部125に入力される。冷却水温センサ121は、内燃機関Eの冷却水の温度(以下「冷却水温」という。)Tcを検出する。車速センサ119によって検出された冷却水温Tcを示す信号は、制御部125に入力される。
【0031】
記憶部123は、車速に対するデューティ比が示されたマップ(以下「車速/デューティ比マップ」という)を記憶する。車速/デューティ比マップに設定されたデューティ比(以下「限界デューティ比」という)は、運転者及び同乗者にとっての車両の快適性の評価基準であるNV(Noise Vibration)性能を所定レベルに満たすための値に設定されている。図5に、車速/デューティ比マップによる車速と限界デューティ比の関係の一例を示す。吸気ファン115のファン161の風切り音及びモータ163の駆動音は車両のNV性能を低下させる一因となり得る。しかし、車速が上がるに連れて騒音も大きくなる。このため、図5に示すように、車速が上がるにつれてデューティ比が高く設定されている。
【0032】
また、記憶部123は、バッテリ温度Tbと第1の閾値Th1の大小関係に応じたデューティ比(以下「加温要求デューティ比」という)を記憶する。図6に、バッテリ温度Tbと第1の閾値Th1の大小関係に応じた加温要求デューティ比の一例を示す。図6に示すように、加温要求デューティ比は、(A)第1の閾値Th1未満(Tb<Th1)のときはDa%であり、(B)バッテリ温度Tbが第1の閾値Th1以上(Tb≧Th1)のときはDb%(=0%)である。なお、加温要求デューティ比Da,Dbの関係は「Da>Db」である。また、加温要求デューティ比はモードによっては変わらない。
【0033】
また、記憶部123は、燃費優先モード及び通常モードのモード別に、冷却水温Tc及びバッテリ温度Tbに応じたデューティ比(以下「モード別デューティ比」という)を記憶する。図7に、冷却水温Tc及びバッテリ温度Tbに応じたモード別デューティ比の一例を示す。図7に示すように、モード別デューティ比は、(C)通常モード時に冷却水温Tcが所定値Th0未満(Tc<Th0)のときDc%であり、(D)燃費優先モード時に冷却水温Tcが所定値Th0未満(Tc<Th0)かつバッテリ温度Tbが第2の閾値未満(Tb<Th2)のときはDd%(Dd>Dc)であり、(E)燃費優先モード時に冷却水温Tcが所定値Th0未満(Tc<Th0)かつバッテリ温度Tbが第2の閾値以上(Tb≧Th2)のときはDe%(=Dc%)であり、(F)燃費優先モード時に冷却水温Tcが所定値Th0以上(Tc≧Th0)のときはDf%(Df>Dd)である。なお、第2の閾値Th2は、第1の閾値Th1よりも低い(Th2<Th1)。このように、通常モードに対しては冷却水温Tcに応じたモード別デューティ比が設定されており、燃費優先モードに対しては冷却水温Tc及びバッテリ温度Tbの双方に応じたモード別デューティ比が設定されている。
【0034】
制御部125は、記憶部123に格納された車速/デューティ比マップに基づいて、車速センサ119が検出した車速に対応する限界デューティ比を導出する。さらに、制御部125は、指令部117から送られたモードの設定に関する信号、バッテリ温度センサ105から送られたバッテリ温度Tbを示す信号、及び冷却水温センサ121から送られた冷却水温Tcを示す信号に基づいて、加温要求デューティ比及びモード別デューティ比を判別する。制御部125は、導出した3つのデューティ比、すなわち、限界デューティ比、加温要求デューティ比及びモード別デューティ比の内、最も低いデューティ比に基づいて、補機用蓄電器113から吸気ファン115のモータ163に供給される電力を制御する。
【0035】
図8は、本実施形態の車両が備える制御部の動作を示すフローチャートである。図8に示すように、制御部125は、車速/デューティ比マップに基づいて、車速に対応する限界デューティ比を導出する(ステップS101)。次に、制御部125は、バッテリ温度Tbから加温要求デューティ比を判別する(ステップS103)。次に、制御部125は、車両に設定されているモードが燃費優先モードか否かを判別し(ステップS105)、燃費優先モードのときはステップS107に進み、通常モードのときはステップS109に進む。
【0036】
ステップS107では、制御部125は、冷却水温Tc及びバッテリ温度Tbからモード別デューティ比を判別する。一方、ステップS109では、制御部125は、冷却水温Tcからモード別デューティ比を判別する。ステップS107又はステップS109を行った後、制御部125は、ステップS101で導出した限界デューティ比、ステップS103で判別した加温要求デューティ比、及びステップS107又はステップS109で判別したモード別デューティ比の内、最も低いデューティ比に基づいて、吸気ファン115の制御を行う。(ステップS111)。
【0037】
上記説明した本実施形態の車両の状態及び各デューティ比の経時変化の一例を図9に示す。図9に示した例には、イグニッションがOFFの状態の期間(期間0)と、イグニッションオン(IG ON)とされた後、車両が走行開始するまでの期間(期間1)と、車両の走行開始からモードが通常モードから燃費優先モードに切り替えられるまでの期間(期間2)と、バッテリ温度Tbが第2閾値Th2に到達するまでの期間(期間3)と、冷却水温Tcが所定値Th0に到達するまでの期間(期間4)と、バッテリ温度Tbが第1閾値Th1に到達するまでの期間(期間5)と、その後の期間(期間6)とが示されている。
【0038】
期間1及び期間2では、車両が通常モードに設定されており、3つのモードの中で最小のモード別デューティ比に基づいて吸気ファン115が制御される。期間3以降は、車両が燃費優先モードに設定されており、期間3では、3つのモードの中で最小の限界デューティ比に基づいて吸気ファン115が制御される。仮に、期間3で車両が通常モードに設定されていれば、最小のデューティ比はモード別ディーティ比である。期間4では、3つのモードの中で最小のモード別デューティ比に基づいて吸気ファン115が制御される。期間5では、3つのモードの中で最小の限界デューティ比に基づいて吸気ファン115が制御される。期間6では、3つのモードの中で最小の加温要求デューティ比に基づいて吸気ファン115が制御される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の蓄電器加温装置を含む車両では、燃費優先モードが設定された状態、かつ、バッテリ温度Tbが第2閾値Th2未満のときは、図9中の上向き矢印で表したように、通常モードが設定された場合よりもデューティ比が増加される。ディーティ比が上がれば吸気ファン115の吸引力も上がるため、吸気ダクト107内及び蓄電器101を含むユニット151内には、エアコン109によって暖められた室内空間155の空気が多く吸引される。したがって、蓄電器101は、当該吸引された空気によって、通常モード時よりも短い時間で所望の温度に暖められる。その結果、蓄電器は、燃費優先モード下での車両の走行に必要な電力を電動機に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る一実施形態の蓄電器加温装置を含む車両の内部構成の一例を示すブロック図
【図2】吸気ダクト及びユニットの車両内の配置を示す図
【図3】吸気ダクト及びユニットの車両内の配置を示す図
【図4】吸気ダクト及びユニットの車両内の配置を示す図
【図5】車速/デューティ比マップによる車速とデューティ比の関係の一例を示す図
【図6】バッテリ温度Tbと第1の閾値Th1の大小関係に応じた加温要求デューティ比の一例を示す図
【図7】冷却水温Tc及びバッテリ温度Tbに応じたモード別デューティ比の一例を示す図
【図8】一実施形態の車両が備える制御部の動作を示すフローチャート
【図9】一実施形態の車両の状態及び各デューティ比の経時変化の一例を示す図
【図10】特許文献1に開示された車両用電装ユニットの加温冷却装置の冷却時(a)及び加温時(b)の横断面図
【符号の説明】
【0041】
E 内燃機関
M 電動機
T 変速機構
W 駆動輪
101 蓄電器
103 インバータ(INV)
105 バッテリ温度センサ
107 吸気ダクト
109 エアコン
111 DC−DCコンバータ
113 補機用蓄電器
115 吸気ファン
161 ファン
163 モータ
117 指令部
119 車速センサ
121 冷却水温センサ
123 記憶部
125 制御部
151 ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び蓄電器を電源として駆動する電動機の少なくとも一方からの動力によって走行可能な車両に搭載される蓄電器加温装置であって、
前記蓄電器を加温するための空気を吸引する吸気部と、
前記蓄電器の温度が第1の所定値未満のとき、前記車両の走行時における前記内燃機関と前記電動機の駆動比率が異なる2つのモードの内、前記内燃機関よりも前記電動機を積極的に利用する一方のモードに前記車両が設定された状態では、他方のモードに前記車両が設定されているときの吸引力よりも大きな吸引力を発生するよう前記吸気部を制御する吸気制御部と、
を備えたことを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電器加温装置であって、
前記蓄電器の温度が前記第1の所定値よりも高い第2の所定値以上のとき、前記吸気制御部は、前記蓄電器を加温するための空気を吸引しないよう前記吸気部を制御することを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電器加温装置であって、
前記蓄電器の温度が前記第1の所定値以上かつ前記第2の所定値未満のとき、前記吸気制御部は、前記一方のモードに設定された状態であっても、前記他方のモードに設定されているときの吸引力と同じ吸引力を発生するよう前記吸気部を制御することを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電器加温装置であって、
前記内燃機関で発生した熱によって前記車内の室内空間を加温する車室加温部を備え、
前記吸気部は、前記蓄電器を加温するための空気を前記車両の室内空間から吸引することを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電器加温装置であって、
前記内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出部と、
前記車両の走行速度を検出する車速検出部と、を備え、
前記冷却水温検出部によって検出された前記内燃機関の冷却水の温度が所定値以上のとき、前記吸気制御部は、前記車両が前記2つのモードのいずれに設定されていても、前記車両の走行速度に応じて異なる吸引力が設定されたマップに基づいて、前記車速検出部によって検出された前記車両の走行速度に対応する吸引力を導出し、当該導出した吸引力を発生するよう前記吸気部を制御することを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電器加温装置であって、
前記車両の走行速度を検出する車速検出部を備え、
前記吸気制御部は、前記車両が前記2つのモードのいずれに設定されていても、前記車両の走行速度に応じて異なる吸引力が設定されたマップに基づいて、前記車速検出部によって検出された前記車両の走行速度に対応する吸引力を導出し、当該導出した吸引力以下の吸引力を発生するよう前記吸気部を制御することを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電器加温装置であって、
前記一方のモード又は前記他方のモードは、前記車両の運転者の操作によって設定されることを特徴とする蓄電器加温装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電器加温装置であって、
前記車両は、前記電動機の駆動軸と直結した駆動軸を有する内燃機関を備えたことを特徴とする蓄電器加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−132078(P2010−132078A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308691(P2008−308691)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【特許番号】特許第4478900号(P4478900)
【特許公報発行日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】